1: 2009/08/22(土) 22:27:44.43 ID:ioBUoLyFO
2: 2009/08/22(土) 22:29:17.71 ID:f60OKCN3O
唯「追跡者!」

3: 2009/08/22(土) 22:30:14.84 ID:ioBUoLyFO
最終ファイル
追想

白い雪が辺り一面を覆った白銀の世界に、私は足を踏み入れていた。
灰色の長いロングコートの襟を立て、首元の寒さを誤魔化す。丈も揃えてないジーンズは雪に冷え、靴元辺りを湿らす。 茶色いショートブーツが雪の上を歩く度にギュッ、ギュッと柔らかい雪を固形化させていく。

真っ白な世界だった

私のコートの下に着ているYシャツの様に

前髪を黄色カチューシャで上げている為かおでこが寒い
下ろそうとも思ったが、頭に積もった雪が茶色い髪を濡らしている為このまま下ろせばおでこに張り付くだろう。それは御免だ
けいおん! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

6: 2009/08/22(土) 22:31:57.06 ID:ioBUoLyFO
そのまま歩くと、白い世界の中に一つだけポツンと異色が混じる。
何かの工場だろうか、今は使われている様子はなく、この雪の様に冷たい、金属の塊に成り下がっていた。

誰かがいる─────
その工場の前に一人の男がいた。

でも私はそれを知っている。私はその為にここへ来たのだから

「待たせた……かな」

「待つのは男の義務さ。一年前の約束を憶えていてくれるとは光栄だ」

「約束は破ったことないからな、私は。じゃあ寒いし始めようか」

「あぁ、吹雪になる前にな」

8: 2009/08/22(土) 22:34:41.89 ID:ioBUoLyFO
「やっぱりその前に一つだけ聞かせてくれないか?……あんたは、これで良かったのか?」

「愚問だな。途中までは私の理想通りだったさ。君達が現れるまでね」

「今更何を……そう差し向けたのはあんた自身じゃないか」

「ふふ…そうだったな。私は完璧主義者でね、一度君達を見た時からこの運命は逃れられなかったのかもしれない。」

「そうかい…。出来ればあんたとは違う形で出会って見たかったよ」

「ふふ…私もだ。だがこれが現実である以上受け止めなければならない」

「あぁ…そうだな」

二人はお互いに構えを取る

9: 2009/08/22(土) 22:37:05.07 ID:ioBUoLyFO
「おや?得意のマグナムは使わないのか?」

「ふん…あんたにそんなもん効かないことなんて、一年前に痛いほどわからされてるさ」

私は腰からナイフを取り出す。レオンを伝い、梓を伝ったナイフを

「安心したまえ。もうあんな猪口才な真似はしない。私は私の実力のみで君を捩じ伏せなければ気がすまないのだよ」

「そうかい…とことん変わってるねあんたは。でも私もそう思ってたところだよ。だから、これでいい」

ナイフを右手に持ち、切っ先を男に向ける

それが、一瞬だけの攻防となる、戦いの合図だった。

13: 2009/08/22(土) 22:39:41.30 ID:ioBUoLyFO
灰色のコートが一気に舞う。男との距離を詰めるため雪の上を滑走する。

速い─────

それは雪の上とは思えない速度だった

残り10Mが瞬きの間に5M、2Mと近づく。もうお互いの一撃が届き会う…その寸前

男はそれを迎撃するために拳をふるった。

矢の様な右拳が彼女に突き刺さる────

筈だった、

彼の予測の速度では当たる計算、それを彼女は上回って来たのだ。

不意に彼の顎が跳ね上がる

何をもらった、、、

だがそれを食い縛り体勢を崩しながらも男は彼女を蹴りつける

右足の中段蹴り、踵が彼女の腹にめり込む

14: 2009/08/22(土) 22:43:45.92 ID:ioBUoLyFO
「かはっ……」

一瞬息が出来なくなり動きが止まる。まさかあそこから攻撃を繰り出して来るとは思ってもみなかった油断故の被弾。

男は畳み掛ける。
にくの字に折れている彼女を上から降り下ろす様に拳で顔面を叩きつける。

その衝撃で彼女はそのまま雪の上に四つん這いになりながら倒れる、が、更に男はそれを追撃

その頭を一気に顎から蹴り上げると、彼女は逆に空を見上げる様に倒れこんだ

「ぐ……」

男は間を置かず倒れ込んでいる彼女の顔面に向かって拳を叩き込む

17: 2009/08/22(土) 22:48:01.18 ID:ioBUoLyFO
「んなろっ!」

彼女は首を振りそれをかわすと寝ている体勢から逆に男の顔面を蹴り上げる、その勢いで後転し、男を再び正面に捉えた。

口いっぱいに血独特の鉄の味が広がる
「ぺっ……」と吐き出した唾には血が混じり白い雪の上に紅点を残した。

「むぅ……」

男も口から垂れる血を腕で拭い上げる。


「やるなぁ…さすがに…」

肩で息を整えながら彼女が言葉を漏らす

「君の方こそ。三年前とは比べ物にならない身体能力だ」

「色々乗り越えて来たんだ。この三年は私に取って人生の生き方を変えた三年だった…」

18: 2009/08/22(土) 22:50:07.17 ID:ioBUoLyFO
「私達の街から始まって……あんなに人質を取られ枷をつけられて。一人でただがむしゃらになってた。でもそれもあんたのせいで……でもまた絆は戻った……それでも…また大切な仲間を失いここにいる、一人で…」

「……」

「だけどあんたを恨んだりしないよ。それじゃこの流れは止まらない。……私が止める!」

三年前から始まったこの因果

「終わらせる……」

氏んでいった仲間の為にも、全てを─────
「来い……」


彼女はただ、真っ正面から突っ込んで行く

21: 2009/08/22(土) 22:55:03.62 ID:ioBUoLyFO
「でぇぃ!」

右の回し蹴り、狙いはコメカミ
たが男は事も無げにそれをスウェーでかわす、微かにカスったサングラスが弾け飛んで行く

「がら空きだ」

男は体勢を崩している彼女にまた中段蹴りを繰り出す

「このぉっ」

そう何回も食らうかと思い切りしゃがみこむ、頭の上をビュン、と通り過ぎて行く足を両手で抱え込みそのまま押し倒す

「なにっ!?」

二人はそのまま積もった雪に倒れこむ。彼女が男の上に覆い被さる形だ

「これで…」

彼女はナイフを両手で持ち

「終わりだ!」

それを一気に降り下ろした────

23: 2009/08/22(土) 22:59:33.27 ID:ioBUoLyFO
────────。

辺りは吹雪になっていた。視界が白で覆い尽くされていく。

「……何故だ?」

「……」

彼女のナイフは男の顔の横の雪にズブリと深く刺さり込んでいた。

「言っただろ……私で終わりにするって」

「生かすつもりか?元凶を」

「あんたを頃したって今更どうにもならない。」

彼女はゆっくりと立ち上がると男に背を向けた

「また起こすかもしれないぞ?あの悪夢を」

「かもな。でも私は殺さないよ。約束だから。それにあんたはもうしない、そんな気がする」

「……そうか」

26: 2009/08/22(土) 23:04:45.48 ID:ioBUoLyFO
「じゃあもう行くよ」

「…………」

男は喋らない。ただ大の字で雪に降られている

「もう二度と会うこともないだろうけど、元気で」

元気で?何を言ってるんだろう……私達をあんな目に逢わせた元凶に……。でも、彼もまた囚われていたのだろう
人それぞれ違う価値観、大切なモノ、達成したいこと、色々なモノを持って生きている。
それの相違でぶつかり合い、傷付け合う。
お互いそれまで生きて来た環境が違うのだからそれは当たり前のことだ
ならどうすれば分かり合えるのだろうか?

この悪夢の三年を経ても、それはわからない

27: 2009/08/22(土) 23:09:44.22 ID:ioBUoLyFO
「安心したまえ……もう私の夢は終わったのだから」

「だからって氏ぬとかはなしだよ?そんなことしたら私が殺さなかった意味がないじゃん…。あんたはこれから背負って生きていけ」

「背負う?」

「今まで犯した罪を受け止めて、その罪を償う為に生きていけ」

「……それは詭弁だ。そんなことをしても何も変わらんだろう?」

「変わるさ。そうすることによってあんたのおかげで生きられたって人が出るかもしれないだろ?生かすことは頃す事より何倍も難しいってことを思い知って生きろ。じゃないと許さない」

29: 2009/08/22(土) 23:12:50.42 ID:ioBUoLyFO
「ハッハッハ!許さないか。それならば仕方ないな。それに私は君に生かされた命だ。自分の命ではもう無い。ならば君の命令に従うとしよう」

「違うよ、命令じゃない。あんたが心からそう思ってくれなきゃ意味がない」

「難しいものだな」

「そうだね。でも、そうすることでわかることもあるよ。まずは一人、あんたの力で救ってみろ。それからは好きにしなよ」

「……わかった」

男から離れて行く彼女。雪が深々と降り頻る中、「約束だよ、アルバート・ウェスカー」

彼の名前を口にした。それが彼との最後の会話となった。

30: 2009/08/22(土) 23:15:55.52 ID:ioBUoLyFO
────────。
「いらっしゃいませ~。お一人様ですか?」

「えと、…………です」

「はい、かしこまりました。禁煙席と喫煙席がございますがどちらに致しましょう?」

彼女は少し迷った後、「喫煙で」と答えた。

彼女は店員に席を案内されると直ぐ様コーヒーを頼んだ。一番奥の窓際。窓からは休日特有の風景、家族連れが楽しそうに歩いている

ここはとある郊外の喫茶店。日本も冬で雪は降っていないもののかなりの寒さに見舞われていた。

「温暖化何て実感湧かないな~」

思わずそんな言葉が出るくらい外は寒かった。

32: 2009/08/22(土) 23:19:33.81 ID:ioBUoLyFO
「お待たせしました。」

「あ、どうも」

店員が持って来たコーヒーに一口つける。コーヒー独特の苦味が私の舌を刺激する。
昔はこう言う苦味は嫌いだったのにいつの間にかこれが落ち着く味となっていた。

「私も21か…大人になったもんだ」

思えば18から今までずっと年頃らしいことはしてなかったなと悪態をつく。
成人式も出なかったし…もっともあの街に行った所でもう知ってる人は誰もいないけど

あの街は今から二年前ほどからようやく再建され始めたのだ。今ではおそらく街として機能しているだろう。私の家はどうなったのだろうか

34: 2009/08/22(土) 23:24:12.65 ID:ioBUoLyFO
コートのポケットから煙草の箱を取り出しそこから一本摘まみ上げる。
それを口にくわえ火をつけると、産まれた煙を自らの肺に流し込み、そしてまた吐き出した。

「ふぅ…」

こうしてると私は大人になったんだな…って思える気がした。でも実際にはまだまだ子供で、こんなことただ背伸びしてるだけじゃないかって…ほんとの大人に笑われるだろう。

「……あれから一年か」

あの氏の地、ラクーンシティ脱出から丁度一年経っていた。
生き残った人達はどうしているだろうか

35: 2009/08/22(土) 23:25:36.45 ID:ioBUoLyFO
「ふぅ……」

そうしてまた煙を吐き出す。

そう思ったのがきっかけだろうか。
私はふと、思い返してみることにした。

あの脱出劇を

この、煙草の火が消えるまでの間──────


YUI BIHAZA
  LAST ESCAPE

37: 2009/08/22(土) 23:29:15.28 ID:ioBUoLyFO
ファイル04
真実

空は一面の星空、ほとんど明かりが灯っていない為に良く見えた。
空はどこから見ても、その美しさは変わらない。

この街は、こんなにも腐敗していると言うのに─────

律「皮肉だよな」

澪「ん?何が?」

ポツリと漏らした言葉に澪が反応する。

律「地上から見る空はいつだってこんなにも綺麗なのに、今はその綺麗さえ疎ましい…な~んてな」

澪「どうしたの?らしくないぞ律?」

律「別に…ただ、ちょっと緊張してるだけ…かな」

夜中の帳(トバリ)を一台のバンが駆け抜けて行く

38: 2009/08/22(土) 23:32:33.53 ID:ioBUoLyFO
後ろの席には唯と梓が寝ていた。よっぽど色々あったのだろう、今はそっとしておくことにした。

ラクーンシティタワーまではまだ少し距離がある。
澪がバン運転をし、律は助手席でシートをたおしめにしながら窓から外を眺めていた。

和はいない。プラットフォームから伸びている地上エレベーターを上がった後に別れたのだ。
和は単身でラクーンシティ警察署に電力を送っている電力所に向かったのだ。
プラットフォームにある電車の電力が足りない為に警察署へ送る電力を上げに行った、と言えばわかりやすいだろうか

40: 2009/08/22(土) 23:35:30.62 ID:ioBUoLyFO
和の実力はもう誰もが知っている。私達は両親を助けてあげてと……和は言った。
そして、
『ウェスカーには気をつけて』とも言い残していた。
意味深な言い方だった。前にウェスカーを知っているか?と聞いたたことがあるが和はただSTARSの面汚し、と和にしては随分下劣な言い方をしたのを覚えている。

そして私達は今、警察署前で唯達が拾って来たバンに乗りラクーンシティタワーへと向かっている。

私達をこの世界に導いたアンブレラの黒幕、アルバート・ウェスカーの元へ

誰もが予感しているだろう最後の戦いへ……赴いていた。

42: 2009/08/22(土) 23:38:51.98 ID:ioBUoLyFO
───────数時間前、ラクーンシティタワー

二つの人影がラクーンシティタワーへ入って行く。
一人は150半ばのまだ女の子と言った風貌、律儀に両手を上げながら歩いている。

もう一人は170後半でガッシリ、とした印象は受けないが所々についている筋肉が彼の強固さを伺わせる。

150半ばの女の子を後ろから銃を突き付け脅しながら歩かせている、一見すればそう見えるだろうか。

建物内部に入りまず目に入るのがエレベーターだ。
建物の中央に陣取っており大きさもかなりの物だった。

47: 2009/08/22(土) 23:42:04.03 ID:ioBUoLyFO
レオン「で、あんたのクライアント(依頼人)はこの一番上か?」

純「はい、そうです」

手を上げたまま律儀に答える純。焦った様子はまるでない
この年頃の女の子が銃を突き付けられれば普通足がすくむの普通だろう、けど彼女はまるでそう言った感じはない。
レオンが撃たないと高を括ってるのか。

レオンが無言でエレベーターのボタンを押すよう促すと純はそれに素直に従った。

レオン「(どう言うつもりだ……)」

純の容量も意図も未だに測れない。
この先に待っているウェスカーと言う男にそれほどの信頼を置いているのか……

49: 2009/08/22(土) 23:43:38.03 ID:ioBUoLyFO
エレベーターは数分で最上階についた。
その部屋の奥には巨大なモニター、いや、一つ一つが分割されており様々な様子が映り込んでいる。この街につけられた監視カメラ等の映像だろう。
その映像の光の下にある豪華そうな革の椅子に、彼は座っていた。

純「ウェスカー卿、連れて来ました。」

レオン「(連れて来た……だと?)」

ウェスカー「ご苦労だったなジュン。レオン・S・ケネディ、初めましてかな?アルバート・ウェスカーだ。うちのジュンがお世話になったな。もう解放してやってくれないか?」

レオン「その前に聞きたいことがある」

50: 2009/08/22(土) 23:46:03.54 ID:ioBUoLyFO
ウェスカー「ほぅ…」

レオン「律に手紙を送って来たのは貴様か?」

ウェスカー「ご名答だ。」

レオン「何故あんな真似をした?律に…いや彼女達はただの一般市民だ!」

ウェスカー「ただの一般市民…か。確かに二年前まではそうだった、いや、二年前もそうではなかった…」

レオン「何を言っている!?」

ウェスカー「まだ話す段階ではないのだよ。君には関係のない話だ」

レオン「貴様ァ!」

銃をウェスカーに向けるレオン

レオン「律や他の者達の家族はどこにいる?!答えろウェスカー!」

52: 2009/08/22(土) 23:50:45.76 ID:ioBUoLyFO
ウェスカー「ククク…それを聞いてどうする?」

レオン「貴様を頃し助け出した後この街を脱出する。どうやら貴様がこの一連の事件の黒幕見て間違いなさそうだからな!」

ウェスカー「なるほど……確かに的は得ているな。だが君には無理だ……私を頃すなど」

レオン「撃てない……とでも思っているのか?」

ウェスカー「さあ、どうだろう。まあやってみたまえ。家族の居場所ならジュンも知っている。私が氏ねば彼女に聞くといい。さあ、撃ちたまえレオン・S・ケネディ」

レオン「……」

54: 2009/08/22(土) 23:54:35.06 ID:ioBUoLyFO

レオンは片目を瞑り銃身をウェスカーへ向ける。

レオン「(俺は律の様に甘くないぞ…ウェスカー)」

あいつを守る為なら人をも頃す、俺はあの時あの涙に誓った。
必ずあいつの笑顔を取り戻してやると

カチャリ、バァン!

