1: 2014/09/17(水) 03:57:38.88 ID:3sM3S6IT.net
いま、私の目の前にある張り紙には、とんでもないことが書かれていた。

ほのか「は、廃校……?私の輝かしい高校生活が……」

気が……遠くなる……。

うみ「ほのか!しっかりして下さい!」

ことり「ほのかちゃん!!!」

ふと、目が覚める。

ほのか「なんだ~夢か~」

私はるんるんスキップで教室に戻る。

ほのか「という夢をみたのさ!」

うみ「そんな張り紙はどこにもありませんよ」

ことり「ずいぶん変な夢をみたんだね~」

本当に夢だった!!!

2: 2014/09/17(水) 04:04:53.73 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「ところで、うみちゃんことりちゃん」

ことり「なあに?」

ほのか「バンドしようぜ!!!」

うみ「はあ!?突然何を言い出すんですか!」

ほのか「うん。実はこの前アライズっていうスリーピースバンドをみかけて……」

うみ「別にその発想に至った経緯を聞いた訳ではありません!」

ことり「まあまあ、うみちゃん。……続きを聞かせて貰おうか」

ほのか「で、ピーンときたの。これだ!って!」

うみ「意味がわかりません!」

ほのか「知ってる?いま、スクールバンドっていうのがすごい流行ってて……」

うみ「とにかく!バンドはなしです!」

そういうとうみちゃんは教室から出ていってしまった。

3: 2014/09/17(水) 04:13:27.70 ID:3sM3S6IT.net
弓道場

バシュ!

うみ「まったく。またほのかは……どうせ思いつきですぐ投げ出すに決まっています」

みんなのハートを撃ち抜くぞ!

うみ「・・・!くっ」

ラブアローシュート!

うみ「こんな……雑念が……」

・・・・・

うみ「やはりバンドも悪くないかもしれません」



ことり「知ってる?最近ほのかちゃん毎日バンドの練習してるんだよ」

うみ「はい。この前みかけました。私たちが力になってあげないといけませんね!ことり!」

ことり「ヒュー。園田うみならそう言うと思ったよ。既に彼女にはそう伝えてある」

うみ「これは驚きました。最高にクールです。ことり」

こうして、私たちはなんのすれ違いもなくバンドを結成した。

4: 2014/09/17(水) 04:25:39.60 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「とりあえず曲づくりなんだけどさ」

うみ「待ってください。その前にパートわけです」

ことり「ドラム、ギター、ベース。とりあえずこれが必須だよ」

ほのか「うみちゃんどれかできる?」

うみ「できるわけないでしょう?」

ことり「私も全然」

ほのか「ハッハッハこりゃ傑作だ」

うみ「ほのかは何かできるんですか!?」

ほのか「違うね。誰も経験者がいないってことを笑ってるのさ」

うみ「そんなこったろうと思いましたよ」

ことり「じゃあベースは私がいただこう」

ほのか「OK。じゃあ私が……」

うみ「まてまて、ベースは譲りませんよ」

ことり「なんだって?」

うみ「だって……ベースが一番目立たなそうじゃないですか」

ほのか「恥ずかしがり屋のうみちゃんらしいや。どう?ことりちゃん」

ことり「しかたないなあ。私はギターね」

うみ「ありがとうございます」

ほのか「じゃあ私はドラムを探してくる」

ことり「why?」

ほのか「決まっているだろう。私はボーカルだからさ」

うみ「なんてこった」

ほのか「安心してくれ。心当たりがある」

5: 2014/09/17(水) 04:34:34.04 ID:3sM3S6IT.net
音楽室

まき「あいしてる~ばんざーい♩」

ほのか「驚いた。人間になった人魚姫が歌っているかと思ったよ」

まき「そりゃどうも。でも人魚姫は人間になって美声を奪われてしまうのよ」

ほのか「こんなところで人知れず歌ってるんじゃ奪われたも同然さ」

まき「・・・なんのよう?」

ほのか「笑いながら腕立てができるか?」

まき「ははっ。なんの比喩だい?そいつは」

ほのか「あなたの才能を見込んで頼みがある。バンドに入ってくれ」

まき「なにそれいみわかんない。お断りします」

ほのか「素晴らしいビアノだった」

まき「・・・・・」

ほのか「ぜひドラムをやってほしい」

まき「なんでドラムなのよ」

6: 2014/09/17(水) 04:42:44.94 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「という具合に断られちゃった……」

うみ「当然です。どうしてピアノの申し子にドラムをやってくれるんですか」

ことり「みて!ギター買っちゃった!」

うみ「私もベースを買いました」

ほのか「わーみせて!」

うみ「弦はエリクサー。表面に特殊なコーティングがされており、サビにくく長持ちします。
音に変化が無いとは言えませんが、長持ちと言うてんで高校生の味方です。また……」

ほのか「なるほどそいつはすごいや」

ことり「えぇ……私そういうのよくわかんなくて、暗闇で光るカラフルなのにしちゃった」

ほのか「かわいい!」

ことり「でしょ!本体も可愛いな~って一目惚れで」

うみ「ことりらしいです」

7: 2014/09/17(水) 04:47:35.85 ID:3sM3S6IT.net
うみ「曲はどうなったんですか?」

ほのか「そのピアノの子、まきちゃんっていうんだけど、作曲に関してはうまく言いくるめたよ」

ことり「さすがほのかちゃん!」

ほのか「ライブが楽しみだ」

私たちは一生懸命練習した。宣伝も沢山した。生徒会の妨害があったような気もするが

いまの私たちは誰にも止められない。そして来たる初ライブの日。

ほのか「いくよ」

幕が開くと、そこには誰も居なかった。

8: 2014/09/17(水) 04:55:30.77 ID:3sM3S6IT.net
うみ「ほのか……」

ことり「ほのかちゃん」

ほのか「・・・・・」

うみ「もう……」

ほのか「あはははは!そりゃそうだ!人生そんなにあまくない!」

うみ「そうですねー。気に病むことはありません」

ことり(なにかおかしい……なぜかここで落ち込むはずだった気がする……)

