47: 2014/04/11(金) 00:55:52 ID:pkbtxUT2





前話はこちら





千早(何故…)

ドッ ドッ ドッ ドッ

千早(何故、こんなところにあの『弓と矢』が…?)

キラ…

千早(一目でわかる、これは765プロに持ち込まれたものと、全く『同じ』ものだわ…寸分違わず…)

千早(けれど…あの時、あの『矢』は皆で壊そうと決めた筈…どういうこと?)

愛「………」

千早「ハッ!」

ドドド ドドドド

千早(待って…ここに、『弓と矢』があるということは…)

千早(日高さん…彼女も、もしかしたら…)



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

48: 2014/04/11(金) 00:57:44 ID:pkbtxUT2
愛「あっ!!」ヒョコ

千早「!」バッ

自分の後ろから顔を出した愛の方に振り向き、『矢』を背中に隠すようにして構える。

愛「この『弓と矢』、こんなところにあったんだ!!」

しかし、愛はおかまいなしに、千早の脇からロッカーに手を伸ばした。

千早「ちょっ…動かないで!」

愛「へ?」ピタ

ゴゴゴゴゴ

千早(思い出す…半年前、春香が『弓と矢』を手にしておかしくなってしまった、あの事件を…)

千早(『こんなところにあった』…? 『矢』は隠されていた、何のために?)

49: 2014/04/11(金) 00:59:53 ID:pkbtxUT2
愛「千早さん?」

千早(わからない…けれど、誰か個人の手に渡すのはまずい。特に…)

愛「どうしたんですか?」

千早(彼女が…『スタンド使い』であるならば…)

千早「日高さん、貴女…この『弓と矢』を知っているのね?」

愛「知ってますよ!!」

千早「では、この『矢』が一体、何なのかも…」

愛「はい!!」

千早「!」

50: 2014/04/11(金) 01:02:38 ID:pkbtxUT2
愛「これ、石川社長が持ってきたんです!!」

千早「え?」

愛「なんか、珍しいものだったから覚えてたんだけど…ロッカーの中にしまってあったんですね!!」

千早「あ、あの…日高さん…」

愛「はい?」

千早「そういうことではなく…貴女も、使えるのよね?」

愛「つかえる…? 何かつっかえてて取れないんですか?」

千早「いえ、だから…貴女も持っているのでしょう?」

愛「………ああ!! 絵理さんが言ってた、『じゃきがん』ってやつですね!!? うっ、右腕が…」グッ

千早「その『じゃきがん』が何なのかは知らないけれど、違うわ…」

千早(しらばっくれているの…? それとも、本当に知らない…?)

51: 2014/04/11(金) 01:04:33 ID:pkbtxUT2
千早「………」

ズ…

ズズ…

千早の背後から、千早と同じくらいの身長をした人型の像が現れる。

千早(半年前…私達は、この『弓と矢』によって、ある能力に目覚めた)

千早(傍に立つもの…『スタンド』)

千早(『矢』に貫かれた上で、生き延びた者は、身体に眠る力を引き出され…この精神の力『スタンド』を使える『スタンド使い』となる)

千早(私は、正直この『矢』に貫かれた覚えはないのだけれど…)

千早(765プロのアイドル全員が、この『弓と矢』によって『スタンド使い』となった)

千早(そしてこれが…私の意思で自由に動く、私のスタンド『ブルー・バード・インフェルノ』)

52: 2014/04/11(金) 01:08:29 ID:pkbtxUT2
ヒュゥゥゥ…

シュゴーッ

千早のスタンドの両腕についた穴から、『熱』と『冷気』が吹き出ている。

千早(『スタンド』は、スタンドを持ち、それを心の目で見る事が出来る者…『スタンド使い』にしか見えない)

千早(これで…日高さんに攻撃する。もちろん、直前で止めるけれど)

千早(もし、見えるのなら…何らかの反応を示す筈よ)

千早(行きなさい、『インフェルノ』!)ヒュン

愛「千早さん!! その『矢』、あたしにもよく見せてください!!」バッ

千早「!?」ビクッ

千早(こっちの方に突っ込んで来た…!? 『インフェルノ』を止め…)グイッ

ガァン!!

千早「くっ」ガク

千早は殴り掛かったスタンドを止めるが、その反動で背後のロッカーのふちに衝突し、座り込む。

53: 2014/04/11(金) 01:10:18 ID:pkbtxUT2
愛「うわっ、どうしたんですか!?」

千早「い、いえ…ちょっとバランスを崩してしまって…」

千早(逃げるばかりか、向かってきた…? 見える人がこんな行動をしてくるの…?)

愛「千早さん、立てますか!? 手、貸しましょうか!?」アタフタ

千早(考えすぎかもしれない…)

千早(日高さんは嘘をつけるような人じゃあない…『スタンド使い』では、ない)

グラ…

ゴォォォォ

千早がロッカーにぶつかった衝撃で、『矢』が愛の方に引っ張られるように倒れ込んで来た。

54: 2014/04/11(金) 01:13:54 ID:pkbtxUT2
愛「きゃっ!? 『矢』が…」

鈍く鋭く光る鏃が、愛の皮膚を切り裂く…

パシィ!

愛「あ…」

千早「………」

前に、千早が箆(の)の部分を素手で掴み、止めた。

千早「矢は危険物だから…気をつけて、日高さん。触れては駄目よ」

愛「は、はい!! ありがとうございます、助かりました!!」

千早(今の動き、『矢』が反応した…? ということは、素質はあるのかもしれないけれど…)

千早は、立ち上がって服を払うと、『矢』をロッカーの中に押し込み、『石川』と書かれたドアを閉めた。

千早(知らないのなら、これ以上『スタンド使い』を増やす必要も、巻き込む必要もないわ)

55: 2014/04/11(金) 01:16:11 ID:pkbtxUT2
千早「日高さん、この『矢』を最初に見たのはいつ?」

愛「えっと、確か…半年くらい前、だったかなぁ?」

千早(半年前…私達765プロに弓と矢が来た時期と、同じね…)

千早(うちと違って、アイドル全員が『スタンド使い』になったわけでもないようだし、石川社長も亡くなってはいないようだけれど…)

愛「確か、知り合いの人に貰ったんだったかなぁ…ごめんなさい、ちょっとよくわからないです」

千早「わかったわ、ありがとう。この話はこれで終わりにしましょう」

愛「あの、千早さん。千早さんは、その『矢』のこと知ってるんですか?」

千早「いえ、ぜんぜん」

愛「?」

千早「それより、日高さん。私達は救急箱を取りに来たのではないのかしら」

愛「あ、そうだった!!」

56: 2014/04/11(金) 01:19:00 ID:pkbtxUT2
………

……

尾崎「ふぅ…これで、片付け終わったかしら」

伊織「ごめんなさい。このカップ、事務所の備品でしょう? 弁償するわ」

石川「いえ、紙コップにしなかったこちらが不用意だったわ。なんとお詫びすればいいのか…」

伊織「い、いいわよそんなの。気にしなくても(どうせ治せるし…)」

ダダダダッ

愛「救急箱取ってきたよー!!」

伊織「あら、随分遅かったわね」

絵理「尾崎さん、伊織さんの手当て、お願い」

尾崎「ええ、わかってるわ」シュッ

伊織「痛っ…」

尾崎「消毒液がしみるかもしれないけど、我慢して。痕が残ったりしたら大変よ」

伊織(尾崎プロデューサーが消毒した傷口の上にガーゼを置き、包帯を巻いてゆく…)

57: 2014/04/11(金) 01:22:08 ID:pkbtxUT2
尾崎「これで、よし」

亜美「おざりん、手当て上手だね!」

尾崎「プロデューサーだから。いざと言う時の応急処置くらいは心得てるわ」

亜美「でも、亜美も負けないよ! なんせパパがお医者さんだから!」

尾崎「そ、そう…?」

伊織「ちょっと切ったくらいで包帯巻くなんて、大げさね…」

絵理「伊織さん、自分の身体は大切にしないと」

やよい「そうだよ、伊織ちゃん。ケガしちゃったら、治すのは本当はとっても大変なんだから」

伊織「…そうよね。その通りよね」

伊織(『スタンド』に関わって来たことで、少し、感覚が麻痺していたかもしれない…)

伊織(私達は、『スタンド使い』である前にアイドルなんだから…)

58: 2014/04/11(金) 01:25:18 ID:pkbtxUT2
千早「水瀬さん、ちょっといいかしら」

伊織「ん、何? 千早」

千早「さっき、向こうの部屋に…」

彩音「みなさーん!」

千早「!」ビクッ

伊織「千早?」

千早「…後で話すわ」

絵理「サイネリア。まだいたの?」

彩音「ヒドっ!」

石川「どうしたの、鈴木さん?」

彩音「あ、いや。ジュースでもいかがデスか? って」

彩音が手に持っているお盆には、人数分の紙コップが置かれていた。

59: 2014/04/11(金) 01:27:17 ID:pkbtxUT2
尾崎「鈴木さん、ジュースってあなた…さっきのを見てなかったの?」

彩音「だからこそ、飲みそびれてるデショ? 紙コップだから大丈夫だって」

伊織「ふーん、まぁ確かに喉は渇いてるけど…」チラ…

伊織「ブラッドオレンジ! もちろん果汁100パーセントよね」

彩音「へ? ま、まぁ多分…」

伊織「なによ、気が利くじゃないの」

亜美「ファントムブラッド? なにそれ」

石川「ブラッドオレンジは、赤い果肉を持ったオレンジよ。ブルーベリー等に含まれるアントシアニンという色素で赤い色を持つの」

亜美「へーっ、よくわかんないけどすごそう!」

愛「鈴木さん、ありがとうございます!!」

絵理「サイネリア、機嫌、直った?」

彩音「エエ、センパイの誕生日ですから! いつまでもブスっとしてちゃ勿体ないですよ!」

やよい「そうですね! みんな仲良しが一番です!」

60: 2014/04/11(金) 01:29:52 ID:pkbtxUT2
彩音「よっと…」

彩音はお盆をテーブルの上に置くと、自分の手前の方にあるコップを、真っ先に伊織の前に置いた。

伊織「ん?」

彩音「ハイ、どーぞ…」

亜美「ありがとー! うわ、赤っ!!」

伊織「ちょっと待ちなさい」

彩音「」ギクーッ

彩音「ハ、ハイッ!? 何か…」

伊織「アンタ、このコップ…」

彩音(ま、まさかバレた…? ヤバっ…)

61: 2014/04/11(金) 01:32:35 ID:pkbtxUT2
伊織「血がついてるじゃない。ほら、ここ」

彩音「あっ…あーっと、それは多分ブラッドオレンジが…」

伊織「違うわ」

彩音「…!!」

伊織「アンタ、指から血が出てるわよ。これがコップについたのね…どこかに引っ掛けたの?」

彩音「あ、イエ、これは…」サッ

伊織「引っ込めなくてもいいじゃない。ほら、見せなさいよ」

ドドドド ドド

彩音「く…」スッ…

伊織「ほら、やっぱり…」

彩音「………」タラ…

彩音の額に汗が浮かぶ。

伊織「誰か、絆創膏と消毒液取って」

彩音(…アレ?)

