1: ◆tFAXy4FpvI 2012/11/24(土) 15:18:17.96 ID:eAt1wCm8o
彼は大きな舞台から私達を見下ろして言った。

「必ずしも彼女を取り戻して欲しい」

そう、知っている。そんな言葉、言われることくらい既に知っている。いや、予想がつく。
誰もが知りながらにしてここに集まってきている。
何故、自分がここにいるのかを知っている。

ここはナムコ王国の首都、バンナム。
その中央にそびえ立つ、難攻不落のナムコ城。
その広大な城の中の大広間。

大広間の中には何十人と武装した人間がいた。
その中の一人、如月千早が私。
ほとんどの人が男である中、私が唯一の女性だった。



千早「キサラギクエスト」シリーズ



2: 2012/11/24(土) 15:23:30.00 ID:eAt1wCm8o
武装した男達は私を除け者にした。
どうやら私みたいな女がここにいるのが気に食わないらしい。
無理もないわ。
ここに立っているのはあの試験をパスした者のみ。
今ここにいるのは何十人だけど、受験者はもっといた。数百単位でいたわ。

そこからここまで勝ち進んできた私は確実な実力がある。
だからこそ、ここに、この大広間の空間に立っていることができる。

「けっ、女が……。遊びでやっているんじゃねえんだよ」
「なんだあいつ……どこの田舎もんだ」
「誰だよありゃ、女?いや、男か?」
「おいおい、女にしちゃ、まな板だな。これから料理ショーでもするってのか?」

そんな心ないことを言う人もいた。最後のはよっぽど斬ってやろうかと思ったけれど。
しかし、私は無視した。

3: 2012/11/24(土) 15:28:01.88 ID:eAt1wCm8o
無視できたのも全て目的がある。
私にはやるべきことがあるから。
何もかもが目的のためだった。

そう、何もかもが。

奪われた私の全てを取り戻すために。
報酬の財宝なんて物に興味はない。見ているのは全てその先のこと。

「我が、ナムコ王国は現在、隣国、クロイ帝国との戦火にある。
そして非常に押されつつあるのは皆も承知であろう」

大広間のその演説用の舞台。
何人も警備の兵に囲まれながら話す男こそがナムコ王国の王。
高木順二郎。

私は彼の話を大広間の隅っこの壁に寄りかかりながらも適当に聞いていた。
睨みつけ、話を早く本題に入れるように、念をこめて。

4: 2012/11/24(土) 15:33:02.03 ID:eAt1wCm8o
時間の無駄。長い演説のような話は嫌い。大して説得力のあるものでもないのに。

「さて、君たち諸君が集められたのは先にも言ったように姫君である
 貴音を取り戻して欲しいのだ」

そう今にも泣きそうな、震えた声で言う。

先日。大きなニュースとして国を震撼させたのが、国の姫である貴音が誘拐されたという事件。
犯行は恐らく、クロイ帝国によるものとされている。

実際にはどうなのかは私ごときが詳しく知るはずがないのだが、
この戦火で疑うべきは確かにクロイ帝国だろう。

そんな風に思ったが口に出すこともなく思いとどまった。
もとよりそんなことを喋っていても誰も反応してくれるはずがないから。
一人で隅にいる私は。
一人ぼっちでいる私は。

5: 2012/11/24(土) 15:36:55.04 ID:eAt1wCm8o
「彼女が今現在、どこにいるのかはわからない。
そして、何のために誘拐されたのかも……」

そう話を続ける国王・高木に少し違和感を抱く私。
何かしら? この気持は。

自分の娘であるならもっと大切にするべきだし、熱心に調べるはず。

さすがに他人ごとのようでどうにも呆れるわ。

「君達は……あの厳しい試験をクリアしたんだろう?
 あぁ、彼女の考える試験は残酷だからねぇ。
 だが君たちなら大丈夫だ。私が保証しよう」

とてもいらない保証、無意味、と思いつつも試験の様子を思い出す。
確かにあの試験は意味不明なものや理不尽なものが多かったわね。

6: 2012/11/24(土) 15:40:14.67 ID:eAt1wCm8o
そして、それを作った彼女というのは国王のとなりに立って睨みをきかせている律子であろう。
彼女は大臣であり、実質ほとんどの仕事を彼女がやっているとの噂である。
まぁ、もっとも噂なだけだといいのだけど。


私は刀を交えた経験があった、あの大臣である律子と。

しかし、彼女はそれこそ無茶苦茶に強かった。
そんな場面に至った経緯は今は言えないが、だけど、相当強かった。


律子( あの子、確か千早って言ったわね。そう、来たの。
    どれだけの力を見せられるかは、見ものになるわね)

あんなに遠くにいるのに目と目が会った。いえ、そんな気がしただけ。
実際には私のことなんて見てないに違いないわ。

7: 2012/11/24(土) 15:43:09.22 ID:eAt1wCm8o
高木「いいかね。必ず姫を取り戻して欲しい」


そこまで溺愛するのなら何故……?
城の警備の甘さを反省させるべきなのでは……。
それをも突破する能力がクロイ帝国の側にあったというの?

