140: 2012/08/08(水) 23:46:47.99 ID:EWIoCi64o





前話はこちら





伊織(私が春香の手によって『スタンド使い』にされてから…)

伊織(数日が…経った)

あずさ「伊織ちゃん、おはよう~」

伊織「おはよう。あずさが私より先に来てるなんて珍しいわね」

美希「デコちゃーん、ミキのおにぎり知らない? ここに置いといたんだけど」

伊織「知らないわよそんなの。それと、デコちゃん言うな!」

伊織(なんて言うか…私が心配していたような出来事は何もなく、みんなの態度も拍子抜けするくらいいつものままだった)

伊織(この中のほとんどが『スタンド使い』だなんて…とても信じられない)

春香「おはよー!」

伊織「…っ!」ビクッ

春香「あれ、どうしたの伊織? おはよう!」

伊織「………」

伊織「ええ、おはよう春香」

伊織(春香もまた…以前と変わらぬように私に接してくる。少なくとも表面上は…)

262: 2012/08/29(水) 22:18:28.65 ID:VK/oZD99o
伊織「ねぇ真、聞きたいことがあるんだけど」

真「何? 後にしてくれないか」

伊織「そう言わずに…あんま聞かれたくない事だから小声でね」ズイッ

真「おい、あまりくっつくなよ…」

伊織「真、あんた…私を本気で攻撃してきてたけど…」

真「………」

伊織「あんたの『ストレイング・マインド』…狙ったのは私の腕とか足だったけど、もし当たってたらどうするつもりだったのよ?」

伊織「たぶん、一発でブッ飛ばされてたでしょうね…片腕失っちゃ商売上がったりなんだけど」

真「そのことか…」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

141: 2012/08/08(水) 23:54:56.71 ID:EWIoCi64o
真美「ピヨちゃーん、ここのボスが倒せないよー! 攻略法教えてー」

小鳥「うぇぇ…ごめん、ちょっと後にして…徹夜でねむい…」ガクゥ

響「うわっ、ピヨ子が倒れたぞ!」

伊織(事務所は何一つ変わっていない。少し違和感はあるけれど、私がスタンド使いになっても以前と同じように動いている)

伊織(こうもいつも通りだと、あの出来事自体が何かの間違いなんじゃないかと思いたくなるわね)

伊織(だけど…)チラ…

春香「………」

ドドドドド

伊織「………」

春香「………」ジ…

ドドドドドドドド

伊織(監視… ……)

伊織(されている…春香に…)

春香(流石に、こんなところで堂々と手は出してこないみたいだけど)

伊織(あの顔…『伊織なんていつでも始末できる』…そういう顔をしてるわね)

143: 2012/08/09(木) 00:03:13.33 ID:ePOZwSA+o
律子「春香」

春香「はい? 律子さん?」

律子「もうすぐ仕事でしょう? 送ってくわよ」ガチャ

春香「あ、はい。お願いします!」タッ

バタン!

伊織「ふぅ…」

伊織(春香は今や押しも押されもせぬ有名アイドル。スケジュールはギチギチ…)

伊織(それに、敵対者は私の他にもあと『2人』いる)

伊織(今は私の相手をしている暇なんてないんでしょうね)

伊織(でも、春香も納得はしていないでしょう。スタンドもろくに使えない私を一方的にいたぶって…その上逃げられたんじゃ…)

伊織(いずれ、仕掛けてくるはず…)

伊織(とりあえず、遅くまで事務所に残るのはやめておいた方がいいか…)

144: 2012/08/09(木) 00:09:03.85 ID:ePOZwSA+o
やよい「伊織ちゃん!」

伊織「あら、やよい。どうしたの?」

やよい「えっと、今日、弟のお誕生日パーティーをやるんだけど…」

伊織「へぇ、そうなの?」

やよい「せっかくだし伊織ちゃんにも来てほしいかなって」

ゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

伊織「やよい、他には誰か来るの?」

やよい「えっと、響さんと…千早さんと…」

伊織「あいつら…」

やよい「それと、春香さんも!」

伊織「!」

145: 2012/08/09(木) 00:15:47.62 ID:ePOZwSA+o
やよい「伊織ちゃん、来てくれるかな…?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

伊織「い… ………」

伊織「行けないわ。今日の夜は、予定があるのよ」

やよい「そっかー…」シュン

伊織「ごめんなさい、やよい」

やよい「ううん、予定があるなら仕方ないよね…」

やよい「それじゃ、今日も頑張ろうね!」

伊織「ええ」

トタトタ

伊織(やよいが私を騙すとは思えないけど…)

伊織(万が一ということもある…春香が来る以上、安全とは思えないわ…)

146: 2012/08/09(木) 00:21:02.58 ID:ePOZwSA+o
ザ…

真「あれ? 伊織、どこ行くのさ」

伊織「ちょっと、外の空気を吸ってくるわ」ガチャ

バタン

伊織「………」

伊織(春香を…)

伊織(春香を倒さなくては…)

伊織(春香を倒さなくては、私は一生春香の影に怯えて生きなくてはならなくなる! そんなのは嫌ッ!)

伊織(あいつのせいで、私は事務所の仲間をも疑わなければいけない…こんなの、耐えられないわ!)

伊織(だけど、私は一人…それで春香を倒す…できるの?)

伊織(…矢を壊そうとしている『2人』…できれば、協力して春香を倒したいけど…)

伊織(誰が『敵』で誰が『味方』なのかもわからない…)

伊織(春香の側は、春香を入れれば『8人』…下手に誰かに話しかければ、その中に当たってその場で始末されてしまうかもしれないわ)

147: 2012/08/09(木) 00:27:41.20 ID:ePOZwSA+o
伊織(まず、さっき話しかけてきたやよい)

伊織(敵とは思いたくないけど、やよいは何も疑わず仲間に加わるタイプね…)

伊織(あずさもそうかしら? いや、意外とそういうところはしっかりしている気もする…)

伊織(うーん…考えれば考えるほどワケわかんなくなってくるわね…)

伊織(待てよ…)

伊織(春香は、スタンド能力を『アイドルとしての才能』と言っていた)

伊織(その話が本当かどうかはともかく…春香がそう信じているということは、アイドルじゃない人間は『スタンド使い』ではないということ!)

伊織(小鳥は経歴が結構謎だし、律子はアイドルやってた時期があるから可能性はゼロじゃないにしても…)

伊織(少なくともプロデューサーは春香の仲間ではない!)

伊織「あーっ、だからなんなのよ~っ…! スタンド使いじゃないなら何の役にも立たないじゃない…」

148: 2012/08/09(木) 00:34:30.59 ID:ePOZwSA+o
伊織(一人一人考えるのはやめましょう。『春香の仲間にならないであろう人物』を考えた方が早そうだわ)

伊織(『スタンド使い』になり、春香に誘われた上で『矢を壊した方がいい』と言うようなのは…)

伊織(真、貴音、律子…可能性があるとしたらこのあたりかしら?)

伊織(律子は…あの日、事務所にいたにも関わらず、私達のいざこざに対し無反応だった)

伊織(春香の『聴覚操作』にやられていた可能性もあるけど…もしかしたら、もう…)

伊織(でも、真と貴音で断定できるわけでもないわ。そもそも、この中にいるとも限らないし…)

伊織(………)

伊織「あーっ、もう!」

伊織(考えるだけ時間の無駄! どうせ周りは敵だらけなのよ!)

伊織(だったらリスクを冒してでも動かなきゃ、最終的にやられるだけ!)

伊織(仲間を増やせれば儲けもの、春香の仲間に当たったら…)

伊織(返り討ちにしてやるわ! 春香の戦力を一人でも減らすッ!)

149: 2012/08/09(木) 00:41:48.91 ID:ePOZwSA+o
伊織(私の『スタンド』…)

モクモクモク

伊織(この『煙』のスタンド、練習して少しは使いこなせるようになった)

伊織(できることと言えば…)

…モクモクモク

ググ…

グオン!

伊織(昨日やったみたいに、ものを押したり引いたり)

伊織(それと…)

ガシッ

ヒュン!

伊織(掴んで投げるってことはできる)

伊織(『高校球児』よりはいい球投げてるんじゃあないかしら? よくわかんないけど)

150: 2012/08/09(木) 00:42:44.05 ID:ePOZwSA+o
おっと、まちがい

>伊織(昨日やったみたいに、ものを押したり引いたり)

伊織(この前やったみたいに、ものを押したり引いたり)

151: 2012/08/09(木) 00:52:03.65 ID:ePOZwSA+o
伊織(でも…)

ドォ!

ボフッ!

モクモク…

伊織(何かを殴ったりすること…これは、『不可能』…煙をぶつけた瞬間、スタンドは散ってしまう)

伊織(そして、『距離』…)

スゥゥゥーッ…

伊織(50mくらいは届く。かなりの『遠距離型』のようね)

伊織(でも、遠ざかれば遠ざかるほど…)

グ…

シン…

伊織(『パワー』も『スピード』も『正確さ』も落ちる…)

伊織(射程距離ギリギリでは本当に目くらまし程度にしか使えないわね…実際に使うとなると20mから30mくらいまでが限度かしら…)

伊織(10m以内なら、結構な『パワー』が出るわ。また春香が襲ってきても、パワーはこっちの方が上)

伊織(逃げる…だけなら、確実にできる…はず。戦うとなると、あの『五感支配』…ただでは済まないわね)

伊織(私が使えるのはこの程度。これで、どうにかするしかないか)

152: 2012/08/09(木) 01:00:09.35 ID:ePOZwSA+o
伊織「………」ガチャ

亜美「あ、いおりんおかえりー」

伊織「ただいま…」

伊織(今事務所にいるのは…やよい、真、雪歩、千早、美希、あずさ、亜美、真美、小鳥の9人…)

伊織(やよいと千早はパーティーがあるから駄目ね…まぁ、誰に話しかけるかなんて決まっているけど)

伊織「真」

真「ん?」

美希「あ、デコちゃんなの」

雪歩「伊織ちゃん、どうしたの?」

伊織「ちょっと真と話したいことがあるんだけど。来てもらっていいかしら?」

真「え? ここで話しちゃ駄目なのか?」

伊織「駄目よ、ちょっと大事なことなの」

美希「まさか…デコちゃん愛の告白?」

雪歩「え、そうなの!?」

伊織「違うわよ! あんた達と一緒にしないでちょうだい!」

美希「ちょっとしたジョーダンなの…」

真「ま、まぁ…ボクは構わないけど…」

雪歩「ええっ!? 真ちゃん、伊織ちゃんと付き合うのっ!?」

真「いや、そうじゃなくて…」

153: 2012/08/09(木) 01:10:44.77 ID:ePOZwSA+o
真「それで、話って何?」

伊織「春香のことよ」

真「春香…?」

伊織「テレビにグラビアに…大活躍でしょ。この伊織ちゃんを差し置いてあの活躍っぷりはちょっと生意気だわ」

真「あ、ああ…」

真「最近、凄いよね。ボクも負けてられないや」

伊織「そうよね、このまま負けっぱなしじゃ悔しいわ」

伊織(………)

モクモク…

真「!」

伊織(『煙のスタンド』…やっぱり、真も『見える』…みたいね…)

154: 2012/08/09(木) 01:20:25.55 ID:ePOZwSA+o
伊織「それで…」

伊織「春香は今日の夜、やよいの家のパーティーに出るみたいなのよ」

伊織「だからその間に…二人で春香を打ち負かすにはどうしたらいいか話し合いたいんだけど…」

伊織「来てくれるかしら?」

真「………」

真「みんながいなくなるまで…事務所に残ってればいいのかな…?」

伊織「ええ、そうね」

伊織「鍵をかけるまで律子かプロデューサーか小鳥の誰かしらが残るだろうから、事務所のどこかに隠れていましょ」

真「…わかった」

伊織(…これで、とりあえず真と二人で話せる)

伊織(話し合うにしても、戦うことになるにしても、二人きりの方が都合がいいわ)

伊織(戦うことになったら…大丈夫よ、この『スタンド』は強い。この伊織ちゃんのスタンドなんだから)

155: 2012/08/09(木) 01:23:52.58 ID:ePOZwSA+o
小鳥「………」キョロキョロ

小鳥「もう、誰もいないわね? 電気も消して…これでよしっと」

ガチャッ

………

……



パチッ!

伊織「ふぅ…やれやれだわ、暗い中でじっとしてるのって冷や汗出るわね」

真「伊織、電気つけちゃまずいんじゃあないか…?」

伊織「真っ暗な中で話し合いするわけ? 嫌よ私は」

伊織「小鳥が行ってからしばらく経ってるし大丈夫でしょ」

真「そうかなぁ…」

伊織「何か飲む? 冷蔵庫に入ってるものだけだけど」

真「うーん…水でいいや」

伊織「そう。台所に紙コップがあるから自分で汲んでちょうだい」

真「あれ、伊織が入れてくれるんじゃないのか?」

156: 2012/08/09(木) 01:25:37.21 ID:ePOZwSA+o
真「それで、話したいこと…」

真「春香のことだったっけ?」

伊織「…その前に一つ確認しておきたいんだけど」

伊織「真、あんた『スタンド使い』よね? 春香に『弓と矢』で貫かれて…発現した」

真「ああ、そうだ。あの『煙』…伊織もそうなんだよね」

伊織「じゃあ、どうして私がこうやってあんたを呼んだのかもわかるわよね?」

真「まぁ…ね」

伊織「まどろっこしいのは嫌いなんで単刀直入に聞くわ。あんた、春香の『敵』? 『味方』?」

真「………」

真「伊織はどっちなのさ?」

伊織「質問を質問で返すってのは感心しないわね。でも、ま…こっちから答える必要はあるか」

伊織「私は春香の『敵』よ」

真「………」

伊織「事務所のメンバーとしては今でも『仲間』だとは思っているけど…あいつのやっていることは許せないわ」

真「そっか…そうだよなぁ…」

真「ボクも…同じ意見だよ、伊織」

伊織「!」

157: 2012/08/09(木) 01:28:36.53 ID:ePOZwSA+o
伊織「それじゃ真、あんたは…」

真「…春香は『弓と矢』を使って『スタンド使い』を増やしている」

真「それだけならまだいい」

伊織「………」

真「春香は『仲間』を集めている」

伊織「断る相手は『アイ・ウォント』で脅して無理矢理…ね」

真「そう…」

真「伊織も、『スタンド使い』になったってことは、春香の『アイ・ウォント』を見たってことだろう? よく逃げられたね…」

伊織「まぁ、この伊織ちゃんにかかればね」

伊織「でも…逃げるだけが精一杯だったわ。まともに使いこなせなかったとはいえ、戦うとなると…一人じゃあまず勝てないでしょうね」

真「だからボクに声をかけたのか? 仲間を増やすために」

伊織「ええ、春香には敵対者が『2人』いるらしいから。真がそうだと思ったんだけど…」

158: 2012/08/09(木) 01:29:34.72 ID:ePOZwSA+o
真「仲間を増やしたところで…」

真「無理だよ。何人集まろうと、春香の『アイ・ウォント』には勝てない」

伊織「例えそうだとしても…私は春香を倒すわ。倒さなければいけない!」

真「いや、倒されるのはキミの方だよ。ここで、ボクにね」

伊織「!」バッ

ヒュッ

パリィィン!!