62: 2014/04/11(金) 01:34:19 ID:pkbtxUT2
やよい「はい、伊織ちゃん」

伊織「ありがと。用意がいいわねやよい」

やよい「たぶん、使うと思ったから」

彩音(バレて…ない?)

伊織「ほら、じっとしてなさい」

彩音「あ…」

伊織は彩音の人差し指に消毒液を吹きかけてから、絆創膏を巻いた。

伊織「ったく、気をつけなさいよ?」

伊織「よくわかんないけど、ネットアイドルだって、アイドルなんでしょ? 自分の身体は大切にしないと」

亜美「いおりん、絵理お姉ちゃんの受け持ちだー」

伊織「うっさい!」

尾崎「受け売りね」

63: 2014/04/11(金) 01:36:54 ID:pkbtxUT2
彩音「………」

彩音(考えてみれば…)

彩音(アタシの『ワールド・オブ・ペイン』のことを、アイツらが知ってるワケがなかったわね)チラ…

絆創膏が巻かれた人差し指を見る。

彩音(…アイツら、あのセンパイがあんなに仲良くするんだし、悪いヒトじゃないのかもしれない…)

彩音(でも…ここまで来たらアタシには止められないし。仕方ないわ)

伊織「さてと、こいつを頂こうかしら」スッ

彩音(さぁ、飲め…)

亜美「あーあ。真美も起きてれば、一緒に飲め…」スッ

パァン!!

亜美が持っていたクラッカーをテーブルの上に置こうとした時、それが暴発した。

伊織「ひゃっ!?」ビクッ

伊織はその音に驚いて、コップを宙に放り投げる。

64: 2014/04/11(金) 01:41:25 ID:pkbtxUT2
バッシャァァ

千早「………」ポタポタ

そして、コップの中身は…伊織の向かい側にいた、千早の頭の上に降り注いだ。

伊織「あ、あの…千早、大丈夫…?」

千早「ええ、大丈夫…大丈夫よ」ゴクン

千早は頭から滴ってきた液体を、少し飲み込んでしまう。

スルッ!

彩音(! ヤバっ…!)

絵理「目が笑ってない…?」

千早「元々こんな目よ」

やよい「亜美! ダメじゃない、こんな時に鳴らしちゃ!」

亜美「ち、違うよ! なんか勝手に…」

やよい「言いわけしない!」

亜美「うう…」

65: 2014/04/11(金) 01:57:15 ID:pkbtxUT2
愛「千早さん、ティッシュ!! ティッシュ!!」

千早「ありがとう…」フキフキ

石川「向こうにシャワールームがあるわ。着替えは涼のものを使ってちょうだい」

千早「そうさせてもら…」スッ

ズ…

千早「…うっ!?」ズキン

ガクッ

千早は立ち上がると同時、強烈な痛みに膝をついた。

亜美「どったの?」

千早「ちょ…ちょっと…お腹が…」

ギリギリギリ

千早「くああああっ!?」ブルッ

伊織「ち、千早!?」

66: 2014/04/11(金) 02:00:20 ID:pkbtxUT2
やよい「だ、大丈夫ですか、千早さん!?」

愛「おトイレ行きます!!?」

絵理「アイドルはトイレなんて行かない…?」

伊織「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

千早「こ、これはそういうタイプの痛みじゃあないわ…」

千早(何、これは…!? 胃に穴が空いたみたい…)

石川「しょ、消防車を…」

伊織「消火してどうすんのよ!」

彩音「ちょっと!」グイッ

彩音が千早の腕を引っ張る。

尾崎「あっ、鈴木さん! 動かしたら…」

千早(え?)

彩音「腹が痛いのなら、コッチで横になりましょう!」

千早(痛みが…少し、和らいだ…?)

千早がその場を離れる度に、少しずつ痛みがなくなっていく。

67: 2014/04/11(金) 02:09:24 ID:pkbtxUT2
彩音「さぁ、ここで横になっててください!」

千早「え、ええ…」

真美「うーん、手が…でっかい手が…」

ロッカー室の、真美の寝ている横にあるベンチに寝かされる。

千早(まだ痛みは残っているけれど、大分楽になったわ…どうして?)

千早(と、言うより…さっきの痛みは、一体…)

千早「申し訳ないわ…事務所を、ジュースで汚してしまって…」

彩音「い、いえ…イイんじゃないですか、緊急事態ですし…」

千早(…? 目が泳いでいる…)

彩音「それじゃ、アタシはこれで。ゼッタイに、動かないでくださいね」

パタン…

千早(鈴木さん…だったかしら。なんだか、怪しいわね…)

千早(けれど、私の腹痛は引いたわけだし…)

68: 2014/04/11(金) 02:18:00 ID:pkbtxUT2
ズキン

千早「…!!」

千早(い…『痛い』…! また、お腹の中が…!!)

ギリギリギリ

千早「うっ…あああっ…!」ガバッ

千早(まるで、胃が押し上げられるような…何なの、これは…!)

バンッ

伊織「千早!」

やよい「千早さん!」

千早「た…高槻さん、水瀬さん…」

やよい「お腹、痛いんですよね。私の『ゲンキトリッパー』で治せるかなーって思ったんですけど…」

69: 2014/04/11(金) 02:24:43 ID:pkbtxUT2
伊織「ねぇ、千早…おかしいと思わない?」

千早「な、何が…」

伊織「何なのかはわからないけど…さっきからなんか、『奇妙』なのよ…」

千早「み、水瀬さん…そこのロッ…ぐっ!」ズキン

伊織「千早!」タッ

やよい「千早さん! 今、治します!」タタッ

千早(これは…二人が近付いてくるたびに、痛みが強くなる…!?)

千早(上ってくる…『なにか』が、私の腹の中からこみ上げてくる…!)

千早(これ以上、二人を近づけさせてはならない…何故か、そんな気がする…!)

ガリガリガリ

千早「~~~~!!」

千早(痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!)

千早(痛みで体中の筋肉が…喉が凍る! 声が…出せない!)

70: 2014/04/11(金) 02:30:38 ID:pkbtxUT2
千早(こうなったら、『インフェルノ』で…二人に、どうにかして伝えるしか…)

ズ…

伊織「えっ? 『ブルー・バード・インフェルノ』が…」

やよい「ち、千早さん? どうしたんですか?」

ズキン!

千早「~~~…!!」

千早(ああ、駄目…痛みで集中できない…!)

ズズズズズ

千早(胃から、食道…喉まで…)

千早(『痛み』が…痛みがどんどん…上に昇ってくる…!!)

千早「~~…~~~~…!!」ギリギリギリギリ

プチュ

千早「う」

71: 2014/04/11(金) 02:32:35 ID:pkbtxUT2
タラ…

口から一筋、赤い線が流れた。

伊織「…………え?」

千早「あぅっ」プププッ

ビチャァ!!

千早が口から、血を噴き出した。

伊織「きゃ…きゃああああああああああ!?」

やよい「ち…千早さんッ!!」

伊織「こ、これはまさか…スタンド攻撃ッ!?」

75: 2014/04/11(金) 10:44:57 ID:pkbtxUT2
忘れてた
特に言及なければ毎週木曜に投下します

スタンド名:「ブルー・バード・インフェルノ」
本体:如月 千早
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:A 射程距離:E(2m) 能力射程(能力が続く範囲):D(7m)
持続力:D 精密動作性:B 成長性:C
能力:吹雪のような力強さと、炎のような速さを併せ持つ千早のスタンド。
触れたものの「熱」を「奪う」、あるいは触れたものに「熱」を「与える」能力を持つ。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

77: 2014/04/17(木) 23:52:49 ID:8OLE9cbE
前回までのあらすじ

千早「かはっ」

バタン!

伊織「千早!?」

ドクドクドク

伊織「ひっ…!」

やよい「血が…血が、止まりません…!」

ドドドド ドドド

伊織「止まって…お願い、千早…止まって…」

ゴク

伊織「ハッ!? これはブラッドオレンジ!」

こうして、千早の氏体は765プロの天井裏に安置されることになった。

765プロはブラッドオレンジのジュースを販売する企業になり、伊織の末代になるまで栄え続けたと言う…

78: 2014/04/17(木) 23:55:22 ID:8OLE9cbE
ビチャ ビチャッ

千早「ぅ…か…」

バタン!!

やよい「ち…千早さん!」

伊織(私達の目の前で…)

千早「」ビクッ ビクン

ドクドク

伊織(千早が、血を吐いて倒れた…)

やよい「は、はやく『くっつけ』て治さなきゃ…」タッ

伊織(!)

