1: 2010/05/09(日) 14:14:54.35 ID:LOiuP+By0
紬の別荘で合宿中。

澪「はー、今日はいっぱい練習できたなー」

唯「汗かいちゃったよ」

紬「お風呂、入りましょうか」

澪「そうだな」
けいおん! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

2: 2010/05/09(日) 14:21:11.47 ID:LOiuP+By0
唯「りっちゃーん、お風呂だって」

律「くかー」

紬「寝てるわ」

澪「よっぽど疲れたんだな」

唯「おーいりっちゃーん起きてーおいー
  りっちゃんりっちゃんーお風呂だよー
  おーい起きてりっちゃーんりっちゃんりっちゃーん」

律「ふんごー」

紬「起きないわね」

澪「無理に起こすこともないよ。
  私たちだけで先に入ろう」

紬「そうね。じゃあいきましょう」

唯「わーい、露天風呂~ろってんぶっろー」

律「ぐおー」

4: 2010/05/09(日) 14:25:29.10 ID:LOiuP+By0
律「ぐー」

律「すかー」

律「ふごー」

律「すぴー」

律「ふがー」

律「ぐかー」

律「う~ん……」

唯「あ、やっと起きた」

律「ん? あれ、寝てた?」

澪「爆睡してたよ」

唯「だから先にお風呂入っちゃった」

律「えー、何でだよ~。
  起こしてくれりゃ良かったのに」

紬「なんども起こそうとしたけど、
  全然起きなかったじゃない」

5: 2010/05/09(日) 14:30:00.04 ID:LOiuP+By0
律「えー、起こされた記憶なんてないけど」

澪「そりゃそうだろ」

唯「りっちゃんも、早くお風呂入ってきたら?」

律「一人で入るのかよ~。
  それなら入らない方がましだよ」

澪「何いってんだ、汗臭いから早く入ってこい」

律「やだよー、じゃあ澪ちゃん一緒に入ろうよー」

澪「嫌だよ」

唯「まあまありっちゃん、
  一人で入るってことは、あの広い露天風呂を独占できるってことだよ。
  泳いだり潜ったり、思いのままだよ」

律「おお、そう言われればそうだな!」

澪「人んちのお風呂で遊ぶなよ」

律「よーし、じゃあ早速風呂に入ってくる!
  イエーイ!」だだだだっ

唯「あはは、りっちゃんって単細胞だよね」

澪「お前が言うか……」

7: 2010/05/09(日) 14:36:48.61 ID:LOiuP+By0
風呂。

律「おー、やっぱこの露天風呂は広いな!」

律「クロールも平泳ぎもやり放題だな!
  あはははは!」ざんぶざんぶ

律「水泳50m自由形、
  田井中律選手、飛び込み台に立ちました!」

律「しなやかなフォルムで飛び込みます!
  豪快な水しぶきとともに今スタート!」ざっぱーん

律「世界記録の壁を破れるか、田井中選手!」ざっぷざっぷ

律「あはははは、あはははは」

律「飽きた」

律「やっぱ風呂はゆっくり入るべきだな」ちゃぷちゃぷ

律「うぇーい、いいお湯だ」

律「…………ん、これは……」

11: 2010/05/09(日) 14:45:12.88 ID:LOiuP+By0
律は湯船にたゆたう一本の毛を見つけた。
太く短く縮れたそれは、まぎれもない毛だった。

律「……」

湯船に毛が浮いている。
それは別に珍しい光景ではない。
田井中家の風呂でも毎日のように見かけるし、
あまりにも当然のことで特に意識すらもしていなかった。

しかし今は自宅の時とは状況が違う。
この毛は家族のものではなく、
間違いなく友人のものなのだ。
そう考えると律の胸の内には
得体の知れない感情が沸き起こってきた。

そして律は、謎の好奇心に駆られて
その毛を手に取ったのだった。

律「これは……唯の、か?」

手の中で茶色に光る毛。
律はそれから目を離すことができなかった。

12: 2010/05/09(日) 14:53:35.97 ID:LOiuP+By0
5分ほどその毛をじっくりと観察して、
律はあることに気がついた。

律「唯のがあるってことは……
  澪やムギのも探せば見つかるかも知れない」

それを思いついた次の瞬間には
もう律は毛捜索モードに入っていた。
律はなぜ自分が毛を欲するのか分かっていなかった。
ただ友人の毛を見たいという、
心の底に芽生えた欲求に従ってのみ動いていた。
律は目を皿のようにして、湯をかき分け、
ひたすらに毛を探し求めた。

律「どこだ……どこにある、澪の毛、ムギの毛……
  出てこいよ、早く……」

この毛探しは、2時間ほど経って
律が出てこないのを心配した唯たちが
風呂にやってくるまで続けられた。

13: 2010/05/09(日) 14:59:02.87 ID:LOiuP+By0
唯「りっちゃーん」ガラガラ

律「うおっ、な、なんだよ」

澪「律、いつまで入ってんだ」

紬「のぼせて倒れてるんじゃないかと思ったわ」

律「は、ははは、そんなわけないだろー。
  一人水泳大会やってただけだよ、
  今バタフライの世界チャンピオンと泳いでたところだ」

唯「あはは、虚しい遊びだね」

澪「もう……遊んでないで早く上がれよ。
  私たち、早く寝たいんだからさ」

律「えー、もう寝るのかよ。
  最後の夜くらい遊びたおそうぜ」

澪「やだよ、明日の電車間に合わなくなるだろ。
  いいから早く上がれって」

律「へーい……」ざぶざぶ

14: 2010/05/09(日) 15:06:43.76 ID:LOiuP+By0
寝室。
律が入ったときには、
唯たちは既に布団を敷いておやすみモードだった。

