533:  ◆tFAXy4FpvI 2013/01/28(月) 12:14:36.02 ID:7jgoKsYto



前回はこちら



 私が旅を始めもう半年と3ヶ月は経過している。
ナムコ王国とクロイ帝国の戦況は相変わらずナムコの劣勢。
一行はナムコ王国の首都バンナムに舞い戻るために
転送魔法を得意とする者がいる村へと向かっていた。


私、如月千早、真、萩原さん、我那覇さん。
そして転送魔法をもとに天空の城へ帰るために着いて来ているあずささん。
なんで着いて来たのかわからない音無さん。


現在地はクロイ帝国内、北の方角。


とにかく雪がすごい。寒い。
山道の上に足元が取られるとモンスターが出てきた時に対処しづらい。



千早「キサラギクエスト」シリーズ



534: 2013/01/28(月) 12:15:31.03 ID:7jgoKsYto
一行はゆっくりと足を一歩一歩確実に踏み出して進んでいる。


「うぅ……お腹すいたぞ」


ぐぅ~とお腹をならす我那覇さん。
前回の最初もそんなこと言っていた気がするのだけど……。


「大丈夫? 響ちゃん。これ、最後のおにぎりなんだけど食べる?」


荷物の中から丸めたおにぎりを取り出す萩原さん。
それから包を取り、我那覇さんに渡す。


「おお~、雪歩! ありがとう~!」

535: 2013/01/28(月) 12:16:16.12 ID:7jgoKsYto
萩原さんさんの手から受け取りもしないでそのまま食べようとする我那覇さん。
そしてそれを後ろから息荒く見る音無さん。
微笑ましく見守るあずささん。



だが、萩原さんと我那覇さんの間を何かがヒュンッと通り抜けた。
そして


「あぁ! お、おにぎりがない!」


萩原さんの手にあったおにぎりは丸ごと消えていた。


「うぅ~、自分のおにぎりだぞ! どこだ! 返せ~!」


と見えない敵に怒る我那覇さん。

536: 2013/01/28(月) 12:17:21.55 ID:7jgoKsYto
そして脇道の草からガサガサッと何かが飛び出してきた。


「モンスター!?」


咄嗟に構える私と真。
しかしそこにいたのは私達の膝くらいの大きさの人……とも言えない、
モンスターとも言えない。
正体不明の種族だった。


「ナノッ!」

「……なの?」


金髪のその小さな種族は何かどこかイラッとさせる姿だったが、
口にはおにぎりを咥えていた。

537: 2013/01/28(月) 12:18:34.66 ID:7jgoKsYto
「あー! それ自分のおにぎりだぞ! 返せ!」


飛び込む我那覇さんを軽々避けるその種族は雪に埋もれる我那覇さんの頭に着地した。
そしてそのままおにぎりを丸呑みした。


「あふぅ」

「何かしら……この娘。同じ人間の種族とは近いものだけど……」

「うぎゃー! そんなこと言ってる場合じゃないぞ!」


ガバッ、と雪の中から復活する我那覇さん。
一方謎の小さな種族はくるんと回転して上手に着地してみせた。


そして踵を返し走りだした。

538: 2013/01/28(月) 12:19:08.69 ID:7jgoKsYto
「あ、コラ! 待て!」


それを追う我那覇さん。


「ちょ、ちょっと響! みんな追うよ!」


真に続いて我那覇さんを追うことに。
雪山で足元を取られながらも頑張って追う。

そして、息をきらせながら走ること5分弱。


雪の積もってない集落とも言える小さな村に出た。


「ここが……もしかして例の村?」

539: 2013/01/28(月) 12:19:48.20 ID:7jgoKsYto
歩く住人達はみんな先ほどの金髪の子のように小さく、ピョコピョコ動いていた。


