1: 2011/09/07(水) 22:43:26.63 ID:gn70MhaE0
京子「わ…私が何をしたっていうの?」

身を縮め、声を震えわせ京子は雨に耐える仔犬のような視線で親友を見つめた。

結衣「…」
ちなつ「…」

京子の問いに対して親友は何も答えない。沈黙だけが川のように静かに流れる。

京子「ね…ねぇってばぁ……」

結衣「…京子。あんた本当に鈍感なんだね」

京子「…え?」
第11話 「わたしたちのごらく部」

4: 2011/09/07(水) 22:46:06.68 ID:gn70MhaE0
あかり「ちょっと結衣ちゃ…」
結衣「あかり!」

結衣「…あんまり京子を甘やかさないで」

あかり「……」

結衣「ねぇ本当に理由が分からないの?京子」

自問するが本当に理由が分からない。いやそもそもこのような状況になる意味が分からなかった。

京子「…わ、分かんないよ…」

6: 2011/09/07(水) 22:52:37.54 ID:gn70MhaE0
結衣の冷めた表情。冷めた視線。冷めた声色。まるで生ゴミを見つめるようだった。

14年間の結衣を見てきた京子だがこんな結衣は初見だ。

京子「……ほんと…に、ほんとに分からない…よ…」


14年間築いてきた何かが崩れる音が京子には聞こえた。

どんなイタズラをしても母のような優しい笑顔で私を包んでくれた結衣。怒りという言葉にもっとも遠い存在と思っていた。

結衣は本当に優しいのだ。
以前、彼女が大切にしていた人形にオレンジジュースを故意に零したことがある。

だが、そんな時でさえも彼女は決して怒らなかった。
そこまで寛大な結衣を激怒させた原因はなんなんだろう。京子には本当に分からなかった。



10: 2011/09/07(水) 23:02:40.47 ID:gn70MhaE0
ちなつ「京子先輩…結衣先輩がどんな思い京子先輩に接してたか分かってるんですか!?」
結衣「……」

ちなつ「毎日毎日京子先輩の悪戯に付き合わせられて…」

饒舌。

ちなつ「結衣先輩が怒らないことをいいことに毎度毎度…」

饒舌。饒舌。

ちなつ「京子先輩も考えてみて下さい!結衣先輩や私やあかりちゃんに毎日毎日悪戯されたらどんな気分ですか!?」

饒舌。饒舌。饒舌。
結衣のことになるとちなつは止まらなくなる。

京子「…………」

14: 2011/09/07(水) 23:11:54.96 ID:gn70MhaE0
ちなつ「それに結衣先輩言ってました!お気に入りの人形にジュースを零されたのが一番ショックだったって…。京子先輩がそんなことをする人だとは思わなかったって!」

京子「……結衣」

あの時の笑顔は…我慢して笑ってたのか…。無理して笑ってたのか…。わざと笑ってたのか…。

京子「……結衣」
結衣「…………」

あ…あああああぁぁあああ!!!!

17: 2011/09/07(水) 23:24:50.04 ID:gn70MhaE0
嗚咽に喉枯らせ、涙に頬汚し、涎に唇湿らせどんどん汚くなっていった。
縋る藁すら無く、自身の髪を強く引っ張った。

ちなつ「もう…もう京子先輩なんて知りません!」ダッ
あかり「ちなつちゃん!」

あかりの声は聞こえてないだろう。振り抜くことなくちなつは部室を飛び出した。

結衣「…京子。私は京子のこと好きだよ?でも…今は嫌いに傾いてる」
京子「うっ……うぅ…っ」

結衣「今日は帰るから」
あかり「ゆ…結衣ちゃん」

結衣を呼び止める言葉が言えない。言葉が宙に舞った。


21: 2011/09/07(水) 23:33:32.28 ID:gn70MhaE0
あかり「あ…あかりは京子ちゃんのこと好きだよ!悪戯に励んで嫌なことしちゃう京子ちゃんが好きだよ!…あれ、これって慰めれてないかも」

京子「……あかりも帰っていいよ…」
あかり「京子ちゃん…」

何も言えない自分がもどかしい。あかりの円らな瞳からも大粒の涙が姿を見せる。

あかり「あかりは…あかりは!味方だから!!」
京子「えへへ…ありがとう」

京子は気づく。
あぁ…無理して笑うってこういう事なんだ。

25: 2011/09/07(水) 23:41:22.91 ID:gn70MhaE0
>>23
アニメしか知らんwwww


帰路。
なんだろう。何だか初めて通る道のように感じる。

夕日に目を細め、空を見上げた。初めてじっくり見た。

京子「………」

綺麗だった



ー翌日ー

30: 2011/09/07(水) 23:53:55.86 ID:gn70MhaE0
光に満ち溢れていてビー玉のように綺麗な瞳は燃えてるよう赤く充血していた。
腰まで伸ばし流れるように綺麗だった髪はボサボサに跳ね上がっていた。

