227: 2014/05/31(土) 00:55:56 ID:d52X7c9Y





前話はこちら





伊織「『リゾラ』…」

ドド ドドド

真「どことなく『南国』っぽい感じのスタンドだね…」

貴音「一つはっきりしているのは、このスタンドは『すもぉきぃ・すりる』ではない。つまり…」

真「こいつは、伊織じゃあない…」

伊織「………」

真「おまえは、何者だ!?」

伊織「さっきから、『誰』だの『何者』だの…」

伊織「いいわ。なら教えてあげる、私は…」

真「…!」

伊織「水瀬伊織よ。水瀬財閥の長女」

真「…は?」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

228: 2014/05/31(土) 00:57:20 ID:d52X7c9Y
伊織「両親は健在。兄が二人。お父様もお兄様達も、尊敬はしてるわ」

伊織「好きなものはオレンジジュースかしら…果汁100%のやつね。炭酸はダメ、ピリピリして口に合わないわ」

伊織「他は、旅行。色々な国の景色や文化に触れるのは好きよ。すぐ近所では手に入らないものだから」

伊織「宝物は、このぬいぐるみ…おべっか使う他人と違って、この子は普通に接してくれた。名前は…そう簡単に他人に話したりはしないわ」

伊織「アイドルを始めた理由は…まぁ、この美しさを放っておくのって世の中にとって損じゃない?」

真「なんだ…何をベラベラと…」

伊織「自己紹介だけど? アンタ達が、『誰?』なんて言うから」

真「自己紹介って…お前が言ってるのは…それは、伊織のことだろう!?」

貴音「貴女が水瀬伊織ではないのはとうにわかっています」

真「ボク達が聞いているのは、おまえのことだ! おまえは誰かと聞いているッ!」

伊織「はぁ。だから…」フルフル

首を横に振る。

229: 2014/05/31(土) 00:58:45 ID:d52X7c9Y
伊織「私は正真正銘、伊織ちゃんだっての」

真「違う、おまえは伊織じゃない」

伊織「いいえ、私は水瀬伊織」

イオリ「…そう。私が本物の、水瀬伊織になる」

・ ・ ・ ・

真「『なる』…? なるって言ったのか、おまえ」

イオリ「確かにアンタ達の言う通り、私は以前この事務所にいた水瀬伊織じゃあないわ」

貴音「これはまた、面妖な表現をするものですね」

イオリ「でも…これからは私が、水瀬伊織として生きる。それだけの話よ」

真「伊織に成り代わる気か…? そんなこと、不可能だ」

イオリ「そう? 結構いけると思うけど」

真「いけるって? どこが。こうして、ボク達にバレてるだろう」

イオリ「はぁ、よく言うわ。この『一週間』…ずっと私のことに気づかなかったってのに」

真「は…」

230: 2014/05/31(土) 01:00:15 ID:d52X7c9Y
イオリ「何よ、その顔。まさか、私がついさっき、ここに来たばかりだなんて思ってたの?」

ゴゴゴゴゴ

真「なんだって…『一週間』?」

真「おまえは一週間前から、伊織と入れ替わっていたっていうのかッ!?」

イオリ「ええ、そうよ。何も気づかずマヌケ面してるアンタ達と、仲良く仕事してましたァ~」

イオリ「貴音、アンタだってそうよ。さっきまで、私の…水瀬伊織の異変に、全く気づいていなかったんでしょう?」

貴音「それは…」

真「けど! ボク達は気づいた! お前の記憶の綻びから!」

イオリ「ええ、それは失敗だったわね。ちょうど入れ替わった時に、そんな出来事があったなんて知らなかったのよ」

ドドドド

イオリ「それ以前なら、水瀬伊織の記憶は全部ある…ボロを出すことはないわ。そのはずだった」

真「記憶は全部ある…どういうことだ? おまえが伊織の記憶を持っていると?」

貴音「それが本当だとして何故、一週間前の記憶だけがないのです?」

イオリ「アンタ達が知る必要はないわ」

231: 2014/05/31(土) 01:01:24 ID:d52X7c9Y
イオリ「そう、アンタ達は私の『正体』を知ってしまった」

ゴゴ

イオリ「でも…逆に言えば、真、貴音。アンタ達二人を始末すれば…」

ゴゴゴゴ

イオリ「この事務所に、私のことを知るヤツはいない。そうでしょう?」

ゴゴゴ ゴゴゴゴ

イオリ「元々、そうするつもりだったし」

貴音「…私達も始末し、伊織と同じように偽物に成り代わらせるのでしょうか?」

イオリ「だから、話聞いてんの? それを知ってどうすんのよ、時間のムダだわ」

真「本気で言っているのか?」ググ…

パキ!

右手の人差し指を曲げると、鎧に覆われた指が鳴った。

真「ボクと貴音を始末できるなんて、本気でそう思っているのか?」パキパキパキ

指を手の内側に押し込んで握り込み、拳を作る。

232: 2014/05/31(土) 01:04:20 ID:d52X7c9Y
イオリ「出来もしないことを…」スッ

イオリのスタンド『リゾラ』が、制止するように手を出す。

真「オラァッ!!」ゴォ

真は構わず、右腕で外側から大きく引っ掛けるように、目の前に立つイオリに殴り掛かった。

イオリ「得意気に言ったりしないわよ、この伊織ちゃんは!」

バンッ!!

真「!?」

突然『ストレイング・マインド』を被っている真の顔付近で、爆発が起こる。

真「な…なんだ、今のは…爆発した!?」

その衝撃に怯んで、真の拳が止まる。左手で頭を押さえた。

イオリ「」カン カン カン

その隙に、イオリが階段を駆け上がっている。

貴音「『フラワーガール』」ヒュオッ

貴音のスタンドが、一瞬にして距離を詰めた。

233: 2014/05/31(土) 01:05:08 ID:d52X7c9Y
イオリ「うお…」

ヒュバ!!

