1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 19:56:55 ID:o7eFcNUU
勇者「呼びましたか? 女神様」
女神「はい! ついにあなたの剣が完成したのです!」
女神「私が自ら部屋に閉じこもり……」
女神「莫大な時間を掛け……」
女神「一切の妥協なく出来上がったのがこれです!」
女神「武器としてはもちろん、芸術品としても世界一だと保証しますよ!」
女神「この剣を前にすれば魔王もたじろぐことでしょう!」
勇者「あ、あの……女神様……」
勇者「魔王はもう倒しましたが……」
女神「はい! ついにあなたの剣が完成したのです!」
女神「私が自ら部屋に閉じこもり……」
女神「莫大な時間を掛け……」
女神「一切の妥協なく出来上がったのがこれです!」
女神「武器としてはもちろん、芸術品としても世界一だと保証しますよ!」
女神「この剣を前にすれば魔王もたじろぐことでしょう!」
勇者「あ、あの……女神様……」
勇者「魔王はもう倒しましたが……」
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:01:47 ID:o7eFcNUU
女神「まず注目して欲しいのは剣の命である刀身!」
女神「刃面には法術塗装を施し、ある程度の刃こぼれは自動治癒!」
女神「軸はミスリルをベースに様々な金属を混ぜ込み強度も世界一!」
女神「それらが織りなす光の反射! ギラつく曲線美! 素晴らしい!」
女神「鍔は美の象徴である私を模しました!」
女神「あなたの手を刃から私が守るということです!」
女神「握る部分は竜の皮を天馬のたてがみで縫い付け!」
女神「剣の端、柄頭には私の力をこれでもかと込めた宝玉を取り付けました!」
女神「刃面には法術塗装を施し、ある程度の刃こぼれは自動治癒!」
女神「軸はミスリルをベースに様々な金属を混ぜ込み強度も世界一!」
女神「それらが織りなす光の反射! ギラつく曲線美! 素晴らしい!」
女神「鍔は美の象徴である私を模しました!」
女神「あなたの手を刃から私が守るということです!」
女神「握る部分は竜の皮を天馬のたてがみで縫い付け!」
女神「剣の端、柄頭には私の力をこれでもかと込めた宝玉を取り付けました!」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:04:47 ID:o7eFcNUU
女神「次に見て欲しいのは鞘です!」
女神「こちらはある程度重量を気にしなくていいので」
女神「貴金属をふんだんに使いました!」
女神「暗闇の中でも世界一美しい模様……つまり私が上品に光り輝きます!」
女神「これを持って歩くだけで圧倒的な威圧感と高貴なオーラが醸し出されることでしょう!」
女神「言っておきますが目立つことなど欠点ではありませんよ!」
女神「あなたは勇者、正面から正々堂々と」
女神「魔王を倒した!?!??!?!?!?!?!?!?!」
勇者「はい」
女神「こちらはある程度重量を気にしなくていいので」
女神「貴金属をふんだんに使いました!」
女神「暗闇の中でも世界一美しい模様……つまり私が上品に光り輝きます!」
女神「これを持って歩くだけで圧倒的な威圧感と高貴なオーラが醸し出されることでしょう!」
女神「言っておきますが目立つことなど欠点ではありませんよ!」
女神「あなたは勇者、正面から正々堂々と」
女神「魔王を倒した!?!??!?!?!?!?!?!?!」
勇者「はい」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:10:31 ID:o7eFcNUU
女神「そ、それは本当なのですか!?」
勇者「はい」
女神「それなら何故知らせが来ていないのです!?」
勇者「大変集中していて何度呼びかけても反応がなかったとお付きの方が」
女神「で、では本当に世界は平和になったと……?」
勇者「はい」
女神「私が剣作りをしている間に?」
勇者「はい」
女神「なんという……ことでしょう……」
勇者「はい」
女神「それなら何故知らせが来ていないのです!?」
勇者「大変集中していて何度呼びかけても反応がなかったとお付きの方が」
女神「で、では本当に世界は平和になったと……?」
勇者「はい」
女神「私が剣作りをしている間に?」
勇者「はい」
女神「なんという……ことでしょう……」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:13:23 ID:o7eFcNUU
女神「と、とにかく! これはめでたいことです!」
女神「よくやりました勇者よ!」
勇者「ありがとうございます」
女神「早速すべての国々に通達し!」
女神「終わることのない宴を始めましょう!」
勇者「あ、それももう終わりました」
女神「あわわ……」
女神「よくやりました勇者よ!」
勇者「ありがとうございます」
女神「早速すべての国々に通達し!」
女神「終わることのない宴を始めましょう!」
勇者「あ、それももう終わりました」
女神「あわわ……」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:17:35 ID:o7eFcNUU
女神「そ、それにしても」
女神「よく魔王を倒すことができましたね」
勇者「はい。何度かもうダメだと思いましたが……」
勇者「仲間たちと力を合わせ、ギリギリの勝利を手にすることができました」
女神「ちなみにその時の武器は何を?」
勇者「これと同じものです」
女神「……ごく普通の鉄の剣に見えますが」
勇者「街で買った量産品ですからね」
女神「よく魔王を倒すことができましたね」
勇者「はい。何度かもうダメだと思いましたが……」
勇者「仲間たちと力を合わせ、ギリギリの勝利を手にすることができました」
女神「ちなみにその時の武器は何を?」
勇者「これと同じものです」
女神「……ごく普通の鉄の剣に見えますが」
勇者「街で買った量産品ですからね」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:21:33 ID:o7eFcNUU
女神「こんな……こんな無骨な鉄の棒に……」
