1:◆saguDXyqCw 2016/04/01(金) 23:36:23.05 ID:/VMNek2M0
百合要素あり。
地の文あり。
元ネタはモバマスのエイプリルフール。
エイプリルフールネタを知らないと、良く分からないと思いますので、ご注意を。
地の文あり。
元ネタはモバマスのエイプリルフール。
エイプリルフールネタを知らないと、良く分からないと思いますので、ご注意を。
2: 2016/04/01(金) 23:38:03.17 ID:/VMNek2M0
自慢じゃないけどあたしって、子供の時から頭がよかったのよねー。
いわゆるギフテッドって奴?
でも、よくある話なんだけど、ちょっと変わった子って、周りからちょっかい出されやすいのよねー。もーウンザリしちゃう。
あの日は一人で川の匂いを堪能してたのよ。陽気も良かったし、サンダル脱いで川に足なんか入れてさ。
そしたら、油断したねー、後ろからサンダルをホヒョイッてとられちゃったのよ。
犯人は近所の同い年の男の子。
「ちょっと、返してよ」
向こうはへらへら笑ってサンダルを振りまわすの。取り返そうと思ったんだけど、自慢じゃないけどあたしって、昔から体力ないんだよねー。すぐへばっちゃった。
そんなあたしをみてまだ笑って、チョ―ムカつく。
いわゆるギフテッドって奴?
でも、よくある話なんだけど、ちょっと変わった子って、周りからちょっかい出されやすいのよねー。もーウンザリしちゃう。
あの日は一人で川の匂いを堪能してたのよ。陽気も良かったし、サンダル脱いで川に足なんか入れてさ。
そしたら、油断したねー、後ろからサンダルをホヒョイッてとられちゃったのよ。
犯人は近所の同い年の男の子。
「ちょっと、返してよ」
向こうはへらへら笑ってサンダルを振りまわすの。取り返そうと思ったんだけど、自慢じゃないけどあたしって、昔から体力ないんだよねー。すぐへばっちゃった。
そんなあたしをみてまだ笑って、チョ―ムカつく。
3: 2016/04/01(金) 23:40:04.08 ID:/VMNek2M0
え、泣いてたかって? にゃはは、残念。泣いてない泣いてない。
だって、泣きそうになった時にあの子が来てくれたんだもん。
「こらー何やってるの!」
凄い大きい声で、びっくりしちゃった。みたら、見覚えのない子だった。男の子みたいな恰好してたけど、髪が長かったから直ぐに女の子って分かったよ。
こっちまで近づいてきたと思ったら。
「女の子を泣かしちゃ駄目でしょ!」
え、泣いてないんじゃないかって?
本当に泣いて無かったって。ホントだよ?
男の子はタジタジだったけど、サンダルを私に返す代わりに、ポーンって川に投げちゃったの。
「君ー!」
って怒鳴る女の子にあっかんべーして、男の子はどっか行っちゃった。
でもそんな奴のことなんてどーでもよかった。
だだ、流れてくサンダルが心配で。川の流れは緩いけど、どうすればいいかわかんなくさー。
そんな時に彼女が言ったの。
「あたしに任せて!!」
だって、泣きそうになった時にあの子が来てくれたんだもん。
「こらー何やってるの!」
凄い大きい声で、びっくりしちゃった。みたら、見覚えのない子だった。男の子みたいな恰好してたけど、髪が長かったから直ぐに女の子って分かったよ。
こっちまで近づいてきたと思ったら。
「女の子を泣かしちゃ駄目でしょ!」
え、泣いてないんじゃないかって?
本当に泣いて無かったって。ホントだよ?
男の子はタジタジだったけど、サンダルを私に返す代わりに、ポーンって川に投げちゃったの。
「君ー!」
って怒鳴る女の子にあっかんべーして、男の子はどっか行っちゃった。
でもそんな奴のことなんてどーでもよかった。
だだ、流れてくサンダルが心配で。川の流れは緩いけど、どうすればいいかわかんなくさー。
そんな時に彼女が言ったの。
「あたしに任せて!!」
4: 2016/04/01(金) 23:41:12.07 ID:/VMNek2M0
どうするの? ってあたしが尋ねる前に走りだしちゃった。サンダルまで追い付いたけど、川の真ん中まで流れてて、どうするのかと思ったら、バッシャーン。
水の中に入ってったの。
それで、サンダルに追い付いたと思ったら。スッテーン。
こけて水の中に消えちゃった。もうびっくりだよー。どうなるかあたふた。
そしたら、スクッ立ち上がってさ、その手の中にあたしのサンダル。
びしょ濡れで、こっちは心配してるのに、全然気にしない真っ直ぐな笑顔でさー。
まあ、これが、あたしと、あたしの幼馴染、姫川友紀との出会いって訳。
なーんて昔の事を思い出しちゃったもの、春の匂いにやられちゃったからかな?
校庭じゃ桜がいい感じに咲いてるし、ポカポカ陽気の中、学生諸君が運動に励んでいるし。
まさしく春だねー。
水の中に入ってったの。
それで、サンダルに追い付いたと思ったら。スッテーン。
こけて水の中に消えちゃった。もうびっくりだよー。どうなるかあたふた。
そしたら、スクッ立ち上がってさ、その手の中にあたしのサンダル。
びしょ濡れで、こっちは心配してるのに、全然気にしない真っ直ぐな笑顔でさー。
まあ、これが、あたしと、あたしの幼馴染、姫川友紀との出会いって訳。
なーんて昔の事を思い出しちゃったもの、春の匂いにやられちゃったからかな?
校庭じゃ桜がいい感じに咲いてるし、ポカポカ陽気の中、学生諸君が運動に励んでいるし。
まさしく春だねー。
5: 2016/04/01(金) 23:44:02.75 ID:/VMNek2M0
階段を降りて、昇って廊下をちょくしん。一番奥の部屋へ。
おやおや? 中から音が聞こえてくる。
という事は。
部屋に入ると、やっぱり居た。肌の白い女の子が、画面に釘づけ。
画面には、カーボーイな感じの男の人が二人映ってた。
その子、奏ちゃんは、あたしがいきなり入ってきても大して驚いていない。
「あら、志希」
「奏ちゃん授業サボって映画ー? いーけないんだー」
「サボってるのは貴方もでしょ」
なんて笑いながら、リモコンで映画を停止しちゃった。
「別に見てていいんだよー?」
「邪魔されたくないの」
奏ちゃんは立ち上がると、ポットの置いてる壁際の台の所に移動。ここは映画部の部室で、奏ちゃんはその部長さんなんだー。
あたし? あたしは別に部員じゃないよ?
