結衣「…様だ」

京子「えっ？」

結衣「…何様のつもりだ」

京子「ちょ、結衣……？」

結衣「何様のつもりなんだお前は!!｣ｸﾞｲｯ

京子「痛っ…ゆ、結衣…！」

結衣「『寂しがってる』だと!?お前に私の何がわかるんだっ!!｣ｷﾞﾘｷﾞﾘ

京子「…痛いよ…結衣…っ…」

結衣「知ったような口、きくなぁっ!!｣ﾊﾞｼｯ

京子「…っ…ぐっ…!!」

結衣「…ﾊｧ…ﾊｧ……｣ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

結衣「……ﾊｧ｣ﾌﾗﾌﾗ

京子「あの、結衣…ごめんな…さ」

結衣「……｣ﾊﾞﾀﾝ

京子「…あ、寝るの？」

結衣「……｣ｽﾔｽﾔ

京子(……結衣の、言うとおりかもしれない)
京子(私は結衣が一人暮らしで寂しいかもと思ってたけど、結衣からしたら……)
京子(結衣……ごめんなさい…)

京子「ごめん、なさい……｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

【次の日の朝】

京子「……｣ｶﾁｬｶﾁｬ

京子(結衣が起きたら、今までの事、謝ろう…)
京子(うるさくして、迷惑かけて、ごめんって…)
京子(私が悪いんだから…全部私が悪いんだから……)

京子「……｣

結衣「…ん……ふぁ……」

京子「!!｣ｸﾙｯ
京子「ゆ、結衣、おはよう…！」

結衣「…あ、京子、おはよう」

京子「あの、結衣、今まで、ごめ……
結衣「昨日はごめん!!京子っ!!」

京子「…えっ!?」

結衣「私、どうかしてたんだ、京子にあんな酷い事……｣ﾌﾙﾌﾙ

京子「…ゆ…い…？｣ﾎﾟｶｰﾝ

結衣「謝って許してもらえるとは思ってない…でも…」

京子「……なんで？」

結衣「…えっ？」

京子「わ、私が悪いのに…なんで結衣が、謝るの…？」

結衣「違う！悪いのは私だ！京子は私の心配してくれたのに……｣ｸﾞｽｯ

京子「結衣…」

結衣「私は…そんな京子に…手を上げて…｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

京子「……」

結衣「私は…最低だ…｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

京子「……わ、私は…」

結衣「ごめん、ごめんね…京子…｣ｶﾞｼｯ

京子「結、衣……」
京子(……そうか)

結衣「京子ぉ、嫌いにならないでくれ……」

京子(結衣は、苦しかったんだ…)

結衣「京子がいないと、私…わたし…」

京子(苦しくて、寂しくて、それでどうしたらいいか分からなかったんだ…)
京子(本当は優しいんだ…優しい結衣なんだ…）

京子「結衣、大丈夫だよ……｣ｷﾞｭｯ
京子(結衣は、私がいないとダメなんだ……)

結衣「京子ぉ……ありがとう、ありがとう……｣ﾎﾞﾛﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

京子「……｣ｸﾞｩｰ

結衣「……」

京子「……あ、あは…」

結衣「…ぷっ」

京子「お、お腹すいたっ！」

結衣「朝だもんな。待ってて、今作るから」

京子「え、いいのっ？」

結衣「当たり前だろ。ほら、京子は座っててくれ」

京子「うん…ありがとう…」
京子(ホラ…)

結衣「……えーとご飯は昨日の残りがあるから……｣ｽﾀｽﾀ

京子(やっぱり結衣は優しいんだよ)

結衣「あと、味噌汁と…」

京子(昨日の夜は、どうかしてたんだ…今日の結衣が、本当の結衣なんだよ…)

結衣「豆腐が、確か…」

京子(結衣は、優しくて、寂しがり屋だから…)