「か、可愛い~~!」


真が目を輝かせていた。


「ひぃっ」


萩原さんはあずささんの背中に隠れていた。


「わ、私こういう動物ってちょっと苦手で……」

540: 2013/01/28(月) 12:20:19.47 ID:7jgoKsYto
「そう? こんなに可愛いのに? ほらっ!」


サッとその辺を歩いていた例の種族を捕まえて抱きかかえてこちらに持ってくる真。
あんたは人さらいか。



「ま、まきょ!?」


種族はバタバタと暴れている。


「えへへ、可愛いなぁ~」


とその種族に頬ずりする真であった。


「ま、真ちゃん、あ、危ないよ!」


何を持って危ないのかは私にもよくわからなかったが、
どうやら萩原さんの判断では危ないらしい。

541: 2013/01/28(月) 12:21:57.88 ID:7jgoKsYto
「確かに不思議な種族ね。言語が未発達なのかしら?」

「確かにそうみたいだね。僕達みたいな言語は喋らないみたいだね」


すると、近くに銀髪の子がいた。何やら紙に何か書いて出してきてる。


『こちらへ』


その文字を確認したことが明らかだと判断したのか、その銀髪の子は振り返り歩き出した。


「どうやらこの子に付いて行くしかなさそうね」

「な、なんというワンダーランド……」


音無さんはメモとペンを持ったままで何も書けずにいた。
確かにこの状況不思議なくらいである。

542: 2013/01/28(月) 12:23:41.29 ID:7jgoKsYto
しばらく歩くと大きなテントがあり、そこに案内された。
テントの中はそれはこの小さな種族のためなのか、狭かった。
小さな椅子にみんな座る。
真はちゃっかりさっきの子を自分の膝の上に置いて抱きかかえていた。
何をしているの、返してきなさい。


そして銀髪の子が話を始めた。


『ようこそ』

『ぷち村へ』

「いえいえこちらこそ」


とは言っても言葉は使えないようなので相手は筆談になる。

543: 2013/01/28(月) 12:24:50.45 ID:7jgoKsYto
『何用?』

「えぇ、実はここの種族の方々が転送の魔法を熟知していると聞いたのでやってきたんです」

「そうなんだ。だから、自分たちに力を貸して欲しいんだけど……」


銀髪の子は横にいた猫耳の生えた長い髪の子に話しかけていた。


「ちひゃ」

「くっ」


そしてちひゃーと呼ばれる髪の長く猫耳のついた子は
私の足元までやってきて脛のあたりをペチペチ叩きながら


「くっくっ」


と私に任せろと言わんばかりだった。

544: 2013/01/28(月) 12:25:17.26 ID:7jgoKsYto
「そう、ありがとう」


頭を撫でると気持ちよさそうに目を閉じた。


「ちひゃー? っていうのかしら?」

「くっ」


小さく頷く。


「そうよろしくね」

「くっ」


なんだろう……可愛い。

545: 2013/01/28(月) 12:26:12.46 ID:7jgoKsYto
「あれあれ、千早~、もしかして気に入っちゃった?」


我那覇さんが隣でニヤニヤしている。


「違うわよ! 協力的な種族で良かったって安心してるだけよ」

「ふぅ~ん」

「もうっ」


そうこうしているうちにちひゃーについて再び外へ。
相変わらず雪の舞う村は凍えるほど寒い。


「くっ」


ちょこちょこと先頭を歩くちひゃー。

546: 2013/01/28(月) 12:26:55.31 ID:7jgoKsYto
「みんなーついてこいってさ」


と通訳する我那覇さん。通訳!?


「響、言葉がわかるの?」


「え? 今のはわかるだろ……」


真と同じ感想を思ったのだけど我那覇さんは真に対してジト目を向ける。
萩原さんは一番後ろを歩くあずささんの服の袖を
掴みながら恐る恐る周りを警戒しながら歩いていた。
音無さんは周りをキョロキョロしてはメモを走らせていた。



そしてちひゃーを先頭に一つのテントに到着する一行。

547: 2013/01/28(月) 12:27:31.82 ID:7jgoKsYto
しかし、そのテントの入り口にはなんともこれまで小さな種族のものとは
思えないほどの巨大な子がそこで眠っていた。