レオンは躊躇わず引き金を引いた────。

───────。

ほんの数秒の出来事だった、レオンが銃を撃ち、その弾がウェスカーに当たる直前、彼は……消えた。

比喩ではない。本当に消えたのだ。

レオンは辺りを見渡すも姿はない。
目の前には綺麗に両手を上げている純と言う女の子のみ

55: 2009/08/22(土) 23:56:54.86 ID:ioBUoLyFO
ウェスカー「私はここだ、レオン・S・ケネディ」

レオン「!?」

不意に後ろから声が聞こえた後、レオンの体が横へと弾け飛んだ。

レオン「がっ……」

何をされた……?

脇腹に走る痛みが殴られたのだと教えてくれるまで数秒の時間を要した。

レオンは床に転がりながら壁に激突し、止まった。
それ程の威力、たかが拳の一撃がまるで巨大なハンマーにでも殴られた様な鈍痛。

レオンは痛みを堪えながら立ち上がる。

レオン「はあ…はあ………貴様…何をした」

ウェスカー「何をした?ハッハッハ、面白いことを言うな君は」

56: 2009/08/22(土) 23:59:46.20 ID:ioBUoLyFO
歪に黒光るサングラスがレオンを見据える。

ウェスカー「ただ銃弾を避け、君の後ろに回り込み、殴った……それだけのことではないか」

確かに簡単に言えばそうだった。だが我々人間にとってそれは簡単ではない。
まず銃弾の速度は人間が避けられるモノではない。発射口の角度、引き金を引くタイミングを見て事前にある程度予期し、動き回っていれば話は別だ
だが彼はただ座ったままの体勢で銃弾を避け、更にはレオンが気づかぬ速度で後ろに回り込み、殴った

そしてその威力は最早人間の威力ではない

つまり──────

57: 2009/08/23(日) 00:02:33.11 ID:ym1byX0tO
レオン「貴様自らにウイルスを……」

ウェスカー「ククク…このウロボロスはもうウイルス等と言うレベルのモノではないのだよレオン」

レオン「……」

レオンは答えない。ここまで力の差が歴然では一人では太刀打ち出来ないと既に考えは脱出することへ向けられている。

ウェスカー「逃げ場などない。君にはここで退場してもらおうか」

レオン「ちっ……化物め!」

レオンはまた数発ウェスカーに向けて発砲、だがやはりウェスカーはそれを避ける。
まるで蜃気楼、そこに元からいないかの様

58: 2009/08/23(日) 00:06:09.11 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「君も諦めが悪いな。ジュン、下がってなさい」

純「はい」

ウェスカーが一歩一歩レオンに近づいてくる。

レオン「くっ……」

今まで様々なBOW(バイオオーガニックウェポン)と戦って来たレオンだがここまで尻込みしたことはなかった。

レオン「(これが恐怖か……情けないな俺は)」

覚悟を決める……。
相討ちでも奴をここで仕留めておかなくてはいずれ律とぶつかる。そうなれば彼女は間違いなくこいつに殺されるだろう

それだけはあってはならない

妹を守るのは、兄貴の役目だろう

60: 2009/08/23(日) 00:08:24.17 ID:ym1byX0tO
皆そのやり取りに夢中で気づいていなかった。エレベーターが動いていることに

そしてそのドアが開き、一人の女性が声を発するまで

「そこまでよ!ウェスカー!」

ウェスカー「!?」

ウェスカーは咄嗟に振り向くとグレネードランチャーを構えた顔見知りの彼女が立っていた。

ウェスカー「ジル!久しいな!」

そんな言葉を無視し彼女はグレネードランチャーをぶっぱなす

ウェスカーはそれをまた残像を残す程の早さでかわす。

ジル「なっ……」

レオン「(今だ!)」

62: 2009/08/23(日) 00:09:40.83 ID:ym1byX0tO
レオンはショルダーホルスターから抜き出したナイフを手に一気にウェスカーに駆け寄る。

レオン「(近接戦闘なら!)」

更にウェスカーは今ジルと言う人に気を取られ完璧に俺のことなど見ていない

もらった!

が、その言葉と同時に吹っ飛んだのは自分の体だった。

ウェスカー「君にもう興味はない。」

そんな声が聞こえた気がした。

レオンはウェスカーの後ろ蹴りの勢いで吹っ飛び壁に、いや、今度はただの壁ではない。
ガラス張りの壁、辺りを一望する為に造られたであろうそれにレオンは激突したのだ。

63: 2009/08/23(日) 00:14:40.47 ID:ym1byX0tO
バリィィィンと言うガラスが割れる轟音がし、レオンはそのまま……

夜の闇に消えて行った

ラクーンシティタワーの高さは300m程、ここはその最上階なのだ。まず命はないだろう

ウェスカー「彼はもう少し賢明な男だと思ってたのだがね。まあ所詮役不足だった……と言うところか」

ジル「あなたって人は……!」

ジルはグレネードランチャーの弾を装填、さっきのとは違う冷凍弾にスイッチ。

ジル「(足を凍りつかせる……)」

さっき落ちて行った人は確かレオンって言う最近バイオハザード専門に救助活動を行なってる人だったか
気になるがこの高さでは助からないだろう。今は目の前の敵に集中することにした。

私達の探していた元凶、それがこのアルバート・ウェスカーだ

66: 2009/08/23(日) 00:18:00.61 ID:ym1byX0tO
────────。
はあ…はあ…はあ…。
息が荒い、無我夢中だったが何とか助かったみたいだ。

バックパックに仕込んであった超低空使用膨張落下傘の改良型。
この300mと短い間でもパラシュートが開いたのはそう言う理由だった。

レオン「シット!」

ガンッと拳をアスファルトに叩きつける

レオン「(情けない……俺がこの様とは)」

だが、圧倒的だった。
あのままあそこに居続けても恐らく殺されるだけだろう。
あのジルと言う女性は確かBSAAのメンバーだったか
しかし彼女とて結果は変わらないだろう……

70: 2009/08/23(日) 00:20:46.03 ID:ym1byX0tO
>>64
9割書きためてるので大丈夫です


レオン「(だがやはり見逃しては……)」

助けに行く?行ってどうなる?勝てるのか?あの化物に

銃弾は当たらない、動きは肉眼で捉えられない程、攻撃の威力はタイラント以上……
あんな奴に勝てるわけない……

ただ絶望するしかないのだろうか。このままでは律も奴に殺される

自分を本当の兄の様に慕ってくれた彼女を見頃しには出来ない……!

レオン「お前はこんな無様な男じゃないだろう!レオン・S・ケネディ!」

己の名前を呼び奮い立たせる。

レオン「悪いなジルさんとやら…援護には行けない」

そう、他に行くべき所がある

74: 2009/08/23(日) 00:23:47.95 ID:ym1byX0tO
レオン「(奴がウイルスを自らに投与してるのは間違いない。そして奴はそのウイルスをウロボロスと言っていた。)」

レオンはタワーの駐輪場から適当なバイクを選ぶとエンジンをかけ走り出す。

目的地は律も向かったラクーンシティ警察署の地下研究所。

レオン「(Gウイルス等の情報もあるあそこならウロボロスについても何かしら情報がある筈……)」

急がなくては、律達が奴らとぶつかる前に何としても奴の弱点を見つけ出す

バイクは軽快なエンジン音を刻みながらラクーンシティを走って行く。

76: 2009/08/23(日) 00:25:24.83 ID:ym1byX0tO
同時刻、BSAA───────。

クリス「やはり生存者はいないか……」

病院や学校、人が集まりそうな所は調べて見たが…病院に至っては何者かによって爆発されていた。

クリス「一体この街で何が起きてる…」

ピィピ、電子音が鳴る。BSAAが導入しているメモリーの通信音だ

『こちらレベッカ。クリス、応答して』

クリス「こちらクリス。どうした?」

『ここのSTARSの人を見つけたわ。彼が何人かトラックで救助してくれたみたい』

クリス「それは朗報だな。さすがSTARSと言っておこうか」

78: 2009/08/23(日) 00:29:00.24 ID:ym1byX0tO
『怪我をした人もいるから今から治療するわ。それと…』

クリス「ん?まだ何かあるのか?」

『ジルと連絡が取れないの。クリス、何か知らない?』

クリス「ジルと…?メモリーでのジルの位置は?」

『ラクーンシティタワー内部で止まってるわ。さっきからずっと呼びかけても応答してくれないの。メモリーを落とす様なことジルはしないだろうし…』

クリス「何かあったと見た方がいいな…。レベッカ、治療が終わり次第タワーに来てくれ。救助者はそのSTARSの彼に任せよう。他のメンバーには俺が伝えておく」

『ラージャ』

クリス「嫌な予感がするぜ…」

81: 2009/08/23(日) 00:32:07.15 ID:ym1byX0tO
────────。

バンはとうとうラクーンシティタワーに到着した。

各々装備の確認をする。話し合い…で済むならそれに越したことはないが誰もがそうはならないだろうと予期していた。

唯も梓も起きており少し緊張した面ごちを覗かせている。

律「行くか」

律の言葉を皮切りに車から降りる4人。外には少量のゾンビがいたが律のコルトと澪のイーグルで難なく撃退出来た。

梓は唯をべったりガードし、誰も近づけさせないといった感じだ。

梓「(もう絶対唯先輩をあんな目に逢わせたりするもんか…!)」

82: 2009/08/23(日) 00:33:29.57 ID:ym1byX0tO
唯「ごめんねあずにゃん……私足手まといだよね……」

梓「そんなことないです。先輩。先輩はみんなに元気をくれます」

唯「元気……?」

梓「唯先輩がいるだけで幸せな気持ちになれるんです。少なくとも私は…」

唯「あずにゃん…」

律「唯の歌のおかげで私は戻って来られたんだよ。」ニカッ

それを聞いていた律も唯に微笑む

澪「唯には唯の出来ることがあると思う。きっと。」

澪もそう言って唯の肩を抱く

唯「みんな……不束者ですがよろしくお願いします!」

83: 2009/08/23(日) 00:35:32.08 ID:ym1byX0tO
律「お嫁にでも行くつもりか!(ありがとう、唯)」

澪「唯らしいな(ありがとう唯)」

梓「唯先輩……(大好きです)」

律「さ~て場も和んだことだしいっちょやったろかい!軽音部~」

唯澪梓「ファイオー!」

「随分と賑やかだな。相変わらず緊張感ってものの欠片もないな」

「何よクリス、唯や澪の姿見て一番喜んでたのは貴方じゃない」

「ハッハ!全くだな!」

「梓も、元気そうで何よりだわ」

軽音部の4人は声のした方へ顔を向けると、そこには嘗て自分達を助けてくれた

戦友達の姿があった

88: 2009/08/23(日) 00:39:53.64 ID:ym1byX0tO
>>85
ちなみに
0.1.2.3.4.5
アウトブレイク、アンブレラクロニクル
が出てますwww


ラクーンシティ沖───────。

斎藤「わざわざすみませんこんな空母まで出させてしまって」

提督「気にしないでくれ。たくわん出されちゃ拒否は出来んからな。それにお前の親父には内戦時色々と世話になった」

斎藤「さすが親父……海千山千だな……」

紬「斎藤、首尾の方は?」

斎藤「お嬢様!無理しないでください!二年も眠ってたのですから」

紬「そうは言ってられないの。今から例の物を運び次第ヘリでラクーンシティへ向かうわ」

斎藤「はっ!かしこまりました」

89: 2009/08/23(日) 00:41:48.80 ID:ym1byX0tO
提督「君が今の琴吹財閥の」

紬「琴吹紬と申します。この度はお力添え感謝しますわ提督」

紬はスカートの裾を少し持ち上げると育ちの良さそうな挨拶をした。

提督「ふ……斎藤の倅(せがれ)が惚れるわけだ。」

斎藤「ちょ、やめてくださいよ提督!」

紬「残念ながら私異性に興味はないんです。」

斎藤「……え?」

提督「ハッハ!百合好みとは恐れいった!斎藤よ!己の戦いは太平洋戦争より過酷よのぉ!」

斎藤「……え?」

紬「待っててみんな…今行くから」

海風に靡く髪を抑えながらラクーンシティ方面を見る。

91: 2009/08/23(日) 00:42:48.76 ID:ym1byX0tO
ラクーンシティタワー前───────。

唯「クーちゃんにバーちゃん!レベにゃんも!」

クリス「おいおいその呼び方はやめてくれと二年前に言ったろう」

レベッカ「案外気に入ってたじゃないクーちゃん」

バリー「ハッハッハ!バーちゃん何て俺のこと呼ぶのは唯だけだぞ!今度またウサギ鍋食わせてやろう!」

澪「うさ……ウサギ……鍋……」ガクガク

クリス「澪も相変わらずだな。しかし二人とも綺麗になった」

レベッカ「ジルに言いつけますよ?」

クリス「社交事例だ……」

唯「あー!酷い!」

バリー「ハッハッハ!」

93: 2009/08/23(日) 00:45:08.20 ID:ym1byX0tO
律「クレア!久しぶりだな」

クレア「最近連絡くれないから心配したわよ律。レオンからも律が最近変だって色々相談されてたんだから」

律「え~と…話すと長くなるんだけど…まあなんと言うか…」

クレア「見ればわかるわ。変わったわね、いい方に」

律「えへへ//」

クレア「ならレオンにちゃんと謝っておくのよ?彼はあなたのこととなるとすぐむちゃするんだから」

律「レオンが…?私の為に?」

クレア「ふふ…本当の兄妹みたいね…私と兄さんみたい」

律「??」

95: 2009/08/23(日) 00:47:57.07 ID:ym1byX0tO
梓「クレアさん、お久しぶりです」

クレア「梓…そう…それがあなたの選んだ道なのね」

梓「はい……守りたい人がいるんです。どうしても……だからじっとしていられませんでした」

クレア「強くなったわね……梓」

梓「俺さんや……皆さんのおかげです。あの時助けてもらったこと、忘れてないです」

クレア「梓みたいな妹がいたら最高なのに」ナデナデ

梓「からかわないでください//」


クリス「さ~てそろそろお互いの自己紹介と行くか。中には顔見知りもいるようだが初対面も多いだろう。何でここにいるか、って話はその後にしようか」

97: 2009/08/23(日) 00:50:20.55 ID:ym1byX0tO
クリス「まずは俺から。BSAAのリーダーでそこにいるクレアの兄でもある、クリス・レッドフィールドだ。唯や澪とは二年前の脱出の時に知り合ってな。」

