1:◆yfWmR9mD4k 2014/07/09(水) 22:50:47.43 ID:kBxxtr88o

2: 2014/07/09(水) 22:52:04.95 ID:kBxxtr88o

――――――――――――一時間前、事務所


拓海「これか……Pの野郎が言ってた荷物は?」



涼「そうだね。さすがに一人じゃ無理だからな。二人でさっさと運んで終わらせようぜ」



拓海「よっと……意外に重いな。おい、涼! しっかり気合入れて持てよ!」

涼「わかってるって。うっさいなあ」

拓海「重てえなあ……何が入ってんだ?」

涼「前のイベントで使った小道具やら衣装とかだな」

拓海「これ、どこに運べばいいんだ?」

涼「アンタ、何も聞いてねえな……地下の倉庫だよ」

拓海「へえ、この事務所、地下に倉庫なんかあんのか」

涼「おしゃべりはいいから、しっかり持てって! 早く終わらせたいんだからさ」

拓海「何焦ってんだよ?」

涼「この後、亜里沙さんの手伝いしなきゃなんないんだよ」

拓海「また、チビどもの面倒見かよ。お前子供の扱い慣れてるよな」

涼「そうでもないよ。結構大変なんだぞ」

拓海「経験者みたいな口ぶりだな。お前……まさか、もう産んでんじゃねえの?」

涼「そんなワケあるかッ!!」

拓海「冗談だよ、マジになんなって」

3: 2014/07/09(水) 22:52:47.11 ID:kBxxtr88o

――――――――――――地下倉庫


涼「このへんでいいかな?……ゆっくり下ろせよ」

拓海「わーってるよっと……ふぅ」

涼「よし、戻るか」

拓海「なあ?」

涼「なに?」

拓海「この扉は何だ?」

涼「ああ、それはラボへの入り口だ」

拓海「ラボ?」

涼「晶葉が使ってる研究所みたいなもんだ」

拓海「研究所ねえ……つーことは今、ここに晶葉がいんのか?」

涼「あー、多分いるだろう。昨日、なんかやってしまわなきゃいけない発明があるとかで」

拓海「お勉強できる奴の考えることはわかんねえな……なあ」

涼「なんだよ? 早く戻ろうぜ、まだ荷物あんだし」

拓海「ちょっと、覗いてみねえか?」

涼「はあ? やめときなよ。勝手に入るとさすがのアイツも怒るぞ」

拓海「いいじゃねえか。それにアイツだけ手伝わねえのもおかしいだろ?」

涼「そう言ってサボりたいだけだろ?」

拓海「カタイこと言うなって。見学だよ、見学」

涼「ったく……」

4: 2014/07/09(水) 22:53:53.11 ID:kBxxtr88o

――――――――――――研究室


こんこん


涼「おーい。晶葉ー? いないのかー?」

拓海「邪魔するぜ」

涼「あ、おい! 無断で入るなよ」

拓海「気にすんなって。ここも事務所の一部みたいなもんだろ?」

涼「あとで文句言われても知らねーからな」

拓海「おわー……なんだか訳の分かんねー機械ばっかだな」

涼「勝手に触んないほうがいいよ。あの子、そういうのは厳しいからね」

拓海「わーってるって」

涼「でも、晶葉どこだろ? 奥で寝てるのかな? アタシちょっと見てくるわ」

拓海「おう」


ことっ


拓海「ん? 何だこりゃ? 飴玉??」

5: 2014/07/09(水) 22:54:26.18 ID:kBxxtr88o

涼「ダメだねー、いないみたいだね」

拓海「そっか」モゴモゴ

涼「ん? アンタ、何食ってんの?」

拓海「ああ、飴玉。そこにあったんでな」

涼「勝手に食うなよ。晶葉にキレられても知らねえぞ」

拓海「ははは、そんな飴玉一つで大げさな」


がしゃん


涼「ん?」

6: 2014/07/09(水) 22:55:15.65 ID:kBxxtr88o

晶葉「…………」フルフル



拓海「いよっ! 晶葉、邪魔してるぜ」

晶葉「拓海……君は……一体何を……食べて……」

涼「あ、晶葉……こ、これはな……」

晶葉「拓海! 今すぐ吐き出せっ!!」

拓海「あ?」

晶葉「ちっ! 涼、首の後を叩くんだ!」

涼「へ? あ、ああ」


ずびしっ


拓海「おうっ!!」


ぽろっ