左手で、イオリの喉元に向かって手刀を繰り出す。

イオリ「リ、『リゾラ』ッ!」バッ

イオリのスタンドがその前に立ちふさがった。

チリッ

ドスゥ

イオリ「ぐえっ!」

『フラワーガール』の一撃は『リゾラ』の手に掠り、その鎖骨あたりに突き刺さった。

真「スタンドへのダメージは、本体へのダメージ…スタンドが殴られれば、本体も同じ衝撃を受ける」

ギャァァン

『リゾラ』が、本体のイオリごと階段の上まで吹っ飛ばされる。

234: 2014/05/31(土) 01:07:16 ID:d52X7c9Y
ドサァ!!

真「よし! 入った!」

貴音「いえ…」

イオリ「フゥー…」ムクッ

タタッ

イオリは地面に落ちてすぐに立ち上がると、真達から見て左側の廊下へと走り出した。

貴音「浅い…」

235: 2014/05/31(土) 01:08:07 ID:d52X7c9Y
タタタ

イオリ「あの二人、どちらに気をつけるべきかと言えば貴音の『フラワーガール』ね…」

イオリ「体力を大きく消費するという弱点はあるけど…あのパワー、あのスピードであの射程距離…どうかしてるわね」

イオリ「でも…これで『半分封じた』」

イオリ「そして…」

236: 2014/05/31(土) 01:09:02 ID:d52X7c9Y
カン!!

真が、階段に足をかける。

真「貴音、追いかけよう! あいつを野放しにするわけにはいかない」

貴音「ええ、わかり…」

トス

・ ・ ・ ・

貴音の身体が、左側にある手すりに寄りかかった。

真「さっきの『爆発』…あれが、あいつのスタンドの能力なのか…?」

真「………」

クルッ

貴音「………」ググッ

真が振り向くと、貴音は右腕で左手を押さえていた。

真「? どうしたの、貴音」

237: 2014/05/31(土) 01:09:43 ID:d52X7c9Y
ダラン

真「………」

ゴ ゴゴ

貴音「左腕が…動かないのです…」

真「なんだって?」

貴音「腕の筋肉が『弛緩』して元に戻らない。力が…入らない」

真「ど、どうして…」

貴音「先程、『フラワーガール』の左腕があのスタンドの手に触れた…ような気がします」

貴音「恐らく、これがあの者の能力なのでしょう」

真「おいおいおいおい、ちょっと待ってよ」

真「じゃあ、さっきの『爆発』はなんだっていうのさ? 間違いなく、ボクは攻撃を受けた」

貴音「ええ、私も見ました…が、なんらかの方法で私の腕が『弛緩』されているのも事実」

真「スタンドは、一人一能力のはずだろう!? 千早の『ブルー・バード』だって、『奪い』『与える』という同じ能力!」

真「あいつは、二つの能力を使えるのか!?」

238: 2014/05/31(土) 01:10:56 ID:d52X7c9Y
貴音「同じ能力、かもしれません」

真「同じ能力…どういう能力なら、こんな現象を起こせるんだ…」

貴音「どのような能力を持っていようと…」

貴音「彼女が私達を狙っていること…そして、彼女が765プロにとって『敵』であることに、変わりありません」

真「やるしかない、か…随分離れてしまったけど、伊織と同じくらいの身体能力ならすぐ追いつける」コッ

二人が、階段を上り始める。

真「『リゾラ』だったっけ? あのスタンドの情報が少なすぎる。そして、あいつの言ったことが本当なら…」

貴音「私達の能力は筒抜けでしょうね。二対一でも、有利ということはない…」

ズッ

・ ・ ・ ・

貴音の足下。階段から、二本の手が出現した。

貴音(一つ…わかっていることがあった)

ズオッ

手が、貴音の足を狙って襲いかかる。

貴音(わざわざ私達から離れるということは…『遠隔操作型』のスタンド…!!)

239: 2014/05/31(土) 01:12:34 ID:d52X7c9Y
貴音「『フラワー…」

ガッ!

貴音「!」

スタンドを出す前に、両足を掴まれる。

真「え?」

貴音「真…」

真「た、貴音…」

貴音「今…攻撃されました。しかし、見ていなければこのような正確な動きはできない…」

貴音「あの者は、すぐそこにいるはず。私には構わず…行ってください」

ガクン!!

貴音の膝が折れる。

ガンッ!

ゴロン ゴロン

ドギャァァァア!!

そのまま力なく崩れ、体を階段に叩き付けながら下まで転がっていった。

240: 2014/05/31(土) 01:13:42 ID:d52X7c9Y
ドドドドド

真「え…」

貴音「………」

真「」クルッ

真は貴音が転げ落ちる様を見ていたが、すぐに、階段の上に視線を移す。

ドドドド

イオリ「………」

真「お…おまえ… …ッ!!」

階段の上、柱の影に、イオリが立っていた。

イオリ「私のスタンド、『リゾラ』。その能力は『弛緩』…『緩ませる』こと」

イオリ「身体に触れれば、もう力を入れられない。足が『弛緩』すれば、立つことすらできない」

真「何をベラベラと…! 貴音に不意打ちを仕掛けたくせに、これで正々堂々のつもりか!?」

イオリ「別に。貴音の『フラワーガール』さえ潰せれば後はどうだっていいわ」

241: 2014/05/31(土) 01:16:01 ID:d52X7c9Y
真「おまえを…ブッ倒すッ!」

イオリ「ハッ! そんなこと言う前にさっさとかかってきたら? だからダメなのよアンタは!」

真「」ダッ!!