伊織「待って、やよい!」

やよい「えっ?」ピタッ

79: 2014/04/17(木) 23:58:01 ID:8OLE9cbE
伊織「…それ以上近付いちゃ駄目よ」

やよい「で、でも、血が…」

伊織「いきなり血を噴き出すなんて、普通じゃあないわ」

やよい「そうだよ、だから千早さんをこのまま放っといたら…」

伊織「落ち着いて、やよい。『ゲンキトリッパー』は遠隔操作でしょう? 離れたままでも治療はできるわ」

やよい「え? なんで…」

伊織「いいから、やよいはそこから動かないで」

やよい「う、うん。『ゲンキトリッパー』!」

ワラワラ

やよいの背後から小柄なスタンドが姿を現し、指が崩れだす。

そこから生まれた無数の粒の一団が、千早の口の中に飛び込んでいった。

伊織(やよいのスタンド、『ゲンキトリッパー』は米粒みたいな小さな『スタンド』の集合体)

伊織(そして、能力は『くっつける』こと! その力は超強力!)

伊織(細胞のように細かいスタンドは、傷ついた部分も『くっつけ』て埋めてしまい、痕も残らない)

80: 2014/04/18(金) 00:01:10 ID:ABg6n82E
モゾモゾ…

伊織「やよい、何か異常はない?」

やよい「千早さんのお腹の中、引っ掻かれたみたいになってるよ…」

伊織(やよい自身には、何か起こってる様子はないわね)

伊織(『スタンド』と本体は一心同体…『スタンド』が受けたダメージは、本体にも影響を与えるんだけど…)

伊織(『ゲンキトリッパー』は細かい一部分が潰されても大してダメージにはならない。狭い場所を調べるには持ってこいだわ)

伊織(だから、『原因』が千早の体内に残っていれば、何かわかると思ったんだけど…)

やよい「ふぅ…とりあえず、傷は『くっつけ』たよ」

伊織(何かが、おかしい…嫌な予感がする)

千早『…後で話すわ』

伊織(千早は、何かを伝えようとしていた…)

千早『さっき、向こうの部屋に…』

伊織(千早が来たのは、ここよね…何かあるの?)

千早『そこの、ロッ…』

伊織(…ロッカー?)

81: 2014/04/18(金) 00:03:30 ID:ABg6n82E
伊織「………」チラ…

伊織(調べてみるか…)

モクモクモク

伊織の身体から、白い『煙』が上がる。

『煙』はどんどん広がっていき、部屋に置いてあるロッカーを覆った。

伊織(これは…私の『スタンド』、『スモーキー・スリル』)

伊織(『煙』のスタンドは広い範囲のものを掴み、動かすことが出来る)

ガタ ガタッ

伊織の『スモーキー・スリル』が、『ロッカー』の扉を一斉に引っ張る。

バンッ!!

やよい「わっ!?」ビクッ

やよい「何やってるの、伊織…ちゃ…」

・ ・ ・

やよい「こ…これって…」

伊織「悪い予感は…当たるものね…」

82: 2014/04/18(金) 00:05:48 ID:ABg6n82E
キラ…

伊織(『弓と矢』! 千早の話ってのは、これのことだったのね…)

伊織(そして、『弓と矢』がここにあるってことは…千早がやられたのは、やっぱり…)

やよい「もしかして、これって『スタンド使い』のせいかも…」

伊織「ええ、それは確かね」

伊織(でも、それらしき姿は見えないわ…)

伊織(どこの誰がどうやって千早を攻撃したのか、全くわからない…)

ズキン

伊織「!?」

伊織は突然足に、鈍い痛みが走るのを感じた。

伊織「い…『痛い』!」

やよい「伊織ちゃん?」

ドド

83: 2014/04/18(金) 00:08:45 ID:ABg6n82E
伊織「何なの、一体…!?」

ドドド

モゾ

伊織が視線を落とすと、小さな赤黒い塊が、足にくっついていた。

伊織(なに、これ…)

モゾモゾ

伊織(『血』?)

ギッ

伊織「痛っ…!」

やよい「伊織ちゃん!」

伊織(こいつ、締め付けてくると言うか…皮膚を突き破ろうとしている!?)

伊織「ち…通りで見つからないわけだわ、千早の吐いた血と一緒に出てきたのね…」

84: 2014/04/18(金) 00:12:02 ID:ABg6n82E
モクモクモク

伊織は『煙』を近くに集中させ、自分の体を持ち上げる。

伊織「伊織ちゃんのおみ足に…いつまでもくっついてるんじゃあないわ!」ブオンッ

空中で弧を描くように大きく足を払い、遠心力で『血』を剥がした。

ピッ

伊織「!」

ビチャン!!

伊織(く…剥がした時に、ちょっぴり皮を切られた…)タラ…

やよい「伊織ちゃん、今『くっつけ』るね!」

伊織「ええ、ありがとうやよい…」

ツゥーッ

伊織(血の塊が、こっちに近付いてくる…)

伊織「そんなちっぽけな『スタンド』で、私達をどうこうできるとでも思ってるのかしら? やよい!」

やよい「うん、止める! 『ゲンキトリッパー』!」パラパラ

85: 2014/04/18(金) 00:14:52 ID:ABg6n82E
ウー ウッウー

小さなスタンドの粒が、血の球に向かっていく。

伊織(やよいの『ゲンキトリッパー』に捕まったら、動けるスタンドはない!)

スルッ

しかし、『血』は改札を抜けるように平然と、『ゲンキトリッパー』を通り抜けていった。

やよい「えっ!?」

伊織「ちょ、ちょっとやよい!?」

やよい「なんか、ヘンかも…『くっつか』…ない…?」

伊織(『くっつか』ない…? そんな、バカなこと…)

伊織「なら、『スモーキー・スリル』で!」モクモクモク

スルルッ

『煙』で掴もうとするが、逃げるようにすり抜けてしまう。

ツゥゥーッ

伊織「つ…」

伊織「掴めないッ! そうか、『液体』だから…」

86: 2014/04/18(金) 00:16:48 ID:ABg6n82E
ツルルルル…

伊織(『血』のスタンド! どうやって止める…?)

ウッウー ウゥー

伊織「…あら?」

やよいの小さなスタンドが、向こうの部屋からガラスのコップを運んでくる。

やよい「伊織ちゃん、あれを!」

伊織「コップ? …なるほどね!」モクモクモク

『煙』が部屋の入り口の方まで飛んでいき、コップを掴む。

伊織「『スモーキー・スリル』!!」ヒュッ

カコン!!

それを逆さまにして地面に『くっつけ』、『血』を閉じ込めた。

伊織「よし、捕まえたわ!」

87: 2014/04/18(金) 00:18:34 ID:ABg6n82E
やよい「はわっ…!」

伊織「ち…!」

勢いよく飛んで来た破片が、伊織の目の前で止まる。薄い『煙』の膜が、ガラスを掴んでいた。

ガシャ カラァァン

ズルズル

伊織「こいつ、見た目より…『パワー』が強い!」

やよい「伊織ちゃん、もっと離れよう!」

伊織「ち…それしかないか」

サササッ

ス…

伊織(!)

スゥーッ

伊織(追いかけてくる…スピードはあまり速くはないけど…)

88: 2014/04/18(金) 00:21:46 ID:ABg6n82E
伊織(どうする? この部屋にいては、引き離せないわね…)

伊織「やよい…部屋を出るわよ」

やよい「………」キョロキョロ

伊織「やよい? どうしたの?」

やよい「えっと、なんで真っ直ぐこっちに向かって来てるのかなーって」

伊織「え?」

やよい「だって、私の『ゲンキトリッパー』みたいに遠くまで行ける『スタンド』って、ちゃんと見ないとちゃんと動かせないよ?」

伊織「確かに、そうね…」

伊織(『遠隔操作』は遠くに行けば行くほど正確な動きはできなくなるはず…私の『スモーキー・スリル』もそう)モクモクモク

伊織(『煙』のセンサー…この部屋の周りを調べてみたけど、動きは感じられない…)

伊織(本体が近くで見ているわけじゃあ…ない?)

89: 2014/04/18(金) 00:23:24 ID:ABg6n82E
伊織「………」モクモク

カラン

進行方向に、ガラスの破片を置いてみる。

キン!

『血』はそのまま真っ直ぐ進んで、破片を弾き飛ばした。

伊織(こっちに向かってくるだけ…間に何があろうとおかまいなし…か)タタッ

伊織「…もしかして、こいつ『自動操縦型』のスタンドなんじゃあないかしら」

やよい「じどう…そうじ?」

伊織「本体の意思とは無関係に、勝手に動くスタンドよ」

伊織「こいつは真っ直ぐ正確に私達の方に向かって来てる。砂糖に群がろうとするアリのように…」

やよい「うん…勝手に動くけど、動きは決まってるかも」

伊織(『自動操縦』の中でも『自立行動型』…ひとりでに考えて行動するタイプもあるけど…)

伊織(この血の塊に、目や考える頭があるようにも見えないわね)

90: 2014/04/18(金) 00:25:59 ID:ABg6n82E
伊織「そして、『自動操縦』は本体と離れてもパワーが落ちることはない」

やよい「うん、そうかも…『スタンド』が勝手に、向かってくる…伊織ちゃんの言ってるやつで合ってると思うよ」

伊織「自分で考えて行動しているわけでなければ、対処法はいくらでもあるわ」

伊織(ただ…『自動操縦型』は、何か攻撃のスイッチが必要なはず)

伊織(こいつは、何を基準にして攻撃しているの? それがわからない…)

伊織(わからないうちに本体を叩きに行くのは、少なからずリスクがある…)

ズ キ ン

伊織「ぐっ!?」ビクッ

やよい「え、伊織ちゃん!?」

伊織(え…?)

ズキン!!

伊織「うっ!」

91: 2014/04/18(金) 00:28:03 ID:ABg6n82E
伊織(また、『痛み』が…なんで? 原因である『血』は、そこにいるのに…!?)バッ

ギュム…ギュムギュム

伊織「ま…また…足に…『血』がくっついてる…!!」

伊織(いつ、くっついたの…!? こいつは、どこから来た…!?)