律「なるほど、あの時むぎの家で電話してたSTARSの人ってわけか。ん?でもBSAAって?」

クリス「名は聞き及んでいるよシューティングスターリツ。BSAAは対アンブレラに俺が作った私有部隊だ。今は隊員は少ないがな」

律「それ何かこそばゆいなぁ//」

クレア「じゃあ次は私ね。さっき兄が言ったと思うけどクリスの妹、クレア・レッドフィールドよ。」

102: 2009/08/23(日) 00:53:02.46 ID:ym1byX0tO
>>96
>>1に貼ってあるやつのラクーンシティ編を見てもらえれば
パソコンの方が見れるかちょっと不安ですが

クレア「兄とはロックフォードで合流して今はBSAAにいるの。よろしくね」

唯「よろしくクレにゃん♪」パチパチパチ

澪「何か学校みたいな流れだなぁ」

律「唯がいると私達二十歳になったんだ~なんて思えないよな」ニコッ

澪「ふふ、そうだな」

律……本当に良かった。こうしてまた笑い合えて

バリー「次は俺だ!バーちゃんことバリー・バートン!マグナムに関してはちとうるさいぜ?」

律「なにをぉっ!?私のこのコルトと張り合うっての!?」

バリー「コルトM19……しかも廃盤仕様じゃないか!売ってくれ!」

106: 2009/08/23(日) 00:56:09.70 ID:ym1byX0tO
律「やだよ!にしても……うぉ……おっちゃんの44口径か…やるな」

バリー「ガッハッハ!お前さんとは気が合いそうだな嬢ちゃん」

律「だな♪」

澪「私だけ一人取り残されていくこの感じは……」

レベッカ「次は私ね。BSAAでの医療関係は全て私の担当よ。薬の調合、具合が悪くなったりゾンビに噛まれたりしたらすぐに言ってね」

唯「レベにゃんは保険の先生みたいだね~」

レベッカ「唯、アイス食べ過ぎてない?いくら太らないと言っても糖類のとりすぎは~(ry」

唯「始まっちゃった……」

澪「レベッカさん講座が」

113: 2009/08/23(日) 01:03:14.56 ID:ym1byX0tO
唯「はいじゃあ次は軽音部のターンです!まずは私平沢唯!歌が得意です!好物はアイスと可愛い物です!嫌いなものはリッカーちゃんです!」

梓「唯先輩それじゃ本当にただの自己紹介ですよ……もっと今の自分の所属とか話した方が」

唯「あっ、そうだね!え~と……一応ラクーンシティ警察署に配属されたけどぉ……一日も行かずにこうなっちゃって……何と言うか…今はニートです!」

一同「…………」

梓「え、え~と次は私で。第七救援部隊所属の中野梓です。ここには救助を目的に来ました。あの……」

114: 2009/08/23(日) 01:05:56.97 ID:ym1byX0tO
>>110
感想はやっぱり欲しいですね
書いた甲斐があったと思えますし…

>>111
それです
PCでは見えないんですかね?

>>112
出ます

116: 2009/08/23(日) 01:07:37.92 ID:ym1byX0tO
クレア「梓~がんばって~」

唯「あずにゃ~ん!ふぁいと~!」

梓「///あの……義手とか義足で変な奴だな……とか思わないで仲良くしてくださいっ!」ペコリ

バリー「嬢ちゃんお下げ似合ってんぞー!」

レベッカ「三編みにさせてくれないかしら……」

律「ど、どこだここは。本当にラクーンシティか?」

澪「可愛い……」

唯「じゃあ次は澪ちゃん!」

澪「えっ……わ、私っ?あ、あの……あき…秋山…澪です。フリーのライターです…イチオウ…その…あの……よろしくお願いします!」

クリス「相変わらずだな澪は」

119: 2009/08/23(日) 01:09:22.00 ID:ym1byX0tO
バリー「嬢ちゃん相変わらず乳でけーな!今度その乳から出たミルクでシチュー作らせて(ry」

レベッカ「バリーさん?」

バリー「じょ、冗談さレベッカ……」

律「コホン、では最後に……」

唯「そう言えばジルちーはいないの?」

クリス「あぁ、実はちょっとはぐれてな……」

澪「バリーさん最低です!」

バリー「ハッハッハ!二十歳になってそれはないだろ澪!少しはそう言うネタもだなぁ……」

レベッカ「バリーさんのマグナムにすりおろしたグリーンハーブ詰めときましたから」

バリー「ノゥ!俺のマグナムが!」

122: 2009/08/23(日) 01:14:44.78 ID:ym1byX0tO

梓「私以外にもにゃんってつけるんですね……」

唯「ごめんねあずにゃん…。あっ!ならあずにゃんは特別あずにゃんにゃんに!」

梓「///(私だけ特別……)」パァァ

クレア「それにしてもこの義手いいフォルムね。作った人はさぞ良い仕事してるわ」

梓「そうなんですよ!この繋ぎ目が特に……」

クレア「なるほど。バイオテロで手足を失った人につけてあげたいわね」

梓「そうですね!」


クリス「澪、元気そうで何よりだ」

澪「クリスさんも。」

律「……わあああああ」

唯「あぁっ!りっちゃんが一人で乗り込もうと!」

123: 2009/08/23(日) 01:16:27.80 ID:ym1byX0tO
───────。
律「コホン。改めまして、自己紹介を。」

梓「(やっぱりしたかったんですね)」

澪「(律はああ見えて可愛いからな//)」

唯「(りっちゃん可愛いね//)」

律「そこ!静かに」

澪唯梓「は~い」

律「え~では!軽音部の部長でもあり……みんなのアイドル!シューティングスターの異名を持ち……様々な偉業を成し遂げてきたぁ~伝説のぉ~」

澪「長いからいこっか」

梓「そうですね、各々何でここに来たかは把握出来ましたし」

唯「行こう行こう♪」

律「ごめんなさいっ。頼むから行かないで~」グスン

124: 2009/08/23(日) 01:17:52.37 ID:ym1byX0tO
律「田井中律です…。」

唯「は~いみんな拍手」パチパチパチ

クリス「よし、和やかムードはここまでだ。そろそろここにいる理由を話してもらおうか。俺達は無論救助活動と……ある男の捕縛だ」

律「ある男……」

和はSTARSの面汚しと言っていた。そしてこのクリスも元STARS……となれば話は繋がる

律「アルバート・ウェスカー……」

クリス「知ってるのか!?」

バリー「……」

レベッカ「……」

その場の空気を一転させるには十分な名前だった。
そう、お互いの最終目標は同じだったのだ

127: 2009/08/23(日) 01:19:55.20 ID:ym1byX0tO
お互いにこれまでの経緯を話し合う。
クリスらは今から3年前の洋館事件以来ウェスカーを追っていたらしい。
彼は元S.T.A.R.S.隊員でクリスらがいたアルファチームの隊長だった。洋館での事件は全て彼の仕業によるもので元ブラヴォーチームのレベッカの仲間は何人もそこで命を落としたという。
無事脱出したクリス、ジル、バリー、レベッカ、ブラッドだったが後にウェスカーが生きてることを知る。
更にその居場所が日本、と言うこともあってS.T.A.R.S.の日本支部へと派遣されたのだという。

130: 2009/08/23(日) 01:21:37.55 ID:ym1byX0tO
クリス「それから日本で起こったバイオハザードも奴が関連してることを知ってな。そしてあの事件で君らと知り合い、動き難いS.T.A.R.S.を辞め、BSAAを立ち上げ色々あった後今に至る…と言うわけさ」

律「苦労してるんだな…」

唯「レベにゃん辛かったねぇ…っ」ギュ

レベッカ「もう随分前のことだから…大丈夫よ唯。ありがとう」

バリー「……」

律「さ~て次はこっちか」

律達も簡単に要点をまとめ話した。

ウェスカーに要求されGウイルスを探していたことから話は始まる。

131: 2009/08/23(日) 01:22:42.22 ID:ym1byX0tO
そしてお互いバラバラになりながらも想い合い、またこうして集まれたこと、自分のせいで仲間を傷つけてしまった、しかしそれでもみんなは信じてくれたこと。

色々な人に助けられながらここに待つウェスカーにGウイルスを渡し人質を助けに来たこと等を包み隠さず全て話した。

クレア「律……」

クレアは彼女の顔を見る。しかし彼女の表情は苦悩や後悔や不安に歪んではいなかった。
その真っ直ぐとした瞳に心配した自分の方が情けないと悪態をつきたくなるほどに。

彼女は二年前とは違う。あの頃のあどけなさと幼さはない。大人、なのだ

134: 2009/08/23(日) 01:28:31.62 ID:ym1byX0tO
サル回避

見た目の意味ではなく内面的に、成長している。この顔からだけでそれだけのことが伺えた。

クリス「ウェスカーめ…おちるとこまで堕ちたな。」

STARS隊長のウェスカーとクリスには浅かならぬ因縁があるのだろう、この言葉からそれが読み取れる。

澪「でも、迷う必要はない」

澪がラクーンシティタワーを見据え力強く言い放つ。

迷う必要ない、律との一件を乗り越え後はもう人質を救いここを脱出するだけ。
その事に迷いはないのだ

律「確かにな。もうやることはお互い決まってるからな」

律もそう言い澪と同じ様に見据える

135: 2009/08/23(日) 01:30:44.67 ID:ym1byX0tO
クリス「あぁ、奴を叩き潰し人質を助け出すだけだ」

クレア「話が簡単でいいわね」

バリー「…全くだ」

レベッカ「ブラヴォーチームの仇…」

梓「行きましょう、皆さん。全てを終わらせに」

梓の声に各々反応し、ラクーンシティタワーに入って行く中、一人だけ懸念の表情を浮かべていた、唯

唯「……」

これだけのメンバーが揃っていても胸の中にある不安はいつまでも止まない。
降り頻る雨が飽きずに波紋を作る様に。いつまでも、いつまでも……

仲間が裂かれた夢が脳裏に焼き付いて離れてくれなかった

138: 2009/08/23(日) 01:37:44.67 ID:ym1byX0tO
またまたサル回避


最上階───────。

ウェスカー「ジュンめ、余計なことを……」

「あ~ら、あの子なりにあなたを想っての行動じゃないかしら?」

ウェスカー「さわ子、今までどこへ行っていた」

さわ子「ちょっと秘密兵器を取りにね。それより首尾はどう?」

ウェスカー「あまり勝手に動いてもらっては困る。ふん…、首尾か……元よりそんなものはない」

さわ子「と言うと?」

ウェスカー「ただ私のゲーム、自己満足でしかないと言うことさ。君も含めてね」

さわ子「ふ~ん…」ギリッ

さわ子は少し唇を噛み締める

140: 2009/08/23(日) 01:39:41.94 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「君になるべく自由意思を与えてるのはその方が面白いから…に過ぎない。そのことを忘れないでくれたまえ」

ウェスカーは椅子に座りながらモニターを見てる。さわ子が話かけてからもそれは変わらない。まるで相手にする価値もないといった風に。

さわ子「……肝に銘じておくわ」

ウェスカー、その言葉……いずれ後悔させてあげる。

それより今は……

さわ子はモニターに目を向ける。

さわ子「(良くここまで来たわね…あなた達。顧問として誇らしいわ)」

けど、次の試練は生半可なモノじゃないわよ

143: 2009/08/23(日) 01:45:41.16 ID:ym1byX0tO

ラクーンシティタワーに入ると、そこには待ち構える人がいた。

梓「……純!?もしかして純なの?!」

面影を頼りにそう言う梓。

純「久しぶり、梓。もっとも、こうして話すのは、だけど」

唯「あずにゃんお知り合い?」

梓「はい…高校の同じクラスの子で…」

澪「あっ!一度軽音部に来たことがあったよね…」

律「だっけ?」

純「さすが秋山先輩。覚えてくれているとは思いませんでした」

クリス「懐かしがってるところ悪いが何故ここにいる?まさかウェスカーの関係者か」

148: 2009/08/23(日) 01:50:06.13 ID:ym1byX0tO
純「その通りですクリス・レッドフィールド」

梓「!?なんで……」

純「そんなことはどうでもいいのです梓。それより皆様に紹介したい人達がいます、出てきてください」

ラクーンシティタワーの1F、真ん中にエレベーターがある
そのエレベーターの奥の二つの扉、その左側から一人、エレベーターの左右にある扉から一人づつ人が出てきた。

エレベーターの左から出てきた人物にいち早く反応したのはクリス

クリス「ジル!」

ジル「……」

エレベーターの奥左側から出てきた人物には律が

律「……さ…とし…か?」
聡「……」

150: 2009/08/23(日) 01:51:27.68 ID:ym1byX0tO
そして、エレベーターの右側から出てきた人物には、唯が

唯「う……い…」

見間違えるわけがない。誰よりも彼女と一緒に居て、誰よりも彼女を好きな自信がある私が

そこにいたのは間違いなく、憂だった。

憂「…オネエちゃん……」

発音が怪しい、それに顔色も悪い。皆普通ではない、とわかっていた。

純「感動のご対面、の最中に悪いのですがこれからあなた達はこの人達と頃し合ってもらいます」

一同「!?」

クリス「何をバカなっ!」

律「そんなこと出来るわけ…っ」

唯「出来るわけないじゃない!!!!!!」

155: 2009/08/23(日) 01:53:44.64 ID:ym1byX0tO
誰よりも大声で言ったのは唯だった。みんなそれぞれ思ってることがあるのは唯もわかっている。