しかし、私の疑問を遮るかのように大広間の武装した屈強な男たちの中で、
一人が拳を高く掲げて言った。

「任せてください! 僕が必ず助けて見せますよ! へへん」

そう言うにはあまりにも細く強そうには見えないのだけど。
そもそも男……? のようにも見えない。

違和感を感じるくらい周りの屈強な男の人たちと比べると弱々しく見えた。

8: 2012/11/24(土) 15:46:52.68 ID:eAt1wCm8o
「けっ、てめえみたいなヒョロい奴がよく生き残ったもんだぜ」

「何~!?」

ザワザワと大広間が騒がしくなる。
細い男(?)は挑発してきた大きな男の前に出る。
それを見下すように大きな男は言った。

「おいおい、何なら俺が今から稽古つけてやろうか? あぁ?
 ほれ、このがら空きのボディーに一発いれてみな」

そう言いながら自分のお腹のあたりを指さした。
なんとも安い挑発なんだろう……浅ましい。と思いつつも見守ることにした。
そういう問題事に口出す性分ではない。

9: 2012/11/24(土) 15:51:26.66 ID:eAt1wCm8o
そして、このご時世、挑発をしてきた男はどこの世紀末のような格好をしているのだろうか。
肩のパットに棘がついているわ。

そして、細い男(?)はピョンピョンと軽く跳ねて構えをすぐに取ると
その小さな拳を相手の腹に目一杯めり込ませた。

次の瞬間には大きな男は、これまた大きな音をたてて倒れていた。

「ふっ、あまり僕を舐めないでください」

倒れた男を満面のドヤ顔で見下ろす。
その大きな音に再びどよめきを騒がしくなる大広間。

「僕の名前は菊地真。よく覚えておくんだ」

10: 2012/11/24(土) 15:54:58.08 ID:eAt1wCm8o
一連の騒ぎがあってから王の隣にいる大臣・律子は大きな声で「静粛に!」と
喝を入れ、一瞬にして大広間を静かにさせてみせた。

その後、王の方は何事もなく話また始めるのであった。

真。別段、私としては興味はなかったけれど、どうも向こうはそうはいかないみたいだった。
うっかり目があってしまった。

近づいてきたらわかる、整った顔立ち。大きな瞳。

「ねえ、君は……一人なの?」

「ええ、そうよ」

わざと素っ気なく返してみる。いつもの癖。

11: 2012/11/24(土) 15:57:58.99 ID:eAt1wCm8o
「そっか。ねえ、良かったら僕と」

「結構です。私は一人でいいです。一人で大丈夫ですから」

僕と一緒に姫を取り戻さないか?
そう言いたいのでしょうけど、お断りよ。


数々の男がその前にも私の所にきてそういう風に言ったわ。
だけど、見え透いていたのは己の欲望。

旅には華がなくては、なんてことも言われたけれどお断り。
そういうのには興味が無いの。

「そうか。何かあったらいつでも僕を頼ってくれてもいいからね」

と爽やかな笑顔を残し、元にいた方に戻っていった。

12: 2012/11/24(土) 16:03:36.24 ID:eAt1wCm8o
戻っていった先で別の男たちに

「なんだ振られたのか? せっかくカッコつけたのにな!」

とからかわれていた。
その度に「うるさいなぁ」と怒っていた。


「報酬は、国の財宝。聞ける願いはひとつだけ聞いてやろう」

一番に近くにいた男が「じゃ次の王にさせてくれるかもな」なんて言っているがそれは恐らく無理だろう。
できたとしてもすぐにはでないし、後継の形を取らされて、まあ、確かにその時は姫と結婚できるだろうけど。


そういった王位、権力にも私は興味がなかった。
どうでもよかった。

だけど大広間の男たちがこの国の美人で有名である姫の顔を知っている。
それを聞けば我先に、とそわそわしだした。

13: 2012/11/24(土) 16:34:24.74 ID:eAt1wCm8o
私は、聞ける願い。私の願いはこの国の財力、戦力があれば無理ではないはず。
いえ、この国自体にお願いするの。
そうすればきっと叶うはず。

「では、検討を祈る」

そういい王の余計な演説はいつの間にか終わり、
終わってみればやはり大したこともなかったなぁ、と思っていた。

そして、次々大広間を出ていく男たち。
そのあとに続いて私も、これからどうしよう、など考えながら大広間を出た。

数々の勇者、戦士、剣士、魔法使い、呪術使い、弓使いがいた大広間。
その人々が次々に大広間を出ていく。

そうして、これから、王位をかけ、己のプライドをかけ、姫の奪還に向かうのであった。

14: 2012/11/24(土) 20:23:38.47 ID:E/kh74c5o
城の大きな入口を出るとそこに広がる城下町。
首都であるバンナムは相当に栄えている町でなんでもあった。
どうやら他の人達はこの町で武器や装備を整えるらしいが、
私は困ってはいない。
私には元々武器はこの剣が一つあるし、それでいいと思っていた。

城を出ると夕日が差し込んでいて、そこでは今日の出発は無理だろうと悟り、
宿を取ることにした。
一日やそこらで終わるような内容でもないし、
急いでドジを踏む方が痛手だし。

