9: 2011/09/17(土) 08:27:08.46 ID:FO1ohFKB0
さやか「ふいー、さっぱりした。杏子、あんたも入ってきなよ。今日は牛乳風呂だよ」

杏子「牛乳風呂?」

さやか「美容にいいんだって。マミさんに教えて貰ったんだ」

杏子「ふーん…まぁ、とりあえず入ってくるよ」


杏子 (さてと…これが……さやかの入っていたお湯……!)

杏子 (ほのかにミルクの甘い香りがする…) ペロッ

杏子 (うひひ、もっと思いっきり味わうか) ゴクゴク

杏子 (ああ、うまい……へへ、さやか、お前の出汁をとったミルクスープはすごく美味しいよ……)


さやか「杏子ー?タオルはこっちの棚の…って、あんた何やってんの!?」

杏子「あっ!いやその、これは!ぎゅ、牛乳っていうからちょっと…味が気になって……」

さやか「…変なコトしてないで、はやく身体洗っちゃいなさいよ。背中流してあげようか?」

杏子「い、いいい、いいっ!大丈夫だから、一人で入れるからっ!」 バタンッ

杏子 (あぶねぇ…二度と家にあげてもらえなくなるところだったかもしれん)
Chapter.1  

12: 2011/09/17(土) 09:08:06.91 ID:FO1ohFKB0
杏子 (まずは…この幸せを全身で味わう前に、あたしの身体を清めないといけないな)

シャシャシャワー

シャコシャコ ゴシゴシ

杏子 (ふあー、3日ぶりぐらいかなー。すっきりするー)

ワシャワシャ

杏子 (…わりと、垢が出てる…みたいだな。まあいつものことだけど)

杏子 (……結構におってたりしたのかな?さやかに気づかれてない…よな…)

杏子 (………急に恥ずかしくなってきた)

シャワワー

杏子「大丈夫だったと…信じたい…」

14: 2011/09/17(土) 09:23:13.47 ID:FO1ohFKB0
杏子「んじゃ、お楽しみといきますか」

ザッパーン…

杏子「おー、あったけぇ…ソウルジェムが浄化されていきそうな幸福感だ」

杏子 (へへへ……この透き通った白さ……あいつの肌みてぇだなあ……)

杏子 (……全身をさやかに包まれているような……安心感)

杏子 (うん、そうだな……)

杏子 (頑張れ…頑張るんだ想像力……!)

杏子 (よし、よしいいぞ。だんだん……さやかの素肌に抱きしめられている気分になってきた…)

杏子 (きれいで…あったかくて……ここちよくて………)

杏子 (ふへへへへ………)

ピチョン……

……

17: 2011/09/17(土) 09:37:59.85 ID:FO1ohFKB0
さやか『お~い~』

さやか『杏子~?』

杏子 (あれ……なんか………さやかの、幻が見える………)

杏子 (さやかー……愛してるよー………)


さやか「杏子!杏子ってば、おい!」ペチッ

杏子「……あ、あへ?ここは?あたしどうして……」ザパッ

さやか「もー、随分長湯してると思ったら、湯船で寝ちゃだめだろ!危ないよ」

杏子「……そうか。あたし、幸せすぎて寝てたのか」

18: 2011/09/17(土) 09:41:37.56 ID:FO1ohFKB0
さやか「そんなに牛乳風呂が気に入ったの?また今度入れてやるから早く出なよ、のぼせるよ」

杏子「あ、ああ。……出る、けど」

さやか「…?どしたの?」

杏子「……その………はだか、だし………」

さやか「ちょ、女の子同士なのに何恥ずかしがってんのさ…ほれほれ、さやかちゃんに逆らう奴はこうだぞー」ガシッ

杏子「わわっ、やめろって!おい!」ズルズル…トサッ

杏子 (引っ張り出されてしまった…)