『ストレイング・マインド』で向上した脚力で思い切り跳躍し、イオリに飛びかかる。

真「オラァッ!!」ドン

空中で真っ直ぐに拳を突き出す。

イオリ「そして、『ブッ倒す』…ね」

イオリ「残念だけど、アンタじゃあ無理よ、真。私の『リゾラ』には絶対に勝てない」スッ

真「!」ブルンッ

最小限の動きで、大振りの攻撃を避け…

イオリ「」サッ!

トン

空振った真の右腕に、『リゾラ』の左手が触れた。

242: 2014/05/31(土) 01:16:56 ID:d52X7c9Y
真「!」ガクン

右腕が落ちた。

イオリ「スタンドへの攻撃は本体への攻撃! 『鎧』を纏っていようが関係ないわ!」

真「く…」

イオリ「右腕を封じた、こうなったらもうアンタはポンコツよ」

真「駄目だな、これじゃ…冷静になるべきか」パキッ

左手を握り込む。

イオリ「フン…」

イオリ(冷静になったところで…右腕を失えば、あとは左腕しかないでしょう? 片足を封じられたら、もう終わりだから)

イオリ(真のスピードは速い…でも、左腕で来るとわかっていれば充分避けられ…)

真「オラァッ」グオッ

バリィィン!!

真が左腕で、柱を殴った。

イオリ「!」

243: 2014/05/31(土) 01:17:26 ID:d52X7c9Y
ヒュン ヒュヒュン

『ストレイング・マインド』の能力で『固く』なり、真の拳で砕かれた柱の欠片がイオリに向かって飛ぶ。

イオリ「そうか、『固く』した物体を殴り飛ばす『硬化散弾銃』…」

ゴォォォォ

イオリ「これがあったわね…!」ダッ

ゴロゴロ

横っ飛びして、転がりながら躱す。

真「」タンッ

イオリ「!」ムクッ

イオリが起き上がる前に、真が右足を踏み出している。

真「行くぞ『ストレイング・マインド』ッ!!」グッ

イオリ(左が来る…)

244: 2014/05/31(土) 01:19:06 ID:d52X7c9Y
グイッ

イオリ「ん?」

真は右足を軸足に、左の腿を振り上げ、右側に身体を捻る。

真「『緩ませる』スタンドだって…?」

ガッ

サイドスローのピッチャーが投球するように、右腕をしならせた。

イオリ「な…『右』!? 遠心力で…!」

真「鎧には緩む筋肉もないだろう! 叩き付けるッ!!」

イオリ「く…」

真「オラァ!!」グイン

イオリ「」ガクッ

イオリ(この立ち上がる体勢がまずい…前か後ろか、倒れ込まないと躱しきれない…)

イオリ(いや、でもそうしたらその隙に左腕を叩き込まれる…)

245: 2014/05/31(土) 01:20:29 ID:d52X7c9Y
イオリ「だったら…」

スッ

イオリのスタンドが、左手を肩あたり、真の右腕の軌道線上まで上げた。

真「!?」

イオリ「………」

真「受け止める気か…!?」

ゴォォォ

真(ボクの『ストレイング・マインド』は、触れたものを『固く』する…)

真(『固い』ものは割れやすい…その特性上、この拳は何だろうがブッ壊す凶器となる)

真(『リゾラ』の能力があっても、この腕は既に『緩んで』いる…能力で受け止められるわけがない、自殺行為だ!)

真(…けど、こいつは伊織じゃない、それにこの『緩んだ』腕はボクにも止めようがない)

真(構わない、このままブチ抜くッ!!)

246: 2014/05/31(土) 01:21:03 ID:d52X7c9Y
真「オラァァッ!!」

イオリ「『リゾラ』ッ!」

バシィィィィッ!!