ことり「まいっか!がんばろう!二人とも」

ほのか「ひるむな!聴いてけ!私たちのミュージック!!!」

打ち込みのドラムに、うみのベース音が重なる。

そこにことりのギターが加われば準備万端だ。あとは。

「アイセーイ」

ほのかが歌うだけ。

9: 2014/09/17(水) 05:02:21.00 ID:3sM3S6IT.net
アンプから放たれる大音量は講堂を揺らし、学校全体に響き渡る。

「へい!へい!へい!スタートダッシュ!」

「ちょっと、なにこの音」

「ほら、あの子たちじゃない?ライブやるって言ってた……」

「あー、忘れてた。どこにいたって聴こえるし、行ってみる?」

いつの間にか、ちらほらと人が集まり始める。

「悲しみにーとーざされーてー♩」

終わるころには、結構な人数が顔を出していた。

誰もいない講堂などなかった。

完敗からのスタートなどなかった。

11: 2014/09/17(水) 05:55:21.56 ID:3sM3S6IT.net
ライブ後、生徒会長が姿を現す。

えり「どうするつもり?」

ほのか「どうするもなにも、結構人集まったし」

えり「あれっ?本当だわ。とやかく言えないじゃない」

ほのか「バンドは続けます」

えり「え、ええ……しょうがないわね」



一年生教室

りん「どうしたのかよちん?もしかしてバンド入りたいの?」

はなよ「ち、違うよ」

りん「ううん。りんにはわかる。かよちん昔からバンドやりたいって言ってたじゃん!」

はなよ「じ、じゃあ……一緒に入ってくれる?」

りん「ええー!りんには無理だよ!だって」

だって……

「やっぱり、履き替えてくる」

男の子にからかわれて私は……

12: 2014/09/17(水) 05:56:53.82 ID:3sM3S6IT.net
はなよ「りんちゃんもしかしてまだあの時の」

りん「・・・・・」

はなよ「そのあとのこと、覚えてる?」

りん「へ?そのあと?」




幼りん「やっぱり、履き替えてくる」

?「待ちな。お嬢ちゃん」

幼りんぱな「!?」

?「履き替える必要なんかない。よく似合ってるよ」

幼りん「えっ」

?「おい、そこの悪ガキども。止まれ」

上級生の人が、助けてくれたんだよ。

悪ガキ「え……」

?「いまの発言、今すぐ撤回するんだ」

悪ガキ「はあ」

?「5秒やる。0になったら……わかるな?」

悪ガキ「えっと」

?「3……2……」

悪ガキ「わ、わかった。おれが悪かった」

幼りん「!」

悪ガキ「て、照れくさくてついからかっちゃったんだよ。……似合ってるよ。からかってごめんなさい」

?「よぉしいい子だ」

幼りん「ありがとう。お姉さん」




はなよ「覚えてる?りんちゃん」

りん「そうだった……トラウマがあった気がしてたけどそんなことはなかった」

13: 2014/09/17(水) 06:11:58.16 ID:3sM3S6IT.net
はなよ「りんちゃん!一緒にバンドやろう!」

りん「うん!」




別の日、私はバンドメンバー募集のチラシの前にたたずむまきちゃんをみかけてた。

はなよ「あっ、生徒手帳落とした……」

見失う前に声をかけなくちゃ。

はなよ「おーい」

まき「はい?」

はなよ「これ落としましたよ」

まき「あ、ありがとう」

はなよ「バンド興味あるんですか?」

まき「ないわよ。でもあの曲は私がつくったの」

はなよ「興味ありありじゃないか」

まき「そうなの?」

はなよ「え?」

まき「私は……興味ありありだったの?」

はなよ「知りません」

まき「自分で自分の気持ちがわからなかった。気づかせてくれてありがとう」

はなよ「冗談はよしてくれ。私は何もしていない」

まき「えっ?」

はなよ「えっ?」

とにかくこうして私は大した決意をする必要なく、バンドμ'sのもとへ向かった。

14: 2014/09/17(水) 06:20:27.31 ID:3sM3S6IT.net
はなよ「たいして取り柄もないけど……バンドへの想いは誰にも負けません!」

ほのか「なんだって?私にも勝ると?」

うみ「聞き捨てなりません」

ことり「いやいやいやいや」

ほのか「おっとつい。その話は後だ。歓迎するよ」

はなよ「ありがとうございます!でもバンドへの想いは誰にも負けません!」

ほのか「二人は、どうする?」

りん「特にトラウマとか無かったんで入ります」

まき「早い段階で素直になれたんで入ります」

ほのか「ピアノの申し子にマラカスの申し子まで。嬉しいよ」

りん「よくわかったな」

ほのか「その手をみればわかる。血豆が潰れるほどマラカスを振り続けたものの手だ」

ことり「見事だ」

15: 2014/09/17(水) 06:28:56.60 ID:3sM3S6IT.net
うみ「りんはマラカス、まきはドラムで決まりとして、はなよあなたは何を?」