涼「飴玉吐き出したぞ」

7: 2014/07/09(水) 22:55:51.98 ID:kBxxtr88o

晶葉「間に合ってくれたか……拓海はこの飴をどれぐらい舐めていた?」

涼「うーん……2,3分位だと思うけど」

晶葉「そうか……だとしたら、5000日弱といったところか?」

涼「?? どういう意味だ?」

晶葉「……拓海を見てみるといい」

涼「?……あれ? 拓海どこ行った?」

晶葉「……君の足元だ」

涼「えっ?」



拓海「……」



涼「拓海が……小さくなってる!!」

8: 2014/07/09(水) 22:56:49.07 ID:kBxxtr88o

涼「お、おいっ! 大丈夫か?」

拓海「……」

晶葉「大丈夫だ。気を失っているだけだろう」

涼「そ、そうか……」

晶葉「それよりも服が合わなくなっている。悪いが倉庫から服を取ってきてくれないか? 千佳の使っていない私服があったはずだ」

涼「わかった……晶葉は?」

晶葉「私は今のうちに拓海の脳波を調べてみる。万が一がないとも言えん」

9: 2014/07/09(水) 22:57:31.93 ID:kBxxtr88o

涼「取ってきたぞ。これでいいかな?」

晶葉「ありがとう。サイズ的にはおそらく問題無いだろう。着せてやってくれ」

涼「それで……拓海は大丈夫なのか?」

晶葉「もちろん。命には別状はない……ただ」

涼「ただ……なんだよ? 脳波に異常があったのか?」

晶葉「いや、異常はない。むしろ、”異常がなかったこと”が異常といえる」

涼「どういう意味だよ、それ?」


拓海「ててて……あたまいてー」


涼「拓海。気がついたか!」

10: 2014/07/09(水) 22:58:29.83 ID:kBxxtr88o

拓海「りょうか……どうなってんだ? これ」

晶葉「見ての通り、姿形以外は向井拓海のままだ」

涼「それがヤバいんだけどな」

晶葉「ただ、脳の働きを調べた結果、記憶の働きをする海馬や大脳新皮質はそのままであるが、感情を司る前頭前野と扁桃体は5~6歳前後のそれと同じであることがわかった」

涼「??? さっぱりわかんねえよ?」

晶葉「簡潔に言うなら現在の18歳までの記憶を有した、小学校入学前の感性の向井拓海に戻ったのだ」

涼「……いまいちピンとこねえな」

11: 2014/07/09(水) 22:59:13.77 ID:kBxxtr88o

晶葉「つまり……」


拓海「りょう」グイグイ


涼「なんだよ? 今、大事な話してんだよ」

拓海「といれいきたい」

涼「ああ、さっさと行ってきな」

拓海「ついてきて」

涼「は? 何バカなこと言ってんだよ。ガキじゃあるまい…………まさか!!」

晶葉「そういうことだ」


涼「マジかよ……」

12: 2014/07/09(水) 22:59:56.02 ID:kBxxtr88o

拓海「といれー」

涼「はいはい。わかったっつうの」

晶葉「とりあえず、あとでまた寄ってくれ。元に戻す方法について調べておこう」

涼「頼んだぞ」

晶葉「あと、このことは他者には内密に頼む。余計な混乱を招きたくはない」

涼「どうせ、言ったって誰も信じてくんないよ」

晶葉「それもそうか」

13: 2014/07/09(水) 23:00:35.19 ID:kBxxtr88o

――――――――――――廊下(地下)


涼(それにしても面倒なことになっちまったな)

涼(幸か不幸か今はPがいないんだけど)


拓海「りょーうー……」


涼(どうすんだよ?……これから)


拓海「りょうー」


涼「なんだよ? 今考え事してるんだよ」

拓海「はやいー。もっとゆっくりあるけー」

涼「は?」

涼(あ、そっか。こいつちびっ子の体だったな)

涼「わかったわかった。横に並んでやるから」

14: 2014/07/09(水) 23:01:23.35 ID:kBxxtr88o

涼「そこ、階段だぞ。気をつけろよ」

拓海「わかってる……よいしょ」

涼(普段なら二段飛ばしでスイスイ登っていくのに、今じゃ手すりを掴んで両足で一段づつか)