伊織(何かが天井にぶつかって割れた…)

伊織「ちっ!!」ババッ

ガシャァァァ

真「へぇ…悪くない反応だね。流石は伊織だ」

伊織「真、あんたは…」

ドドドドド

真「まさか、そっちから接近してくるとは思わなかったけど…」

伊織(春香に敵対する『2人』は『矢を壊そうとしている』人物…)

真「伊織が春香を倒そうとしているなら…放っておくわけにはいかないな」

伊織(真は…違うわ…)

ドドドドドドドド

真「ここで『再起不能』(リタイア)してもらうよ、伊織」

164: 2012/08/15(水) 22:10:22.80 ID:91In+P4Eo
真「さぁスタンドを出せ、伊織」

真「ボクは春香のように甘くはないよ」

伊織「…あんたが春香の方に付くなんて思わなかったわ、真」

真「ボクとしては、伊織がそっちにいることの方が意外だったけどね」

伊織「はっ、冗談…誰が好き好んで、あんな奴の仲間になるもんですか」

真「なんでそんなに拒むのさ」

伊織「春香と同じことを言うのね…」

真「春香は仲間としてやっていこうって、そう言ってるんだよ?」

伊織「『仲間』ですって? あんた気づかないの、真…」

伊織「私達を見る春香の視線は『仲間』を見る目じゃなかったわッ! 利用すべき道具、『家畜』を見るような目よッ!」

真「………」

165: 2012/08/15(水) 22:19:02.18 ID:91In+P4Eo
伊織「春香は許せない…そう言った時、同じ意見だって言ったわよね、あんた」

真「あれは…本心だよ」

伊織「へぇ…じゃあ、そう思いながらも春香に付いてるわけ? 本心をごまかしながら」

伊織「格好悪いわね、真」

真「伊織も体感しただろ? 春香のスタンド、『アイ・ウォント』を」

真「あれに勝てるスタンドなんて、存在しないよ」

真「ボク達はアイドル…自分だけの体じゃあないんだ。逆らわない方が身のためだろう」

伊織「あんたはそういう不可能にも立ち向かっていく勇気を持っている…そう思っていたけど。過大評価だったかしら?」

真「勇気だって? 勝ち目の全くない戦いに挑んでいくことが勇気なのか?」

真「そんなものは勇気とは言わんなァ~ッ、ノミと同類よォ~ッ!」

伊織「腐ってんじゃあないわよ、この愚図ッ!!」

166: 2012/08/15(水) 22:28:14.87 ID:91In+P4Eo
真「…ボクはキミを尊敬するよ、伊織」

伊織「は? なによ、いきなり」

真「春香の『アイ・ウォント』を体験しておきながらまだそこまで逆らう意志があるなんてね…」

伊織「………」

真「それとも、まだスタンドを使いこなせないから…使えるようになれば『勝てる』とか…そんなことを考えているのかい?」

伊織「どうせ、春香は倒さなきゃいけないわ。なら同じことよ」

真「…春香は倒さなきゃいけない…ボクだって、そうは思っていたさ」

真「だけどボクの攻撃は一発も春香には届かず、戦意を折られ、希望を折られ、逃げることもできず…」

伊織「………」

真「ボクは春香に服従した。そうせざるを得なかった」

真「春香は強すぎる! そして、何を考えているのかもわからない!」

真「ボクは…春香が怖い…!!」

167: 2012/08/15(水) 22:40:30.45 ID:91In+P4Eo
伊織「何を言うかと思えば…」

伊織「倒さなきゃいけないと…そう思っていた、ですって?」

伊織「でも、実際あんたはそうやって春香の『味方』になってるんじゃない」

伊織「結局、あんたは春香にビビって屈したってだけでしょ? 情けないわね」

真「そうかもね」

伊織「真…」

真「…それでも、春香を敵に回したくはない」

伊織「あんた…」

真「だから…」

ゴゴゴゴゴ

真「ここでキミを倒す」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

168: 2012/08/15(水) 22:51:05.83 ID:91In+P4Eo
伊織「倒す、ね…」

伊織「悪いけど…あんたに先手を打たせるほどのんびりしてないのよ、この伊織ちゃんはッ!」

真「なに?」

伊織「はっ!」ドシュゥゥゥ

真(これは…伊織のスタンド、話してる間にも投げるものを用意していたのか…?)

真「灰皿か!?」ヒュン

伊織(は、素手で叩き落とすつもり!? 無理よ、腕が折れ…)

パァァン!!

パラパラ

伊織「な!?」

伊織(真が右腕で殴った灰皿が…)

伊織(粉々に…砕け散った!?)

169: 2012/08/15(水) 22:57:06.29 ID:91In+P4Eo
真「能力はないようだな…ただ、投げてきただけか…」ピキピキピキ

伊織(あれは…)

伊織(真の右手が…何か、黒いものに覆われている…?)

真「結構勢いはあったが、ボクの方がパワーは上のようだね」

伊織「く…」ジリ…

ジャリ

伊織「!? …これは…」

伊織(さっき真が天井に投げた…なにこれ、紙コップ…の、『破片』…?)

伊織「これは、一体…その右手は…」

真「これがボクのスタンド、『ストレイング・マインド』だ」

真「その能力は、物質を『硬く』すること」

伊織「物質を『硬く』する…スタンドですって…」

真「それは、紙コップを『硬く』して割れるようにした」

真「そして今のは、『灰皿』をさらに『硬く』し…このスタンドの拳で、粉々にブッ壊した」ピキピキ

伊織(『硬く』した灰皿を砕いたって…何よ、それ…どういう『パワー』してるわけ…?)

170: 2012/08/15(水) 23:02:10.63 ID:91In+P4Eo
伊織「………」ジリ…

真「どうした伊織? さっきまで威勢がよかったのに、そんな逃げ腰でさ」

伊織「あんたのスタンド…」

伊織「あまり遠くには出せないようね…距離を取られると、攻撃手段がないんじゃないかしら?」

真「………」

真「ああ、確かに…ボクのスタンドは『超近距離型』だ。この腕の届く範囲までしか出すことはできない」

真「だけど…遠くに攻撃する手段はあるよ」サッ

伊織(印刷用紙…何をするつもり…?)

真「『硬さ』において、重要なのは質量だ。例えば、金庫のドアのように分厚いものなら、『硬く』すればより壊れなくなる」

真「だけど、逆にこういうペラッペラな紙なら…」パッ

ググ…

真「オラァッ!!」ドォッ

パリィィィン

ヒュン!

伊織「!」バッ

伊織「うぐっ!!」サクッ

真「簡単に割れる。冬の朝、水たまりに張った氷のようにね」

真「そして、『薄い』ものは刺さりやすい。ただの紙も、『硬く』すればナイフよりも危険なものになる」

171: 2012/08/15(水) 23:11:46.50 ID:91In+P4Eo
伊織「この…真…」ググッ

ドロ…

伊織「よくもこの伊織ちゃんの肌に傷をつけてくれたわね…」

真「おいおい、抜かない方がいいよ伊織。血が出てるぞ」

伊織「うっさい! 返すわよ、あんたに!」ドシュゥ!

真「そんなものが、通用するか!」

バキャス! バシィ!

真「それで終わりか、いお…」

モクモクモク…

真「…!」

真(この『煙のスタンド』、一カ所に固めることもできるのか…)

真(『スピード』が上がっている…ボクが紙の破片を撃ち落としている間に、目の前まで…)

伊織「まさか。んなわけないでしょ、食らっときなさい!」

真(だけど、ボクのスタンドに比べれば全然遅い)

真「オラァッ!!」ドォ

伊織(え!? 速…)

ボフン!!

伊織「ああっ!」

伊織(スピードも速い! こっちは『煙』を集中して『パワー』や『スピード』も上がっているのに…)

伊織(まぁ、このスタンドは元々殴れないから…今のは注意を引かせて、距離をとることが目的だけど)

伊織(とにかく、近距離戦じゃあ勝ち目はなさそうね…!)

172: 2012/08/15(水) 23:18:15.70 ID:91In+P4Eo
真「………」

真「『煙』のスタンド… ………」

真「スタンドに攻撃が当たらないのか…ボクの『ストレイング・マインド』も、気体を『硬く』することはできない」

真「不用意にスタンドを出してきたかと思ったら、こういうことか?」

伊織「は…? 何の話よ?」

真「知らないのか? スタンドへのダメージは本体に帰ってくるんだ」

真「スタンドが攻撃を受ければ傷になるし、スタンドの腕を切り飛ばされれば、同じように本体の腕も飛んでいく…」

伊織「え…な、なんですって…?」

真「まぁ、そのスタンドなら攻撃を受けることもないだろうし、無理もないか…」

伊織「じゃあ、さっきの攻撃…」

真「ああ。仮に、伊織のスタンドがその『煙』のスタンドでなかったなら、ボクの『ストレイング・マインド』のパワーと能力…」

真「もう、伊織の右手はなかったはずだ」

伊織「!!」ゾクゥ

173: 2012/08/15(水) 23:19:40.83 ID:91In+P4Eo
伊織(べ…別に、ビビる必要なんてないわ…)

伊織「そう…ってことは、私のスタンドは他にはある弱点がないってことよね」

真「そうだね。まぁ、『気体』に攻撃を加えられるスタンドもあるかもしれないが」

伊織「少なくとも、あんたのスタンドには攻撃する手段はないでしょ?」

真「あぁ…ボクにこのスタンドを捕まえる手段はない」

伊織「………」

真「つまり…ボクは本体であるキミを直接ぶっ叩くしかないってことさ」

ゴゴゴゴ

伊織「そう…」

伊織「だったら、私はあんたが近づいてくる前にぶっ倒せばいいわけね」ズズズズ…

ゴゴゴゴゴゴ

真「なっ…!」

伊織「そこら辺に転がってるもん…片っ端から、拾わせてもらったわ」

真「おいおい…一体いくつのものを持てるんだ、そのスタンドは!」

真(『煙』だから、形は関係ない! だから、好きな形状にしてこういうことができるのか…)

伊織「あんたのスタンド…『スピード』が速いと言っても、この数…避けられるかしら? それとも、さっきみたいに撃ち落としてみる?」

伊織「食らえ、真ッ!!」

ドシュゥ! バシュゥ! ドォォォ!!

174: 2012/08/15(水) 23:20:32.44 ID:91In+P4Eo
真「厄介だな、そのスタンドは…春香が取り逃がしたってのもわかるよ…」

伊織「はっ、何よ? 今更気づいたわけ?」

真「でも、相手が悪かったね」

ピキピキピキピキ

伊織「!」

伊織(真の全身が黒い鎧に覆われていく…)

伊織(まるでヒーローショーに出てくる、戦隊もののヒーローみたいな…)

真「『ストレイング・マインド』」

バキ!

ドッ!! ガシャァァ

カラン

伊織(『避けたり』『弾いたり』…そんなことすらしない…!)

伊織(しかも、真のスタンドには…傷一つついていない!!)

真「『硬くする』能力を生み出す…ボクのスタンドはこの世の何よりも『硬い』」

真「傷をつけることができる物質は、ない!」

伊織(右腕だけじゃあない…身に纏う『スタンド』…ですって!?)

175: 2012/08/15(水) 23:21:40.88 ID:91In+P4Eo
真「さぁ…覚悟しろ、伊織!」ダダダッ

伊織「ッ!」

伊織(真の動きが速い…! さっきは腕の動きだけだったけど…)

伊織(あのスーツ、ただ身に纏うだけじゃなく身体能力を上げる効果もあるのね…)

伊織「ちっ、こっちに来るんじゃあないわよッ!」

ボフッ!

真「ン!」グッ!

ググ…

伊織「残念だけど、それ以上は近づかせないわ…」

真「押し戻す気か…」ググ

伊織(真との距離は10mもない、これなら…)

176: 2012/08/15(水) 23:22:55.08 ID:91In+P4Eo
真「でも…」ググググ

伊織「うっ!?」グッ!

伊織(逆に…押し返される! 真の凄まじい『パワー』がスタンドを通じて伝わってくるわ…!!)

真「その程度の『パワー』でボクを止められると思っていたのか?」ググオ オ ォ ォ ォ

伊織(このスタンド…春香の『アイ・ウォント』よりも…圧倒的な『パワー』を持っている…!!)

真「オラァッ!!」ブオンッ

ブワッ!!

伊織「きゃあああっ!?」

伊織(『煙』がまた吹っ飛ばされた…こんなにもあっさりと!!)

真「ボクの『ストレイング・マインド』は…」

真「『超近距離型』のスタンドだ。こうして身に纏うのが射程距離の限度で、伊織のように離れたところまで動かしたりはできない」

真「けど、その分『パワー』と『スピード』は最強…接近戦なら、誰にも負けはしない!」

伊織(あらゆるものを『硬く』し、砕く『破壊力』…この世の何よりも硬いという『防御力』…)

伊織(『アイ・ウォント』とこの『煙』だけ見て、そういう特殊な能力を持っているだけだと思ってたけど…スタンドってこんなヤバいものなの…?)

伊織「だけど…こんなところで負けるわけにはいかないのよ、この伊織ちゃんはッ!!」

177: 2012/08/15(水) 23:25:04.63 ID:91In+P4Eo
スタンド名:『ストレイング・マインド』
本体:菊地 真
タイプ:近距離パワー型・装着系
破壊力:A スピード:A 射程距離:なし 能力射程:D(5m)
持続力:B 精密動作性:D 成長性:C
能力:黒いスーツを身に纏い、全身を守るとともに、高い身体能力をさらに引き出す真のスタンド。
スタンド自身の強力さの反面、射程距離は非常に狭く、身に纏う以上の距離を出すことはできない。
能力は触れたものを『硬く』すること。気体でなければ、紙だろうが水だろうが何だろうと『硬く』してしまえる。
『硬く』するということは『硬度』を上げることなので、一概に壊れにくくなるわけではなく、厚みのない物質ならば逆に壊れやすくなる。
打撃パワーに優れる真の『ストレイング・マインド』は、殴っただけであらゆるものを粉砕するだろう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

178: 2012/08/15(水) 23:37:24.53 ID:lrTstfuro
乙!面白い
ストレイング・マインドはホワイトアルバムと似てるな

179: 2012/08/16(木) 00:09:39.42 ID:hZrK1P0Lo
真ちゃんのスタンド////
硬くすることができるなんて////

196: 2012/08/24(金) 23:50:26.55 ID:WpHRYqxOo
伊織(春香の言葉…)

伊織(「スタンドは事故に見せかけて誰かを頃すことさえできる…」)

伊織(私はその言葉を、少し大げさだと思っていた)

伊織(春香の『アイ・ウォント』も、私の『煙のスタンド』も、人間よりは強いけど…そこまで言うほどの『パワー』はない)

伊織(スタンドはスタンド使い以外には見えないらしいから…それで言ってるんだと考えていた)

伊織(人間だって、その気になれば誰かを頃すことは…できるもの)

伊織(だから、スタンドは特別な力があるだけの…そういうものばかり思っていた…こいつを見るまでは…)

真「この腕で、キミに一撃叩き込む…」

真「それで終わりだ。一発で決着する」

ドドドドド

伊織(真のスタンド…『ストレイング・マインド』…)

伊織(常識外のパワーと高い殺傷力を持つ、正真正銘の凶器…!)

伊織(流石に、真に頃す気はないとは思うけれど)

伊織(もしも、間違って頭に食らってしまえば…一発でブチ割られて氏ぬ…!)

伊織(私にとっては、春香の『アイ・ウォント』よりもこっちの方がよっぽど恐ろしいわ…!!)

197: 2012/08/24(金) 23:59:02.53 ID:WpHRYqxOo
伊織(だけど…)

伊織(気持ちで負けてはいけない!)

真「ぐ!」グイ!