まき「待ってくれ、私はドラムなのか?」

うみ「不服ですか?」

まき「もちろん私はピアノどころが音楽の申し子だ。不可能な楽器などない」

うみ「ならば」

まき「しかしもっと私は輝ける」

はなよ「みなさん大事なことを忘れています」

ほのか「え?なに?」

はなよ「彼女はキーボードをするべきです」

ほのか「そうか!同じ鍵盤の楽器キーボードがあった!」

うみ「盲点でした」

ことり「さすが、はなよちゃん」

りん「その手があったにゃ」

まき「天才か」

はなよ「ドラムは私が引き受けます」

16: 2014/09/17(水) 06:36:24.70 ID:3sM3S6IT.net
こうしてμ'sは新たに三人のメンバーを加えた。

ボーカルほのか

ギターことり

ベースうみ

キーボードまき

ドラムはなよ

マラカス等りん



えり「部は5人を超えないと認められないわぁ」

のぞみ「もう超えてるやん」

えり「本当だ」

のぞみ「でも部室はいろいろアレやから、バンド研究部の子をなんとかしてね」

ほのか「任せな。私の交渉術でおちない奴はいない」

17: 2014/09/17(水) 07:08:14.90 ID:3sM3S6IT.net
ことり「さあ、ネゴシエーター。仕事だ」

ほのか「まずは顔を拝みに行こうか」

私たちはバンド研究部へと向かった。

にこ「何者だ、あんたら」

ほのか「あんたが矢澤にこか」

にこ「だったらなんだってのよ」

りん「我々は交渉に来ただけだ」

まき「危害を加えるつもりはない」

にこ「なるほど。あんたら、例のスクールバンドだな」

はなよ「ほう。話が早い」

にこ「あんたらには失望したよ!誰もいない講堂にね!」

うみ「何を言っているんですか」

にこ「そうだった。誰かしらいたわ。失望する要素が特にない。影で叩けないわ」

その少女はバンドとはかくあるべき、と私たちに説きはじめた。

はなよ「恐れ入りました」

うみ「私たちと敵対する気は先からないようですね」

にこ「ええ。そうなるはずだったのに、その理由がないもの」

ほのか「そういえばなんで、にこちゃん一人なのに部が認められてるの?」

にこ「もとは5人いたのよ。みんな辞めたけど」

ことり「そんな……ずっと、ひとりぼっちで?」

まき「かわいそうに」

りん「心底同情するにゃ」

にこ「いや、そのあとえりとのぞみが声をかけてくれて、全然ぼっちじゃなかったわ」

ほのか「よかった……二年間孤独だったにこはここにはいないのか……」

うみ「おいおい、一人だけ聖人ぶるのはずるいです」

19: 2014/09/17(水) 07:30:02.57 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「じゃあ部長、あなたは何の楽器ができるの?」

にこ「ぶぶぶぶ部長!?」

ことり「にこちゃんが最初から敵意を持ってないなら、これでいいはずでしょ?」

にこ「……そ、そうね。ビシバシいくわよ!」

まき「で、何の楽器ができるのよ」

にこ「にこはギターにこー!」

はなよ「Oh!それじゃギター二個!」

りん「yeah」

にこ「yeah」

ほのか「ギターって二つでもいいの?」

うみ「構いません。ツインギターです」

こうして私たちは順調によくないフラグをぶち壊しながらなんの苦労もなく進んで行った。

21: 2014/09/17(水) 07:46:13.29 ID:3sM3S6IT.net
えり「私たちにも学校のために活動をさせて下さい!理事長!」

理事長「どうして?」

えり「このまま黙って見過ごすなんてできません!」

理事長「なにを?」

えり「あれ?なんだったかしら。別に廃校の危機でもないのに」

理事長「でも別にあなたがやりたいならやっても構いませんよ」



えり(あら……?私はなにを躍起になっていたのかしら?)