涼「ほら、手を貸してやる」

拓海「おう」

涼「せえの……ほら」

拓海「おおお、らくちんだぞ!」


涼(やれやれ……気楽なもんだな)

15: 2014/07/09(水) 23:02:26.89 ID:kBxxtr88o

――――――――――――廊下


涼「ちゃんと手、洗ったか?」

拓海「あらった!」

涼「それならよかった」

涼(さて、このあとどうすっかな……)


亜里沙「あら、涼ちゃん」



涼「亜里沙せんせい」

亜里沙「ちょうどよかった。探してたのよ」

涼「あっ! やべえ、ごめん! 忘れてたよ」

亜里沙「いいのよ……あら? その子は?」

涼(うげ! こいつがいるの忘れてた!)

亜里沙「こんにちわ~。どうしたのかな~?」

拓海「ありさせんせい!」

涼「バカ! 余計なこと言うな!」

亜里沙「あら? 私の名前知ってるの?」

涼「え、えと、ほら! 亜里沙さん、よく子供番組出てるからさ!」

16: 2014/07/09(水) 23:03:18.42 ID:kBxxtr88o

亜里沙「あら、うれしい。見ててくれてたのね。お名前はなんていうのかな?」

拓海「たk」ムゴッ

涼(本名ばらしてどうすんだよ! 静かにしてろ!)

亜里沙「どうしたの? お名前は?」

涼「え、えと!! た、た、たく……」

亜里沙「たくちゃんって言うの? かわいいお名前ね」

涼「そ、そうそう! 『たく』ね。あははは」

亜里沙「涼ちゃんの親戚の子なの?」

涼「え? あ、うん! そうそう! ちょ、ちょっと頼まれちゃってさ! あはは」

亜里沙「たくちゃん、今時間あるかしら?」

涼「え? う、うん」

17: 2014/07/09(水) 23:04:02.11 ID:kBxxtr88o

亜里沙「じゃあ、ちょうどよかった。ありさせんせいとおうたの練習しましょう?」

拓海「おうた……」

涼(あー、こいつボイストレーニング苦手だもんな)


亜里沙「ウサコちゃんもいっしょだよー」

ウサコ『よろしくウサー』


拓海「うさぎ!」

亜里沙「一緒にやる?」

拓海「やる!」


涼(うさぎはいいのかよ……って、感性は子供だったな)

18: 2014/07/09(水) 23:04:42.63 ID:kBxxtr88o

――――――――――――レッスン室


涼(とりあえず、今は亜里沙せんせいに任せるか)

亜里沙「はーい。それじゃあ、せんせいがオルガンを弾きまーす」

亜里沙「おうた歌うのでついてきてくださいねー」

拓海「せんせー」

亜里沙「はい、なにかなー?」

拓海「あたし、うたにがて」

亜里沙「あらら、そうなの?……じゃあ、これを使ってね」

拓海「これ、かすたねっと?」

亜里沙「せんせいのお歌に合わせて叩いてみて?」

拓海「わかった」

19: 2014/07/09(水) 23:05:14.73 ID:kBxxtr88o

亜里沙「じゃあ、いきまーす」


♪ブンガ ブンガ


亜里沙「きーらーきーらー♪」

拓海「……」ぺち

亜里沙「ひーかーるー♪」

拓海「……」ぺち

亜里沙「おーそーらーのー♪」

拓海「…!」ぺち

亜里沙「ほーしーよー♪」

拓海「!!」ぺち

21: 2014/07/09(水) 23:05:44.87 ID:kBxxtr88o

拓海「おお……りょう! りょう!」

涼「なんだよ?」

拓海「これたのしい!」

涼「そうか。よかったな」

亜里沙「ふふふ」


涼(…そうだ。晶葉のところに行かなきゃならねーんだった)

22: 2014/07/09(水) 23:06:22.37 ID:kBxxtr88o

涼「亜里沙せんせい、悪いんだけどアタシ用があるんだ。ちょっとの間だけ、たくm……たくを見ててくれない?」

亜里沙「いいわよ~。たくちゃん、おりこうだもんねー」

涼「大人しくしてるんだぞ」

拓海「おー、いってこい」


涼(あいつ、こっち向かずにカスタネット叩いてやがる)