それでも唯は抑えることが出来なかった。妹をこんな風に扱う奴を、許せなかった。

純「決定権はこちらにあります。従っていただけないのなら氏んでもらいましょうか?」

純が何か指示を出すと三人は手に持っているナイフの切っ先を自分の首元へ

唯「……っめて!!憂を……傷つけないで」

泣きながら訴える唯を見て満足したのか純はそれをやめさせる

クリス「卑劣な……」

律「悪趣味過ぎるよあんた」

梓「純……っ!」

156: 2009/08/23(日) 01:54:55.98 ID:ym1byX0tO
純「何と言われようが構いません。では、一応私なりに考えたルールを」

今は従うしかない、と各々わかってるのかただ沈黙で肯定した。

純「さすがにそちら側の人数対こちら側の人数では話になりません。のでそちらの代表者4人を決めてもらってあの四つの部屋でそれぞれ頃し合う……それで構いませんか?」

律「必ず殺さなきゃならないなんて不条理なルールじゃないよな?」

律が不適な笑みで純を挑発する、律も唯と同じく弟を盾に取られ平常心ギリギリのところで踏み留まっているのだ。

158: 2009/08/23(日) 01:56:29.06 ID:ym1byX0tO
純「別に必ず殺さないと駄目…なんて言いませんよ。ただそうならざるをえないと思いますけど」

律「ちっ…聡の所は私が行く。文句ないよな」

皆首を静かに縦にふる。

唯「憂は私が助ける」

みんなの意見も求めず唯は憂を見ながらそう言った。皆異論はない

クリス「ジルは俺に任せてくれ。」

レベッカ「えぇ。ジルのこと一番わかっているのはあなただから…それがいいわ」

バリー「右に同じだ。」

クレア「兄さん…気をつけてね」

クリス「あぁ……」

必ず助け出してやる、ジル

160: 2009/08/23(日) 01:57:50.91 ID:ym1byX0tO
梓「純、4つってことはあなたも戦うってことだよね?」

純「えぇそうよ梓」

梓「なら私が行きます…!」

何でこんなことをするのか聞かなければと、梓はこの時ばかりは唯に気が回ってなかった。

純「では……それぞれ指定の部屋へどうぞ」

4人と4人はそれぞれ部屋の前に立つ、隣には嘗ては大切な存在だったものがいる

クリス「……(どんなトリックかは知らないが必ずジルを説得する…)」

律「(聡……待ってな。姉ちゃんがすぐ助けてやるから)」

唯「(憂……)」

梓「(純……あなたは……)」

163: 2009/08/23(日) 01:59:23.65 ID:ym1byX0tO
律「そうだった、澪」

律は澪を呼ぶ、「何?」と近寄って来た澪にGウイルスの入った小瓶を渡した。

澪「律……」

律「もしかしたら……ってこともあるからさ。その時は頼んだよ」

澪「バカ…そんなこと言うなんて律らしくないぞ」

律「たまにはしおらしくさせてよ」

澪「フフ、ちゃんと帰って来るんだぞ。兄妹二人で」

律「任せとけって」

二人は少し笑みを見せ合う。お互い心配するなと言う意思表示でもあった。

純「では、中へどうぞ。残った秋山先輩達はどうぞご自由に。最上階にはウェスカー卿もいます」

164: 2009/08/23(日) 02:01:27.67 ID:ym1byX0tO
レベッカ「ウェスカーがこの上に…」

バリー「……」

クレア「ウェスカーがどう言うつもりかはわからないけど行くならやはり全員揃ってからの方がいいと思うわ」

澪「私も同意見です」

純「そうですか。ご自由に。ではこれにて」

純は全員中に入ったのを確認すると最後に自らも入りポケットから何やらボタンを取り出しそれを押す。

ガシャンと言う音と共に分厚い金属の壁が上から降りて来て部屋を塞いだ。

純「ただの扉では邪魔が入るかもしれませんから。念のためですよ。では……始めましょう」

ここまで全て計算通り

166: 2009/08/23(日) 02:03:30.55 ID:ym1byX0tO

あのメンバーの主力、クリス・レッドフィールド、田井中律、中野梓を確保。そしてネメシスを退けたと言う未知の力を持つ平沢唯も閉じ込めることに成功した。
さすがに全員ではウェスカー卿も分が悪いと独自に練った策だったがまさかここまで上手く行くとは思わなかった。
残りは所詮凡夫、どう足掻こうがウェスカー卿には勝てない。

そして彼女らは上に行かざるをえなくなる。その仕掛けは既に打ってあるのだから。
ここは前アンブレラ日本支部社長、琴吹に作らせた部屋と同じもの、

「還らずの部屋」

私はそう呼んでいる。

168: 2009/08/23(日) 02:06:12.60 ID:ym1byX0tO
━━クリス・レッドフィールド

元空軍でその頃からバリー、ジル、フォレスト達とは交流があった。
曲がったことが嫌いなクリスは空軍でも上官と揉めた結果退職、と言う彼らしい辞め方をしていた。
空軍を退職した彼はS.T.A.R.S.と言うところにスカウトされた。ICPOとは違い主にテロを専門に取り締まる警察と言えば分かりやすいだろうか。
クリスが入った時はその中でも近年増加傾向にあったバイオテロを未然に防ぐ為躍起になっていた頃だった。
彼がS.T.A.R.S.に入ってしばらくしてから起きた事件。
それがクリスの人生を大きく変えることとなった

169: 2009/08/23(日) 02:07:33.23 ID:ym1byX0tO
連続猟奇事件の調査と先遣したブラヴォーチームの捜索の為にクリス達アルファチームはアークレイ山中へ派遣された。しかし突然化物に襲われ洋館に逃げ込んだ彼らを待ち受けていたのはウェスカーが仕組んだ罠やB.O.W.、そして究極兵器タイラント。
戦いは壮絶を極めた。ブラヴォーチームはレベッカを除き全滅、アルファチームはクリス、ジル、バリー、ブラッドの四人だけだった。先程上で出たフォレスト、フォレスト・スパイヤーはクリスのチームで頭脳的な役割を果たしていた。射撃でもクリスと並び優秀
しかし、そんな彼ですらそこで命を落としたのだ。

170: 2009/08/23(日) 02:10:15.40 ID:ym1byX0tO
何人もの仲間が氏んでいった。それは自分の力が及ばなかったからだと何度も自分を責めた。
だが彼女はそんな俺を何度も励まし助けてくれた、ジル・バレンタイン。

彼女は俺にとって言葉では言い表せない、仲間…だけでもなく恋人…でも家族でもない。
ただ誰よりも大切な人には変わりなかった。

今度は俺が助ける番だジル。アークレイでは助けられなかった仲間達よ、すまない。

だが今は彼女を助ける為に力を貸してくれ…



━━━━━━━━━

172: 2009/08/23(日) 02:14:44.69 ID:ym1byX0tO
クリスは部屋内部でジルと対峙していた。
部屋を軽く見渡すがあるのは奥にボタンの様なものだけで後は何もない伽藍の様な部屋。
入って来た扉は厚い鉄の壁で閉じられている。
どう出るか…は後でジルと二人で考えることにする。
まずはジルが正気かどうかを確かめる。

クリス「ジル…何があった?」

ジル「……」

喋れないのか、と一瞬思ったがそれはジルの一言で杞憂に終わる。

ジル「クリス、頃す」

クリス「……ふぅ」

参ったな。しかし会話?が出来るのならまだ可能性はあると見た。それからも彼女の攻撃を避けつつ話し掛ける

175: 2009/08/23(日) 02:18:01.53 ID:ym1byX0tO
クリス「やめろジル!俺を頃して何になる?!」

ジル「うるさい、頃す」

ヒュン、とナイフがクリスの目の前を通過していく。ジルに手を出すわけにはいかない為にこうして回避に徹しているがそれでもギリギリだった。
敵にして初めて彼女の身体能力の高さを思い知らされる。

クリス「(このままじゃ埒が明かないな……。)」

彼女が正気ではなく何かによって操られている様な感覚は感じ取れていた。しかし人を操る方法……催眠術くらいしか思い付かないぜ全く。

クリス「これならもっと読心術でも勉強しておくんだったな」

176: 2009/08/23(日) 02:20:06.76 ID:ym1byX0tO
更にジルの攻撃は激しくなる。
避けられないと思った一撃をクリスは咄嗟に腕を掴み止める、が、それを見越した様にジルはクリスの腹に蹴りをお見舞いした。

ガッ……なんてありきたりな声が嫌でも漏れるほど強烈な蹴り。

これじゃゾンビの頭もサッカーボールの様に吹っ飛んで行くわけだ。

クリスは負けじと蹴ってきたジル足を両方で上へと持ち上げる。

ジルはその勢いを利用し、事も無げにバク宙を披露してみせた。

また少し距離が出来る二人。
バク宙の勢いのせいだろうか、ジルのBSAAの制服の胸の辺りが少しはだける。

177: 2009/08/23(日) 02:22:11.17 ID:ym1byX0tO
クリス「!?」

そこから少し見えた小さな宝石の様な物、が埋め込まれているように見えた。

クリス「(まさかあれがジル…いやジル達を。何とか外せれば…)」

隙を伺うもジルにそんなものはない。またジルのナイフラッシュがクリスを襲う。

クリス「(くっ!やはり気絶させるか何かしないとな)」

しかし戦ってみてわかった。このジルは決して記憶を失ってるわけではないことにクリスは気づいていた。
何故ならクリスが苦手な左側面から常に攻撃を繰り出して来る辺りジルの記憶もちゃんと持っている。
ならばジルの知らない技で気絶させるしかない

179: 2009/08/23(日) 02:24:27.36 ID:ym1byX0tO
クリスは一度大きく下がると初めて構えを取った。
そして来いよと言わんばかりに手招きをする。
これにジルも反応しナイフを捨て構えを取った。

この律儀さはやはりジルだなとクリスは自分の仮説に間違いはないと確信した。

ジル「シッ!」

ジルから動き出し素早い右のハイキック、クリスはこれを何とか手で止める。

クリス「(これじゃない……)」

ジルは更にそのまま足を折りたたみまた打ち出す、今度はミドルの中段蹴り。

クリスはこれを肘でブロック

クリス「(来いよ……ジル!)」

189: 2009/08/23(日) 02:54:02.16 ID:ym1byX0tO
この書き込みたいのに書き込めない煩わしさ……

誰もサルさんじゃない?って言ってくれなくて泣きそうになった

いつもは四回他に書き込んだら解除されてたんだけどさっきのは無理だった…

なのでスピードをあげたいのはヤマヤマですがサルさんになっては意味がないので

すみません

191: 2009/08/23(日) 02:55:27.91 ID:ym1byX0tO
ジルは痺れを切らし大振りの右ストレートをクリスに……

クリス「(こいつだ!)」

クリスはその拳を避けるとジルに背中を見せつつ腕を取る。
そのまま足をシフトさせジルの足をかける。足をかけられ宙に浮いたジルの体を背中を支点にし腕で引っ張り込むとジルはそのまま背中から落ち、ドサッと言う鈍い音を立てつつ地面に激しく強打された。

一本背負い

日本発祥、柔道の一番メジャーな技と言っても過言ではないだろう。

クリス「日本の格闘術はさすがに知らなかったようだなジル。」

193: 2009/08/23(日) 02:57:30.20 ID:ym1byX0tO
背中を強打した為か気を失っているジルに近づき胸元を開く。

クリス「……端から見ればただの変態だな」

最初に断っておくが俺にこんな趣味はない。今は非常時、人が溺れているのを助けたレスキュー隊員。しかし救助者は息をしていない。なら人工呼吸をする、これは当たり前の行為だ。レスキュー隊員に非はまるでない、ましてはやましい気持ちなどある筈もない。

クリス「……(心を無にしろクリス……!気持ちはいつもレスキュー隊員だ)」

そう自分に言い聞かせながらジルの胸元にある宝石を手に掴み、剥ぎ取った──────

194: 2009/08/23(日) 02:59:21.56 ID:ym1byX0tO
>>187
ありがとう…っ


────田井中律

私と聡はどこにでもいるまあ普通の姉弟だと思う。仲は結構いい方で良くゲームなんかを一緒にしたりしていた。
たまの休みには映画に連れて行ってやったりとなかなかのいい姉だなと自分で思ったりなんかもしていた。
私とは歳が4つ違う為に一緒の学校に田井中と言う名字は二つ刻まれることはなかった。
けれど聡は『大学に行ったら姉ちゃんと一緒の学校にいれるな!』とか可愛いげのあることを言ったりもしていた。
『あ、でも姉ちゃん頭微妙だから大学は難しいか』何てしっかり憎まれ口も叩く辺り私にそっくりだと思う。

195: 2009/08/23(日) 03:00:43.88 ID:ym1byX0tO
そんな聡は私のありきたりで当たり前の大切な弟であり家族で、そんな大切な人と今、私は対峙しているのだ。

話を現世に戻すとしよう。入って来た扉は固く閉ざされている。
部屋の奥には一つのボタン。
間違いない、この部屋はあれだろう。
二年前私達を切り裂いたとも言える部屋だった。

律「なるほどね…頑張って助けても結局一人は置き去りになると…。考えることが汚いな」

だがそれは前の話だ。今は外に頼もしい味方もいる、そして何よりタイムリミットはない。あの時は邸が爆発するからと揉めたが今はそれもない。なら気楽にやれる。

198: 2009/08/23(日) 03:02:41.76 ID:ym1byX0tO
律「聡、危ないからそんなもの捨てな。姉ちゃん命令だぞ」

聡「律、頃す」

律「姉ちゃん命令に逆らったらもう映画とか連れて行ってやらないぞ?いいのか?」

聡「映画……、」

おっ、反応した。見た感じ操りの類いみたいだけどそこまで根は深くないらしい。

律「また映画一緒に行こう、聡。」

聡「映画……何の……映画?」

律「お前の大好きなポケットモ○スターだ!」キランッ☆

聡「頃す」

聡は狂う様にナイフを振り回して来た!