宿に行く前に城下町を少し歩いた。
少ないお金を買い物に使った。
この国と、国周辺の地図や、回復薬等の薬品。
また食料を買った。

これで旅の準備は万全ね。

15: 2012/11/24(土) 20:28:36.01 ID:E/kh74c5o
宿は簡単に見つかった。私みたいにいきなり最初っからのんびり始めの町で過ごしている
タイプの勇者は少ないらしくどこの宿もそれなりに空いてる様子だった。

さて、宿でゆっくりと状況を整理するとしましょうか。

宿の自室でさっき買ったばかりの地図を広げる。


王の話だと姫は隣国であるクロイ帝国に囚われている可能性がある。
ならばまずは妥当にそちらを目指すべきだろう。
ここからだと……そうね。アズミンという町が近いみたいね。

まずはそこまで行きましょう。
地図で確認すると、ここからだと森が2つ。
これを通らないといけないみたいね。

16: 2012/11/24(土) 20:31:31.71 ID:E/kh74c5o
他の勇者の人たちがどう行くのかは全然わからないけれど、
でも夜の森を今歩くのは危険ね。
明日の朝にでれば、それで十分よ。

どちらにしろ森にこの時間から入っている先頭集団は恐らく野宿。
夜行性のモンスターに襲われているはずね。

さて、そうと決まれば明日も早いわ。
もう寝ることにしましょう。
私の野望のための冒険はまだ始まったばかり。

そして私はベッドに入り、何も考えないようにして、眠った。

17: 2012/11/24(土) 20:39:14.69 ID:E/kh74c5o
翌朝。身支度を済ませたあと、宿をでた。
営業の準備なんかで慌ただしい町の中を通り、町の外へ出るための門まできた。

さすがに首都だけあって町の出入り口は警備が厳重なのかしら?
だとしたら何故もっと警備を強化しなかったのか不思議ではあるけれど。

首都の大きな出入り口は東西南北に4つある。
他には裏町の悪人達が使う裏口がいくつかあるみたいだけど。

門の警備と挨拶を軽く交わし、少し歩くと森が見えた。
あまり森とかそういう場所は得意ではないけれど。
仕方ない。
これも慣れていくしかないこと。

土地勘のない場所を歩くのはどうにも不安すぎるけれど。
けれど、今の時間、特に大きなモンスターが活動するだろう時間ではない。
大きなモンスターはもう森の奥の洞窟なんかに引っ込んで寝ているはずね。
そこを攻撃しなければいいだけの話。

18: 2012/11/24(土) 20:44:01.11 ID:E/kh74c5o
森へ入って10分くらいが経過しただろうか。
それとももう随分歩いたのだろうか。地図の上からではどれくらい森の奥まで
歩いて来たのか、なんてことはわからない。
とにかく前を歩くしかない。

早朝の出発だということもあり、今だに森の中は霧が出ている。
視界が悪いのはそうだけど,それはモンスターにとっても一緒。
敵との遭遇を格段に下げるはず。

という思考はだいたいフラグになりかねない。と思ううちに
モンスターが目の前に現れた。
小さなモンスター。

1メートルもないくらいのカマキリが巨大化したかのようなモンスターだった。

このモンスターは朝食でも探していたのだろうか。
私は宿から出て、昨日の買った食べ物の残りを食べていたからそれでいいけれど。
さすがにこのカマキリみたいなモンスターに捕食されるのは御免だわ。

19: 2012/11/24(土) 20:48:25.78 ID:E/kh74c5o
最初の一太刀を交わす、その隙に後ろに背負っている剣を抜き
その勢いで斬りつける。

ダメージは浅くカマが飛んでくる。
後ろに飛んで回避。

「朝の体操にはちょうどよさそうね」

私が走って近づいたのを狙ったカマキリは腕を振り落とす。
上手く体を反らし、避ける。そして。

振り落とされた腕を肩から切り落とす。
すぐさま背後に回りこみバックスタブを決める。

この程度の敵は朝飯前ね。
朝ごはんは食べたあとなのだけど。

20: 2012/11/24(土) 20:52:17.45 ID:E/kh74c5o
確かこのカマキリのモンスターは、腕の刀身の部分は売れるはず。
あまり荷物は持てないわね。

あとで奥に行けば。自然とモンスターの強さも上がっていくでしょうし、
そこのモンスターのお金になりそうな部位をいただけばいいわ。

森の奥へ行けば行くほど人が住む町からは遠くなる。
基本的に強いモンスターほど人間との接触を嫌う。
知性があるが故に人間の強さを理解している。
だからこそ、人の強さを知ってるモンスターの方が人里よりも遠ざかる場所を選んで住んでいる。

「はぁ……この調子だと……日没するわね。
 一晩は野宿しそうかもしれないわ」

そうなると、昨日宿をとってゆっくりしていた意味がなくなるのだけども。

21: 2012/11/24(土) 20:54:07.61 ID:E/kh74c5o
そういえば昨日の宿で……。


――――宿。

「へえ、あんた、もしかして城が集めた勇者ってののうちの一人かい?」

男性の店主は気さくに笑顔で話しかけてくれた。
あまり人にしゃべるのは気が進まない話題ではあるが

「ええ、まあ」

とだけ答えた。

「するとじゃあ、これから森へ行くのかい?」

22: 2012/11/24(土) 20:57:18.91 ID:E/kh74c5o
「はい、そうですね。まずはそこが一番かと」

他の勇者から聞いたのかしら?
宿屋のおじさんは耳打ちするように店のカウンターから身を乗り出した。
口元に手をあてて小さな声で

「あそこの森は最近モンスターが世代交代したらしいんだ。
 なんでも急に外部から現れた一角獣が森の支配者になってるとか」

ユニコーン?