真「また、煙か…」ググ…

伊織(春香は、スタンドは精神のエネルギーだと言っていたわ)

伊織(気持ちで勝っていれば、真相手でも…きっと勝てるはずよ)

真「オラオラァ!!」

バヒュッ!

真「そのスタンドじゃ…ボクは止められないぞ、伊織!」

ガシャ! ガシャァ!

パラパラ…

伊織「………」

伊織「無理ね」クルッ

真「あっ!?」

ダッ

真「逃げるのか、伊織!」

伊織「うっさいわね、逃げて何が悪いのよ! あんたのスタンドと正面からやりあうなんてバカのやることだわ!」

伊織(戦うにしろ、この狭い事務所…真にとって圧倒的に有利!)

伊織(まずは拓けた場所に出た方が絶対にいい!)

伊織(幸い、こっちは玄関側…鍵を開ける必要はあるけど、ここは室内。余裕よ)

198: 2012/08/25(土) 00:07:40.63 ID:uqazEZL/o
伊織(まずはこの密室から出ること…せめて階段まで行ければ…)

真「………」ガシャガシャ

伊織(真のスピードと、この距離…行ける!)

伊織「よし!」ガチャ!

ガラガラ

伊織「ん?」チラ

伊織(なに、今の音…)

ゴオオオオオ…

伊織「何ィッ!」

伊織(し…仕切りが飛んできた!?)バッ

ドガシャァン!

伊織「く…」

ズゥン…

伊織「玄関が塞がれて…」

伊織「だけど、こんなもんすぐどかし…」モクモク…

ヒュッ

伊織「かっ…!?」ササッ

ドス! ビス!

伊織「か、傘が…刺さって…!」

真「これで…玄関からは逃げられない」

伊織(手元の部分まで食い込んでるわ…どうすればこうなるってのよ!)

伊織(私のスタンドじゃ、『ドアをブッ壊す』なんて無理…! 完全に塞がれてしまった…!)

伊織(滅茶苦茶やってくるわね、真の奴…!!)

199: 2012/08/25(土) 00:11:02.10 ID:uqazEZL/o
真「さぁ…次はどうするんだ?」

伊織「やっば…」

伊織(正面からは真、左は社長室…壁になってるわ)

伊織(となると、右の給湯室の方に逃げたいところだけど…)

真「この距離なら、逃がすことはないと思うけど?」ズ…

伊織(真も、きっとそう考えてる…でしょうね…)

伊織(左は駄目、右も駄目、正面も駄目…)

伊織(だったら…)

真「オラァッ!!」ドン

伊織「上よッ!」

ボヒュッ!

真「何!?」スカッ

クッギュゥゥゥゥーン

伊織「飛べた…!」スタッ

201: 2012/08/25(土) 00:12:43.10 ID:uqazEZL/o
バキィ!

真「ぐっ!? 腕が…」ググ…

伊織「はっ、自分で仕掛けた仕切りに突っ込むなんてざまあないわね」

伊織「そこで見てなさい、伊織ちゃんの脱出劇を!」

真「…そのスタンド、機動力はなかなかだね」

真「やっぱり、これくらいは通り抜けるか」

フ…

伊織「ん?」

フワ フワ

伊織「…これは…」

伊織(この、浮かんでいる…ガラスの球体みたいなものは…!)

真「たぶん、玄関を塞がれれば…伊織は窓を目指すだろうから…」グググ…

真「先に手を打たせてもらったよ」パキィ!

202: 2012/08/25(土) 00:17:54.35 ID:uqazEZL/o
フワ フワ フワ

伊織「『シャボン』…『玉』ッ!」

伊織(まずいッ! これも、スタンドで『硬く』しているとしたら…)

伊織(絶対に触れてはならないッ!)

真「触れなくても同じことだよ、伊織」

パチン

伊織「え…」

ピキ! パリパリパリィィン

伊織「ちょっ…!?」

真「別に、近づく必要もなかったな…」

真「シャボン玉の表面を、一部だけ『硬く』した。察しの通り、触れただけですぐ割れるし…」

真「そうでなくとも『硬く』していない部分は空気中で勝手に弾ける」

真「そしてこのシャボン玉、さっきの紙よりもさらに薄い。その破片は、ガラスのようによく突き刺さるよ」

203: 2012/08/25(土) 00:23:02.69 ID:uqazEZL/o
パラパラパラ

伊織「そう…」

フワ…

伊織「触れても、放っといても壊れるって言うなら…」

スゥゥーッ

ピタ…

真「シャボン玉を…『煙』で包み込んで…」

伊織「こっちから壊してやるわ」

パチン! パチン!

真(煙の中で次々と割られていく…破片も飛び散らない)

パラパラパラ

伊織「そのシャボン玉…こうして『煙』を私の回りに広げておけば…」

ドドド

伊織「防ぐのはそう難しいことじゃあないわ」

ドドドドドド

204: 2012/08/25(土) 00:34:38.14 ID:uqazEZL/o
伊織「何か別の手を考えた方がいいんじゃない? あんたの『遠距離攻撃』は私には通用しないわ」

真「そうかな…」

伊織「あんたの策…玄関を塞いだり、シャボン玉を罠として仕掛けたり…」

伊織「どっちも私には無駄だったわ! 私のスタンドの方が強い!」

真「シャボン玉を罠として仕掛けた…?」

真「伊織、ボクがそのためにこれを飛ばしているのかと思ったら…」

真「大間違いだよ」ス…

伊織「ん!」

伊織(さっきの紙のように、破片を飛ばす気ね…)

真「オラァ!!」

パリィ!!

伊織「そんなもん、止めて…」ブワッ

ズバ!

伊織「は!?」

伊織(貫通した!? よ、避け…)

205: 2012/08/25(土) 00:45:00.99 ID:uqazEZL/o
グサァ

伊織「あ…」

伊織「あああああああああああああ」ダラダラ

真「浮かんでいるものを『煙』が掴んで止める…それも想定のうちだ」

真「だけど、そのためにはそんな風に『煙』を薄く伸ばす必要がある…それじゃあ殴って勢いをつけた破片は、止められないだろう」

真「シャボン玉の散弾銃だ。キミのスタンドでも防げないよ」

伊織「だったら…!」

伊織(『煙』をまとめて、飛んできたのを掴めば…)

パチン

伊織「ぐっ!?」ヒュ

バババ

ドバァ

伊織(だ、駄目だ…掴み…きれない…)

サクゥ!

伊織「痛っ!」

伊織(まとめると、周囲に浮かんでいるシャボン玉の方が…)

伊織(この状態だと、掴める範囲も狭い…破片から身を守るのは難しいわ…)

206: 2012/08/25(土) 00:52:06.20 ID:uqazEZL/o
真「能力が続く範囲なら、この通り…これでも通用しないと?」

伊織(敵わない…近距離の破壊力でも、遠距離の攻撃でも…)

伊織(この貧弱な『煙』のスタンドじゃ、まともにやっても勝てやしない!)

真「降参しろ伊織。そうすれば、これ以上は何もしない」

伊織「………」

伊織「春香と…似たようなことを言うのね、あんた」

ス…

真「ん?」

ボッ

パリィィ

ドドドド

伊織(真の方にあるシャボン玉は新しい…勝手に割れることはない)

伊織(そして、方向も決まっている…奥の方にあるシャボン玉さえ割っていけば…)

グワシャァン

伊織(まとめていても、破片にやられることはない)

ドドドドドド

207: 2012/08/25(土) 00:55:58.62 ID:uqazEZL/o
真「おい…」

真「何のつもりだ、伊織? こっちに近づいてきて…」

伊織「このまま距離を保っていても、シャボン玉か、『硬化散弾銃』にやられるだけよ…」

伊織「だったら、こっちから仕掛けてやろうと思って…ね」

真「ボクに接近戦を挑むつもりか…? 三輪車でトラックに飛び込んでいくようなものだよ」

伊織「あんたの『パワー』はわかってる…んなもん、承知の上よ。『覚悟』したわ…」

真「『覚悟』した…だって? 無策のまま敵に近づいていく…」

真「それはただの『自棄』と言うんだ!」

真「オラオラオラオラ」

パキ! バキバキ

グアシャァン

ヒュン ヒュヒュン!

伊織「ちっ! この野郎、片っ端から…!」

真「この数! 掴みきれるか、伊織!!」

ヒュ!

パシ!

伊織「やってみなきゃ…」

ヒュヒュッ!!

パシィ

伊織「わからないわよ!」

208: 2012/08/25(土) 00:59:09.18 ID:uqazEZL/o
グッ!

伊織「く…」

伊織(『硬化散弾銃』を受け止めるにはこの密度じゃないと…)

パシィッ

伊織(だけど、やはり…掴める面積が…狭い!)

ググイッ!

伊織(よし、なんとか…)

真「これで終わりだと思ったかい?」

伊織「え?」

真「駄目押しだ」フワ…

伊織「なっ…!」

真「もう一発…食らえッ!!」

ドシュゥッ!!

伊織(駄目…もう掴める場所が…)バッ

キィィン!!

ガシャ! ガシャア!

伊織「んっ!?」

真「何!?」

伊織(撃ち落とした!? 私のスタンドは、殴ることはできないはず…)

伊織(………いや…)

伊織(私は防ぎきった、それが事実よ…それより…)

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「真…」

伊織「これで、あんたの目の前まで来た」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

209: 2012/08/25(土) 01:05:14.80 ID:uqazEZL/o
真「ああ…ボクの目の前」

真「そして、ボクの『ストレイング・マインド』射程距離内でもある」

伊織「………」

真「伊織…キミがやったのは、ただ自分の寿命を減らすだけの行為だ」

伊織「そうかしら?」

真「そうだよ…」ス

真「オラァッ!」ドォ

伊織「うおっと!」スル!

バタン!

真(倒れ込んで回避したか? だが!)

真「もうこれで避けられない! 氏ね、伊織ッ!!」グ…

伊織「誰が…避けられないですって?」

ボオッ

スゥゥゥ…

伊織「はずれ…」

ヒョイ…

バキィ!

真「え?」

真(移動した…)

真(転んだ体勢のまま、スタンドで引っ張ったのか…?)

伊織「この伊織ちゃんが…」

伊織「何の策もなしに飛び込んでいくと本気で思ったわけ?」

真(これか…)

真(伊織はこれで、春香の『触覚支配』から逃れたのか…!)

210: 2012/08/25(土) 01:09:12.08 ID:uqazEZL/o
真「だけど、それで…ボクもなんとかできると思ってるのかい」

真「『ストレイング・マインド』のスピード、忘れたわけじゃないよね?」グ…

伊織「………」

真「キミが、スタンドで自分を引っ張っているとわかれば…」ス…

グイッ!!

真「オラァ!」ブンッ

ザザァ!

真「!」

バキィィッ

真「く…」

伊織「にひひ…」

真「なんだ…」

真「どうして当たらない!? スピードはボクの方が速いってのに!」

211: 2012/08/25(土) 01:11:56.73 ID:uqazEZL/o
伊織「あんたのスタンド、確かに動くスピードは速いわ。かなりのものね」

伊織「でも、それは単にあんたが動く速さだけが上がっているだけ…判断し、攻撃をしかけるまでのスピードは人間並みよ」

真「はっ!?」

ウゥ…

真「これは…」

真(薄い『煙』が、ボクの周りを取り囲んで…)

伊織「煙の『動体センサー』よ」

伊織「あんたが『動こうとした』その瞬間…私の行動は既に決定している」

真「馬鹿な…! そんなこと、できるはずが…」

伊織「今やってるんだけど?」

真「ぐっ!」ドヒュ!

サササ

バキャァ!

伊織「ほーら、あんたの攻撃なんて寝てても避けられるわよ?」スゥ…

真「カ…」

真「カサカサと…ゴキブリみたいに…!」

伊織「ゴ、ゴキブリって…あんたには見えないわけ!? この優雅に舞う伊織ちゃんの姿が!」

真「地面を這っておいて、何が優雅だよ!」

伊織「ぐぬぬ…」

212: 2012/08/25(土) 01:16:16.01 ID:uqazEZL/o
真「オラァ!」

カササッ

バキ!

真「オラオラァ」

ヒュヒュゥ

バキャス!

真(当たら…ない…!)

伊織「あんたこの程度なの、真?」

伊織「これじゃ春香にビビるのも無理ないわね」

真「く…」カチン

真「だったら…」グググ…

伊織「!」

真「これならどうだッ!!」バヒュッ!

ボフッ!!

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」ズバババババババ

クギュン

真(ちっ! また上…!)

バキャ!

バキバキバキュン!!

ストッ

伊織「ほら、今のは優雅でしょ?」

ピシ!

真「ん?」

伊織「え?」

伊織(あ、さっきから真が外してる攻撃で…床が…)

ビキビキビキビキィ!!

伊織(割れた…のね…)

213: 2012/08/25(土) 01:18:29.47 ID:uqazEZL/o
ガッラァァァン

伊織「うおおおおおおおッ!」ヒュゥゥゥルルルル

真「伊織ッ!?」

ドス!

伊織「いったたた…」

伊織(ここは…2階か。机が並べてある)

伊織(765プロとは関係ないからあまり気にしていなかったけど、何かの事務所なのかしら)

伊織(真っ暗ね…上からの明かりでかろうじて見えるくらいだわ)

ヒュッ

ガシャン!!

伊織「っ!」ビクゥ!

真「これを…」ズ…

ゴゴゴゴゴ

真「狙っていたのか、伊織」

真「二階には『ロック』をかけていないし、シャボン玉もないからね…」

伊織(やっぱり、降りてきたわね…!)

ゴゴゴゴゴゴ

真「だけど、逃がさない…」

真「ここで『再起不能』(リタイア)させて、春香に突き出してやる…!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

214: 2012/08/25(土) 01:20:34.81 ID:uqazEZL/o
伊織「………」タタタ

ガチャ! ガチャガチャ!

伊織(机の上にゴチャゴチャと色々置いてあるわ…落ちる…)

真「そこか!」ゴォッ

伊織「…!」サッ

バキャッ!!

伊織(………)

スス…

真「逃がすか!!」ガシャガシャ

伊織「………」ガタタッ

伊織(あいつはこんな障害物なんてものともしない…すぐ追いつかれる…)

真「寝てても避けられるだって…? 寝言は寝て言うことだ!」

真「オラァッ!!」ドシュ

伊織「………」サササッ

バキ!!

パラパラ…

真「ちっ!」ガシャ!

伊織「………」

伊織(相変わらず滅茶苦茶やるわね、この野郎ッ…!)

215: 2012/08/25(土) 01:21:39.46 ID:uqazEZL/o
真「いつまでもちょこまかと、逃げられると思うな…!」

バキィィ!

真「オラァ!」バキッ

伊織(『硬化…散弾銃』!)

ズドドドド

バキィィィィィィィィ

伊織「………」フラ…

ピタ…

真「もう鬼ごっこは終わりか、伊織?」

伊織「………」

真「結構手こずらせてくれたけど…その程度で春香に逆らおうだなんて、どの道無理だったな」

真「オラオラァ!」シュババ

ズド! ズム!