----
京子「放課後だーっ！部活行こうぜー結衣ー！」

結衣「あぁ」

綾乃「あ、歳納京子っ！あなたまた、クラスのプリント出してないでしょうっ」

京子「げっ、そういえばそうだったかもー」

綾乃「かもじゃなくて、そうなのっ！あなただけなんだから、早く出しなさい」

京子「あー、それが今日は持ってなくてさー、また明日ねーっ｣ﾀｯ

綾乃「あーっ！ちょっと、待ちなさいっ！｣ｶﾞｼｯ

京子「…痛…っ！」

綾乃「！ え、あ、ご、ごめん…そんなに、強かった…？」

京子「い、いやー、そーでも…」

綾乃「そ、そう…？…ってあなた、腕青くなってるじゃない！ぶつけたりでもしたの？」

京子「!! えーと…まぁ……」

結衣「……」

綾乃「これ、湿布か何か貼っておいたほうがいいんじゃないの？」

京子「へ、へーきへーき！そんな大げさなもんじゃないよ！」

綾乃「でもさっき、腕掴まれて痛がってたじゃない…」

京子「…うぐ…」

綾乃「保健室で、湿布もらって来たほうが……」

京子「だ、大丈夫だよっ！本当にっ！」

京子「と、とにかくプリントは明日出すからっ！｣ﾀﾞｯ

綾乃「あ、ちょっと…！ 明日忘れたら、本当に罰金バッキンガムよっ！」
綾乃「全く……」

結衣「京子がごめんな、綾乃｣ｽｯ

綾乃「えっ？い、いや、別に、船見さんが謝る事……」

結衣「私からも言っとくよ。プリント忘れるなって」

綾乃「そう？じゃあ、お願いね」

【娯楽部部室】
ちなつ「あ、結衣先輩、こんにちはーっ」
あかり「こんにちはっ」

結衣「うん。こんにちは。…あれ？京子はまだ来てないのか？」

ちなつ「はい。一緒じゃなかったんですか？」

結衣「あぁ。京子だけ少し早く教室を出て…」

京子「おーっす、みんなお待たせー！｣ｶﾞﾗｯ

ちなつ「あ、来た。どこ行ってたんですか京子先輩」

京子「やーごめんごめん。主役が来たところで、今日も娯楽部のはじまりだーっ」

あかり「京子ちゃんが主役なの……ん？」
あかり「京子ちゃん、腕どうかしたの？湿布してるけど…」

京子「え？えー、まぁ、ちょっとぶつけてさー」

結衣「……」

あかり「えーっ痛そう…あ、それで保健室行って、遅くなったの？」

京子「え、うん。まぁ、そう…」

ちなつ「体育ですか？気をつけて下さいよー」

京子「ちなつちゃん、心配してくれてるの？ありがとーっ｣ﾀﾞｷｯ

ちなつ「わ、ちょっと京子先輩！」

結衣「……」

---
京子「というわけで、罰ゲームはちなつちゃんに決定～！明日からミラクるんのコスプレで部活する事！」

ちなつ「絶対イヤです！ていうか罰ゲームとか急に言わないで下さいっ！」

ちなつ「えぇ～新作あるのになー」

あかり「あはは、京子ちゃん、また作ったんだ……」
あかり「あ、もうこんな時間だ」

京子「本当だー。キリのいい所で、帰ろうか」

あかり「そうだ！駅前に新しいアイス屋さんできたの！今日みんなで行って見ない？」

京子「おー、そうし…」

結衣「…あかりごめん、私と京子は今日用事があるんだ。また、今度でいいかな？」

あかり「え、そうなの？じゃあ、また今度」

結衣「うん。ごめんな」

あかり「ううん。今度行こうね！」

【結衣の家】
京子「……ただいまー」
結衣「ただいま」

京子「いやー今日は惜しかったなー。もう少しでちなつちゃんにコスプレを……」

結衣「……京子」

京子「へっ？」

結衣「……ごめんな」

京子「な、なにがっ？」

結衣「アイス。あかりが教えてくれたアイス屋さん、行けなくてさ」

京子「いやそんな、別に」

結衣「行きたかったんだろ？」

京子「う、うーんまぁね？でも結衣が別になら、私も…」

結衣「そうか！｣ﾆｺｯ

結衣「そうだ。今日彩乃が言ってたプリント、忘れないうちに記入してカバンに入れちゃえよ」

京子「そうだった！……あ、でもアレうちにあるかも…」

結衣「…この間うちに来たときに置いて行ったぞ…ほら｣ﾋﾟﾗ

京子「あ、ホントだ……サンキュー」

