518:  ◆tFAXy4FpvI 2013/01/12(土) 19:10:25.61 ID:ChMgTGVbo



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 キサラギクエスト EP4.5


貴音「……」

貴音「……」

貴音「……」クゥ~

貴音「お腹すきました」

冬馬「さっき食ったばかりだろうが!」

貴音「はて? そうでしたか?」

冬馬「そうだよ。……なんで覚えてないんだよ」

貴音「いえ、時間が経つのがあまりにも遅すぎるのです」

貴音「わたくしの体内時計ではもう5時間以上は経過しているはず……」



千早「キサラギクエスト」シリーズ



519: 2013/01/12(土) 19:11:52.60 ID:ChMgTGVbo
冬馬「してねえから安心しろ」

貴音「はぁ。そうですか」

冬馬「……」

貴音「……」

冬馬「……」

貴音「……」

冬馬「なんだよ」

貴音「あの……このようなことはしたないのであまり言えたものではないのですが……」

冬馬「あ?」

貴音「何か食べ物は持ってないでしょうか?」


520: 2013/01/12(土) 19:15:03.50 ID:ChMgTGVbo
冬馬「持ってねえよ。お生憎様でした」

貴音「……いけず」

冬馬「んなこと言われてもねえんだよ」

貴音「では何か取ってきてはいただけませんか?」

冬馬「んなこと言ったってもう城のコックは片付けとかしてる頃だろうよ」

貴音「では、取ってきていただけませんか?」

冬馬「は? 何言ってんだだかr」

貴音「いえ、ですから森へ行ってイノシシでも狩って来ていただければと」

冬馬「丸ごと食うつもりかよ……」

貴音「ふふ、そのようなはしたない真似ごとはできません。ちゃんと焼きます」

冬馬「あんま変わんないぞ!?」


521: 2013/01/12(土) 19:17:09.24 ID:ChMgTGVbo
冬馬「だいたい……俺は今お前の牢屋の見張り番をしてるんだ」

貴音「見張り番? そうでしたか」

冬馬「だからここを離れる訳にはいかないんだよ。ってか俺のことなんだと思ってたんだ」

貴音「お話相手だと」

冬馬「……」

貴音「……?」

冬馬「そんな風に見えるのか?」

貴音「はい」

冬馬「……はぁ。まさかお前、他の警備兵が見張りしてる時もこんな風に話してるんじゃ」

522: 2013/01/12(土) 19:20:04.96 ID:ChMgTGVbo
貴音「ええ、そうです。でもこのことは内緒にしておいてくださいね」

冬馬「は?」

貴音「そう、いつも話す警備兵の方達と約束していますので」

冬馬「あぁ、そうかよ」

冬馬(あとで説教だな)

貴音「確か……お馬さんパカパカさんとか言う人には言わないでくださいと懇願されたのですが」

冬馬「それもしかして俺のことか!?」

貴音「パカパカはいらなかった気もします」

冬馬「どっちでもいいわ!」

523: 2013/01/12(土) 19:22:13.32 ID:ChMgTGVbo
貴音「ところで、今日はあなたは私のお話し相手になってくださるのは初めてですね」