律「いえーい、待たせたな!
  りっちゃん登場だゼーット!」

澪「あー、やっと来たか……
  じゃあもう電気消すぞー」

紬「はーい」

律「何だよー、夜はまだまだこれからだろ!
  夜通し語り明かそうぜ!」

澪「やだよ、みんな眠いんだから。
  唯なんて目を開けるだけで必氏だぞ」

唯「……早く電気消してえ」

律「ちぇー、分かったよ。
  じゃあ早く電気消しゃいいだろ」

澪「分かってるよ、律もおとなしく寝ろよ。
  じゃあおやすみ」パチッ

紬「おやすみなさーい」

律「…………」

16: 2010/05/09(日) 15:15:28.09 ID:LOiuP+By0
唯「すー……」

澪「ぐーぐー」

紬「Zzz...」

律「…………」ごそごそ

暗闇に目が慣れた頃、
律は手の中に隠していたものを取り出した。
それは3本の毛だった。

律「これは唯の毛、こっちが澪の毛、そしてこれがムギの毛」

律は風呂における2時間の捜索の末に、
見事に3人分の毛を見つけ出していたのだ。
茶色と、黒と、金色の毛を見つめ、律は静かにため息をつく。

律「これが……澪たちのあそこに生えてるんだよな」

律「誰にも見せたことのないヒミツの場所に」

律「その毛を私が持ってるんだ」

律「みんなの恥ずかしい毛を」

律「私だけが、知ってるんだ」

20: 2010/05/09(日) 15:21:07.41 ID:LOiuP+By0
――

――――

――――――

澪「起きろーっ、律ーっ!!」

律「はうあっ!?」

澪「まったく、いつまで寝てるんだよ……
  唯もムギも、もう朝ごはんの準備してるぞ」

律「え、も、もう朝……?」

澪「そうだよ朝だよ。
  早く布団片付けて、着替えて降りてこいよ。
  じゃあ台所で待ってるから」
ガチャバタン

律「え、あ、ああ……」

律「……」

律「…………」

律「はっ、毛!!」

律「…………良かった、ちゃんとあったよ……」

22: 2010/05/09(日) 15:27:47.62 ID:LOiuP+By0
台所。

律「おっはろー」

唯「あー、ねぼすけりっちゃんだ」

澪「寝坊した罰として、
  後片付けは全部律にやってもらうからな」

紬「頑張ってね、りっちゃん」

律「えー、そりゃないよ。
  ところで朝食のメニューは?」

紬「ぶりの照り焼き、おひたし、酢の物、味噌汁、納豆、だし巻きよ」

律「旅館のようだ」

唯「頑張って作ったんだよー」

澪「律が寝てる間にな」

律「嫌味っぽいなあ……」

25: 2010/05/09(日) 15:32:37.62 ID:LOiuP+By0
唯「じゃ、いただきまーす」

澪「いただきます」

紬「いただきまーす」

律「いただきま~っす」

唯「もぐもぐ……んー、おいしー」

紬「唯ちゃん、ほっぺにご飯ついてるわよ」

唯「えー、どこどこ?
  取って取って~」

紬「ここよ、ほら」

唯「えへへ、ありがとムギちゃん」

律「…………」

澪「どうした律、食べないのか」

律「えっいや、何でもないよ、ちゃんと食べるよ。
  あーおいしーなーあははのは」もぐもぐ

澪「……?」

26: 2010/05/09(日) 15:40:24.54 ID:LOiuP+By0
律(こんなふうに子供みたいに無邪気に笑ってるけど……
  唯にもあの毛が生えてるんだよな……股間にびっしりと……
  表向きはまだまだ子供なのに……
  衣服に隠された肉体はもう毛がボーボーの大人なんだよな)

紬「澪ちゃん、お茶のおかわりいる?」

澪「うん、ちょうだい」

律(そうだよ、ムギだって……
  お上品なお嬢様って感じだけど……
  は私たちと同じように
  汚らしい毛がもじゃもじゃ生えてるんだな)

澪「このだし巻き美味しいな」

唯「あ、それムギちゃんが作ったんだよ」

紬「上手く出来てたかしら?」

澪「うん、おいしいよ」

律(澪だってそうだ、
  誰にも内緒の毛を生やしてる。
  こいつら、私が毛を持ってるって知ったら
  どんな顔するだろう……?)

28: 2010/05/09(日) 15:46:43.94 ID:LOiuP+By0
澪「律……箸が進んでないけど、大丈夫か?」

紬「あ、なにか嫌いなものとかあった?」

律「え!? あーいや、別にそんなんじゃないんだ、
  ただちょとまあ、うん、まだ眠気がとれてなくてさ、
  あははは、ははは、はははは!」

唯「りっちゃんったらホントにねぼすけさんだね」

澪「まーったく……
  寝るんなら帰りの電車で寝ろよ?」

律「わかってるよ、はは……」もぐもぐ

律(うーん……意識がこいつらの毛に集中して、
  ろくに食事もできない……)

29: 2010/05/09(日) 15:55:28.58 ID:LOiuP+By0
――

――――

――――――

食事が終わったあと、
唯たち4人はさっさと荷物をまとめて別荘を出た。
そして駅まで歩き、地元行きの電車に乗った。

唯「くかー」

澪「すぴー」

紬「ぐー」

律「お前らが寝るんかい……まあいいや」

律はポケットから毛を取り出した。

律「みんなが知られたくない恥ずかしい毛を、
  私が独り占めしてるんだ……
  なんか変な気分だな。
  でも悪くない」

電車が地元の駅につくまで、
律はずっと毛を眺めていた。

31: 2010/05/09(日) 16:10:58.23 ID:LOiuP+By0
家に帰ったあとも、
律は毛から目が離せなかった。
朝も昼も夜もずっと毛を愛でて過ごしたのだ。

律「ああ……唯の毛」

毛の何がそれほどまでに律の心を捉えたのか。
律はおそらく、友人たちの毛を持っているという背徳感、
優越感、罪悪感、その他もろもろ湧き上がる感情に
ほのかな快感を覚えていたのかも知れない。

律「ふう……澪の毛」

しかし律自身はそれを自覚していなかった。
ただ友人たちの毛に惹かれる。
友人たちの毛を見つめる。
それだけで良かった。

律「YES……ムギの毛」

そんな生活が一週間続いた。
その頃にはもう、
毛は干からびてぼろぼろになってしまっていた。

38: 2010/05/09(日) 16:21:08.99 ID:LOiuP+By0
律「ああ……せっかくのみんなの毛が……」

律「こんなボロボロになっちゃったら
  魅力9割減だよ」

律「どうしよう……どうにかして、
  新しい毛を手に入れたいなぁ……」

律「3人全員分とは言わないから、
  せめて1本だけでも欲しいな……」

律「うーん」

律「…………」

律「そうだ、澪にメールを……
  『夏休みの宿題見せて~』っと、送信」

律「これで澪を私の家に呼び出して……」

澪からの返信は『自分でやれ』というものだった。
しかし律はしつこく頼めば澪が折れることをわかっていた。
結局、澪は断りきることができず、
律の家へと宿題を持っていくことになった。