さやか「うーん、あんた思った以上に軽いね……くそう、うらやましい身体してるなあ」

杏子「え?あ、ありがとう………さ、さやかも……その……」

さやか「ん?」

杏子「! いや、なんでもねえっ、なんでもねえよ」

20: 2011/09/17(土) 09:56:44.72 ID:FO1ohFKB0
さやか「そのままじっとしてな。牛乳風呂って、湯上がりにちゃんと流さないと、逆に変な匂いの元になるらしいから。あたしが綺麗に流してあげるよ」

杏子「そのくらい自分でできるって!ほら、さやかがまた濡れちゃうだろ!」

さやか「なーに遠慮してんのさ、もうあんた抱え上げて濡れちゃってるんだから同じだよ」シャワワー

杏子 (……たしかに) チラッ

杏子 (寝間着代わりのシャツが、びっしょりと濡れてしまってる)

杏子 (そして……その下に、し、下着が……透けて……///)

杏子 (落ち着け、平常心だっ…!平常心……!)

さやか「ふーん、早速牛乳効果か?すべすべした肌してますねー」ツンツン

杏子「ひゃっ!やめろっ!くすぐったいだろっ」ササッ

さやか「ふふふ…逃がさないよー…?」ダキッ

杏子 (あわっ、む、胸が……当たって………)

さやか (……?急におとなしくなった……?)

23: 2011/09/17(土) 10:11:36.25 ID:FO1ohFKB0
さやか「えーっと、タオルタオル……」

ゴシゴシ…パサッ

さやか「よーし、さっぱりしたかね?杏子くん」

杏子「おう…すごく、良かった…///」

さやか「ほらあんた、顔真っ赤じゃん!長風呂するからほとんどのぼせちゃってるんだよー」

杏子 (いやこれはお前のせいなんだけど…な……)

24: 2011/09/17(土) 10:11:53.76 ID:FO1ohFKB0
さやか「じゃあ杏子ちゃん、次はかみのけをかわかちまちょーねー?」

杏子「何か扱いがどんどん酷くなってねーか…」

さやか「あはは。杏子いつもちゃんと乾かさないからさ、実はいつも気になってたんだよね」

杏子「そうか?結構丁寧にやってるつもりだったんだけどな」

さやか「あんたは根がおおざっぱすぎんのよ」

杏子「ぬぐぐ……否定はできないけど……」

さやか「……おおざっぱな割には艶のいい毛よね。色が良いのかも。赤色、燃えるような情熱を感じるね」

杏子「………青も…いいだろ。海のような…心の広さを感じさせるじゃねえか」

さやか「お?あんたも言うようになったね?え?」プニプニ

杏子「う、うっさい!」

26: 2011/09/17(土) 10:24:48.84 ID:FO1ohFKB0
杏子 (ふぅ……やっと落ち着いてきた。なんか無駄に疲れた気がするぞ……)

杏子 (それにしても……かつて無い感動的な体験だったな。まさかこのあたしが風呂で寝てしまうとはね……)

杏子 (そして……さやかにシャワーで流して貰って……///)

杏子 (まぁ、また入れてくれるっていうから、そう惜しむこともない…と思うんだけど……)

杏子 (……でも、あのさやかスープをそのまま捨てちまうってのは勿体ないよな。飲み物を…それも極上の飲み物を無駄に捨てちゃあ、お天道様に顔向けが出来ない)

杏子「…そういえば」ガサゴソ

杏子 (あ、あったあった。今日さやかと出かけてる途中買ったコーラ。まだちょびっと残ってるけど……飲んじゃえばいいや)

トコトコ…

さやか「ん?どうしたの?」

杏子「ちょっとトイレ借りるよ」

29: 2011/09/17(土) 10:34:00.27 ID:FO1ohFKB0
――お風呂場――

ジャバジャバ…

杏子「…よし、こんなもんかな」

杏子「これに…このお湯をっと……」コポポポ

杏子「うし、カンペキだ!」

杏子 (できることなら、この湯船の全てを永久に保存しておきたいところだが…)

杏子 (さすがにそれは無理だからな。ペットボトル一本で我慢しよう)

杏子 (このボトルの中に、今日のこの日の幸せがすべて詰まっていると思えば……)