結衣「全く…彩乃に迷惑かけるなよー？」

京子「あはは……痛て…」

結衣「…ん？どうかしたのか？」

京子「い、いや……」

結衣「湿布のところ…字を書くだけで痛むのか？」

京子「い、いや、そんなこと…」

結衣「今、痛そうにしてたじゃないか」

京子「違うよ！今のはたまたま……」

結衣「……そうか」

結衣「京子、痛くないのにそんなのつけてたのか？」

京子「え、えぇっ？」

結衣「みんなに心配されようと思って……私に叩かれたことを知らせようとして……」

京子「ち、違うよ！」

結衣「うるさいっ！｣ﾊﾞﾝｯ

京子「痛っ……」

結衣「綾乃と話してる時も、腕の話になったらこっちをチラチラ見て」
結衣「気づいて欲しかったんだろ？綾乃に…！私に酷い事されてるって……！」

京子「ご、誤解だよ結衣…！」

結衣「じゃあなんでこっち見てたんだっ！｣ﾊﾞｼｯ

京子「…っ…！｣ﾌﾗｯ

結衣「良かったな。ちなつちゃんに心配してもらえて…湿布のおかげだな…」

京子「ご、ごめん…結衣…湿布、とるから…外すから……｣ﾌﾗﾌﾗ

京子「…ほら…もう、貼らないから…｣ﾍﾟﾘﾘ

結衣「……それだけか…？」

京子「…え……」

結衣「私に嫌な思いさせて……迷惑かけて…」
結衣「それでお前は、湿布一つはがしておしまいなのかっ!?｣ｸﾞｲｯ

京子「…うっ……つぅ…っ…」

結衣「馬鹿にしてるのか京子っ！」

京子「ち、がう…よ……」

結衣「私を馬鹿にしてるのか京子！」

京子「そんな、事…ない……｣ﾌﾗﾌﾗ

結衣「……｣ｷﾞｼｷﾞｼ

京子「…っ…痛…」

結衣「……謝れよ」

京子「…え？」

結衣「私に、謝れ京子」

京子「……｣ﾌﾗｯ

京子「ごめん、なさい……｣ﾍﾟﾀﾝ

結衣「……」

京子「結衣に、イヤな想いさせて、ごめんなさい…」

結衣「それで？」

京子「……迷惑かけて、ごめんなさい……」

結衣「…それで？」

京子「…もう、しません…」

結衣「それで？」

京子「…湿布も、貼りません…綾乃にも、誰にも、何も言いません」

結衣「……京子…」

京子「ごめん、なさい…」

結衣「私は何も、お前をいじめたいわけじゃないんだよ、京子…」

京子「……」

結衣「ただ、私はお前の事が心配で、見てられなくて、お前が間違った事をしないようにって」
結衣「そんなふうに思ってるんだ」

京子「…うん」

結衣「分かってくれるか？」

京子「……うん…！」

結衣「そうか……｣ﾊﾟｱｯ
結衣「よかった…良かった……｣ｷﾞｭｯ

京子(やっぱり、そうだ)
京子(結衣が、ただ私に酷い事をするわけないじゃないか)

結衣「良かった…京子、分かってくれてありがとう……」

京子(私がおかしい事をしないように、悪い事をしないように……)

結衣「痛かったよな？ごめんな？」

京子(結衣は、私の事を見てくれてるんだ)

結衣「湿布は貼れないけど、薬はつけてやれるぞ」

京子(優しい結衣…)

結衣「……｣ﾇﾘﾇﾘ

京子「……」

結衣「……｣ﾇﾘﾇﾘ

京子「……｣ﾋﾞｸ

結衣「!!痛かったか!?京子！」

京子「……えへへ、違うよ。くすぐったかっただけ」

結衣「そうか…痛かったらすぐ言えよ、京子」

京子「うん。ありがと」

結衣「……｣ﾇﾘﾇﾘ

京子(こんなに一生懸命に、私に薬を塗ってくれる結衣……）
京子(優しい結衣……)

京子「結衣の手、あったかいね」

結衣「！そ、そうかな…」

京子「うん。なんだか安心する」

結衣「…そうか｣ｴﾍﾍ

【一ヶ月後】
京子(あれからずっと、結衣は私の事叩いたり、土下座させたりしてる…)

京子(でもその度に、謝るんだ。本当に辛そうに。すまなそうに。最近は一時間くらい泣いて謝ってる)

京子(結衣も、つらいんだ、私のせいで……)
京子(私が悪いんだ…)

京子(だから、こんなの全然辛くない)

結衣「京子……お前が悪いんだぞ…お前が…｣ﾊｧﾊｧ

京子(うん、知ってるよ、結衣…)