バッキャァァーン

真「…伊織…」

スゥ…

真「…!? これは…」

伊織「あんたのスタンド、マジにヘヴィね…」

ドドドドドド

真「何だって…!?」クル

伊織「壁が粉々…あんた、本当に手加減する気あるわけ?」

伊織「人間に向けるもんじゃないわよ、それ」

ドドドドドドドドド

216: 2012/08/25(土) 01:22:37.82 ID:uqazEZL/o
真「反対側…窓際に…」

真「どうしてそんなところにいるんだ…伊織…!?」

真「『瞬間移動』…でも、したってのか!?」

伊織「そんな能力、ないわよ」

伊織「私が使ったのは、これ。暗くて見えないだろうからちゃんと明かりの下に出してあげるわ」

モクモク…

伊織「感謝しなさいよね」

真「こ…これは…」

グググ…

バァーン

真「『煙』でできた…伊織の人形ッ!!」

伊織「ええ。煙を…私くらいの大きさにして囮にしたのよ」

伊織「物を掴んで落とせば、音くらい出る。あんたの動きに合わせて、足音を意識させないようにさせるのはちょっとだけ苦労したわ」

伊織「ま、春香の『五感支配』に比べれば粗末なもんだけど」

伊織「それでも、暗かったら案外騙せるものね」

217: 2012/08/25(土) 01:23:20.27 ID:uqazEZL/o
真「い…伊織…」

真「何故、今自分の場所を明かすような真似をした…一体…何を企んでいる…?」

伊織「今、済んだわ。真…あんた、自分が何やったのかわかってる?」

ミシッ! ピシ パキパキパキ

真「この音は…」

伊織「あんたが私の操作する『煙』を殴った箇所…」

伊織「全部ビルの壁…柱の部分よ。四カ所も壊れている…もう危ないわ」ガラッ

真「崩れ…るのか…?」

伊織「窓からでも階段でもどっちでもいいけど…あんたも早く逃げた方がいいんじゃない?」ヒュォォォ…

真「うおおおおおおおおおおお!!」ダッ

伊織「まぁ…遅いか」ヒョイ

ミシ…

ガラガラガラ

ドギャッシャァァーン!!

218: 2012/08/25(土) 01:24:09.90 ID:uqazEZL/o
伊織「おっと」スゥーッ

ボフッ!!

伊織「着地は成功、二階程度なら問題ないわね。さて、と…」

伊織「あんたのスタンド…これしきでくたばったわけじゃないでしょ? 真」

伊織「さっさとその瓦礫の下から這い上がってきなさい」

ゴゴゴゴゴゴ

真「イカれ…」

ガシャァ!!

真「てるのか…?」

真「ボクを倒すために事務所をビルごとぶっ壊すだなんて…そこまでやるか、普通…?」

ガラ…

伊織「あら、壊したのはあんたじゃない。責任の押しつけはやめてちょうだい」

真「窓から飛び降りて…スタンドで自分の体を受け止めたのか」

伊織(この様子じゃ、ダメージは…そこそこってとこね)

伊織「ビル一つ崩してこれか…やれやれだわ」

219: 2012/08/25(土) 01:25:58.02 ID:uqazEZL/o
真「少し、頭も冷えた…もう小細工は終わりだろう?」

真「ボクに勝てるのか、その『煙』のスタンドで」

ピシ

伊織「『スモーキー・スリル』」

真「…?」

伊織「『煙のスタンド』じゃあ味気ないわ」

伊織「あんたの『ストレイング・マインド』とか…春香の『アイ・ウォント』みたいに…」

伊織「この伊織ちゃんのスタンドにも名前をつけるべきよね」

伊織「だから、今名付けた。私のスタンドの『名前』」

伊織「いい? 『スモーキー・スリル』よ」

真「『スモーキー・スリル』…」

伊織「『理解』したわ。私の進むべき『道』…」

伊織「真、まずは…あんたを倒すッ!!」

237: 2012/08/26(日) 01:29:02.32 ID:YJUzlsjpo
ゴゴゴゴ

真「ボクを…」

真「『倒す』だって…? 伊織…」

伊織「そうよ」

真「わかってるのか? 『ストレイング・マインド』は『最硬』のスタンド」

伊織「………」

真「そして、『スタンドはスタンド』でしか倒せない」

真「衝撃は受けたけど…さっきのビル倒壊だって、正直言って…決定打にはなっていない」

真「キミは、ただの一発も決定打を与えてはいないんだ」

真「それなのに、ボクを倒す…? できるわけがない、不可能だよ」

ゴゴゴゴゴゴ

238: 2012/08/26(日) 01:29:56.88 ID:YJUzlsjpo
伊織「『倒せる』か…『倒せない』か、なんてどうでもいいのよ、この伊織ちゃんには」

伊織「『倒す』! そして…『勝利する』! それだけよ…それが、私の『道』!」

伊織「最初から不可能だなんて決めてかかるなんて、バカのやることよ!」

真「その意気は買ってやりたいけどね」

伊織「『スモーキー・スリル』」

ズ

真「………」

真(伊織のスタンドが…)

ズズズ

真(不定形の『煙』から、人型に変わっていく…)

ピョコ

伊織「どう?」

真「その耳は…」

真「兎のイメージかい? 白い…『煙』の兎…」

伊織「いけてるでしょ」

真「見た目が変わったからといって…」

真「能力が変化するわけでもないだろ」

伊織「あら、見た目って大事よ? あんたもアイドルならわかるでしょ」

239: 2012/08/26(日) 01:30:59.35 ID:YJUzlsjpo
真「で、その形…」

真「ボクと『殴り合い』でもしたいのか?」

伊織「そう言ったら?」フ…

真「………」ス…

伊織「行け!」ボン

真「オラァ!」ドオ

ブオフゥッ!!

伊織「………」

真「………」

真「集めたって、『煙』は『煙』…」

真「そもそも…そのスタンドで、ボクを殴ることはできないようだね」

真「できるのなら、『硬化散弾銃』だってわざわざ掴んで防ぐ必要はない」

真「ま、殴れたところでボクの『ストレイング・マインド』…スタンドの腕が逆に折れちまうだろうが」

240: 2012/08/26(日) 01:31:59.02 ID:YJUzlsjpo
伊織「ええ、直接殴ることはできない」

スゥゥ…

モクモクモク

真(ん…)

ズ…

伊織「でも…」

真(人型に戻った伊織のスタンドが…何か持っている…?)

伊織「『スモーキー・スリル』、掴んだものを叩き付けることは…『可能』よ」

真(瓦礫…ボクの背後にあった崩れたビルの破片を掴んでいるのか!?)

伊織「わかったのは偶然…さっきあんたの言った、『硬化散弾銃』を叩き落とした時だけど…ね」

241: 2012/08/26(日) 01:33:02.89 ID:YJUzlsjpo
伊織「あんた、言ってたわよね? 『質量』が大事だって。『質量』がなければ、『硬い』のはむしろ『割れやすい』…」

真「………」

伊織「『硬い』ことは、『無敵』ということではない」

伊織「だったら、あんたのスタンドを上回る『質量』を叩きつければいい!」

真「『質量』が上回ってるからどうした。それだけで勝てるとでも?」

真「キミのスタンドではボクの『パワー』に対抗できない!!」

伊織「そいつは…どうかしらね!」ヒュン

真「『ストレイング・マインド』!!」ゴォ!

ビシッ!!

伊織「………」

グ…

ググ…

真「な…!?」

ググググググ…

真「ぐあっ!?」バキィ

ドサァ

真「な…」

真「なんで…だ…?」

伊織「さっきまで『弱い』なんて思ってたけど、やっぱ伊織ちゃんのスタンドだけあるわ。『叩きつける』パワーはかなりのものね」

242: 2012/08/26(日) 01:33:45.55 ID:YJUzlsjpo
真「確かに…」

真「上から『叩き付ける』攻撃には『重力』が加わって強力になる…『質量』もそっちの方が上…」

真「だけどボクの『ストレイング・マインド』は『近距離パワー型』…『パワー』ならこっちの方が圧倒的に上のはずだ!」

真「どうして『遠隔操作型』の『スモーキー・スリル』に押し負けるッ!?」

伊織「『近距離』とか『遠隔操作』だとか、そういうのはよくわからないけど」

伊織「春香が言ってたわ…スタンドは『精神力』のエネルギーだって」

真(『精神力』…!)

真(今の伊織から感じられるこの光り輝くような意志…! それで、パワーが上がっているのか…?)

真(だが、それだけで…それくらいのことで、あの『煙のスタンド』がボクの『ストレイング・マインド』のパワーをひっくり返せるはずが…)

伊織「真…あんた…」

伊織「私と戦ってる間、ずっと怯えてるわよね」

真「!」

伊織「私にじゃあない…私に負けたら、自分に制裁を加えるであろう『春香』に」

真「う…」

伊織「そんなあんたの…」

ゴゴゴ

伊織「春香に屈したあんたの『精神力』が!」

ゴゴゴゴゴ

伊織「私に勝てるはずないでしょうがッ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

243: 2012/08/26(日) 01:34:39.97 ID:YJUzlsjpo
真「だ…」

真「誰が、何にビビってるって…!?」

伊織「何度も言ってるじゃない。春香ごときにビクビクしてるんじゃあないわよ、このビビリ野郎がッ!」

真「うるさい…伊織に何が…っ!!」ビュッ

伊織「『スモーキー・スリル』!」ビュン!!

グシャ

真「うっ!!」バキ!

ピキ…

真(『ストレイング・マインド』の腕に…ヒビが…)

バキャァ!!

真「がっ!」バタン

伊織「春香は『スタンド』をアイドルとしての『才能』と言っていた…そのことが、少しわかる気がする…」

ドドド

伊織「『アイドル』も…『スタンドバトル』も…」

伊織「精神力が『上』の方が、勝つッ!」

ドドドドドド

244: 2012/08/26(日) 01:36:11.63 ID:YJUzlsjpo
真(押されている…そんな、馬鹿な…近接戦なら、ボクのスタンドは誰にも負けないはず…)

伊織「さて、終わりよ…真」ス…

ガラガラガラ…

伊織「もう一度…」ズ…

伊織「生き埋めになってもらおうかしら?」ズズズ…

真「あ…」

ズズズズズズ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

真(ビルの瓦礫を…あんなに…)

真(あれを全部…ぶつけてくるつもりか…?)

真(あれには伊織の『スタンドパワー』が入っている…さっきの倒壊とは違う…)

真(負けるのか…?)

真(ボクが…ボクのスタンド、『ストレイング・マインド』が…?)

ズズ…

伊織「くらえッ!!」ズオッ!

ボシュッ ドダダァ ビヒュゥ!

ゴオオオオオオオオオオオ

245: 2012/08/26(日) 01:37:25.61 ID:YJUzlsjpo
真「ま…」

ピキピキ

真「負けるかああああああ!!」パキパキパキパキ

伊織「!!」

真「オラァ!!」ドオオッ

パキィン

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」バ バ バ バ バ バ バ バ

バリィ!!

真「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」ドゴォ ドォ ド ドド ドゴ ドゴ

バリバリバリバリ

真「オラァァッ!!」ヒュ

ドパァ

ボフン!!

シュゥゥゥ…

真「や…」

真「やりぃ…勝った…! 伊織のスタンド…『スモーキー・スリル』のパワーに!!」

伊織「まぁ、勝てるでしょうね。あんたのスタンドなら」

スゥ…

真「え…」

ガシィ!

246: 2012/08/26(日) 01:38:20.13 ID:YJUzlsjpo
真(霧散した『スモーキー・スリル』が…また集まって…)

真(巨大な…手に…)

伊織「人間、勝利を確信した時が一番油断するもんよね」

真「ぐ…」ググ…

真(しっかり抑え込まれている…単純な『パワー』じゃ剥がせない…)

真(気体だから『硬く』して砕くこともできない…!!)

伊織「ねぇ真」

真「え…」

伊織「あんたのスタンド、ビルの『質量』くらいなら受けきれるみたいだけど…」

ドドドド

伊織「それじゃ、地球の質量には勝てるのかしら?」

真「………」

ドドドドドド

真「ちょ…嘘だろ…?」

伊織「このまま…地面に叩きつけるッ!!」

ギュオオォォン

真「…う…」

真「うわあああああああああああああああ」ゴォォォ

247: 2012/08/26(日) 01:39:04.24 ID:YJUzlsjpo
バリャァァ!!

真「がっ…!!」

ピキィィィィィン

真「ボ…」

真「ボクの… ………」

真「『ストレイング・マインド』が、砕け…」

真「た」ブシュゥゥ

伊織「!」

伊織(真の体から血が吹き出した…)

伊織(なるほど、スタンドに対するダメージは本体に対するダメージ…)

伊織(私が真の鎧を砕いたから、そのダメージは真に行った…こういう、ことなのね…)

真「………」シーン…

伊織「…ふぅ…」

伊織「それにしても…」

モクモクモクモク…

伊織「『スモーキー・スリル』…やるじゃない、あんた」

伊織「流石はこの伊織ちゃんのスタンドね! にひひっ」

248: 2012/08/26(日) 01:39:50.96 ID:YJUzlsjpo
・ ・ ・

真「はっ!?」パチ

ガバッ!

伊織「あら、気がついたわね」

真「ここは…」

伊織「公園よ。あっちは人が集まってきたから逃げてきたわ」

真「…負けたのか、ボクは…」

真「この『ストレイング・マインド』が…伊織のスタンドに…正面から挑んで…」

伊織「真、あんたの敗因は…」

伊織「『春香』よ」

真「!」

伊織「あいつは言った、みんなに『絶対の自信』とやらを持たせるためにスタンド使いにした…と」

伊織「でも、今のあんたはどう? 『自信』なんて程遠い、ずっと春香の存在に怯え、本来の実力も出せないでいた」

伊織「あんたが全力を出せていたのなら…」

伊織「ま、この伊織ちゃんが負けるなんてありえないけど」

伊織「もっと苦戦とダメージをしいられていたでしょうね」

真「………」

249: 2012/08/26(日) 01:40:17.50 ID:YJUzlsjpo
伊織「やっぱり…」

伊織「春香は間違ってるわ。だから…」

伊織「正しい道に戻してやるのが、本当の『仲間』よ」

真「!」

伊織「真。あんたもそう思わない?」

真「伊織、キミは…」

真「春香を倒すつもりか…勝てるのかッ!!」

伊織「そんなの、無理に決まってるじゃない。単純なパワーとかではなく『アイ・ウォント』は強すぎる…負けるわよ、絶対」

真「ちょっ」ズルーッ

真「駄目じゃないか、それじゃ!」

伊織「一人なら…ね」

真「え?」

伊織「真。この伊織ちゃんの方につきなさい、春香を倒すために」

真「は…」

250: 2012/08/26(日) 01:40:44.91 ID:YJUzlsjpo
真「…ボクに…」

真「『寝返ろ』って…春香を敵に回せって…そう言うのか…?」

伊織「どうせ、私に負けたと知れたら春香のところになんていられないでしょ?」

真「それは…わからないけど…」

伊織「ま、もしかしたら許してもらえるかもしれないわね」

伊織「でも、春香に負け、私に負け…そんなあんたが、許してもらったところで、ちゃんと前を向いて歩けるの?」

伊織「断言するけど、春香のところに戻れば、もうあんたはその先惨めな生活を送るしかなくなるわ。アイドルとしても、スタンド使いとしても…人間としても…ね」

真「う…」

伊織「今、私達は本当の意味で『団結』しなくてはならない」

伊織「困難に立ち向かうために。自分達の道を切り開くためにッ!」

真「自分の道を…切り開くため…」

伊織「さぁ真、男だったらはっきり決めなさい! 私の方に付く? それとも春香のところに尻尾巻いて帰る!?」

真「男…」

真「じゃあ…ないんだけどなぁぁぁ~っ…」ガクーッ

251: 2012/08/26(日) 01:41:22.15 ID:YJUzlsjpo
真「でも…確かに、そうだ」

伊織「!」

真「わかった」

真「ボクは、伊織…キミに協力するよ」

伊織「真!」

真「ボク一人なら、春香に勝てる要素なんて何一つない」

真「でも、一人じゃなければ…」

真「少しでも勝つ『可能性』があるのなら…ボクはそっちに賭けてみたい」

伊織「はっ…いい目になってきたじゃない、真。それでこそあんたよ!」

真「へへっ…」

ドドドドド

ドドドドドドドドドド

252: 2012/08/26(日) 01:41:59.93 ID:YJUzlsjpo
伊織(春香…)

伊織(あんたのこと、『アイ・ウォント』で上っ面だけの『仲間』を集めて『団結』しているつもりでいるんでしょうけど…)

伊織(だったら、私は逆にあんたの『仲間』全員、こっちに引き込んでやる…! 本当の『仲間』として!)