23: 2014/07/09(水) 23:07:11.17 ID:kBxxtr88o

――――――――――――研究室


涼「どうだ? 何かわかった?」

晶葉「おお、ちょうどよかった。今、検証結果をまとめたところだ」

涼「それで? どうなんだ?」

晶葉「まあ、そう急かすな。まずは、この薬はあくまで試薬だ。効果が永続するものではない。体内の細胞活動を一時的に……」

涼「待った。小難しいことはわかんねーけど、要はしばらくしたら元に戻るってことだな」

晶葉「いかにも」

涼「それはどれぐらいかかるんだ?」

晶葉「拓海が舐めていた時間や、脳波の示す数値からおそらく7~8時間ほどだろう」

涼「つまり、明日の朝には戻ってるってことか」

晶葉「そういうことになる」

24: 2014/07/09(水) 23:08:16.53 ID:kBxxtr88o

涼「それを聞いて安心したよ。でも、なんだってこんな物騒なもの作ったんだよ?」

晶葉「科学者として生命の神秘に挑む事は永遠のテーマだ」

涼「そんなもんなのか」

晶葉「今回、私が挑んだのはある謎を解明したいからだ」

涼「謎?」

晶葉「今回の結果で、幸か不幸か確実に若返ることが実証された。もし、これを君が舐めていたらどうなった?」

涼「そりゃ、アタシが5,6才になってただろうな」

晶葉「そうだ。では、菜々が拓海と同じ分量を舐めたらどうなる?」

涼「そりゃあ……4,5才くらいに……」

晶葉「果たして、本当にそう言い切れるか?」

涼「……」

晶葉「私は思うのだ。もし、これで菜々の姿がいつもと変わらければ……」

涼「おいやめろ」



晶葉「ウサミン星人は実在する重要な証となる!」



涼「」

25: 2014/07/09(水) 23:08:53.43 ID:kBxxtr88o

晶葉「おそらくウサミン星人は姿形こそ、我々と似通っているが内部の組織構造は異なるはず」

晶葉「我らの常識が通用しなければ、それは異星人と言っても過言ではなかろう」

涼「……」


涼(氏ぬほどくだらねえ……拓海もとことんツイてねえな)

26: 2014/07/09(水) 23:09:28.90 ID:kBxxtr88o

――――――――――――レッスン室


涼「おーっす。たくm……じゃねえや。たくー、戻ったぞ」

亜里沙「しーっ」

涼「ん?」

亜里沙「ほら、あそこ」


拓海「……すーっ……すーっ……」


涼「眠ってやがるのか。気楽なもんだな」

亜里沙「ウサコちゃんと寝てるのよ。カワイイわね」

涼「やれやれ……」

27: 2014/07/09(水) 23:10:06.69 ID:kBxxtr88o

――――――――――――30分後


拓海「……ん……うーん」

涼「よう。目ェ、覚めたか?」

拓海「おう……ふわぁ……」

涼「とりあえず、ここにアンタの荷物まとめといた」

拓海「うん」

涼「今は、この場を離れよう。時間も時間だし、ここに残ってると下手なボロがでそうだ」

拓海「だなー」

28: 2014/07/09(水) 23:10:56.10 ID:kBxxtr88o

――――――――――――駐輪場


涼「これからどうすんだ?」

拓海「かえる」

涼「どうやって?」

拓海「このばいくでにきまってんだろー」

涼「誰が?」

拓海「うるせー!……よいしょ……あれ?」

涼「……」

拓海「りょう! あたしをばいくにのせてくれー」

涼「無理に決まってんだろ。足も届いてないのに」

拓海「むー」

涼「それに途中で捕まるだろ」

拓海「めんきょしょうはもってる」

涼「それで警察がOKするわけねえだろ」

拓海「うー」

29: 2014/07/09(水) 23:11:44.36 ID:kBxxtr88o

???「よう、涼じゃん? 何やってんだ?」

涼「げっ! 夏樹!」

夏樹「何驚いてんだよ? あれ? その子は?」



涼「こ、これは……」

拓海「なつき!」

夏樹「お、ちびっ子? あたしの名前知ってんのか?」

拓海「だってあたしh…」ムゴ

涼(何度言ったらわかるんだよ! バラしてどうすんだ!?)