42: 2010/05/09(日) 16:27:49.98 ID:LOiuP+By0
翌日、田井中家。

澪「きたぞー」

律「おお、来たか……あがってあがって」

澪「まったくもう、
  なんでこのクソ暑い中、
  わざわざ宿題を見せに来なきゃいけないんだ」

律「まあまあまあ、クーラー効いてるし、
  アイスもジュースも冷えてるよ」

澪「クーラーもアイスもジュースもうちにあるんだよ」

律「うちのクーラーは澪ちゃんの家のより高性能です!」

澪「意味分からん。帰りたい」

律「おいおい、いきなり帰りたいはないだろー。
  ほら、私の部屋に」

澪「はいはい……まったく」

律「……」

43: 2010/05/09(日) 16:34:30.33 ID:LOiuP+By0
律の部屋。

澪「きたなっ。片付けろよ」

律「いやー、夏休みはついだらけちゃって」

澪「夏休みだからこそ掃除をするべきだろ」

律「まあまあ、座る場所はちゃんと確保してあるから」

澪「ぎりぎり座る場所しかない部屋って酷いな……
  よっこらしょっと」

律「じゃあ澪ちゃん。宿題見せておくんなまし」

澪「分かったよ、もう……
  丸写しはだめだぞ、適当に間違えろよ。
  あと後半の応用問題は空白のままにしとけ。
  そのほうがリアリティがある」

律「やだよ、それじゃ私が馬鹿みたいじゃん」

澪「馬鹿だろう」

律「ひどいなあ、ははは」

46: 2010/05/09(日) 16:40:23.13 ID:LOiuP+By0
澪「……」

律「……」カリカリカリカリ

澪「漫画貸して」

律「うん」

澪「……」

律「……」

澪「……」

律「……」

澪「ぷっ」

律「……」

澪「……」

律「よーしっ、数学は全部写せた!」

澪「あ、そう」

47: 2010/05/09(日) 16:43:49.67 ID:LOiuP+By0
律「次、現国貸して」

澪「現国か。いま出張中だ」

律「じゃあ古文」

澪「古文かー。生物なら今大売出しなのになあ」

律「それもあったわ」

澪「たった今、生物は閉店になりました」

律「もうええわ……ってこんなお約束の流れは
  ホントにいらないから、早く貸してくれ」

澪「やだよ、貸してもらう態度じゃないだろ、それ」

律「くっ……か、貸してください」

澪「んー、どうしよっかなー」

律「お願いします……」

澪「喉かわいちゃったなー」

律「はっ、少々お待ちをー!」
ガチャバタン

50: 2010/05/09(日) 16:49:04.32 ID:LOiuP+By0
澪「……」

ガチャ
律「持ってきた!」

澪「はやっ」

律「田井中家特製の特濃トマトジュース……
  うわあっ!」

澪「おわっ!」

律は足元に散らばっていた雑誌を踏んで滑ってしまい、
手に持っていたトマトジュースは
澪のお腹にぶちまけられた。

澪「な、何すんだよ律ぅ!」

律「ご、ごめん澪」

澪「もう、服がべちょべちょじゃないか……」

律「すぐ洗わないとシミになっちゃうぞ。
  着替え用意するから、すぐに脱げ」

澪「わ、分かった……」ぬぎぬぎ

53: 2010/05/09(日) 16:55:08.55 ID:LOiuP+By0
律「ごめんな澪」

澪「ホントだよ……
  あー、もう下着までびちょびちょ」

律「早く脱いだ方がいいよ」

澪「分かってるよ……見るなよ」

律「見てないから早く脱げよ」

澪「うん……」ぬぎぬぎ

律「ほら、着替え」

澪「ありがとう」

律「じゃあ澪の服は、洗濯機にかけとくから。
  ちゃんと洗って乾かして返すよ」

澪「おう……」

律は澪の衣服を抱えて出て行った。
部屋に残されたのは澪一人。

澪「…………あっ、私の宿題までべちょべちょ……」

58: 2010/05/09(日) 17:01:20.52 ID:LOiuP+By0
澪が半泣きで宿題にかかったトマトジュースを
必氏に拭き取っている頃、
律はと言えば。

律「はあ、はあ……あったぁ!」

澪のパンツを裏返して、
血眼になってパンツに付いた毛を探していた。
そしてそれはすぐに見つかったのだ。

律「くそっ、一本だけか……
  でもまあいい、手に入っただけで喜ぶべきだな」

律はその毛を一通り眺め回したあと、
ポケットに忍ばせておいたチャック付きのビニール袋に
大事にしまった。
そして澪の衣服を洗濯機に放り込んだ。

律は最初からこのつもりで
澪を家に呼び、そしてジュースをぶっかけたのだ。
こんな下らない作戦がうまく行くとは律自身思っていなかったが、
なんと見事なまでに成功してしまった。
これには律も苦笑い。

64: 2010/05/09(日) 17:10:00.10 ID:LOiuP+By0
ふたたび律の部屋。

律「ただいま、澪ちゃ~ん☆」

澪「なんでそんなゴキゲンなんだよ!」

律「なんでそんな怒ってんの?」

澪「怒るに決まってるだろ、
  服だけじゃなくて宿題までトマトジュースまみれだ!」

律「ありゃー、ごっめんごめん!
  でもこれじゃもう宿題写せないな~」

澪「そういう問題じゃないだろっ!
  ていうかなんだよその態度は」

律「だからごめんってば。
  申し訳ないと思ってるよ、な、このとーり」

澪「嘘つけ、ぜったい本心じゃないだろ。
  もういいよ、私帰る」

律「あ、そう? じゃーな」

澪「じゃーね!」
ガチャバタン

71: 2010/05/09(日) 17:19:27.27 ID:LOiuP+By0
律「…………」

澪を怒らせてしまったが、
そんなことは律にとってはどうでもいいことだった。
今の律にはさっき採取した毛を
心ゆくまで愛でることが最優先だったのだ。
むしろ邪魔者がいなくなってくれて
ラッキーだったくらいである。