真「………」

イオリ「………」

ボロ…

カラン カラ

破片が、崩れ落ちる。

ブシュ

真「バ…」

指先から、血が吹き出す。

真「バカな…」

イオリのスタンドには、傷ひとつ、ついていない。

イオリ「やっぱり、無理ね…アンタには。私を倒すなんて…」

251: 2014/06/07(土) 22:55:41 ID:QUA.v9s6
真「」ズル…

ダラン

勢いを失った真の右腕が、床の方向へ垂れ下がる。

イオリ「やっぱ、『765プロ』の中で相手にするなら… ……」ザッ

真から距離を取った。

イオリ「アンタが一番楽ね。いくら『パワー』があっても、その『身に纏う』スタンドじゃあね…」

真「ぐっ…!」

ポタ ポタ

真(『鎧』が…あいつのスタンドの手に触れた部分が、クッキーみたいにボロボロになっている…)ボロッ

真「『ストレイング・マインド』の指先が…崩れるッ!」パラ パララッ

真「何故だ!? ボクのスタンドの能力は『固く』すること、その能力の中心にあるこの鎧は最強の硬度を持つ…」

真「割れることはあっても、こんな風に崩れるなんて! 一体何をしたッ!? なんなんだ、そのスタンドはッ!」

イオリ「全部言ったわ。私のスタンド、『リゾラ』の能力は『緩める』こと。ただ、それだけよ」

真「それだけ…だって…?」

252: 2014/06/07(土) 22:57:57 ID:QUA.v9s6
真「『鎧』には、筋肉のように緩む部分なんてない…」

真「それだけのスタンドが、『ストレイング・マインド』を破壊できるわけがないだろうッ!」

イオリ「この世のあらゆる物質は原子で構成されている」

真「………」

真「なに?」

イオリ「『スタンド』だって、恐らく例外ではないわ。エネルギーが発生している以上はそこにはなんらかの原子があるはず」

イオリ「そして、原子同士は『電磁気力』という力で結びついている。だから物体は形を保ってられるわけ」

イオリ「それを『緩め』たら…」ズゥッ

『リゾラ』が真に近付きながら、右手を伸ばす。

イオリ「どうなると思う?」

真「」ピキャン

左手の指を、壁に突っ込む。

イオリ「!」

253: 2014/06/07(土) 23:03:59 ID:QUA.v9s6
ググ…

ギ ピキン

真「オラァッ」

パリィィン

指の力で引っ掻くように、壁を抉り取り、飛ばす。

イオリ「」スッ

『リゾラ』の右腕を上げ、手のひらを飛んでくる破片に向けた。

ヒュォォォ

イオリ「原子が『弛緩』した物体は、非常に不安定な状態になる」

スッ

イオリ「そして、一瞬でも不安定になった物体は、元に戻る際自らの原子同士を結びつける力によって…」

ボロッ…

真「!」

イオリ「鉄だろうがダイヤモンドだろうが、焼き菓子みたいに簡単に崩れる!」

イオリ「触れただけで、どんな物体でも破壊できるのよ! 真、アンタの『ストレイング・マインド』以上にね!」

254: 2014/06/07(土) 23:09:14 ID:QUA.v9s6
パラパラ

飛ばした壁の破片が、砂のようになって地面に落ちる。

イオリ「そして、『スタンドはスタンドでしか倒せない』。それがルール」

イオリ「鎧を破壊すれば、アンタの攻撃は『リゾラ』には届かない」

真「原子を『緩める』か…」

真「随分と、スケールが大きい話だね…いや、小さいのか?」

イオリ「スタンドは精神力のエネルギーよ。発想のスケールが小さいヤツじゃあスタンドの能力をフルには引き出せない!」

真「だとすると、ひとつ…妙なことがあるなぁ」パキッ

ダッ

左手を握りしめ、イオリに向かって走り出す。

イオリ「話聞いてたのかしらァ~ッ?」バッ!

イオリのスタンドが、両手を持ち上げた。

真「オラァッ!!」ビュバッ

構わず、左手の拳を突き出した。

255: 2014/06/07(土) 23:22:18 ID:QUA.v9s6
イオリ「アンタの攻撃は…」

ゴォォォォォ

イオリ「通用しないって言ったでしょうが!」

ォォォォォォ

真の腕は止まらない。

イオリ「…チッ!」

グアァーッ

『リゾラ』が向かってくる腕の内側に身を捻って、ギリギリで躱す。

イオリ「」バッ

左腕に向かって、手を伸ばす。

真「」ガッ パギィィ!

右足を地面に叩き付け、めり込ませる。

イオリ「!」

真「」ギュルン!!

その足を支点として、身体を回転させた。

256: 2014/06/07(土) 23:29:09 ID:QUA.v9s6
イオリ「………」ス…

リゾラが伸ばした腕は空を切り…

真「」グオォォォォッ

遠心力で勢いを持った真の右腕が、イオリに襲いかかる。

イオリ「」パシィ!!

ポロッ パラパラ

・ ・ ・ ・

『リゾラ』の右手で受け止め、『ストレイング・マインド』の鎧を崩壊させる。

ク…グンッ

鎧を破壊された真の右腕が、手をすり抜けた。

グルン

真「オラァッ!」ドン

回った勢いのまま、再び左腕で殴り掛かる。

イオリ「」バッ

後ろに飛んで躱した。

257: 2014/06/07(土) 23:39:49 ID:QUA.v9s6
真「うおっ」ブルンッ

ガシャァァァァン!!

思い切り体勢を崩し、地面に叩き付けられる。

真「………」

ドドドドドド

真「…やっぱりな」ムクッ

すぐに立ち上がる。ダメージが入った様子は全くない。

真「どんな物質でも破壊できる…と言ったね」

真「だったら、なぜボクの右腕や貴音の足の原子を『緩めて』破壊しないのか」

イオリ「………」

パキ パキ パキ

黒い鎧が、破壊された部分を埋めるように真の右腕を覆っていく。

真「できないんじゃあないのか? 最初、ボクの右腕に触った時は『鎧』は破壊されなかった」

真「なにか他に『緩む』ものがあれば…より大きな『緩む』ものがあったら…そちらを優先するしかないんじゃあないのか?」

イオリ「フン!」

258: 2014/06/07(土) 23:53:35 ID:QUA.v9s6
真「『鎧』には緩む部分がないと言ったけど」

真「逆なんだね。『緩む』部分がないからこそ、原子まで『緩め』させ…『ストレイング・マインド』を破壊できた」

イオリ「ええ、そうね。どの道、腕の筋肉が緩めば終わりだけど」

真「いや、全然違うよ。腕の筋肉が『緩んだ』としても、『ストレイング・マインド』が破壊されなければ…」

ゴゴゴ

真「一発分…キミの腕をフッ飛ばすくらいはできるからね」

ゴゴゴゴゴ

イオリ「………」

真「」ダッ!!

真っ直ぐに、イオリの方に突っ込んでいく。

イオリ「」ズズッ

真「!」

『リゾラ』が、横の部屋の、開いているドアの根元に触れている。

259: 2014/06/07(土) 23:59:15 ID:QUA.v9s6
ギュルン

シュパッ シュパン!!

ドアの金具を留めているネジが思い切り『緩み』、真の方に飛び出していく。

真「………」

グラッ

いつの間に触れていたのか、天井にある蛍光灯も『緩み』…

ズオォッ

真の頭上へと落ちていく。

イオリ「『リゾラ』!」

イオリが一緒に、スタンドを突っ込ませた。

真「………」

ガシャァァァン!!

蛍光灯が頭にぶつかって割れる。

ガシャ ガシャン

破片が地面に落ちた。

260: 2014/06/08(日) 00:05:31 ID:ggTkoY.g
カッ! ガガッ!!