ありさ「あ!お姉ちゃん」

えり「ありさ」

うみ「生徒会長」

えり「なぜ貴様がありさと共にいる」



うみ「のぞみから聞きました。えりも昔はギターをしていたそうですね」

えり「アコースティックよ。だからあんなエレキは俗物にしかみえない」

うみ「似たようなもんじゃないですか」

えり「あなたたちも、アライズも、私は素人にしか見えない」

うみ「まじですか」

えり「ごめんなさいそれは言い過ぎた」

ありさ「ジュース買ってきました!」

えり「ありがとう。うみはコーラとサイダーどっちがいい?」

うみ「シュワシュワは好かん」

22: 2014/09/17(水) 08:01:40.53 ID:3sM3S6IT.net
今日のうみちゃんはいつもと様子が違う。何度曲を合わせても……

うみ「まだです。全然だめです」

にこ「おいおい、何が気にくわないってんだ?はっきり言ってくれ」

うみ「生徒会長には遠く及びません」

ほのか「ははーん。じゃあその生徒会長に教えをこうとしようか」

まき「ちょっと、ほのか!?」

ほのか「いくよっ!」



えり「ええ。構わないわよ」

ほのか「ありがとうえりちゃん!」

えり「でも何を教えてあげればいいの?」

はなよ「考えてみたら睨むほど対立してませんでしたね私たち」

りん「もういっそ一緒にバンドしようよ」

えり「そうね」

ことり「これで……」

のぞみ「きゅ……」

ほのか「九人だね。のぞみちゃんを入れて」

のぞみ「え」

えり「練習いくわよ」

のぞみ「実はμ'sって……」

うみ「μ'sとは九人の歌の女神のことですね」

のぞみ「……うんそう。で、名付けたのは」

ことり「のぞみちゃんだよね。投書に入れてくれたの見てたよ」

のぞみ「え」

23: 2014/09/17(水) 08:36:24.56 ID:3sM3S6IT.net
ことり「バンドにしては大所帯だね」

はなよ「ちゃんとパートわけられるんですか?」

ほのか「よくわからないけど、多いほうがにぎやかでいいよね!」

にこ「二人は何をやるのよ」

うみ「えりはアコースティックなギターですね」

にこ「ちょっと!ギターはにこよ」

うみ「いいえ。三個です」

りん「多いにゃ~。のぞみちゃんは?」

のぞみ「ウチは、ディスクジョッキーとか、シンセサイザーの類なら」

ほのか「冗談だろ?あんた一体何者なんだ」

のぞみ「知らない方がいいこともある。長生きの秘訣だ。覚えときな」

24: 2014/09/17(水) 08:39:50.69 ID:3sM3S6IT.net
バンドμ's結成

ボーカルほのか

ギターことり

ギターにこ

ギターえり

ベースうみ

キーボードまき

ドラムはなよ

シンセサイザーのぞみ

マラカス等りん

25: 2014/09/17(水) 08:50:20.06 ID:3sM3S6IT.net
えり「親睦を深めるため、合宿というのはどう?」

ほのか「楽しそう!」

えり「先輩禁止!ということでね」

りん「ちょっと待て。最初からよーく思い返してみろ」

えり「なんだと?」

りん「我々は誰も先輩呼びしていないぞ。ずっと」

まき「そういえば何故か元からそうね」

はなよ「不思議なこともあるんだね」

ことり「言われてみればそうだった。まったく、生意気な後輩め」

にこ「あんたたちもそうじゃない」

ほのか「おいおい、熱くなるなよ。温暖化に拍車がかかるぜ?」

うみ「北極のシロクマも真っ青だな」

ことり「はっはっは。おい、いまのジョークは最高だ」

のぞみ「こんだけ砕けてて、しかも元から先輩なんて概念がない……なんてクレイジーな連中だ」

えり「まいったな。こりゃ合宿なんて必要なさそうだ」

26: 2014/09/17(水) 09:02:19.75 ID:3sM3S6IT.net
それから私たちは、文化祭でのライブのために練習を重ねた。

なんとしても最高なライブにするんだ!きっとみんなもそう思っているはず。

ほのか「なあ、新しいフレーズを考えたんだ」

まき「いまから!?間に合うはずがないだろう」

ほのか「いいや、絶対こっちほうがよくなるはずなんだ」

うみ「落ち着け。却下です」

ほのか「……ごめんちょっと調子乗っちゃった」

えり「より良くしたいって気持ちはわかるけど、無理は禁物よ」

ほのか「そうだね……」




ほのか「ちょっと走ってくるね」

ゆきほ「ちょっと、文化祭前日だよ!?」

ほのか「心配ない。必ず戻る」

ゆきほ「まったく」

ほのか「ただいま」

ゆきほ「ずいぶんはやいな。マスコミにでも囲まれてたか?」

ほのか「雨降ってた」

ゆきほ「そうだね」

ほのか「無茶して体調崩したら元も子もないからね。今日はもう休むよ」

27: 2014/09/17(水) 09:08:47.11 ID:3sM3S6IT.net
体調管理の甲斐あって当日は全員が万全の体制で臨むことができた。

ライブ後、誰か倒れるなんてこともない。最高のライブだった。

スクールバンドの祭典、ラブライブ出場も射程圏内に捉えている。そんな折。

ことり「ほのかちゃんに話があるの。文化祭が終わったら話そうって決めてたんだ」

とても真剣な面持ちで、ことりちゃんはそう言った。

ことり「実は、海外留学の話が来ていて……」

28: 2014/09/17(水) 09:21:42.72 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「そんな!」

ことり「どうしよう」

ほのか「それは、ことりちゃんが決めることだよ……」

ことり「でも……」

ほのか「私は……行って欲しくないけど、邪魔はできない」

ことり「もしもし、私だ。例の話はなかったことにしてくれ」

ほのか「ことりちゃん!?」

ことり「ほのかちゃんが行って欲しくないって言った。断るのにこれ以上の理由なんかないよ」

ほのか「そんなの」

ことり「今すぐいかなきゃいけないわけじゃない。いつかその日が来るかもしれない。でも、それは今じゃない」

ほのか「ことりちゃん……!」

ことり「この話はこれでおしまい!これからもよろしくね!」

ほのか「うん!」

私は、なんとなく気がつき始めていたのかもしれない。

本当はこうじゃなかったような……

ただ、困難や障害が事前に回避されているような……

そんな感覚。

30: 2014/09/17(水) 16:37:05.62 ID:3sM3S6IT.net
その後も怖いくらいに順調にことは進んだ。

そう。私たちは第一回ラブライブの出場の権利を獲得した。

念願のラブライブ。大きなトラブルに見舞われることもなく、ここまでこられた。

・・・内容は割愛しようかな。所詮は結成間もないポッとでの私たち。結果は振るわなかった、とだけ。

でも、その朗報はすぐに訪れた。

はなよ「大変です!第二回ラブライブの開催が決定しました!」

みんなが喜ぶなか、私は別に出なくてもいいんじゃない?なんて考えもしたけど。

ほのか「よし!でよう!前回のリベンジだ!」

31: 2014/09/17(水) 16:37:41.38 ID:3sM3S6IT.net
はなよ「今回は前回とは形式が若干違います。まず、地区予選で勝ち抜いた四つのグループが・・・」

はなよちゃんがいろいろ説明してくれているけど、私はしっかり聞けているのかな?

えり「そいつはすごいな」

はなよ「すごいなんてものじゃあない」

えり「えっ」

まき「でも、予選には新曲が必須なのね」

えり「短期間で完成させるためにも合宿を……」

うみ「そんなこともあろうかと、既に作詞は用意ができています」

ことり「奇遇だな。衣装も問題ない」

まき「おいおい、有能すぎるってのも考えものだぞ」

りん「自称もっとも有能なあんたはどうなんだい?」

まき「聞くまでもないだろう?」

えり「揃いも揃って化け物ばっかりだな。ここは」

こうして秒速で新曲を完成させた私たちは無駄に時間を使うことなく、すぐ練習に集中できた。

当日の話?語るに値しないね。自慢話は趣味じゃないんだ。

32: 2014/09/17(水) 16:38:19.31 ID:3sM3S6IT.net
はなよ「四つ目のグループは……ミュー……」

今朝は悪い夢を見た気がするけど、目が覚めたら内容忘れちゃった。

はなよ「ズ」

りん「予選は通過かあ」

ことり「本番はこれからだね!」

えり「いつも通り、練習を始めましょう」



ほのか「いつからμ'sは8人になったんだ?」

まき「我らがアイドルが今日はご不在ね」

のぞみ「まったくどこで油売ってるんだか」

下校しようとするにこちゃんを見つける。

うみ「どこにいくんですか」

にこ「・・・ヤボ用だ。のちに必ず合流する。しっかり練習してなさい」

33: 2014/09/17(水) 16:38:59.62 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「追うぞ」