なんでそんなモンスターがこんな所にいるのよ。
どういう魔物かはわからないけれど、相当強いのかしら?

そう、それをまずは倒すなんてのもいいかもしれないわね。

23: 2012/11/24(土) 21:42:16.65 ID:E/kh74c5o
「だけど倒そうなんて考えないほうがいいぞ?
 ユニコーンはすごく強いからな。だからこそみんな森の浅い場所を辿りながら遠回りして進んでいるはずだ」

「森をまっすぐ抜けようとして、最深部には入っちゃいけないよ」

そう、ご忠告ありがとう。だけど知っているの。
ユニコーンの角、取っても高く売れるということを。
もしくは鍛冶屋に行って武器にしてもらうというのもあり、だということも。


―――。

なんて考えていたことを歩きながら思い出した。
じゃあ、折角だし、折る角と書いて折角だし、一角獣とやらの自慢の角を
切り落としに行きましょうか。

24: 2012/11/24(土) 21:47:50.50 ID:E/kh74c5o
という訳で森の浅い所を遠く回れと忠告されたけれど無視して真ん中を大きく突っ切ることに。
そこでどこかで遭遇できればいいのだけど。

しかし、時間もだいぶ経ってきたわね。
歩き続けているけれど、方角は……、コンパスで確認する。
よし、こちらで大丈夫みたいだ。

奥に来ていることもあるのか、日が登ってきたからなのか、
モンスターとの遭遇率がグングンと上がってくる。

しかし、所詮雑魚。出てくる度に剣を抜くのが億劫になるくらい出てくる敵は弱く、
敵を倒すのに時間はかからなかった。

モンスターが現れ、剣を抜き、斬り捨てる。
単純作業の繰り返しである。


その中で、ひとつ、高速で近づく足音が。


ザザザザ……!

25: 2012/11/24(土) 22:17:04.38 ID:E/kh74c5o
草むらをかき分け走る音。
モンスターなんかよりももっと早い。

一角獣……!

後ろから大きく、ガサッ、と音がし大きな影が飛び出す。

剣を抜き、その勢いで、一発で仕留める!

「はぁぁ!」

ガッ。

そしてガードをされる。ガードされた!?

「おい……! 何も、頃して歩くことないじゃないか!」

65: 2012/11/25(日) 13:43:41.49 ID:L8PLeOTyo
人だった。
紛れも無いくらいに人だった。
その人は私の一撃をガードした。手加減したつもりは一切ない。
もちろん仕留めるつもりで剣を振った。

しかも、自分の拳につけたナックルで防いだ。

少しズレれば手首の先は吹っ飛んでいただろうに。なんて勇気……。
あるいは何も考えていないだけ?
だけど、それにしても無謀。
頭に血が登っているのかしら?

「なんで頃すんだよ! 生きてるんだぞ!」

思い出した。菊地真。そう、戦闘スタイルは戦士だったのね。
城で私に話しかけてきた。

まさかこんな綺麗事を言うとは。お笑いね。

27: 2012/11/24(土) 23:19:51.29 ID:E/kh74c5o
「向かってきたからやっつけたのよ」

「そんな言い方して! 例えモンスターだろうとしても
 生きているんだ! ……生きているんだよ!」

何を言いたいのかイマイチ私には伝わらないし、何に怒っているのかもわからない。
私には到底理解できないことだった。

「そう、でも、私には関係ないわ。
 あなたは私が勝手にモンスターに殺されたとしてもモンスターに対しても
 今と同じように怒るの? 怒らないのでしょう?」

「怒るよ!」

「っ!」

驚いてしまった。そんな所で即答されるとは思ってもいなかった。
そんな馬鹿な話があるわけない。本当にそれは……綺麗事ね。

28: 2012/11/24(土) 23:23:21.26 ID:E/kh74c5o
「そう、それはいい宗教をお持ちで」

「僕は無宗教だ……」

互いの間に火花が散る。



真(なんだ、この女。今の一撃……)

真(とても女の子のそれとは思えないパワーだった)

真(恐らく……相当強い!)