杏子 (あ、最後にまた……味を見ておこう) ゴクッ

杏子「へへへ…やっぱ美味いじゃねえか……」

31: 2011/09/17(土) 10:45:28.05 ID:FO1ohFKB0
さやか「あ、杏子、おかえり」

杏子「ああ、ただいま」

さやか「ちょっと早いけど…そろそろベッドに入らない?あはは、その…今日、はしゃいだせいか疲れちゃってさ」

杏子「そうだな。あたしも疲れたし、もう寝ようか」

杏子 (来たッ…!全てを癒す…一日の総括……!さやかと同衾タイムッ……!)

さやか「うん。…じゃ、今日はあたしが右に寝ようかな……」ノソノソ

杏子「……どっちだって同じだろ?」ゴソゴソ

さやか「そうでもないよー?え、寝る時のマイ・ポーズみたいのあんたもないの?」

杏子「そんなのあるのか?普通、上を向いた……仰向けで寝るだろ?」

さやか「いやいや、意外と人によるんだって。まどかとかうつ伏せで寝るらしいよ」

杏子「…?それ、息出来ないんじゃないか…?」

さやか「あたしもそう言ったんだけどさ-、鼻より上だけ枕に乗せるらしい」

杏子「………想像すると、ちょっと滑稽だな」

さやか「だよねー!なんか行き倒れっぽくて、見てたら心配になるよ」

杏子「ハハ、そんな感じだ」

35: 2011/09/17(土) 11:01:46.69 ID:FO1ohFKB0
さやか「…で、あたしの場合は何パターンかあるけど……」

さやか「こっち側だと、抱き枕がすごい抱きやすいのさ!」ダキッ

杏子「へ?あえ、あっ!ちょっ…///」

さやか「うひひ…無駄なく絞られた中にも柔らかさがあって…いい抱き心地ですのう…!」ギュゥー

杏子「うわわわ!」

さやか「さっき風呂場でさやかちゃんを心配させた罰として、今夜は抱き枕にしちゃうんだから…覚悟するがいい!」

杏子「ま、待てさやか…待つんだッ……!」

さやか「じゃ、おやすみ!」ニンマリ


さやか「……zzz」スゥ…

さやか「……んっ………zzz」スゥ…

杏子 (冗談じゃねえ、これはやばい…やばいぞ……)

杏子 (幸せすぎて……頭が破裂しそうだ……)

38: 2011/09/17(土) 11:15:08.34 ID:FO1ohFKB0
チュン…チュン……
ピピピピピピピピ…

杏子「おい、さやか」

さやか「……zzz」

杏子「おい、学校だろ!おーきーろーっ!」ペチッ

さやか「いてっ!?…あれ……あたし廃工場にいたはずなのに………」

杏子「何の夢見てんだよ…。おはよう」

さやか「ふぁー、おはよ。なんか…工場で、ヤリ持った魔物と仲良くティーパーティーしてた……」

杏子 (わけがわからないよ……)

さやか「……あれ?あんた、眼が赤くない?」

杏子「え、ああ、そうか?何かゴミでも入ったかな」

さやか「ふーん、顔洗ってきた方がいいんじゃない?」

杏子「そうだな。お前もさっさとベッドから出て着替えろよ」トテトテ

さやか「ふぇーい、わかってますって!」

杏子 (あれで眠れってのは…無理な相談だ)

杏子 (さやかの息づかい一つ一つを感じて…気づいたら朝だったからな……)

40: 2011/09/17(土) 11:26:09.32 ID:FO1ohFKB0
ムシャムシャ モグモグ

さやか「あー、学校か。行きたくないなー」

杏子「え…おい、学校で何かあったのか……?」

さやか「だって杏子が居ないんだもん、学校行くと」

杏子「…へ?」

さやか「この何とも言えない安心感のある生き物を手放すのは…なんと心苦しいことかっ!」ナデナデ

杏子「ば、ばか、頭をなでるなぁ…///」

さやか「ゴクゴク…ふぅ。あんたがあたしの嫁になってくれれば、いつもそばに置いておけるのにな-。なんてね」カタン

杏子 (……)