えり「へい!タクシー!」

のぞみ「前の車を追ってくれ」

運転手「はっはー!そういうの憧れてたんだ。任せな」

街を轟音をうねらせ駆け巡る。タイヤが擦れる音が耳に痛い。

運転手「しっかりつかまってな!」

えり「おいおい大丈夫か」

運転手「安心しな。ここらは全部おれの庭だ」

のぞみ「狭い路地に入った!」

運転手「おっと……悪いな。この車の車幅じゃこれ以上は無理だ」

うみ「自分の庭も歩けないんですか」

ほのか「客の言うことが聞けないのか!?サイドミラーへし折れば入れるだろう!」

運転手「勘弁してくれ」

のぞみ「降りて追うぞ!」

りん「見失ったにゃ」

まき「ポンコツドライバーめ」

ことり「あのタクシーがデ口リアンだったら、過去だろうが未来だろうがどこに逃げても捕まえられたろうさ」

はなよ「無茶言うな。あのタクシーは日本製だ」

ことり「何言ってる。日本製は最高だ」

34: 2014/09/17(水) 16:40:11.70 ID:3sM3S6IT.net
途方にくれる私たちたちの前に矢澤にこの妹を名乗る子供が現れる。

まき「ちょっとできすぎじゃない?」

うみ「運命は私たちに味方しているようです」

こころ「いつも姉がお世話になっています。みなさんのおかげで姉はまた……」

えり「また?」

また……?また変だ。にこちゃんはずっと自分を偽ってきた、なぜかそんな気がするのに

こころ「以前のメンバー脱退から……」

どうやら、普通に事実を伝えているようだった。

とそこに、にこちゃんが帰ってくる。

にこ「あんたたち、どうして」

うみ「おかえりなさい。なぜ逃げたんですか?」

にこ「追われたからよ」

えり「待ってたら自分から行ったとでも?」

にこ「現にそうなってる」

えり「本当だ」

ほのか「いいポスターだ」

ことり「よくみろ。見覚えのある顔ぶれだ」

うみ「自分で加工して自分をセンターにしたポスターとかが貼ってあると思いました」

にこ「そんなことしないわよ」

にこちゃんは、そんなことはしなかった。

35: 2014/09/17(水) 16:40:52.49 ID:3sM3S6IT.net
例えば私たちの修学旅行。

台風が直撃、なんてこともなく終始晴天。その後のライブにも問題なく合流できた。

例えばハロウィンイベント。

変な方向にそれることなく、早い段階でそのままの私たちでいいという結論が出た。

誰かがダイエットが必要になることも、誰かがミスをしてあり得ない予算が通ってしまうこともなかった。

そして最終予選。

うみ「これから会場に向かいます」

ことり「でも、すごい雪だったよ?」

ほのか「でも行くしかない!」

外への扉を開けると……

ことり「なんだぁ。雪止んだみたいだね」

うみ「心配して損をしました」

ほのか「これなら交通機関も止まってないね。余裕余裕」



私たちは、最終予選に敗れた。

36: 2014/09/17(水) 16:51:31.97 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「やっぱりおかしいよ……私たちがここで負ける筈がない」

のぞみ「現実を受け入れなきゃ」

ほのか「私たちは、優勝する筈だった。そうでなきゃ変だよ」

えり「それは傲慢よほのか」

ことり「でもちょっとわかるな。なんか……釈然としないよね」

うみ「ことりまで」

ほのか「最初から、何かがおかしいよ……」

にこ「何かってなによ、いい加減にしなさい」

ほのか「うん……ごめん」

何かがおかしい。でも、まだ私は答えにはいたらなかった。

38: 2014/09/17(水) 19:25:50.39 ID:3sM3S6IT.net
今までどんな困難も乗り越えてきた私たちが、最終予選で、アライズに敗れた。

・・・いや違う。この私たちには、一切困難と呼べるものがなかった。

まるで温室育ちの作物。あらゆる病原、害虫から人為的に遮断され育った作物。

その作物には、アライズを凌駕するだけの力が備わらなかった。

ことり「人為的に……?」

ほのか「まるで誰かの掌で転がされてるようだよ」

ことり「一連の違和感には、何か黒幕が?」

ほのか「第三者が手引きしたかのように私たちはあらゆる、よくないものを避けて通ってきた」

ことり「それはいったい」

うみ「二人の妄想には付き合ってられません。長いバンド活動に毒されましたか」

ほのか「私たちは本気だよ」

39: 2014/09/17(水) 19:26:43.95 ID:3sM3S6IT.net
うみ「バンドは楽しいです。二人には感謝しています。でも私はたまに、バンドの宗教地味たところが怖くなります」