伊織「『スモ…」

ズキン!

伊織「うああああああ!?」

伊織(い…『痛い』! 痛覚を直接掴まれたような…ゆっくりと鋭い痛みがッ!!)

ブチュゥッ!!

伊織の足から、血が勢いよく吹き出た。

伊織「あああっ!!」

やよい「伊織ちゃん!」

伊織(私の皮膚を…貫いたッ!!)

92: 2014/04/18(金) 00:29:46 ID:ABg6n82E
ビチャ! ビチャッ

やよい「『ゲンキトリッパー』!!」

ウー ウッウー

やよいのスタンドが、空いたばかりの傷口に入り込んでいくと、すぐに塞がった。

伊織「…! やよい…! 何やってんの…!」

やよい「あ…」

治してから、やよいも気づいた。『血』のスタンドが、伊織の皮膚を突き破ったということは…

伊織(わ、私の体内に『スタンド』が…)

伊織「……………?」

やよい「な…なんとかして、身体から出さないと…!」

伊織「…いえ、その必要は…ない…かも」

やよい「へ?」

93: 2014/04/18(金) 00:32:32 ID:ABg6n82E
伊織「妙な感じが、全然しないわ…『スタンド』が、私の体内で消えてしまった…」

やよい「?」

やよい「…あっ!? 伊織ちゃん!」

伊織「へ?」クル

先程吹き出して地面に落ちた血が、集まって塊となり…

ズル…

ゆっくりと、動き出した…

伊織「嘘でしょ…」

やよい「ど、どうしよう…」

伊織(どういうこと…? 私の血が『スタンド』に…? 私の…)

伊織「…あ、そっか」

やよい「…え?」

94: 2014/04/18(金) 00:34:22 ID:ABg6n82E
伊織「これは『私の血』だッ! さっき傷つけられた皮膚から出た血が、スタンド化していたのよ!」

やよい「伊織ちゃんの血が…?」

伊織「そして…!」スゥ…

クギュュン!!

集中した『煙』が、伊織だけを入り口の方に飛ばす。

スタッ!

ズル…

ズズズズ

伊織が着地すると同時、部屋の中の『血』が、一斉に伊織の方に向かっていく。

伊織「この、追いかけてくる『血』も私のだッ! 私の血が、私の身体の中に戻ろうとしているんだわ…!」

伊織「そして、この『血』は…血に触れることで、同じように『スタンド』にしてしまうのよ!」

伊織「触れる度に、仲間を増やしていく! 屍生人(ゾンビ)のように!」

伊織「これでもう、ぜ~んぶわかったわ! 種は全部割れた」

95: 2014/04/18(金) 00:36:04 ID:ABg6n82E
伊織(でも、そうなると…)

伊織「やよい!」

やよい「えっ、何?」

伊織「この『スタンド』は、私だけを追いかけてくる! やよいは自由に動けるでしょう?」

やよい「う、うん。そうみたい」

伊織「だから…やよい、お願い! 本体をブッ倒してこの攻撃をやめさせて!」

やよい「えっ、でも…本体、誰かわからないかも…」

伊織「そんなもん、どう考えても、あの鈴木とかいうソバカス女に決まってるわ!」

やよい「えっとサイ…サ、サ…鈴木さんが? どうして?」

伊織「どうしてって…」

伊織「ブラッドオレンジなんて用意して…ぶっかけられた千早があんなことになって、無関係とは言わせないわよッ!!」

やよい「あっ!」

96: 2014/04/18(金) 00:39:23 ID:ABg6n82E
やよい「それで…伊織ちゃんはどうするの!?」

伊織「もちろん…逃げるわ」チラ

ツツツーッ

キュッ キューッ

伊織「ったく、『スタンド使い』になってから…どうしてこうも逃げなきゃならない場面が多いのかしら」

ガチャ

伊織「とにかく…頼んだわよ、やよい!」

タタタッ

シーン…

やよい「伊織ちゃん…」

クルッ

やよい「千早さんに、真美…みんなを、こんな目にあわせて…」

やよい「鈴木さんは悪い子です! うぅ~っ、頑張らないと!」グッ!

スタスタ…

97: 2014/04/18(金) 00:41:20 ID:ABg6n82E
千早「…う…」

真美「うぅーん…なにそれ、ホトケさん…?」

伊織達が去っていったロッカールーム。

ズ…

先程、吐き出して地面に付着した、千早の血が…

ズズ…

ひとりでに、蠢いていた…

98: 2014/04/18(金) 00:45:37 ID:ABg6n82E
スタンド名:「スモーキー・スリル」
本体:水瀬 伊織
タイプ:近距離~遠隔操作型・不定形
破壊力:B~D スピード:B~C 射程距離:D(5m)~B(50m) 能力射程:B(50m)
持続力:B 精密動作性:B~D 成長性:D
能力:不定形の「煙」であることから、高い柔軟性と応用性を持つ、伊織のスタンド。
一カ所に集めるか、広げるかによって性能が変化し、近距離から遠距離までを使い分ける事ができる。
「気体」であるがために、直接相手を攻撃することはできないが、相手に殴られることもない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ゲンキトリッパー」
本体:高槻 やよい
タイプ:遠隔操作型・分体
破壊力:E スピード:C 射程距離:B(30m) 能力射程:B(30m)
持続力:A 精密動作性:E~A 成長性:C
能力:物体を「くっつける」ことができるやよいのスタンド。
小さな粒が細胞のように固まっている集合体で、分裂して各々行動することが可能。
「くっつける」能力で傷ついた細胞を埋め、傷を治す事もできる。
小さくなればなるほど動きは正確になり、半年前の戦いの中で細かい動きに特化するようになった。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

導入編なので次でさっさと終わらせます
あと、やっぱり毎週金曜更新にします☆

101: 2014/04/26(土) 00:54:06 ID:k8dny5EM
パチ

真美「うーん…?」ムクッ

真美「ありゃ…ここはどこ私は真美…?」

真美「えーと、確か今日は絵理お姉ちゃんの誕生会に来てて…何があったんだっけ?」

フラッ

真美「うひー、頭ガンガンする…」

真美「みんなはどうしてるんだろ? 戻らないと」

ズルッ

真美「わわわっ! っと…」バタバタ

真美「もう、何!? なんで床が濡れて…」

ヌル…

真美「え、なにこれ。…『血』?」

千早「………」

真美「ハッ、千早お姉ちゃん…」

102: 2014/04/26(土) 00:55:25 ID:k8dny5EM
真美「ま、まさかこれは…殺人事件!? 真美が寝てる間に、第一のギセー者が!」

千早「ん…」

真美「って、なんだ。生きてら」

真美「じゃ、これってなんだろ? 千早お姉ちゃんが鼻血ブーでもしたのかな?」

真美「謎はゼッタイ解き明かす! じっちゃん、ばっちゃん、それからりっちゃんの名にかけて!」バンッ

ズ…

真美「ん?」

シーン…

真美「うーん、見間違いかな? なんか今、『血』が動いたような…」

103: 2014/04/26(土) 00:57:15 ID:k8dny5EM
ズズズ…

真美「ありゃ、やっぱ動いてる」

ズオッ!

真美「って、なんで『血』が動いてるの!? まさか、『スタンド』!?」バッ

スル…

真美「あら、スルー? ははーん、真美に恐れをなして逃げ…」

ツィー

千早「………う…」

真美(じゃない! 後ろにいる千早お姉ちゃんの方に向かってるんだ!)

真美「千早お姉ちゃん! 危ないッ!!」

千早「う…ん…?」

104: 2014/04/26(土) 00:59:24 ID:k8dny5EM
………

……



トタトタ

やよい「みんな!」

亜美「あ、やよいっち!」

やよい「亜美、ちょっと今…」

亜美「なんか、いおりんが走って出て行っちゃったけど。どったの?」

やよい「えっと、それは…」

亜美「絵理お姉ちゃんもいおりん追いかけていっちゃうしさー」

愛「絵理さんは主役なんだから、わざわざ行かなくてもよかったのに…」

105: 2014/04/26(土) 01:03:14 ID:k8dny5EM
やよい「それより! 鈴木さんはどこ?」

石川「高槻さんまで、水瀬さんと同じ質問をするのね」

亜美「何かあったの?」

やよい「いいから、教えてください!」

尾崎「鈴木さんなら、お手洗いに行ったわ。すぐ戻ってくると思うけど」

やよい「それって、どこですか?」

尾崎「え? えーと…3Fの、階段上った奥の方にあるわよ。ここは2Fだから、上の方…」

やよい「ありがとうございます!」ガルウィーン

タッ

尾崎「あ、ちょっと!?」

愛「やよいさん、どうしたんだろう?」

亜美「うーん…」

106: 2014/04/26(土) 01:04:29 ID:k8dny5EM
………

コツ コツ

彩音(まさか、こんなことになるなんて…)

彩音(あの『伊織さん』とかいうヤツは下に降りて、外まで出て行ったみたいね)

彩音(私の仕業だってことはバレてないはず…隠れてやり過ごして、こっそり逃げよう…)

ピタ…

彩音「あ、あれ…」

グイッ グッ

彩音「あ、足が動かない!? ホイホイに捕まったゴキブリみたいに…!」

ドドド

彩音「ハッ!?」

やよい「鈴木さん」

ドドドド

彩音「ア…アンタは…」

彩音(あの、『伊織さん』と一緒にいた…)

107: 2014/04/26(土) 01:05:14 ID:k8dny5EM
やよい「伊織ちゃんが、『血』に追いかけられてるんですけど…」

やよい「あれって、鈴木さんの『スタンド』ですよね?」

彩音「」ギクッ

やよい「止めてください」

彩音(な…なんでアタシのだってわかったの…? ど、どうする…?)

