1: 2010/07/25(日) 23:44:59.30 ID:SSu8MxwvO
天「俺だっ……!俺が氏なせたくねえんだっ……!」

天「俺っ……!俺っ……!」

天「俺のために……生きてくれって言ってるんだ……!」

赤木「敵わないな……お前には…」

天「赤木さんっ…!じゃあっ…!」

赤木「ちょっくら世話になるぜ……天……氏ぬまでの短い間……お前達と過ごすのも悪くない」

こうして赤木と生活し始めたのはもう3年も前になる。

2: 2010/07/25(日) 23:50:41.28 ID:SSu8MxwvO
ここ数年は幸せだった。二人の嫁さんも赤木を喜んで迎えてくれ、赤木もギャンブルをすっかりやめたせいか穏やかな日々を過ごしていた。

たまにひろや東西戦の仲間達が遊びに来て、打ったりしていた。

だがいつまで経ってもアルツハイマーの治療は進まず、赤木はとうとう言葉を喋れなくなった。

それが今から一年前……

3: 2010/07/25(日) 23:56:52.90 ID:SSu8MxwvO
───雀荘───

天「(サシ馬の対面との差はちょうど満貫分……この手を上がれば逆転トップ)」

天、一、四萬待ち。四萬が出ればタンヤオ、三色も絡み満貫、しかし一萬ではピンフドラ1。

天「……(直撃を取ろうにも頼みの四萬は河に1枚……上家が染めてそうだから1.2枚はあるだろう……出挙がりは難しいか)」

下家「リーチ!」

天「くっ……」

4: 2010/07/26(月) 00:06:06.81 ID:QUgeoWSlO
次順、天が引いて来たのは

天「(ぐっ……)」

下家のド本命、ドラ筋の3筒。

天「(下家のリーチ時の捨て牌……手出しの4筒……あれは445からの外し臭い……)」

天「(これは切れない……だがこれを挙がらなければ逆転トップは……)」

天「(いや、打てば終わりだ……ここでヤケになってこんな甘い打牌するようじゃもうやっていけねぇ……回してこの3筒に引っ付くのを待つ……)」

天、下家の現物の2索。頭落とし。

対面「そいつだ!ロン!」

天「しまっ……」

5: 2010/07/26(月) 00:12:50.07 ID:QUgeoWSlO
店主「天……悪いがもうあんたには頼まないことにするよ。こうも負けちゃあねぇ……」

天「すいません……」

店主「昔みたいにイカサマでもいいから使ってさ、どう? また仕込みやるよ?」

天「いや……もうあれはしない…」

店主「……そうか」

東西戦から三年間、俺は家族を養う為にこうして請け負い人を再開しているがここ最近では全く勝てていなかった。

理由はわかっていた……。

モチベーションだ。
東西戦の後、ギャンブルからしばらく離れ家族にかまけていた俺に、張り付く様な世界で生き続けている奴等とやり合える力は残っていなかったのだ。

8: 2010/07/26(月) 00:18:48.35 ID:QUgeoWSlO
原田や僧我、西の強敵達と鎬を削りあったあの東西戦。

そしてあの赤木しげる……あの神がかった闘牌を見て、一緒に戦って……。
あそこが俺のピークだったんだと今では思うようになっていた。

天「今日も食いぶちなしか……カップラーメンでも食うかな……」

家の玄関を潜る。

嫁1「あ、天!お帰り!どうだった?」

天「また負け……はは……全く勘が働かんね……赤木さんは?」

嫁1「いつも通りよ……」

11: 2010/07/26(月) 00:25:41.11 ID:QUgeoWSlO
赤木「……」ボー

赤木、老落っ……

揺れる椅子に座りながら虚ろげに外を眺める毎日。

天「はあ~……」

わかっていた、こうなることぐらい……だがどこかで期待していたっ……あの赤木なら病気など関係なく天才ぶりを発揮し続けてるんではないか……と

だが結果はこれっ……
毎日惰性に椅子に座り続けながら喋ることも出来ず医療費やらなんやらでただ金を貪るだけの置物同然っ……!

あの頃の赤木とは別人っ……まるで見る影なしっ……!

14: 2010/07/26(月) 00:31:36.19 ID:QUgeoWSlO
天「こんなことならあの時……」

天「くっ……」

これだけは言っちゃならねぇっ……自分で生きてくれなんて引き留めておいて実際こうなったら氏なせておけばよかったなんてっ……赤木に申し訳ないと思わないのかっ……!

赤木「」ボー

天「あ、赤木さん! ご、ご飯食べますか?」

赤木「」ボー

天「けっ……これがあの赤木しげるかよ!伝説の!異才!?はあ~?ふざけるなよこのっ!」

天が赤木の座っている椅子を蹴り揺するが、座ってる赤木は全く無反応

16: 2010/07/26(月) 00:37:01.67 ID:QUgeoWSlO
嫁2「ちょっとなにやってるの!」

天「この置物捨ててくるっ……!」

嫁1「何言ってるの!家族でしょ赤木さんは!」

天「ああ家族だったさ……!数年前まではなっ……!今じゃ喋らない癖にものは食うただの金食い虫っ……!貧乏神もいいとこっ……!」

天「こいつの治りもしねぇ治療費に毎月いくら使ってると思ってんだ……?かっこつけて無保険、年金もなし貯金もなにもかもっ……!」

嫁2「私がもっと頑張るから……ね?」

嫁1「あんなに尊敬してた人にこんなことするのやめよ?ね?」

天「ちっ……尊敬してたさ……!赤木しげるはな!こいつはただの貧乏神だっ……!赤木じゃないっ……!」

20: 2010/07/26(月) 00:42:34.23 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「な、なにやってるんですか天さん……?」

天「ひ、ひろっ……!来てるなら言えよ……」

嫁1「あっ、ひろくんいらっしゃい……私お茶沸かしてくるね」

嫁2「あっ、わ、私もっ」

ひろゆき「呼び鈴鳴らしても出ないし……なんか言い争ってる声が聞こえたから……」

天「……まあ座れよ」

ひろゆき「は、はあ……」

天「……今日はなんか用か?」

ひろゆき「用って言うか……ちょっと天さん達の様子を見に来たんです……雀荘の店主に聞きましたよ……また負けたって」

天「あの親父代わりにひろに頼みやがったのか……」

21: 2010/07/26(月) 00:48:17.92 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「ええ……まあ……」