律「い、一体何が悪かったんだ……!」

そうか…私が20ってことは聡ももう16か。

200: 2009/08/23(日) 03:07:48.65 ID:ym1byX0tO
気にしないでください


しまった年齢を加味していなかった。さすがに16歳がポケットモ○スターの映画は無理があるか。

律は考えながらも聡の攻撃を軽くかわして行く。身体能力に差がありすぎるのか聡は律に触れることすらままならなかった。

聡「クッ……ナンデダ……」

律「聡、姉ちゃんのこと嫌い?」

聡「、、、、、」

聡は顔を歪める。喋りたくても喋れないといった感じだ

律「聡、あんたは……いや、私達はこんな所にいるべき人間じゃないんだよ」

あの平凡だけど、幸せだった日常が私達の居場所なんだ。

だってそうだろう……

203: 2009/08/23(日) 03:10:58.49 ID:ym1byX0tO
律は眼を瞑り大きく両手を広げた。

聡「……なんのつもりだ」

律「私達にこの世界は似合わないよ、聡、私達は…もっと…日向(ひなた)で生きていいんだ」

急に海に投げ出された様に私達はこの畏怖の世界に来た。
生き残る為に、大切なものを守る為に、私はこの暗い海を闇雲に泳いだ。

泳いで、泳いで、疲れ果てて……沈みそうになったのを助けてくれたのはみんなだった。

彼女達は信じていた。また戻れると、あの光溢れる世界に、だから諦めるなと

だから、私も信じる。
聡を、家族を、絆を。

205: 2009/08/23(日) 03:14:41.36 ID:ym1byX0tO
人の強さとは何だろう。それは腕力だろうか、それとも知識だろうか、様々な強さがあると思うけど。

私はそれを本当の強さとは思わない。腕力で相手を捩じ伏せた所でそれが何になるのだろう。
確かに現実は甘くない、守る為に致し方なくその腕力を行使することもある。
なら腕力がないものは弱いのか?
違う、澪は腕力があるわけではない。それでも私を守る為に命を賭けてくれた。
そんな彼女が弱いわけがない

本当の強さとは「思い」の力

私はそう思っている。

だから──────

206: 2009/08/23(日) 03:17:32.29 ID:ym1byX0tO
律「聡、姉ちゃんは聡のこと大好きだよ」ニコ

聡「……ねぇちゃん」

聡の手からナイフが落ちる。

眼を開け聡を見る律

律「聡……帰ろう」

聡「……う、……うあっ…」

うん、と言う言葉を飲み込み、聡は胸を押さえながら苦しみ出した。

律「聡!?」

慌てて苦しむ聡に駆け寄る律。だが聡はそれを拒む様に手を横に振るった。近づくなと言う意味だろう。

律「胸が苦しいのか?!」

聡「姉ちゃん…俺を頃してくれ…じゃないと俺が姉ちゃんを頃してしまう」

ようやく捻り出した言葉は自分を殺せという悲痛の叫び

律「聡……」

207: 2009/08/23(日) 03:19:37.43 ID:ym1byX0tO
律「無理だよ…そんなこと。聡を頃すことなんて…」

聡「いいんだ…本当は氏んでたも同然なんだから…。父さんと母さんはウェスカーに化物にされたらしい……。俺はただ姉ちゃんへの当て付けに生き延びさされただけだから…」

律「そんな……」

両親が氏んだ事実と、今目の前にいる唯一の肉親となった弟まで失うかもしれないという現実

聡「姉ちゃん…生きて。俺ら家族の分まで…」

律「やだよ…聡…。そんなこと…言わないで」

涙を溜める律に聡は笑いながらこう言った。

聡「似合ってねーし、らしくねーよ…姉ちゃん」

210: 2009/08/23(日) 03:23:15.31 ID:ym1byX0tO
そう、いつも太陽みたいに明るくて眩しくて、その笑みが大好きだった。

聡「ぐぅ……これに逆らったせいかな…気が遠くなって来たや…」

聡の胸辺りには宝石の様なものが禍々しく輝いていた。まるで逆らえば氏ぬぞ、と言わんばかりに。

律「聡!それがあんたを苦しめてるんだな!?」

聡「ウェスカーに……つけられたんだ…。それから…意識が遠くなって……。」

律「ならそれを外せば……っ」

律は聡に駆け寄り宝石を取ろうとするも外れない。

律「くっ…このっ!外れろ!」

211: 2009/08/23(日) 03:26:20.32 ID:ym1byX0tO
力一杯引っ張るも外れない。それどころか、「があぁッ」聡は一層苦しみ出す。

律「っ……どうすれば」

聡「殺せ……!姉ちゃん!頼むから……モウ…オレジャナクナル…」

たった一人となった肉親を自分の手で殺さないと駄目なのか…。

ここまで来て…やっと会えたのに…聡…。

「律!!!諦めないで!」

律「?!」

外から声がする。この声は、「澪!」考えるよりも先に声が出た。幸い鉄の壁で閉じられていても声は聴こえるのだろう。
澪はずっと壁の前で私達姉弟を心配してくれていたのだ。

澪「律、聡君を助けられるのは律だけだから…!」

214: 2009/08/23(日) 03:30:25.42 ID:ym1byX0tO
律「ありがとう、澪」

澪は今ここにいるのは私しかいないから助けられるのは私しかいない、と言ったわけじゃない。

今聡にとって一番必要なのは私なんだ

その私が諦めたら一体誰が聡を助けるんだ

律「聡、姉ちゃんを信じろ」

律は右脚のホルスターからコルトM19を抜きゆっくりと弾を込める。

聡「姉ちゃん……」

姉ちゃんに殺されるのら本望だ。それを受け入れる様にただ両手を広げた。

律「……聡、絶対助けるから」

静かに撃鉄を起こす、

そして、躊躇わず引き金を引いた

─────────。

216: 2009/08/23(日) 03:33:29.63 ID:ym1byX0tO
>>213
これでもギリギリかと……。これ以上連投すれば間違いなくさるさんに……


澪「律…」

必ず姉弟一緒に出てきて…。

パァン!と不意に嫌な音が響く

澪「銃声?!律?!」

壁に向かって声をかけるも返事は返って来ない。

澪「律!りつ!」

それでも何度も呼びかけるとちょっとめんどくさそうなダルい声を出した律が「大丈夫だよ」と返事をしてきた。

澪「聡君は?」

律「無事無事。今はちょっと気を失ってるけどね。」

澪「良かった……」

本当に良かった。

律「それより問題があるんだ。この部屋はむぎの家にあった部屋と同じでさ。一人じゃ出られないんだ。そっちで何とかならない?」

218: 2009/08/23(日) 03:36:51.83 ID:ym1byX0tO
澪「えぇっと……」
辺りを見渡すも扉を開ける様なボタンはついていない。

澪「ここからじゃちょっと無理みたい」

律「う~ん、やっぱりあの純って子が開ける装置でも持ってるのかな」

ちょっと途方に暮れている時だった。もう一つの扉、クリスさんとジルさんが入って行った扉にバリーさん達が集まっている。

バリー「クリス!無事か?」

クリス「何とかな。それよりここの扉を開ける装置は純が持ってる装置か最上階にしかないらしい」

クレア「ちょっと待ってて。梓に話を聞いてみるわ兄さん」

221: 2009/08/23(日) 03:41:03.41 ID:ym1byX0tO
クレア「梓、無事かしら?クリスと律は無事相手を助けたのだけれど扉が開かないの。あなたの相手にしている純って子にここを開ける様に言ってくれないかしら?」

「……」

返事はない。鉄の壁が分厚いといっても荒い作りで所々隙間があるため声は届いている筈なのだけれど。

「……それは出来ませんよ」

クレア「梓……?」

いや、違うこの声は

純「この部屋に入った者を出したいのなら最上階へ行くしかもう方法はありません」

クレア「梓をどうしたの!?」

純「安心してください、今は少し会話が出来る状況じゃないだけ」

222: 2009/08/23(日) 03:43:11.10 ID:ym1byX0tO
クレア「梓!?大丈夫?!」

構わず梓に話し掛けるがやはり返事はない。

純「無駄話はここまでにしましょう、では」

それっきりその扉からは静寂だけしか返って来なかった。

クレア「梓……」

バリー「仕方ない。我々だけで最上階へ行こう。」

レベッカ「えぇ。上にいる誰かさんがそうそう出すとは思えないけど。いざとなったらレッドハーブを煎じたにが~い汁でも飲ませてでも開けさせてやるわ」

バリー「ハッハッハ!怖いねぇ」

クレア「澪もそれでいい?」

澪「えっ…、あっはい」

224: 2009/08/23(日) 03:46:18.41 ID:ym1byX0tO
私はその時少しだけ不安だった。でもそれは律が一緒にいないだけのモノかと思って流した。

バリー「てわけだクリス!ちょっくら行ってくる!」

クリス「あぁ。頼んだバリー。お前には助けてもらってばっかりだな本当に。洋館でもそうだった」

バリー「………気に、するな」

バリーさんが少し気を落とした様に見えたのは私の気のせいだろうか。

クリス「そうだ。唯達にも教えてやってくれ。胸にある宝石な様なものが操っているとな」

澪「律はもう何とかしたみたいだから唯と梓に言っておくよ」

まず梓の部屋の前でそう伝える澪。

225: 2009/08/23(日) 03:49:14.40 ID:ym1byX0tO
だがやはり返事はない。あの純って子は操られている感じはなかった。
つまり自分の意思であそこにいることになる。だとしたら何故だろう……

そんなことを思いながら今度は唯と憂ちゃんが入って行った部屋の前に立つ。
もしかしたら唯も律みたいにもう憂ちゃんを何とかしているかもしれないと言う期待を胸に声をかけた。

澪「唯ー!無事かー?」

唯「澪ちゃん?」

すぐに返事が返って来て安心した。

澪「クリスさんと律は無事に二人を助けたみたい。胸の辺りについてる宝石みたいなものが憂ちゃんを操ってるんだ。」

226: 2009/08/23(日) 03:51:56.97 ID:ym1byX0tO
唯「大丈夫、私と憂はそんなものに負けないから」

それはちょっと虚ろな声だった。

澪「そう…だよね。じゃあ私達はこの扉を開ける為に最上階へ行ってくるから!」

唯「うん…」

それで私達の会話は終わった。もっと言えることがあったんじゃないか…と思ったけど、それはただの気休めだと言わないでおいた。
唯の事は大好きだ、けど時々わからなくなることもある。唯は昔と違ってただ明るい、ってだけじゃなくなったから。

澪「それはちょっと唯に失礼か」

ちょっと含み笑いをした後4人はエレベーターに乗り込んだ。

最上階へ────

228: 2009/08/23(日) 04:00:58.10 ID:ym1byX0tO
00にてさるさん回避

────中野梓

純とは高校一年の時に一番最初に友達となった人だった。
音楽、特にジャズに興味がある、と言うことで話も合った。一緒にジャズ研究会に入ろうと言ったのも彼女だった。
それから彼女は軽音部に入ろうと言ったけど私は遠慮した。彼女は見学に行ったけどやっぱりパッとしなかった様だ。

しかしその後私は憂に誘われ軽音部のライブを見て先輩達の音楽に感動して軽音部の戸を叩く事になる。

彼女とはそれっきりあまり話すことはなくなった。

そんな彼女が今、不適な笑みを見せながら目の前に立っている。

230: 2009/08/23(日) 04:04:35.66 ID:ym1byX0tO
純「邪魔者もいなくなったですし、漸く二人きりで話せますね梓」

梓「純…あなたは」

純「初めに言っておくわね。私はあの三人みたいに操られているわけじゃないから。心からウェスカー卿を慕ってここにいるの」

梓「何であなたが!」

純「特別なのは自分だけ……とでも?」

梓「……どう言う意味?」

純「あなたはいつも誰かに愛され可愛がられてさぞ幸せでしょうね。軽音部でも仲の良くて面倒見の良い先輩が沢山居て。」

梓「…何が言いたいの?」

純「あなたのそのキャラ、ムカつくのよ」

232: 2009/08/23(日) 04:08:29.73 ID:ym1byX0tO
梓「……は?」

純「ちょっと人気があるからって調子に乗って。私の事なんて見向きもしなかった!」

梓「……」

純「えぇ……私は所詮サブキャラ、名前を出しても「誰?」とかが日常茶飯事。それで良かった……けど」

純「私を見捨ててそう仕向けたあなただけは許せなかった!」

梓「じゃああなたも軽音部に入れば良かったじゃない!」

純「そんなことになれば私が空気になることぐらいわからないの!?昔からあなたのそうゆうとこ嫌いよ。だから殺そうとした、二年前に」

梓「!?」

234: 2009/08/23(日) 04:12:11.65 ID:ym1byX0tO
純「覚えてないかしら?あなたがそんな体になった原因を」

梓「えっ……」

甦る二年前の記憶、体育館の鍵を取る時に痛め付けられた体……。

梓「まさ…か」

純「そう、私がタイラントに命令したのよ。あなたをいたぶれって。初めは殺そうとしたのだけれどそれじゃ面白くないから」

梓「そんな……なんで」

純「学校の門が閉まってたり鍵がなかったのも私が体育館へ行くよう仕向けたのよ。まあまさか真鍋和がSTARSとはね。少し誤算だったけれど」

梓「じゃあ……もしかして二年前の悪夢は…」

236: 2009/08/23(日) 04:15:08.48 ID:ym1byX0tO
純「そう、私とウェスカー卿が仕組んだのよ。琴吹紬の父親に圧力をかけ桜高校内部からバイオハザードを起こした。」

梓「そんな……じゃあ私達はただあなたとウェスカーに実験されてたってこと…?」

純「えぇ。ウェスカー卿があることがあってあなた達に興味を持ってね。それからあの計画が立案されたの。ちなみに私達はアンブレラであってアンブレラではないモノ」

梓「アンブレラであってアンブレラでないもの……?」

純「そう、私達は『Appointing Party』選定者」

梓「…せん…てい……しゃ」

238: 2009/08/23(日) 04:19:00.31 ID:ym1byX0tO
純「もっともB.O.W.はアンブレラが作った物が大半なんだけれどね。実際アンブレラが起こした実験、バイオハザードもあるわ。私達はそうね、あなた達を陥れる係ってとこかしら」

そう言って彼女はまた不適に笑った。
何が可笑しいのだろう。私達はあのバイオハザードのせいでどれほどのものを失ったと思っているのだろうか。
大切な家族や、先にあった未来。

あんなことがなければ私達は普通の日常で暮らしこんな武器を手にすることなどなかったろう。

そして私もこんな体にならなくて済んだ。

それを、何故笑っているのだろうか彼女は。

240: 2009/08/23(日) 04:22:20.57 ID:ym1byX0tO
純「あら、怒った?でも漸くあなたと私は対等になれたのよ?私の気持ち少しはわかった?梓」

梓「わかりたくもない…」

純「酷いわね。せっかく愛しの「俺」さんにも合わせてあげたのに」

梓「…どうゆうこと?」

純「警察署で会ったあの化物、ネメシスって言うんだけれどね。あぁ開発したのは紬先輩のお父さん。その実戦型実験第一号が「俺」さんなの」

何を言ってるのかわからない。わかりたくない。
それでも勝手に彼女は喋り続ける。

242: 2009/08/23(日) 04:25:07.08 ID:ym1byX0tO
純「学校の近くの家で仲良く団欒しているあなた達を見つけてね。ムカついて103型を突っ込ませちゃったの。それであなたは逃げたのだけれど「俺」って人がしつこく103型に食い下がってね」

梓「……」

純「まあ最後には力尽きたのだけどこのまま頃すのも勿体無い人材だったしあなたへの当て付けにもなると思って……」

彼女はまた笑う、堪えきれないとばかりに含んだ笑みを一気に爆発させた。

純「化物にしちゃった!したのは私じゃないんだけどね。まあ氏ぬよりはマシよね?梓」

梓「うそ……だって……」

俺さんは私を守ってくれたじゃない……あれは……幻?