やよい「…ダメ、なんですか?」

ゴゴゴゴ

彩音(断ったら、何をされるかワカんない…)

彩音「と…」

彩音「止めろとか言われても、知らナイわ! 『スタンド』なんて知らないわよ!!」

やよい「へ? ほんとに…?」

彩音「本当だっての! いきなりそんなこと言われても、意味わかんないわ!」

やよい「そ、そうなんですか? うぅ、ごめんなさい…」

彩音(なんだ、コイツちょろいわ! 簡単にごまかせた)

108: 2014/04/26(土) 01:06:20 ID:k8dny5EM
やよい「うーん…じゃあ、伊織ちゃんの勘違いなのかなぁ」

彩音「それより、この足どうにかしてよ!」

やよい「あし?」

彩音「しらばっくれないで! アンタのせいでしょ、足が『くっつい』てるのは!」

やよい「…なんで?」

彩音「なんでって、足が『くっつい』て、それからアンタが現れた! そう考えるのが当然デショ!」

やよい「確かに、やったのは私ですけど…どうやって?」

彩音「…へ!?」

やよい「私が、どうやって足を『くっつけ』たと思ったんですか?」

ドドドドド

彩音「ど、どうやってって…あらかじめ、ワナを仕掛けておいたとか…」

109: 2014/04/26(土) 01:07:18 ID:k8dny5EM
やよい「876プロは、最近ここに引っ越ししてきたばかりだって聞きました。私が来たのも、今日がはじめてです」

やよい「それなのに、なんで私がこの上の階に、鈴木さんを捕まえるワナをしかけたと思ったのかなーって」

ドドドド

彩音「そ、それは…」

やよい「それに、そんなことしたらこの階の人の迷惑になっちゃうと思います」

彩音「そ、そう! そうなんだ、じゃあアタシの勘違いだったわ! アンタのせいじゃないのね」

やよい「…やっぱり、なんかヘンかも」

ヌ…

彩音(『スタンド』を出した…)

彩音(見ちゃダメだ、露骨に目を逸らしてもダメ、何もないように扱うのよ)

110: 2014/04/26(土) 01:08:22 ID:k8dny5EM
やよいの『ゲンキトリッパー』の集合体が、ゆっくりと彩音の方へと歩いていく。

彩音(ち…近付いてくる…?)

やよい「あのー…違ってたらごめんなさい」

彩音(まさか、コイツ…)

やよい「伊織ちゃんが、大変なんです」グッ…

『ゲンキトリッパー』が、拳に力を込めた。

彩音「チッ!」カリッ

彩音が左手の親指で、人差し指のかさぶたを引っ掻く。

ブンッ

ポタ

腕を振る。指の傷から『血』が一滴、床に落ちた。

111: 2014/04/26(土) 01:10:04 ID:k8dny5EM
やよい「…?」

ゾゾ

やよい「あっ!」

彩音「『ワールド・オブ・ペイン』ッ!!」

シュパァ!!

落ちた血が『ゲンキトリッパー』に飛びかかり、腕に傷をつけた。

やよい「わっ…!」ブシュ

ポタッ

ダメージがやよいにフィードバックし、血が垂れる。

彩音「アンタ…」

ゴゴゴ

彩音「無害そうな顔して、結構図太い奴ね…」

ゴゴゴゴ

112: 2014/04/26(土) 01:14:15 ID:k8dny5EM
やよい「この、『血』のスタンドは…」

やよい「やっぱり、鈴木さんがやったんですね!」

彩音「ええ、そうよ。これがアタシのスタンド」

やよい「伊織ちゃんを追いかけてるスタンドを、止めてください!」

彩音「止めなかったら…?」

やよい「止めてください」

彩音「ザンネンだけど、もう止まらないわよ」

やよい「え?」

ゾゾゾ

地面に落ちたやよいの血が、やよいに向かって動き出す。

やよい「わっ…『ゲンキトリッパー』!」

彩音「無駄よ。アンタのスタンドじゃあ、アタシの『血』のスタンドをどうこうできないでしょ?」

彩音「できるなら、わざわざアタシのところに来るまでもないカラ」

やよい「うう…!」ブシュ

『血』がやよいの足に食らいつき、新たな傷を作る。

113: 2014/04/26(土) 01:21:55 ID:k8dny5EM
ゾゾゾ…

その傷からから吹き出した『血』が、また、やよいに標的を定めた。

やよい「はわ…」

彩音「『ワールド・オブ・ペイン』が他人の血に触れると、自動でその持ち主を襲い、血の中に戻ろうとする『リビング・デッド』を作り出す」

彩音「そして、『リビング・デッド』はまた新たな『リビング・デッド』を生み出すわよ」

ウー ウッウー

『ゲンキトリッパー』の欠片が、やよいの傷を塞いでいく。

彩音「ありゃ。その『スタンド』、傷を塞げるのね」

彩音「でも、意味ナイわよ。傷は治せても、出てしまった『血』はもう戻せないのだから!」

やよい「うぅ~」

やよいの『ゲンキトリッパー』には、一発で彩音を気絶させられるような『パワー』はない…

色々なものを『くっつけ』重みで潰したり、動けない彩音相手に天井から何かを落として攻撃することは可能だが…

そのためのものを持ってくる前に、『ワールド・オブ・ペイン』の餌食になってしまうだろう。

114: 2014/04/26(土) 01:24:49 ID:k8dny5EM
彩音「アンタ達が悪いのよ…アタシはそこまでする気はなかったのに…」

3つの『血』の塊が、やよいににじり寄ってくる。

彩音「さぁ、食われたくなかったらアンタも逃げた方がイイわ!」

やよい「う…」ズリ…

やよいの足が、一歩後ずさる。

ドン

やよい「わっ!?」

と、背中に何かがぶつかった。

??「やよいっち。こんな奴に逃げる必要なんてないって」

クルッ

やよい「亜美!」

亜美「なーんか、みんな変だったから来てみれば…面白そうなことやってるじゃん?」

彩音「何人増えようが、アタシの『スタンド』の敵じゃあないわ!」

『血』が、やよいの方に向かって真っ直ぐ進んでいく。

115: 2014/04/26(土) 01:27:32 ID:k8dny5EM
亜美「自動で、持ち主を襲うって?」

彩音「あら、聞いてたの?」

亜美「ってことはさ、こいつが襲ってくるのはやよいっちだけなんだよね?」

亜美が、やよいと『リビング・デッド』の間に割って入る。

彩音「『リビング・デッド』は進行上にある障害物を傷つけながら進むわよ!」

彩音「それに、『ワールド・オブ・ペイン』だって残ってる! アンタはネコの目の前にわざわざ出てきたネズミよッ!」

ヒュバッ!

その場にある『血』が、一斉に襲いかかる。

亜美「『スタートスター』」グッ

亜美の正面に、立ちふさがるように人型の『スタンド』が出現し、構える。

彩音「なによそれ…叩き落とすつもり? 腕を怪我するダケよッ!」

亜美「おらおらおらおらおらおらおら!!」ズババババババ

『スタートスター』は滅茶苦茶な腕の動きで、次々と飛びかかってくる『血』に触れていく。

116: 2014/04/26(土) 01:29:25 ID:k8dny5EM
亜美「………」グッ

シン…

彩音「…?」

亜美「どじゃぁぁん」パッ

亜美が手を開くと、そこには何も残っていなかった。

彩音「な!?」

亜美「んっふっふ~、亜美のスタンドはなぁ…触れたものを『消滅』させてしまうのだ! どうだ!」

やよい「そっか、真美のところまで『ワープ』させたんだね!」

亜美「やよいっち! バラしちゃあダメじゃーん!」

彩音「な、何…? 今の『スピード』…滅茶苦茶なヤツ…」

亜美「さぁ、君はもうキョウイさせている! コクフクしたまえ!」

彩音「包囲? 降伏?」

亜美「そうとも言う!」

119: 2014/04/26(土) 01:33:00 ID:k8dny5EM
彩音「フン、何を勝ち誇ってんだか…」

亜美「鈴木のお姉ちゃんの『スタンド』は、飛ばしちゃったよ。もうないんだよ?」

彩音「『スタンド』がない? それがカンチガイだって言うのよ!」

亜美「へ?」

彩音「『ワールド・オブ・ペイン』は、アタシの『血』から生み出される『スタンド』…」

彩音「『血』が続く限り、無限に作り出せるッ!」

ビンッ

シーン…

彩音「…アレ?」

バッ

彩音(ゆ…指の傷が…塞がってる!?)

ウッウー ウー

彩音「な、なにコレ!? ア…アタシの指になんか『くっついて』るッ!?」

やよい「指の傷は、『くっつけ』ました。これで、もう『スタンド』は出せないんですよね」

120: 2014/04/26(土) 01:34:02 ID:k8dny5EM
亜美「んっふっふ~、一気に大逆転、だね!」

やよい「さぁ、鈴木さん! 伊織ちゃんを追いかけてる『スタンド』を止めてください!」

彩音「そ…それは…」

亜美「駄目なの? んじゃ、しょうがないね。鈴木のお姉ちゃんには気ぃ失ってもらうよ」

彩音「う…」

やよい「伊織ちゃんが大変なんです。止めてくれないなら…しょうがないかなーって」

彩音「く…」プルプル…

ガリッ!

亜美「!?」

やよい「はわっ!?」

彩音「………」

ポタ…ポタ…

彩音が下唇を噛んだ。

121: 2014/04/26(土) 01:34:51 ID:k8dny5EM
やよい「な…何やってるんですかっ!!?」

ポタ…

彩音「これで…また『ワールド・オブ・ペイン』が作り出せる…」

亜美「へ、へんだ! また来ても亜美の『スタートスター』で…」

ズ… ズズズズ…

亜美「って、数多っ!?」

ゾゾゾゾ

ズアッ!

やよい「か、囲まれちゃった…」

彩音「うおおおおおおおおお行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

ギョォン!!