律「はあはあ……澪の毛……」

律は澪の毛を取り出した。
取れたての瑞々しい張りがある毛だ。
窓から入る日光に照らされて、
つやつやと黒く光っている。

律「そうだよ、これだよ、私が求めてたのは……
  やっぱ毛は新鮮なものに限る」

律はその後、何時間も毛を愛で続けた。
もはや律は理屈も理由も抜きにして
ただ本能から毛を求めるようになっていた。

夏休みの間、律は澪の毛を片時も手放さなかった。
しかしその日採取した澪の毛も、
夏休みが終わって学校が始まる頃には
乾いてボロボロになってしまったのだ。

74: 2010/05/09(日) 17:27:18.41 ID:LOiuP+By0
そして2学期が始まった。

律「おはよー、澪」

澪「……おはよう」

律「どうした、元気ないな」

澪「元気ないわけじゃないけど……
  まあいいや」

律「あ、そうだ。はい、服」

澪「うん」

律「私の服も返してくれよ」

澪「分かってるよ」

律「……もしかしてまだ怒ってんの?」

澪「……」つーん

律「澪ちゅわーん」

律「ぷいっ」

76: 2010/05/09(日) 17:33:55.86 ID:LOiuP+By0
律「もう、澪は頑固だな」

澪「お前が悪いんだろ……
  ていうか宿題はちゃんとやったのか」

律「んー……やってない」

澪「やってないのかよ」

律は夏休み中ずっと毛を眺めていたために
宿題などやる暇はなかったのだ。
いや、宿題をやろうとしたこともあった。
しかし意識が毛のほうに反れてしまい、
集中して宿題を続けることができなかったのだ。

澪「もう……宿題くらいちゃんとやれよな」

律「私は澪に写させてもらわないと宿題できないんだよ」

澪「開き直んな」

律「へっへー……」

81: 2010/05/09(日) 17:39:17.41 ID:LOiuP+By0
こうして澪とふざけて会話をしている最中も、
律の意識は常に澪の股間に向いていた。
この制服のスカートの下に、パンツの下に、
毛がそれはもうびっしりと生えている……
考えてはいけないとわかっていながらも
頭の中はそのことで占められていた。

夏休み中に手に入れた澪の毛がひからびてから、
律は毛を愛でることも見ることもしていない。
そのために一種の禁断症状のような状態に陥っていたのだ。

律「…………」

澪「律?」

律「…………」

澪「おい、律」

律「…………」

澪「律っ!」

律「はっ……な、なんだ!?」

83: 2010/05/09(日) 17:43:43.02 ID:LOiuP+By0
澪「なんだ、じゃないよ。
  どしたんだよ、ボーッとして」

律「あ、いやー、
  なんでもないなんでもない……っはは……」

澪「? ……
  具合悪いなら帰ったほうがいいぞ、
  どうせ今日は始業式だけだろうし」

律「だ、大丈夫だよ、元気だよ、
  元気だ元気だ、むっきっきー」

澪「むっきっきー?」

律「とにかく大丈夫だから、
  心配してくれなくても……うん」

澪「ああ、そう。
  それならいいんだけど」

紬「おはよう、久しぶりね」

澪「おームギ、おはよー」

律「…………」

90: 2010/05/09(日) 17:54:18.34 ID:LOiuP+By0
久々に会った紬に挨拶をすることも忘れて
律はただ毛のことだけを考えていた。
どすうればもう一度澪や紬、そして唯の毛を
手にすることが出来るのか……
毛を見たい、触れたい、愛したい……
律の頭にあるのはそれだけだった。

始業式の最中も毛は頭を離れなかった。
体育館に整列した数百人の生徒、
その全員に毛が生えているかと思うと
頭がフットーしそうだった。
校長の長ったらしい話を聞きながら
毛が欲しい、毛が欲しいという
本能的な欲求をひたすらに抑えつけていた。

そして始業式が終わり、教室でのHRも済んで、
いつもより何時間も早い放課後を迎えたとき、
ついに律の我慢は爆発してしまったのだ。


     第一部 完

91: 2010/05/09(日) 17:55:26.36 ID:LOiuP+By0
第2部予告!
ムギちゃんは多分出番なし!

110: 2010/05/09(日) 19:00:11.73 ID:LOiuP+By0
第2部ゴー

112: 2010/05/09(日) 19:05:39.21 ID:LOiuP+By0
律「…………」

澪「律~」

律「…………」

澪「律?」

律「…………」

澪「オラァ!」ボカッ

律「いでっ!! な、なんだよ」

澪「いや、またボーッとしてたから……
  ほんとに大丈夫か?
  朝からずーっとボーッとしてるじゃないか」

律「大丈夫だってば……
  で、なんか用?」

澪「えっああ、私、職員室行かなきゃいけないから。
  先に音楽室いっといて」

律「……ああ、分かったよ」

115: 2010/05/09(日) 19:12:24.21 ID:LOiuP+By0
律の頭は未だに毛でいっぱいだった。
むしろ毛で溢れかえってしまいそうだった。
こんな状態のままでは、
部活に行ったところで意味が無いだろう。
みんなの下着のさらに下に隠された毛に気を取られてしまって、
まともに練習など出来ないに決まっている。
しかしこのまま帰るとまた澪に心配されてしまうので、
とりあえず音楽室に行くことにした。

壁にぶつかったり階段を踏み外したりしながらも
ようやく校舎3階の音楽室に到着した。
ドアを開けると、既に唯が来ていた。

律「よう、唯」

唯「……」

律「唯~?」

唯「す~……」

唯はテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。
その唯の向かい側の席に律は腰掛けた。

116: 2010/05/09(日) 19:16:26.63 ID:LOiuP+By0
律「しかし睡眠中のシーンが多いな」

唯「くかー」

律「…………」

唯「すー」

律「…………」

唯「すぴー」

律「…………」

唯「くー」

律「…………」

唯「かー」

律「…………」

唯「ふすー」

律「今ならバレないんじゃね」

118: 2010/05/09(日) 19:28:17.49 ID:LOiuP+By0
はっ、とした。
自分は何を考えているんだ、と律は思った。
大切な友人の寝込みを襲って毛を取ろうなど、
絶対に許されることではない。
律はかぶりを振って、
自分の頭に浮かんでしまった邪な考えを散らせようとした。