杏子「…はいはい、考えといてやるよ。だからほら、学校行ってこい」

さやか「おーう。いってくらぁー!」

杏子「んじゃ、またな。暇があったら連絡するよ」

さやか「うん、またね」


杏子 (はー、そりゃ嫁に貰ってくれるなら…是非ともお願いしたいところさ……)

杏子 (本気で言ってくれれば…一も二もなくついて行くんだけどな………)

41: 2011/09/17(土) 11:34:51.44 ID:FO1ohFKB0
――ある夕方、川辺の堤防――

杏子「はぁー、やることねぇなぁ…」

杏子 (……綺麗だな、夕焼け………)

杏子 (はは、まさかこんなに寂しさを実感するようになるとはね…思ってもみなかった……)

杏子 (自分のために、自分だけで生きてたはずなんだけどな……)

ザザッ カサカサ…

杏子「ちょっと風が強いな…でも涼しい……」


杏子 (最後にさやかと会ったのは……もう二週間前か)

杏子 (先週は家族で用事があるとかで遊びに行けなかったしなぁ…)

杏子 (あいつが学校帰りに友達と遊んでるとこ…邪魔するのもなんだしな………)

杏子 (あたしも学校いけりゃあな。…あ、でも学年違う……ことになるのか?)

杏子 (ひとりぼっちは…さみしいなぁ……)

43: 2011/09/17(土) 11:48:21.84 ID:FO1ohFKB0
杏子「…あ、もう夜か。ぼーっとしてるとすぐ時間が過ぎるな」

杏子「あー、今日もコレ抱いて…もう、寝ちまうか……?」ガサゴソ

杏子 (あの日コッソリ持ち帰ってしまった…牛乳風呂の中身……)

杏子 (若干、濁った…?ような気がしなくもないけど) フリフリ

杏子 (相変わらず綺麗な白い肌だよなぁ……さやか……)


杏子 (今すぐにでも、さやかと会いたいな…さやかと話して……さやかと笑いあって……)

杏子 (さやかと一緒に食事をして……さやかと一緒に眠りについて……)

杏子 (心の全てをさやかで満たしてしまいたい……)

杏子 (さやかの全てを味わいたい………)


杏子「っあー!ダメだ!全然眠れねぇ!」 ガバッ

杏子「くそ、あたしとしたことが…どうにかなんねぇかな」

46: 2011/09/17(土) 12:02:07.04 ID:FO1ohFKB0
杏子「飲むか…?コレ……」

杏子 (あの日、あのときの感動を残す…大事な記念品ではあるけど)

杏子 (飲んだときの満たされた感覚がまた味わえるなら、寂しさも…癒えるかも……)

杏子 (正直、この心のモヤモヤをどうにか落ち着ける方法が……ほかに思いつかない)

杏子 (うん、きっと次があるし…また汲めばいいよな)

杏子 (……とりあえず、開けてみよう)

カラカラッ プシッ

杏子「うあ、ガスが抜けた……?」

ムワッ

杏子「うっ!うげげ、な…何だこれ!」

杏子「オカシイだろ!こんな…酸味ともつかない……生ゴミでも無い……うげっ、なんだよこの匂いはッ!!」

ネトッ

杏子「ひいいっ!手についた飛沫も何か感触が気持ち悪い!やばい……」

杏子「エッ、エグッ、うぐ……こいつはやべぇ………いつのまにこんなことになってたんだ……毎日大事に抱いてたのに……」

杏子「ちくしょう……さやか……さやかが………」

49: 2011/09/17(土) 12:14:44.08 ID:FO1ohFKB0
杏子 (こんなのって……こんなのって無いだろ……!)

杏子 (これじゃあ…もう……)


杏子「…いや」

杏子「……どんなさやかでも、さやかはさやかだ」

杏子「あたしはさやかが何をやっても、あいつを否定する気にはなれない」

杏子「たとえさやかがどんなに汚れてしまっても…壊れてしまっても……」

杏子「あたしはあいつを受け入れてやらなければならない」

杏子「それが……その覚悟が……」

杏子 (……愛する人への、想いってモンじゃぁねえのか……!佐倉杏子!)