伊織(あんたに見せてやるわ…本当の『団結』ってやつを!!)

真「ところで伊織…」

伊織「? 何よ」



……

………

ザワ、ザワ…

真「………これさ…」チラ…

伊織「ええ、思い出した…わかってるわ…」ソーッ

ズゥゥゥーン…

真「事務所…壊れちゃったなぁ…」

伊織「嫌だけど…みんなのためにも、パ…」

伊織「お父様に頭下げるしかないわね…はぁ…」

To Be Continued...

254: 2012/08/26(日) 01:47:05.26 ID:ug7VvPS7o

255: 2012/08/26(日) 01:48:31.77 ID:VJP8U2JOo

こうやって見るとジャスティスとウェザーリポートのチートさが分かるな

263: 2012/08/29(水) 22:23:11.45 ID:VK/oZD99o
真「春香の『仲間』には…」

真「どうやら、傷を治すことができる『スタンド使い』がいるらしい」

伊織(らしい…?)

真「だから、もしも誰かと戦うことになっても…頃しさえしなければ大丈夫だと、春香は言っていた」

伊織「そうは言っても、春香に引き渡して、そいつに治してもらうまでには時間がかかるでしょ?」

伊織「腕一本持ってかれたら出血多量で氏ぬじゃないの」

真「その点は大丈夫。『ストレイング・マインド』は『液体』でも『硬く』できるからね。シャボン玉を『硬く』したのは見ているだろ?」

真「止血くらいなら、ボクにもできるからね。両手両足を奪って、傷口と吹っ飛ばした手足を固めておけば大丈夫ってわけさ」

伊織「………」ソーッ…

真「ん? どうしたんだい、伊織?」

264: 2012/08/29(水) 22:24:53.04 ID:VK/oZD99o
伊織「ま、まぁ、いいわ…それで…」

伊織「誰なのよ? その、『治療が出来るスタンド使い』ってのは」

真「知らない」

伊織「は? 知らない…?」

真「春香は…誰が春香側で、誰がそうでないかはボクには教えてはくれなかった」

伊織「はぁ…? それじゃ、誰が敵で誰が味方かわからないじゃないの」

真「それでいいんだと思う。春香は『最後には、事務所のみんな仲間になるから』って…」

真「『今は誰が敵とか味方とかなんて考えず、いつも通り過ごして』と。そう言っていた」

伊織「春香に信用されてないのね、あんた…」

真「いや…たぶん、みんな同じ事を言われていると思う。だから、表面上はいつも通りでいられる」

真「誰が敵で、誰が味方か…すべて知っているのは春香だけなんじゃないかな」

伊織「そう…」

265: 2012/08/29(水) 22:25:33.43 ID:VK/oZD99o
真「そういうことなら後でいくらでも話すからさ…」

真「今はこの備品! 運ぶの手伝ってくれよ!」

春香「んしょ、んしょ…」

美希「あふぅ…メンドーなの…」

雪歩「えっと、これはこっち…あれ、こっちでしたっけ? うううっ、どっちでしたっけ、プロデューサ~っ!」

配達員「ちわ、お届けものです。765プロさん、印鑑かサインを…」

小鳥「はいはい! 今行きます!」

伊織(アイドル総動員で、配達員が持ってきた備品をどんどん部屋に運んでいく)

伊織「って言うか、こういうのって普通業者に部屋まで運んでもらうもんじゃないの? なんで私達がやんなきゃなんないのよ」

真「みんなが自分達でレイアウト決めた方がいいって…」

真「と…話してる間に…これで全部かな?」

伊織「はぁ…疲れたわね」

真「伊織は何もやってないだろ!」

P「みんな悪いな、ごくろうさま」

266: 2012/08/29(水) 22:31:04.32 ID:VK/oZD99o
やよい「うっうー! ここが新しい事務所になるんですねー!」

貴音「この場所も以前とはまた違う趣があり…新鮮ですね」

響「なんか落ち着かないぞー。前の方がよかったなー」

千早「こんな時期に移転なんて…」

亜美「やー、仕方ないっしょー」

真美「前の事務所が、あんなことになっちゃったんじゃ…ねぇ」

伊織「………」

P「倒壊事故だなんて…なぁ…」

真「………」

小鳥「社長が亡くなってから嫌なことばかり起こりますね…」

律子「ま、いい機会です。これで心機一転、気持ちを入れ替えて活動に臨んでいかないと!」

あずさ「あらあら~、ポジティブなのね、律子さん」

律子「そうでも思わなきゃやってられないんですよ…」

真「伊織…」

伊織「…わかってる、わかってるわよ…」

267: 2012/08/29(水) 22:39:20.79 ID:VK/oZD99o


……

………

一日前…

アイドル達「「事務所が移転!?」」

P「ああ…仕方ないよ、これじゃあ…」

ゴッチャァ…

やよい「わ…事務所が…なくなっちゃってます…」

春香「そんな、ひどい…」

P「近所の人の話によると、昨日の夜、突然崩れだしたみたいだ」

P「結構古い建物だったし、老朽化が進んでいたのかもしれない」

真「………」タラァーッ

伊織「………」ドキドキ

P「誰もいない時間に崩れたそうだから、奇跡的に怪我人はなかったみたいだけどな…」

268: 2012/08/29(水) 22:44:36.19 ID:VK/oZD99o
真「………」

律子「真? 大丈夫、顔色が悪いわよ」

真「え、えーと…だ、だって…」

律子「まぁ、無理もないわね…私だって結構ショックよ…」

真「う、うん…」

真(伊織ィィ~ッ!? 親父さんになんとかしてもらうんじゃなかったのか!?)

伊織(結局、お父様には言えなかったわ…事務所のこと…)

伊織(いくら水瀬財閥とは言え、私のワガママでビル一つなんて建てられないっての! 時間もかかるし…費用だって、ヘリ飛ばしたりとはわけが違うものッ!)

真(ま、まぁ…それは確かに…)

伊織(第一、どう説明する気!? スタンドを使って戦闘を行ってたら崩れたとでも言うの? 医者呼ばれるわ!)

真(わかったから…落ち着いて、伊織…)

………

……


269: 2012/08/29(水) 22:49:41.92 ID:VK/oZD99o
伊織(そういうわけで、結局765プロ事務所は『移転』という形になった)

伊織(話によると、うちは前々から移転しようとしてたみたいで、こうして目を付けていたというこの物件に来たというわけだ)

伊織(それにしたって、昨日の今日…異様に手際が良くて少し不気味だけど…)

伊織(大事な書類とかはちゃんと律子達が管理している。備品を失ったこと以外のダメージは少ないけど…)

伊織(前のビルのオーナーや…『たるき屋』とか、同じビルの人達のことを考えると心が痛まないでもないわ…)

伊織(あーもうっ…それもこれも全部…)

伊織(『春香のせい』よッ! 許さないわ、春香…!!)

ドドドド

千早「………」

ドドドドドド

ペッタァァーン

如月千早 B72
アイドル

千早(水瀬さん…)

千早(なんだか雰囲気が変わったわね)

千早(前も芯は強い感じだったけど…なんだか今はより明確な…確固たる意志を持っているような…)

270: 2012/08/29(水) 22:53:46.08 ID:VK/oZD99o
千早(…雰囲気が変わったと言えば…)

春香「ふー…大変だったね、千早ちゃん」

千早「春香…ええ。この忙しい時期に…仕方のないことだけれど」

春香「でも、こういうみんなで一緒に何かするっていうのはいいよね」

千早(春香…)

千早(今の春香は…正直、あまり好きではない)

千早(前は周りにも元気をくれるような子だったのに、今は少し不気味で…何か『ドス黒い』ものを感じる…)

春香「………」

春香「千早ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど…今日の夜、事務所に残ってもらっていいかな?」

千早「? それは、電話で話すわけにはいかないのかしら。今日はあまり遅くまで残るのは、ちょっと…」

春香「えーと…」

271: 2012/08/29(水) 23:02:13.32 ID:VK/oZD99o
律子「春香、そろそろ出るわよ。外で車準備して待ってるから」

春香「あ…」

春香「わかりました。すぐ準備します!」

千早(仕事かしら? 本当、最近の春香はすごいわね…)

春香「千早ちゃん、ごめんなさい。話はまた今度ね…」

千早「? ええ…」

千早(春香の話したいこと…何かしら…)

千早(直接話したいこともあるのだろうけど…用件くらいは言ってくれてもいいのに)

272: 2012/08/29(水) 23:03:14.40 ID:VK/oZD99o
バタン!

春香「真が動いたのかぁ…ああやってビルをブッ壊せるのは真の『ストレイング・マインド』くらい」

春香「そして、あの様子…真は負け…そして、伊織の方に寝返ったんだね…」

春香「負けるのは別にいい…でも裏切るってのはどういうことだァ~ッ!?」

春香「やはり伊織は『団結』を乱す者…! 新しい765プロに、そんなのはいらない」

春香「『仲間』を集めて伊織を倒す! それが私に課せられた『使命』…」

春香「さてと、まず真は引き戻すとして…『ストレイング・マインド』、敵に回すと結構厄介」

春香「やっぱり…千早ちゃんは引き込みたいところだよねぇ~っ、色んな意味で」

春香「だけど先に『スタンド能力』に目覚めさせてからでは伊織やあの2人の時みたいに、また逃げられるかもしれない…」

春香「だからまずは確保が最優先…事情を話して仲間になってもらうのが先決…」

春香「千早ちゃんに『弓と矢』でスタンド使いになってもらうのは…」

ゴゴゴゴゴゴゴ

春香「その後でいい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

春香「でも、千早ちゃんとはスケジュールが合わないんだよねぇ…」

春香「事務所の雰囲気に気づいてても、伊織みたいに行動に移すタイプじゃあないし…」

春香「はー、どうしたものか」

273: 2012/08/29(水) 23:11:19.84 ID:VK/oZD99o
伊織「それで…真」

伊織「例の『2人』はどうしてるのよ? あんた、何か知ってる?」

真「『2人』って、矢を壊そうとしてるっていう?」

伊織「そうよ。あんたはその『2人』と戦ったことはない?」

真「ボクの能力は、相手を無力化するのには向いてるけど…捕らえるには向いてないからね」

伊織「ま…あんたみたいなド派手なスタンドを送り込めば、何かしら騒ぎにはなるか」

真「でも、誰かしら刺客を送り込んでいることは確かだと思う」

伊織「春香が自分だけで動いて、直接手を下してるってのはないのね?」

真「春香は忙しいからね…それに、その『2人』は『アイ・ウォント』から逃れられるスタンド使いだ。しかも、春香を警戒している」

伊織「ま、『アイ・ウォント』でどうにかなるなら最初から敵に回さないわね」

真「スタンドには相性がある。相性のいいスタンド使いを一人送り込むだけなら騒ぎにもなりにくいし…」

真「捕まえるなら、それで充分だろう」

真「ボクは矢を壊そうとしている『2人』が誰なのかは知らないし…伊織が春香と敵対したことだって、伊織から聞くまでは知らなかった」

真「だけど、その『2人』のことを知っているスタンド使いはいるはず」

伊織「そう…」

274: 2012/08/29(水) 23:14:55.25 ID:VK/oZD99o
伊織「結局、あんたが味方で春香が敵ってこと以外…何一つわかりはしないのね」

真「いや、そうでもないよ。春香の『仲間』…少しは見当がつく」

伊織「え…本当、それ?」

真「ボクの考えでは、『律子』と『あずささん』…この二人はまず間違いないと思う」

伊織「へぇ? それはまた、なんでよ」

真「まず単純に、『律子』は春香と接する機会が多い」

伊織「そうかしら? 言われてみればそんな気もしないこともないけど…」

真「今、春香の送り迎えは大体律子がやってるだろ? 律子が忙しい時にはタクシーを使ってるけど、今まではプロデューサーがやってたのに」

伊織「あいつは今社長代理だから、忙しいんでしょ」

真「だったら小鳥さんでもいいじゃないか。ボクは小鳥さんが春香を送っていったのを見たことがない」

真「キミの所属している『竜宮小町』を専任してた頃に比べ、明らかに春香の面倒ばかり見ている」

真「普通なら、自分の立ち上げた方を優先したいのが人情だろ?」

伊織「律子はそういうことはしないと思うけど…でも、だとしたら春香の相手ばかりするのは尚更不自然よね」

伊織「それに…律子は私が事務所で春香とやりあってる時、隣の部屋にいたのに気づかない様子だった。あの時には、もう春香の方に付いていたのかも…」

真「そうか…まぁ、断定はできないけどね」

275: 2012/08/29(水) 23:21:51.39 ID:VK/oZD99o
伊織「だけど、『あずさ』はどういうわけよ? 春香が話してるところなんて見たことないわ」

伊織「そりゃ挨拶だとか世間話だとかはするけど、だったらあずさよりも春香と話している奴はいっぱいいるわよ」

真「…伊織が律子を疑っているのと似た理由かな。あずささんが、春香に協力していると思ったからだ」

伊織「なんですって?」

真「あの日、ボクがレッスンから帰ってきた時、事務所には春香とあずささんだけがいてね…」

真「しばらくくつろいでいると、突然目の前が真っ暗になったんだ」

真「気がついたら、あずささんの姿はなくて…ボクは『弓と矢』で、春香に『スタンド使い』にさせられていた」

真「『矢』による傷はすぐになくなって、ボクの体には傷一つなかったから…多分、スタンドの能力で気絶させられたんだと思う」

伊織「あずさのスタンド…相手を傷つけることなく気絶させられる能力か…」

真「実のところ、『いきなり気絶させられた』ということ以外は何もわからないんだけどね。その時、ボクはスタンドなんて見えなかったし…」

真「もしかしたら、春香の『アイ・ウォント』にやられたのかもしれないが…」

真「でも、あのいきなり意識が落ちる感覚は『五感支配』とは違うような気がする」

伊織「『律子』、『あずさ』…」

伊織「じゃあ『亜美』もそうかしらね?」

真「知らないけど…性格からして、『弓と矢』を破壊しようだなんて考えるタイプじゃあないよね。むしろ、スタンドを『遊び道具』か何かだと考えるタイプだ」

伊織「アンタが春香側にいたことを考えると、確信は出来ないけどね」

真「ボクを引き合いに出すのはやめてくれないかな…まぁ、可能性は高いんじゃないか?」

伊織(となると、『竜宮小町』は私以外ほぼ黒ってわけ…やれやれだわ)