しかし一度思いついてしまったことが
そう簡単に頭から離れてくれるわけがない。
唯のノンキな寝顔を見ているうちに、
その下に隠された毛への欲求は大きくなっていく。
そして律にささやく悪魔の声は
律をただひたすらに煽るのだ。

唯の毛を見たい。触れたい。
でも唯は大切な友達だ。
こんな犯罪まがいのことをしてはいけない。
でも唯は寝ている。
爆睡している。
ちょっとやそっとじゃ起きそうにない。
そっとやればバレないかも知れない。
バレないだろう。
バレないようにやろう。
やろう。
やろう。

122: 2010/05/09(日) 19:37:54.74 ID:LOiuP+By0
律は机の下に潜り込んだ。
唯のスカートから伸びる、
黒いストッキングに包まれた脚が目に入った。
普段はなんとも思っていなかったが、
今日はなぜか工口ティシズムを感じた。
別に細くも長くも、特に綺麗な脚でもないのだが。

作業の流れはこうだ。
唯のストッキングとパンツを脱がし、
パンツに付いているであろう毛を入手、
そして後はすべてを元に戻す。
文字に起こすと簡単そうに見えるが、
実際にやるとなるとかなり大変だろう。
まず唯が目覚めるとそこで終わりだ。
唯を起こさないよう、慎重に慎重にやらねばならない。
そしてこの音楽室に誰かが入ってきてもアウトなのだ。
つまり慎重さとスピードの両方が必要になる。
しかし律にとって、そんなハードルは屁でもなかった。
唯の毛を手に入れる。
その情熱によってのみ律は動いていた。

123: 2010/05/09(日) 19:45:38.86 ID:LOiuP+By0
律「はあ、はあ、はあ」

律は唯のスカートに手を入れ、
ストッキングに指を掛けた。
それをゆっくり、ゆっくりとずり下ろしていく。
しかしお尻のほうが圧迫されていて
うまく下ろすことが出来ない。
律が必氏に下ろそうとしていると。

唯「う……ううん」

律「!!」

唯「んー……」

唯が目覚めてしまったと思われたが、大丈夫だった。
肝を冷やしながらも、ストッキング下ろしを再開する。
一旦机の下から出て、唯のうしろにまわり、
ゆっくりとお尻を浮かせることで
なんとかストッキングを下ろすことができた。
しかしもう15分が経ってしまっている。
早くしなければ澪がやってくる。
それまでにすべてをやり終えてしまわなければならない。
律はもう一度机の下に潜った。

125: 2010/05/09(日) 19:53:07.33 ID:LOiuP+By0
唯のストッキングを足元までずり下ろす。
次はパンツだ。
ここさえ乗り越えれば、
唯の毛を手に入れられる。
そう思うと、律の中で抑え切れないほどの興奮が湧き上がった。

律「はあはあはあ……」

律はパンツに手を掛けた。
ストッキングと同じ要領で、
唯を起こさないように、
少しずつ、少しずつ、
ずり下ろしていく。
1回やったことなので、
もう手馴れたものだ。

徐々にパンツをずらしていくと、
やがて毛が見えてきた。

律「!!!」

ついに念願の毛が、
目の前に現れた……という
逸る気持ちを抑えつつ、
律は慎重にパンツを脱がしていく。

126: 2010/05/09(日) 20:01:57.58 ID:LOiuP+By0
律「はあっ、はあっ、はあっ……!!」

そして律は、苦労の末、
ついに唯のパンツを
脱がせることに成功したのだ!!

律「うおおおおおあああああああ!!」

歓喜の雄叫びを上げ、
唯の股間にむさぼりつく律。
至近距離に広がる毛パラダイスを前に、
律はもはや当初の目的など忘れ去ってしまっていた。

律「はあああっ、毛、毛ぅ……
  毛、はあはあ、毛、毛、毛……!!!」

律はもっしゃもっしゃと豪快に毛を愛撫する。
だが撫で回すだけでは飽き足らず、
キスをし、しゃぶりつき、なめまわし、
唯から生えたナマ毛を味わい尽くした。

律「はあああああ、毛、毛……毛!」

唯「ん、んー…………ん?」

131: 2010/05/09(日) 20:03:38.85 ID:xEln+AQP0
どうしてこうなるまで放っておいたんだ

139: 2010/05/09(日) 20:09:51.81 ID:LOiuP+By0
律「はあ、はあ、毛毛……」もしゃもしゃ

唯「…………」

律「はあああ、毛……」もしゃもしゃ

唯「いっ」

律「毛……はああん」もしゃもしゃ

唯「いやああああああああっ!!!!」
ボカッ

律「いでっ!!」

唯「ななななんあななななんああ、
  何やってっ、……な、な、な、なんで……
  な、な、な、りっちゃん……何して……っ」

律「はっ……あっ……
  あ、いや、これは、違うんだ、
  いやこれは違うんだ、唯!」

唯「いやっ! こないでっ!」

今さら我に返ったところで、手遅れだった。

153: 2010/05/09(日) 20:16:20.20 ID:LOiuP+By0
唯は泣きながらパンツとストッキングを履き直した。
唯の顔に浮かんでいるのは、紛れもない恐怖の表情だった。

律「違うんだ、違うんだよお、唯……
  話を、話を聞いてくれえ」

唯「いやっ……いやああ、
  こっち来ないで……来ないでよっ……!」

詰めよる律。
あとずさる唯。
やがて唯は、音楽室の隅にまで
追い詰められてしまった。

律「な、何をそんなに怖がってんだよお……
  なあ、正気に戻れって……」

唯「いやっ……いや……」

律「なあっ、唯!!」がっ

唯「い……いやああああああああっ!!!!」

ガチャ
澪「ど、どした、唯!!」

161: 2010/05/09(日) 20:22:30.16 ID:LOiuP+By0
律「み、澪……」

唯「澪ぢゃんだすげでえええ!!
  りっぢゃんが、りっぢゃんがあああぁぁぁ!!!」

澪「だ、大丈夫か、唯!」

唯は澪に抱きついた。
そして澪は唯の体が尋常じゃないくらいに
震えていることを感じた。

澪「おい律、唯に何をしたんだ!!」

律「ち、違うんだってば!
  私は別に、そんな、何も……」

澪「何もせずに唯がこんなに泣くわけないだろ!!
  おい、何をしたんだよ、律!!」

律「わ、私はっ……私は……!」

澪「律っ!!」

163: 2010/05/09(日) 20:27:16.89 ID:LOiuP+By0
唯「うわああああああん!
  うああああん!」

澪「よ、よしよし唯……
  もう大丈夫だから」

泣きじゃくる唯の背中を優しく撫でる澪。
何があったか知らないが、
唯をこんなに泣かせるほど恐ろしい目に合わせたとすれば
親友として律を許すことはできない……
澪はそう思った。