亜美「わーっ!!」

やよい「ううっ!!」

彩音が叫ぶと同時、やよい達の周囲から、『血』の群れが一斉に飛びかかった。

122: 2014/04/26(土) 01:36:38 ID:k8dny5EM
>導入編なので次でさっさと終わらせます
終わりませんでした☆

スタンド名:「スタートスター」
本体:双海 亜美/双海 真美
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:D スピード:A 射程距離:E(2m) 能力射程:A(500m以上)
持続力:C 精密動作性:D 成長性:A
能力:亜美と真美がそれぞれ1つずつ持っている、2体で1組のスタンド。
触れたものや自分自身を、もう一方の「スタートスター」の射程距離内に「ワープ」させることができる。
片方がスタンドを使える状態になかったり、二人があまりにも離れて能力射程の外に出てしまうと、能力を使う事が出来ない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ワールド・オブ・ペイン」
本体:鈴木 彩音
タイプ:近距離パワー型・同化
破壊力:B スピード:B 射程距離:D(5m) 能力射程:D(5m)
持続力:D 精密動作性:C 成長性:B
能力:サイネリアこと鈴木彩音の「血」から生まれたスタンド。
本体の血をスタンド化させており、血が出る限りはいくつでも生み出せる。
他人の血に触れる事で、自動操縦スタンド「リビング・デッド」を作り出す。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

128: 2014/05/03(土) 21:24:41 ID:V0oth22k
亜美「ス、『スタートスター』!」

ヒュンヒュン

亜美のスタンドが腕を横に払うと、『血』の雨が消しゴムをかけたように、目の前で消える。

亜美「一度に『ワープ』させるのは、これが限界…」

しかし、消えたのは一部。周囲に散らばった『血』は、まだ半分以上残っている。

彩音「フフ…」

ポタ…ポタ…

さらに、彩音の下唇から滴り落ちる血によって、『ワールド・オブ・ペイン』は次々と生み出されていた。

ヒョォォォォォ

亜美「うわあああ、もうダメだー!!」

やよい「亜美、落ち着いて!」

亜美「でも、こんな量じゃ全部『ワープ』させられないよー!」

129: 2014/05/03(土) 21:25:24 ID:V0oth22k
やよい「別に、『血』の方を飛ばさなくてもいいでしょ!」

亜美「あ、そっか! 亜美が『ワープ』すればいいんだ!」

・ ・ ・ ・

亜美「って…今、『ワープ』使っちゃったから無理じゃん!」

やよい「亜美! 何やってるの!?」

亜美「やよいっちがもっと早く言えばよかったんだよ!!」

ギュン ギュギュン

亜美「うあー、やっぱもうダメだー!!」

やよい「………」

亜美「やよいっち! 何、ボーっとしてんのさ!」

『血』が目と鼻の距離まで近付いている。もう、避けることもできない。

亜美「うあああああー!!」

ビチャア!

『血』が、腕に食いついた。

130: 2014/05/03(土) 21:26:01 ID:V0oth22k
………

伊織「げ…こっち、行き止まりじゃあないの…」

路地の裏側、ひと気のないビルの壁が、行く手を塞いでいる。

伊織(『血』から逃げているうちに、こんなところに…)

スゥーッ

伊織の血から作られた『リビング・デッド』は、休む事なく追跡を続けている。

伊織(横から抜ける…? いや、あいつは磁石が引かれるかのように、常に最短距離でこっちに向かってくる…)

伊織「やっぱ、こっち行くしかないわよねぇ…」

伊織「やっ!」タッ

ビルの壁に、足から飛びついた。

ガシッ!

モクモク…

ググググ…

伊織は『スモーキー・スリル』で自分の体を押し上げながら、壁をよじ登って行く。

131: 2014/05/03(土) 21:26:31 ID:V0oth22k

ツイーッ

ガリガリガリガリ

おかまいなしに、『血』も機械的に平面を登る伊織の後を着いていく…

いや、打ち上げ花火のように高度を上げて行くそれは、壁を削りながらどんどん伊織との距離を縮めて行った。

伊織「壁も、地上と同じ速度で登ってくる…」

スタンドの力を借りなければ登ることすら困難な伊織と、常に同じスピードで追いかける『自動操縦』。縦の動きでは、明らかに『リビング・デッド』に分があった。

伊織「でも、そんなもん最初っから予想してるわ」グ…

タッ!

伊織がビルの壁を蹴った。小柄な体が、背中から宙に放り出される。

伊織「『スモーキー・スリル』」モクモクモク

ボフゥ!!

地面に衝突する前に『煙』が、仰向けになった自分の体を受け止めた。

132: 2014/05/03(土) 21:27:03 ID:V0oth22k
伊織「………」タタタ

クク…

ポトッ

伊織が地面に降りて走り出すと、『血』は磁力を失った磁石のように、壁から剥がれ落ちる。

ツイーッ

地面に着くと、再び伊織を追いかけ始めた。

伊織(そう何度もやってられないわね。アレと違って、こっちは体力に限りがある…)

伊織(やよいは、まだ本体を倒せていないの…?)

伊織(『ゲンキトリッパー』は『血』のスタンドを『くっつけ』られない…返り討ちにされたって可能性も…)

伊織(いえ…ありえないわ。やよいが…765プロのアイドルが、コソコソしてるような奴に負けるなんて)

伊織(私に出来ることは、信じて待つことだけ…我ながら、情けないわね…)

ズルル…

伊織(でも…触ることすら出来ないこいつを、一体どうしたらいいわけ…?)

133: 2014/05/03(土) 21:28:12 ID:V0oth22k
ス…

伊織「!?」

路地から脱出しようとする伊織の視界の中に、人影が現れた。

絵理「ぜぇ、ぜぇ…」

伊織「絵理…!?」

絵理「伊織さん…こんなところにいた…」

伊織(事務所から、後を着いて来てたのね…ぬかったわ…)

スルル…

伊織(コイツは、絵理の存在なんておかまいなしに追いかけてくるわ…)

絵理「伊織さん…?」

伊織「絵理! そこをどいて、じっとしてて!!」

絵理「その、後ろからついて来てるのって…何?」

伊織「!?」

ズズズ…

134: 2014/05/03(土) 21:29:00 ID:V0oth22k
ゴゴゴ ゴゴ

伊織(スタンドが見える…!? まさか、絵理も…?)

絵理「赤い…何? グミとか…『血』みたいに見える」

伊織(いや…スタンド化していると言っても、元々は私の血…『スタンド使い』でなくとも見えるか)

絵理「どうしたの、伊織さん」

伊織「私はあの『血』に追われてるのよ! 何を言ってるのか分からないでしょうけど!」

伊織「アレは自動的に直線距離で私を追いかけてくる! その間にあるものに攻撃しながらッ!! しかも、『血』に触れれば増えて『血』の持ち主を追いかけ始める!」

伊織「絵理、アンタが巻き込まれたらアンタも襲われることになるのよ!!」

絵理「そう、なんだ?」

スッ

伊織「え?」

絵理「………」

伊織「何をやってるの、絵理!? 私の前に飛び出したら…」

135: 2014/05/03(土) 21:30:23 ID:V0oth22k
ズァッ

伊織「え…」

絵理「『クロスワード』」

絵理の目の前に、人型の像(ヴィジョン)が立ちふさがる。

伊織(これは…スタ…ンド…?)

絵理のスタンドは、黒を基調とした、角のないシンプルなフォルムをしていた。

絵理「………」ス…

『クロスワード』が左の手のひらを、飛び上がった『血』へと向ける。

手の中には、カメラのレンズのような水晶体がついていた。

パシャ

十の字が描かれたレンズが、その姿を捉える。

伊織(絵理のスタンド…今、何をしたの…?)

136: 2014/05/03(土) 21:31:40 ID:V0oth22k
ズズズ

ヒュッ

絵理「!」

ピッ

進行を邪魔された『リビング・デッド』が、飛び上がり、『クロスワード』の腕を切る。

伊織「ちょっ…? 何やってるのよ、絵理!」

絵理「うーん…」

伊織(今のはなんだったの…? 何ともなってないじゃない!)

『血』はそのまま、背後の伊織の方へ飛んでいった。

伊織「ちっ…!」モクモク

絵理「………」

パシャ

ピチャン!

伊織「え? !?」

『クロスワード』の右手からシャッター音が鳴ったと思うと、絵理のいる奥から水滴が落ちる音が聞こえた。

137: 2014/05/03(土) 21:32:31 ID:V0oth22k
・ ・ ・ ・

飛び上がった『血』が伊織の目の前で動きを止める。

伊織「こ…」

いや、よく見れば僅かながら動いていた。…空中で、落ちることなく。

スッ

伊織が逆方向へと回り込む。ゆっくりと、伊織の方に進行方向を変えた。

伊織(追いかけてくる…ということはこの目の前の物体は、さっきまでの『血』と『同じ』もの…)

しかし、『血』は無重力の宇宙に放り出されたかのように、宙に浮いていて…

何より、この浮かんでいる物体は『液体』でなく、紛れもない『気体』だった。

伊織「これは…!?」

絵理「『クロスワード』。空気と血の性質を『入れ替え』た」

赤い塊が伊織の肌に触れる。

絵理「『血』は空気のような『気体』に、そして空気は『液体』になる…」

氏霊が肌を食い破ろうとしているのだろうが、その感触は僅かなもので、まるで圧力を感じない。

138: 2014/05/03(土) 21:33:16 ID:V0oth22k
伊織「ス…『スモーキー・スリル』!」ボフッ

スゥーッ…

同じ『気体』。『煙』のスタンドで赤い塊を包み込み、遠ざけていく。

伊織から離れていくごとに、『血』は少しずつ空気に溶けるように消えていった。

絵理「…大丈夫だった? 伊織さん」

伊織「絵理、アンタ…」

絵理「?」

伊織(今、起きた現象。あの能力は、紛れもなく…)

伊織「アンタも…『スタンド使い』なの…?」

絵理「うん」

139: 2014/05/03(土) 21:34:57 ID:V0oth22k
………

ジュゥ!!