276: 2012/08/29(水) 23:27:08.97 ID:VK/oZD99o
伊織「ま、いいわ…」

伊織「だけど、春香は何故『仲間』に『スタンド使い』の情報を教えないの?」

伊織「騒ぎになりやすいとかそういうのを抜きにしても、誰が『敵』なのかははっきりさせといた方がいいと思うんだけど」

真「もしさ、ボクが『敵』だとわかってて…」

真「伊織はこうして話しにくるのか?」

伊織「…なるほどね」

伊織「もし、私が『敵』だとはっきりしてれば…当然、春香の『仲間』は私を避けてくるはず…」

伊織「そうなると、私には誰が『敵』で誰が『味方』かなんて丸わかりだわ」

真「今の状況…誰が『敵』かも『味方』かもわからない。表面上はいつも通りだけど、孤立している」

真「そうなると…人は弱い。誰かを疑わなければならないそんな状況に、いずれ耐えられなくなり…」

伊織「最終的に、春香に下ると。本当、いい趣味してるわねあいつは」

真「だから、逆に言うと…こうしていつも同じ二人でまとまっているのは、周りから見れば『敵』だというわかりやすいサインになるわけだけど?」

伊織「好都合ね。襲って来るというなら…」

伊織「返り討ちにしてこっちに引き込むだけよ」

真「伊織ならそう言うと思ったよ」

277: 2012/08/29(水) 23:31:45.02 ID:VK/oZD99o
真「さて…話すことはそれくらいかな」

伊織「そうね。喋ってばかりじゃしょうがないわ」

真「ボクは…そろそろレッスンに行かなきゃかな」

伊織「ええ、この後から? みんなぐったりしてるわよ」

真「うん。春香にもそうだし…伊織にだって、負けてられないからね」

伊織(『アイドルとしても上』と言ったこと…気にしてるのかしら)

真「伊織も一緒に来る?」

伊織「いえ…私は、今日の夜には収録があるから…」

真「そっか。じゃあね伊織」

バタン…

伊織(さて、と…)

伊織(今は春香がいない…あずさあたりに探りを入れてみようかしら)

278: 2012/08/29(水) 23:37:13.88 ID:VK/oZD99o
伊織「あずさ、ちょっといいかしら」

あずさ「伊織ちゃん? どうしたの?」

伊織「話があるわ。来てくれないかしら?」

あずさ「ごめんなさい、今ちょっと千早ちゃんを探してて…」

伊織「へぇ、同じ『竜宮小町』のメンバーの伊織ちゃんよりも、千早の方が大事ってわけ?」

あずさ「伊織ちゃんのいじわる~…」

伊織「…冗談よ。千早ならあそこにいるけど?」

千早「………」

あずさ「あ、本当…」

あずさ「千早ちゃ~ん」フリフリ

千早「………」スタスタ

あずさ「あ…行っちゃうわ…」

伊織「はぁ…」

スーッ…

伊織「千早! ちょっとこっち来なさい!!」

千早「…!?」クル…

あずさ「あら~、伊織ちゃんが呼ぶと気がつくのね」

伊織「あんた、呼ぶ時の声が小さすぎんのよ。あれじゃ気づいてもらえるわけないでしょ」

279: 2012/08/29(水) 23:40:16.10 ID:VK/oZD99o
伊織「じゃ千早との話が終わったら、後で…」

あずさ「あ、ちょっと動かないで…」ス…

伊織「え?」

サワ…

伊織「っ!!」クルッ

ゴゴゴゴゴゴ

あずさ「髪の毛に…ついてたわよ、テープが」

伊織「そ…」

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「そういう時は口で言ってくれないかしら…自分で取るわ」

あずさ「あら…ごめんなさい伊織ちゃん…」

伊織(ぬかった…真の言う通りなら、あずさは春香の『仲間』である可能性が非常に高い…)

伊織(警戒を怠ってはいけなかったのに…)

ゴゴゴゴゴ

280: 2012/08/29(水) 23:43:06.38 ID:VK/oZD99o
千早「水瀬さん、何かしら?」

タタタ…

伊織(千早…そうだ、あずさは千早に用がある…私にじゃあない)

伊織(それに、向こうは私が春香と敵対していることは知らないはず)

伊織(触られてしまったけど、体はなんともない。大丈夫…よね)

伊織「千早。あずさがあんたに用があるそうよ」

千早「あずささんが?」

あずさ「ありがとうね、伊織ちゃん」

伊織「ええ。私は行くわ」

伊織(こっそりと監視するか…あずさが怪しい動きを見せたら、その時は…)スタ…

千早(…あら?)

千早(水瀬さんの頭…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

『77』

カチ! カチ!

『76』『75』

千早(何かしら、あれ…)

281: 2012/08/29(水) 23:46:16.85 ID:VK/oZD99o
あずさ「どうしたの、千早ちゃん?」

千早「あ、いえ…」

千早「なんだか、新しい事務所というのは落ち着かないものですね」

あずさ「そうね~。だけど住めば都、すぐに慣れると思うわ」

あずさ「それに、前の事務所よりも広いし、新鮮じゃない?」

千早「まあ、なんでも、いいですけれど」

千早「なるべく早く、ここにもなじめれば、と思います」

千早「それより…私に用というのは?」

あずさ「あ、用…そうよね…」

あずさ「えーっと…」

千早「…あずささん?」

あずさ「…忘れちゃったわ」

千早(…?)

千早(この顔、『用なんて元々考えてない』みたいな顔だわ…)

千早(なんなのかしら…)

282: 2012/08/29(水) 23:51:25.76 ID:VK/oZD99o
あずさ「思い出すまでに時間がかかるかもしれないわ…ごめんなさいね?」

千早「え、ええ…」

千早(春香といい…あずささんといい…様子がおかしい)

ズ…

千早(最近忙しくなったし、移転もあって疲れているのかしら…)

ズズ…

ゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ(『ミスメイカー』…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ(このまま、千早ちゃんの頭に触れ…)

ス…

・ ・ ・ ・

千早「!」バッ!

ピシ!

あずさ「!?」

283: 2012/08/29(水) 23:52:22.26 ID:VK/oZD99o
千早「……?」キョロッ

あずさ「…どうしたのかしら、千早ちゃん?」

千早「あ、すみません…何か気配を感じて…」

あずさ「そう」

千早(何だったの、今のは…?)チラ…

千早(あれ、右手に何かくっついてる)

千早(これは何かしら…数字? 『72』…『71』…)

千早「は!? 65…64…63…な、何なの…これは!?(数字が減っていくッ)」

あずさ「え…?」

千早「あ、あずささん! 見て、私の腕に…」

あずさ「………」

あずさ「そう…『見える』のね、千早ちゃん…」

千早「…!?」

あずさ「春香ちゃんの話ではまだ『矢』に貫かれてはいないということだったけど…」

あずさ「『スタンド使い』でなければ私のスタンド、近づけば触れるのは容易だと思ったのに…」

千早「あ…あずさ…さん…?」

あずさ「スタンドがなくても素質がある人には見えるのかしら? それとも…千早ちゃん、あなた…」

千早「な、何の話を…」

284: 2012/08/29(水) 23:53:23.73 ID:VK/oZD99o
あずさ「その数字…それは私のスタンド『ミスメイカー』によるものよ」

千早「は? みすめ…すた…んど…?」

あずさ「見える? この実体のあるヴィジョン…これが、『スタンド』よ千早ちゃん」

千早「それは…一体…」

あずさ「私の『ミスメイカー』に触れられたものは、今の千早ちゃんの腕のように数字が浮かぶ」

あずさ「そして、その数字が『ゼロ』になった時…」

千早(『ゼロ』って…もうすぐだわ…3…2…1…)

千早「!」ガクン

千早(ひ…右腕が…)

グイ!

グ…

千早「う…動かない! 人形の糸が切れてしまったようにッ!!」プラン

あずさ「その部分は『眠る』わ。今、千早ちゃんの右腕は『眠った』の。解除するまで起きることはない」

285: 2012/08/29(水) 23:54:22.65 ID:VK/oZD99o
あずさ「最初はもっと時間がかかったんだけどね。なんとか91秒にまで縮めることに成功したのよ~」

千早「くっ」

千早「どうして…こんなことをするんですか…!?」

あずさ「春香ちゃ…ある子から頼まれてるの。千早ちゃんを傷つけずに捕まえてって」

千早「春香が…? こんなことまでして、私に何の用が…」

あずさ「えっ…千早ちゃん、どうして春香ちゃんだって…」

千早「あなたが言ったのよッ!!」

あずさ「あら…そうだったかしら~」

あずさ「とにかく、千早ちゃん…一度春香ちゃんと話してくれないかしら。悪いようにはしないから」

千早「嫌…です」

あずさ「あら?」

千早「春香が話したいことがある? それなら、直接話せばいいのに…」

千早「『眠らせて』…だなんて…どうしてこんなことをする必要があるのか、私には理解できないわ…!」

千早「悪いようにはしない…そんな言葉、信じられるものですかッ!!」

あずさ「『信じる』にしても『信じない』にしても…あなたに拒否権はないわよ~」

千早「くっ…」

あずさ「『ミスメイカー』…大人しくしていれば、怪我することはない…大丈夫よ、千早ちゃん」

286: 2012/08/29(水) 23:55:14.76 ID:VK/oZD99o
千早「大人しく…」

千早「悪いですけど、それは聞けませんね…」ス…

ダッ!!

あずさ「あら」

千早(新しい事務所…場所はまだよくわからないけれど、隣の部屋にみんないるはず)ガチャ

ダダダ

あずさ「あらあら、千早ちゃん…どこに行くの?」スト

千早(プロデューサー…)

千早(プロデューサーなら、助けてくれるわ…!)

千早「?」チラ…

ゴゴゴゴゴ

伊織「………」

ゴゴゴ

千早(水瀬さん…? どうしてそんなところで倒れているのかしら…)

千早(いえ、今はそれどころではない…! 早く行かなくては…)

287: 2012/08/29(水) 23:56:11.73 ID:VK/oZD99o
バタン!

千早「プロデューサー!」

P「………」

千早「プロデューサー、助けてください! あずささんが…!」ガシッ

P「………」グラ…

バタン!

千早「え…」

シィーン

千早「プロ…デューサー…?」

P「………」ダラン

千早「はっ!!」

ドドドドド

響「………」

小鳥「………」

雪歩「………」

亜美「………」

千早「こ…これは…! 事務所にいるみんなが…!」

ドドドドドドドドド

288: 2012/08/29(水) 23:56:58.17 ID:VK/oZD99o
あずさ「みんなには…」

あずさ「片っ端から『眠って』もらったわ…悪いけど…」

千早(そういえば…水瀬さんの頭についていたあの数字…)

千早(あの時には、もう…)

あずさ「千早ちゃんも同じように『眠らせて』…」

あずさ「春香ちゃんの元に連れて行く」

ドドドドドドドドドド

千早(『重い』…右腕を封じられたこともあるけれど)

千早(体に重圧がかかってくる…! なんて『威圧感』なの…?)

ズ…

あずさ「…?」

あずさ(千早…ちゃん?)

ズズ…

………

P「………」ピク…

311: 2012/09/08(土) 05:53:12.11 ID:fCO9+rQ3o
千早(私は…)

ゴゴゴゴゴ

千早(夢でも見ているの…?)

ゴゴゴゴゴゴゴ

千早(あずささんが私を襲ってくる…)

千早(しかも、その理由は『春香』に引き渡すためだという)

シーン…

千早(そのために…事務所のみんなを『眠らせて』…)

ドドドド

千早(そして、この『動かない右肩』…)

千早(あずささんの言うことが、冗談でもなんでもないという事実を突きつけてくる…!)

ドドドドドドドドド

312: 2012/09/08(土) 14:45:04.45 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「『ミスメイカー』」

ゴゴゴゴ

千早「…っ!」

あずさ「千早ちゃんは振り向いた時に触れた『右腕』を『眠らせた』けど…」

あずさ「ここにいるみんなは『頭』を『眠らせた』と…いうわけ」

あずさ「人間は脳で考え行動する…頭を『眠ら』せれば意識も『眠る』」

あずさ「事務所のみんなのように…千早ちゃんにも『眠って』もらうわよ~」

千早「あずささん…『眠らせる』能力…と言いましたよね」

千早「と、言うことは…『起こす』方法もあるのかしら」

あずさ「今のままだと…ないわね」

千早「今のままだと…?」

あずさ「『ミスメイカー』の能力射程は私を中心として10m…」

あずさ「その射程の外に出られなければ、『眠った』ものが起きることは絶対にないわよ~」

千早「射程…?」

千早(この能力は使える『範囲』があるということ…かしら…)

313: 2012/09/08(土) 14:46:28.53 ID:fCO9+rQ3o
千早「だったら、その外に出れば…」

あずさ「ええ、『ミスメイカー』の影響は消える。『眠った』部分を『起こす』こともできるわ」

千早「! それじゃ…」

あずさ「出られると…」

ゴゴゴ

あずさ「思う? 千早ちゃん…」

ゴゴゴゴゴ

千早「………」

千早(この部屋の出口はあの入ってきた扉が一ヵ所のみ…)

千早(だけど、そこから出られればあずささんから10m…そう難しいことでは…)

あずさ「この『扉』から出て、私から走って逃げればいい…そう考えてるのかしら」

千早「!?」

314: 2012/09/08(土) 14:49:40.31 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「残念だけど…もう、不可能よ。それは」

キィィ…

パタン

千早「なっ…」

千早(ドアがひとりでに閉まった…!)

あずさ「『眠る』ということは、その機能を『停止』するということよ」

あずさ「こうやって、扉を『眠らせ』て閉めてしまえば、起こすまで開くことはない」コンコン

千早「そ…」

千早「そんな馬鹿なッ…! ハッタリよ…!!」

あずさ「なら、試してみる? 千早ちゃんが危険を冒して飛び込んでくるなら、私としては楽なんだけど…」

千早「くっ…」

315: 2012/09/08(土) 14:50:53.44 ID:fCO9+rQ3o
あずさ「ふふ…」プラプラ

千早(近づいてくる…)

あずさ「『近距離パワー型』って密室だと有利よね…」

千早(逃げようにも…『どこへ』…? 奥の方へ行けば、それだけ追いつめられるわ…)

あずさ「あまり逃げない方がいいわよ~、動かれると、直前で止められないかもしれない」

あずさ「この『ミスメイカー』、『パワー』はかなり強い…だけど、能力で『眠ら』せれば痛みはないから」

ゴオ

千早(『頭』を『眠ら』されたら、その時点で終わり…)

千早(頭だけは…)

ガクン

ドサァ!!

あずさ「!?」ブンッ

カスッ!

千早「あ…」

カチリ

千早「うっ…足に『カウント』が…!」

あずさ「………」

316: 2012/09/08(土) 14:51:35.42 ID:lYM8I7Xw0
千早(このあずささんの…能力…)

千早(頭にさえ触れられなければ大丈夫、というわけでもない…)

千早(むしろ、長引けば長引くほど将棋の熟練者を相手にした時のように…一歩ずつ、確実に追いつめられるわ)

千早(まず、あの『スタンド』というものの動きを止めなくては)ス…

あずさ「あら、ボールペンかしら」

千早「ふっ!」ビッ!

ドシュゥゥゥゥ

あずさ「………」

スー…

千早「え!?」

カタン!

千早「ボールペンが…すり抜けた…?」

あずさ「『スタンド』は…」

あずさ「『スタンド』でしか倒せない」

あずさ「あらゆる力はスタンドに触れることすらできず、今のボールペンのように通り抜けるわ」

あずさ「スタンドが投げたものというのなら話は別だけど…」

千早「そんな…」

317: 2012/09/08(土) 14:53:15.48 ID:fCO9+rQ3o
あずさ「スタンドの使えない千早ちゃんに、『ミスメイカー』をどうこうすることはできないわよ」スス…

千早(距離を取った…?)