冬馬「だから話相手じゃねえっての」

貴音「あの、私はいつになったらここから出られるのでしょうか?」

冬馬「さあな。幹部クラスの俺でもわかんねえ」

貴音「はぁ。そうですか」

冬馬「……」

貴音「わたくしは何故誘拐されたのでしょうか?」

冬馬「さぁな。それもわからん」

524: 2013/01/12(土) 19:23:50.26 ID:ChMgTGVbo
貴音「……」

冬馬「……」

貴音「……」

冬馬「なんだよ」

貴音「本当は知っている。だけど、言えない。そうですね?」

冬馬「……チッ。あぁ、そうだよ。と言いたい所だが、実際にはほとんど知っているってのが事実だ」

貴音「と言いますと?」

冬馬「全部は知らない。本当に計画がどういうものかは知らないのさ」

貴音「なるほど。そうですか」

525: 2013/01/12(土) 19:25:48.85 ID:ChMgTGVbo
貴音「ところで」

冬馬「あ?」

貴音「なぜ、あなたのような幹部の方がこんな牢屋の警備を?」

冬馬「あぁ、実はだな」


…………
……



部下1「あぁ~、今日も警備か~!」

部下2「くっそ~、いいなぁ~」

部下1「なんてったって敵国とは言え姫だからなぁ」

部下2「やっぱ最高に可愛いよなぁ~」

526: 2013/01/12(土) 19:28:24.65 ID:ChMgTGVbo
部下1「最近もうあの子としゃべるのが楽しくてよぉ~」

部下2「俺も俺も。あの子箱入り娘だったのか結構世間のこと知らなくってさ」

部下1「そうそう。教えてあげると興味津々に聞くんだよなぁ」

部下2「いや~、もういちいち言動が可愛くてよぉ~」

部下1「俺なんか今度スニッカーズ持っていく約束したぜ」

部下2「おいおいどうするんだよそれ」

部下1「食わせてやるんだよ。あの子喰ってる所すげえ可愛いからな」

部下2「まじかよ。俺もなんか持って行こうかなぁ」

冬馬「おい」

部下1、2「は、はい!」

527: 2013/01/12(土) 19:30:40.40 ID:ChMgTGVbo
冬馬「何雑談してたんだ?」

部下1「い、いえ何も」

冬馬「何やら任務が楽しそうに聞こえたが?」

部下2「いえ、そんなことは。例え見張りと言えども気を引き締めているので」

冬馬「そうか。見張りか。あの姫の見張りの奴らかお前らは」

部下1「はい、日付で交代して見張りを行なっています」

冬馬「……。姫の様子はどうだ?」

部下2「? いたって普通ですが?」

冬馬「そうか」

部下1「あ、あの……もしかして気になるんですか?」

冬馬「は、はぁ!? ちげーよ!」

528: 2013/01/12(土) 19:33:21.69 ID:ChMgTGVbo
冬馬「そういうことを言ってるんじゃねえんだよ」

冬馬「あれはとくに危険なんだ。逃がさないようにしてくれよ」

部下2「またまたご冗談を。あんな女が危険な訳が」

冬馬「とにかく……いいか。しっかり見張っておけよ」

部下1「もしかして……ビビってるんですか?」

冬馬「あ? ビビってねーし! 全然ビビってねーし」

部下2「いやいや、まぁ、確かに僕等にしかできないですからしょうがないっすよ。あの見張りは」

冬馬「おい、ちょっと待てよ。まるで俺には無理みてえな言い方じゃねえか」

部下1「いえ、そんなこと言ってないですよ?」

部下2「そうですよ。この前、クロイ王の大事な皿割ってた冬馬さんでもできるとは思えますけどね」

529: 2013/01/12(土) 19:35:32.93 ID:ChMgTGVbo
部下1「まぁ、所詮。ただの見張りですけどね」

部下2「でも、もしかしたら冬馬さんじゃ逃がしてしまうかもしれないんで。
     僕等でちゃんと頑張りますね」

冬馬「おい……」

冬馬「ちょっと待てお前ら」

冬馬「俺が見張りもできねえとでも言うのか!?」

冬馬「いいだろう。受けて立つぜ。今日はこの俺が直々にあいつを見張る」

冬馬「お前たちはとっとと帰れ!」

部下1,2「……は、はい!」

部下1(ラッキー! 帰れるぜ!)

部下2(姫と話せないのはちょっと惜しいが、こいつ相変わらずチョロいな)


…………
……

530: 2013/01/12(土) 19:40:04.62 ID:ChMgTGVbo
貴音「なるほど。ハメられたと」

冬馬「ちげーよ! あくまで自主的に来たんだよ」

冬馬「敵国のトップの娘がどんなものか知っておきたかったからな」

貴音「ふふ、面白い方ですね」

冬馬「……ほっとけ」

貴音「是非、またわたくしとお話してはいただけませんか?」

冬馬「だから見張りだってのに……」

貴音「見張りでもいいのです」

冬馬「……」

冬馬「忘れるなよ。あんたは今囚われてるんだってことをな」

貴音「えぇ。肝に銘じておきます」

貴音「ところで」

冬馬「あ?」

貴音「ご飯は……」

冬馬「だからねえよ!」



キサラギクエスト  EP4.5   番外編~囚われの姫君~  END

532: 2013/01/14(月) 17:31:28.63 ID:dQkarIgN0
乙ー



続きます




引用元: 千早「キサラギクエスト」