245: 2009/08/23(日) 04:29:28.54 ID:ym1byX0tO

純「生きているまま脳を切り開くの、しかも麻酔なしで!「俺」さん泣いてたわ~梓~梓~って」

梓「嘘よ……うそうそうそうそうそ!」

頭が割れそうに痛い…。こんなのは全部夢だ…。

純「ところがどっこい現実なのよ!あ~面白い。あなたって本当にいい子よね、いい子過ぎてぐちゃぐちゃにしたくなるくらい良い子。」

「~~~~」

純「あら?あなたの大好きな澪先輩が何か言ってるわよ?返事しなくていいのかしら?」

何を言ってるのか私にはもう聞き取れなかった。ただ踞る。

純「仕方ないわね。私が取り次いであげるわ」

246: 2009/08/23(日) 04:32:32.83 ID:ym1byX0tO
────────

純「澪先輩達は最上階へここの扉を開けるべく向かったわ。あ~あ、氏んだわね。ウェスカー卿にかかればあの面子なんて10秒かからないわ」

梓「……」

純「すっかり傷心入っちゃって。そんな自分が可愛いとでも思ってんのかしら。あなたはただ醜いだけのサイボーグよ。これから誰にも愛されることなくその醜い姿を晒し続けるの」

梓「……」ギリッ

純「あ~いい気味。二年分の鬱憤が晴れたわ」

この人はただそれだけの為にみんなを苦しめたと言うのか
だとしたら私は、絶対に純を許さない

梓「純、少し黙って」

純「えっ?」

梓「軽音部のみんなを苦しめたこと、俺さんを苦しめたこと、バイオハザードに巻き込まれて命を落とした人、その命を落とした人の家族の恨み……」

私は、純を頃してしまうかもしれません。

梓「私が晴らす」

それでも、私を好きでいてくれますか?皆さん

249: 2009/08/23(日) 04:45:09.86 ID:ym1byX0tO


最上階についてまず目にしたのは十数個のモニター。それが合わさってこの暗い部屋を照らしている。その光の下に椅子を構え、座っている男がいた。
金髪を綺麗にオールバックにし、黒いサングラスが歪に光っている。服も漆黒を思わす黒いコート。

何も言わなくてもビリビリとプレッシャーがかかるのがわかる。

バリー「久しぶりだな……ウェスカー!」

久しい友人に話し掛けるそれではない、いつもは温厚のバリーさんが珍しく声を荒げている。

レベッカ「ウェスカー!澪達の家族を解放しなさい!」

252: 2009/08/23(日) 05:00:57.46 ID:ym1byX0tO
本来私が言うべきことをレベッカさんが言ってくれた。私はと言うとこの場の緊張感に呑まれて上手く喋れないでいた。

ウェスカー「久しぶりだなバリー。洋館以来だからもう三年になるか?レベッカ、相変わらず綺麗だ。だがそんな綺麗な君の頼みでもそう簡単にはね」

澪「約束通りGウイルスは持ってきた!家族を返してください!」

こんな時に敬語になってしまう自分が恨めしい。

ウェスカー「秋山澪か。君も面白い人材だったのだがね、覚醒には至らなかったか。」

澪「?」

ウェスカー「確かに約束は約束だ。家族は返そう」

253: 2009/08/23(日) 05:03:18.25 ID:ym1byX0tO
そろそろ……限界なんだが……寝たら……駄目か



澪「じゃあ……」

ウェスカー「私に参った、と言わせられれば家族を監禁している場所を教えよう」

すくっと椅子から立ち上がり構えを取るウェスカー。

バリー「やけに強気だなウェスカー!洋館で俺達が追い詰めた時を忘れたのか?」

マグナムを抜き構えるバリーさん。

レベッカ「投降しなさいウェスカー!」

レベッカさんもベレッタを構えウェスカーへ向ける。

クレア「兄さんの宿敵と言うなら私の宿敵でもあるわ」

M79グレネードランチャー、硫酸弾を装填しているクレアさん。

澪「……」

私も無言で銃を構えた。

255: 2009/08/23(日) 05:09:29.59 ID:ym1byX0tO
これだけの銃を前に向かって来るわけがないと。
BOWならともかく相手は生身の人間だ。頃すまで行かなくても少しは痛い目を見てもらう、なんて上からの目線で見ていたのかもしれない。

それはただの慢心で、ほんの数秒で覆される事となる。


ウェスカーは無言で間を詰めまずバリーの胸元を軽く叩くとそれだけでバリーは胃液を吐き出した。

「えっ」と呆けているレベッカの首筋に左手の手刀を見舞う。すると糸を切られた人形の様に彼女は地に伏した。
クレアは必氏にウェスカーに狙いを定めようとするが早すぎて的が絞れない内にレベッカと同様に気絶させられる。

速すぎる、人間の出せる速度じゃない

257: 2009/08/23(日) 05:12:16.34 ID:ym1byX0tO
とりあえず7時まで投下します。もう24時間ぐらい寝てないんで
それで落ちたら仕方ないです



その間私はと言うとただただそれを眺めているだけ。目の前に迫るそれをただ畏怖していた。

澪「こ、来ないで!」

銃をウェスカーへ向ける。

ウェスカー「ふふふ、緊張しているのか?安全装置(セーフティー)がかかったままだぞ?」

澪「えっ?」

慌てて私は銃の側面、安全装置を見るもロックされてな……しまっ……

その思うより早くウェスカーは私の銃を蹴り上げる。

澪「うっ……」

蹴り上げられたせいで手がジンとして痛い…怖い……。

ウェスカー「お前は、まさか自分が氏なないとでも思っているのか?」

259: 2009/08/23(日) 05:15:43.71 ID:ym1byX0tO


澪「!?」

ウェスカー「その動き、全く氏を見ていない。同じ人間は人間の命を奪わないとでも?」

まるで説教をするように語りかけてくる。この人は何が言いたいのだろう

澪「私はただ…家族を助け出したいだけです」

ウェスカー「なら私を頃す気で来い。でなければお前が氏ぬぞ」

澪「……人は、殺せません」

ウェスカー「……ハハハ、何を言い出すかと思えば。澪、お前は綺麗事だけ並べてただ自分の世界が綺麗であればいいのか?」

澪「…ならあなたは人を頃すことが間違いじゃないとでも言いたいんですか?」

261: 2009/08/23(日) 05:20:26.20 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「なら君は人間も動物も生き物なにもかも殺さないと?」

澪「食べることで頃すと言う解釈をするなら動物は頃してるかもしれない……けどそれとこれとは話が違う!動物は生きるために仕方なく殺かもしれません、けど人間は頃す必要なんてない!」

ウェスカー「それだ、澪。動物は生きるために頃す。人間は頃す必要がないから殺さない。なら頃す必要があるならどうだ?君は私を殺さないと殺される、なら生きるために動物と同じく殺せばいい」

澪「そんな屁理屈っ」
ウェスカー「これだけ言ってもわからないなら」

少し目を覚まさせる必要があるな

262: 2009/08/23(日) 05:25:29.50 ID:ym1byX0tO
ウェスカーは私から離れバリーさんの元へ行く。手には私のデザートイーグル。

澪「何を…まさか、」

ウェスカー「バリー、君は良くやってくれたよ。洋館ではいい手引きをしてくれた」

バリー「うっ……てめぇ……絶対頃す……」

ウェスカー「天国で待つ家族の元へ行ってやってくれ」

澪「やめっ」

そうしてウェスカーは、引き金を引いた─────

パァン、と渇いた音がした後、バリーさんの額には穴が開き、それだけでさっきまで人間だったものはただの肉の塊と化した。

私には一体何が起きているのかわからない。
ただわかったのは、バリーさんは氏んだと言うことだった。

264: 2009/08/23(日) 05:29:44.53 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「もう一人ぐらい頃しておくか。レベッカ、君だ」

気を失っているレベッカの頭を髪を掴んで持ち上げると銃を額に突きつける。

レベッカ「えっ……あ、ウェスカー!?」

ウェスカー「気は戻ったかね?」

レベッカ「や、やめてよ……冗談でしょ…?」

ウェスカー「君は私に銃を向けた、それは冗談だったのかね?」

レベッカ「たすけ…て、お願い、何でもするから…殺さな(ry」

パァン────

ウェスカー「哀れだな。人間氏を目前にするとこんなにも醜いとは」

265: 2009/08/23(日) 05:33:29.07 ID:ym1byX0tO
あっという間に───
私の目の前で────
二人の人生は幕を下ろした─────

人間はこんなにも簡単に氏ぬということと、人間はこんなにも簡単に人間を殺せるんだと知った。

そして、次は

ウェスカー「次は君の番だ、秋山澪」

私がああなるのだ。

澪「イヤだ……イヤだ」

ウェスカーから後退る
怖い、怖い、怖い、

奥歯がガチガチ鳴る、体がバカみたいに震える。

氏にたくない、氏にたくないと
体が訴えている。

ウェスカー「諦めが悪い……。君まで醜い姿を晒すのか?仲間との結束、命の尊さはどこへ行った?」

268: 2009/08/23(日) 05:37:04.11 ID:ym1byX0tO
逃げなくちゃ、逃げなくちゃ殺される。
それは駄目だ……氏んだら終わりなのだから。もう律にも会えない、それが一番怖い。

澪「助け……」

助けて、と言おうとして踏み留まった。ここで彼に助けを乞うことは負けを認めることだ。
即ちそれは人間の命は人間により奪ってよい、等と言う彼のふざけた持論に負けることになる。
なら私達は何のためにお互いを助け合って来たのか。

震えた声で言う

澪「……家族を返してください」

ウェスカー「なら私を殺せ」

澪「それは出来ません」

ウェスカー「……話にならん」

277: 2009/08/23(日) 06:58:47.11 ID:ym1byX0tO
─────────

聡「全く!銃で壊すなんて無理があるよ姉ちゃんは!」

律「上手くいったんだからいいだろ~?それに私が可愛い弟を頃す様な真似するわけないだろ♪」ニコッ

聡「ったく……」

そう、あの時律はコルトM19で聡の胸にある宝石を狙い撃った。
普通の357マグナム弾ではまず貫通する、そこで律は殺傷力の低い鉛の弾を使ったのだ。
この弾は昔レオンと銃を撃つ練習の際マグナムの弾代もバカにならないと安い鉛弾を買い込んだ残りだった。

鉛は銅より熱に弱く、また硬度も低い。

宝石の硬度もそれを助けた結果だった。

278: 2009/08/23(日) 07:00:01.42 ID:ym1byX0tO
寝ます……



律「しかしデカくなったな~聡。180くらいあるんじゃね?」

聡「そうかな?」

律「私が154cmだから……」

聡「な、何だよ引っ付くなよ!」

律「やっぱりデカい!16の癖に生意気だ!」

聡「身長に歳は関係ないだろ…」ドキドキ

何意識してるんだろう。でも姉ちゃん綺麗になったな…って何を言ってんだ俺は。

律「まあ聡が無事で良かった!後はここが開くのを待つだけだけど…。ちょっと聡外に様子を見に行ってくれない?私がボタン押しとくからさ」

聡「バカ言え。それなら俺が押すよ。」

律「えっへへ~嘘だよ嘘♪」

293: 2009/08/23(日) 12:09:09.70 ID:ym1byX0tO
聡「嘘かよ!」

何だよ……嬉しそうに笑いやがる。俺が氏ななくてそんなに嬉しかったのかな……だとしたら嬉しいな…けど…父さんや母さんは…。

聡「姉ちゃん……その…父さんと母さんは……」

律「いいんだ、聡が責任を感じることない。」

聡「でも……」

律「聡……」ギュッ

聡「なっ///」

律「私はあんただけでも生きてくれてて嬉しい。確かに父さん母さんが氏んだのは悲しいけど…それでも、二人で、姉弟で頑張って生きていこう。」

聡「姉ちゃん……うん……うんっ……」

思わず涙が溢れてしまった。
辛く何かないのに

294: 2009/08/23(日) 12:11:25.68 ID:ym1byX0tO
でも俺はわかっていた。このまま姉ちゃんに甘えていては駄目だと。
少しは成長したところを見せないと田井中家の長男として恥だ。

だから、言った。

聡「姉ちゃん、行ってくれ。澪さんのこと心配なんだろ?」

律「えっ…」

的を得ている意見に律の表情が少し曇る。

その顔はさっきから明るく振る舞っているが時折見せる顔と同じだった。

聡「俺が行っても足手まといになるだけだ…けどこうして姉ちゃんを助けることで役に立つことは出来るから」

律「聡……」

聡「だから、行ってあげてくれ。」

295: 2009/08/23(日) 12:14:37.14 ID:ym1byX0tO
いつの間にか男の顔になりやがって……。
私はその顔にレオンを見た、聡も彼の様に立派な男になったんだなと歓心した。

律「聡、立派になったな。姉ちゃん嬉しいよ」

聡「まあな!」

律「ちょっとは謙遜しろよ!」

聡「へへっ//」

律「それじゃ行って来る。私達が来るまで開けちゃ駄目だからな!必ず迎えに来るから」

聡「わかった!」

そう言ってボタンを押す聡、

必ずみんなで帰ろう、そう胸に誓い私は外に出た。

聡「姉ちゃ~ん大好きだぞ~」

律「おいっ///」

全く……私も大好きだぞ、聡
勿論弟的な意味で、だ

298: 2009/08/23(日) 12:18:35.11 ID:ym1byX0tO
─────────

「んン……ここは?」

クリス「調子はどうだ?ジル」

ジル「クリス……。」

ふと甦る記憶、そうだ…私は。

ジル「また…迷惑をかけたわね、クリス」

クリス「気にするな。俺達はチームだからな」

ジル「クリス……」

本当にありがとう。

クリス「それより上に上がったバリー達が心配だ。扉がまだ開かないところを見ると交渉は難航しているみたいだな。ウェスカーが大人しく交渉に応じるとは元々思ってはいないが」

ジル「ウェスカー……彼は化物よクリス…急がないとバリー達が危ない!」

299: 2009/08/23(日) 12:24:08.57 ID:ym1byX0tO
クリス「どう言うことだ?」

ジル「私は救助者を見つける為にここからラクーンシティに放送をしようと思って最上階へ上がったのだけれど…そこにウェスカーがいたの。それに…確かレオン、彼もいたわ」

クリス「律と組んでいるレオンがいることは予想していたが、では彼はまだ最上階に?」

ジル「いえ……ウェスカーの一撃を食らって最上階から……落ちたわ」

クリス「…そんなバカな」

レオン程の屈強な者がそう簡単に……

ジル「そして私もウェスカーに捕まり……P30と言う薬物で体の自由を奪われて……」

クリス「そうか…」

300: 2009/08/23(日) 12:29:14.17 ID:ym1byX0tO
ジル「これからどうするのクリス?」

クリス「俺がボタンを押すから君は最上階へ向かってくれ。」

ジル「クリス、それを言うなら私がボタンを押すから、でしょう?まだ体の自由が完璧には効かない私が行ったって足手まといになるだけよ」

クリス「すまない……必ず帰ってくる」

ジル「えぇ。それまで休ませてもらうわ」

ジルはボタンを押しクリスを見送る。

ジル「みんなをお願いね、クリス」

クリス「あぁ、任せろ」

彼らの信頼関係はより強固なモノとなっていた、この部屋のおかげで

303: 2009/08/23(日) 12:34:48.60 ID:ym1byX0tO
─────────

久しぶりに戻って来たホールには先着がいた。

律「クリス!無事だったんだな!」

クリス「律か。そっちもな。これから上へ上がる、一緒に来てくれるか?」

律「勿論。そのつもりで出てきたんだ。」

クリス「梓と唯にも声をかけたが応答はなかった。心配だろうがまずは上に行ってここの扉を開ける。バリー達も戻って来ないから心配だがな。」

律「…うん!(待ってろよ…澪)」

そうして上に上がる二人。上で何が起きているかなど想像出来ぬまま……。

─────────

304: 2009/08/23(日) 12:38:59.98 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「いきなり腕を撃ち抜くとは思い切りがいいな」