「コーヒーとお茶、どっちがいい?」
「ビューティースメルなダージリンの気分かなー」
「生憎、今は紅茶を切らしてるわ」
おやおや? 中から音が聞こえてくる。
という事は。
部屋に入ると、やっぱり居た。肌の白い女の子が、画面に釘づけ。
画面には、カーボーイな感じの男の人が二人映ってた。
その子、奏ちゃんは、あたしがいきなり入ってきても大して驚いていない。
「あら、志希」
「奏ちゃん授業サボって映画ー? いーけないんだー」
「サボってるのは貴方もでしょ」
なんて笑いながら、リモコンで映画を停止しちゃった。
「別に見てていいんだよー?」
「邪魔されたくないの」
奏ちゃんは立ち上がると、ポットの置いてる壁際の台の所に移動。ここは映画部の部室で、奏ちゃんはその部長さんなんだー。
あたし? あたしは別に部員じゃないよ?
「コーヒーとお茶、どっちがいい?」
「ビューティースメルなダージリンの気分かなー」
「生憎、今は紅茶を切らしてるわ」
7: 2016/04/01(金) 23:45:29.64 ID:/VMNek2M0
坐って待っていると、グリーンティーの入った赤いマグカップをあたしの前に置いてくれる。
向かいに座った奏ちゃんも、虹色のマグカップでグリーンティーを一すすり。
「それで、なんでここに来たの?」
「べっつにー? ただあたしの中のランプが点灯しちゃってねー。エスケープしようって! で、ブラブラして先生に見つかると面倒だから、隠れられそうなここに来たの」
「あら、あたしに会いに来てくれたんじゃないの? 残念」
「にゃはは」
「でも、サボっていいの?」
「勉強? それなら平気平気」
「あたしだってその心配はしてないわよ。志希なら授業を聞かなくても問題ないだろうしね」
「奏ちゃんこそ大丈夫なのー?」
「先生が休んで自習だから。問題ないわ」
「ありゃりゃー」
「それに、あたしが聞いてるのは授業じゃなくて。あの子、心配するでしょ?」
「誰の事かな?」
「貴方の幼馴染よ」
「ああ、多分ねー」
「……それとも、心配してほしいの?」
「いやいやー、あたしはそんなに意地悪じゃないよー」
「そうね。でも、大切過ぎる人って、返って苛めたくならない?」
ドキリとする。奏ちゃんの目って、たまに何でも見通してるように見えるんだよなー。
笑って誤魔化そうとするあたしに、奏ちゃんも微笑む。
「じゃあ、たくさん心配してもらうために、ゆっくりとお茶を楽しみましょう」
向かいに座った奏ちゃんも、虹色のマグカップでグリーンティーを一すすり。
「それで、なんでここに来たの?」
「べっつにー? ただあたしの中のランプが点灯しちゃってねー。エスケープしようって! で、ブラブラして先生に見つかると面倒だから、隠れられそうなここに来たの」
「あら、あたしに会いに来てくれたんじゃないの? 残念」
「にゃはは」
「でも、サボっていいの?」
「勉強? それなら平気平気」
「あたしだってその心配はしてないわよ。志希なら授業を聞かなくても問題ないだろうしね」
「奏ちゃんこそ大丈夫なのー?」
「先生が休んで自習だから。問題ないわ」
「ありゃりゃー」
「それに、あたしが聞いてるのは授業じゃなくて。あの子、心配するでしょ?」
「誰の事かな?」
「貴方の幼馴染よ」
「ああ、多分ねー」
「……それとも、心配してほしいの?」
「いやいやー、あたしはそんなに意地悪じゃないよー」
「そうね。でも、大切過ぎる人って、返って苛めたくならない?」
ドキリとする。奏ちゃんの目って、たまに何でも見通してるように見えるんだよなー。
笑って誤魔化そうとするあたしに、奏ちゃんも微笑む。
「じゃあ、たくさん心配してもらうために、ゆっくりとお茶を楽しみましょう」
8: 2016/04/01(金) 23:47:29.71 ID:/VMNek2M0
結局、あたしはお昼になるまで映画部の部屋でのんびり過ごしたの。
教室に戻ると、お昼休みのざわつきと香り。
目は自然と、幼馴染に。友紀は一つの机を美羽ちゃんと囲んでいた。いつもなら泉ちゃんがいるけど、今日はいないみたい。
多分、生徒会のお仕事か、他のクラスの友達に会いにいってるのかな。二人っきりで楽しそうに話しているのを見て、少し心が疼く。
しょーもない嫉妬心。ボーっと立ってると、友紀があたしに気がついた。
「あ、志希ー!」
ひときわ大きな声を出した幼馴染の元に、あたしは歩いていく。友紀のお弁当の風呂敷は可愛いキャッツ印。
「ヤッホー、友紀」
「ヤッホーじゃないって。またサボってー」
「まあまあ、ユッキー落ち着いて」
そう言って、美羽ちゃんが友紀を宥めてくれる。それでも、友紀のお説教モードは止まりそうにない。
「先生も呆れてたよ」
「へーきへーき、テストには問題ないし」
「問題はテストだけじゃないでしょ! そういう態度も評価に繋がるんだから」