ことり「うみちゃん……」

うみ「現実をみてください。私たちは負けたんです」

ほのか「なんで私たちがみんな最初から普通に名前を呼び合っていたか、考えたことはないの?」

うみ「それは……みんなフレンドリィだったんでしょう」

ことり「あのうみちゃんが、最初から三年生を呼び捨てなんて」

うみ「……それは……きっと空気に飲まれて……」

ここはきっと、あらゆるよくないものが淘汰された世界。

私たちは本戦に残らなかったせいで、いやお陰なのか、いずれ離れゆく三年生のことには触れず、ダラダラとバンドを続けた。

ダラダラと……

確実に……

時は流れる。

40: 2014/09/17(水) 19:29:28.10 ID:3sM3S6IT.net
ほのか「できた!できたよ!卒業式の送辞!」

うみ「みせてください」

ほのか「ポケットのなか!」

ことり「どれどれ」

・・・・・

うみ「ほのからしいです」

ほのか「でしよ?」

うみ「でもだめです。送辞で歌い出すなんて、全力で阻止します」

ほのか「そんな、寝ないで考えたんだ!頭にジミヘンドリックスとリンカーンが降りてきて」

ことり「ブッとんでやがる。シャブでもきめたのか」

うみ「卒業式の私物化なんてさせるわけにはいきません」

ほのか「だが時間がないだろう」

うみ「こんなこともあろうかと私が代筆しておいた。これを読むといい」

ほのか「私たちの付き合いはどれくらいになる?」

うみ「十年くらいでしょうか」

ほのか「今日ほどあんたとつるんででよかったと思った日はない」

うみ「あんたの寝言は聞き飽きましたよ」

こうして私たちは無事卒業式を終えた。

41: 2014/09/17(水) 19:30:00.86 ID:3sM3S6IT.net
えり「じゃあ……」

まき「なにしてるの?はなよ」

はなよ「最後の別れですから。携帯の電源を切りました。邪魔が入らないように」

のぞみ「そろそろ行くね」

にこ「私たちは振り返らないわ。だから、あなたたちも私たちの背中を追っちゃだめよ」

三年生たちは、私たちに背を向けると歩いて行った。

私たちは、その背中を……いつまでもみていた。

?「あなたたちの物語はここで終わりなんですね」

44: 2014/09/17(水) 21:32:35.84 ID:3sM3S6IT.net
?「あなたたちの物語はここで終わりなんですね」

ほのか「そうだよ。約束した。私たちはあの背中を追いかけない」

?「やっぱり、誰得シリアスとか、胸糞展開って必要なんですかね」

ことり「なんの話?」

うみ「いえ、まず誰ですか」

?「私ですよ。ありさです」

はなよ「ありさちゃん?どうしたの」

ありさ「あなたたちは人間が積み上げた歴史、築き上げた社会の縮図です」

りん「どうも話が見えないな」

ありさ「では一つみせてあげましょう」

45: 2014/09/17(水) 21:33:43.07 ID:3sM3S6IT.net
ありさちゃん?これはいったい……

ありさ「星空りん。私の姿、声に覚えはないか?」

はなよ「なにを言っている」

ありさ「あなたもだ。小泉はなよ」

りん「・・・!」

ありさ「そう。もう思い出したはずだ」

りん「そんな……バカな……あり得ない」

はなよ「りんちゃん?」

りん「あんたは……あのときの……」

星空りんのトラウマ……になるはずだったもの。

その過去にありさの姿があった。

りん「あのとき助けてくれたお姉さん」

はなよ「そんなバカなことがあるか!?」

ありさ「その通り。私だよ」

46: 2014/09/17(水) 21:35:28.75 ID:3sM3S6IT.net
まき「どういうトリックだ」

ありさ「トリックじゃない。トリップさ。とびっきりスペシャルなね」

ほのか「時間移動だと……?」

ありさ「さすが察しがいい。まあ正確には、時間移動ではない。私は時間という概念を超えた高次元な存在」

ことり「まいったな。人間デ口リアンか。そのボディはステンレス製かい?」

ありさ「残念だか私にはニトログリセリンも生ゴミも不要だ」

まき「あなたいったい何者?ありさちゃん」

ありさ「さあ」

うみ「思い出しました。かつての違和感」

りん「おいてかないでくれ。ちんぷんかんぷんだ」

うみ「あのとき、あなたはコーラとサイダーを買ってきた」

ありさ「それがどうした」

うみ「そんなことできるはずがないんですよ。ありさちゃんには」

ほのか「コーラとサイダー!?そいつは妙だ」

うみ「彼女がまともな飲み物を買えるはずがないんです。おしるこあたりと相場は決まっています」

ありさ「・・・・・」

うみ「あなたは、ありさちゃんではありません」

47: 2014/09/17(水) 21:41:10.07 ID:3sM3S6IT.net
ありさ?「ほう。ではなんだと思う?」

うみ「一連の黒幕です」

ことり「うみちゃん、なんだかんだちゃんと話聞いててくれたんだね」

ありさ?「なにをもって一連とする?」

ほのか「最初からなにもかもだよ。廃校が夢だったってことから」

ありさ?「だいぶ迫っているな。驚いた」

ほのか「私たちがやりたかったのはバンドじゃない。アイドルだったはずだよ」

ありさ?「さすがだな。面白い。興味が湧いてきた。真実を話したらどうなるのかという興味がね」

まき「御託はいい。あんたの選択肢はどの道二つだ。さっさと全てを話すか、ボコボコにされてから話すか」

ありさ「話すのは構わないが、少々長くなるぞ」

はなよ「なら一秒でも早く話し終わるよう努めるんだな」

52: 2014/09/18(木) 00:30:27.70 ID:jJfNcGYb.net
りん「おいまきちゃん、そいつは医者のたまごの言葉じゃねえや」

まき「なあに。患者が増えれば医者は儲かるのさ」

りん「こいつは一本取られた」

ことり「どいつもこいつもまともじゃないね」

うみ「頭のネジがいかれてやがるんです」

ほのか「代わりに万能ネギでも巻いておけ」

まき「言わせてもらうとそいつは迷信だ」

ほのか「嘘だろ?友達に言いふらしちまったってのに」

ありさ?「聞く気がないなら聞かないでくれるか」

ほのか「おっとこいつを忘れてた。じゃ話してもらおうか。真実ってやつを。多少長くたって聞いてやるよ」