拓海「……」コクコク

夏樹「ん? どうした?」

涼「いや……こいつさ、親戚の子なんだけどちょっと預かっててさ……あはは」

夏樹「でも、あたしのこと知ってるみたいだぞ?」

涼「ほ、ほら! 前に一緒にイベントやった時、見てたんだよ!! あたしを見るついでにさ」

夏樹「へー、なんか嬉しいな。あんがとな」

拓海「おう!」

夏樹「でも、そのバイクからは降りたほうがいいぞ。すんげえ、怖い奴のだから」

拓海「だいじょうぶ! あたしのだから!」

夏樹「あはは。怖いもの知らずだな。大きくなったら乗ってみるといいさ」

30: 2014/07/09(水) 23:13:04.25 ID:kBxxtr88o

夏樹「あ、そうだ! 涼」

涼「な、なんだ?」

夏樹「今度のライブの打ち合わせ、明日やるからな」

涼「あ、そのことか。OK。わかった」

夏樹「あと、拓海にもそのこと伝えたいんだけどいねえんだよ」

涼「そ、そうなのか……もう帰ったんじゃね?」

夏樹「バイク置いてか?」

涼「うっ」

夏樹「とりあえず、今、携帯に連絡してみるか……」


涼(ヤバい! あいつの携帯は今、ここにあるんだった!)


涼「ま、待て!」

夏樹「ん?」

涼「あ、アタシ後で連絡するから、その時言っておくわ!」

夏樹「そっか。頼んどくわ。じゃあな、ちびっ子」

拓海「またなー」


涼(つ、疲れる……)

31: 2014/07/09(水) 23:13:52.38 ID:kBxxtr88o

涼「なんとか夏樹はしのいだか……」

拓海「……かえる」

涼「だから、どうやって?」

拓海「でんしゃで」

涼「チビが夕方のラッシュアワーで帰れるわけないじゃん。第一、いつもバイクだから電車で帰り方知らないだろ?」

拓海「じゃあ……とまる」

涼「どこに?」

拓海「ねっとかふぇ」

涼「子供を泊めるわけないって」

拓海「……うぅ……あるいてかえる!」

涼「余計無謀だろ」

32: 2014/07/09(水) 23:14:24.65 ID:kBxxtr88o

拓海「……ううぅ……いけるし!」グスッ

涼「……はぁ……泣くなよ」

拓海「ないてない!!」

涼「わかったわかった……うちに来なよ」

拓海「うち?」

涼「アタシん家。ここからそんなに遠くねえし、一人よりマシだろ?」

拓海「いいのか?!」

涼「そのかわり、騒いだりすんなよ?」

拓海「わかった!!」


涼(やれやれ……)

33: 2014/07/09(水) 23:15:07.42 ID:kBxxtr88o

――――――――――――繁華街


拓海「りょう、どこいくんだー?」

涼「買い物だよ。アンタの替えの下着も買わなきゃなんねーし。あとは晩飯だな」

拓海「かいものかー! めしはなににするんだ?」

涼「パスタでもするか」

拓海「ぱすた?」

涼「スパゲッティだよ。ナポリタンにすっかな」

拓海「おー。うまくつくれよ」

涼「このやろー、何で上からなんだよ?」

34: 2014/07/09(水) 23:15:42.88 ID:kBxxtr88o

――――――――――――デパート


涼「えっと、まずは下着、次にパジャマと……歯ブラシもいるな」

涼「まあ、今日一日だけだし、こんなもんだろ?」

涼「これでいいよな、たくm……あれ?」

涼「あいつどこに……って、いた」

35: 2014/07/09(水) 23:16:14.05 ID:kBxxtr88o

拓海「……」

涼「おい、何やってんだ? 勝手に離れるなよ」

拓海「りょう、あれ」

涼「ん? ウサギのぬいぐるみか?」

拓海「ほしい!」

涼「は? そんな無駄遣いしてらんないよ。いくぞ」

拓海「やだ! かってくれー!」

涼「お前なあ、どうせ今日一日だろ? 何にも使い道ねえじゃん?」

拓海「やだやだやだ! かえかえかえ!!」

涼「わがまま言うなって!」

拓海「かってかってかって! わーん!」

36: 2014/07/09(水) 23:16:48.24 ID:kBxxtr88o

主婦A「あら、子供が泣いてるじゃない」ヒソヒソ

主婦B「ヤンママってのかしら? 子供に厳しすぎない?」ヒソヒソ


涼(えええー!? 待ってくれよ……)