「それで何を言いたいのかしら」

「だから無闇に頃して歩くなって言ってるんだよ」

30: 2012/11/24(土) 23:30:19.80 ID:E/kh74c5o
「無駄ね、それは。向かってくる敵をどうするの?
 話し合いで解決するのかしら? それとも何?
 食料与えてそれで引き返してもらうってこと?」

「そうじゃない……けど」

「そうじゃないならもういいわね。私は行くわ。先を急ぐのよ」

振り返り、剣をしまい歩き出す。無駄な時間を使ったわ。

「モンスター一匹も殺せないようなんじゃ、姫を救出することなんて無理ね。
 とんだチキン野郎ね」

私としたことが余計なことを。
この程度のことで苛つかされるとは。

「待ちなよ。聞き捨てならないな。剣、抜きな。
 僕の名前は菊地真。……ライバルはいらない。敵なら尚更。
 だけど、戦闘不能にまでならしてあげるから感謝してお家に帰るといいよ」

はぁ……失言を撤回する間もなく釣れてしまった。

31: 2012/11/24(土) 23:36:35.00 ID:E/kh74c5o
「はぁ。名乗るのがお好きなのね。いいわ。
 私は如月千早。……覚えなくて結構よ。ここで終わるのだし、あなたは」

剣を抜く。

「舐めるなぁぁぁあ!」

突進。単調な突撃。
一直線に向かってくる真をかわす。
そこを斬りつけて終わりに。

「ふっ」

鋭い横殴りが横にかわしただけの私の体に入る。
体の正面をガードをすることは余裕だけど、側面をガードするのは
盾なしが基本的なスタイルの私には辛かった。

一撃が重い。

32: 2012/11/24(土) 23:40:08.51 ID:E/kh74c5o
「どうだ! へへん、僕だってやればできるんだから」

軽く吹き飛ばされるが、踏ん張って持ちこたえる。
まだまだ!

反撃開始。

「はぁっ」

まずは足元を薙ぎ払う!

「甘いよっ!」

軽くジャンプされ、かわされる。とてもジャンプで飛べる高さではない。
なんて跳躍力……。
猿のような身のこなし。……只者ではないことを今更ながらに思い知らされてる。

33: 2012/11/24(土) 23:44:56.09 ID:E/kh74c5o
「そっちこそ……甘いんじゃない!」

真がジャンプした勢いで着地した木を斬り倒す。

「おっと……」

真が倒れる木に巻き込まれないようにジャンプし、着地する瞬間を狙う。
上から、脳天から真っ二つに……!

スドンッ!

「ぐはぁッ」

重い一撃が……お腹にっ!
反応が遅れた。 意識が遠のきそうになるのを気合でなんとか保っている。
避けられた。

あの絶好のチャンスを避けられた上に一撃くらっている……。
木々を縫うように自分が吹っ飛んでいるのがわかる。

34: 2012/11/24(土) 23:50:47.47 ID:E/kh74c5o
視界に真が飛び込んでくる。
服の前が真っ二つに斬られた状態だった。
かすかにあった手応えは、服だったことを悟る。

真は斬られる瞬間に体をひねるように回避し、そのままひねりを利用し
私の腹部への攻撃へ移行した。

ぶっ飛んでるなう。
このまま飛んで行ったら頭から森の木に突き刺さる。
そんなギャグみたいな氏に方は御免なので、なんとか体勢を立て直す。
木の幹に着地、というか受け身を取り、地面に降り立つ。

内蔵が熱い。

しかし、休んでる暇もなく追撃に来ている真の警戒を。

どこに……!? 見失った!?

35: 2012/11/24(土) 23:55:18.98 ID:E/kh74c5o
瞬間。
音とともに真はしゃがんでいて私の体の真下にいた。
足だけは私の顔面、顎を狙っていた。

高速とも言える蹴りが炸裂するが、上体をそらすことで避ける。
あれをまともに食らっていたら顎が粉々になっていたに違いない。

そして、避けた瞬間に目に入ったものは私の中で意外なものだった。
間合いを取る。

互いに睨み合う。

真の服は正面が斬られ破れている。そのせいで見ることができる真の肉体。
胸の部分には白いブラジャーがしてあった。

「そういう趣味の変態だったの……?」

途端に真は顔を真っ赤にして、胸を隠す。

「違う! 僕は女の子だ!!」

36: 2012/11/24(土) 23:57:59.56 ID:E/kh74c5o
衝撃。女の子でした。
まさかあの大広間に集められた勇者達の中で女は私だけだと思っていた。
だけど、他にもいたなんて……。

真も、いえ、彼女も女の子だった。

まさか……。

「それで……私に話しかけてきたの……?」

「? ……何が?」

頭に血が登っているようで会話にならなかった。

「あの時よ。大広間であなたが騒いだあとに、私に話しかけてきたのは、
 あれは一体どういう理由なの」

37: 2012/11/25(日) 00:02:13.05 ID:rbd3xKCNo
「あぁ、女の子一人だと可哀想だし危ないと思ったから。
 だから僕もついていって一緒に頑張ろうとしたんだよ、女の子同士で」

「女の子が一人で危ないなら二人いても変わらないわよ」

「だからなんてそういう風に言うんだよ。もっと素直になりなよ」

「別に私は素直よ。私は一人でも平気」

「もういいよ。はぁ。興がさめた。勝手にしろよ」

振り返り、歩き出す。
なんだろう、その言いようは。後ろから斬ってやりたくなったわ。

「僕が先に行く。君は勝手にしてくれ。だけど僕の先を歩かないで欲しい」

「氏体を見るのは嫌なんだ」

と吐き捨てるように言った。

38: 2012/11/25(日) 00:07:26.97 ID:rbd3xKCNo
去りゆく背中を斬りつけてもいいのだけど、その気にはならなかった。
また戦闘するには少しばかり厄介な相手だった。