唯「うあああああん!」

澪「おい、律……
  何があったんだよ、正直に言えよ」

律「違うんだ、違うんだよ」

澪「何が違うんだよ!?
  それをはっきりと言えよ!!」

律「……違っ……違うんだあああああああああ!!!」

澪「律っ……!」

律は叫びながら音楽室を飛び出していった。

172: 2010/05/09(日) 20:35:03.85 ID:LOiuP+By0
――

――――

――――――

田井中家。

律「はあ、はあ、はあ」

音楽室を飛び出した律は、
そのまま全力疾走で家まで帰っていた。

汗だくでフラフラの体を、ベッドに横たえる。

律「なんで、なんでこんなことになってしまったんだ……
  なんで、なんで、なんで……」

律「私のせいじゃない……
  私はただ唯の毛を欲しくて、それで……
  音楽室で寝てる唯のパンツを……」

律「そしたら唯が起きたんだ……
  いや違う……ああ、そうだ……
  唯の毛が……そうだ……」

178: 2010/05/09(日) 20:38:46.79 ID:LOiuP+By0
律「唯の毛……柔らかくて、気持ちよくて……」

律「そうだ……唯が泣き出したんだ……
  なんで……」

律「ああ、そうか……
  いきなりパンツ脱がせて……
  股間をまさぐってたら誰だって泣くよな……
  はは……」

律「何やってんだろう、私は……」

律「はははは、はは……」

律「はは……」

律「……」

律「……」

律「……」

律「……」

律「……」

188: 2010/05/09(日) 20:45:17.74 ID:LOiuP+By0
あっ
律が唯の毛に到達したらダメなんだった
まあいいか

191: 2010/05/09(日) 20:47:13.40 ID:LOiuP+By0
律「くかー」

澪「オイこら律」ボカッ

律「いだっ……
  な、なんで澪がここに……?」

澪「カバンを持ってきてやったんだ。
  音楽室に置きっぱなしだったろ」

律「え、ああ……ありがとう」

澪「昼寝して落ち着いたか?」

律「ん……まあ」

澪「で?」

律「で、って?」

澪「……唯に何をしたのか、ってことだよ」

律「え、ああ……」

澪「唯に聞こうとも思ったけど……
  あんな怯えてたのに、また思い出させるのもよくないと思って」

律「……」

193: 2010/05/09(日) 20:50:58.51 ID:LOiuP+By0
澪「……早く言えよ。
  言ってくれないと、私はお前のこと許さないぞ。
  まあ、言っても許さないけど」

律「…………」

澪「…………」

律「……真面目に聞いてくれよ」

澪「うん」

律「私な……私……」

澪「なんだよ……」

律「毛が……好きなんだ」

澪「?」

律「毛だよ。俗にチO毛やマO毛とも言う、あれだよ」

澪「っ…………ふ、ふざけてんのか!?」

律「ふざけてないよ、真面目に聞けって言ったろ!」

200: 2010/05/09(日) 20:56:25.65 ID:LOiuP+By0
澪「ああ、すまん……
  で? それが唯となんの関係が……」

律「唯が、音楽室で寝てたんだ……」

澪「……ああ」

律「だ、だいたい分かった?」

澪「なんとなくは……
  毛見たさに唯の寝込みを襲った、とか?」

律「そうなんだ」

澪「お前……最低だな」

律「分かってるよ……」

澪「お前のシュミについては
  好きにすればいいと思うけどさあ……
  人を傷つけるようなことしちゃダメだろ」

律「うん……」

澪「特に唯みたいなのは、そういうのに耐性ないだろうし」

212: 2010/05/09(日) 21:02:50.66 ID:LOiuP+By0
律「…………」

澪「見ただろ?
  あの唯の怯えかた……
  本気で泣きじゃくってたぞ。
  あんな唯は初めて見た」

律「うん……」

澪「ああいうのは、本当に一生モノのトラウマになっちゃうから」

律「うん……
  唯に悪いことしちゃったな」

澪「ほんとだよ」

律「……」

澪「唯に謝りに行こう」

律「うん」

澪「許してもらえるか分からないけど……
  もとの楽しい軽音部に戻るために、さ」

律「それは無理だ……」

217: 2010/05/09(日) 21:07:15.16 ID:LOiuP+By0
澪「は? 無理? ……なんで?」

律「私にはもう軽音部は苦しすぎる。
  あんな空間にいたら……
  私はみんなの毛のことで
  頭が一杯になっちゃうんだよ……」

澪「り、律……」

律「唯には許してもらえるかも知れない……
  でも私のこの内から沸き上がる欲望はどうなる?
  消えるのか? なくなるのか?
  いや、これからもどんどん膨らんでいく……」

澪「……」

律「そうさ……今だって頭は毛のことばかりさ……
  さっき触れた唯の毛……
  そして、澪、お前の毛……」

澪「……」

律「またいつ爆発してしまうか分からない。
  また誰かを傷つけてしまうかも知れない……
  そんなことになったら……」

223: 2010/05/09(日) 21:13:55.20 ID:LOiuP+By0
澪「律……」

律「…………」

澪「……毛に触れられれば……いいんだな」

律「えっ」

そういうと澪は立ち上がった。
そして、パンツを脱ぐ体勢になった。

律「な、何してんだ、澪……!」

澪「律……これからは、
  私が毛をお前に提供する……だから」

律「何いってんだ、そんなこと……」

澪「でも、これで律の欲求は収まるんだろ?」

律「それは……そうだけど」

澪「なら、ためらう理由なんてない」

律「澪っ……!」

236: 2010/05/09(日) 21:20:06.74 ID:LOiuP+By0
澪「なんだよ……
  こっちだって恥ずかしいんだから、
  止めないでくれ」