涼「わかったわかった! 買うから静かにしろって!」

拓海「ほんとか!?」

涼「そのかわり、この料金は後で請求するからな!」

拓海「あっ、そのしろいのじゃなくて、ピンクのウサギな!」

涼「話を聞けよ!」

37: 2014/07/09(水) 23:17:19.07 ID:kBxxtr88o

拓海「うさぎー♪ うさぎー♪」

涼「ちくしょー……余計な出費だった」

拓海「はやくいこうぜー」

涼「にゃろう……はしゃぎやがって」

38: 2014/07/09(水) 23:18:01.02 ID:kBxxtr88o

――――――――――――涼の部屋


涼「ついたぞ。ここだ」

拓海「おおおおお」


たたたたた


拓海「べっどだ! わーい」

涼「こら! まずは手を洗ってうがいだろ?」

拓海「おお、そうだった」

涼「ちゃんと洗うんだぞ?」

拓海「わかったー」

涼「やれやれ……さて、アタシも準備するか」

39: 2014/07/09(水) 23:18:34.48 ID:kBxxtr88o

拓海「りょう、なにやってんだ?」

涼「んー? 今はメシの準備だな。もうちょっと待ってな」

拓海「あたしもやるぞ」

涼「別にいいよ。包丁も使ってるし、お湯も沸かしてるからチビが来るには危ねえよ」

拓海「やだ! なにかてつだいさせろ!!」

涼「あー、わかったわかった。じゃあな、風呂掃除してくれるか?」

拓海「おう、まかせろ!」


涼(一応、役には立ちたいと思ってるんだな)

40: 2014/07/09(水) 23:19:46.70 ID:kBxxtr88o

――――――――――――10分後


拓海「りょうー! おわったぞー」

涼「おう、サンキュー……ってなんだそりゃ!!」

拓海「ん?」

涼「泡まみれじゃねーか! こっちきな、拭いてやるから」

拓海「へへー」

涼「ったく……何をやったらそんなに……ってまさか!?」


がらっ


涼「」

涼(風呂場が見渡す限り泡だらけだな……)


拓海「きれいになったぞ」

涼「……おう、あんがとな」ナデナデ

拓海「へへへっ」


涼(悪気はないんだよな…)

41: 2014/07/09(水) 23:20:17.18 ID:kBxxtr88o

拓海「つぎは? つぎだつぎ!」

涼「うーん……おっ! そうだ!」

拓海「?」

涼「拓海、お前には特別任務を与えよう」

拓海「とくべつ……にんむ?」

涼「そうだ。やれるか?」

拓海「まかせろ!」

42: 2014/07/09(水) 23:20:50.04 ID:kBxxtr88o

涼「お前にはな、今日あった出来事を絵に描く仕事をやろう」

拓海「えをかくのか?」

涼「おう、そこに五線譜があるだろ? その裏が白いからそこ描いてくれ」

拓海「たのしそうだな!」

涼「ペンは自由に使っていいからな」

拓海「おうっ!」


涼(この間に一気に終わらせるか)

43: 2014/07/09(水) 23:21:21.75 ID:kBxxtr88o

――――――――――――30分後


涼(ふう……あらかた終わったかな?)


涼「よーし、メシできたぞー」

拓海「……」

涼「おーい、拓海ー!」

拓海「……」


涼(一生懸命、絵を描いてるな……もうちょっと待ってやるか)