杏子 (これはさやかなんだ。紛れもなく、あの読んで字のごとく美しき美樹さやかなんだ)

杏子 (さやか、さやか、さやか、さやか、さやか……)

杏子「よし!さやか!…いくぞッ!!!」

グイィィィィーッ
ゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュッ

杏子は震えた手で、ボトルの中身を一気に飲み干した…

52: 2011/09/17(土) 12:26:23.46 ID:FO1ohFKB0
杏子「げはぁっ!かっ!…ぐ、ぐおお……」

杏子 (体中に…充満する臭気が……あたしを蝕んでいるッ…!)

杏子「えぐっ…ぐ、ウムムム……うぐ……」

杏子 (ダメだッ!ここで吐き出したら……全てが終わってしまう、そんな気がする……!)

杏子「フッ……ぐぐ……ぐあああああっ……」

杏子 (耐えろ!今耐えないで…いつ耐えるんだ……!)

53: 2011/09/17(土) 12:27:00.16 ID:FO1ohFKB0
杏子「ゼェ…ハァ……」

杏子 (き……厳しい闘いだった……)

杏子 (未だなんか妙な気分の悪さはあるが…だいぶ落ち着いたな)

杏子 (……ちょっとだけ、口を濯ごう…)

ガラガラガラ…ケパッ

杏子 (……ふう)

杏子 (辛かったが……今体中に残っているのは…さやかの全てを受け入れた満足感が、じんわりと広がっている気がする)

杏子 (さやか、お前の全てを…あたしは受け入れてやれるんだよ……それを証明してやったぜ……)

杏子「へへ…」

杏子「おやすみ…さやか……」

杏子「……zzz…zz」

58: 2011/09/17(土) 12:44:05.27 ID:FO1ohFKB0
――――――――――――――――――――
――――――――――

ほむら「はぁ、最近マミが冷たいわねぇ…公衆の面前でキスをすることはそんなにいけないことかしらね?」

ほむら「愛を確かめ合う行為。とても崇高なモノじゃない、照れること無いのに」

ほむら「照れるだけなら可愛いものを、あの子テンパると銃をぶっ放すのよね…私も魔法少女だからって……」

ほむら「ブツブツ…ブツブツ…」

テクテク

ほむら「…?あら、あれは……」

杏子「…ウ……グア……ウ………」

かつて杏子だったモノが、道端にうつ伏せて苦悶の声を上げている…

ほむら (え…何?いったいどういうこと?………空腹?)

60: 2011/09/17(土) 12:57:23.58 ID:FO1ohFKB0
ほむら「佐倉杏子?ちょ、ちょっと…! あなた、どうしたのその顔」

ほむら (何よこれ…ひどく汗をかいて……生気の失われた顔が、頬がこけそうなぐらいやつれている……)

ほむら「ちょっと、返事をしなさいって!」ガシッ ユサユサ

杏子「ウ……さ……やか……?た……すけ……て……ウグァ゙ァ゙ァ゙…」

ほむら「何言ってるの!ほむらよ、暁美ほむら!」

杏子「ゲッ…ゲェェェッ……エッ……」

ほむら (吐いてる…?でも胃液だけね……)

ほむら「ねえ!何があったの!?変なモノ食べたの!?」ユサユサ

杏子 (だめだ、氏ぬ……身体が動かない……腹が……痛い……)

杏子 (痛い 痛い イタイ イタイ イタイ…)

杏子 (助けて……さやかぁ………)

ガクッ

ほむら「え、嘘でしょ!昏睡!?」

ほむら (と、とにかく落ちつきなさい私。救急車よ、救急車を呼ばなければ…!)

ピーポー… ピーポー…

66: 2011/09/17(土) 13:11:35.55 ID:FO1ohFKB0
――昼下がりの病室――

バタバタバタ…ドタンッ

さやか「杏子!!!」

杏子「……あ…さやか。ハハ、その……久しぶりだな?」

さやか「……」

ツカツカツカ… バチィーン!