「だって、授業つまらないんだもーん」
「もーんじゃないよ!」
教室に戻ると、お昼休みのざわつきと香り。
目は自然と、幼馴染に。友紀は一つの机を美羽ちゃんと囲んでいた。いつもなら泉ちゃんがいるけど、今日はいないみたい。
多分、生徒会のお仕事か、他のクラスの友達に会いにいってるのかな。二人っきりで楽しそうに話しているのを見て、少し心が疼く。
しょーもない嫉妬心。ボーっと立ってると、友紀があたしに気がついた。
「あ、志希ー!」
ひときわ大きな声を出した幼馴染の元に、あたしは歩いていく。友紀のお弁当の風呂敷は可愛いキャッツ印。
「ヤッホー、友紀」
「ヤッホーじゃないって。またサボってー」
「まあまあ、ユッキー落ち着いて」
そう言って、美羽ちゃんが友紀を宥めてくれる。それでも、友紀のお説教モードは止まりそうにない。
「先生も呆れてたよ」
「へーきへーき、テストには問題ないし」
「問題はテストだけじゃないでしょ! そういう態度も評価に繋がるんだから」
「だって、授業つまらないんだもーん」
「もーんじゃないよ!」
9: 2016/04/01(金) 23:49:08.67 ID:/VMNek2M0
そんなやりとりを、美羽は仕方がないという風に笑っていた。
「もう、ユッキーお母さん見たい」
「まったく、お母さんにもなっちゃうよ。志希ってば昔から人に心配ばかりかけて。あたしまで先生に色々言われるんだから」
「にゃはは、ゴメンゴメン」
「笑い事じゃないんだからね! この前なんて、せっかくソフトボールの授業があったのに、バツとしてピッチャーやらせてもらえなかったんだから!」
「あれはユッキーが本気で投げたら、打てる人が限られるからだって……」
「当然! 完封させる自信があるよ!」
「体育の授業で完封を狙わないで!」
「いやいやぁ、それは友紀には無理な相談だね。何と言っても、その血は甲子園の砂で出来てる女の子だから」
「流石、あたしの幼馴染。よく分かってる!」
友紀の笑顔に、あたしも釣られて笑っちゃう。あたしの方が、彼女を理解してる。それを美羽ちゃんに見せつけられた気になって、少し気分がよくなった。
でも、美羽ちゃんはそんなあたしのことなんて、全然気にしていない。
「もう、二人とも」
そりゃそうだ、美羽ちゃんにとって、友紀はただの友達なんだから。
そして、友紀にとってあたしは、幼馴染の大親友。
あたしにとって?
あたしにとって、友紀は……
「もう、ユッキーお母さん見たい」
「まったく、お母さんにもなっちゃうよ。志希ってば昔から人に心配ばかりかけて。あたしまで先生に色々言われるんだから」
「にゃはは、ゴメンゴメン」
「笑い事じゃないんだからね! この前なんて、せっかくソフトボールの授業があったのに、バツとしてピッチャーやらせてもらえなかったんだから!」
「あれはユッキーが本気で投げたら、打てる人が限られるからだって……」
「当然! 完封させる自信があるよ!」
「体育の授業で完封を狙わないで!」
「いやいやぁ、それは友紀には無理な相談だね。何と言っても、その血は甲子園の砂で出来てる女の子だから」
「流石、あたしの幼馴染。よく分かってる!」
友紀の笑顔に、あたしも釣られて笑っちゃう。あたしの方が、彼女を理解してる。それを美羽ちゃんに見せつけられた気になって、少し気分がよくなった。
でも、美羽ちゃんはそんなあたしのことなんて、全然気にしていない。
「もう、二人とも」
そりゃそうだ、美羽ちゃんにとって、友紀はただの友達なんだから。
そして、友紀にとってあたしは、幼馴染の大親友。
あたしにとって?
あたしにとって、友紀は……
10: 2016/04/01(金) 23:50:53.13 ID:/VMNek2M0
友紀は、あたしの家の近くに引っ越してきた子だった。当然、学校も一緒になって、クラスもたまたま一緒になった。
友紀は明るくて、誰とでも仲良くなれるタイプ。一方のあたしは、まあいわゆるロンリーウルフ?
友紀は案外世話焼きで、いつもあたしを気にかけてくれてた。
小学校中学校と、ずっと同じクラス。
たぶん、あたしが先生たちから煙たがられてたから、友紀にあたしを押し付けてたんだろうねー。
そうなっても友紀は嫌な顔一つせずに、いつもあたしの傍にいてくれて。あたしを色んな事から守ってくれて。
大切な存在で。
気がついたら、友紀はあたしにとって、ただの親友じゃなくなってた。
授業中でもつい、友紀の方に目が行ってしまう。だって、授業がつまんないんだもーん。
友紀は、隣の席に美羽ちゃんと何か話してる。
美羽ちゃんは自分のノートをつつく。友紀が覗き込む。友紀が笑う。美羽ちゃんも笑う。
あたしは、そんな二人から目を逸らした。
なんだか、無性にうんざりして。
友紀は明るくて、誰とでも仲良くなれるタイプ。一方のあたしは、まあいわゆるロンリーウルフ?