入りぐちを塞いでいて中に入れない状況だった。


「な、何かしら……これ」

「これ……どかせるのか?」

「やってみるしかないね」

「よっ! んんぐぎぎぎ……」


真と我那覇さんと私でその子を押して見るもビクともしなかった。
な、なにこれ……。

548: 2013/01/28(月) 12:27:57.48 ID:7jgoKsYto
仕方ない。折角寝ている所申し訳ないのだけど……。
スラっと剣を抜く。


「ち、千早!? な、何する気!?」

「大丈夫よ。少し起こすだけだから!」


ブスリ。


剣を思いっきり根本まで突き刺して引っこ抜いた。


さすがにこれは効いたらしく。
もぞもぞと動き出した。

549: 2013/01/28(月) 12:28:42.20 ID:7jgoKsYto
「ヴぁ~い」


そして目の前にいた我那覇さんを頭から食べた。



「う、うぎゃあああ!」

「我那覇さん!」

「響!」

「響ちゃん!」


上半身を完全にくわえられてる我那覇さんの足を3人で引っ張って
なんとか口から引っ張り出す。


「くっくっ」


唾液まみれの我那覇さんにちひゃーが何かを言う。

550: 2013/01/28(月) 12:29:11.52 ID:7jgoKsYto

「え? はるかさん? 君たちもよくわかってないの?」

「どういうこと?」

「わからないわ」

「どういうことかしら?」

「たぶん、特徴とか性質とかそういうのがみんなまだ掴みきれてない子らしいんだ」

「だ、唾液まみれの響ちゃん……フヒヒ」

「あらまぁ、大変ね。それじゃあ中に入れないわ」


困ったようにするあずささん。本当に困ってるのかしら?
しかし、この中に転送魔法の得意とする子がいるのは事実。
なんとしてもこの子をどかさないといけない……。

551: 2013/01/28(月) 12:29:37.93 ID:7jgoKsYto

「どうやればいいのかしら?」

「攻撃するのはちょっとかわいそうだし」

「真の馬鹿力でなんとかならないもんなの?」

「さすがに無理だなぁ。さっき押した感じでもわかるけど」

「どうしたものかしら」


「くっ!」

「え? 水? 雪歩、お水出せる? それをこの子にかければいいんだってさ」

「へ? や、やってみますね」

「”水”よ!」



萩原さんの杖から水が噴き出る。
そしてはるかさんに直撃した瞬間にはるかさんがビクンと目覚め、
次から次へと分裂していった。

552: 2013/01/28(月) 12:31:09.28 ID:7jgoKsYto
「かっか!」 「かっか!」 「ヴぁ~い」 「かっか!」


「な、な、なんだこれ!?」

「ちょっと我那覇さん!? どういうこと!」

「い、いやぁぁぁ~~!」

「じ、自分だってわかんないぞ!」

「と、とにかく逃げるよみんな! ほら、あずささん! 小鳥さん!」

「は、はい~」

「あ、待って真ちゃん!」


一目散に逃げ出した萩原さんを追うように私達は走りだした。
しかし、大量に増えたはるかさんは私達目掛けて猛ダッシュしてくる。
あんな大量のはるかさんの餌にされるのはごめんよ。

553: 2013/01/28(月) 12:32:21.58 ID:7jgoKsYto
「ど、どうするのよ真! 一匹ずつ倒す!?」

「だ、だめだよ千早! たぶん、あの子は悪い子ではないし」

「とにかく逃げまわるしか……!」

「そうだ! 自分にいい考えがあるぞ!」

「聞かなかったことにするわ」

「ボクも同意だよ千早」

「うぎゃー! ひどいぞ!」


それから萩原さんに何か耳打ちを始める我那覇さん。


「わ、わかりました。やってみます! 穴を掘るのは得意ですから……!」

554: 2013/01/28(月) 12:34:27.59 ID:7jgoKsYto
穴……?
何を言っているの?


「えいっ!」


萩原さんは振り返り、追ってくる大量のはるかさんの足元に落とし穴を作った。


「す、すごい雪歩……。穴を掘る土系の魔法に関しては呪文を唱えなくても発動するなんて」

「真……驚くのはそこなの?」


たしかにそれも異例なくらいですごいのだけど、
それよりも今はこの巨大な穴に入っているはるかさんの量。

555: 2013/01/28(月) 12:36:31.94 ID:7jgoKsYto
「うふふ、じゃあ私に任せてね」


とあずささんが自信満々に前へ出て穴を除くようにして


「めっ」


と優しく叱った。
ように見えたのは私達があずささんの後ろ姿しか見ていなかったから。
なのかもしれない。


はるかさん達は顔面蒼白になり、一瞬のうちに一匹に戻っていた。
一匹に戻っていてもなお、震えていた。


「あ、あずささん……何したんだ?」

「さ、さぁ……」

556: 2013/01/28(月) 12:38:55.58 ID:7jgoKsYto
一行ははるかさんを穴から救出し、
真が抱きかかえて村のテントがある方まで戻ってきた。