天「最近ブイブイ言わしてるらしいじゃないかひろ……?」

ひろゆき「まだまだですよ…昔の天さんや赤木さんに比べたら……」

天「昔……か。俺も赤木と同じで昔の人扱いか……?あ……?」

ひろゆき「そんなつもりで言ったわけじゃ……」

天「ならなんだよ……」

ひろゆき「……俺が今でも追いかけてるのは天さん…そして赤木さん……あの東西戦の時の二人なんです…。二人は俺にとっては高み……たどり着きたいと思える場所なんです……」

ひろゆき「天さんも……そう思ってるんじゃないですか……?」

24: 2010/07/26(月) 00:53:52.72 ID:QUgeoWSlO
天「……」

ひろゆき「あそこが自分の一番の高みだった……二度とあそこには辿り着けないであろう……そう思ってませんか……?」

天「……ならなんだってんだよ」

ひろゆき「ふふっ……」

天「あ~?何がおかしいんだよ……?」

ひろゆき「すいません……ただ……あの時の俺と同じだなって……」

天「あの時……?」

ひろゆき「俺が東西戦で天さんと原田の勝負を見て……再び赤木さんと会うまでの……あの9年間と」

25: 2010/07/26(月) 00:59:08.61 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「俺はあの時自分には無理だと思った……だから麻雀をやめました……懸命だと……そう思い込むことで自分を正当化してました……。」

ひろゆき「でも赤木さん曰くそんな懸命だとか……まとも……正しさなんて言葉はおかしいって言われて気付いたんです……」

天「気付いた……?」

ひろゆき「俺は……あの時から……東西戦が終わった時から越えたかったんですっ……二人を……!でも到底及ぶわけない……だからカッコつけて……傷つくことを恐れて……逃げていたっ……!」

ひろゆき「自分の意見とか尊重……そんなものをねじ曲げていた……!」

26: 2010/07/26(月) 01:04:07.47 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「もう…漕ぎ出そう……!いわゆるまともから放たれた人生に……それからですよ……僕ががむしゃらにやり始めたのは」

天「赤木さんがお前にそんなことを……」

ひろゆき「天さん……今俺にはあなたがとても弱く見える……麻雀で言えば打たなければいいって考えて逃げ回ってるだけの素人同然……そんなやつに」

天「けっ……言うようになったな」

ひろゆき「こないだ昔赤木さんと打ったことがある人と戦ったんですよ……その人も言ってましたよ……俺の人生で赤木しげるを越えるやつはこの歳になってもあったことがない……って」

34: 2010/07/26(月) 01:56:39.59 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「そんなことを聞くたびあの人はもっと上手く打っただろう……あの人ならどうしただろうって……」

天「……何が言いたい……?」

ひろゆき「ッ!」

ゴスッ

天「ガッ……なにしやがる…!」

ひろゆき「あんたは……赤木しげるがどんな人生を過ごして……いろんな人達に芽を残したのかを……知らないっ……!どんな過酷を乗り越えてここでこうしているのかをっ……!」

天「……」

ひろゆき「それを置物だ……?金食い虫……?しまいには貧乏神だって……?」

ひろゆき「あんたは赤木しげるのことを何もわかっちゃいないっ……!」

天「……言いたいことはそれだけか……?」

36: 2010/07/26(月) 02:01:45.23 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「なっ……」

天「お前にはわからないだろうな……あの赤木が……今は何も喋らないどころか排便すらろくに出来ねぇじじいに成り下がってることを直視出来ないお前には……!」

ひろゆき「ぐっ……」

天「憧れや昔の思い出だけで語ってれば幸せだろう……お前が言ってるのは全部赤木しげるであった時の話じゃねぇか……!今の赤木しげるについては何も語らない……語りたがらない……!」

ひろゆき「それは……」

天「実際生活費やなんやら払っている俺の身にもなってみろ……ことはそう簡単じゃないんだ……!説教垂れに来ただけなら帰りなっ……!」

ひろゆき「天さん……」

37: 2010/07/26(月) 02:06:40.16 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「……これ…少ないけど……」

天「……」

ひろゆき「じゃあ俺帰りますね……また来ます……」

静かに茶封筒を置くとひろゆきは帰っていった。事はそう簡単じゃないのだ……

天「……クソっ……!」

その茶封筒を壁に叩きつけると天は上着を羽織また街に繰り出す。
自分にはこれ(麻雀)しかないんだ……なら勝ってやる……勝てば何もかも問題ないっ……!
東西戦で一番の勝負強さと言われた俺がそこいらの雀ゴロに負けるかよ……!

39: 2010/07/26(月) 02:14:19.91 ID:QUgeoWSlO
それから天はがむしゃらに勝ちを集めた。
勝つためにはイカサマもじさない、電動卓が支流の為積み込みは出来ないが不要牌を交換するぶっこ抜き、ドラを仕込むキャタピラなど目の前の山を使うイカサマや、
河から拾ったり、他家のトップ目に他の他家の危険牌を送り込むなどイカサマの限りを尽くした。

連戦連勝……だが当然店は不自然に思い、場が立たなくなるのを恐れ天を出禁に……その繰り返しだった。

気がつけば後行ける雀荘は前に負けた以来行っていない雀荘のみとなっていた……

40: 2010/07/26(月) 02:19:01.81 ID:QUgeoWSlO
天「落ちたもんだな俺も……ヒラじゃ勝てないからってこんなイカサマばっかやってちゃそりゃこうなるか……明日からどうする……」

稼いだって言っても今流行りの低レート……たかがしれてる……赤木さえ……あいつさえいなければ……。

頃すか……?

天「何を……生かしたのは自分だろっ……」

あいつがいなければ普通に生活出来るぐらいは稼いでいける……
あの時終わっていた人生を俺が買った……なら終わらすのも俺が……。

天「……バカなことを……」

よっぽど追い詰められてるんだろう…仮にも自分の友を頃すなんてどうかしてやがる……帰って風呂にでも入るか

41: 2010/07/26(月) 02:23:19.96 ID:QUgeoWSlO
天「ただいま……」

嫁1「あっ……天っ……!」

天「なんじゃこりゃ……」

部屋が荒れ放題……ぐちゃぐちゃもいいとこ

まさか俺がイカサマでかっぱらった奴が……!