友紀は案外世話焼きで、いつもあたしを気にかけてくれてた。
小学校中学校と、ずっと同じクラス。
たぶん、あたしが先生たちから煙たがられてたから、友紀にあたしを押し付けてたんだろうねー。
そうなっても友紀は嫌な顔一つせずに、いつもあたしの傍にいてくれて。あたしを色んな事から守ってくれて。
大切な存在で。
気がついたら、友紀はあたしにとって、ただの親友じゃなくなってた。
授業中でもつい、友紀の方に目が行ってしまう。だって、授業がつまんないんだもーん。
友紀は、隣の席に美羽ちゃんと何か話してる。
美羽ちゃんは自分のノートをつつく。友紀が覗き込む。友紀が笑う。美羽ちゃんも笑う。
あたしは、そんな二人から目を逸らした。
なんだか、無性にうんざりして。
11: 2016/04/01(金) 23:51:52.26 ID:/VMNek2M0
「だから、またここに来たの?」
奏ちゃんが、向かいの席で、なんだか呆れるようにこちらを見てくる。
「理由は言ってないでしょ?」
「顔に書いてあるわよ。教室にいたくないって。理由も想像付くわ」
「いやー。あたしのそんな所を勝手に想像しないでー」
「バカ言ってないの」
「そう言う奏ちゃんこそ、またここにいるの?」
「今日は自習なの」
「また?」
「そう、また」
別の映画を見ていたようで、画面は女性が誰かに電話を掛けているシーンで止まっていた。
「ねえ、志希」
「なにー、奏ちゃん?」
「貴方はこのままでいいの?」
奏ちゃんが、向かいの席で、なんだか呆れるようにこちらを見てくる。
「理由は言ってないでしょ?」
「顔に書いてあるわよ。教室にいたくないって。理由も想像付くわ」
「いやー。あたしのそんな所を勝手に想像しないでー」
「バカ言ってないの」
「そう言う奏ちゃんこそ、またここにいるの?」
「今日は自習なの」
「また?」
「そう、また」
別の映画を見ていたようで、画面は女性が誰かに電話を掛けているシーンで止まっていた。
「ねえ、志希」
「なにー、奏ちゃん?」
「貴方はこのままでいいの?」
12: 2016/04/01(金) 23:52:58.95 ID:/VMNek2M0
「どういうこと?」
「とぼけないで、分かってるでしょ?」
まっすぐな目。本当に不思議。まるであたしの事を全部理解してるみたい。
友紀もこれくらい理解してくれたらな。なんてわがままな事を思っちゃう。
「ただ待ってても、なにも起こらないわよ。貴方から動かないとね」
「別に、何かを起こしたい訳じゃないしー」
「そばに入れるだけで満足って事? ずいぶんとお淑やかなのね。それとも清廉な少女のフリ?」
「時間を無駄にしないタイプだからねー」
「むしろ無駄にしてるようにしか見えないわよ」
「……あたしには、この化学式を解く時間がないの。なら、挑まないのも正解だと思うな」
「そもそも、その化学式に解はあるのかしら?」
それはあたしも分かってる。この問題は簡単ではない。
クピドはとっても意地悪で、たまにこの世界へ難解な方程式を放り込む。
運の悪いことに、それはあたしにプレゼントされちゃった。
とっても幸せで、とっても恨めしい。
「とぼけないで、分かってるでしょ?」
まっすぐな目。本当に不思議。まるであたしの事を全部理解してるみたい。
友紀もこれくらい理解してくれたらな。なんてわがままな事を思っちゃう。
「ただ待ってても、なにも起こらないわよ。貴方から動かないとね」
「別に、何かを起こしたい訳じゃないしー」
「そばに入れるだけで満足って事? ずいぶんとお淑やかなのね。それとも清廉な少女のフリ?」
「時間を無駄にしないタイプだからねー」
「むしろ無駄にしてるようにしか見えないわよ」
「……あたしには、この化学式を解く時間がないの。なら、挑まないのも正解だと思うな」
「そもそも、その化学式に解はあるのかしら?」
それはあたしも分かってる。この問題は簡単ではない。
クピドはとっても意地悪で、たまにこの世界へ難解な方程式を放り込む。
運の悪いことに、それはあたしにプレゼントされちゃった。
とっても幸せで、とっても恨めしい。
13: 2016/04/01(金) 23:54:01.11 ID:/VMNek2M0
「ねえ、志希。貴方にとっての王子様は、ガラスの靴を持っていないのかもしれないのよ。ガラスの靴がなければ王子は、貴方を一生探し出せないわ」
「そうかもしれないけど。だからって、王子様の舞踏会に、出ちゃダメって訳じゃないでしょ?」
「そうね」
奏ちゃんは優しく微笑む。丁度、チャイムが鳴った。
「あら、学校も終わりね。じゃあ、ホームルームぐらいでましょうか?」
立ち上がった奏ちゃん。あたしも奏ちゃんについていく。奏ちゃんは部屋を出る前に、ある事を思い出した。
「そうだ」
そう言って、カレンダーの元まで行くと、彼女はページをめくった。
時間は、嫌でも経っていく。
今月も、今日でもう終わりだ。
一体、いつまであたしは友紀と過ごせるのだろう?
「そうかもしれないけど。だからって、王子様の舞踏会に、出ちゃダメって訳じゃないでしょ?」
「そうね」
奏ちゃんは優しく微笑む。丁度、チャイムが鳴った。
「あら、学校も終わりね。じゃあ、ホームルームぐらいでましょうか?」
立ち上がった奏ちゃん。あたしも奏ちゃんについていく。奏ちゃんは部屋を出る前に、ある事を思い出した。
「そうだ」
そう言って、カレンダーの元まで行くと、彼女はページをめくった。
時間は、嫌でも経っていく。
今月も、今日でもう終わりだ。
一体、いつまであたしは友紀と過ごせるのだろう?
14: 2016/04/01(金) 23:55:12.64 ID:/VMNek2M0
教室に戻ると、やっぱり友紀に怒られて、あと泉ちゃんにも怒られて、美羽ちゃんは呆れていた。
それからホームルームを終えて、あたしは友紀と帰ることに。美羽ちゃんは、合唱部に遊びに、泉ちゃんは生徒会のお仕事。
だから、今は二人っきり。
友紀は、あたしが授業をサボったことを、まだ気にしていた。
「もう、いくら何でもサボり過ぎだよー」
「だって、授業つまらないんだもーん」
「仕方ないでしょ。つまらなくてもちゃんと勉強しなきゃ」
「大丈夫大丈夫~、あたしは友紀と違って授業を受けなくても勉強に支障はないから」
「でしょうね……全く」
友紀は呆れるように腕を組むと、
「それだけ勉強出来るなら、留学でもなんでもすればいいのに。なんであたしと同じ学校なんだか」
なんて、簡単に言ってしまう。
別に悪気がないのは分かっている。それでも傷ついてしまう。
友紀と一緒にいたいから、あたしはこの学校にいるんだよ?
そう言えればいいのに。
昔なら簡単に言えば言葉が、いつの間にか言えなくなってしまった。
きっとクピドが、あたしの口をふさいでしまっているからだろう。
それでも、彼女に悟られたくないから、あたしは精一杯の笑顔を作った。
それからホームルームを終えて、あたしは友紀と帰ることに。美羽ちゃんは、合唱部に遊びに、泉ちゃんは生徒会のお仕事。
だから、今は二人っきり。
友紀は、あたしが授業をサボったことを、まだ気にしていた。
「もう、いくら何でもサボり過ぎだよー」
「だって、授業つまらないんだもーん」
「仕方ないでしょ。つまらなくてもちゃんと勉強しなきゃ」
「大丈夫大丈夫~、あたしは友紀と違って授業を受けなくても勉強に支障はないから」
「でしょうね……全く」
友紀は呆れるように腕を組むと、
「それだけ勉強出来るなら、留学でもなんでもすればいいのに。なんであたしと同じ学校なんだか」
なんて、簡単に言ってしまう。
別に悪気がないのは分かっている。それでも傷ついてしまう。
友紀と一緒にいたいから、あたしはこの学校にいるんだよ?