「くっ!」


ちひゃーが自信満々に空いたテントの入り口を指さしていた。
本当は怒りたかったけど、可愛いからなんか許してしまった。


「それじゃあ中に入りましょうか」


再びちひゃーを先頭にして、テントの中におじゃまする。

558: 2013/01/29(火) 00:15:33.01 ID:ebrcZ0fQo
そこでちひゃーはこちらを振り向き静かにするよう合図する。
私もなんとなくわかるようになってきていた。


そっとテントをめくるちひゃー。中にいたのはなんとも表現しがたい同じ種族の女の子。
その容姿はこたぷーんとしたものだった。


「くっ」

「こっちの子はみうらさんって言うらしいぞ」

「こんにちは、みうらさん」

「あら~」


優しそうな笑顔でこちらにちょこちょこやってくるみうらさん。

559: 2013/01/29(火) 00:17:36.77 ID:ebrcZ0fQo
「おじゃまします~」


とみうらさんのテントの中にぞろぞろと入ってくるみんなの中で小鳥さんが


「はぁ~~、寒かったよぉぉ。ふ、ふぇ、ぶぇっくしょい!!」


と大きなくしゃみをした瞬間。
みうらさんは目の前で消えた。


消えた。


これが転送魔法? 今のは一体……。


「くっくっ!」


我那覇さんに何か必氏に言いかけるちひゃー。

560: 2013/01/29(火) 00:18:18.08 ID:ebrcZ0fQo
「大きな音が苦手らしくて今のくしゃみで逃げたそうだぞ……」

「ええっ!? わ、私のせい!?」


ことの重大さを今更ながらに知る面々。
だから静かにしろと……? なるほど。


「で、どうやったら帰ってくるのかしら?」


と聞くと、ちょうどそこに


「ちひゃ」


とテントにさっきの銀髪の子が入ってきた。

561: 2013/01/29(火) 00:20:41.23 ID:ebrcZ0fQo
「くっ」

「あ、こっちの子、さっきから離してたけどたかにゃって言うらしいぞ」


我那覇さんが通訳代わりになっているために私達は彼女を通すことでしか会話ができない。


「ふんふん、さっきみうらさんがたかにゃの家に飛んできたから返しに来たって」

「あら~」

「ひっ」


ビクついてあずささんの後ろに隠れる萩原さん。こんなにおとなしそうなのに。
噛み付いたりなんてしないとは思うけれど……。


それでもやはり怖いのか距離を置こうと努力するも
如何せんテント内が狭いので落ち着かずにずっとソワソワしている。
音無さんは別の意味でずっとそわそわしていた。

562: 2013/01/29(火) 00:27:16.24 ID:ebrcZ0fQo
「な、何かしら……ふ、不思議な感覚だったわ……」

「それじゃあ……まずはあずささんを天空街へ、返してあげて欲しいんだ」


我那覇さんがみうらさんに話しかける。
あずささんもみうらさんの近くに行き


「よろしくお願いしますね」


と言いながらみうらさんの頭をなでる。
そして狭いテント内でこちらにゆっくりと振り向きながら


「あの……みなさん、本当にありがとうございました。
 私、みなさんに出会えていなければきっと今頃……
 もっと大変なことになっていたかもしれません」

563: 2013/01/29(火) 00:28:04.38 ID:ebrcZ0fQo
深々と頭をさげるあずささん。
そんな風にお礼を言われるほどのことをしたわけでは……。
私達は目的地へ向けての道がたまたまあずささんとも被ったというだけだし。


「い、いえ……それほどのことをしたつもりは……」

「ふふ、だめよ。こういう時は素直に感謝の気持ちを受け取ってちょうだい。ね?」


手を引っ張られ、抱きしめられる。


「あっ……」


やめてください。なんて言えなかった。
あずささんの胸の中はとても暖かく居心地がよくてずっと……
できればずっとこうやって抱きしめて貰えたら、と思うほどに心が安らいだ。


あずささんは優しく頭を撫でてくれた。

564: 2013/01/29(火) 00:32:21.81 ID:ebrcZ0fQo
「千早ちゃん。あなたは……これからきっと辛いこともあるかもしれない。
 でも、負けちゃだめよ。きっと大丈夫だから」