千早「なぜ離れるんですか…? 射程の外に出られたら困るのでしょう…」

千早「私はスタンドに攻撃する手段がないと言うのに…理解できません」

あずさ「そのことだけど…」

あずさ「千早ちゃん、あなたも…『スタンド使い』よね」

千早「は…?(私が…?)」

あずさ「『スタンド』が見えると言うことは、そういうことなのよ」

あずさ「春香ちゃんの言葉通りだと、千早ちゃんは『弓と矢』に貫かれてはいない…」

あずさ「なぜ『スタンド使い』になっているのかはわからないけど…」

318: 2012/09/08(土) 14:56:01.36 ID:lYM8I7Xw0
千早「だけど、私は『スタンド』なんて…」

あずさ「ええ、わかってるわ。使えるのなら、とっくに使っているでしょう」

あずさ「だけど…何かの拍子に、千早ちゃんのスタンドが目覚めて…」

あずさ「『不意打ち』のように攻撃を食らうのは、避けておきたいわ」

あずさ「さっき頭に攻撃しようとした『ミスメイカー』…それを無意識に回避したのも恐らく、あなたの『スタンド』によるもの…」

あずさ「既に発現はしているのよ」

千早「………」

あずさ「あるいは千早ちゃんが、『スタンド』を使えるにも関わらず隠しているのかもしれないし」

千早「そんなこと…」

あずさ「何にしても、不用意に攻めるよりは…」

カチ!

千早「うっ!」グラ…

あずさ「『91秒』経ったわ」

あずさ「こうやって少しずつ…確実に、追いつめていった方がいいと思って」

319: 2012/09/08(土) 14:56:41.06 ID:fCO9+rQ3o
千早(触れられた…『足首』あたりの部分が…動かなくなっている)ガクガク

ズリ…

千早(歩きにくい…だけど、歩けないというわけではないわね…)

千早(『膝』だとかの関節を狙われたら完全に動けなくなってしまうかもしれないけれど…)

千早(それよりも問題は…)

あずさ「これで…千早ちゃんが『10m』の外に出ることはできなくなったわね~」

千早(もしも逃げようとしても、この足では追いつかれてしまう…ということ)

千早(あずささんの言う通り、射程の外に出ることはできない…何らかの手段で、足止めをしない限りは…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

千早(『スタンド』…)

千早(私にも…使えるの? 本当に…?)

320: 2012/09/08(土) 15:02:21.87 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「このまま追いつめていくわ…木に止まっているセミに網を被せようとする子供のように慎重にね…」

千早「………」

千早「春香は…」

あずさ「?」

千早「春香は、どうしてあずささんにこんなことをさせるの…?」

あずさ「さぁ…春香ちゃんの考えなんて、私にはわからないわ」

千早「………」

ズリ…

あずさ「無駄よ千早ちゃん、奥へ逃げれば逃げるほど…」カツ カツ

バカッ!

あずさ「あなたは追いつめられて…」カツッ…

キィ…

あずさ「………」

千早「私があずささんの『10m』の外に出ることは出来ない…」

千早「けれど、私との距離を『10m』に保たないといけないのなら…」

千早「この部屋の広さ、『眠った扉』の方を『10mの外』に出すことは…できます」

あずさ「そうね。だけど、それは千早ちゃんから扉への距離も『10m以上』あるということ」

あずさ「ここまで追いつめてしまえば、もうドアを閉める必要はないのよ」

321: 2012/09/08(土) 15:03:13.35 ID:fCO9+rQ3o
ジリ…

千早「あずささんも…」

千早「春香が何を考えているのかはわからないんですよね」

あずさ「ええ、そうね」

あずさ「だけど一つだけことわっておくと、春香ちゃんは千早ちゃんに危害を加えようとしているわけではないわよ」

千早「そう…」

あずさ「だから…大人しく眠りなさい!」バボォーッ

千早「だったら…春香に直接聞くことにするわ」

ズ…

あずさ「!」ピタ…

ドドドドドドドドドド

あずさ「これは…」

322: 2012/09/08(土) 15:03:39.22 ID:lYM8I7Xw0
千早「これが…」

千早「これが私の『スタンド』…!」

ドドドドド

千早「………」

チマァ…

あずさ「あらあら、その仮面をつけた子供が千早ちゃんのスタンドかしら~」

あずさ「ちっちゃくて、かわいいわね~」

千早「くっ」

千早(見た目は関係ない…)

千早(重要なのは…これで何が出来るか、よ!)

ビュン!!

あずさ「え?」

ブオン!!

あずさ「きゃっ!?」サッ!

あずさ(速い…)

千早「春香が私に会いたがっているというなら…」

千早「望み通り会ってあげましょう。あずささん…あなたを倒してから」

333: 2012/09/12(水) 23:51:19.62 ID:ftHtghCuo
シュ!

バウッ

キララァーン

千早「『スタンド』…これで私も、使えるようになった」

ドドドドド

千早「状況は五分よ、あずささん」

バァーン

あずさ「あら、そうかしら?」

千早「何を…」

あずさ「スタンドに目覚めたのはこっちの方が先…」

あずさ「私は『ミスメイカー』の『強み』も『弱み』も理解しつくしているわ」

あずさ「千早ちゃんはどうかしら。発現したばかりのスタンド、右も左も、能力さえもわからない…でしょう?」

千早「それは…」

あずさ「それに…忘れていない? 千早ちゃんは今、『右腕』も『片足』も封じられている…ということ」

あずさ「この状況で、五分…本当にそう思っているのかしら?」

千早「………」

335: 2012/09/13(木) 16:48:33.22 ID:pi1yz1Tlo
千早「確かに、スタンドの扱いでは一歩遅れているかもしれませんが…」

千早「だけどさっきの速度…見たでしょう?」

千早「私のスタンド…あなたのものと比べ、『スピード』は比べ物にならないほど速い!」

あずさ「ええ、そのようね…」

あずさ「私の『ミスメイカー』、動きはそんなに速くないから…千早ちゃんのスタンドの速さには驚いちゃった」

あずさ「だけど…」

千早「行きなさい!」ゴオ

あずさ「………」ス…

スカッ

千早「あっ!?」

あずさ「やっぱり…」

あずさ「まだ、扱いに慣れていないのかしら…? 動きが『単調』で避けやすいわ」

337: 2012/09/13(木) 16:49:29.88 ID:pi1yz1Tlo
千早(くっ、体が『重い』…)

千早(『眠らされ』た部分がそのまま負担になっているのかしら…)

千早(自由が利けばもう少しまともに戦えるのに…と、言ってても仕方ないわね)

千早(なら…)スス…

あずさ「あら、迂回して…向こうのドアを目指すつもり?」

千早「こうやって奥の方でじたばたしているよりは…ましかと」

あずさ「そうね…いい判断だわ」

クルッ

あずさ「だけどいいのかしら、背中を見せて」ズ…

千早(隙を見せれば、向こうから攻撃を仕掛けてくる…)

千早(だけど、こっちのスタンドの方が『スピード』は速い…『後出し』でも充分いけるわ)

千早(あずささんが攻撃してきたら、居合い抜きの達人のように素早く…カウンターを決める…!)

あずさ「『ミスメイカー』」ス…

千早(今よッ!)

339: 2012/09/13(木) 16:50:13.98 ID:pi1yz1Tlo
ドオッ

千早(やっぱり、『スピード』はこっちの方が上! このまま…)

シャッ!

千早「!」ビクッ

千早(カーテンの閉まる音…)

千早(これくらいで、動揺するとでも…)

フッ

千早「え…」

千早(光が…消えた!?)

千早(あずささんの姿が見え…ない…!)

フラ…

あずさ「そこね」

ヒュン

バキィ!

千早「ぐっ…うぐっ…!?」ズキリ

カチリ

千早「ひ…左腕が…!」

あずさ「この部屋の照明を『眠らせた』わ。スイッチを押さなくても消せるのって便利よね~」

千早「くっ…」

千早(これくらいはお見通し…と、言うわけ…)

千早(そして一つわかった、このスタンド…)

千早(慣れてないだとか…体の自由が利かないせいだと思っていたけれど、そうじゃあない…)

千早(私とこの『スタンド』とでは、体格が違いすぎる! だからコントロールできないんだわ…)

341: 2012/09/13(木) 16:51:25.76 ID:pi1yz1Tlo
千早(そ、それよりも…)

千早「殴られたのは私のスタンドなのに…なぜ、私の腕にも『カウント』が…」チッ チッ

あずさ「ああ、千早ちゃんは知らないのね…」

あずさ「スタンドは、人の精神力が生み出すエネルギー体…」

あずさ「『スタンド』と『スタンド使い』…『本体』は一心同体。スタンドへのダメージは、本体へのダメージよ。逆もしかり」

千早「そうですか、なら…」

千早「こっちもあずささんのスタンドに攻撃すれば、あずささんにダメージが行く…ということですよね」

あずさ「…これで『両腕』を封じたわ」

あずさ「千早ちゃんのスタンド…恐らく『ミスメイカー』と同じで『触れて』能力を発動するタイプ」

あずさ「もう能力は使えない」

343: 2012/09/13(木) 16:52:14.89 ID:pi1yz1Tlo
千早「いえ、この『左腕』は殴られただけ…」

あずさ「あらあら」

千早「まだ『眠って』はいない…!」

ドドドドドド

千早「ふっ!」ボヒュ

あずさ「そうやって…」

ススス…

スカ…

千早「う…」

あずさ「闇雲にスタンドを突っ込ませて、どうにかなると思ったのかしら…?」

ガシッ

あずさ「いくら速いと言っても…」

あずさ「まっすぐ突っ込んでくるだけなら…ほら、捕まえるのも簡単」

カチカチカチ…

千早「なっ!?」

千早(『カウント』の進みが早い…!)

あずさ「『ミスメイカー』は通常触ってから、『眠る』まで『91秒』の時間がかかる…」

あずさ「だけど、こうして触っていれば『カウント』は早く進む。もっと短い時間で『眠らせる』ことができるわ」

345: 2012/09/13(木) 16:53:26.63 ID:pi1yz1Tlo
千早「このまま触れさせておくわけには…」

千早「いかな…」グイ!

シン…

・ ・ ・ ・ ・

千早(振りほどけ…ない…)

あずさ「千早ちゃんのスタンド…」

あずさ「小さい分『スピード』は速いけれど…『パワー』はとても弱いようね~」グ グ グ

千早(『パワー』が違いすぎる…)

千早(こんなもの、小学生くらいの子供がプロレスラー相手に腕相撲をしているようなもの…ビクともしない…)

カチカチカチ…

カチリ!

千早「あ…」ストン

あずさ「将棋で言うなら…『王手』と言ったところかしら?」

347: 2012/09/13(木) 16:54:02.90 ID:pi1yz1Tlo
バッ

千早(このままでは…一方的にやられるだけ…)

ズリ…

千早(私のスタンドにも…恐らく、あずささんのものと同じで…何らかの『能力』があるはず)

千早(殴れなければ、どんなものかもわからないけれど…このスタンドの能力は使うことすらできない)

千早(ならまずは『10m』…射程の外に出なければ…)

千早(だけど、こんな足じゃ…)

グキッ

千早「くっ!」

千早(挫いた…無理に走ろうとするから…)

あずさ「やっぱり、足を『眠らせた』のは正解だったわね~」

千早「!」

あずさ「こうして、逃げられそうになってもすぐに追いつける…から」

349: 2012/09/13(木) 16:55:06.62 ID:pi1yz1Tlo
あずさ「まだ抵抗する?」

千早「質問を質問で返させてもらいますが…」

千早「諦めると…思いますか?」

あずさ「そう」グオン

千早「!」

フッ…

千早「え?(バランスが…)」

グラ…

千早「きゃっ!」ドタァン

ブルン

あずさ「………」

千早「痛…」

あずさ(やはり…)

あずさ(千早ちゃんの避け方、これは『偶然』ではないようね)

あずさ(無意識のうちに、『能力』を使っている…と見た方がいいわ)

あずさ(でも、どういう能力なのかしら…?)

あずさ(春香ちゃんの『アイ・ウォント』みたいに、感覚を操作して転んでいるとか…? まさかね…)

351: 2012/09/13(木) 16:56:04.02 ID:pi1yz1Tlo
ズル…

千早「く…」ズリズリ

千早(手が不自由だと、立つのも一苦労だわ…)

あずさ「避けたのはいいけど…それが逆に『ピンチ』を招いているわね、千早ちゃん」

あずさ「今のあなたは手も足も出ないッ!」

ゴゴゴゴゴゴ

千早「手は出ないけれど…」

ヒュッ

バキャッ

あずさ「ん!」グキ

千早「足は出るわよ、この通り…」グググ…

ギャァァン

あずさ「うぐっ!」バキィ

ドサァ

あずさ「うう…」フラ…

千早「………」ズル…

あずさ(スタンドで蹴りを…そして、その反動で廊下の方まで進んだのね…)

あずさ(『戦闘のセンス』…才能がある子って、何をやらせても上手いものよね)

あずさ(春香ちゃんが私を差し向けてまで千早ちゃんを確保しようとする理由…わかる気がするわ)

353: 2012/09/13(木) 16:56:42.78 ID:pi1yz1Tlo
千早「廊下に出られた…」

千早「だけど…」

千早「これから、どうするの…? あずささんは、すぐに…」

ヌ…

あずさ「追いついてくる…わよ?」

千早「…!」

あずさ「さぁ、どうするのかしら?」ズズ…

ガシィ!!

千早「う…」

あずさ「ちょこまかと動き回られたら面倒だから…」

千早(廊下に出たらなんとかなるかと思ったけれど…)

あずさ「こうやって腕を押さえつければ、今度こそ…もう逃げられないわよ~」

千早(どうにも、なりそうもない…)

あずさ「さぁ、あとは『頭』に触れ…」ス…

355: 2012/09/13(木) 16:57:14.97 ID:pi1yz1Tlo
『届かないメッセージ 不可視なラビリンス』

あずさ「!?」ビクゥ

ゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

ゴゴゴ

『心の安らぎ 導いてよ』

あずさ「伊織ちゃん… ………」

あずさ「の…携帯電話からか…びっくりしちゃったわ…」

ビシィ!

・ ・ ・ ・

あずさ「………」

千早「はぁ、はぁ…」グ…

あずさ「千早ちゃん…?」

ズル…

あずさ「『右腕』は『眠らせた』はず…」

千早「動かないのは『右肩』だけ…」

千早「肘から下は…少しだけ、動くわ」

あずさ「…そう」

357: 2012/09/13(木) 16:57:54.68 ID:pi1yz1Tlo
グオン

バキィ!!

千早「がっ…!」

あずさ「油断…しちゃったかしら、ちょっと…いえ、だいぶ」グイッ

カチカチカチ…

フ…

ガクン!

千早(右腕が…もう動かせない、どこも…)

あずさ「これで今度こそ『両腕』を封じた…」

あずさ「終わりよ、千早ちゃん」

カチ!

千早「あ…」

あずさ「頭に触れた…」

千早(もう…駄目なの…?)

カチカチカチ

あずさ「このまま触れていれば…『30秒』くらいですぐに『眠る』わ」

359: 2012/09/13(木) 16:58:26.24 ID:pi1yz1Tlo
あずさ「千早ちゃんのスタンドの能力がなんであれ…」フ…

あずさ「大きな影響が出る前に『眠らせ』ちゃえば…」フラ…

あずさ「あれ…?」フワワ…

千早「え?」

あずさ「あ、あら~?」フワァーッ

千早「こ、これは…」

あずさ「千早ちゃんのスタンド…」

あずさ「か、体が浮く…!」

あずさ(これは、まさか…物体を『軽く』する能力…!?)