天「誰が……どんなやつが来たっ……!?」

嫁1「えっ…いや、違うの……これをやったのはその……赤木さんで……」

天「赤木が……?」

嫁1「最近たまに腹が立った様に暴れたりするの……理由はわかんないけど医者によるとストレスが溜まってると稀にこういうことがあるらしいの……」

天「ストレス……だぁ~?」

嫁1「あっ…天!どこ行くの!?」

42: 2010/07/26(月) 02:28:17.62 ID:QUgeoWSlO
天「赤木っ……!」

普段通り椅子に座り込んでいる赤木を無理矢理掴み上げる

赤木「」ボー

天「ストレスだ~……?こっちはお前の為にどんだけストレス溜めてると思ってんだ……!家で寝て食ってしてるだけのお前がストレスなんてっ……!」

天「こうしてやる……」

赤木の首を締め始める天

赤木「ぐ……う……」

もはや意味のなくなった言葉でもないただ息が漏れただけの音が赤木から発声られる。

天「あの時氏んでればこんなことにはならなかったんだっ……!」

天「すまないな赤木……!生きてくれと頼んだのも俺だっ……なら氏んでくれと頼むのも……俺だっ……!」

赤木の息が段々弱くなるのがわかる

45: 2010/07/26(月) 02:35:59.99 ID:QUgeoWSlO
原田「バカ野郎っ……!」

ガスッ

天「ぐふっ……」

ドサッと散らかった部屋の押し入れに激突する天。
殴ったのはオールバックでグラサンの男、原田。

原田「小銭稼ぎの次は殺人か……?とうとう気でも狂ったか天……!」

天「原田……」

原田「組のもんが最近程度を知らない雀ゴロが入り浸ってるって聞いたから詳しく聞いてみりゃ天だって言うしよ……家に来てみれば赤木を締め殺そうとしてやがった……一体何があったんだ……?」

天「やくざには関係ないだろ……」

原田「そうか……だがけじめだけはとってもらわんとな……あんな麻雀されたら客が来なくなることぐらいわからんお前じゃないだろう……?」

47: 2010/07/26(月) 02:42:29.65 ID:QUgeoWSlO
天「二度と麻雀が出来ない様に……腕一本か……?」

原田「アホかっ……!今はそんな古い真似はやらん……今はもっと利口なやり方があるんや……」

天「……」

原田「次のウチの代打ちにおどれを使わせてもらう……勝てば勝った半分はおどれにやる……しかし負けたら全部や……全部背負ってもらう……」

天「ぐっ……」

原田「日時は次の土曜夜9時……場所は料亭笹川や……逃げても無駄だぜ……ここいら張らしてもらうからよ……」

天「……なんで今更……」

原田「勘違いするなよ……俺はあの時のおどれを見たいだけや……」

48: 2010/07/26(月) 02:49:08.95 ID:QUgeoWSlO
原田「じゃあな……待っとるで……」

手をひらりと振りながら去っていく原田

原田「ああ……後……どうしても赤木を賄う金がないっていうなら俺が預かってもいい……金なら腐るほどあるからな……」

天「原田……」

原田「赤木はこんな場所で氏ぬような男やない……氏ぬ時は賭場以外ありえんと俺は思ってる……」

天「だが赤木はもう麻雀は……」

原田「賭博が麻雀だけと思うなや……サイコロの丁と半でも選ばさせてやらせりゃええ……それで氏んだらこいつも本望やろ……こんな場所で友と呼んで身を任せたお前に殺されるよりはな……」

原田が去った後、俺は赤木に膝をつきながら泣いた
すまない……すまないと謝りながら

49: 2010/07/26(月) 02:56:31.91 ID:QUgeoWSlO
ついにやって来た、土曜

嫁1「ほんとに行くの……?」

天「ああ……赤木にやったことは許されることじゃないが……これから償って行くことは出来る……原田はいい仕事を持って来てくれたよ。雀荘を荒らした甲斐があったってもんさ……」

嫁2「でも負けたら……」

天「傷つくのを恐れるな……熱い三流なら上等……また1からやり直すさ……!」

そうだ……赤木は誰でもない俺に託してくれたんだ……自分じゃなくなるとわかっていても……どんな失態を見せることになろうとも……!
友と呼んでくれた俺に委ねた……!
恐らく初めてだろう……赤木が他人に自分を委ねるなど……!
それを俺はっ……赤木の覚悟の重さも知らずその場鎬の安請け合いっ……ただ悲しいから生きろだのなんだの言って邪魔になったら氏ね……?
バカかっ……!俺が氏ねっ……!赤木は……赤木は……俺の友だろうがっ……!

50: 2010/07/26(月) 03:02:16.72 ID:QUgeoWSlO
コンコン……コンコン……

不意に音がする、居間からだ

嫁2「あっ……ちょっと待ってて」

天「なんだ……?」

嫁1「あれは外に連れてけって意味みたい。最近ちょっとづつだけど物事がわかるようになって来てるの」

天「そうなのか……?」

嫁2「お待たせ~」

赤木「……」ボー

もはや歩けず、車椅子で押されながら玄関までやって来た赤木。
その手には何か握られている。

天「一筒……?」

嫁1「最近麻雀の牌をね、ああやってコロコロ手で転がすのが好きみたい。変わってるよね~」

天「赤木……」

赤木「……」コロコロ

天「勝って帰ってくる……必ず……!だから赤木……あんたも祈っててくれ……」

少しだけ、頷いた様な気がした。

52: 2010/07/26(月) 03:07:55.03 ID:QUgeoWSlO
───料亭 笹川───

原田「よう逃げずに来たな……天」

天「ここ最近逃げてばかりだったからな……人生も……麻雀も……」

原田「(前会った時とは目付きが違う……戻りつつあるのか……あの頃に……だが今日の相手は正直昔の天でもどうかって程のレベル……今の天に勝てる見込みがあるかどうか……)」

原田「こっちや……ひろゆきも来とるで……いざとなったら自分が代打ちするとか抜かしよる……あの強引さは変わってないなあいつは」

天「ひろ……」

東西戦ではサポートする側だったのに……いつの間にかサポートされる側になるなんてな……情けない
だがそれも今日までだ……勝ってまた一からやり直す……みんなと……赤木と

53: 2010/07/26(月) 03:16:28.84 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「(まずい相手が来たな……これは僕が出たところでどうにもならないかもしれない……)」