律「目の前で仲間が首絞められてたらそれはね……それにあんたに遠慮はいらないだろ…アルバート・ウェスカー!」

ウェスカー「ククク……ようやく楽しめそうだ。そこに転がっている奴らでは前座にもならなかったからな」

クリス「!!?まさか貴様!!!」

ウェスカー「安心したまえクリス。君の大事な妹さんは頃していない。もっとも他の二人は……」

クリス「バカな……!」

クリスは横目に二人を見るもそれはもう機能していないモノだった。

305: 2009/08/23(日) 12:43:50.35 ID:ym1byX0tO
クリス「貴様ァ!」

渇いた銃声が何度も耳を衝く、銃弾は虚しくも空を切りウェスカーは不適に微笑んでいる。

ウェスカー「その程度かクリス?仲間を殺された恨みを持ってしても当てることも叶わないか……これでは律に期待するしかないようだな」

律「消えた…?!いや…まさか」

クリス「ジルの言っていたことは本当のようだな。化物め!」

ウェスカー「君達はその化物を倒さねばならないのだよ!私を倒さない限り家族も助からない、まあもう逃がすつもりもないがな!」

クリス「律、頃すつもりでやらなければこっちが殺られる」

律「……わかってる」

クリス「奴の手品はわからないが同時に仕掛ければ何とかなるかもしれない、俺が狙い撃ち消えて奴が出てきた瞬間を狙い撃て、いいな?」

律「わかった」

ウェスカー「作戦会議は済んだか?」

クリス「行くぞ!」

まずクリスが走りながらウェスカーに発砲する。ウェスカーは相変わらずそれを避ける、まるで先程のリプレイを見ているようだった。

律「……そこだ!」

しかし避け終わりを狙い律がマグナムで脚を狙い撃つ。
直接急所を狙わないのはやはり彼女の甘さ故だろう。

306: 2009/08/23(日) 12:46:45.77 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「おっと、惜しいな!」

間一髪でそれをかわすウェスカー、直ぐ様走り込んで来たクリスを蹴り込む。

クリス「なっ……」

咄嗟に防御するもあまりの威力に体ごと宙に浮き2mほど飛ばされるクリス。

クリス「バカな……あれをかわすとは…そしてこの威力」

クリスの額に汗が滲む。

律「クリス!挟み撃ちだ!」

律はウェスカーの後ろに回り込むと奥にいるクリスには当たらない様少しズレた位置でウェスカーを狙う。

クリス「OK!」

クリスもそれに応じてウェスカーをほぼ同時に狙い撃った。

309: 2009/08/23(日) 13:00:17.01 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「狙いは悪くない……が」

律「消え……」

クリス「消えただ……ゴアッ…」

完璧にその場から消えた瞬間いきなりクリスの目の前に現れ顎を跳ね上げる。
ゴスッと鈍い音が聞こえクリスは血を吐きながら倒れ込んだ。

律「クリス!!!」

ウェスカー「瞬道歩足、瞬歩、瞬動など呼び方は多彩だが昔から伝わる業でね。極めればある程度は誰でも使える。もっとも私ほど早く動ける者はいないだろうが」

律「……つ、強すぎる」

思わずそんな言葉が出てしまう程にその強さは圧巻だった。

310: 2009/08/23(日) 13:03:47.64 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「さて、残るは君一人だ。降参するかね?」

律「誰が!それにまだ私一人ってわけじゃない。こっちには梓や和、そして切り札(ジョーカー)の唯がいる。私が氏んだって彼女達があんたを絶対……」

ウェスカー「真鍋和か、残念だな。彼女なら今頃蛇の餌だ」

律「…………」

ウェスカー「彼女様に作りあげられたB.O.W.、ヨーン。彼女の攻撃や行動パターンは二年前にコンプリート済みだからな。彼女が生きてここへ来る確率は……」

律「ククッ……ハッハッハ」

高らかに笑いあげる律

ウェスカー「……何が可笑しい?」

312: 2009/08/23(日) 13:08:44.72 ID:ym1byX0tO
訝しげに見るウェスカーに笑いながら答える律。

律「これが可笑しくないわけないだろ?二年前にコンプリート済み?ハハハ!和があれから変わってないとでも?」

ウェスカー「人間そう簡単には変わらん。行動パターンや動向が知れていれば容易い」

律「あんたは私を過大評価してるみたいだけど逆に和を過小評価し過ぎた。和は私なんかよりもずっとず~っと強いよ」

ウェスカー「ほぅ……」

律「いや、過小評価じゃないか。あんたは恐れたんだ。和を。だからそんな回りくどいやり方をした、違う?」

ウェスカー「………」

313: 2009/08/23(日) 13:14:29.91 ID:ym1byX0tO
律「よ~んだからヨン様だか知らないけどそんなチンケなB.O.W.……和はものともしないよ」

ウェスカー「ふふふ、そうか。念のため彼女にあれを要請しといて正解だった。」

律「用意周到だねウェスカー。そんなに和が怖い?」

ウェスカー「減らず口を。私に怖いものなどない」

律「いや、無意識下での恐怖心があんたにそんなことをさせてるんだ」

ウェスカー「ふふ、わかったぞ。そんな減らず口を叩いて少しでも援軍が来るのを待ってるんだな?可愛い真似をする…」

律「…来た」

律の目には上がってくるエレベーターが見えていた

317: 2009/08/23(日) 13:20:08.16 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「あれに真鍋和が乗っていると?」

律「あぁ、私にはわかる。友達だから」

ウェスカー「以心伝心と言うやつかな?私にはそんなもの無縁だが。ならいいだろう……少しだけ待ってやるとしよう」

律「(和……)」

二人は静かにエレベーターを見据える。

そしてエレベーターは遂に到着し、その扉が開いた──────。

318: 2009/08/23(日) 13:25:43.18 ID:ym1byX0tO
数時間前─────────

単独行動は得意中の得意だった。この二年間何度も一人でこの氏地に一人で下ろされたものだ。
アルファチーム唯一の生き残りである私への上層部の風当たりはやはり強かった。

元々クリスはかなり無茶をしていた為アルファチームはS.T.A.R.S.の目の上のたん瘤だったのだ。
それなのに一人ノコノコ帰ってきた私をこうして居座らせてるのはやはり私の父親のおかげだった。
それから私は信頼を得る為にどんな無茶な任務にも従い完遂し、生き残って来たのだ。

だから、単独行動は得意だった。

319: 2009/08/23(日) 13:31:40.87 ID:ym1byX0tO
和「それに今は一人じゃないから…ね」

唯や律、澪に梓、みんなの信頼を胸に私はラクーンシティ警察署の電力を上げるため電力所に来ていた。

中は簡単な作りでアネット言われた数字の羅列の前に到着した。

和「k6e2i4o3n……これね……」

そのレバーを上げる。これで警察署にかなりの電力が行った筈だ。

さて、早く合流しないと……。

そうしてそこから出ようとした時だった。

「シャアアアアァァァ」

和「何……」

奥から何かが来る、

和「大きい……」

そこには全長10mはあろうかと言う蛇がいた。

324: 2009/08/23(日) 13:40:16.08 ID:ym1byX0tO
1000までには終わります


和「今は構ってる暇ないのよね……悪いけど逃げさせてもらうわ」

そう言って素早く踵を返し元来た道を帰る和。しかし少し走った所でまた立ち止まった。

和「罠……か」

電力が足りない時点で予想はしていたけどね。ウェスカー、よっぽど私には会いたくないのかしら。

和「そんな歓迎されたらもっと会いたくなるじゃない」ギリッ

数m前のスーパータイラントT103型、後ろからは蛇のB.O.W.、その二体を相手にしても尚彼女は笑っていた。

和「迷いはない、やっと全力でやれる」

行こう、愛刀。

和「柳生新陰流、参る」

326: 2009/08/23(日) 13:45:59.57 ID:ym1byX0tO
─────数分後

そこには真っ二つになった蛇だったモノの残骸と、綺麗に袈裟斬りされ停止したタイラントの姿があった。


─────────


上がってくるエレベーターの扉が開く。
しかしその中には誰もいない。

ウェスカー「……無人だと?」

解せぬと言った顔でエレベーターを見据えるウェスカー。

その瞬間─────

タッタッタッタッタッタ────

靴が地面をリズム良く刻み、蹴り駆ける音が聞こえた。

「元凶!!!!!!!」

凄まじいスピードで階段から駆け上がって来た和がウェスカーに斬りかかった。

327: 2009/08/23(日) 13:52:06.87 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「真鍋和!!!!!!来たか!」

ウェスカーはその一撃をかわす、が、この奇襲が勝負処と見たのか和は更に追撃をかける。

和「逃がさない!」

柄のボタンを押すと切っ先が飛び出し、ウェスカーへ向かう。

ウェスカー「ふんっ…」

それを和から見て右に避けるウェスカー。

和「まだまだァ!」

その切っ先についている鎖をグッと引くとその慣性で切っ先は曲がり、その切っ先と鎖が出ている柄の間にいるウェスカーを支点にしぐるぐると巻き付いた。

ウェスカー「くっ……」

和「今よ律!撃って!!!!!」

328: 2009/08/23(日) 13:56:28.60 ID:ym1byX0tO
律「う、……」

いざ撃てと言われると指が震える。確かに相手は憎むべき相手だ。
私達の家族を人質にし、バリーやレベッカを頃した。

殺されてもおかしくない、でもだからと言って撃つのか。
撃っていい理由になるのか、命を奪っていい理由になるのか。

律「くっ……」カタカタカタ

銃を持つ手が震える、狙いが定まらない。

和「撃って!!!律!!!」

律「出来ないよぉ!」

銃を両手で弱々しく持つ、顔は俯いたまま

律「撃てない…いくらあいつが憎くても…撃って頃したら同じになるから…」

和「律……」

329: 2009/08/23(日) 13:58:13.60 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「ハッハッハ……クックック……ふざけるなァッ!」

ウェスカーは巻き付いている鎖から無理矢理手を出しその鎖を引っ張る。

柄を握っていた和は放すのが遅れその力に引っ張らる。

和「なっ……」

そのまま中空に投げ出され落ちる先にはウェスカーがいた。

ウェスカー「ふんっ!」

その落ちてきた和の腹を蹴り上げるウェスカー。

和「、、、、っ」

声にもならない叫び声が和から発声られる。

ウェスカー「何が同じになる?そんなに綺麗なままでいたいのか?そんなに人を頃すことが醜いか?田井中律!」

330: 2009/08/23(日) 13:59:40.70 ID:ym1byX0tO
律「和……」

和「ゴフッ……り…つ、逃げなさい……」

ウェスカー「ハッハッハ!君が私を生かしたせいで彼女が氏ぬぞ!?それでも撃たないのか?」

律「わ…私は……」

和「いい……の、律……。確かに……そうだったわ……ね。復讐は誰かが…我慢しなくちゃならない…。アネットやシェリー達の様に……」

ウェスカー「ふん、ラクーンシティの亡霊、ウィリアム・バーキンの家族のことか。ウィリアム、彼も道を誤った、それは彼が家族等と言うものに囚われていたからだ。」

律「違う!人を頃してまた恨まれて、そんなことは間違ってる…ウェスカー!」

331: 2009/08/23(日) 14:04:03.45 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「三文小説のような詭弁さだな。そんなものはお前の価値観に過ぎない。」

律「それはあんただって同じだろ?!何で私達を殺そうとするんだよ!?そうしない道だって……」

ウェスカー「君達と私達は相容れない、……私はあの時、君達の音楽を美しいと思ってしまったから」

律「……どう言うこと?」

ウェスカー「昔話はここまでだ。互いの考えなど私にとってどうでもいい。ただ私はこの腐った世界を《選定》する。その実験に君達を使ったに過ぎないのだから」

律「イカれてる……」

律は素直な気持ちを口にした。

332: 2009/08/23(日) 14:09:27.68 ID:ym1byX0tO
「人の人生を、あなたはなんだと思ってるんです?」

ウェスカー「ん?」

律「梓!」

梓「みんなを苦しめて、陥れて、それが何になるんですか……!私は、私は!あなたを絶対許さない。アルバート・ウェスカー!」

ウェスカー「純をどうし(ry」

その言葉を言い切る前に梓はウェスカーを殴りつけた。

迅い、ウェスカーでさえ反応出来なかった。

続いて二撃、顔面と脇腹に決まる。

ウェスカー「面白い!」

ウェスカーも応戦する。そこからは一進一退の攻防が続き、痺れを切らした梓の体が赤く光る。

梓「トランザム!」

335: 2009/08/23(日) 14:15:21.34 ID:ym1byX0tO
ウェスカー「ぐぅ……」

稲妻の様な速度での連撃がウェスカーを襲う、速度の次元が違う。

ウェスカーも対抗し動くがまるで意味がない。

梓「私は、加速する」

ウェスカー「確かに凄まじいスピードだ、しかし使い手が凡夫ではな!」

梓の動きを見越しウェスカーは先に拳を突き出す。さっきまで攻撃を受けていたのは梓の攻撃パターンを予測するためだった。

梓「くっ……!あっ……」

突き出された拳に自ら当たりに行ってしまう梓。
あまりのスピードの為にブレーキが効きにくいのは諸刃の剣だった。自分の速度と相まってウェスカーの拳を喰いその衝撃で小さな体はまるで交通事故にでも逢った様に吹き飛び壁に激突した。

336: 2009/08/23(日) 14:19:51.98 ID:ym1byX0tO
律「梓!!!」

ウェスカー「惜しいな、その力殺戮に使えば君は最凶になれた」

梓「そんなもの……なりたくないです……私がなりたいのは……世界一の…ギタ…リスト…」ガクッ

律「あずさぁ……」

ウェスカー「これでわかったか?君は私を頃すために全力で戦えばいい。君ならば私を殺せるかもしれないからな」

律「そんなに氏にたいなら自分で氏んだらいいだろ!私達を……私達の夢を巻き込むな!」

ウェスカー「それは綺麗事だ。世の中には1秒に何万もの人が氏ぬ。人間は、氏ぬんだ。ただどうしようもなく汚い。それがわからないか?」

337: 2009/08/23(日) 14:23:14.14 ID:ym1byX0tO
律「そんな世界観をあんたは押し付けるのかよ!?私達は、ただの女子高生で……ただ幸せに暮らしたかっただけなのに!」

ウェスカー「残念だったな!こんな悪魔に目をつけられるとは!ならば私を頃してその日々を取り戻してみろ!」

律「もうあの日々は戻らない…でもこれからは変えられる。その変えられる日々までもあんたを頃すことの為に捨てたくない!約束したんだ!みんなで無事にここを出るって!約束したんだ!何度も何度も何度も何度も!みんなでまたライブをしたいって!!!」