白い蒸気が吹き出る。

亜美「…あれ?」

それは、亜美の目の前にいる人物…そのまた前にいる者の腕から出ていた。

彩音「な…」

??「『なんでアンタがここにいる』…」シュゥゥゥ…

彩音「なんでアンタがここにいる…!」

千早「かしら? 鈴木さん…」

パラ…

水分を失い固まった血が、千早の『インフェルノ』の手から剥がれ落ちた。

やよい「千早さん!」

千早「どうやら、危ないところだったみたいね」

千早が、二人の少女を守る騎士のように、そこに立っていた。

140: 2014/05/03(土) 21:36:54 ID:V0oth22k
真美「おっ、結構いいタイミングだった?」

亜美「真美真美、ありがとー! どうなるかと思ったよー!」

真美「んっふっふ~、真美に感謝するがいい!」

彩音「アンタの…スタンド能力…なの…?」

真美「その通り! 正解した鈴木のねーちゃんには、はなまるをあげよう!」

彩音「くっ…なんで、こんな三流アニメのご都合展開みたいにちょうどいいタイミングに…」

やよい「私の『ゲンキトリッパー』は、遠くまで行けるスタンドなんです」

彩音「は?」

やよい「それで、バラバラに分かれることが出来るんです」

彩音「一体、何の話…」

やよい「その『血』は、くっつけられないから『ゲンキトリッパー』はあまり役に立たないかも…」

やよい「そう思って、下の階まで、行かせてたんです」

・ ・ ・ ・

千早「まだ、わからないの?」

彩音「…! まさか…」

141: 2014/05/03(土) 21:37:37 ID:V0oth22k
………

ゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴ

誰もいなくなった、876プロのロッカールームの床…

『きて』

やよいの『ゲンキトリッパー』が、文字を作っていた。

………

彩音「メッセージを送っていたなッ! 下の、コイツらのいるところまで…!!」

やよい「えへへ…千早さん達に気づいてもらえてよかったです」

千早「さぁ…観念したらどうかしら? でなければ、痛めつけられた借りは返すけれど」

ポタ…ポタ…

ウッウー

ピョコ ピョコ

彩音「んっ!」ピタァ…

『ゲンキトリッパー』が彩音の足下から這い上がり、唇の傷が塞がれる。

彩音「…チョーシに…乗るな…!」

142: 2014/05/03(土) 21:38:31 ID:V0oth22k
彩音「『ワールド・オブ・ペイン』ッ!!」

ズオッ!!

千早「無意味よ」コォォォォ…

ビシュン

飛びかかってきた『ワールド・オブ・ペイン』から、『インフェルノ』が一瞬で熱を奪う。

パキ ピキン!

カランッ

『血』は凍って結晶となり、地面に落ち、割れた。

彩音「は…」

千早「私のスタンド、『ブルー・バード・インフェルノ』は触れたものの『熱』を『奪い』『与える』スタンド」

千早「『液体』は凍り、『個体』に…あるいは蒸発し、『気体』となる」

彩音「ア、アタシの『ワールド・オブ・ペイン』が…」

千早「残念だけれど…」

彩音「う…」

千早「その程度の血では、『地獄の業火(インフェルノ)』は消せないわ」

143: 2014/05/03(土) 21:39:55 ID:V0oth22k
千早「………」ザッ ザッ

彩音(に…逃げ、られない…奥は行き止まり…そもそも)

ピタ…

彩音(足が『くっつい』て動かない…!!)

彩音「な、なんなの…アンタらは…」

彩音「一体なんなのよォォォォォォッ!!」

千早「私達は…」スッ

ヒュオン!!

『インフェルノ』が目にも止まらぬ速さで、彩音を殴り飛ばした。

ッギャアアァァーン!

彩音「うぶっ…!」グググッ

バタン!

千早「アイドルよ」

144: 2014/05/03(土) 21:41:57 ID:V0oth22k
ジュゥゥッ!!

彩音「うああああ、ひいっ…!! あ、『熱い』…!」ゴロゴロ

やよい「さぁ、伊織ちゃんへの攻撃を止めてもらいます!」

千早「どうしても止めないというのなら、もう一発…」

彩音「ちょ、ちょっと待ちなさい…」

千早「………」スッ

彩音「待ってって! 待ってクダサイ!!」

亜美「なに? 言い残したことがあるなら早く言ってよ」

彩音「アタシを気絶させても無駄ですよ! 『リビング・デッド』は、アタシにも止められないんデス!」

やよい「へ…止められない…?」

145: 2014/05/03(土) 21:42:32 ID:V0oth22k
千早「本当かしら…」

彩音「本当ですって! だから、アタシに攻撃しても意味ナンてないんです!」

真美「殴られたくないから、てきとー言ってるんじゃあないの?」

やよい「本当だったら、最初からそう言ってくれればよかったのに」

彩音「だって、話し合いが通じるような雰囲気じゃなかったじゃあないデスか…止められないと言ったらナニされるか」

亜美「とにかく今、いおりんがピンチでパンチなんだよね?」

亜美「だったら、それをどうにかする方法教えてよ」

彩音「…言わなかったら?」

千早「スタンドが『戦闘不能』(リタイア)するまで攻撃するだけよ」

彩音「デスヨネー」

146: 2014/05/03(土) 21:43:10 ID:V0oth22k
彩音「『リビング・デッド』を止めるのは、なんとか血をこぼれさせず、本人の血の中に戻すか…」

亜美「血を出さずに戻すのなんて、無理っしょ」

彩音「それか、そこのヒトがやったみたいに蒸発させたり凍らせたりして『液体』じゃなくせばイイです」

千早「そこの人…」

彩音「『血』はあくまでも物質なので…『太陽の光』とか『ライター』なんかでもいいハズ」

やよい「でも、今日は曇り空だし、お日様の光で水がばーってなるのも期待出来ないかも」

千早「なら、私が直接…」

やよい「早く伊織ちゃんを追いかけなきゃ!」

真美「でも、いおりんがどこに行ったかなんてわかんないし、追いつけるかどうか」

やよい「う…」

伊織「…私がどうかした?」ヌッ

千早「へ…? ………」

亜美「い、いおりん!?」

147: 2014/05/03(土) 21:44:47 ID:V0oth22k
伊織「って、なによ。もう終わってるじゃない」

やよい「い、伊織ちゃん…『血』は…」

彩音「『リビング・デッド』をなんとかしたんデスか!? 一体、どうやって…」

伊織「あんなもん、この伊織ちゃんには通用しないわよ」

亜美「な、なんだってー!?」

伊織「と、言いたいところなんだけど…」

絵理「…サイネリア?」

彩音「セ、センパイ!」

千早「水瀬さん、何故、水谷さんと…?」

伊織「それは…」

ズ…

亜美「!」

真美「これって…」

絵理「私…『スタンド使い』」

148: 2014/05/03(土) 21:45:28 ID:V0oth22k
伊織「まぁ、絵理のスタンドに助けられたのよ」

彩音「セ、センパイが…『スタンド使い』…?」

絵理「あの『血』って、サイネリアのスタンドだったんだ…」

彩音「うっ!」

やよい「鈴木さん…どうして、こんなことしたんですか…?」

亜美「そうだよ! せっかく楽しかったのに、めちゃくちゃになっちゃったじゃん!」

彩音「ほ、本当はこうなるハズじゃなかったんです…」

千早「本当は? はずじゃなかった?」

伊織「よく言うわ、『血』入りのブラッドオレンジなんて用意しちゃって」

彩音「あれは、アンタ…水瀬さんに飲ませるつもりだったんデス」

伊織「は?」

彩音「誤って、そこのヒトが飲んでしまいましたけど」

千早「………」

149: 2014/05/03(土) 21:46:26 ID:V0oth22k
伊織「…え、何。私に飲ませて、どうするつもりだったの?」

彩音「『リビング・デッド』には胃の壁を破るほどのパワーはナイんです」

やよい(ガラスのコップは壊してたけど…)

伊織(…固くて薄かったのと、やよいの『ゲンキトリッパー』で固定させてたから負荷が大きすぎたのね。多分)

彩音「胃の皮をちょっぴりだけ切って…すぐ吸収されて血液の中に戻るから、腹痛が起きるだけで終わるハズだったんです。ハイ」

彩音「伊織さんが、センパイとベタベタしてるのが気に入らなくて…つい…」

真美「それが、千早お姉ちゃんが飲んじゃったから変なことになったんだね」

亜美「まぁ、それならちょっとしたイタズラで済むか」

伊織「なんでよ。この伊織ちゃんの胃が破壊されるところだったのよ」

千早「それに、事情がどうあれ、私達が重大な迷惑を被ったのは事実よ」

彩音「そ、ソレは…」

やよい「鈴木さん?」

絵理「サイネリア」

彩音「はい…みなさん、スミマセンデシタ…」ペコリ

150: 2014/05/03(土) 21:47:21 ID:V0oth22k
亜美「これで、一軒着陸だね!」

絵理(『うわー! 家が降りてくるぞーっ!』『避難しろーっ!!』)

伊織「せっかくの絵理の誕生日だってのに、どっと疲れた…」

千早「いえ…待って。まだ、全て解決はしていないわ…」

真美「え? まだなんかあるの?」

やよい「あ、もしかして…」

伊織「! そうよ、『弓と矢』…!!」

千早「鈴木さん」

彩音「鈴木って…もういいデスよ。なんですか?」

千早「貴女、876プロの事務所で『矢』に触れたわね?」

彩音「え、ええ…よく、ワカりますね」

伊織「絵理…アンタもよね」

絵理「うん…」

151: 2014/05/03(土) 21:48:39 ID:V0oth22k
彩音「そうですよ。アタシは、アノ『矢』に触れてから『ワールド・オブ・ペイン』を使えるようになったんです」