そう言えればいいのに。
昔なら簡単に言えば言葉が、いつの間にか言えなくなってしまった。
きっとクピドが、あたしの口をふさいでしまっているからだろう。
それでも、彼女に悟られたくないから、あたしは精一杯の笑顔を作った。
15: 2016/04/01(金) 23:56:32.53 ID:/VMNek2M0
次の日、いつものように友紀と一緒に登校。
教室につくと、美羽ちゃんがいきなりあたし達に言ってきたの。
「実は私、男なんだ!」
「へえ、ホントー? 知らなかったー」
「志希ちゃん軽く流さないで!」
美羽ちゃんの後ろから、泉ちゃんが呆れた様子でやってきた。
「もう、また馬鹿なこと言って。もっとマシな嘘にしなさいよ」
「でも、ウソのバランスって難しいんだよ」
「美羽は難しく考えすぎ」
そんなやりとりを聞いていて、今日が何の日か、やっと思い出した。
「そっか、エイプリルフール」
今日は四月一日だ。美羽ちゃんがビシッと指をさしてくる。
「その通り!」
「でも美羽ちゃんの嘘つまんないよ?」
「キャッチャーも取れないような大暴投だったね」
「二人とも! 酷い!」
教室につくと、美羽ちゃんがいきなりあたし達に言ってきたの。
「実は私、男なんだ!」
「へえ、ホントー? 知らなかったー」
「志希ちゃん軽く流さないで!」
美羽ちゃんの後ろから、泉ちゃんが呆れた様子でやってきた。
「もう、また馬鹿なこと言って。もっとマシな嘘にしなさいよ」
「でも、ウソのバランスって難しいんだよ」
「美羽は難しく考えすぎ」
そんなやりとりを聞いていて、今日が何の日か、やっと思い出した。
「そっか、エイプリルフール」
今日は四月一日だ。美羽ちゃんがビシッと指をさしてくる。
「その通り!」
「でも美羽ちゃんの嘘つまんないよ?」
「キャッチャーも取れないような大暴投だったね」
「二人とも! 酷い!」
16: 2016/04/01(金) 23:57:55.73 ID:/VMNek2M0
嘆く美羽ちゃんの後ろでは、うんうんと泉ちゃんも頷いていた。
「分かりやすくしたいというのは分かるけど、安易すぎよ」
「だって、ひどい嘘だとみんなを傷つけるし、分かりづらいと気が付いて貰えないかなーって」
「だからって、もう少しあるでしょ」
「泉ちゃんならどんな嘘をつくの?」
「え、私なら?」
「そう、分かりやすい嘘で、みんなを傷つけない感じの奴だよ」
ちょっと戸惑っていた様子だけど、ふと窓の外を向いた泉ちゃんは、何か思いついたようだ。
「なら、今晩は桜が奇麗だし、生徒会権限を使って学校に泊まって、夜桜見学をしない? とか……どうかしら」
「うーん、あんまりおもしろくない」
「べつにあたしは、美羽と違って面白さは求めてないけど……」
確かに面白くない。
美羽ちゃんもつまらないけど、泉ちゃんもちょっと考えが堅いんだよなー。
なんてあたしが考えていた、そんなとき。
「お、いいんじゃない。それ」
そう言ったのは友紀だった。
「分かりやすくしたいというのは分かるけど、安易すぎよ」
「だって、ひどい嘘だとみんなを傷つけるし、分かりづらいと気が付いて貰えないかなーって」
「だからって、もう少しあるでしょ」
「泉ちゃんならどんな嘘をつくの?」
「え、私なら?」
「そう、分かりやすい嘘で、みんなを傷つけない感じの奴だよ」
ちょっと戸惑っていた様子だけど、ふと窓の外を向いた泉ちゃんは、何か思いついたようだ。
「なら、今晩は桜が奇麗だし、生徒会権限を使って学校に泊まって、夜桜見学をしない? とか……どうかしら」
「うーん、あんまりおもしろくない」
「べつにあたしは、美羽と違って面白さは求めてないけど……」
確かに面白くない。
美羽ちゃんもつまらないけど、泉ちゃんもちょっと考えが堅いんだよなー。
なんてあたしが考えていた、そんなとき。
「お、いいんじゃない。それ」
そう言ったのは友紀だった。
17: 2016/04/01(金) 23:59:32.53 ID:/VMNek2M0
「学校でお泊まり、やろうよ!」
「え、本気なの友紀?」
驚いたのは提案者の泉ちゃん。
そりゃそうだ。本人は嘘のつもりで言ったんだもん。
でも美羽ちゃんも乗り気だ。
「たしかに、面白いかも!」
「でも許可が……」
「いいじゃない。泉ちゃん生徒会でしょ? 生徒会長に掛け合ってみてよー!」
「ええぇ……」
グイグイ来る二人に、泉ちゃんも押され気味。
でも、ウソとしては面白くなかったけど、本当になったら面白そう。
「いいじゃんいいじゃーん。やろうよー。会長さんに聞くだけ聞いてみてさー」
「だけど……」
「泉ちゃんが言ってくれないなら、その時は、あたしの作ったケミカルで会長をー」
「あー分かったわよ! 会長に聞いてみる」
観念した泉ちゃん。
友紀が笑顔を向けてくる。
「ナイスフォローだよ、志希!」
そんな簡単な言葉だけで、私はとても幸せになれた。
本当、自分でも笑っちゃうほど単純なんだから。
「え、本気なの友紀?」
驚いたのは提案者の泉ちゃん。
そりゃそうだ。本人は嘘のつもりで言ったんだもん。
でも美羽ちゃんも乗り気だ。
「たしかに、面白いかも!」
「でも許可が……」
「いいじゃない。泉ちゃん生徒会でしょ? 生徒会長に掛け合ってみてよー!」
「ええぇ……」
グイグイ来る二人に、泉ちゃんも押され気味。
でも、ウソとしては面白くなかったけど、本当になったら面白そう。
「いいじゃんいいじゃーん。やろうよー。会長さんに聞くだけ聞いてみてさー」
「だけど……」
「泉ちゃんが言ってくれないなら、その時は、あたしの作ったケミカルで会長をー」
「あー分かったわよ! 会長に聞いてみる」
観念した泉ちゃん。
友紀が笑顔を向けてくる。
「ナイスフォローだよ、志希!」
そんな簡単な言葉だけで、私はとても幸せになれた。
本当、自分でも笑っちゃうほど単純なんだから。
18: 2016/04/02(土) 00:01:27.85 ID:mBZrzvZJ0
でもまあ、そう簡単に行くもんじゃないよね。
生徒会長の時子ちゃんと言えば、とっても厳しい事で有名だもん。
そう思っていたけど。
「会長、いいって」
泉ちゃんも、驚いた顔をしていた。
しかも、私たちだけじゃなくて、学校の生徒全員、OKだって!?