ザワザワ
京子の教室がざわつく。

「歳納さんどうしたの?」「なんか元気ないよね」「船見さんが休んでるからじゃない?」「あぁそうか!」

京子(結衣。今日休んでるんだ…)

36: 2011/09/08(木) 00:08:47.97 ID:VNPlI5bK0
あかり「ねぇちなつちゃん…」

ゴクリ
聞いていいのだろうか…。まだ話題も新しい昨日の出来事だ。聞いてはいけない気がする…。

あかり「ね…ねぇちなつちゃん!」
ちなつ「大丈夫聞こえてるから2回言わなくていいよ、あかりちゃん」


ゴクリ


あかり「今日部室に行くの…?」
ちなつ「部室?うん行くよ。どうかしたの?」


…え。
何でそんなに軽いの?

47: 2011/09/08(木) 00:19:05.14 ID:VNPlI5bK0
ちなつ「なんで改まってそんな事聞くの~。行くに決まってんじゃん!あかりちゃんも行くでしょ?」

なんでこんなに明るく言えるの…?
昨日の今日だよ?

ちなつ「はぁ~ん///早く結衣先輩に会いた~い///」

なんでいつも通りなの…?
なんでいつも通りなの…?


なんで……?
あかりが考え過ぎなの?

ちなつ「おっと!あかりちゃん!結衣先輩は私のものなんだからねぇ!」


なんで…!!

あかり「ち、ちなつちゃん!!!!!」

49: 2011/09/08(木) 00:26:25.66 ID:VNPlI5bK0
瞬間。
正面を向いていたちなつの顔がパンッ!と乾いた音をして左に大きく曲がった。
右頬からの衝撃が左頬へ突き抜ける。

ちなつ「……痛いじゃないあかりちゃん」



51: 2011/09/08(木) 00:35:11.38 ID:VNPlI5bK0
ちなつ「なんで私を叩いたの…」

あかり「ち、ちなつちゃんは!!!ちなつちゃんは京子ちゃんのことがどうでもいいの!?なんでそんなに明るいの!?」

教室の隅にまであかりの精一杯の声が木霊する。
ぎゅっと固い握り拳を作り、唾を飛ばして叫ぶ。

あかり「ねぇあかり間違ってる!?あかりがおかしいの!?ねぇ!!ちなつちゃん!!!」

ちなつ「…」



53: 2011/09/08(木) 00:42:07.54 ID:VNPlI5bK0
あかり「うっ…うぅ……。おかしいよぉ…ちなつちゃ…ん」

櫻子「あ…あかりちゃん」
あかり「……?」

櫻子「今日7月23日…あかりちゃんが日直だから…その…日誌を…」

56: 2011/09/08(木) 00:49:34.82 ID:VNPlI5bK0
あかり「あ…そっか…今日あかりが日直の番だったね」

大人しいあかりが垣間見せた怒りに櫻子は完全に怯えたいた。
しかし怯えていたのは櫻子だけではなかった。
冷静に周りに目を向けてみるとクラスのみんなが怯えた表情であかりを見ていた。

あかり「あ…」

57: 2011/09/08(木) 00:56:03.16 ID:VNPlI5bK0
あかり「……今日部室行こうね、ち…ちなつちゃん!」

ちなつ「う…うん…」




ー放課後ー

ちなつ「あかりちゃん部室に行こう…」

あかり「…うん」

京子は今日学校にいるというのは聞いている。
果たして部室に来るのだろうか…?

65: 2011/09/08(木) 01:18:39.21 ID:VNPlI5bK0
あかりは部室に行く途中ちなつとの会話は皆無だった。
何か話題はないかと頭を働かせるがなにも言葉が見つからない。いや、見つけれない。
考えれば考えるほど京子の泣き顔がチラつくのだ。
今、あかりにとって京子以上の話題は無い。それはちなつも一緒だろう。
部室に近づくにつれて異常にそわそわしているのが分かる。そして何度も何度もあかりを見てくる。



私はどちらを望んでいるのだろう。



京子が部室にいて欲しいか、いて欲しくないか…。

68: 2011/09/08(木) 01:28:12.35 ID:VNPlI5bK0
部室が遠く感じる…。

ちなつ「……ゃん」
ちなつ「…かりちゃん」
ちなつ「あかりちゃん!」

あかり「わぁっ!」
ちなつ「もう…何度も呼んでんのに!部室に着いたよ」


69: 2011/09/08(木) 01:37:17.12 ID:VNPlI5bK0
鼓動の波打つ速さが上昇する。

ドクンドクン…!!
もちろん隣のちなつに鼓動が聞こえるわけないが、あかりにとってこの鼓動は鼓膜を破るほどの轟音に聞こえた。

ドクンドクン…!!
あかりは…あかりは!

ドクンドクン…!!
京子ちゃんの味方だ!


これほどまでに重い扉を開けたことを私はあるだろうか…。


ガラ!