律「でも……」

澪「困ったときはお互い様だ……
  今までだってそうだっただろ?
  だから、これからも」

律「澪……」

澪はパンツを脱いだ。

澪「ほら……律」

律「あ……ああ……」

律は澪のスカートをめくった。
そこにはあった。毛が。
それは唯のものよりもずっと濃かった。
毛パラダイス……いや、
それはまさに毛ヘヴン。

律は澪の股間に顔をうずめた。

247: 2010/05/09(日) 21:27:08.32 ID:LOiuP+By0
挿入歌 毛時間
作詞・田井中律


キミを見てるといつも毛MOJA☆MOJA
揺れる思いは毛みたいにちり☆ちり


いつも抜けてる君の毛
ずっと見てても気づかないよね
夢の中なら二人の毛ちぢれさせるのにな


あぁ カミサマお願い
二人だけのInmou Timeください☆
お気に入りの毛抱いて今夜ももじゃもじゃ♪

毛時間 毛時間 毛時間


253: 2010/05/09(日) 21:29:04.27 ID:LOiuP+By0
――

――――

――――――

律「はあ……」

澪「もう、満足か」

律「ああ……
  ありがとう、澪」

澪「いや、いいんだ……
  じゃあ、行こうか」

律「え、どこに?」

澪「唯のところだよ。
  謝りにいかないと……」

律「ああ……そうだな」

澪「今度は襲ったりしちゃだめだぞ」

律「うん、今のでスッキリしたから大丈夫だよ」

263: 2010/05/09(日) 21:38:55.38 ID:LOiuP+By0
平沢家。

憂「あ、澪さんに律さん……」

澪「やあ。唯の調子、どう?」

憂「あ、いえそれが……
  さっき帰ってきてからずっと部屋に閉じこもってて……
  私が話しかけても何も言ってくれなくて」

澪「そっか」

憂「あの……学校で何があったんですか?」

澪「それはおいおい話すよ。
  今は私と律と、唯との3人で話したい」

律「うん」

憂「はあ……じゃあ、どうぞ」

澪「ああ、お邪魔するよ」

律「……」

273: 2010/05/09(日) 21:46:55.56 ID:LOiuP+By0
唯の部屋。

澪「唯……入るぞ」

まず澪だけが唯の部屋に入った。
律が入るとまた唯を怯えさせてしまうと思ったからだ。

唯はベッドの上に座っていた。
しかし視線を澪の方に向けることはなかった。
ただ生気の抜けた顔で俯いているだけだった。

澪「唯……大丈夫か」

唯「ああ……澪ちゃん」

唯はゆっくりと顔を上げた。
そして悲壮感の漂う愛想笑いを浮かべた。
澪にはそれが痛々しくて見ていられなかった。

澪「隣、いいか」

唯「うん」

澪は唯の隣に腰掛けた。

284: 2010/05/09(日) 21:55:20.66 ID:LOiuP+By0
澪「あー……あのな、唯……
  律のことなんだけど」

唯「!」

律、という言葉が出た瞬間に
唯は体をこわばらせた。

澪「律だってな、悪気があってやったわけじゃないんだ……
  ただ、その……我慢できなくなったというか」

唯「……」

澪「だから、その、なんだ、えっと……んーと」

唯「……仲直り、しろって?」

澪「……まあ、平たく言えば」

唯「……」

澪「無理なら無理でいいんだ……
  その……2人が元の仲いい状態に戻ればいいな、っていう
  私のワガママみたいなもんだし……」

唯「……」

288: 2010/05/09(日) 21:59:33.77 ID:LOiuP+By0
澪「唯はこんなに傷付いたんだもんな……
  謝らせて欲しいなんて、虫のいい話か」

唯「私も……りっちゃんとは仲直りしたいよ……
  大切な友達だから」

澪「唯」

唯「でも……大切な友達だからこそ……怖いの。
  ああいうことされたのが……
  また、ああいうことされるんじゃないか、っていうのが……」

澪「……」

唯「また同じことされたら……
  私……私、もう……」

澪「それは大丈夫だ、唯……
  律はもう二度とお前にあんなことはしない」

唯「……ほ、ほんとに? 保証は?」

澪「律の欲求が、また今日みたいに爆発しそうになったら、
  私が抑えてやるってことになったんだ。
  だから大丈夫」

293: 2010/05/09(日) 22:05:29.34 ID:LOiuP+By0
唯「そうなんだ……
  よく分かんないけど」

澪「だから……大丈夫。
  これからの未来の不安は、もうない。
  あとは、これまでの過去の過ちを償えば、
  そして唯がそれを許せば……」

唯「うん……」

澪「実はさ、ここに律が来てるんだ」

唯「えっ」

澪「律ー、入ってこい」

ガチャ
律「……やあ、唯」

唯「り……りっちゃん」

少しだけ、唯の顔に恐怖の色が浮かぶ。
それに気づいた澪は、唯の手を握ってやった。

304: 2010/05/09(日) 22:13:26.99 ID:LOiuP+By0
律「唯……本当にすまなかった。
  許してくれ」

そういうと律は部屋の真ん中で土下座をした。

唯「りっちゃん……」

律「……」

澪「唯……
  律だってこんなに反省してるんだ。
  どうか、許してやってくれないか」

唯「……」

唯が、ぎゅっと澪の手を握り返した。
仲直りをしたいとは言っていたが、
いざやるとなると
簡単にできることではなかった。

唯「……」

澪「……」

律「……」

311: 2010/05/09(日) 22:22:49.26 ID:LOiuP+By0
沈黙は5分ほど続いた。
唯が口を開いた。

唯「りっちゃん……」

律「……」

律はずっと土下座の体勢のままで固まっていた。

唯「りっちゃんにされたこと……
  最初はほんとにびっくりして……そして、怖かったよ。
  今までにないくらい怖かった……
  思い出すと今でも泣きそうになるよ」