何だか、思っていた以上にオオゴトになってる気がするけど。
まあ、許可が出たなら結果オーライ? って感じ?
放課後、人によっては荷物を取りに帰ったり、はたまた残ってたり。あたし?
あたしは当然残ってたよ?
「なんだか、おかしなことになったわね」
そう言った奏ちゃんも、少し楽しそうだ。
放課後、映画部の部室に行ってみると、奏ちゃんはちょうど映画のエンディングを見ている所だった。
「また、自習だったのよ」
いたずらっぽく笑った奏ちゃんは、いつもと違って、少し子供っぽく見えた。
生徒会長の時子ちゃんと言えば、とっても厳しい事で有名だもん。
そう思っていたけど。
「会長、いいって」
泉ちゃんも、驚いた顔をしていた。
しかも、私たちだけじゃなくて、学校の生徒全員、OKだって!?
何だか、思っていた以上にオオゴトになってる気がするけど。
まあ、許可が出たなら結果オーライ? って感じ?
放課後、人によっては荷物を取りに帰ったり、はたまた残ってたり。あたし?
あたしは当然残ってたよ?
「なんだか、おかしなことになったわね」
そう言った奏ちゃんも、少し楽しそうだ。
放課後、映画部の部室に行ってみると、奏ちゃんはちょうど映画のエンディングを見ている所だった。
「また、自習だったのよ」
いたずらっぽく笑った奏ちゃんは、いつもと違って、少し子供っぽく見えた。
19: 2016/04/02(土) 00:03:40.84 ID:mBZrzvZJ0
「ねー奏ちゃん。奏ちゃんは何でいつも部室で映画見てるのー?」
「映画を見るのに理由は必要?」
「でもさー、いつも一人でいるじゃーん。流石に飽きない?」
「志希がいるじゃない」
「あたししか来ないじゃーん」
映画部と言っても、部員は奏ちゃんだけだ。
おかしい事じゃないの。他にも一人だけの部活はたくさんあるから。
だからって、こうやって部室に入り浸ってるのは、奏ちゃんだけ。まるで、奏ちゃんは。
「もしかして、学校のみんなを避けてるー?」
「さあ、どうかしら?」
濁したけど、否定はしない感じ。
ちょっとの沈黙の後、奏ちゃんが言ったの。
「ねえ、志希。『素晴らしき哉、人生』って映画、知ってる?」
「映画を見るのに理由は必要?」
「でもさー、いつも一人でいるじゃーん。流石に飽きない?」
「志希がいるじゃない」
「あたししか来ないじゃーん」
映画部と言っても、部員は奏ちゃんだけだ。
おかしい事じゃないの。他にも一人だけの部活はたくさんあるから。
だからって、こうやって部室に入り浸ってるのは、奏ちゃんだけ。まるで、奏ちゃんは。
「もしかして、学校のみんなを避けてるー?」
「さあ、どうかしら?」
濁したけど、否定はしない感じ。
ちょっとの沈黙の後、奏ちゃんが言ったの。
「ねえ、志希。『素晴らしき哉、人生』って映画、知ってる?」
20: 2016/04/02(土) 00:05:24.35 ID:mBZrzvZJ0
どこかで聞いたことのある名前。でも内容までは知らないや。
「古いアメリカの映画でね。映画の中で主人公は、天使に自分がいなかった世界を見せてもらうの」
「それがどうかしたの?」
「あたしには、この世界もそれと同じなんじゃないかなって、思うの」
「……誰かがいない世界って事?」
「うんうん、この場合は逆ね。誰かが居る世界。誰もが居る世界なんじゃないかなって。十二時を回ったら消える魔法。あたし達は、その魔法の消える、うたかたの夢を享受してるんじゃないかなって」
「うたかた?」
「そう、きっと天使が、全てが無くなる瞬間に見せてくれている、最後のお土産。みんなが欲しい物があって、みんなが笑っている、そんな世界。きっと、あたしだけじゃなくて、他にもそれに気が付いている人がいるはずよ……この世界は永遠じゃないって」
「つまり、奏ちゃんは、偽物の世界だから、みんなと居なくていいって思ってるの?」
「それも逆」
奏ちゃんは、寂しそうに微笑んだ。
「だって、もしこの世界が消えて、みんなとただの他人になって。
みんなが忘れて、あたしだけこの世界の記憶や思い出がある、なんて事になったら。
そんなの、辛いじゃない?」
「古いアメリカの映画でね。映画の中で主人公は、天使に自分がいなかった世界を見せてもらうの」
「それがどうかしたの?」
「あたしには、この世界もそれと同じなんじゃないかなって、思うの」
「……誰かがいない世界って事?」
「うんうん、この場合は逆ね。誰かが居る世界。誰もが居る世界なんじゃないかなって。十二時を回ったら消える魔法。あたし達は、その魔法の消える、うたかたの夢を享受してるんじゃないかなって」
「うたかた?」
「そう、きっと天使が、全てが無くなる瞬間に見せてくれている、最後のお土産。みんなが欲しい物があって、みんなが笑っている、そんな世界。きっと、あたしだけじゃなくて、他にもそれに気が付いている人がいるはずよ……この世界は永遠じゃないって」
「つまり、奏ちゃんは、偽物の世界だから、みんなと居なくていいって思ってるの?」
「それも逆」
奏ちゃんは、寂しそうに微笑んだ。
「だって、もしこの世界が消えて、みんなとただの他人になって。
みんなが忘れて、あたしだけこの世界の記憶や思い出がある、なんて事になったら。
そんなの、辛いじゃない?」
21: 2016/04/02(土) 00:06:21.21 ID:mBZrzvZJ0