傀「……」

ひろゆき「(今まで負けたことがないと言われる雀鬼……傀……あの全盛期の赤木さえも凌ぐとまで言われた実力……果たしてどれ程のものか……)」

シュルル

障子が開き天と原田が入ってくる

天「ひろ……すまないな……わざわざ」

ひろゆき「いえ……いいんです……この前のお詫びもありますし……」

天「あんなもん俺が悪いんだよっ……ひろはほんと真面目だな……ほんと原田が言った通り変わってねぇや……」

ひろゆき「(天さん……あの時の雰囲気に戻った……?これならもしかすると……)」

56: 2010/07/26(月) 03:24:49.58 ID:QUgeoWSlO
天「で……あれが俺の相手か…」

原田「ああ……傀言うて今まで負けたことがないんだと……今や赤木の再来とか言われとる……」

ひろゆき「ええ……実際裏のレートが高い賭場で何回か打ち筋を見たことあるんですが……」

天「が……?」

ひろゆき「ぶっ飛んでますよ……正直理解が出来ない闘牌……理があると思えば全くない……まるで幽霊みたいな打ち方しますよ…彼」

天「幽霊……か」

ひろゆき「確かに赤木さんと似た打手と言えばそうですけど……やっぱり僕は赤木さんの方が凄いと思いますけどね……その赤木さんに唯一土をつけた天さんなら……」

天「ああ……負けねぇよ……雀鬼だか幽霊だか知らないが……実際赤木の麻雀を知ってる俺達ならわかるっ……!赤木を越えるものなどいないと言うことに……!」

57: 2010/07/26(月) 03:35:03.24 ID:QUgeoWSlO
対局開始

原田「ルールは半荘5回、先に三回とった方の勝ちだ、いいな?」

天「ああ……」
傀「……」

細かいルールなどを確認した後、いよいよ対局っ……

起ち親は天、傀は対面

ひろゆき「(いい形だ……3シャンテンの理想系……ドラが5筒だから上手く行けば跳ねる……)」

原田「(傀の手牌は……あまり良くないな……まだ遠目の5シャンテン……しかもオタ風暗刻でどうやっても安手のリーのみが濃厚……ドラもなし……)」

58: 2010/07/26(月) 03:42:18.49 ID:QUgeoWSlO
5順目

天「リーチっ……!」

ひろゆき「(いきなり親リー……?序盤で流れもわからない場面で……しかもあの傀相手に……)」

原田「(それでええ……天は下手に流れなんか読もうとするやつやない……あいつの前に進む力がツキを呼び込むんや……
それにリーチをしたら相手がどうこようが手は変えられん……これはあいつの決意表明……この試合逃げないと)」

これに大して傀、素直に回す。

原田「(まあこの手じゃ仕方ないわな……あがっても1000点のゴミ点で親リーにつっかかるバカがおるわけ……)」

傀「カン……」

ひろゆき「(ここでカン……?)」
原田「(なんだと……?)」

59: 2010/07/26(月) 03:52:30.92 ID:QUgeoWSlO
回す……かと思われた傀、まさかのオタ風の北を大明カン……!

原田「(これでこの手あがれる役なしっ……更に天にドラを提供しただけ……曲芸もいいとこや……!)」

ひろゆき「(まさか……引くのか……)」

息を潜めて傀のリンシャンツモを見つめるひろゆき。

傀「……」

それを手牌に入れ、2筒

ひろゆき「はあ~……」

原田「(あいつからは見えんからリンシャンツモなんてアホらしい偶然にビビっとんかもしれんが手を見れば明らか……まだ傀は張ってもないっ……)」

原田「(誰がこの手で親のリーチに大明カンするアホがおる……ただのバカなだけか……こいつ)」

だが原田はこの後、傀の恐ろしさを思い知ることになる。

天「カンっ……!」

61: 2010/07/26(月) 04:01:59.21 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「(更にカン……これでドラが上手く乗れば親の倍満もありうる……!)」

天、リンシャンツモっ……

天「ちっ……」

が、駄目っ……

天の待ちは三、六萬……。引いてきたのは5索、当然ツモ切り……

傀「ポン……」

傀、またしても動く

天の切った5索をポンし、打、八萬。

原田「(なんだこいつ……ただ鳴いて場を荒らしてるだけか……?これじゃ素人もいいとこ……)」

次順、天もツモれず傀のツモ順
傀のツモ、三萬
原田「(えっ……)」

原田、ここで気づく……さっき傀が引いてきたツモも三萬だった。
原田「(まさか……)」
原田はさりげなく天側に移動し、天の待ちを見ると……

原田に電流走る────

62: 2010/07/26(月) 04:10:05.11 ID:QUgeoWSlO
原田「(三、六萬待ち……傀のやつしっかり天の当たり牌を食いとってやがるっ……!だがあのカンの意味は……!)」

原田「(そうか……天がリンシャンツモした場合当たり牌を引く確信が奴にはあったのか……それであんな強引に……さっきのポンといいこいつまるで……どこにどの牌があるかわかっているようっ……)」

原田「(バカな……そんな奴がいたら赤木とて勝ち目はない……そんなことが出来るのは全知全能の……神ぐらい……バカバカしいっ……!)」


結局そのまま流局となった。

原田「(天……おどれなら……俺を倒したおどれなら……!人鬼にも勝てる……!俺はそう信じとる……!)」

63: 2010/07/26(月) 04:19:26.85 ID:QUgeoWSlO
原田の祈りが届いたのか天の勢いは二局目にも損なうことなく、次は満貫をあがりきる。
その後一本積んで連荘、まるで今まで溜まっていた何かを吐き出すかの様に。

気づけば半荘一回目は天の圧勝で終わっていた。

原田「(杞憂だったか……まああんな打ち方するやつが強いわけない……麻雀ってもんはもっと理が絡む……奴の打ち方は空想的すぎや……まるで雲を掴むような麻雀……そんな麻雀じゃ勢いを取り戻した天には勝てん……)」

65: 2010/07/26(月) 04:28:30.40 ID:QUgeoWSlO
半荘二回目

相変わらず流れは天にあった。

天「引いた!メンピン三色ツモドラ1跳満!」

このあがりでいきなり傀の親を蹴ると次に上家に5900を放銃、満を持して迎え込んだ親番。

天「リーチっ……!」


ひろゆき「(またも即リー……今はこれが効をそうしてるけど……)」

傀「……」

ひろゆき「(あの傀がここまで一局目以外目立った動きなしっていうのが不気味だ……)」

天「ツモっ……リーチ一発タンヤオドラ2満貫!」

この半荘も、天が制した。
後一度勝てばあっさり天側の勝ち、ひろゆきも原田ももう勝ちを信じて疑わなかった。

それほど今日の天の運は底知らずだった。
まるで勝てっ……と誰かに押されているかのよう……

ただそれは……相手が傀でなければの話だった……

半荘三回目……

66: 2010/07/26(月) 04:34:33.99 ID:QUgeoWSlO
起ち親は天

天「(……配牌から1シャンテン……3ピンを引けば絶好の1.4.7ピン待ち……)」

ひろゆき「(さすが天さん……ここに来て更に配牌が良くなるなんて……運……と言えばそれまでだけどこと欠くに麻雀だけは運をバカには出来ない……強者は常に持っているものだからだ……運を……!)」