女神「私の剣の出番が……」
勇者「この剣にも利点はありますよ」
勇者「こういった市販のものは同じ規格で手に入るので」
勇者「折れて買い直しても使い勝手が変わらないのです」
勇者「と、いいますか……」
女神「なんですか?」
勇者「あ、いえ、これはちょっと……」
女神「あなたは名実ともに勇者なのです」
女神「多少無礼な発言であっても自重することはないのですよ」
女神「私の剣の出番が……」
勇者「この剣にも利点はありますよ」
勇者「こういった市販のものは同じ規格で手に入るので」
勇者「折れて買い直しても使い勝手が変わらないのです」
勇者「と、いいますか……」
女神「なんですか?」
勇者「あ、いえ、これはちょっと……」
女神「あなたは名実ともに勇者なのです」
女神「多少無礼な発言であっても自重することはないのですよ」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:24:27 ID:o7eFcNUU
勇者「では、女神様」
女神「はい。なんでしょう?」
勇者「過度な装飾を付けなければ魔王討伐に間に合ったのでは?」
女神「ふぃあっ!?」
女神「はい。なんでしょう?」
勇者「過度な装飾を付けなければ魔王討伐に間に合ったのでは?」
女神「ふぃあっ!?」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:30:58 ID:o7eFcNUU
勇者「例えば鞘ですが……留め具の一つ一つに模様が彫ってありますね」
女神「気づいてくれましたか!」
勇者「すごく時間がかかったのでは?」
女神「それはもちろん! 手作業ですから!」
勇者「あの……この剣を作った目的は……」
女神「……」
女神「気づいてくれましたか!」
勇者「すごく時間がかかったのでは?」
女神「それはもちろん! 手作業ですから!」
勇者「あの……この剣を作った目的は……」
女神「……」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:35:58 ID:o7eFcNUU
勇者「その……剣の機能だけが完成したものを受け取れていれば」
勇者「もっと安全に魔王を倒すことが……」
女神「やめてくだ、やめなさい!」
女神「それ以上言うなら、この剣はあげませんよ!」
勇者「……いや、別にいりませんけど」
女神「えぇ!?」
勇者「もっと安全に魔王を倒すことが……」
女神「やめてくだ、やめなさい!」
女神「それ以上言うなら、この剣はあげませんよ!」
勇者「……いや、別にいりませんけど」
女神「えぇ!?」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:40:59 ID:o7eFcNUU
女神「そんな! 世界一の剣なのですよ!」
勇者「もう使う相手がいないので」
女神「持ち歩くのです!もしくは飾るのです! 美しいのですから!」
勇者「それならここに置いておけばよいのでは」
女神「確かに!それも考えました!」
勇者「もう使う相手がいないので」
女神「持ち歩くのです!もしくは飾るのです! 美しいのですから!」
勇者「それならここに置いておけばよいのでは」
女神「確かに!それも考えました!」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:44:25 ID:o7eFcNUU
女神「ですがそれではダメなのです」
勇者「はあ……」
女神「私は神です」
勇者「あ、はい」
女神「私の行動の一つ一つは神話として語り継がれていきます」
勇者「そうですね」
女神「それなのに! この剣をここにおいておいたら!」
女神「"有事の際に剣づくりに熱中してした"という神話になってしまいます!」
勇者「事実じゃないですか」
勇者「はあ……」
女神「私は神です」
勇者「あ、はい」
女神「私の行動の一つ一つは神話として語り継がれていきます」
勇者「そうですね」
女神「それなのに! この剣をここにおいておいたら!」
女神「"有事の際に剣づくりに熱中してした"という神話になってしまいます!」
勇者「事実じゃないですか」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:49:11 ID:o7eFcNUU
女神「だからこそ勇者よ!」
女神「あなたにこの剣を授けます!」
勇者「これを私が持っていても事実は変わりませんよ?」
女神「ところがどっこい! 神話を変えることはできるのです!」
勇者「は、はあ……」
女神「世界を救った勇者がこれをもって歩いていれば」
女神「それを見た人はどう思うでしょう!」
女神「あなたにこの剣を授けます!」
勇者「これを私が持っていても事実は変わりませんよ?」
女神「ところがどっこい! 神話を変えることはできるのです!」
勇者「は、はあ……」
女神「世界を救った勇者がこれをもって歩いていれば」
女神「それを見た人はどう思うでしょう!」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:52:19 ID:o7eFcNUU
勇者「……」
女神「分かりませんか? では教えてあげましょう」
女神「……こほんっ」
女神『おお、勇者の剣のなんと神々しいことか!』
女神『あれで魔王を倒したに違いない! そして女神様美しい!』
女神「……と、思うに決まってます!」
女神「分かりませんか? では教えてあげましょう」
女神「……こほんっ」
女神『おお、勇者の剣のなんと神々しいことか!』
女神『あれで魔王を倒したに違いない! そして女神様美しい!』
女神「……と、思うに決まってます!」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 20:57:07 ID:o7eFcNUU
勇者「えっと……女神様がそんなことをしていいのですか?」
女神「私は剣を勇者に与えるだけです」
女神「神話を作るのはあくまで第三者なのです」
女神「だから私が嘘をついたことにはなりません」
勇者「……」
女神「では行くのです! 勇者よ!」
こうして勇者は剣を見せびらかす旅を強いられた!