「そう、女の子だったのね……」

そんなことばかりが頭のなかをよぎって何も集中できそうになかった。
森を歩くにしても、モンスターが出るにしても、乱暴に斬り捨てた。

私の方が歩みは早いし、そっちの方が効率的であるしきっと追いついてしまうわ。

なんて嫌味に思うこともあったが、どうにも後味が悪い。
なんだか私が悪人みたい。

ただ向かってきた敵を倒したことの何が悪い。
イライラしてきた。

39: 2012/11/25(日) 00:13:05.56 ID:rbd3xKCNo
殺気を纏う私にモンスターは近づかなくなってきた。
こんなにも対人の戦闘を終えたあとに殺気を纏う人間に襲いかかるモンスターがいるのだろうか。


私の方が歩くの早いのに彼女のが先に行って私の先を歩くなんて……何様なの。
何それ。

飛びかかってくる知能の低い狼のようなモンスターを薙ぎ払う。
斬りつけずに殴りつけた。
刀身の側面で殴るように。

ギャンっ、と狼のようなモンスターは短く鳴き木に打ち付けられ気絶する。
こういうやり方をしろといいの? いちいち? 面倒ね。

41: 2012/11/25(日) 00:17:48.42 ID:rbd3xKCNo
しばらく頭を冷やすために休憩した。余計な時間を使ってるとも分かっていながらも。
ただでさえ、宿で一泊していて遅れをとっているのに。

しかし、森を歩くと雨が降りだした。
突然のスコールのような雨。
雨に濡れるのは後に風邪を引くこともあるかもしれないと思い
私は森を走り抜けた。

「もう……」

飛び出してくるモンスターは一撃で倒す。
木々の合間を縫うように走り、邪魔するものは斬りつけて道を作った。

42: 2012/11/25(日) 00:22:21.23 ID:rbd3xKCNo
そして、しばらく走ったあと、洞窟を見つけてそこに入り込んだ。
運が良かったとも言えるし、後々の事を考えると運が悪かった。

だが、驚くことに奥のほうに明かりが見える。

この森の奥に進んでいる人間は一人。

(はぁ。彼女もここで雨宿りをしているのね……)

端的な勘定を言うと嫌だった。非常に会いたくなかった。
こんな雨宿りのために入り込んだ洞窟でさっき氏闘を繰り広げた女の子と再会するなんて。

(まぁ、でも奥に行ってみましょう)

奥に進む。
明かりのある場所は洞窟の内部だというのにも関わらずかなり開けている場所だった。
かなり広い。天井もこのスペースだけ高い。ドーム状になっている。

明かりも真が焚き火でもして濡れた体を温めているのかと思ったがそういうものでもなかった。

43: 2012/11/25(日) 00:33:51.11 ID:rbd3xKCNo
明かりの正体である松明は土の壁に括りつけてあった。

まるで誰かがここで生活をしているかのようだった。

(こんな森の中で……。誰が?)



――――なんでも急に外部から現れた一角獣が森の支配者になってるとか。

ふいに宿での言葉を思い出す。と同時に嫌な汗がたっぷりとでてきた。
そう、ここが住処ね。
確かに幻獣クラスのモンスターになるとこんな芸当までできてしまうって聞くわ。

なるほど。
恐らく松明は雷、炎系の魔法で灯したのでしょう。

44: 2012/11/25(日) 00:46:05.18 ID:rbd3xKCNo
ドーム状になっている天井の方を見ていると、上の方に穴があった。
見るからにこの洞窟の続き、といった感じである。

私はそこに何か一角獣繋がりの宝でもあればいいかと思い登った。
土の壁を登り、なんとか登り切れ穴に入った。

そこはやはり洞窟の続きになっていた。
最初の入り口から入った洞窟の広さと対して変わらなかった。

さて、結局洞窟の続きと思える場所には宝も何もなく奥に見える明かりだけが見えた。
多分外の明かりだろう。

(こんな洞窟には用はないし、さっさと……)

ゴゴゴゴ……。

下から地響き、そして人の走ってくる音。もう一つ大きな足音。

45: 2012/11/25(日) 00:51:39.37 ID:rbd3xKCNo
戻って見下ろす。
するとそこには一角獣がいた。
馬のような体は馬のそれよりも何倍も大きく、そして大きな角。

「あれが……ユニコーン……」

体中に帯電しているのがわかる。そして、一角獣が見ているものは
黒髪ショートで服の前だけが破けた男にも見間違う少女。
真だった。

それはさっき私と別れた時よりもボロボロになっていた。

「はぁ、はぁ……不味い。ここは……こいつの住処!?」

誰が見てもわかるように追い詰められてた。
どうでもいい、と思ったが、少しの間どうなるかは気になった。

46: 2012/11/25(日) 01:00:58.58 ID:rbd3xKCNo
頭を大きく振りながら突進する一角獣。
真はなんとか避ける。

一角獣が壁にぶつかった衝撃が洞窟中に伝わり、揺れる。
危うく下に落っこちる所だった。

この上から見下ろせる場所を気に入った私は少し嫌らしいとも思いつつ、
事の次第を見守ることにした。

が、全く気が付かれないのも癪なので小石を真に向かって投げてやった。
一角獣と一触即発の状態の真の足元に転がり、靴にあたる。

真は一角獣を牽制しつつも上を見上げ、私と目が合う。
その瞬間に彼女の顔が露骨にひきつるのがわかった。

47: 2012/11/25(日) 01:05:26.58 ID:rbd3xKCNo
真(なんであの女がここに……!)