44: 2014/07/09(水) 23:22:17.25 ID:kBxxtr88o

――――――――――――10分後


拓海「できたー!」

涼「ん? できたのか。どれどれ……」

拓海「ほら!」

涼「これは?」

拓海「あたし!」

涼「これは?」

拓海「りょう!」

涼「……これはなんだ? ネコ?」

拓海「ちがう! うさぎ!」

涼「ああ、さっき買ったやつか。すると周りにいる小さいのは誰だ?」

拓海「えと……あきはと、ありさせんせいと……なつき!!」

涼「随分ちっちゃいな」

拓海「さきに、あたしとりょう、かいたらたりなくなった」

涼「ははは。そっか」

拓海「にんむできたか?」

涼「おう、よくやったぞ」ナデナデ

拓海「えへへ」

涼「じゃあ、メシにしようか」

拓海「めしー!」

45: 2014/07/09(水) 23:22:47.86 ID:kBxxtr88o

涼「じゃあ、食おうぜ」

拓海「うまそー」

涼「あ、ちょっと待て。拓海」

拓海「ん?」

涼「ソースが服についちまう。ほら、前掛けな」

拓海「こどもみたいだー」

涼「子供だろ」

46: 2014/07/09(水) 23:23:42.01 ID:kBxxtr88o

涼「じゃあ、手を合わせて」

拓海「いただきまーす」

涼「はい、どうぞ」

拓海「……」パク

涼「……どうだ?」

拓海「うまい!」

涼「そっか、そりゃよかった」

拓海「うまいうまい」

涼「あ、口にソースついてるぞ。ちょっと待ちな。取ってやるから」

拓海「んー」

涼「よし、取れた」

拓海「あんがとー」

涼「あいよ」

47: 2014/07/09(水) 23:24:19.10 ID:kBxxtr88o

拓海「くったー」

涼「うまかったか?」

拓海「うまかった。ごちそうさまでした」

涼「お、よく言えたな」

拓海「よいしょ……」カチャカチャ

涼「ん? 何やってんだ?」

拓海「はこぶ、しょっき」

涼「おー、意外にお利口なんだな」


涼(そういや、こいつ、こういうとこは礼儀正しかったよな)

48: 2014/07/09(水) 23:24:49.65 ID:kBxxtr88o

涼「よし、風呂の準備できたぞ」

拓海「おー。ふろーふろー」

涼「だー! ここで脱ぐなよ! ほらほら、脱衣場行くぞ」

拓海「りょうははいらないのかー?」

涼「アタシは後でいいや」

拓海「いっしょにはいろうぜー」グイグイ

涼「わかったわかった! 引っ張るなって!」

49: 2014/07/09(水) 23:25:38.16 ID:kBxxtr88o

――――――――――――浴場


拓海「ふろー!」

涼「ああ、待ちなって。体洗うから。ほら座って」

拓海「おう」

涼「しっかり洗わないとな」ゴシゴシ

拓海「くすぐったい」

涼「がまんしなって……お湯かけるぞ」


ざばー


拓海「きもちいい!」

涼「次は頭だな。目をつぶってなよ」

拓海「うん」


ざばー


拓海「ぺっぺっ……くちにはいった」

涼「あー、わりーわりー。ゆっくりかけるからな」

50: 2014/07/09(水) 23:26:20.42 ID:kBxxtr88o

かぽーん


涼「ふう……やっと湯船につかれる」

拓海「……」ジー

涼「ん? どうした?」

拓海「りょう、おっOいおおきい」

涼「嫌味かよ……まあ、今はな」

拓海「ほんとうは、あたしのほうがおおきいのにー」ペチペチ

涼「いたいいたい! 叩くなって!」

51: 2014/07/09(水) 23:26:59.82 ID:kBxxtr88o

――――――――――――リビング


拓海「わーい」

涼「こらっ! 裸で走るなっ!」ギュ

拓海「つかまった」

涼「つかまえた。ちゃんと拭かなきゃダメだろ?」

拓海「そうだなー」

涼「本当にわかってんのかよ……下着はひとりで着れるか?」

拓海「だいじょうぶ!」

涼「下着つけてパジャマに着替えたら、そこで待ってなよ。髪乾かしてやるから」

拓海「おう!」

52: 2014/07/09(水) 23:27:37.84 ID:kBxxtr88o


ぶおー


拓海「~♪」

涼「お前さ」

拓海「ん~?」

涼「意外に髪キレイだよな?」

拓海「そうかー?」

涼「こんないいもん持ってんだから、もっと大事にしてやんなよ」

拓海「りょうのかみも、さらさらだぞ」

涼「ははっ。あんがとな」

53: 2014/07/09(水) 23:28:22.50 ID:kBxxtr88o

拓海「ふわぁ……」

涼「眠くなったか?」

拓海「うん……」

涼「寝る前には歯を磨かなきゃな。ほら、歯ブラシ」

拓海「うん……」

涼「一人で大丈夫か?」

拓海「……だいじょうぶ……ふわぁ」


涼(半分寝てるじゃねーか)