女神「私は剣を勇者に与えるだけです」
女神「神話を作るのはあくまで第三者なのです」
女神「だから私が嘘をついたことにはなりません」
勇者「……」
女神「では行くのです! 勇者よ!」
こうして勇者は剣を見せびらかす旅を強いられた!
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:01:50 ID:o7eFcNUU
50日後
女神「それでどうなりましたか、勇者よ」
勇者「はい……この剣を鞘から抜くことは一生無くなりました……」
女神「!?」
女神「それでどうなりましたか、勇者よ」
勇者「はい……この剣を鞘から抜くことは一生無くなりました……」
女神「!?」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:10:38 ID:o7eFcNUU
女神「ど、どういうことですか!?」
勇者「思ったより重く受け止められていたんです」
勇者「魔王が倒れても、宴が終わっても、姿を現さない女神様」
勇者「そんな女神様が突然私を呼び出したことが」
女神「……」
勇者「なぜ姿を見せなかったのか、女神様の話はなんだったのか」
勇者「なぜ平和になったのに剣を新調したのか」
勇者「めちゃくちゃ聞かれました」
女神「あわわ……」
勇者「思ったより重く受け止められていたんです」
勇者「魔王が倒れても、宴が終わっても、姿を現さない女神様」
勇者「そんな女神様が突然私を呼び出したことが」
女神「……」
勇者「なぜ姿を見せなかったのか、女神様の話はなんだったのか」
勇者「なぜ平和になったのに剣を新調したのか」
勇者「めちゃくちゃ聞かれました」
女神「あわわ……」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:15:44 ID:o7eFcNUU
勇者「それで仕方なく……」
勇者「女神様は魔王の転生を防いでいたらしいとか」
勇者「悪しき思念を封印していたっぽいとか」
勇者「そう匂わせるように説明しました」
女神「おお! よくやりました勇者よ!」
女神「でも嘘はいけませんよ!」
勇者「正直に話したほうがよかったですか?」
女神「……いけませんよ!」
勇者「女神様は魔王の転生を防いでいたらしいとか」
勇者「悪しき思念を封印していたっぽいとか」
勇者「そう匂わせるように説明しました」
女神「おお! よくやりました勇者よ!」
女神「でも嘘はいけませんよ!」
勇者「正直に話したほうがよかったですか?」
女神「……いけませんよ!」
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:23:50 ID:o7eFcNUU
女神「そ、それでなぜ私の剣が使えなくなったのです!」
勇者「えっと……だから……」
勇者「封印したと思った人には……」
勇者「そういうふうに解釈されてしまいました」
女神「そ、そんな……」
女神「私の……私の剣が……」
女神「いわくつきになってしまったのですか!?」
勇者「すみません」
こうして世界は平和になり女神の威厳も守られた!
めでたしめでたし!
勇者「えっと……だから……」
勇者「封印したと思った人には……」
勇者「そういうふうに解釈されてしまいました」
女神「そ、そんな……」
女神「私の……私の剣が……」
女神「いわくつきになってしまったのですか!?」
勇者「すみません」
こうして世界は平和になり女神の威厳も守られた!
めでたしめでたし!
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:37:52 ID:tA7DA9QY
かわいい
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/05/01(水) 21:38:22 ID:4c7C1txo
おっつおつ
関連
女神「ここに伝説の剣と盾があります」
引用元: 女神「超かっこいい剣ができました!」
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