千早「っ!」フラ…

ズリズリ

あずさ「あっ、千早ちゃん…!」

あずさ(スタンドの能力は、発動の鍵は手だけど…)

あずさ(能力自体は、スタンド自身のものだから…手を『眠らせ』ても消えない…)

あずさ「これじゃ追いかけられないわ…詰めを誤ったわね…」プカプカ

361: 2012/09/13(木) 17:00:36.44 ID:pi1yz1Tlo
スタンド名:「ミスメイカー」
本体:三浦 あずさ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:D 射程距離:E(3m) 能力射程:C(10m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:E
能力:攻撃を当てた対象を「91秒」で「眠らせる」、あずささんのスタンド。
既にカウントが表示されている部分に触れると、カウントが早く進んでいく。
「眠らせ」たものはその機能を停止し、能力を解除することで再び動き出す。「ミスメイカー」自身の射程距離は広くはないが、能力の効力が続く範囲は広め。
本体であるあずささんがのんびりとした性格なのでスピードはそれほど早くはないが、その分パワーはとても高く、並のスタンド相手ならば押し負けることはまずない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

これで今回分は終了です。支援ありがとうございました。

389: 2012/09/20(木) 22:54:38.93 ID:cXSlsx6Eo
当てが外れました。どなたか支援お願いします

391: 2012/09/20(木) 23:00:56.24 ID:cXSlsx6Eo
グ!

フラフラ

あずさ「うーん…」グ…

フワァ…

あずさ「やっぱり駄目、足がつかないわ…」

あずさ「今、『空気』と同じくらいの重さ…無重力状態にされているのね…」

あずさ「こんな状態でちゃんと動けるなんて凄いわね、『宇宙飛行士さん』は…訓練には5年以上かかるらしいけど…」

あずさ「うぅ、そんなことを言ってる場合じゃないわ…」

あずさ「射程の外まで行かれたら、千早ちゃんに逃げられてしまう…!」

フ…

あずさ「え?」

ドサァ!

あずさ「きゃあっ!」

あずさ「こ、これは…もしかして…」

393: 2012/09/20(木) 23:01:33.75 ID:cXSlsx6Eo
千早「はぁ、はぁ…」

ズリ…

・ ・ ・

スゥ…

千早「!」

ドドドドドドドド

千早「足が…!」パタパタ

キュッ

千早「それに、腕も動く…! 体も軽くなったわ!」

千早「『射程距離』の外に出られたようね…これで、あずささんの『スタンド』の効果はすべて消えた!」

千早「だけど…」

千早(この場で逃げ切ったとしても…)

千早(事務所ではいつも顔を合わせる…あずささんのスタンドで気づかないうちに『眠らされ』れば、対処しようがないわ)

千早(だったら、今この場で決着をつけた方が…)

395: 2012/09/20(木) 23:02:29.15 ID:cXSlsx6Eo
千早「一度、戻ろう…かしら」

あずさ「その必要はないわ」

千早「!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ「もうとっくに逃げてると思ったけど、まだ、こんなところにいたのね…」

千早「あずささん、どうして…? 能力は解除していないはず…」

あずさ「『射程距離』よ」

千早「射程距離…」

あずさ「よくよく考えてみれば、私の『ミスメイカー』に『射程距離』があるように…」

千早「なるほど、私のスタンドにも、あるはずですよね…」

あずさ「これで、今度こそ『五分』かしら? 負ける気はないけれど」

千早「そうですね…」ジリ…

ダッ!

あずさ(逃げた! …いえ)

あずさ(千早ちゃんは、わざわざ私を待っていた…そしてさっきの千早ちゃんの言葉…逃げる気は…ない?)

あずさ(だとしたら、これは…おびき寄せている? 私を…)

あずさ「いいわ、千早ちゃん。あなたの誘いに乗ってあげる」

397: 2012/09/20(木) 23:03:18.69 ID:cXSlsx6Eo
………

……



千早「………」ピタ

ドドドドドドドドド

あずさ「どこへ行くかと思えば、外に来ただけ…?」

あずさ「確かに…室内にいるよりは有利かもしれないけど」

千早「ここなら…」

千早「遮るものも、ぶつかる壁もない」

あずさ「『軽く』するものもね。こんなところじゃ、小細工もできないわよ?」

千早「小細工? 必要ありませんよ」

あずさ「…なんですって?」

千早「堂々とこのスタンドを叩き込むだけです」

あずさ「ずいぶんと甘く見られたものね…」

あずさ「やってみるといいわ…正面からぶつけて、勝てるというのなら!」

千早「行きます」

バオォ!

あずさ「ふっ!」ドン!

ドギャア!!

あずさ「………」

ピシッ

千早「!」ブシュ

バガァ!

399: 2012/09/20(木) 23:04:43.00 ID:cXSlsx6Eo
千早「うっ、ぐっ…!」ズリ…

ドッギャァーン

千早「くっ…」ズササァ

ブシュゥゥ-ッ

千早「…スタンドの腕にヒビが…」

カチ!

あずさ「拳と拳…正面から打ち合って、本当に勝てると思っているの…?」

あずさ「胴体に打ち込んで、『軽く』すれば逃げることは出来るわ…! そうしないのかしら…!?」

千早「しない…」

千早「正面からぶつかってあなたに勝つ」ズ…

ヒュッ!!

あずさ「それでなんとかなると…本気でそう思っているの!?」

バキ!!

千早「がっ…!」グキ!

あずさ「世の中にはどうにもならないこともあるのよ」

千早「二発じゃ…駄目なのかしら」

あずさ「何発来ようと通用しないわ! 『カウント』もあと少し、どうあがいてもあなたは勝てやしない!」

401: 2012/09/20(木) 23:05:20.42 ID:cXSlsx6Eo
千早「うおおっ!!」ヒュッ!

あずさ「学習能力がないのかしらァ~ッ!?」ドォォン

ドガァァン

あずさ「正面から打ち合えば『ミスメイカー』のパワー」

あずさ「そんな鉛筆の先で突っついているようなパワーでどうこうできるものじゃない!」ググググ…

千早「………」グ…

フワ…

あずさ「私の体を少しずつ『軽く』しているみたいだけれど…」

あずさ「それだけの能力では私には勝てないわよ、千早ちゃん!!」

千早「…『軽く』している?」

カチカチカチ

403: 2012/09/20(木) 23:06:11.22 ID:cXSlsx6Eo
千早「違いますよ、あずささん」グ…

あずさ「…?」

千早「むしろ逆…『重く』しているんです」

あずさ「『重く』…どういうことかしら?」

千早「さっきから妙に体が重いと思ったら…」

千早「このスタンド、奪った体重は私に加算されるみたい」

千早「『軽く』するのではなく『重量』を『奪う』、それが能力」

千早「『眠らされ』たから重いのだと思っていたのですけれど、私自身の能力だったみたいですね」

千早「さっきはこのスタンドの『射程距離』の外に出たから能力が解除され、軽くなった」

あずさ「それが一体…」

千早「わかりませんか…?」ググ…

あずさ「うっ!?」グ…

千早「パワーというものは、重ければ重いほど…」

あずさ「な、なんですって! こ、このパワーはッ!!」

千早「ヘヴィになっていく」

405: 2012/09/20(木) 23:06:44.22 ID:cXSlsx6Eo
あずさ(このスタンド、『ミスメイカー』の…私の『重量』を奪い…)

あずさ(重くなった分が、そのまま『パワー』に加算されているということッ!?)

グ グ グ

あずさ(それだけじゃあない…こっちのパワーも『重量』と一緒に…)

グ グ グ グ グ

あずさ「わ…私の…『ミスメイカー』が、押し負け…」

グオン!

あずさ「きゃあッ!!」

ドギャア!

千早「小さいけど、その身体には大きな可能性を秘めている…」ドクドク

カチ!

ピタァ…

千早「この能力…『ブルー・バード』とでも名付けようかしら」

407: 2012/09/20(木) 23:07:09.39 ID:cXSlsx6Eo
千早「さぁ、決着をつけましょうか?」

千早「もう『パワー』はこっちの『ブルー・バード』の方が上ですけど」

あずさ「う…」

あずさ(スタンドは精神のエネルギー…正面から挑んで負けてしまった、もう私の『ミスメイカー』の『パワー』は役に立たない…)

あずさ(千早ちゃんは…スタンドバトルの本質を『直感』で理解しているの…? だから、こんなことを…)ズリ…

千早「逃げる気ですか? この期に及んで…さっきまでとは、立場が逆になりましたね」

千早「その怪我で動けるのは『軽く』しているから…どの道、射程の外までしか逃げられませんよ」

あずさ「はぁー、はぁー…」

あずさ「逃げる…ね、違うわ…私の『ミスメイカー』…忘れたのかしら…」

千早「…?」

あずさ「『油断』…したわね、千早ちゃん」

千早「!」ガクン

千早(『両膝』…! いつの間にか触られていた…)

409: 2012/09/20(木) 23:07:58.82 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「そしてッ!」

あずさ「『ミスメイカー』ァァァァッ!!」ドボォ

千早「………」ドヒュン

バキャァ!!

あずさ「ぐっ!」グキッ

あずさ「こっちは…両手あるのよ、片腕だけじゃ…!!」

あずさ「防げない!!」ゴォオ

ピタ…

あずさ「………」

オ オ オ オ オ オ オ

千早「………」

カチ!

あずさ「触れたわ…頭に…」

あずさ「これで、私の勝ちよ! 千早ちゃん!」

千早「…そう思う? 本当に…」

あずさ「私を『軽く』して動けなくも、千早ちゃんは『能力射程』の外まで行くことはできない! 這って行こうとしても、その前にカウントは『ゼロ』になる!」

あずさ「これは『詰み』よ! 打つ手はないわ!」

411: 2012/09/20(木) 23:08:43.43 ID:cXSlsx6Eo
千早「別に…私が動く必要はない」

あずさ「え?」

千早「何のために外へ出てきたと思っているの?」

千早「私の足が動かないというなら…」

千早「あずささんに、射程の外まで出て行ってもらえばいい」

あずさ「な…」

あずさ(まさか…! まずい、距離が近すぎ…!!)

千早「『ブルー・バード』!」

ドグオ

あずさ「うぐっ… …!」

あずさ「あ…」フワ…

千早「あずささん…」

千早「あなたの体重を空気より…もっと、『軽く』…」

千早「限りなくゼロにした」

ガィィーン

あずさ「きゃあああァァァァッ!!」ブオン!!

千早「飛んで行きなさい、鳥のように優雅にとはいかないけれど」ファサッ

413: 2012/09/20(木) 23:09:17.50 ID:cXSlsx6Eo
スゥ…

千早「数字が消えたわ。能力射程の外に出たようね」

千早「そして…」

千早「私の『ブルー・バード』の能力も、消える」フ…

ヒュゥウウウウ…

千早「さて…もう一撃」ス…

バキャア!!

ヒュルルルル…

あずさ「ぐへ!」グシャ

千早「………」

千早「ちょっと…」

千早「やりすぎたかしら…いえ、手加減しては逆に私がやられていたかも…」

千早「ごめんなさいね、あずささん」

415: 2012/09/20(木) 23:09:42.72 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「う、うぅ…千早…ちゃん…」

千早「!」

あずさ「効いたわ…とても…」

千早「あの高さから落ちて生きているッ!(別に頃す気はなかったけれど) 気を失ってもいない!」

千早(どうやら…クッションになったようね…豊満なバストが!)

ドタプゥゥーン

千早「くっ」

千早「なら、もう一度『ブルー・バード』を叩き込んで『再起不能』に…」グッ

あずさ「待って…千早ちゃん」

あずさ「降参…降参よ。これ以上やりあうつもりはないわ」

千早「………」ピタ…

あずさ「あの高さから叩き付けられて無事なのは…あなたの『ブルー・バード』に殴られたお陰…ちゃんと理解している」

あずさ「私の…負けよ」

千早「…そう」

千早(勝った…のね、私は…)

417: 2012/09/20(木) 23:10:05.76 ID:cXSlsx6Eo
千早「では、あずささん…教えてください」

千早「『スタンド』のこと…そして、『春香』のこと」

千早「あずささんがが知っていること…すべて話してもらう」

あずさ「…わかったわ」

ドドドドドドドド

ドドドドドド

………

千早「『春香』…『弓と矢』…『スタンド使い』…」

あずさ「春香ちゃんは…スタンド使いを増やして『仲間』を増やしているわ」

千早「そんなことをして、春香は一体何を…」

あずさ「さっきも言ったけれど、春香ちゃんが何を考えているかはわからない」

あずさ「ただ、『仲間』を増やすこと…それを目的としていることは確かよ」

千早「………」グッ

あずさ「千早ちゃん…? まさか、春香ちゃんを倒そうだなんて考えてないわよね…?」

千早「そのまさかと言ったらどうするんですか…?」

あずさ「『アイ・ウォント』の能力! 説明したでしょう!? 千早ちゃんの『ブルー・バード』…『重量』を『奪う』能力では到底敵わないわ!」

あずさ「悪いことは言わない…今は春香ちゃんに近づくことはやめて」

千早「そういうわけにもいきません」

千早「今の私があるのは、プロデューサーと…春香のお陰です」

千早「その春香がみんなに迷惑をかけているのなら、私は彼女を止めなければいけない」

419: 2012/09/20(木) 23:10:33.80 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「春香ちゃんを止める…今のあなたじゃ、できっこないわ。そんなこと」

千早「私では春香には勝てない…そう思っているのですか?」

千早「だけど、先延ばしにするわけにもいきませんよ。私のように、何もわからず襲われる…そんなことを、春香にはさせたくない」

あずさ「本気…なのね…?」

千早「はい。春香は夜になれば帰ってきますよね?」

あずさ「なら、仕方ないわ…」

カチ!

千早「!?」グラ…

あずさ「………」

千早「なに、を…」

バタン…

あずさ「千早ちゃん…春香ちゃんを倒せないと思っている…? むしろ逆よ」

あずさ「春香ちゃんの『アイ・ウォント』を倒せる可能性があるのは…春香ちゃんに会っていない、あれに対する『恐怖』を持たず、精神を折られていないスタンド使い…」

あずさ「あなたしかいないのよ、千早ちゃん」

あずさ「だからこそ…あなたを春香ちゃんに会わせるわけにはいかない」

あずさ「今は雛鳥の『ブルー・バード』が、『アイ・ウォント』を倒せる力となる…その時まで」

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

To Be Continued…

421: 2012/09/20(木) 23:11:21.45 ID:cXSlsx6Eo
スタンド名:「ブルー・バード」
本体:如月 千早
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:E~A スピード:B 射程距離:D(7m) 能力射程:C(10m)
持続力:E 精密動作性:E 成長性:A
能力:物体の「重量」を「奪う」ことができる千早のスタンド。
「重量」は本体である千早と連動しており、「奪う」ことで物体を軽くすれば、体重は千早に加算される。
通常時のパワーは非常に弱いが、「重量」が増えることで、そのパワーはどこまでも上がっていく。
一度に二つまでの物体の重さを「奪う」ことが可能。「重量」は「ゼロ」になるまで奪うことができ、物体を「空気」より軽くすることもできる。
スタンド像がなぜか千早の身長に対し非常に小柄なため、操作が難しく、あまり正確な動きはできない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました



To Be Continued...





引用元: 春香「あれ、なんですかこの『弓と矢』?」