原田「(傀の手牌は……悪くはないが……良くもないな……発中辺りが鳴ければええがそうそう誰も出してはこんやろう……つまりここでシャボ待ちするしかない……邪魔になるなこの役牌は……)」

傀「……」

傀は静かに待っていた……その時を

68: 2010/07/26(月) 04:38:36.46 ID:QUgeoWSlO
6順後、

天「リーチっ……!」

念願の3筒を引き入れリーチ……

ひろゆき「(今更ダマでってやり方は天さんもう考えてないんだろうな……後ろのドアをリーチで閉じた……後は行くのみ……か)」

傀「」ニヤ

原田「……?」

次順、天、打、発

傀「ポン」

天「くっ……」

更に次順、天、打、中

傀「…ポン」

天「(しまったっ……)」

傀、二フーロ。いきなり臭いたつ……役満大三元……

69: 2010/07/26(月) 04:45:47.21 ID:QUgeoWSlO
原田「(リーチは天才を凡人にする言うが……まさにこれやな……今まではリーチ構成がええ感じに決まってたが今回はそれを逆手にとられた……役満大三元……)」

その火種は傀の中に……あるっ……

傀「……」

ひろゆき「(このルール自分が始めに持っている3万点を割ってもその半荘を落とすルール……つまり役満などを打ち込めばその時点で負け……天さんっ……)」

天「(後ろは閉じた……ならもう前に進むしかない……ここで打ち込むことになっても俺はもう逃げない……!)」

傀「……」

72: 2010/07/26(月) 04:55:39.05 ID:QUgeoWSlO
三順後、天……ついに引く

天「ぐっ……」

氏神が微笑みが見える真っ白な牌……白。

打ち込めば即負ける一打……少し前の俺……いや……あの頃の俺でも止めてだろう……この牌は。

運を呼び込む為の打牌と暴牌は違う……だがこれはそのどちらでもない……!

天「(リーチ者はただ切り続けるしかないっ……懸命さを捨ててただ切る……前に進むしかないっ……どんな場合だって……!例えもう二度と戻らなくともっ……!今は変わり果てていようともっ……!)」

天「(生きてる限り進み続けなきゃならないっ……それが人生であり麻雀だっ……!)」

純粋に麻雀を始めた頃を思い出していた。
夢中で役を覚え、あがれたらあがる……そんなことだけをしていた頃を

73: 2010/07/26(月) 05:03:00.97 ID:QUgeoWSlO
天、打、白

天「通しか当たりかっ……!」

傀「……通しだ……」

ひろゆき「(前に赤木さんと打ったと言う人と打った時こんなことを言ってたっけ……)」

『そいつはな……遅れて来て……尚且つ絶望的な状況にも関わらず……笑ってやがった……』

『そして不適にも大衆の前でイカサマをし……その危機を脱した後……』

ひろゆき「(ツキの女神は……いつだってその先にしゃがみこんでいる……)」



天「ツモっ……!」


「来たぜ……ぬるりと……」

そんな声が聞こえた気がした。

74: 2010/07/26(月) 05:10:04.41 ID:QUgeoWSlO
が、流れもここまで……。

さすがの天も配牌やツモに恵まれなくしばらく流局が続いた。

南四局

トップが天、2位の傀とは8000点差。
1000点でもあがればトップ……

原田「(こりゃ天の三連勝やな……!傀ってやつも思ったより大したことなったな……)」

原田「組長さん……悪いな……」

組長「ククク……まだ安心するのは早いですな原田さん……」

原田「なに…?」

組長「そうですよね……安永さん」

安永「ああ……傀はここからが怖い……(ただここまで様子を見るために泳がせたわけじゃないだろう……あの天という男も相当やるみたいだな……)」

82: 2010/07/26(月) 05:34:45.24 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「(親は下家だから傀はツモなら満貫以上……直撃なら5200以上……か)」

ひろゆき「(さすがにもう何あがってもいい状態で天さんもリーチはしないだろうし……そうそう直撃は取れない……ならツモ狙いか)」

原田「(ツモ狙いにしても満貫は遠い……タンヤオは確定にしてもドラもない……ここは素直にメンタンピンで後は何とか三色に……)」

原田がそんなことを思っている時だった。

傀「チー……」

ひろゆき「(鳴いてきた……?ドラを絡めたタンヤオドラ3か……三色か……どちらにせよ早そうだ)」

87: 2010/07/26(月) 05:47:52.95 ID:QUgeoWSlO
原田「(これでもう234の三色を目指すしかなくなった……しかし天がそうそう出すとは思えない……)」

ひろゆき「(ドラは4筒……天さんに2枚あるから最悪タンヤオ三色ドラ2止まり……混一、清一を考えるならまだまだ可能性はあるが……)」

天「ポンっ……!」

天、発を鳴き一翻得る。

ひろゆき「(よしっ……これで後はなんでも食いあがって……)」

だが、この局面でそんな甘い打牌をするにはちゃんと理由がある。

下家「リーチ!」

先程発を打った下家がリーチ、これにより天が下家に打ち込んで負けと言う可能性も出てくる。
ルール上、最終局、上家と下家のあがりで点数を下回った場合、その時の親が上家か下家であった場合連荘しない取り決めになっていた。
あくまで上家、下家は場を乱さない為のことなかれ主義だが手を目指しあがれる場合であればあがると言うのが取り決めである。

89: 2010/07/26(月) 06:05:27.48 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「(これでお互い身動き取りにくくなったな……下家の捨て牌から見ると待ちは……二、五萬ってとこか……)」