杏子「い、いてえっ!…病人に何すんだよぅ……」

さやか「…バカ。バカバカバカ。杏子のバカ!!」

さやか「あたしがどんだけ……心配したと思ってんのよ!」

さやか「学校で、ほむらから……あんたが入院したって聞いてさ………」

さやか「すごい顔で……意識まで失ったとか言って……ウグッ……救急車で、運ばれたって……ヒクッ」

さやか「……エグッ……氏んじゃったら……どうしようかってさ………」

さやか「……うっ……うわあああああああああん」 ガシッ

さやか「あううううっえぐっ……ひくっ……杏子ぉ……」

杏子「…心配かけて悪かったよ、さやか……本当に」ナデナデ

71: 2011/09/17(土) 13:25:00.91 ID:FO1ohFKB0
杏子「……落ち着いたか?」

さやか「…グスッ………う……うん…///」

杏子「へへ、そんな顔を赤らめるぐらいなら、似合わない泣き顔なんて見せるんじゃねーよ、まあ珍しいモン見られたけど」

ゴスッ

杏子「いでで、もっと労ってくれよ……」

さやか「思ったより元気そうだったしね!まったくもう…」

さやか「それで…何やったのよ、あんた?何か食中毒みたいなものらしい、とは聞いてるけど……」

杏子「あー…いやその……うん、何だ………ちょっと、拾い食いを」

さやか「…」イラッ

さやか「そんなことで氏にかけてどうすんだバカ!ああもう、心配して走ってきた私のほうがばっかみたいじゃない!」

杏子「そ、そんなに怒らないでくれよ…ほら、病院だし静かに……反省してるからさ……」

杏子 (さすがにホントのことは言えねーよなぁ……)

杏子 (でも、心配してくれるさやかを目の前にして分かる……自分がとんでもないバカやったってことが……)

杏子 (ちょっと寂しくて頭沸いてたのかもしれねぇな……)

杏子 (生きてて、よかった………)

74: 2011/09/17(土) 13:37:16.51 ID:FO1ohFKB0
さやか「もうなにか食べられるの?」

杏子「あ、いや、さすがにまだダメらしい……。薬で痛みはないから、食べたいとは思うんだけどな」

さやか「そう……じゃ、お見舞いに買ってきたリンゴは……よし、このへんに置いとこう!」

杏子「おい、そんなに目立つ場所に飾らなくてもいいだろ…食べたくっちゃうだろぉ……」

さやか「あんた食い意地張ってるもんねー。食べたい食べたいって思ってたほうが治りも早いよきっと」

杏子「ぬぐ…。まあ、そうかもしれないな」

さやか「ほら、あとこれグリーフシード……このくらい有れば、入院中は足りるんじゃないかってさ」

杏子「おお、ありがとうな。ちーっと不安だったんだけど……これどこから?」

さやか「ほむらとマミさんがくれたの……あの二人、あんたが運び込まれたときもソウルジェム持ってついて回ってくれたみたいよ?
あとでちゃんとお礼言っときなさいよ」

杏子「そうなのか……みんなに……迷惑かけっぱなしだな……」

杏子 (誰にも…)

さやか「誰にも迷惑かけずに一人で生きていける人なんて居ないんだから」

杏子 (! ……)

さやか「そんな、拾い食いするほど困ってたなら……頼ってよ。このさやかちゃんを。あたしは…そっちのほうが嬉しいから、さ」

杏子「……ありがとう………ありがとうな」

76: 2011/09/17(土) 13:49:34.98 ID:FO1ohFKB0
さやか「そうだ、一応着替えとかも持ってきたんだ」

杏子「ん?着替え?」

さやか「そうそう。しばらく入院するなら入り用でしょ」

杏子「そういうもんなのかな?……入院したの初めてだし、その、よくわかんない……」

さやか「はー、まぁそんなことだとは思っていたよ……」

さやか「部屋着だからそんな大層なもんじゃないけど、あたしのタンスにあったのいくつか持ってきた」

杏子「え、さ、さやかの服、か…?」

さやか「うん、そうだよ。……あれ、ごめん、嫌だったかな?」

杏子「まままままままさか!滅相も御座いません!むしろ…いや、うん。嬉しいよ」

さやか「?…そう? ま、さすがに下着は買ってきたけど。ほい、ここ置いとくね」ポサッ

杏子 (残念……。いや、でももし下着まで……だったら……冷静じゃいられなかったかもしれん)