律「……」

唯「でも、りっちゃんは私の大切な友達だから……
  私はりっちゃんのこと信じてるから」

律「……」

唯「今日のあれは……ちょっと我慢できなかっただけなんだよね。
  ほんとのりっちゃんは、優しくて明るい良い子だよね」

律「……」

316: 2010/05/09(日) 22:28:35.98 ID:LOiuP+By0
唯「だから……これからもりっちゃんが……
  そういう感じでいてくれるんなら……」

律「……」

唯「私も、これからもずっと仲良くしていきたいと思ってるよ」

律「……」

唯「顔を上げて、りっちゃん」

律「……」

澪「律?」

唯「り……りっちゃん?」

律「ふひ」

唯「!?」

澪「おい、律!」

律「ふひ……ひ……」

328: 2010/05/09(日) 22:33:53.83 ID:LOiuP+By0
そこで律はやっと顔を上げた。
しかしその顔は、
奇妙な笑みを浮かべ、目がすわっていて、
おおよそ普通の状態には見えなかった。

唯「り……りっ……ちゃん……?」

唯が澪の腕にすがりつく。

澪「おい、律、いったいどうし……、……!!」

澪は気がついた。
部屋の床に、
正確に言えば律が土下座して頭を付けていた位置に、
一本の毛が落ちていたのだ。
それは何の毛なのか、
もはや言うまでもないことだろう。

澪「おい、だめだぞ、律……
  分かってるよな……」

律「ふひひ……ひひ」

唯「がくがくがくがく」

331: 2010/05/09(日) 22:38:32.69 ID:LOiuP+By0
澪「ダメだっ、正気に戻るんだ、律っ!!
  ここで同じことをしたら、唯はっ……
  お前は、もう二度と……!!」

律「ふひーひーひひひーひー!!!」

澪の声は律に届いていなかった。
律の頭にあるのはただひとつ、
毛のことだけであった。

律「ふひっひー!!」

律は唯に飛びかかった。

唯「い、いやああああああああっ!!!!」

音楽室のときと同じ悲鳴がこだまする。
唯は必氏に抵抗するが、
律の力に勝つことはできなかった。

唯「いやああああ、やめてええええええっ!!!
  澪ちゃん、澪ちゃん助けてええええええ!!!」

律「ふひーひひー!!」

342: 2010/05/09(日) 22:43:28.58 ID:LOiuP+By0
澪「やめろ、律っ!!
  おい、聞いてんのか、律!」

唯「いやああああ、あああああ!!」

律「ふひひひひー!」

澪「はっ……そうだ!!」

澪はその場で自らのパンツを脱ぎ捨て、
スカートをめくりあげた。

澪「ほら、律、毛だ毛!!
  こっち見ろ、こっちに毛があるぞー!!」

律「そんなもんもう飽きたわー!!」

澪「なっ!?」

律「唯の毛が至高なんじゃあああああ!!」

唯「いやああああああああああああ!!!」

律の手によって、
唯の部屋着のズボンとパンツが、
一気に下ろされた。

361: 2010/05/09(日) 22:51:53.04 ID:LOiuP+By0
――

――――

――――――

嫌な事件だった……
澪は当時のことをこう振り返る。
あの事件のせいで、
結成から半年も経たないうちに
桜高軽音部は崩壊してしまったのだ。
もうみんなで楽器をすることも、
お菓子を食べて喋ることも、
遊びにいくこともない。

唯はあれから一度も学校に来ていない。
いや、学校どころか部屋の外にも出ていない。
完全な引きこもりとなってしまっていたのだ。
澪はときどき唯の様子を見に、平沢家に出向く。
しかし唯が部屋の扉を開いたことはない。
澪はいつも扉の外から一方的に唯に話しかけるだけだ。
当然、唯からの返事は聞こえない。
でも澪はこれをずっと続けている。
唯がいつか部屋から出てくると信じて。

380: 2010/05/09(日) 23:04:01.17 ID:LOiuP+By0
律はというと、
唯の叫びを聞きつけて部屋にやってきた憂が警察を呼び、
そして警察によって取り押さえられた。
丸出しの毛を警察の人に見られたのは恥ずかしかった……
と澪は当時を振り返って語る。
その後、律は精神病院に入れられたが、
未だに毛発狂病(澪命名)は治っていないらしい。
律と澪がふたたび会えるのは、
いつのことになるのだろうか。

紬はあの事件の直後、
「チベットの老師に弟子入りする」というメールを
澪に送ったきり、消息がつかめていない。
まったく意味が分からない行動であるが、
紬にもなにか思うところがあるのだろう……
と澪はむりやり自分に言い聞かせた。

澪はあの事件のことを忘れたことはなかった。
そして、なぜあんなことが起こってしまったのか、
どうすれば止めることができたかを
ずっと考え続けた。
しかし、答えはいつまでたっても出なかった。

389: 2010/05/09(日) 23:10:17.86 ID:LOiuP+By0
事件についての思考は、
いつしか毛についての思考に擦り変わっていた。
なぜ律はあんなに毛に囚われていたのか。
なぜ唯の毛に執着したのか。
なぜ自分の毛は飽きられたのか。
良い毛と悪い毛の違いとは。
色は。艶は。長さは。濃さは。
そもそも毛の魅力とは。
毛の存在意義は。
たかが毛、
されど毛。
ああ毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。
毛。

402: 2010/05/09(日) 23:18:01.26 ID:LOiuP+By0
2年生に進級した4月。
澪はこの日も音楽室で一人、
物思いにふけっていた。
なんだかんだでこの音楽室が一番落ち着く。
毛について考えるには持ってこいなのだ。

紬が残していったティーセットで
安物の紅茶を淹れ、テーブルにクッキーを広げる。
一人でティータイムをしながら
毛について思考を巡らせる。
それが澪の放課後の習慣だった。

しかしこの日は、音楽室の静寂が
突然の来訪者によって破られた。

梓「あのー……」

澪「?」

梓「入部……したいんですけど」

一年生の入部希望者。
名前やクラスや希望のパートなど
先輩として色々と聞くべきなのではあるが、
澪は、この子はどんな毛が生えているのだろう、と
そればかりを気にしていた。


      お   わ     り

403: 2010/05/09(日) 23:18:48.34 ID:qUeDKq4O0

引用元: 律「これは唯の毛、こっちが澪の毛、そしてこれがムギの毛」