飛んできたネジが、『鎧』に弾かれる。

避けたり、反応したりはしない。

イオリ「」ピタッ

そんな真の様子を見て、『リゾラ』の動きを止めさせた。

真「こんな…」

イオリ「………」

真「こけおどしが通用すると思ったのか」

イオリ「流石に冷静みたいね…肝の据わったヤツ」

真「」パラッ

顎を引き、頭の上に残っていた蛍光灯の破片を落として、左手に乗せる。

パキッ!!

握り潰した。

261: 2014/06/08(日) 00:17:20 ID:ggTkoY.g
真「オラァッ」

ヒュゥォン!!

手の中でコナゴナになった破片をイオリに投げつける。

タッ!

同時に身をかがめて、長距離ランナーがスパートをかけるように加速した。

イオリ「来た来た来た来た…」

イオリ(破片を避ければその後に攻撃が来る、攻撃を避けるためには破片は受ける覚悟が必要…)

真「」ガッ ガ ガ ガ

イオリ(どっちも避ける…なんて無理ね。このスピードじゃあ、避けて体勢を崩した瞬間ジ・エンド)

イオリ「私が同じことやってもこけおどしにしかならないのに…チッ、パワーもスピードもあっていいわねぇアンタのスタンドは…!」

ゴォォォォォ

イオリ「でも…この伊織ちゃんの美しい顔に傷をつけるなんてできやしない…わッ!」タッ

イオリは左方向…真から見ると、腕が動かない右方向に飛んで躱す。

262: 2014/06/08(日) 00:24:27 ID:ggTkoY.g
真「」ス…

ガンッ!

ピキ パリ ピキィッ

左腕を下げ、右の膝を腕へと叩き付ける。左腕の鎧にヒビが入った。

イオリ(……… …? 何やってんの? ついに気が触れた?)

真「オラァッ!!」ビュァッ

地面から掬い上げるような拳が、イオリへと襲いかかる。

イオリ「…やっぱり…」

横に飛んだばかりだ。避けることはできない。

イオリ「…無傷で勝とうなんて虫のいい話だったわね」バッ

『リゾラ』の右手で受け止めようと、手を出す。

グシャァァァァ

そのまま、真の拳が右手に入った。

263: 2014/06/08(日) 00:37:56 ID:ggTkoY.g
イオリ「ただし…」グググ

真「!」

ポタ…ポタ

パラ パラパラ

左手の鎧が崩れている。

『リゾラ』の右手の後ろに、左手が重なっていた。

イオリ「右手だけよ…それ以上は許さない」

ブシュ

右手がコナゴナに破壊され、血が吹き出す。

イオリ「両腕はこれで封じた! アンタもこれで終わりよッ!」

真「これで終わり?」

真「気が早いなぁ。まだ何も終わっちゃいないってのに」

イオリ「ハッ! 手がでなけりゃあ足でも使う?」

264: 2014/06/08(日) 00:47:58 ID:ggTkoY.g
ピ…

・ ・ ・ ・

イオリ「…その、腕…」

真「スタンドを破壊することで、攻撃は無力化できるみたいだけどさ…受け止めた時の衝撃まで消えるわけじゃあないよね」

ピキ ピシピシ

真「『鎧』の『硬化散弾銃』…」

『ストレイング・マインド』の左腕のヒビが大きくなっていく。

真「この距離なら、まぁ…届くだろ」

パァリリリィィン

左腕の鎧が割れ、その破片が、手の横を抜けイオリの顔面へと飛んでいく。

イオリ「な…何ですってェーッ!!」

真(よし…! これで…)

シュー…

・ ・ ・ ・

真(なんだ、この音は?)

265: 2014/06/08(日) 00:56:22 ID:ggTkoY.g
ドボンッ!!

真「!?」

突如、真のイオリの間に爆発が起こる。

イオリ「きゃぁっ!!」ブアッ

真「ぐっ」ガシャン!

その衝撃で、真とイオリが引きはがされるように吹っ飛んだ。

真「な…なに…!?」

『硬化散弾銃』は命中していない。

真(まただ…なんだ、今の爆発は…)

イオリ「やってくれるわね、真…」

真「く…」

真(左腕も…落とされた、両腕が使えない…)

イオリ「でも、やっぱり…アンタは、もうこれで終わりよ」

真「うおおおおおっ!」

269: 2014/06/13(金) 19:25:39 ID:s0UDF0os
前回までのあらすじ

なんやかんやあって高槻さんと戦うことを決意した千早!

三回戦の種目は、歌! 千早の得意分野!

しかし、高槻さんもめきめきと実力をつけてきた侮れない相手!

千早は、どう立ち向かっていくのか!

誰のためでない、自分のために! 進め、歌姫如月千早!

負けたらプロデューサーのセクハラ地獄が待っている!

270: 2014/06/13(金) 19:28:23 ID:s0UDF0os
シュゥゥゥゥ…

イオリ「」クイッ

左手で、顔についた焦げ目をなぞる。

ポタ ポタ

イオリ「ああ、痛い…肌に傷がついたし、右手が…人差し指と中指が千切れてるわ…」プルプル

身をかがめて、右手の小指と薬指で落ちた指を拾い上げる。

イオリ「けど…」スッ

顔を上げた。

イオリ「これでアンタを倒せると思ったら…あんまり悪い気はしないわね」

真「はーっ…」

真(両腕の…筋肉が…)

ガクン

真(『緩み』きって…動かせない…!)

プルプル…

真はふらつきながらも、足の力だけでゆっくりと立ち上がった。

271: 2014/06/13(金) 19:29:48 ID:s0UDF0os
真(体の動きというのは、つまるところ筋肉の収縮作用だ…)

真(『縮む』『緩む』…どちらか片方しかできなくしてしまえば、体は動かなくなる…それはわかる)

シュゥゥゥ…

真(だが…! 今の爆発は…なんだ?)