真(ボクをあんな場所から見下ろして笑うのか……! クソ!)

結局、私もあの一角獣の角の欲しさに彼女がどう戦うのかを見て
攻略方法を探そうとしている。
あの角は高く売れる。それこそ、一本で武器や防具が新しくできるほどに。

「そこで何してるんだよ……」

睨みつけてくる。

「何もしてないわよ。たまたまここに座っていただけなのだから」

我ながら声を出して反応してしまうのは馬鹿だと思った。
一角獣がこちらに気がついてしまえば元も子もない。

まぁ、この高さにいる私をまさか壁を駆け上がって攻撃するよりは
まずは目の前の真を倒す方がらくしょうし。

実際にこちらには目もくれない。

48: 2012/11/25(日) 01:10:16.16 ID:rbd3xKCNo
真だってこの高さくらい彼女の身体能力を持ってすればこちらに登ることも可能なのだろうが、
一角獣自体がそうはさせないだろう。
洞窟の入り口ギリギリのサイズの一角獣は真の身長を遥かに超えている。

「あんな所から馬鹿にして! こんな所で、氏んでたまるか!」

いっきに殴りにかかる真。
しかし、帯電してた雷を角から放射した。それによって致命傷は避けたみたいだが吹き飛ばされ
壁に激突し、崩れ落ちていく真。

「はぁ……こ、こんな所で……」

「ボクは……男の子よりも……強い女の子に……なるために」

真に迫る一角獣。

「もう……誰も傷つけないために……! くそぉ……」

49: 2012/11/25(日) 01:12:13.51 ID:rbd3xKCNo
――僕がお姉ちゃんを守ってあげるよ。


なんでこんな時に出てくるのよ。
あなたが出てきたら……私は……もう何も言えないじゃない。


「ねぇ、そこの……如月千早」

名前は覚えなくていいと言ったはず。
無理もないか。あんなに悪態をついたのは初めてなのだから。


「僕が氏んだら、僕は立派だったと嘘でも伝えて欲しいんだ……」

ユニコーンが角に電気を溜めだした。
バチバチと光る角が真に向けられる。

50: 2012/11/25(日) 01:14:51.76 ID:rbd3xKCNo
「僕は、立派な勇者だったってさ」

――お姉ちゃん、僕、大きくなったら立派な勇者になるんだ!
――ふふ、きっとなれるわ。応援してる。


真の頬には光る涙が見えた。
自分の氏を覚悟した時の人の顔。私はこれも知っている。

私の起源であり、剣を取った。その時に見たものである。





私は上から飛び降り、ユニコーンの帯電された角めがけて剣を振るっていた。
そして……角を切り落とした。

51: 2012/11/25(日) 01:19:23.11 ID:rbd3xKCNo
どうやら一角獣の帯電される場所が角だったらしく、その帯電する場所を失ったその痛みに
暴れまわる一角獣を目の前に、戦闘不能の真を後ろに。
そして、荷物の中から素早く回復薬を取り出し、後ろも見ずに放り投げた。

「何をぼさっとしてるの! 早く使いなさい!」

「あんな伝言、私は伝えたくもないわ。自分で伝えなさい!!」

真が受け取るのがわかった。

「ち、千早……?」

絶対に助けてくれる訳ないと思っていた人物が助けてくれたことに驚いている真は身動きも取れなかった。

「女の子は一人じゃ危ないんじゃなかったの……!」

「う、うん……!」

回復薬をいっきに飲み、立ち上がる真。

52: 2012/11/25(日) 01:22:54.46 ID:rbd3xKCNo
瞬間。一角獣が突進してくる。
私と真は左右にそれぞれ飛び退けた。

「さすがに角を斬り落としただけじゃだめね」

「いいから、次に備えて!」

「私に指示しないで!」

「何!?」

「何よ!」

言い合いの中にお構いなしに私の方に突っ込む一角獣。

「私が引き付けてるから横から一撃で決めなさいよ!」

「わかった……!」

53: 2012/11/25(日) 01:26:20.19 ID:rbd3xKCNo
私めがけて飛んできた。刀身でガードして動きを止める。

「今よ!」

「うおおおおおおおっ!」

私が動きを止めた隙に真が横腹に一発入れる。

ボギィィッ!