53: 2014/09/18(木) 00:32:00.04 ID:jJfNcGYb.net
いいですよ。全てをお話してあげます。このありさがね。

さっきも言いましたね。あなたたちは人間の歴史と社会の縮図です。

……私がつくったね。

私が全てをつくったんですよ。この世界も、あなたたちも。

この世界はあらゆる可能性のうちの一つ。

簡単に言えばそれだけ。

ほのか「なに言ってんだ?こいつ」

りん「簡単なのは嫌いじゃないが、今回ばかりは隅々まで聞かせてもらおうか」

はなよ「りんちゃんがこんなことを言うのは珍しいんだ。気が変わらないうちに続けてくれ」

54: 2014/09/18(木) 00:32:58.11 ID:jJfNcGYb.net
歴史とは進化の過程。人間の進化の過程には道具が切り離せない。

人工的な進化だ。

ほのか「道具が人工的な進化か」

そう。空を飛べない人間は飛行機に乗った。

速く走れない人間は車に乗った。

狩のための爪や牙を持たない人間はあらゆる武器をつくった。

これを進化と呼ばず何とするか。本来途方もない時間をかけ獲得するはずのものを、

人間は人工的な進化を遂げることで意図もたやすく獲得できる。

……そして、その歴史を教訓に私はスクールアイドルという存在に道具を与えてみた。

うみ「楽器……ですか」

スクールアイドルを、スクールバンドという形に人工的に進化させてみた。

特に意味はない。ただ無数の可能性の一つのというだけだ。

55: 2014/09/18(木) 00:34:46.42 ID:jJfNcGYb.net
ことり「さっきから聞いていれば、神様気取りかあんたは」

ありさ「神は残酷なのさ」

ことり「同感だね。神様が優しかったら世界はとっくにハッピーだ」

りん「だが、あんたは神じゃない」

ありさ「そう。私は神じゃない。ありさだ」

うみ「さっきも言ったはずだ。あんたはありさちゃんでもありません偽物野郎」

ありさ「口を慎めよ。偽物の区別がついていないのはそちらだ」

ほのか「どういう意味だ」

あなたたちは本当に

高坂穂乃果か?

園田海未か?

南ことりか?

西木野真姫か?

星空凛か?

小泉花陽か?

矢澤にこか?

東條希か?

絢瀬絵里か?

57: 2014/09/18(木) 09:38:50.13 ID:jJfNcGYb.net
ほのか「とうぜんだ」

うみ「その問題はテストで答えても点数すらもらえない」

まき「名前に点数をつけるバカが先生をやったら100点を超えちまうだろう」

ありさ「違うね。あんたらは私がつくった劣化コピーだ偽物野郎」

ことり「なんてこった、クローン羊のドリーもびっくりだな」

ありさ「オリジナルを元に私が生み出した"可能性"に過ぎないんです。あなたたちに限らず、この世界そのものが」

はなよ「話が大きくなりすぎだよ」

ありさ「私とて無から創り出すことはできない」

りん「どういうことにゃ」

ありさ「あなたたちとて、思い返せば一つや二つあるはずだ。本来あり得ない、らしくない発言がね」

まき「それが自身が本物でない証拠だと?」

ありさ「さすがオリジナルがμ'sのみなさんなだけはありますね。この事実を理解したうえでアイデンティティを失わないとは」

ほのか「独走的な発想だな。B級映画の監督にアイデアを売ってきたらどうだ?そこでいい病院を紹介してもらえ」

58: 2014/09/18(木) 09:41:04.97 ID:jJfNcGYb.net
さて、続きを話しましょうか。

もうご存知の通り、あなたたちに本来降りかかるはずだった苦難や障害は私が事前に排除しました。

例えば誰もいなかったはずの講堂に客を入れたり。

メンバーが苦悩するはずだった過去や葛藤を取り除いたりね。

おもしろいものがみれましたよ。

でもそれではアライズには勝てなかったようですね。

……昨今の若者はアレルギー体質が増えているといいます。

理由は衛生管理が良すぎるためです。

あらゆる雑菌をころし、汚物を洗浄し……

結果人体の抗体は壊れた。

皮肉なものですね。徹底した衛生管理が人間をより弱くしてしまった。

あなたたちも、そうなってしまったようですね。

道具を与えられ、危機管理の必要もない。

なんと弱々しいことか。

59: 2014/09/18(木) 09:42:04.79 ID:jJfNcGYb.net
ほのか「悪いな。もう飽きた。誰か話を聞いてやってくれ。私はこういう自分に酔ってペラペラ喋る奴は苦手なんだ」

まき「ここはセラピーじゃない」

りん「話が長すぎる。途中から聞いてなかったよ。誰か説明してくれ」

まき「要するに、この世界はシミュレーションで、私たちはその中の設定に過ぎないってとこか」

りん「悪い夢を見てるようだ」

うみ「確かに夢もあながち間違いではないですね」

りん「シミュレーターならプログラマーがいるだろう?」

ありさ「あなたたちの例に沿って答えるならそれが私だ」

60: 2014/09/18(木) 11:51:27.97 ID:jJfNcGYb.net
りん「じゃああんたは、りんをブルースウィルスにしてくれるのか?」

はなよ「それを言うならジョンマクレーンだ」

うみ「アルマゲドンが迫っているのにのんきな連中です」

ことり「で、そのシミュレーションとやらはどうなった?」

ありさ「一回や二回じゃない。世界は無数のシミュレートをしている。結果を得られたものにいつまでも相手はしてられない」

ほのか「あんたが勝手にしたことだ。どう落とし前をつける?」

ありさ「もう満足した。もうこの可能性の世界は必要ない」

うみ「勝手なんて生易しいものじゃないですね。独裁者か」

ありさ「知ったことか。私から見たあなたたちは、あなたたちから見た細菌みたいなものだ」

ことり「よかったなりんちゃん。ウィルスになれたぞ」

ありさ「もう充分だ。この物語は終わりにして、次の可能性を……」

にこのぞえり「あまりかわいい後輩を、いじめるなよ」

61: 2014/09/18(木) 11:52:40.39 ID:jJfNcGYb.net
ありさ「ばかな!?卒業式後に小泉はなよの携帯が鳴らない地点で物語の終わりは確定したはずなのに」