絵理「私も…同じ?」

伊織「『スタンド使い』になってしまったのは、もう仕方がない…」

伊織「でも、あの『矢』は破壊すべきよ。あれは災厄をもたらすものだわ」

やよい「『スタンド使い』が増えたら…また、ヘンなことが起きちゃうかも」

真美「はるるんの時みたいなこともあるかもしれないしね」

千早「幸い、この事務所では日高さんはまだ『スタンド使い』ではないらしいけれど」

絵理「へ?」

千早「部外者の鈴木さんまでが『スタンド使い』になっているということは…放置していては危険ね」

伊織「絵理、どう?」

絵理「あれを持ってきたのは石川社長」

絵理「…だから、社長に聞いて」

伊織「…わかったわ」

152: 2014/05/03(土) 21:51:16 ID:V0oth22k
………

……

石川「みんなで戻ってくるなり…何? 『弓と矢』?」

石川「えぇ、確かに私が保管しているけど…あれが、どうかしたの?」

伊織「単刀直入に言うわ。あの『弓と矢』を破壊してちょうだい」

尾崎「は、破壊って…」

石川「えーと…邪魔だし、あなた達がそう言うのなら手放すのは別にいいけど」

石川「結構貴重なものらしいし、骨董品屋にでも売るわけにはいかないのかしら」

亜美「売ったりなんかしたら、もっとメンドーなことになっちゃうよ!」

愛「メンドーなことって?」

石川「あの『矢』に何かあるの? まさか、呪われてるとか…」

千早「呪われてる…ある意味、そうなのかしら」

やよい「あの『矢』には、不思議な力があるんです!」

尾崎「不思議な力って、あなたね…そんな、ファンタジーやメルヘンじゃあないんだから…」

153: 2014/05/03(土) 21:52:24 ID:V0oth22k
石川「あなた達…どうしたの? 何か変よ」

亜美「…どうすんの?」

千早「仕方ないわ。『弓と矢』の所有者が石川社長なら、説明して、納得してもらうしか…」

伊織「だったら、私に任せて」

石川「何を話しているの?」

モクモクモク…

『煙』が、石川社長の体を覆う。しかし、彼女の目からは、何も見えていない。

ズズズズ…

石川「へ…は…!? な、なにこれ…!?」スゥ…

愛「わわっ!!? 社長の体が浮いてる!!?」

パッ

石川「うひゃっ…」ドサッ

尾崎「しゃ、社長! 大丈夫ですか!?」

154: 2014/05/03(土) 21:53:19 ID:V0oth22k
伊織「見えた? 気づいた? 今のが、『弓と矢』の呪いよ」

石川「な、何…今の…? て、手品…じゃ、ないの…?」

尾崎「手品とかそういうレベルを越えてるような…」

やよい「これは、『スタンド』っていう…えっと、ちょーのーりょくのようなものです」

石川「スタ…ンド…?」

千早「『スタンド』はそれを扱える者…『スタンド使い』ではない一般人には、見ることすらできない」

パリン!!

石川「ひ…! ガラスのコップが、ひとりでに割れた…!?」

千早「『スタンド』によっては、このようにガラスのコップを握り潰す程度簡単にできる」

千早「だから、誰にも気づかれず…犯罪を起こすことすら可能なんです」

石川「…!」

伊織「そして…『矢』は、その『スタンド使い』を生み出すのよ」

石川「ゆ…『弓と矢』…が…?」

伊織「やっぱり、知らなかったのね…やれやれだわ」

155: 2014/05/03(土) 21:57:04 ID:V0oth22k
伊織「もしも、たまたま誰かがこの事務所に訪れて『矢』に触れてしまったりしたら」

伊織「スタンドを悪用するようなヤツが『スタンド使い』になったりしたら…大変なことになる」チラ

彩音「こっち見んな! …見ナイでくださいよ!」

伊織「冗談よ…でも、私達も以前、この『弓と矢』によってとんでもないことになった」

千早「私達はこの『弓と矢』により『スタンド使い』になってしまった…」

千早「だからこそ、これらの恐ろしさは、誰よりも知っているつもりです」

石川「あなた達の所にも、この『弓と矢』があるの…?」

伊織「それはこっちも言いたいわ…なんであの『弓と矢』がここにあるの?」

伊織「あの『弓と矢』は一体どこで手に入れたの!?」

石川「え、えーと、あれは…人から貰ったのよ」

千早「貰った? 誰からです?」

石川「誰って…」

石川「…高木社長よ…あなたたちのところの」

伊織「…は?」

ゴゴゴゴ

156: 2014/05/03(土) 21:57:45 ID:V0oth22k
伊織「え…ちょっと待って、なんでその名前が出てくるわけ?」

石川「なんでと言われても。あれは高木さんから貰った、それだけのことだけど…」

ゴゴゴ

伊織「ありえない…」

伊織(高木社長があの『弓と矢』を渡せるわけがない)

伊織(だって…高木社長はもう、この世にはいないのだから。私も、葬式に出た…)

伊織(氏んだはずの高木社長が、この事務所に『弓と矢』をもたらすなんて、そんなの…)

千早「待って、水瀬さん。ありえないというのは違うと思うわ」

伊織「え?」

千早「日高さんの話によると、この事務所に来たのは半年前くらいだそうよ」

千早「これは、高木社長が存命の頃に渡されたものじゃあないかしら」

157: 2014/05/03(土) 21:59:12 ID:V0oth22k
伊織「…絵理。この『弓と矢』がいつの日に来たのかって、知ってる?」

絵理「えーと…」

絵理が、壁にかかっているカレンダーをめくる。

絵理「去年の…この日?」ピッ

石川「ああ、そうそう。ちょうどこの頃だったわ」

伊織(765プロに、『弓と矢』が来たよりも前ね…確かに、この時ならまだ高木社長は生きてる)

千早「社長は骨董品屋で、『弓と矢』を見つけ、気に入った…そして、『弓と矢』は複数あった」

千早「だから、知り合いの事務所にも配った。そういうことじゃないかしら」

伊織「確かに…それで、辻褄は合うわね…」

伊織(氏んでるとか氏んでないとか、どうでもよかった…生きてる間に持ち込まれたもの…なのね…?)

伊織(けど、何かしら。なにかが、引っかかる…)

伊織(いえ…気にしても仕方ないか、それより…この『弓と矢』よ)

158: 2014/05/03(土) 22:00:37 ID:V0oth22k
千早「この『矢』…破壊してもいいでしょうか?」

石川「まぁ、仕方ないわね…そんな危ないものだったのなら、処分した方がいいわ」

愛「はい、そうですね…あたしも、それがいいと思います」

千早(あら、日高さん…やけに、物わかりがいいわね?)

千早(彼女のことなら『あたしも、「スタンド使い」になりたいです!』とか…言い出すと、思ったのだけれど)

千早(ちゃんと、スタンドが危険なものだと理解しているのね)

尾崎「え、絵理…絵理は大丈夫なの?」

絵理「多分…」

石川「高木さんは、このことを知ってこれを渡してきたのかしら…?」

やよい「知らないと思いますけど」

石川「あら、それはどうして?」

亜美「どっちでも、確かめようはないよね」

真美「うん、そうだね…」

石川「…?」

159: 2014/05/03(土) 22:02:18 ID:V0oth22k
パラ、パラ…

千早(そして、私達は…『弓と矢』を、コナゴナに破壊した。誰の手にも、渡ることのないよう…)

亜美「よーし、いっちょあがりだねっ!」

やよい「これで、もう大丈夫ですね!」

千早「ええ…これ以上、『スタンド使い』が増えることはないはずよ」

伊織「絵理は誰かに迷惑をかけるような奴じゃあないし、あの鈴木とかいうのも、もうスタンドを悪用はしないでしょう」

真美「めでたしめでたし、だね!」

千早(こうして、876プロの『弓と矢』は破壊され…それで、全て解決した)

千早(と…この時は、そう思っていた)

千早(思えば…前兆は、既にあった)

千早(この日の時点で…876プロに『弓と矢』があるとわかった時点で、私達は、事の異常さに気づくべきだった)

千早(そして、それは…『弓と矢』の存在だけでなく…)

160: 2014/05/03(土) 22:05:15 ID:V0oth22k
彩音「アレ?」

絵理「? どうしたの、サイネリア」

彩音「なんか、センパイの『手』…ちょっと…変、と言いますか…」

・ ・ ・ ・

彩音「…え?」

絵理「………!」サッ!!

ゴゴゴゴ

絵理「あまり…見ないで?」

ゴゴゴゴゴ

彩音(今…)

彩音(センパイの手の傷口が、ちょっと見えた…)

彩音(けど…何? あれは…骨が、見えていた…)

絵理「ねぇ、愛ちゃん」

愛「はい、なんです?」

彩音(いや、そんなことはドーでもいい…そんなに深い傷なのに、血が、全く出ていない…!?)

161: 2014/05/03(土) 22:06:19 ID:V0oth22k
絵理「千早さんが『スタンド使い』じゃないとか言ってたけど…『あれ』はどうしたの?」

愛「えへへ、ちょっと秘密にしちゃいました!!!」

彩音「!?」

絵理「それにしても…」クル!

彩音「…!」ゾクッ

絵理「サイネリアも、『スタンド使い』だったんだね」

彩音(この『目』…アタシを見てるけど、アタシを、見ていない…)

絵理「それじゃ、これからも…」

彩音(センパイ…?)

ゴゴゴゴ

絵理「仲良く、しよ?」ニコ

彩音(イヤ…『これ』は、本当に…)

彩音(センパイ、なの…?)

To Be Continued…

162: 2014/05/03(土) 22:08:22 ID:V0oth22k
スタンド名:「リビング・デッド」
本体:鈴木 彩音
タイプ:自動操縦型・同化
破壊力:C スピード:C 射程距離:A(ほぼ無限) 能力射程:A(ほぼ無限)
持続力:C 精密動作性:E 成長性:なし
能力:「ワールド・オブ・ペイン」が作り出した氏霊。
他人の「血」をスタンド化させ、血の持ち主を自動的に追いかけていく。
持ち主のもとに辿り着いた血は、皮膚を突き破って血液の中に戻ろうとする。
本人の血の中に戻るか、血が状態を保てなくなると消滅する。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

163: 2014/05/04(日) 12:37:34 ID:jj6KEco.
おつー



To Be Continued...




引用元: 千早「『弓と矢』、再び」