「諦めなければ叶うよ!りっちゃん!」

──────────

341: 2009/08/23(日) 14:27:40.33 ID:ym1byX0tO
─────────

はあ……はあ……はあ……。

純「気は……済んだかしら……私をボロボロにして……」

私は怒りに任せて彼女を殴った。らしくないと言われるとそうだ、けど私だって怒る。
沸点の限界を超えたのだ。
でも、そうやってみて気付いた。

こんなことをしても何もならないんだと
こうして彼女をいたぶっても俺さんは戻って来ない、私の大好きだったお父さんもお母さんも戻って来ない。

ならどうしたらいいのだろう。どうすれば全て上手くいくのだろう

わからない。。。

私はただ、彼女に近寄り、抱き締めていた

343: 2009/08/23(日) 14:33:54.02 ID:ym1byX0tO
純「……何のつもり」

梓「もう……やめよう。私達友達だったじゃない……」

純「散々殴っておいてそれ?笑えるわね」

梓「わからないの。どうしたらまたあの暮らしに戻れるのか。あなたを怒りに任せて殴れば少しは気が晴れると思ったけど……違った」

純「それで?次は寛容になったのかしら?」

梓「唯先輩は、こうして抱き締めてくれた。あなたの言う醜い体の私を優しく」

純「……。」

梓「私は…あなたとわかり合いたい。こんなことをしたのは許せない、けど……それをずっと恨んでたら……終わらないから。これで、終わりにしよう」

344: 2009/08/23(日) 14:39:18.03 ID:ym1byX0tO
純「……私は、ずっと一人だった。中学三年の時両親は仕事先の事故で二人とも氏んだの。二人は、アンブレラの社員だった。」

梓「そう…」

純「そんな私を拾ってくれたのが、ウェスカー卿だった。彼は確かに万人からすれば悪だけれど、私にとってはたった一人の家族だった。無愛想で、本当に笑った顔さえ見たことないけれど…それでもウェスカー卿のこと大好きだった。」

梓「うん…。」

純「彼があなた達をターゲットにした時、正直迷ったわ。でも、ウェスカー卿に嫌われたくなかった。だからあなたを憎むことで私はそれを正当化した」

345: 2009/08/23(日) 14:45:27.65 ID:ym1byX0tO
梓「……純は、子犬、好きだったよね。昔私に預けてくれたことあったよね」

純「うん……」

梓「純は、そんな子犬が殺されても……悲しくない?」

純「悲しいよ…」

梓「同じなんです…みんな。辛いことは嫌なんです…。純、私達…まだやり直せるよ」

純「でも……ウェスカー卿を……裏切ることは出来ない」

梓「純……」

純「行って、梓。私が出来るのはこれだけだから」

純は奥へ行きボタンを押した。

梓「ありがとう……純」

純「…暖かかった、それが…正しいって思ったから。後、あの時子犬を預かってくれた時のお礼……してなかったから」

梓は無言でニコりと頷いて、部屋を出た。

348: 2009/08/23(日) 14:50:25.68 ID:ym1byX0tO
仔猫に脳内変換よろしく!



平沢唯───────

私は自分で言うのも何だけどいつも能天気でゴロゴロしてるのが大好きで…。
高校までずっとそうだった。それでも私が駄目にならなかったのは憂がいたから。
憂がいつも私をどんな面でも助けてくれて…支えてくれた。

ほんと駄目なお姉ちゃんだよね…良く愛想をつかされなかったぁって思うよ。

憂、憂は私のこと…嫌いかもしれないけど

私は憂のこと大好きだよ。

だから……

350: 2009/08/23(日) 15:01:27.61 ID:ym1byX0tO
唯「憂、生きていてくれて嬉しいよ」

憂「……」

憂はただナイフを不器用に両手で握っている。憂には似合わない、憂に似合っているのは料理を作る包丁だけ。

唯「憂、戻ろう……一緒に」

憂「オネェチャン……」

憂の目からは涙が溢れている。

唯「憂、ずっと…ずっと迷惑かけてごめんね……。私が駄目なお姉ちゃんだから……憂にいっぱい迷惑かけたよね」

違う、

唯「私は憂が何でもやってくれるからって甘えてた……その甘えが憂を苦しめて……」

苦しんで何かいない

351: 2009/08/23(日) 15:06:57.49 ID:ym1byX0tO
唯「むぎちゃんちでも……私が弱いから……憂を助けられなくて……それがこんなことに……」

違うのお姉ちゃん。お姉ちゃんは悪くないよ。

唯「だから……私しっかりしようって……。次に憂に会っても相変わらずだなぁって…笑われないように…警察官になったんだぁ…私がだよ?」

偉いね…お姉ちゃん。すっかり大人になったんだね。ちょっぴり寂しい気もするけど…

唯「みんなを…憂を……私自身の力で守りたかったから……。」

お姉ちゃん……

お姉ちゃん……っ

353: 2009/08/23(日) 15:12:33.05 ID:ym1byX0tO
憂「おねぇちゃん……」

唯「ういぃぃぃ……ごめんねぇ……辛かったよね……苦しかったよね……私が……私が……」

違うよ、お姉ちゃん。私は……

しかし無情にも胸の宝石が光る

憂「そうよ、お姉ちゃんが悪いんだから」

唯「う…い…?」

憂「お姉ちゃんがいっつも私に負担をかけるから!こんな…こんなことに……」

違う!違う!違う!
やめてよ!何を言うの?!

お姉ちゃんはちっとも悪くない!お姉ちゃんは私を守ろうといつも必氏で

唯「ごめんね……憂。」

憂「謝ることしか出来ないんだ…ならもういいよ。お姉ちゃんなんてもういらない。」

355: 2009/08/23(日) 15:18:18.47 ID:ym1byX0tO
ナイフを強く握りしめる私。こんなことしたくないのに……体が勝手に……。

唯「それで…憂の気が済むならいいよ」

憂「……うああああっ」

ナイフを持ったまま走った。大好きなお姉ちゃんに。私はどこかでこうなることを望んでたのだろうか
だから体は歯向かえない……自分の本能だから。

これでお姉ちゃんと私の関係は……ただの殺人者と被害者に分別される。姉妹には、二度と戻れない。
そう思っても尚足は止まらなかった。

そして─────

そのナイフは…深く、深く刺さり込んだ。

まるで姉妹の絆を断つ様に

359: 2009/08/23(日) 15:28:30.08 ID:ym1byX0tO
憂「!?」

憂は驚きを見せた。本心も外心も、同じく。

お姉ちゃんは向かって来た私を拒みもせず逃げもせず……ただ両手で広げ抱き締めた。

左脇腹からはナイフによりおびただしいほどの血が流れ出している。

憂「おね……ぇちゃん……?どうして……?」

唯「わたしに……は、憂を……拒むことなんて…ゲホッ…出来ないから」

憂「お姉ちゃん……おねぇちゃああん!!!!!」

扉の向こうから声がする、澪さんだ。

澪「唯ー無事か~?」

何か言ってる。でも私の耳にはそれは入らなかった。

唯「澪ちゃん?」

360: 2009/08/23(日) 15:30:48.26 ID:ym1byX0tO
信じられないことに彼女は普通に受け答えを始めた。二、三言葉を交わすとそれは終わりぐったりと表情を見せるも決して倒れようとはしない。

唯「良かった……心配してほしくなかったから……上手く……しゃべられたかなぁ……私」

口調が怪しい、もう意識を保つのも必氏な状態だった。

唯「操られてるとか……そんなの関係ないよ……だって……目の前にいるのは……紛れもなく私の……たった一人の…大好きな…誰よりも大好きな…妹の憂だもん」

私の胸にある宝石は、その言葉で弾け飛んだ。

憂「お姉ちゃぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!!!」

364: 2009/08/23(日) 15:34:55.76 ID:ym1byX0tO

ナイフを抜き唯の抱擁を強く受け止めた。

唯「おかえり……うい」

ずっとずっと聞きたかったその台詞を聞いて……私は涙を拭いながら直ぐ様こう言った。

憂「ただいま……お姉ちゃん」

そうして、唯は……

唯「う……い……幸せに……ね」

ぐしゃりと地面に倒れ込み。氏んだ。

憂「おね……ちゃん?」

ウソ……そんな……お姉ちゃん……私が……あ……あ……

憂「あああああぁぁぁぁぁ!」

ただ叫んだ。この現実を否定するように、ただ、叫んだ。

私は、何てことをしてしまったんだろうか

367: 2009/08/23(日) 15:43:37.32 ID:ym1byX0tO
地面に横向きになって倒れているお姉ちゃんをゆする。

憂「お姉ちゃん……朝だよ……起きて……」

その度にお腹の傷から血が滲み出す。

あんなに暖かったお姉ちゃんの体が……どんどん冷たくなって行く。
それはまるで私とお姉ちゃんの別れを表しているようで怖い。私は必氏にその手を握りしめ暖めようとした。

憂「お姉ちゃん……ごめんなさい……」

唯「」

返事はない

憂「お姉ちゃん……起きて」

唯「」

起きない

憂「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

唯「」

唯はもう、ここにはいない。

369: 2009/08/23(日) 15:46:56.91 ID:ym1byX0tO
憂「もう……イヤだ。私も……氏ぬ!」

ナイフを乱暴に刃事掴み自分の喉笛に突き立てる。

唯『憂、幸せにね』

憂「!?」

また、そう言われた気がした。

手からナイフが滑り落ちる

憂「やだよ……お姉ちゃん……お姉ちゃんがいない世界なんて……生きていたくないよ……」

私はお姉ちゃんに抱きつきながら精一杯懇願した。

憂「私の命なんかいらない!だからお姉ちゃんを……」

私の大好きな大好きなお姉ちゃん。

私のせいで氏んでほしくない…だから。

憂「唯お姉ちゃんを返して!!!たった一人のお姉ちゃんなの!!!」

その瞬間体が熱くなった、気がした

370: 2009/08/23(日) 15:50:20.11 ID:ym1byX0tO
二年前、彼女もウロボロス入りの食事を口にしていた。怪しまれない様に、それと唯に抗体があるのならその妹の憂にも抗体があるだろうと踏んでのウェスカーの指示だった。

そんな話は今は関係ない。問題は憂にもウロボロスによりもたらされた能力があった。
抗体を媒介とし、そのDNAを認めた者のみに与えられる力。

澪〔Reai photo〕
  現写

律〔As possible lucky〕
 可能な限りの幸運

唯〔Prophetic dream〕
 正夢

〔God voice〕
 神の声

そして憂は……

〔Absolute treatment〕
絶対治療

371: 2009/08/23(日) 15:54:16.41 ID:ym1byX0tO
憂の手からウロボロスが混じった血液が、唯の傷口に流れ込む。
普通の人間ならこれだけで氏亡の恐れがあるが唯もウロボロスを取り込んでいるのと、姉妹で血液型が同じと言うところが幸いした。この点で言えば絶対治療、とは少し矛盾する。
しかし、流れ込んだウロボロスは唯の体内を巡り活性化し、生きるために必要なことを行う。
血が不足しているなら血を作り出す。
これはさっきまで生きていた、人間だからこそだ。
氏んで何日も経った氏体はもう人間ではないのだから。

憂のウロボロスは唯を認め、活動を開始した。

唯の心臓はまたゆっくりと動き出し、傷口は次第に塞がっていく。

374: 2009/08/23(日) 15:56:38.19 ID:ym1byX0tO
トクン……トクン……

憂「えっ……」

音が聞こえる……暖かい……音が。

唯「憂……」

お姉ちゃんの柔らかな手が私の顔を撫でてくれてるのがわかる。

憂「お姉……ちゃん。お姉ちゃん!」

私はそれを確認するようにまたお姉ちゃんを強く抱き締めた。

唯「憂は……痛みのわかる子だよね…。自分が痛くなくったって…自分がされて痛いことや悲しいことは……しちゃダメだって……わかる子だよね…」

憂「ご…めんなさぁい…」

泣いても泣いても、いくら拭っても…おかしいな……お姉ちゃんの顔が……見えないよ

375: 2009/08/23(日) 16:00:15.08 ID:ym1byX0tO
唯「わかってくれたらいいんだよ……憂。また一緒に……幸せに暮らそう」

憂「ぅんっ……うんっ……」

こうして、唯と憂の長い……長い……長い……すれ違いは幕を閉じた。
二年前の様に、また笑い合って過ごせる日々が訪れるのだろうか。
今は、わからない。

ただ、この先どんなことがあろうとこの姉妹は、

ずっと一緒であろう

それだけは、わかりきっていた。

377: 2009/08/23(日) 16:06:03.76 ID:ym1byX0tO
─────────

唯「憂……行こう」

私は何とか立ち上がる。少しふらつくけれどお腹の傷は塞がっていた。
どうしてかはわからないけど、きっと憂が何かしてくれたと言うことだけはわかった。

憂「大丈夫?お姉ちゃん……」

唯「うん!憂のおかげだよ!」

憂「良かった……」

唯「憂……?」

憂はずっと私のいない方を見つめたまま動いていない。

憂「お姉ちゃんが無事で良かった……」

唯「憂……もしかして…」

憂の目にはもう、姉の姿が映ることはなかった。
P30に無理矢理抵抗した後遺症として憂は光を失っていた

380: 2009/08/23(日) 16:11:12.78 ID:ym1byX0tO
憂「……ごめんね……お姉ちゃん」

唯「憂……大丈夫だよ」

私が憂の目になるから

ずっと、ずぅっと……

そうしてまた私は、憂を大事に抱き締めた。

憂と言う字はどうしても暗い印象がある。
でも、隣に人が居れば優になる。
本当に優しい子なのだ

憂をもう一人にはしない。
私はそう胸に誓った。

でも憂は違った

憂「お姉ちゃん、行ってあげて。」

唯「憂……」

憂「私は行っても足手まといだから…」

唯「そんなこと……」

憂「でも、ここからお姉ちゃんを出すくらいは出来る…お姉ちゃんの、みんなの役に立ちたいから」

それが迷惑をかけた私の償い

381: 2009/08/23(日) 16:14:53.88 ID:ym1byX0tO

憂「みんな、待ってるよ」

彼女はそんな弱い人間じゃなかったことを思い知らされた唯

唯「憂……ありがとう。必ず迎えに来るから。一緒にここを出たら…一緒にケーキ焼こう。私も少しは出来るようになったから!」

憂「ふふっ、楽しみにしてるよお姉ちゃん」

私は憂の手を引きボタンの所まで誘導する。

憂「気をつけてね、お姉ちゃん」

唯「うんっ」

憂がボタンを押すと鉄の扉がせり上がる。

唯「憂、行ってきます」

憂「行ってらっしゃい、お姉ちゃん」

それはまるで二年前、私が軽音部の合宿に行くときの様な見送り方だった。

何もかもあの時のままとは行かないけど…きっとまたあの日とは違う幸せが待っていると信じて。



383: 2009/08/23(日) 16:20:16.25 ID:V18VUAEXO
みんな熱いの好きだよね

384: 2009/08/23(日) 16:24:30.36 ID:NBlPBwxMO
ついに終盤か
支援しますぜ!


引用元: 唯「バイハザ!」