そっと抱きしめ返した。
今まで一人で、ずっと一人でやってきた私に……。
一ヶ月も一緒にいただけのこの人に、私はどんな感情を抱けばいいのかわからなかった。


「あずささん~~!!」


ガバッ。

私の上から真が覆いかぶさるように抱きついてきた。
く、苦しい!
でも、嫌じゃない。

565: 2013/01/29(火) 00:33:42.89 ID:ebrcZ0fQo
「あじゅじゃじゃーーん!」


涙でボロボロになりながらも我那覇さんがその上からあずささんに向かって抱きつく。


「あらあら……もう。私まで泣いちゃうじゃない。うふふ」

「本当にみんなありがとう」

「ざびじいぞーー!」


萩原さんは涙を目に浮かべながらあずささんの手を取り


「あの、お元気で。い、いつかまたお会いしましょう!」

566: 2013/01/29(火) 00:42:09.04 ID:ebrcZ0fQo
「えぇ、必ず会えるわ」


そして、転送魔法の際の注意事項。
接触されている人物は同時に転送されてしまうという難点から私達は
惜しくもあずささんから離れることに。


「また……会えますよね!?」

「ええ、真ちゃん。いつも守ってくれてありがとう」

「そうだわ。最後に……千早ちゃんにこれを……」


最後に、と言ってあずささんは私のおでこにキスをした。
それから胸の前で手を組んで言った。



「神の御加護がありますように」

567: 2013/01/29(火) 00:46:46.20 ID:ebrcZ0fQo
「え、えっと……」


顔が真っ赤になるのがわかる。別に恥ずかしいわけではないけれど。


「あなたが本当にピンチになった時に……」


神の御加護って……まさか……? あなたは一体?


「それじゃあ……よいしょっと」


みうらさんを自分の頭の上に乗っけて思いっきり手を叩いた。

パンッ。


そして、テントの中から一瞬にして消えていった。

568: 2013/01/29(火) 00:48:36.93 ID:ebrcZ0fQo
静まり返るテントの中。
我那覇さんのすすり泣く声だけが聞こえる。


「ねえ、真。あずささん……最後に神の御加護がって言ってなかった?」

「え? うん、確かに。それが何か?」

「変だと思わない? あの人、まさか……」

「え? まさかって」

「そ、そうよね。そんな訳……ない……」


のかしら。真はどうやら感づいてはいないみたいだけど。


我那覇さんと萩原さんは私たちの会話は聞いていたものの
何のことかイマイチわかっていない様子だった。

569: 2013/01/29(火) 00:50:26.44 ID:ebrcZ0fQo
「さて、それじゃあ気を取り直して、次は私達の番ね!」

「よーし、国家転覆の危機! ささっと救って勇者一直線ってわけだね!」

「自分もできることから頑張るからな!」

「わ、私も、やれることはやってみますぅ!」


私の頭の上にちょうどみうらさんが戻ってきた。
転送魔法の注意点。転送されたい先のことを思い出し、頭に思い浮かべること。
私の肩に真が捕まり、その肩に我那覇さんが捕まり、それに萩原さんが捕まった。
連結。電車ごっこみたいになった。

570: 2013/01/29(火) 00:54:12.20 ID:ebrcZ0fQo
「それじゃあみんな行くわよ!」

「ちひゃー。ありがとう。たかにゃも助かったわ。ありがとう」

「くっ」

「しじょっ」


パンッ。


大きく叩いた手の音と同時に私達は瞬時に別の場所に飛ばされた。
一行がみうらさんの転送魔法で飛んだ場所はナムコ王国首都バンナム。


国家、首都の危機と聞いて舞い戻ってきた。
目の前には首都に4つあるうちに門のうちの一つの前だった。


そして、噂こそが本当のものだったと知った
門の奥からは煙がいくつも立ち込めていた。

571: 2013/01/29(火) 00:58:50.56 ID:ebrcZ0fQo
「着いたわ」


頭の上からみうらさんを降ろす。


「どうもありがとう。あなたのおかげで本当に助かったわ」

「あら~」


みうらさんは小さく手を振り、そしてヒュンッと消えていった。


「よーし、千早。この門を潜ればバンナムなんだよね?」


「ええ、間違い無いわ。ここは私と真が旅を始めた地、バンナムよ」


我那覇さんの問に答える。
ここからまた……始まる。


しかし、それがまた終わりに繋がるものだとも知らずに私達は
火の海と化した首都の門を開ける。



キサラギクエスト  EPⅤ  小さな者達の小さな隠れ村編  END

572: 2013/01/29(火) 01:08:30.83 ID:HP9iOgVjo
乙~
さぁクライマックスだ!

573: 2013/01/29(火) 06:19:12.07 ID:lSisSHAIo
おつ



続きます




引用元: 千早「キサラギクエスト」