真(あいつの能力が本当に一つだけなら…これも『緩ませる』能力によるもののはず…)

真(気になるのは、さっきの『シュー』とかいうあの妙な音…あれは、確か…)

ゴゴゴ

ゴゴゴゴゴ

真(あいつの持っているうさぎのぬいぐるみ…)

真(よく見ると、鼻の辺り…なにかおかしいぞ、パイプか…? パイプが伸びている)

真(爆発…パイプ…)

真「………ガス?」

イオリ「あら」

真「その中にガスボンベでも仕込んであるのか」

イオリ「察しがいいわね、そうよ」

272: 2014/06/13(金) 19:31:27 ID:s0UDF0os
真「『リゾラ』の能力で…可燃性ガスの分子を『緩め』ているのかッ!」

イオリ「ええ。『緩んだ』状態になったガスを空気中に放出しておく…」

イオリ「そして、能力を解除する。すると、元に戻る時に発生するエネルギーで、反応が起こる」

イオリ「一度反応が起こってしまえば、その際に発生するエネルギーで連鎖的に反応を起こし…大きなエネルギーが発生する」

真(そして、爆発する…ってわけか)

イオリ「私の『リゾラ』…能力は申し分ないけど、ちょっと『パワー』が足りなくてねぇ…」グイッ

左腕のぬいぐるみを持ち直す。

イオリ「これで補ってるってわけ」

真「」パキッ

膝が鳴った。

真(両腕が上がらない)

真(…『チアリングレター』を使うか?)

真(いや、『チアリングレター』を使うには『ストレイング・マインド』のガードを下げる必要がある)

真(今は『鎧』に包まれているから無傷だったけど、あの『爆弾』がある以上…規模によっては、ただじゃあ済まないか)

273: 2014/06/13(金) 19:35:00 ID:s0UDF0os
イオリ「両腕が使えないアンタなんて…」ズッ

イオリは自らのスタンドを、真に近づけていく。

真「…!」

イオリ「羽根を取られたトンボと同じよッ!」

真(向こうから来た…もう、ボク相手に受け身に回る必要なんてないってことか…)

イオリ「」グオッ

『リゾラ』が真に向かって手を伸ばす。

真「オラァ…!」

ブルンッ

真はその腕に向かって、右足を蹴り上げる。

ヒュ

イオリ「………」

ビィィ…ンッ

真「うっ…!」クラッ

しかし、蹴り上げた足は狙いを外して空を切った。体がぐらついてしまう。

274: 2014/06/13(金) 19:40:38 ID:s0UDF0os
真(駄目だ、両腕の筋肉が緩みまくってるせいで身体のバランスが安定しない!)

真(こんなんじゃあ、腰の入った蹴りも撃てやしない!)

イオリ「右足! 貰ったッ!」ゴォ

真「オラァッ!!」ヒュッ

イオリ「!」サッ

真が上がった足を振り下ろしたのを見て、咄嗟に『リゾラ』の手を引っ込める。

ガギィィン

ヒュン ヒュン

『ストレイング・マインド』の鎧の覆われた踵が床を砕き、破片が飛び散る。

イオリ「『リゾラ』」パシ パシ

ポロ…

スタンドの手で掴み取って、難なく対処する。手の中でボロボロになった破片が、床に落ちた。

イオリ「で、次は?」

真「………」

イオリ「ないわよねぇ。転ばないようにバランスを整えるのが精一杯よ」

275: 2014/06/13(金) 19:53:10 ID:s0UDF0os
パシィィッ!!

『リゾラ』の左手が、真の右足を引っ叩いた。

真「うおっ…」グラッ

右足が『緩み』、膝をつきそうになるが、片足で踏みとどまる。

イオリ「そんな状態で何ができるんだか…」

イオリ「チェックメイトよ! もうアンタは詰んだ!」

真「く…」フラ…

イオリ「ん?」

ピョコ ピョコッ

真が片足でケンケンしながら、イオリに背を向け動き出す。

イオリ「あら、逃げようっての? もう打つ手がないから、私から逃れようっての?」

ピョコ ピョコン

イオリ「逃がすか、バーカッ! 『リゾラ』!」ズォォッ

イオリのスタンドが回り込み、真の進行方向正面に立ちふさがる。

276: 2014/06/13(金) 19:57:21 ID:s0UDF0os
真「く…」ギリッ

『鎧』に覆われた中で、歯ぎしりをした。

真「オラァッ」グオン!

イオリ「おっと」サッ

せめてもの抵抗とばかりに前方の『リゾラ』に頭突きをかますが、これも避けられた。

ガシャア!!

頭から地面に叩き付けられる。

真「」ゴロゴロゴロ…

そのまま二、三回前方に回転し…

グバッ カラァァン!