結衣「なんとか言えっ!!｣ｸﾞｲｲｯ

京子「ごめん、ね…結衣…」

結衣「…っ！｣ﾊﾞｼｯ

京子(最近は、包帯とか湿布も、許してくれるようになった)
、
京子（目立たないように、服の下になるようなところだけだけど、元々結衣は顔や手足はあんまり叩かない）

京子（目立っちゃったら私も困るから、結衣の優しさだ）

京子(体育ができないのは、少しだけ辛かった)

京子(私達の事は、誰にも気づかれていない)
京子(……別に、悪い事をしてるわけじゃないけど)

結衣「京子、部活行こう」

京子「うん。ちょっと待ってー」

京子「あ、しまった！私職員室に提出するものあったんだ」
京子「結衣、先行っててー」

結衣「またか……｣ﾌｩ
結衣「先行ってるからなー」

京子「うーん」

綾乃「……」

【校舎の裏】

綾乃「……来たわね、歳納京子」

京子「……おぉ！誰かと思ったら綾乃っ！」
京子「『放課後校舎裏に来て下さい』なんて古風な果たし状が靴箱に入ってるんだもん」
京子「誰かと思ったら、そっか綾乃だったかー」

綾乃「そこはフツー果たし状じゃなくてラブレターでしょっ……ってそんなんじゃなくて！」

京子「えー？何何？私部活あるから話しあるなら早くぅ」

綾乃「……最近、あなた体育休んでるでしょ？」

京子「……っ」

綾乃「その事について、ちょっと」

京子「……」

綾乃「怪我、してるの？」

京子「まーね。日常生活に支障はないけどさ。運動はちょっとねー」

綾乃「……支障なく、ないじゃない」

京子「……？」

綾乃「字を書く時、震える。落としたものを拾う時、顔をしかめる。休み時間にも出歩かず席で座ってる」

京子「……っ！」

綾乃「服の下、湿布と包帯だらけじゃない。気づいてないと、思ってたの？」

京子「……」

綾乃「クラスで私と話す時、妙に周りを気にするしね」

京子「ゆ、結衣は関係ないっ！」

綾乃「……船見さんの名前なんて出してないわよ」

京子「！」

綾乃「まぁ、何かあるとは思ってたけど。あなたが特に辛そうにしてる日、船見さんの手に包帯巻いてあるんだもの」

綾乃「さすがに変と思うわよ」

京子「……へー、よく見てくれてるんだね。照れるじゃん」

綾乃「…ふざけてる場合じゃないでしょう！？」
綾乃「あなた達、一体何して…」

京子「私達がなにしてても綾乃に関係無いじゃーん。心配しなくても不純なことはしてませーん」

綾乃「ふ、不純って……」

京子「よし！話それだけなら、私、娯楽部あるからまたねｰ｣ｽﾀｽﾀ

綾乃「……あなたは、それでいいの？」

京子「……｣ﾋﾟﾀ

綾乃「あなた達の間に何があったのか正確なところは分からないけど、大体の想像はつくわ…」

綾乃「…相手の理不尽に付き合って、自分の身を壊して……」
綾乃「あなたはそれで…」

京子「違うよ、綾乃｣ﾆｺｯ
京子「私が結衣に付き合ってるんじゃなくて、結衣が私に付き合ってくれてるんだ」

京子「私が悪い子にならないよう、結衣が見ててくれてるんだよ」

綾乃「……っ!!」

綾乃「あなた、それ本気で言ってるの……？｣ﾌﾙﾌﾙ

京子「そうだよ。結衣は私のためを思ってる。結衣は優しいんだ」

綾乃「……」

京子「ほら、顔とか頭には怪我無いでしょ？私が外に出ても困らないようにって、そこだけは叩かないんだ」

綾乃「……てよ」

京子「そりゃー叩かれたら痛いけどさ～、普段は優しいし、あっちが本当の結衣なんだよ」
京子「私が悪い事をした時だけ、私のためにわざと厳しい結衣になるんだ」

綾乃「いい加減にしてよ!!」

京子「……！｣ﾋﾞｸｯ

綾乃「あなたのためにって……そんなわけ無いでしょう!?｣ﾌﾙﾌﾙ

綾乃「生活できないくらいボロボロになって、あなたのためになるはずがないじゃない！｣ﾎﾟﾛｯ

京子「……綾乃…」

綾乃「もう、あなたが傷ついていくところを見たくない……歳納京子、お願いだから…｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