ひろゆき「(上家も高くはないが張ってそう……ドラは天さんが2枚……傀も1枚はあるはずだから……もし上手く差し込めれば……)」

天もそれを感じていたのか上家の当たり牌を読む方向に変えていた。
傀の捨て牌から反射し、上家の当たり牌を浮かび上がらせていく……

天「(さっきの傀の手出しの八萬……妙だな。下家に二、五、八萬が危ないことぐらい傀だってわかってるはず……それなのに切ってきた……萬子の二三四を鳴いてる…下はもうない……つまり八萬は頭だった可能性大
下家に当たる可能性を少しでも覚悟して打った理由は……引いてきた牌が上家の当たり牌だからだ……!)」

90: 2010/07/26(月) 06:28:08.96 ID:QUgeoWSlO
天「(つまり傀は……)」

八萬 八萬 2索 3索 2筒 3筒 4筒 6筒 7筒 8筒 二三四

天「(こんな形から……何かを引き入れて打、八萬……萬子は下家が使ってそうだからない……あるなら筒子か索子……俺の手牌から見ても傀の三色から見ても下は薄い……なら上……)」

天の読みは更に加速していく

天「(上家の捨て牌……一度傀に鳴かれてから警戒したのか傀に合わせ打っているな……傀の捨て牌には索子が多く……俺の手には筒子が多い……つまり上家は傀が筒子の下で待ってると読み……いずれあぶれるであろう上の筒子を索子を切りながら待っている……
傀が全くかぶってもない牌で頭を作り始めるとは思えない……つまり傀は5筒か8筒が重なったんだ……!それが上家の読みと判断した傀は頭を崩し引っ付くのを待っている……間違いない……!)」

天、打、8筒

93: 2010/07/26(月) 06:39:34.51 ID:QUgeoWSlO
上家「ロン!タンヤオピンフ」

ひろゆき「(やった……天さんの読み勝ちだ……!)」

傀「御無礼……ロンです。タンヤオ三色ドラ1」

ひろゆき「なっ……」

天「まさか……」

傀……まさかの8筒単騎っ……!

ひろゆき「(ダブロンありルールだから……上家の2000と傀の3900……引いて天さんを傀が上回った……)」

天「(そうか……普通に手作りしてたら間に合わないと察した傀は俺に出さす為に上家の待ち牌を読んだ……自分がやっている下の三色には振り込んで来ないだろうと……)」

ひろゆき「(これは天さんが赤木さんにやったやり方と一緒だ……まさか知ってて……いや……そんなバカな……)」

傀「では、次の半荘にしましょう……」

94: 2010/07/26(月) 06:42:33.82 ID:QUgeoWSlO
───────

トントン、トントン

嫁1「赤木さんどうしたの?今日はもう遅いから外は駄目だよ?」

赤木「……」トントン、トントン

嫁1「ほら……風も強いし、おとなしくしとかないと体にも……」

赤木「テン……」

嫁1「えっ……」

赤木「テン……」トントン、トントン

嫁1「天のところに連れてけって言うの……?赤木さん……」

95: 2010/07/26(月) 06:48:45.65 ID:QUgeoWSlO
──料亭 笹川──

傀「御無礼、満貫です」

──────────

傀「御無礼、跳満です」

─────────

傀「御無礼、倍満です」

天「くっ……」

ひろゆき「(あのあがり以来全く歯が立たないまま二敗っ……)」」

原田「(初めの運もどこへ行ったんやら……今来てる嵐みたいに今度は傀がバカツキ……このままだと……)」

ひろゆき「天さん……俺が……」

天「ひろ……お前には迷惑かけっぱなしだからな……最後まで世話になるわけにもいかない……例え負けるとしても……俺が打つ……打たなきゃならないんだ……」

ひろゆき「天さん……(天さんも感じている……傀の底知れない強さ……一、二局目はこっちを推し量る為だったんだ……まさか天さん程の打手がこうも簡単に……)」

96: 2010/07/26(月) 06:54:58.76 ID:QUgeoWSlO
安永「(やはり傀に勝てる打手なんていないか……あの東西戦の優勝メンバーって聞いて期待はしたんだがね。)」

組長「ククク……代打ちの件、考えてもいいですな!あっはっは!」

安永「(たぬきめ……傀がそんなことの為にわざわざこんな代打ち引き受けるか……。しかし現れなかったか……アルツハイマーで闘病中ってのは本当らしいなこりゃ。赤木の伝説も終わっこれからは傀の伝説……まあ傀はそういう感じじゃないか。
しかし見たかったものだ……どちらが最強か……)」

半荘五回目も傀のペースで進み、いよいよ天の負けが濃厚となっていた時だった……

ガラッ……

赤木「……」

闇に舞い降りた天才が、嵐と共に戻って来た──────

98: 2010/07/26(月) 07:06:04.17 ID:QUgeoWSlO
天「あ、赤木ぃっ……お前どうしてここに……!」

ひろゆき「赤木さんっ……」

原田「赤木っ……!」

嫁1「ごめんね天……どうしても赤木さんが来たいって言うから……」

天「赤木が……?」

嫁1「天……天って言いながら外に連れてけってコンコンするのよ」

赤木「……」

天「赤木……お前……」

赤木は嫁1に支えられながら歩き出す……卓の方へと

天「わかるのか……?」

原田「脳が忘れても体が……魂が覚えてるんだっ……!赤木は昔にこの料亭笹川で盲目の達人…市川と戦ったらしいからな……そしてあの頃じゃ最強と言われてた爺さんを倒し…赤木の伝説は始まった…」

赤木「……」

(変わろうか……南郷さん)

かつてそう言ったようには言えない赤木、だがそれを察して天は赤木に席を譲る。

101: 2010/07/26(月) 07:11:42.76 ID:QUgeoWSlO
席につく赤木。

あの時とは違う意味でド素人同然である。

1つ牌を掬い上げると手のひらでコロコロし始める。

ひろゆき「赤木さん……」

原田「赤木……」

かつての彼を知っているものならそのギャップにさそがし愕然とするだろう。
けれど天は違った。

天「赤木……それが1筒だ……!」

天は赤木に1牌、1牌教えて行く。赤木はわかっているのかどうかは最中ではないが1牌1牌手のひらでコロコロさせてはニコニコしていた。

安永「(あれがあの赤木しげるか……今じゃ見る影もないな。あれならまだ小学生に打たせた方が可能性がある……全く本当に勝負を投げたのかねあちらさんは。傀もさぞかし残念だろ……)」

傀「……」ギラギラ

安永「(あの傀が嬉しそうにしてやがる……嘘だろおい……あのボケたじいさんに何を期待してんだ……)」

102: 2010/07/26(月) 07:18:58.64 ID:QUgeoWSlO
組長「原田さん……誰かは知らないがあんなボケたじいさんにやらせる気かい……?負けを認めるのもいいがこっちの代打ちもあれじゃバカにされてると思って気を悪く……」