骨が何本も折れる音が洞窟ないに響く。
大きな音とともに倒れる一角獣。

また立ち上がろうとする一角獣を私が斬りつけた。


54: 2012/11/25(日) 01:30:41.69 ID:rbd3xKCNo
「また……そうやって!!」

血相を変える真に対して冷静に返す。

「氏んでないわよ」

「……」

「峰打ち。傷は浅いし、じっとしてればすぐに回復するわよ」

真が何か言いたそうにしていたけれどそれを無視してまた出口に登るために壁に向かう。

「あ、ありがとう。君は命の恩人だよ」

「いいえ、それほどでもあるわ。でも別に気にしないで。ただの気まぐれよ」


55: 2012/11/25(日) 01:31:46.31 ID:rbd3xKCNo
何の記憶が被ってあんな行動に出たのだろうか……。
私自身にも正直な所よくわからなかった。
何のために。

「僕も着いて行くよ」

「結構よ」

「なぁ!?」

また断ってしまった。

「そんな女性用の下着をつけてる変態はお断りね、ふふ」

「だから僕は女の子だって……今笑った!?」

「笑ってないわよ」

「ねえ、もう一回笑ってよ! ねぇ、千早ってば!」

56: 2012/11/25(日) 01:32:27.40 ID:rbd3xKCNo
「ついて来ないで。今から登るんだから」

「僕も手伝うよ、ほら、ここに足を乗っけて。ロープ持って」

なるほど、先に私が行ってロープで後から……ってわけね。

「いいわよ」

ロープを受け取り、真が中腰で手を前で組み足場を作った所に片足を乗せ

る。

「行くよ、せーのっ!」

ブンッ

「ひっ、高っ」

馬鹿力という単語がふさわしいほど飛び上がり、穴には余裕で届いたのだ

った。
一発で穴に入ることができた。

私が前に登った、あの苦労は一体……。

64: 2012/11/25(日) 13:42:53.21 ID:L8PLeOTyo
「おーい、千早ー!ロープ投げてよー!」

「今投げるわ」

ポイッ。スルルルル……ポトッ。

全部投げた。

「おいいいいいいいい! 全部投げたら登れないじゃんか!!」

「投げてって言ったからよ」

「そんな馬鹿な! 何か長い物を垂らしてよ!」

「イヤよ、それじゃごきげんよう」

「待てゴラァァァァアア!!」

ズドドドドド!!


壁を登ってきた!? いや、じゃあ最初からそうすればいいじゃないのよ。

58: 2012/11/25(日) 01:35:20.88 ID:rbd3xKCNo
「はぁ、はぁ、僕もついていくからな!」

「いやよ、私は一人で十分なの」

「またまたそう言って、僕と千早のやり方は少し違うけれど、
 千早が改心すればきっといいコンビになれるよ!」

「イヤよ、あなたが私に合わせなさいよ」

「イヤだよ、そんな千早みたいなダークサイド……」

「誰が暗黒面だ!」

露骨に嫌そうな顔してるし。

59: 2012/11/25(日) 01:37:21.56 ID:rbd3xKCNo
「さっき氏に際に言っていた男の中の男、出てこいやぁ、ってのは一体?」

「ボク、そんなこと言ってないよ!?」

「それでその男の中の男の私が助けてあげたんじゃない」

「男だったの!? 道理で胸が……」

「誰が壁よ!!」

出口に向かって歩く2人。

「あれは……ボクは女だからってバカにされてたんだよ。
 だけど、強くなりたい一心でここまできたんだよ」

60: 2012/11/25(日) 01:40:34.68 ID:rbd3xKCNo
「あの大広間やこれからもだけど、ボクは女でありながら強くあり続けるつもり」

「本当は可愛い格好をして素敵な恋人を見つけて平和にくらしたいんだけど、
 どうもボクの中にある正義の血が許されないんだよ」

それであんなに頃しが苦手なのね。
まぁ、それも異常ではあるのだけど。

「そう、本当に立派な宗教だこって」

「またそうやって……」

「でも千早も結構、ボクみたいに正義の血があるよね?」

「一緒にしないで」

イラッとする。馴れ馴れしい。
女性だと知られてから余計に馴れ馴れしくなった気がする。

61: 2012/11/25(日) 01:47:06.55 ID:rbd3xKCNo
「ねえ、知ってる? ボクさ、結構ナムコ王国の東の方に住んでるんだけど」

「聞いてないわそんな話」

「まぁまぁ……。で、もっと東の極東の島国があるんだけどね。
 そこでは勇者のことを”アイドル”っていうらしいんだ」

「結構外国かぶれなのね」

「へへーん、それでね、真の勇者のことを”アイドルマスター”って言うんだよ」

「そう、興味ないわ」

「だからさ、その極東で言う所の”アイドルマスター”にお姫様救ってなっちゃおうよ!」

「トップはいつだって一人で十分よ。その時は斬りつけてあげるから」

「言ったな!? その時はボクは千早にも負けないくらいの一人前の超戦士になってるからね!」


私と真の二人は並んで洞窟を出た。外は雨があがり、森の中には木漏れ日がさしていた。
一人で良いという私に懐いてしまった真という女の子。
しばらくはこの子と、行動を共にするのだろうかと思うと溜息がでる。

一行は次の町、アズミンを目指す。



キサラギクエスト EPⅠ 旅たち、真の勇者編  END

62: 2012/11/25(日) 01:51:12.79 ID:rbd3xKCNo
一旦ここで終わりたいと思います。
続きはまたいずれ書きます。

キャラ崩壊、ずれ、誤字脱字、設定の矛盾、等々多いと思います。
何よりアイマスでやる必ryは重々承知です。
アイマス愛故ですので

こんな駄文ですがお付き合いください。




続きます





引用元: 千早「キサラギクエスト」