夜、いつもなら真っ暗闇に包まれる学校が、今日はとても騒がしい。真夜中に開いてる学校、なんだか変な感じ。
みんな校庭に敷物を各々で引いて、飲み物とかお菓子とか、ゲームとか色々用意して、夜の桜を楽しんでいる。
その合間を、歩いてみる。
泉ちゃんは美羽ちゃんとバトミントンで遊んでいる。
卯月ちゃんと凛ちゃん、未央ちゃんの三人は、まるで長く連れ添った家族みたいに、くつろいだ様子で歩いていく。
美穂ちゃんは乃々ちゃんと並んで座って、ただ桜を見上げてる。
里奈ちゃんは、仁奈ちゃんを持ち上げて、桜の木に咲いた、花をまじかで見せてあげている。
そんな二人を、クラリスちゃんとレナちゃんが木に寄りかかって眺めている。
奏ちゃんも、伊吹ちゃんと一緒に何か話して、笑っている。
校舎を見上げると、三階の教室から、時子ちゃんとちひろ先生が、こちらを見下ろしてた。
「おーい! 志希ー!」
友紀が手を振っている。私も手を振り返す。友紀の元へ、近づいていく。
みんな校庭に敷物を各々で引いて、飲み物とかお菓子とか、ゲームとか色々用意して、夜の桜を楽しんでいる。
その合間を、歩いてみる。
泉ちゃんは美羽ちゃんとバトミントンで遊んでいる。
卯月ちゃんと凛ちゃん、未央ちゃんの三人は、まるで長く連れ添った家族みたいに、くつろいだ様子で歩いていく。
美穂ちゃんは乃々ちゃんと並んで座って、ただ桜を見上げてる。
里奈ちゃんは、仁奈ちゃんを持ち上げて、桜の木に咲いた、花をまじかで見せてあげている。
そんな二人を、クラリスちゃんとレナちゃんが木に寄りかかって眺めている。
奏ちゃんも、伊吹ちゃんと一緒に何か話して、笑っている。
校舎を見上げると、三階の教室から、時子ちゃんとちひろ先生が、こちらを見下ろしてた。
「おーい! 志希ー!」
友紀が手を振っている。私も手を振り返す。友紀の元へ、近づいていく。
22: 2016/04/02(土) 00:07:44.29 ID:mBZrzvZJ0
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。
気がつけば、時計の針はもうもう直ぐ、真夜中零時の時間を示す所だった。
この時間になると、寝始めている子もたくさんいた。
だけど、教室に戻ることはあっても、不思議と、誰も家に帰ろうとはしなかった。
友紀はまだまだ元気。未央ちゃんと、さっきまで美羽ちゃん達が遊んでいたバトミントンで遊んでいる。
あたしは、ちょっと眠いかな? 少し離れた所で二人を見てたけど、小さく欠伸を掻いてから、校舎の中へ入っていった。
いくつかの教室の明かりはついていたけど、廊下の電気は消えたまま。あたしは気ままに昇って行って、屋上まで言ってみる。
やっぱり。鍵はあいていた。きっと、どこの鍵も開いているだろう。
屋上から周りの景色を見る。どこまでも続いている。けど、どの家にも明かりは灯っていない。
まるで、この世界で、生きている人間はこの学校の生徒だけみたい。
きっと、それは間違いじゃない。
気がつけば、時計の針はもうもう直ぐ、真夜中零時の時間を示す所だった。
この時間になると、寝始めている子もたくさんいた。
だけど、教室に戻ることはあっても、不思議と、誰も家に帰ろうとはしなかった。
友紀はまだまだ元気。未央ちゃんと、さっきまで美羽ちゃん達が遊んでいたバトミントンで遊んでいる。
あたしは、ちょっと眠いかな? 少し離れた所で二人を見てたけど、小さく欠伸を掻いてから、校舎の中へ入っていった。
いくつかの教室の明かりはついていたけど、廊下の電気は消えたまま。あたしは気ままに昇って行って、屋上まで言ってみる。
やっぱり。鍵はあいていた。きっと、どこの鍵も開いているだろう。
屋上から周りの景色を見る。どこまでも続いている。けど、どの家にも明かりは灯っていない。
まるで、この世界で、生きている人間はこの学校の生徒だけみたい。
きっと、それは間違いじゃない。
23: 2016/04/02(土) 00:10:24.90 ID:mBZrzvZJ0
奏ちゃんが言っていたこと。実はあたしも理解していた。
この世界は偽りで、つかの間。
夢の世界。
そして、奏ちゃんの言っていた、本当は居ない誰かが、自分だって事も、ね。
この夢が終われば、あたしはいなくなる。
別に怖いとかはないよ。だって、あたしは本当は居ない人間なんだもの。
それに、こうなったのも、友紀を守る為だったから。今まで守ってもらってた子を、最後に守るって、ちょーヒロイックじゃない?
そして、きっとこれが友紀といられる最後の時。
皆、眠ったら、みんな、夢から覚める。
そしたら、あたしや、夢の世界の子たちはみんな……
奏ちゃんは、みんなが忘れる事を恐れてた。
あたしは逆かな。
みんなが、覚えていることが怖いの。
友紀が、あたしの言った事を覚えていて、それでもし、拒絶されたら?
それが、友紀にとって、あたしの最後の記憶?
それだけは嫌だなー。
だから、あたしはこの気持ちを言わないことにしたの。
この世界は偽りで、つかの間。
夢の世界。
そして、奏ちゃんの言っていた、本当は居ない誰かが、自分だって事も、ね。
この夢が終われば、あたしはいなくなる。
別に怖いとかはないよ。だって、あたしは本当は居ない人間なんだもの。
それに、こうなったのも、友紀を守る為だったから。今まで守ってもらってた子を、最後に守るって、ちょーヒロイックじゃない?