原田「黙ってろっ……!赤木しげるも知らないにわかが吠えるなっ……!」

組長「ひぃっ……」

ひろゆき「赤木さんっ……こうして二つづつ集めると七対子って言う……」

天「こうして三つづつを4つ集めて後二つづつのを1つ集めると凄いことになるんだぞ赤木……!」

簡単な役だけ教えるひろゆきと天。

赤木「……」ボー

それをわかってるのかわかってないのか見ている赤木。

原田「(楽しそうじゃねぇか……赤木よぉ……!お前生まれて初めて麻雀を楽しみながらやってるんじゃないか……?赤木……お前はやっぱりすげぇよ……!)」

103: 2010/07/26(月) 07:24:50.59 ID:QUgeoWSlO
対局再開

南三局 親は赤木からである

天「ひろ……わかってるな……!」

ひろゆき「はいっ……!何があっても代わりに切ったりとかしませんっ……!赤木さんに任せます……!」

天「原田……借金かなり残るだろうけど……待ってくれるか……?」

原田「ああっ……!お前がアルツハイマーになろうがいつまでも待ってやるっ……!」

原田、男泣き

ひろゆき、天、嫁1も涙を我慢している。

天「こうしてるとさ……東西戦を思い出すよな……ひろ」

ひろゆき「はい……この背中をずっと追って来ました……!」

天「見てると何故か安心するんだよな……!」

ひろゆき「大丈夫だ……何もかも俺に任せとけって言ってるみたいですよね……」

106: 2010/07/26(月) 07:28:48.04 ID:QUgeoWSlO
天「幾多数多の伝説を作ってきた男……赤木しげる……その最後になるだろう闘牌を見れて……俺は幸せだ……!」

ひろゆき「どんな病気になろうと……赤木さんは赤木さんなんですね……」

局は進んで行く


107: 2010/07/26(月) 07:38:22.45 ID:QUgeoWSlO
天「幾多数多の伝説を作ってきた男……赤木しげる……その最後になるだろう闘牌を見れて……俺は幸せだ……!」

ひろゆき「どんな病気になろうと……赤木さんは赤木さんなんですね……」

局は進んで行く

俺の打ってる麻雀はオメェラが普段打ってるみたいなツイたツカないの麻雀じゃないんだ……
百戦して百勝する麻雀だ…

俺はいらねぇんだ……そんな和了……

リーチ後木の葉が舞えば木の葉に……雪が降ったなら白狐にでも化けるまで
まあ……忍法みたいなものさ……

天「赤木……!」
ひろゆき「赤木さん……!」
原田「赤木ぃ……!」

109: 2010/07/26(月) 07:53:29.57 ID:QUgeoWSlO
傀「……名は?」

赤木「……」

傀「聞くまでもないですか……赤木さん」

いきなり席を立つ傀。

組長「お、おい……!何をやっている……!まだ勝負の途中だろう……!」

傀「終わりましたよ……たった今ね。後代打ちの件ですがお断りします。では……」

傀は赤木に深く一礼した後部屋から去っていく。
安永「一体何が……」
天「あ、赤木……」

ひろゆき「赤木さん……」

原田「赤木……」

コンコン……パタリ
1筒1筒1筒1索1索1索三萬三萬三萬五萬五萬五萬五萬

傀が打ち込んだのは四萬

安永「なんだ……ただの三暗刻じゃないか……なのに傀のやつなんで……」

ひろゆき「赤木さん……リーチしてますっ……!ほらっ……ちゃんと牌を横に倒して……」
安永「なに……つまり裏ドラ次第では……いやそんなバカな……」
裏ドラは奇しくも……3枚あった。

113: 2010/07/26(月) 07:59:04.43 ID:QUgeoWSlO
天「だが……」

ひろゆき「はい……仮に前みたいに……もし3枚乗ったとしても……」

12翻……親の3倍満止まり……36000点。

傀の点数は45000点……親の役満でもない限り飛ばせない。

安永「ほとんど負け確定なのに傀やつ……何を……」

組長「何でもいいっ…!さっさとめくって終わりにするぞ……!くだらん……」

赤木「……」ボー

天「ひろゆき……原田……」

ひろゆき「わかりました……じゃあ一枚目は俺が……」

原田「二枚目は俺が……!」

天「三枚目は俺がめくろう……」

赤木の意思がこの裏ドラに眠っている……!

114: 2010/07/26(月) 08:04:48.54 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「赤木さん……失礼します…」

ひろゆき「表ドラは関係ない……」

ゆっくり表ドラを退け、裏ドラである三枚を引き出す。

思えば天さんと出会い……赤木さんと出会えたのは俺がずっと麻雀をしてたからなんだな……。

麻雀をしててここまでよかったと思えることはなかった……!

ひろゆき「めくらずともわかります……だってこれは……」

赤木さんの人生そのものなのだからっ……!

バチンッ!

一枚目 四萬

117: 2010/07/26(月) 08:09:21.19 ID:QUgeoWSlO
安永「バカな……!ドラ四だとっ……!」

組長「ま、まぐれに決まってる……!」

原田「二枚目行くぜ……!」

赤木……俺は今でも成功ってやつを積んでるよ……確かにガンジ絡めな日々に嫌気が射すこともあるけどよ……

やっぱりこれが俺なんだわ……赤木……。

赤木が……赤木であるように……。

原田「いつまでも……お前は赤木しげるだってことを思い知らされたぜっ……!」

イカサマするまでもないっ……!見えてる牌にイカサマするバカはいないだろうがっ……!

ベチンッ

二枚目 四萬

120: 2010/07/26(月) 08:15:32.28 ID:QUgeoWSlO
安永「ドラ八……(まさか傀の野郎わかってて振り込んだのか……?)」

組長「ありえないっ……そ、そんなあがりは無効だっ……!ほらっ……リーチ宣言などしていないっ……!いくら横に倒してようが……」

原田「テメェも口を聞けなくしてやろうかっ……!?」

組長「ひぃっ…」

原田「黙ってろ…負けとか勝ちとかじゃねぇ……この一牌には赤木の全てが詰まってやがるんだっ……それを邪魔しようもんなら俺が……この原田克美が許さねぇ……!!!」

天「ありがとよ……原田……ひろ……」

ひろゆき「天さん……最後の一牌ですっ……」

天「ああ……!」

121: 2010/07/26(月) 08:20:38.89 ID:QUgeoWSlO
赤木……お前は俺達と出会う前にも沢山沢山氏線を潜って来たんだろうな……。

今はいないその戦友達の分も代表して俺がめくらせてもらうぜっ……赤木しげる最後の闘牌……その勝負を決める一枚をっ……!