京子「……綾乃は、優しいんだね」

京子「うん。綾乃の言う通りかもね。私は結衣の理不尽に付き合ってるのかもね」

綾乃「……」

京子「結衣が私の心配してるなんて嘘で、本当は私に酷い事してる正当化に言ってるのかもね」

京子「『かも』っていうか、多分そうなんだと思うよ。いくらなんでも、やりすぎじゃん」

綾乃「……歳納、京子…？」

京子「心配してくれてありがとね、綾乃」

綾乃「……」

京子「怪我、頑張って治すよ」

京子「……『相手の理不尽に付き合ってるだけ』かぁ…言われちゃったな｣ﾍﾍｯ

綾乃(歳納京子…)

京子「でもさー……」
京子「それで、何か悪いの？」

綾乃「……!!｣ｿﾞｸｯ

京子「結衣が自分のために私を殴ってたとして、それが？」

綾乃「歳納京子、な、に…を……｣ﾌﾙﾌﾙ

京子「結衣は優しくて寂しがりやだからさ、疲れちゃうんだよ｣ﾆｺﾆｺ
京子「中学生なのに一人暮らしだしさ。辛い思いしてるんだ」

京子「それを私が受け止めてあげる。私にしかできないんだ」

綾乃「……｣ﾌﾙﾌﾙ

京子「結衣は、私がいないとダメなんだよ｣ﾆｺｯ

綾乃「……!!｣ｿﾞﾜｱｯ

綾乃「…歳納京子、あなたはきっと……」

京子「おかしいのかもね。でもそれでもいいよ。結衣が辛い思いしてるんだもん。私だって一緒に苦しむよ」

綾乃「違う……あなたは……あなたは…｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

京子「今度こそおしまい！私部活行くよー｣ﾋﾗﾋﾗ

綾乃「待って…歳納京子……｣ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

京子「あ、この話人にしちゃダメだからね。私、学校来られなくなっちゃうよ。二重の意味で」
京子「なんちゃってー。じゃーねｰ｣ｽﾀｽﾀ

【その日の夜 結衣の家】

結衣「…京子、今日部活くるの遅かったな」

京子「…！ うん。職員室行くって言ったじゃん」

結衣「…どこ行ってたんだ？」

京子「だから…」

結衣「京子、今日の放課後、どこ行ってたんだ？怒らないから、教えてくれよ｣ﾆｺﾆｺ

京子「……」

結衣「絶対怒らないってー！本当の事言ってくれよ！ バカだな、そんなに私って怖いのか？｣ﾆｺﾆｺ

京子「……綾乃と、会ってた」

結衣「そうか｣ﾆｺﾆｺ

----

京子「……怒らないって…言った…の、に…｣ｾﾞｪｾﾞｪ

結衣「綾乃と会った事には、怒ってない｣ｸﾞｲｯ
結衣「でも、それを隠そうとした事と、嘘ついた事に怒ってるんだ｣ﾊﾞｼｯ

京子「ん……そっか…っ、ごめん…痛…っ！」

結衣「なぁ、なんで分かってくれないんだ？京子、私の言ってる事、間違ってるか？｣ﾊﾞﾁﾝ

京子「んー……んっ…間違って、ない｣

結衣「私は京子に正しくなって欲しいんだ。それだけなんだよ｣ｶﾞｯ

京子「う、ん…っ…そう、だよね……｣ﾊｧﾊｧ

京子「結衣、嘘ついて、ごめんなさい」

やっぱり、綾乃の言ってた事は正しい

京子「綾乃と会ったこと隠そうとして、ごめんなさい」

結衣の怒りは理不尽だし、それで私が叩かれるのは理不尽だ

京子「結衣に心配かけて、ごめんなさい」

でもまぁ、私はそれでもいいと思ってる

京子「結衣に迷惑かけて、ごめんなさい」

私は結衣が大好きで、結衣と私は友達だ

京子「結衣の言う事聞かなくて、ごめんなさい」

大好きな友達の無茶には、付き合ってあげたくなるものじゃないか

京子「ね、結衣……」

結衣「ん？」

京子「いつも、ありがとう」

結衣「バカだな、気にするなよ」
おしまい

綾乃「あの、船見…さん…」

結衣「あぁ、綾乃か…何？」

綾乃「あの…歳納京子のことで話が…」

結衣「…」ﾋﾟｸｯ

結衣「で、何？」

綾乃「あの…船見さん…歳納京子と何かあった？」