杏子「何から何まで悪いな……」

さやか「あはは、いーってことよっ」

80: 2011/09/17(土) 14:01:00.83 ID:FO1ohFKB0
さやか「それじゃ、また明日来るよ」

杏子「ああ。今日はホントありがとう……また、明日」

さやか「うん」

トコトコトコ ガラッ

さやか「!」


まどか「あっ…、さ、さやかちゃん、こんにちは……?」
マミ「美樹さん、こ……こんにちは」
ほむら「いいわね。愛を感じる最高のお見舞いだったわよ、美樹さやか」

さやか「」

さやか「あ、あんたら……いったい……いつから………」

ほむら「ええ、聞かれると思っていたのでよく覚えているわ。そう、ちょうど貴女が、杏子の胸で泣いているところね」ファサッ

まどか「ほ、ほむらちゃんっ!」

マミ「まーたあなたは嬉しそうな顔で……」

さやか「うっ、ぐっ、ぬっ…ちっくしょおぉぉぉぉぉぉ!!!!」 ドダダダダダダ

ほむら「こら!病院は走ってはいけない場所だと、貴女はそんなことも知らないほど愚かなの!?」

マミ「あなたが虐めるからでしょうが…まったく」

84: 2011/09/17(土) 14:14:35.83 ID:FO1ohFKB0
――時は過ぎて――

杏子 (あれから…退院して、いろいろと変化があった)

杏子 (退院した当日は、サプライズパーティと称して…何年かぶりのマミの家で退院祝いをやってもらった)

杏子 (さすがのあたしも…あの量のお菓子を喰いきるのは無理だった……)

杏子 (何かまどかの焼いたケーキだけ焦げてたっけな……)

杏子 (ともかく、その日にようやく実感できた気がする)

杏子 (多分…ちゃんとした『友達』が、できたんだなぁってことが……)

杏子 (あたしが助けてあげられる、そういう力はほとんど無いのかもしれないけれど)

杏子 (それでも、うーん…信頼関係っていうか、考え方、心の持ちようなんだなって……)

杏子 (そう思うと、ようやくあたしもあいつらの中に受け入れて貰えた気がした)

88: 2011/09/17(土) 14:24:44.22 ID:FO1ohFKB0
杏子 (さやかの家にお邪魔するのも、何つーか…遠慮以上の躊躇みたいなものはなくなった)

さやか『もうあんたに拾い食いなんて、絶対させないんだから!ほら、来なさい!』グイグイ

杏子 (そう言ってあいつの家に引っ張っていかれてから、結構頻繁に夕食をご馳走になっている)

杏子 (ほむらん家にお邪魔することもあるけど、やっぱりさやかの作ってくれた夕飯を食う以上の幸せはない…)


杏子 (……そんなわけで。あたしはこれからの生活を真剣に考えなければならない場面に直面している)

杏子 (あいつらと同じクラスになれないのは仕方ないにしても、学校ぐらいは行かなければいけないと思う…)

杏子 (最低限まともなところに住んで、まともに仕事をするようにならないとなぁ、と思ってる)

杏子 (……魔法少女稼業もやりながらだから、結構大変そうだけどな)

91: 2011/09/17(土) 14:39:59.72 ID:FO1ohFKB0
杏子 (そう。あたしは、さやかを幸せにしなきゃならない)

杏子 (もう人が信じられないわけじゃない。力が無ければ人が怖いわけじゃない)

杏子 (でも、あたしがさやかを愛してると胸を張って言うためには……やっぱりそのくらいできなきゃだめなんだ)