そうだ……!

赤木しげるっ……!

お前と言う人生はっ……!

こんなにまでもっ……!

天「おおおおおおおおおおおおおおおっ……!」

バチンッ!

三枚目 四萬

輝いている……!


ああ……俺の暗刻(人生)はそこにある……

これが本当の赤木しげるの四暗刻地獄まち────

124: 2010/07/26(月) 08:30:16.63 ID:QUgeoWSlO
ひろゆき「やった……!やりましたよ赤木さんっ……!」

原田「さすが赤木だぜっ……全くよぉっ……!」

天「あんたって人は最高だっ……!」

組長「バカな……」

安永「リーチ三暗刻ドラ12……数えで親の48000……あっちの逆転勝ちだな」

安永「こんな麻雀見せられちゃ納得するしかないな……赤木しげると言う男がいかに天に愛されていたのかと言うことを……」

安永「(傀……何でお前は……)」

その謎は傀の手牌を見て解決した。

安永「(あの野郎つくづく御無礼な奴だぜ……)」

1919一九東南西北白発中

パタンッ……その手は安永以外誰にも見られることなく閉じられた。
傀はこれから先も生き続けるだろう……人鬼として。

126: 2010/07/26(月) 08:34:58.69 ID:QUgeoWSlO
赤木「……」

ひろゆき「赤木……さん……?」

突っ伏した様に卓に体を預けたまま動かない赤木

原田「おい……嘘だろ……?赤木……?」

嫁1「赤木さんね……もう長くないってお医者さんからも言われてて……でも……駄目だよって言っても何回も……何回も……コンコン……コンコン……って……うぅっ……」

天「赤木……!氏ぬな……赤木ぃっ……!氏ぬなぁっ……!」

赤木「……」

天「俺の為に生きてくれよっ……赤木ぃっ……!」


眠ったように安らかな顔だった。
まるでこの時の為だけに生きていたかの様な……そんな赤木らしい最後だった。

130: 2010/07/26(月) 08:39:40.94 ID:QUgeoWSlO
手を離そう……

生まれ落ち……

気が付いたら……

手にしていた……

この赤木しげるという幻想……

意識……

手を離そう……

もうそれからも……!

今生の最後の別れは他人に告げることでなく……告げられることでもなく……

俺が……俺自身に伝える最後の言葉……そうだ……そう……完成だ……!

多分……人間は氏んで完成する……俺はもう…俺自身ですらなくていいんだ……

離れる……俺は俺から……!

131: 2010/07/26(月) 08:42:11.51 ID:QUgeoWSlO
風っ……!

なんだ……?

この風は……しかし……なんていい風なんだ……!

散ってゆく……俺もあの葉といっしょだ……!

あ……消える…消えるな…!

そうか…これが氏か……よし…行けっ……!

放たれろっ……!

飛散しろっ

赤木しげる……!

132: 2010/07/26(月) 08:49:08.72 ID:QUgeoWSlO
これからだろ……赤木……!

まだ謝ることいっぱいあるんだよ……!


旧友の声が聞こえる。

この声はきっと聞こえないだろう……けれど言っておきたかった……

ありがとよ……天

あの時から生きたこの数年……俺にはなかった家族の温かみ……しっかりともらったぜ……

途中からは喧嘩やなんやらしたが……家族なら喧嘩もするだろうに……気にするな……

天よ……俺はあの時氏んでいたら無念だと……思ってたかもしれない

だが今は無念だなんてひとっかけらも思っていない……気持ちよく逝けるぜ……

ありがとよ……天

コン……コン……

天「赤木……!?赤木……!?」

享年五十六歳

赤木しげる 

永眠…。

133: 2010/07/26(月) 08:52:12.08 ID:QUgeoWSlO
───────

傀「御無礼、満貫です」

安永「相変わらず強いな~傀は」

傀「……」コロコロ

安永「ん?その石なんだ?」

傀「お守りですよ……」

─────────


135: 2010/07/26(月) 08:57:59.57 ID:QUgeoWSlO
───赤木しげるの墓───

天「あ~あ~あ~もう……また削られてやがる……」

立てられた墓は周りを削られて見るも無惨な状態になっていた。

ひろゆき「あの赤木しげるの墓ですからね……ご利益あると思ってるんでしょう……みんな赤木さんの背中を見てるんですよ……氏んでしまっても……」

天「まあ……赤木なら氏んだ後の墓のことなどこだわらねぇだろ……なあ!」

天「みんな好きなんだ……お前が…!」

136: 2010/07/26(月) 09:04:25.70 ID:QUgeoWSlO
───────

ひろゆき「天さん先行ってますよ~?」

天「おぉ……」

天「……」

天「赤木……時々思うんだ……あの時俺が止めずにお前が氏んだ方が良かったんじゃないかってさ……なら余計な迷惑かけずにすんだって……」

天「なあ赤木……お前はどうだったんだ……?少しの間生きれて……楽しかったか…?」

天「って……答えるわけないか……」

天がそう言って向きを変え歩いて行く時だった。

コロッコロ……

天「あ……?石……?砕けかかってたのかな……?」

天「……もってけってことか……?赤木……」

天「ありがとよ……遠慮なくもらってくぜ……じゃあな……また来るからよ」

赤木しげる……その男の名は誰もが忘れないだろう
人々の心の中に……彼は忘れられない傷をつけ回っていたのだから

おわり

137: 2010/07/26(月) 09:09:02.48 ID:QUgeoWSlO
終わりです

最後はやっぱり18巻で補完して欲しいですね

まるパクりもあれなんでちょっと変えましたが蛇促でした

傀ちょっとしか読んだことないんですけど絶対こんなことしないってわかりますwwww
ただ赤木に敬意を払った……って感じに思ってくれたら助かります
どっちが強いとか弱いとかはないんで

意外と長くなった
色々間違いあったけど多めに見てください

赤木もアカギもやはり最高ですね

↓以後、アカギの名言集

140: 2010/07/26(月) 10:26:36.32 ID:/Y45C57k0

引用元: 天「もし、赤木が生きる道を選んでいたなら」