仰向けになって倒れた。

イオリ「無様ねぇ…ええーっ、真!?」コツ コツ

真「気安くボクの名前を呼ぶな…」

イオリがスタンドの後から、ゆっくりと真に近付いていく。

277: 2014/06/13(金) 20:04:10 ID:s0UDF0os
真「………」モゾモゾ

真は大の字になったまま、体を捻らせている。

イオリ「悪足掻きはもうやめなさいよ。苦しみが長引くだけだわ」スッ

パシッ

『リゾラ』の左腕が真の『ストレイング・マインド』に覆われた左腕に触れると…

ボロッ

真「ぐ…!!」ブシュ

その部分が崩れ、血が噴き出す。

イオリ「ほらほら!」 パシ パシッ

真「うあああっ!!」ブシュゥゥッ

イオリのスタンドが体のあちこちに触れ、真の鎧を破壊していく。

真「………」フッ

真の身に纏っていた『鎧』が、消えた。

イオリ「あら。気絶しちゃった? 『ストレイング・マインド』が解除されたわ」

278: 2014/06/13(金) 20:18:30 ID:s0UDF0os
イオリ「この状態で何かできるとは思わないけど…」

イオリ「念のため、『リゾラ』の能力を解除しても動けないくらいには痛めつけておくか」コッ コッ

イオリが真の傍に立ち、ぬいぐるみの口を向ける。

イオリ「これで、私の勝ちよ。所詮、『ストレイング・マインド』もこの伊織ちゃんの敵じゃなかったわね」

真「いや、違う。ボク達の勝ちだ」

・ ・ ・ ・

イオリ「なんだ、まだ起きてたの。アンタ」

真「やけに勝負を急いでるね…もっとゆっくり、気をつけながら事を運べばいいのにさ」

イオリ「…?」

真「まぁ、それもそうか。もたもたしてれば騒ぎが大きくなるかもしれない」

真「他の誰かが駆けつけてくるかもしてない。ボクを始末するなら、さっさと決着をつけたいはずだ」

イオリ「…何? アンタ、今の状況わかってんの?」

真「わかってるよ。文字通り、手も足も出ない…」

真「おまえの言う通り、ボクの『ストレイング・マインド』でその『リゾラ』に勝つのは不可能みたいだ」

イオリ「………」

279: 2014/06/13(金) 20:20:47 ID:s0UDF0os
真「けれど、おまえの言った通り、そのスタンド自体にパワーはほとんどない。攻撃を止めたのだって直接受け止めてるわけじゃあないし」

真「鎧の原子を『緩めて』破壊すればボクにもダメージはあるけど…」

真「『ストレイング・マインド』を解除したボクに決定的なダメージを与えるには、その『爆弾』を使うしかない」

イオリ「それがどうしたってのよ! この氏に損ないがッ!」

真「いや…つまり、おまえがボクを倒したかったら、自分自身で近付くしかないってことさ」

イオリ「………」

真「ボクはただ、ここに誘き寄せたかっただけだ」

真「そしておまえは『射程距離内』に…入った」

イオリ「『リゾラ』の能力は解除してないわよ?」

真「まだ、わからないかなぁ」

・ ・ ・ ・

イオリ「…『達』? ………」

ドド

イオリ「アンタ、さっき…『ボク達』って言った…!?」

真「………」

280: 2014/06/13(金) 20:26:29 ID:s0UDF0os
イオリ「」バッ!

イオリは自分の立っている位置…ちょうど、廊下の突き当たり。そこから右の方…階段の下に、目を向けた。

ドドドドド

貴音「ぐれぇと」

ドドドド

イオリ「貴音…!!」

先程階段から転げ落ちた貴音が、そこに座り込んでいた。

イオリ(私を…見上げているッ…!!)

真「スタンドなら引っ込めればいいけど…自分の体はそうもいかないだろう」

イオリ(真の奴…貴音から私の姿が見えるように、自分を囮にしたッ!)

貴音「『フラワーガール』」キュル

ギュン!!

イオリ「あああああ!!」

貴音のスタンドが、戦闘機のような勢いで突っ込んでくる。

281: 2014/06/13(金) 20:35:36 ID:s0UDF0os
ドォ

イオリが、スタンドを自分の正面に立たせる。

イオリ(突っ込んでくるなら、私に攻撃が突き刺さる前に…逆に『リゾラ』で…体をフニャフニャのグニャグニャにしてやるッ!)

イオリ(できる! できなかったら…終わるッ!)

イオリ「うおっ、おおお『リゾラ』ッ!」ヒュン

スカッ

左手で手刀を繰り出したが、その腕は空振る。

イオリ「へ…」

『フラワーガール』の軌道がイオリを外れ、背後まで飛んでいったからだ。

クルン

イオリが首だけ振り向くと、フラワーガールの体がこちらに向いて、花弁が花開くように舞っていた。

貴音「感謝いたします」

イオリ「あ…」

貴音「貴女が私を早々に動けなくしてくださったことで…逆に、体力に余裕ができました」

282: 2014/06/13(金) 20:37:05 ID:s0UDF0os
真「手に触れるだけで攻撃を無力化するスタンド…どうやって倒すべきか?」

真「答えは簡単だ、正面から突っ込まずに回り込めばいい」

真「ボクの『ストレイング・マインド』では少し難しいけど、『フラワーガール』のスピードなら…」

真「楽勝だ」

貴音「ここ…」グッ

イオリ「ひ…」

ヒュオッ

イオリ「うべらっ!!」ゴギッ

『フラワーガール』の右拳が、イオリの右顎に突き刺さる。

グ ギギ

貴音「この角度が、いい」

グギャァ!!

ギュルルルン!

ドグシァァア

その一撃はイオリの頭を揺らしながら、体ごと回転させ、地面に叩き付けた。

283: 2014/06/13(金) 20:43:18 ID:s0UDF0os
イオリ「う…うが…あ…!!」

真「!」スクッ

貴音「………」スッ

真と貴音が、同時にその場から立ち上がった。

イオリ「あ、ああうううあああああ…がほっ、げほっ…!」

貴音「『緩める』能力が…」カツ カツ

貴音が階段を上がってくる。

真「…解けた。スタンドを保ってられなくなったようだね」クルッ

イオリ「ひ…」

真が、イオリの方を見下ろす。

イオリ「ひいーっ」ズルズル

イオリは体を引きずりながら、廊下の方に逃げようとする。

真「逃がさないよ」スタッ

イオリ「うあ…」

その前に、真が回り込んだ。階段から上がってくる貴音とは、挟み撃ちの形になる。

284: 2014/06/13(金) 20:55:51 ID:s0UDF0os
真「さて…おまえには聞きたいことが山程ある」

イオリ「はぁーっ、はぁーっ」

イオリ(まだ…まだよ、まだ私は『負けていない』…何か、逆転の手が…)

貴音「真。スタンドを出せぬうちに『固く』して手足を封じてしまいましょう」

真「そうだね。その方がよさそうだ」ス

パキ パキ

真がイオリに右腕を伸ばす。その腕が、『ストレイング・マインド』に覆われていく。

イオリ(手が…!)