杏子 (だから今日は、その決心を…つけにきた……)


――夕暮れの公園――

さやか「よーし、待たせたな!アイス買ってきたよ」

杏子「おー、ありがとう。へへ、やっぱチョコミントだよなー」 カサカサ ムグッ

さやか「あんたよくそんな歯磨き粉みたいなもん食えるよね…」

杏子「てめぇ…言ってはならねぇコトを言ってしまったな…!ん、そういうお前は」

さやか「え?あずきバー。小倉のつぶがアクセントになって美味いのだよ」 ニヒヒ

杏子「そういうもんかねぇ」 ペロペロ

97: 2011/09/17(土) 14:57:40.74 ID:FO1ohFKB0
さやか「ふー。んまかったー。今日も結構歩いたからかねー、身体に染みいるよ」

杏子「だなぁ。ごっそさん」

杏子「……」

杏子「なあ、さやか」

さやか「ん?どした?」

杏子「………お前と会えて、すげー良かったと思う」

さやか「…はへ?……え、急にどうしたの?」

杏子 (……落ち着け………)

杏子「…あ、あたしがさ。今までどうやって魔法少女になって…どうやって一人で生きてきたか……話したと思うけど……」

さやか「……うん」

杏子「………まぁその、そんなに幸せだったとは、今でも思ってない」

さやか「…………」

杏子「それでもさ。魔法少女になってなきゃ、さやかとも…マミやほむら、まどかとも出会うことはなかったろうし……」

杏子「今、お前とこうして二人で…アイス食って笑い会える……こんな幸せには、出会ってなかったと思うんだ」

杏子「だ、だから……今まで、こうして生きてきたことも無駄じゃなくって、その……全部まとめて、幸せだと、思えるんだよ……」

100: 2011/09/17(土) 15:12:39.91 ID:FO1ohFKB0
さやか「………」

杏子「最初は…結構仲違いもあったよな。ハハ、あの頃は実際、ボコボコにしてやる、とか思ってた」

杏子「でも……お前らは、ホントはあの頃から優しくて……」

杏子「………それに、あたしは随分気づくのが遅れたようで……」

杏子「そんなあたしでも、お前は…受け入れてくれて……」

杏子「本当に。ありがとう。嬉しかった……。すごく……幸せなんだよ。今……」

さやか「杏子………」


杏子 (……うん)

杏子「それで……そう、今は、お前に心配されないぐらいの、まともな生活をするために頑張ろうと思ってる」

杏子「またお前らの手を借りないといけないかもしれないけれど…そん時は頼むよ」

さやか「……当たり前、じゃん………」

103: 2011/09/17(土) 15:20:09.82 ID:FO1ohFKB0
杏子 (……あと…ちょっとだけ………)

杏子「………」

杏子「………本当は。それがある程度、実現してから……それから言うべきなのかもしれない」

杏子「…でも!……何か、今言っておかないと……きっと後悔するような………気がしてさ……」

杏子「あたしもらしくないと思うんだけどさ……言っておいたら……ケジメになるっつーか……この先頑張れる気がするんだ」

ガシッ

さやか「!」

優しく、それでも力強くさやかの肩を握る杏子…
しばらく定まっていなかった目線が、ようやくさやかの涼しげに微笑む双眸を捕らえる

杏子「だ、だからさ。その……」

杏子「あたし……お前の……さやかのコトが………!」

――――――――――

その時さやかの後ろに輝いていた夕日は、記憶にあるどの夕日より、眩しく、美しく、輝いて見えた……

~fin~

104: 2011/09/17(土) 15:21:28.69 ID:FO1ohFKB0
ごめんね。あんまりグダってもしょうがないので、このへんで…

105: 2011/09/17(土) 15:22:24.45 ID:PwEyJLO00
乙っちあんあん

106: 2011/09/17(土) 15:25:24.70 ID:cfvjAK/x0
おつっちまどまど

引用元: 杏子「牛乳風呂?」さやか「美容にいいんだって」