そして、きっとこれが友紀といられる最後の時。
皆、眠ったら、みんな、夢から覚める。
そしたら、あたしや、夢の世界の子たちはみんな……
奏ちゃんは、みんなが忘れる事を恐れてた。
あたしは逆かな。
みんなが、覚えていることが怖いの。
友紀が、あたしの言った事を覚えていて、それでもし、拒絶されたら?
それが、友紀にとって、あたしの最後の記憶?
それだけは嫌だなー。
だから、あたしはこの気持ちを言わないことにしたの。
24: 2016/04/02(土) 00:11:42.60 ID:mBZrzvZJ0
今度は、校庭を見下ろしてみる。友紀の姿を追う。ここからじゃ見えない。
「しーき」
びっくり。
振り返ると、そこには友紀がいた。
「友紀、いつの間に?」
「それはこっちのセリフだよ。いつの間にかどっかに行っちゃって」
「よく、あたしの事見つけたね~」
「そりゃあ、当然、だって。あたしは志希の幼馴染なんだから」
ほんと、それだけで嬉しくなっちゃう。とっても笑顔が眩しくて。
あたしは、心の中で時間を数える。
「しーき」
びっくり。
振り返ると、そこには友紀がいた。
「友紀、いつの間に?」
「それはこっちのセリフだよ。いつの間にかどっかに行っちゃって」
「よく、あたしの事見つけたね~」
「そりゃあ、当然、だって。あたしは志希の幼馴染なんだから」
ほんと、それだけで嬉しくなっちゃう。とっても笑顔が眩しくて。
あたしは、心の中で時間を数える。
25: 2016/04/02(土) 00:13:22.69 ID:mBZrzvZJ0
12……11……
「うわー凄い景色ー絶景だね、志希」
5……4……
「ん? 志希? どうかしたの?」
2……1……
0
「ねえ、友紀。あたし、友紀のこと、大好き。愛してる」
26: 2016/04/02(土) 00:14:49.44 ID:mBZrzvZJ0
「……っへ?」
目を丸くする友紀、暗くて、表情が読み取れない。
あたしは、笑った。
「なーんて、驚いた?」
「いや、え? な、な?」
「エ・イ・プ・リ・ル・フール」
それで、やっとわかったみたい。
「……やったな、志希」
「にゃはは、引っ掛かったね友紀」
「……フフッ」
それから、お互いに笑いあった。
「じゃあそろそろ、もどろっか、友紀」
「ええ、もう少しここに居ない? 駄目かな?」
まさか、駄目な訳がない。あたし達は並んで地べたに座る。
目を丸くする友紀、暗くて、表情が読み取れない。
あたしは、笑った。
「なーんて、驚いた?」
「いや、え? な、な?」
「エ・イ・プ・リ・ル・フール」
それで、やっとわかったみたい。
「……やったな、志希」
「にゃはは、引っ掛かったね友紀」
「……フフッ」
それから、お互いに笑いあった。
「じゃあそろそろ、もどろっか、友紀」
「ええ、もう少しここに居ない? 駄目かな?」
まさか、駄目な訳がない。あたし達は並んで地べたに座る。
27: 2016/04/02(土) 00:16:13.57 ID:mBZrzvZJ0
友紀は空を見上げていた。
あたしは、空を見るふりをして、友紀の顔を盗み見ていた。
友紀が、こっち向く。
あたしも、友紀の顔を正面から見る。
「ねえ、志希」
「なにかな?」
「あたしも、志希の事が大好きだよ」
その言葉は、たまらなくうれしくて、切なくて。
だって、その大好きは、私の言った大好きとは、少し違うから。
だからって、その言葉に、ウソがない事も分かってるから。
「志希の為ならあたしは何だってするよー?」
そして、その言葉も嘘じゃないって、あたしは知ってるから。
本当に、友紀ってばおバカさん。
あたしは、空を見るふりをして、友紀の顔を盗み見ていた。
友紀が、こっち向く。
あたしも、友紀の顔を正面から見る。
「ねえ、志希」
「なにかな?」
「あたしも、志希の事が大好きだよ」
その言葉は、たまらなくうれしくて、切なくて。
だって、その大好きは、私の言った大好きとは、少し違うから。
だからって、その言葉に、ウソがない事も分かってるから。
「志希の為ならあたしは何だってするよー?」
そして、その言葉も嘘じゃないって、あたしは知ってるから。
本当に、友紀ってばおバカさん。
28: 2016/04/02(土) 00:18:57.52 ID:mBZrzvZJ0
ねえ、奏ちゃん。確かにあたしの王子様は、ガラスの靴をもっていないよ。
だって、それはもう、とっくにあたしへ返してくれてるもん。
初めて友紀と出会ったあの日に。友紀は、私の靴を探してくれた。
もう、見つけてくれてるもん。
たとえ想いが届かなくても、私にとって、ただ一人の王子様。
王子様は心が広いから、きっと許してくれるよね?
あの時、もうエイプリルフールは終わっていたことを。
そんなあたしの、小さな嘘を。
そんなことを考えならが、あたしと友紀は、ずっと並んで一緒に星を見ていた。
みんなが安らかな眠りについて、
この夢から、永遠に目覚めるまで。
一ノ瀬志希「幼馴染と小さな嘘」《終》
だって、それはもう、とっくにあたしへ返してくれてるもん。
初めて友紀と出会ったあの日に。友紀は、私の靴を探してくれた。
もう、見つけてくれてるもん。
たとえ想いが届かなくても、私にとって、ただ一人の王子様。
王子様は心が広いから、きっと許してくれるよね?
あの時、もうエイプリルフールは終わっていたことを。
そんなあたしの、小さな嘘を。
そんなことを考えならが、あたしと友紀は、ずっと並んで一緒に星を見ていた。
みんなが安らかな眠りについて、
この夢から、永遠に目覚めるまで。
一ノ瀬志希「幼馴染と小さな嘘」《終》
29: 2016/04/02(土) 05:04:07.34 ID:jsxTAj3xO
素晴らしい、これこそが百合だな
せつない
せつない
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