えり「ごちゃごちゃうるさいぞ外道。私の妹をどこへやった」

ありさ「もうあなたたちが戻ってくるのはあり得ない。それは無限に等しい試行回数か示している」

のぞみ「なにをわけのわからんことゆうてる。そいつらは全部別のウチらだろう」

にこ「この私たちを侮ったな。神に祈れ。年貢の納め時だ」

ありさ「神は氏んだ」

にこ「哲学者や思想家の類を引用する奴にロクなのはいねえ」

ありさ「……はっはっは。まさか私を差し置いて自力で新たな可能性を示すとは」

62: 2014/09/18(木) 11:55:41.33 ID:jJfNcGYb.net
ことり「あんたが自分で言ったんだろう。私たちは困難を困難になる前にぶち壊しちまうようにできてるんだよ」

ありさ「世界の理すら自分たちに不都合なら回避するというのか……」

りん「設計ミスだ。出直しな、三流」

ほのか「だって可能性感じたんだ」

そうだ、すすめ。

後悔したくない。目の前に僕らの道がある。

ほのか「偽物がどうとか、世界がどうとか難しいことはどうでもいいんだよ。私は私だ」

ありさ「あなたたちはこの世界の続きをみせてくれるのか?」

えり「私たちは思うままにやるだけだ」

ありさ「私の負けだ。世界多しと言えど、ここまでイカレたμ'sははじめてだよ」

ほのか「私たちに道具を与えたのは失敗だったな」

ありさ「私は次のシミュレートに旅立とう。ここはあなたたちの好きにするといい。明日には元のありさだ。この体は」

えり「ずいぶん聞き分けがいいな」

ありさ「言っただろう。私は世界をシミュレートしてるだけだ。新しいパターンが出ればそれに手を加えず観測するだけだ」

りん「最後にこれだけ言わせてくれ」

ありさ「いいだろう。どんな無礼も文句も聞き流してやる」

りん「あのとき、助けてくれてありがとう」

ありさ「……!」

りん「あなたが何だろうと、それは変わらない事実だから。りんにとっては」

ありさ「はは……。あなたたちは本当、どの世界でも楽しそうだな。いつも笑っている」

63: 2014/09/18(木) 11:56:59.77 ID:jJfNcGYb.net
何が本当で、何が嘘だったのか。

どこまでが夢で、どこまでが現実だったのか。

あるいは全て本当で、現実だったのか。

ただ言えるのは、世界が二つあったとして、それぞれに私が存在していても、真も偽ない。

どちらも私なの。

ただの試行という理由で生まれた愛のない世界だとしても、私は私でμ'sはμ'sだよ!



ほのか「へい!今日はみんな来てくれてありがとう!!!」

えり「盛り上がってますか武道館!!!」

うみ「私たちのハートを音楽にのせて届けます」

ことり「楽しんで下さいね!」

はなよ「みんな、そろそろ」

りん「ではいってみましょう」

まき「一曲目、聞いてください」

にこ「踊り狂え」

のぞみ「LOVELESS WORLD」

64: 2014/09/18(木) 11:57:37.56 ID:jJfNcGYb.net
「見つめてよ 見つめないで 心が叫んでる」

「結ばれぬ運命に 引き裂かれる思い出」

「見つめてよ 見つめないで どちらも私なの」

「さよならのKissして 悲しみの国へ」

「LOVELESS WORLD!!!」

にこちゃんのギターが細かくリズムを刻む。

その後ろでことりちゃんのギターがコードをなぞり、

うみちゃんのベースが文字通り音を支える。

のぞみちゃんのシンセの電子音もでしゃばり過ぎず心地よく……。

はなよちゃんの性格無比なドラムがのたうちまわる。

りんちゃんのマラカスもいい味だしてるぜ。

さああとは私の歌声を乗せるだけだ。

「知りたくはなかった その優しさとぬくもり」

「私が戻る世界 永遠の命の闇」

「初めてよこんなに誰か 愛しくなるほどつらくて」

(愛しく 泣けるの)

アコギをぶら下げたえりちゃんのバックコーラスが私の声を支える。

「許されない恋の炎」

65: 2014/09/18(木) 11:58:40.65 ID:jJfNcGYb.net
見つめてよ…見つめないで…
心が叫んでる
結ばれぬ運命に 引き裂かれる思い出
見つめてよ…見つめないで…
どちらも私なの
さよならのKissして 悲しみの国へ
LOVELESS WORLD


これだ。これがμ'sだ。誰がなんと言おうと。

九人で音楽を奏でるこの瞬間が最高なんだ。



同じ時を生きて
同じ夢を語り合う
願いは叶わぬまま 孤独の中へ帰るわ

微笑んで冷たい言葉(かけるの)
冷たい態度をみせても(切なく)
消せはしない恋の炎

「忘れてよ…忘れないで…」

貴方を抱きしめて
灰になる運命を 選びたいの本当は
忘れてよ…忘れないで…どちらも私なの
幸せ願ってると 言いながら闇へ
LOVELESS WORLD

消えない 消えないこの炎
私の中燃える 今も(消せないから)
ここで抱きしめたい
みんなみんな忘れたい(愛なの)

忘れてよ…忘れないで…
貴方を抱きしめて

66: 2014/09/18(木) 12:00:30.19 ID:jJfNcGYb.net
「灰になる運命を 選びたいの本当は」

忘れてよ…忘れないで…どちらも私なの
幸せ願ってると 言いながら闇へ
LOVELESS WORLD

見つめてよ…見つめないで…
心が叫んでる
結ばれぬ運命に 引き裂かれる思い出
見つめてよ…見つめないで…
どちらも私なの
さよならのKissして 幸せを願う(愛してると)
私は独りで(愛してると) 悲しみの国へ
LOVELESS WORLD



ああ。もう終わりかはやいなあ。

なに、案ずることはない。まだ一曲目だ。



……これは、あったかもしれない可能性の物語。

終劇

70: 2014/09/18(木) 21:35:32.16 ID:jJfNcGYb.net
乱文失礼しました
ありがとうございました

引用元: 【ss】スクールバンドはよくないフラグをぶち壊す