結衣「…無いよ」

綾乃「う…嘘っ！だってっ…怪我っ…あんなの…」

結衣「…それが私のせいだと？」

綾乃「…歳納京子は…あなたの…理不尽に付き合ってるって…」

結衣「京子が言ったの？」ﾆｺｯ

綾乃「…っ！」ｿﾞｸｯ

結衣「あははっ…ダメだなぁ…京子は…全く…人のせいにして…」ﾎﾞｿｯ

結衣「…ホントにダメな奴だなぁ…じゃ、綾乃…もういいだろ？私、用事できたから帰るよ」

綾乃「…ぁ…待っ…て…」

―――――

ﾄﾞﾝｯ

京子「あぅっ…！」

結衣「ねぇ、綾乃に話しただろ」ｹﾞｼｯ

京子「うぁっ…うっ…」

結衣「なぁ、京子…私は悲しいよ…何？『理不尽に付き合ってる』ってさ…なぁ？」ｷﾞﾘｯ

京子「いたっ！痛いっ！うぅ…ごめ、ごめんなさっ…」

結衣「やっぱり誰かに気付いて欲しかったんだろ？なぁ、京子？」

京子「ちが…違うよ…私は…」

結衣「うるさいっ！」ﾊﾞｼｯ

京子「あぅっ…！」ﾄﾞｻｯ

その日、初めて

私は、結衣に

顔を殴られました

結衣「なぁ京子…」ｸﾞｲｯ

京子「ぅ…ぁ…」

結衣「ちゃんとごめんなさいしような？人のせいにしてごめんなさいってさ…」

京子「…ごめ…い…ごめん…なさい…殴られるの…結衣のせいにして…ごめんなさい…」

結衣「悪いのは誰だっけ？なんで京子は殴られるの？ほら、言ってみてよ…」

京子「…わた…私が悪いから…私が…悪い子…だから…」

結衣「…ん、分かればいいんだ…分かれば…」ｷﾞｭｰｯ

京子「…ぁ…」

結衣「…ごめんな？ホントは私だってこんなことしたくないんだ…分かってくれ…」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

京子「…う…ん…」ｷﾞｭｯ

―――――
京子「綾乃…ちょっと」

綾乃「と、歳納京子…っ！あなたっ…その顔っ！」

京子「あはは…転んじゃってさぁ…痣になっちった…」

綾乃「う…嘘よ…あなた…また…船見さんに…」

京子「…綾乃」

綾乃「わ、私にできることがあったら言って…」

京子「綾乃っ！」

綾乃「ひっ…！」ﾋﾞｸｯ
京子「もういいから放っておいてよ」

綾乃「えっ…」

京子「あはは…顔は…やっぱ嫌だからさ…」ﾆｺｯ

綾乃「っ！」

京子「用事はそれだけ…」ｽｯ

綾乃(私の…せいだ…私の…私のっ…せいで…殴られ…)

綾乃「…ふぇ…ごめ…ん…っく…ひっく…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

―――――

あかり「ど、どうしたの京子ちゃん！？か、顔にアザが…」

京子「たはは…ちょっと転んじゃって」

ちなつ「ほんっとドジですね、京子先輩は」ｼﾞﾄｯ

京子「冷たいぞー？ちなつちゃーん」ｶﾞﾊﾞｯ

ちなつ「や、やめてくださいっ！」

結衣「…」ﾑｯ

結衣「やめなよ、ちなつちゃんが困ってるだろ？」

京子「っ！」ﾋﾞｸｯ

京子「う…うん…ごめん…」ｻｯ

ちなつ(今日は素直だなぁ…)

結衣「京子…ちょっと…」

京子「…うん」ｽｯ

ﾊﾟﾀﾝ

―――――
ﾄﾞﾝｯ

京子「うっ…！」

結衣「何さっきの？」

京子「えっ…」

結衣「あんなに身体くっつけたらバレちゃうじゃないか」

京子「ぁ…」

結衣「こことか」ｸﾞｯ

京子「いっ…！」ｽﾞｷｯ

結衣「こことかの痣がさぁ」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

京子「ぐっ…ぅっ…」ｼﾞﾜｯ

結衣「痛い？」

京子「…っ」ｺｸｺｸ

結衣「…ごめんな…？」ﾅﾃﾞ

やっぱり、結衣は優しい…
私に対して罪悪感があるんだ
私は結衣を…困らせちゃダメなんだ…

京子「ゆいごめんなさいゆいごめんなさいゆいごめんなさいゆいごめんなさいゆいごめんなさいゆいごめんなさい」

なんてドメスティックなスレだ