54: 2014/07/09(水) 23:29:34.81 ID:kBxxtr88o


涼「ちゃんと磨いたか?」

拓海「みがいたー……」

涼「見せてみな」

拓海「いー」

涼「よし、合格」

拓海「うさぎはー?」

涼「ほら、ここ。抱っこして寝るのか?」

拓海「うん。りょうはまだねないの?」

涼「アタシは明日の準備しとかないとな。ライブに必要な機材とか、セットリストの確認とか」

拓海「そっか……」

涼「アンタもしなきゃいけないんだけど……無理だもんな」

拓海「ねるー」

涼「はいはい。おやすみ」

拓海「おやすみー」

55: 2014/07/09(水) 23:30:08.79 ID:kBxxtr88o

――――――――――――一時間後


涼「ふうぅ……こんなもんかな?」

拓海「りょう……」

涼「ん? 起きたのか? うるさかったか?」

拓海「ちがう……といれ」

涼「一人でいけるか?」

拓海「……」

涼「わかったよ。ほら、行こうぜ」

拓海「うん」

56: 2014/07/09(水) 23:30:51.64 ID:kBxxtr88o


じゃー


拓海「ふわぁ……」

涼「どうだ? 眠れそうか?」

拓海「りょうはねないのか?」

涼「うーん、ホラー映画見ようかなと思ってるけど」

拓海「……」

涼「……わかったよ。寝るよ」

拓海「うん」

57: 2014/07/09(水) 23:31:23.55 ID:kBxxtr88o

涼「ほら、これでいいか?」

拓海「もうちょい、こっち」

涼「はいはい」

拓海「て、にぎってて」

涼「わかったよ」

拓海「…………すぅ……すぅ」

涼「寝たのか……」



涼(こうやって寝顔見てるぶんにはかわいいんだけどな……)

涼(今日はいろいろあって疲れた……)

涼(アタシも寝るかな……おやすみ)

58: 2014/07/09(水) 23:32:09.37 ID:kBxxtr88o

――――――――――――翌朝


涼「うーん……むにゃ……」


ふにょん


涼「ん……なんだ……この感触?」

拓海「……ぐーっ……ぐーっ」

涼「おっ! おおっ!! 拓海! 起きろ!!」

拓海「んー……何だよ?……もう少し寝かせろ……ぐぅ」

涼「寝てる場合じゃねえよ! お前、元に戻ってるぞ!!」

拓海「……!!」ガバッ

59: 2014/07/09(水) 23:33:08.12 ID:kBxxtr88o

拓海「おおおおっ!! もどった!! ん? ここどこだ?」

涼「アタシん家だよ」

拓海「おお、そうか。あれ? バイクは?」

涼「事務所においてるぞ」

拓海「マジか! 取りに行ってくる!!」

涼「あっ! おい、バカ!!」


だだだだだ

がちゃん



<ギャー!

<ワー!



だだだだだだ

がちゃん


拓海「なんだよ! この格好!! なんでこんなピチピチのパジャマなんだよ!?」

涼「すぐ気づけよ……」

60: 2014/07/09(水) 23:33:40.51 ID:kBxxtr88o

――――――――――――事務所


涼「すると、昨日のことは覚えてないのか?」

拓海「んー……晶葉のとこで飴食って、そこからよく覚えてねえ」

涼「呆れた奴だな。あの後すげえ大変だったんだぞ?」

拓海「マジか。そりゃ世話かけたな」

涼「まあ、別にいいや。アタシも新鮮だったし」

拓海「なんのことだ?」

涼「なんでもないよ」

61: 2014/07/09(水) 23:34:22.87 ID:kBxxtr88o

拓海「ふーん……」モグモグ

涼「あれ? アンタ何食ってんの?」

拓海「ん? そこに団子あったんでな」



がしゃん



あやめ「拓海殿……その団子……」



拓海「ん? これがどうした?」

あやめ「それは代々、浜口家に伝わる若返りの秘薬で……」




涼「いい加減にしろッ!!」





おわり

62: 2014/07/09(水) 23:36:53.49 ID:kBxxtr88o
※これでおわりです
 面倒見の良い涼さんだから、きっと育児もうまいのではと思い書きました
 ロりたくみんもいいものです
 もちろん晶葉ちゃんはそんな発明しないと思います

 ここまで読んでいただいてありがとうございました

63: 2014/07/09(水) 23:46:01.17 ID:zoS0M3v10

世話上手涼さんと口リの組み合わせは最高ですな!!

引用元: 松永涼「ようじょたくみん」