72: 2011/09/08(木) 01:51:23.04 ID:VNPlI5bK0
???「あぁーかぁーりぃーーー!!!」
あかり「うわぁっ!」

重い扉を開けた瞬間懐かしい声が、懐かしい匂いが、懐かしい感触があかりを潤した。

あかり「えっ!き…京子ちゃん!?」

京子「はぁーい!みんなのアイドル歳納京子ちゃんでぇす!!!」

74: 2011/09/08(木) 01:55:49.49 ID:VNPlI5bK0
瞬間。
クラッカーが狭い部室に響いた





あかり、誕生日おめでとううぅ!!!!



あかり「…え?」

78: 2011/09/08(木) 02:03:15.14 ID:VNPlI5bK0
あかり「えっ!えっ!えぇーっ!?」

文字通り目が点になる。

あかり「ど、どういうことなの!?京子ちゃん!」

いつも通りの屈託の無い笑顔で京子が微笑む。

京子「ドッキリだよぉー!」

すると今日学校に来てないはずの結衣が奥の方で笑いながら『ドッキリ成功』と手書きで汚く書かれ紙を持って来た。


82: 2011/09/08(木) 02:06:42.80 ID:VNPlI5bK0
京子「ビックリした!?ビックリした!?ねぇ!?ねぇ!?」

あかりの上に倒れこんだ京子がニヤニヤしながらあかりを見つめる。

櫻子「もーあかりちゃん。今日7月23日はあかりちゃんの誕生日じゃん」




あかり「あ、そうだ…」

86: 2011/09/08(木) 02:12:58.30 ID:VNPlI5bK0
あかり「じゃ…じゃあ今までのは演技だったのぉぉー!?」

京子「どう!?私って女優になれそうでしょ!?」

綾乃「はぁ…赤座さんがかわいそうって私は言ったのに」

千歳「歳納さんと赤座さん…。新しいわぁ」
千鶴「脳内に保存。脳内に保存。脳内に保存。脳内に保存。脳内に保存。脳内に保存。」

結衣「もちろん京子の提案だよ」


あかり「み…みんな」

89: 2011/09/08(木) 02:18:18.71 ID:VNPlI5bK0
向日葵「まったく…。櫻子がワザとらしく7月23日だなんて言うから気づかれるかと思ってヒヤヒヤしましたわ」

櫻子「だってちなつ叩いた所でビックリしちゃったんだもん!いやーあの後先生に説明するの面倒臭かったんだからねぇ」

あかり「あ、そうそう!あかり、ちなつちゃんを叩いちゃ…って…あ!」





ちなつ「あぁーかぁーりぃーちゃーん」

93: 2011/09/08(木) 02:29:28.92 ID:VNPlI5bK0
あかり「ち…ちなつちゃん」

結衣「ちなつちゃん。なでなでして上げるからおいで」

ちなつ「はぁい!!!」

京子「いやー結衣が私に断りなしに学校休むだなんてビックリだよ!」

結衣「そっちの方が盛り上がるだろ?」

京子「いやぁ一本取られました」

結衣「さ、あかりおいで!ケーキあるよ」

98: 2011/09/08(木) 02:39:43.94 ID:VNPlI5bK0
あかり「うわぁ~!美味しそう!!」

部室の中央のテーブルにはたっぷりの生クリームに可愛らしいグラデーションをされたケーキがドンと居座っていた。
ケーキにはゆらゆらと揺れるあかりの歳と同じ数の蝋燭。

あかり「やったぁ!ちゃんと歳の数だけある!」


京子「あかり!」
結衣「あかり」
ちなつ「えへへ…結衣先ぱ…。あ、あかり
ちゃん!」
櫻子「あかりちゃん!」
向日葵「あかりさん」
綾乃「赤座さん」
千歳「赤座さん」
千鶴「赤座さん…」
りせ「ゴニョゴニョ…」
俺「ハァハァあかりちゃん」


お誕生日おめでとう!!!!!!

99: 2011/09/08(木) 02:40:55.97 ID:5Z8fX/lL0
ドーン!!!!!!!!!!

103: 2011/09/08(木) 02:44:15.60 ID:VNPlI5bK0
京子「さ、あかり蝋燭吹いてー」

あかり「うん!」

京子「はっくしょん!!!!!!」

蝋燭は消えた。

あかり「……」

107: 2011/09/08(木) 02:55:00.32 ID:VNPlI5bK0
もうしてあかりは楽しい誕生日を過ごしたのでした!!!




ー完ー



後日。

京子「さぁて、あかりの誕生日終わったし次回からは主人公は私だよ!」

結衣「じゃあまた不憫な子に戻るんだな…」

ちなつ「手始めに無視から始めましょうか!」

あかり「お願い……私を無視しないで……」

スレタイに戻る

109: 2011/09/08(木) 02:57:56.95 ID:VNPlI5bK0
おつれっしたー

おやすみ!!!!!!

111: 2011/09/08(木) 03:24:09.47 ID:pEekQ79/0

引用元: 京子「お願い…私を無視しないで……」