???「あっ!?」

真「!?」

貴音「!」

やよい「な…なに、やってるんですか…? みなさん…!」パタパタ

真「やよい」

イオリ「…!」

真の背後、廊下の奥の方からやよいが走ってきた。

285: 2014/06/13(金) 20:59:51 ID:s0UDF0os
やよい「真さんと貴音さんが、伊織ちゃんを…え?」

イオリ(これよ…誰かが来るのを待っていた!)

貴音「やよい。これは…」

イオリ「助けて、やよいッ!」

やよい「え…」

真「なに?」

イオリ「こいつらがおかしいのよッ! 突然私を襲ってきて…殺されるわッ!!」

やよい「伊織ちゃん…? あ、あの…」

真「な…何を言ってるんだ! おまえはッ!」

イオリ「ほら、このケガ…ひどいでしょう!? こいつらにやられたのよ!」

やよい「え、えっと…治そっか…?」

イオリ「そんなのは、後でいいわ! それより、はやくこいつらを『くっつけ』て止めて!!」

真「…!」

286: 2014/06/13(金) 21:05:12 ID:s0UDF0os
イオリ(やよいの『ゲンキトリッパー』…『くっつけ』る能力で、真と貴音を足止めしてもらえば…)

イオリ(『アイツ』を連れて来れる…)

イオリ(『アイツ』さえ来てくれれば…真と貴音、そしてやよいを始末すれば…!!)

真「やよい! 言うことを聞いちゃ駄目だ、そいつは伊織じゃあない!」

貴音「やよい。『くっつけ』るのなら、そちらの方です。逃がしてはなりません」

やよい「あう…」

イオリ(やよいは何も知らない! 私が以前の水瀬伊織でないだなんて、わかりっこないわ!)

イオリ(私とあいつらのどっちが正しいのかなんて、咄嗟に判断できるわけがない!)

やよい「…『ゲンキトリッパー』」

ウッウー ウー ウッウー

やよいの体から大量の細かいスタンドが現れ、真達の足下に広がっていく。

ピタッ

貴音「足が…『くっつい』た」

真「や…やよい…!」

イオリ(やったわ!)

287: 2014/06/13(金) 21:08:17 ID:s0UDF0os
イオリ(さぁ、今のうちに逃げ…)

ピタ

イオリ「え…」

イオリ(足が…動かない)

グ

イオリ「わ…」ググ

イオリ「私も『くっつけ』られている…!?」

やよい「………」

やよい「なんか、伊織ちゃんと真さん達…どっちが正しいのか、よくわかんないから…」

やよい「みんな、『くっつけ』ることにしました」

イオリ「な…何してんのよッ、アンタッ!」

やよい「へ…!? い、伊織ちゃん…?」

真「いや、いいぞやよい! それでいい、そいつを逃がさないで!」

貴音「………」

イオリ(まずい…まずい、まずい!! どうすれば…)

288: 2014/06/13(金) 21:15:21 ID:s0UDF0os
やよい「とりあえず…伊織ちゃん、そのケガ『くっつけ』て治さないと」ヒョコッ

やよいがイオリのすぐ近くまで歩いていく。

イオリ「…!!」

真「や…やよい! そいつに近付かないでッ!」

やよい「へ?」

イオリ「『リゾラ』ッ!!」グイッ

やよい「はわっ!?」

『リゾラ』の腕が、やよいの首に手を回す。

真「やよいッ!!」

イオリ「アンタ達…よくも…よくもやってくれたわね…」

やよい「あ、あれ…これ、伊織ちゃんのスタンドじゃな…」

イオリ「さぁ、やよい…アンタのかわいい顔に傷をつけたくなかったらこいつらの『くっつけ』る能力を解除するんじゃあないわ」

イオリ「アンタ達も…変な動きを見せたら『リゾラ』の手がこいつの細胞を引き裂くわよ」

貴音「…外道」

289: 2014/06/13(金) 21:25:42 ID:s0UDF0os
イオリ「こんな足を『くっつけ』たくらい…分子の結合すら『緩め』られる『リゾラ』に、通用はしない」

ス…

やよいを連れたまま、イオリが歩き出す。

イオリ「逃げてやる…逃げ延びて、アンタ達を始末してやるわ…にひひ…!!」

貴音の横を抜け、階段の方にゆっくりと向かっていく。

やよい「………」チラッ

真「……!」

貴音「………」

やよいが、二人に目配せをした。

真「」チラッ

貴音「」コクッ

真と貴音が、目を合わせる。

290: 2014/06/13(金) 21:32:50 ID:s0UDF0os
真「逃げ切ったとして…」

イオリ「ん?」クルッ

イオリが足を止め、真の方に振り返る。

真「おまえは伊織にはなれないよ。絶対に」

イオリ「フン。負け犬の遠吠えね」

真「負け犬ってのは誰のことかな?」

イオリ「そりゃ、もちろん…」

真「ああ、おまえか」

バキッ!!

イオリ「!?」

貴音「『フラワーガール』」メリメリ

貴音のスタンドが、貴音のすぐ傍でドアの板を持ち浮かんでいる。

291: 2014/06/13(金) 21:37:14 ID:s0UDF0os
イオリ(足が『緩ん』だりして動かなくなっても、スタンドは感覚で動かすもの…だから関係はない)

イオリ(けれど足を『くっつけ』ていればスタンドの足も『くっつい』ているも同然…その場から動かせなくなるはず…)

イオリ「『ゲンキトリッパー』を解除したなッ、やよい!」

やよい「えへへ…わかってもらえてよかった」

真「」パキ パキ パキ

真の体が再び、『ストレイング・マインド』の黒い鎧に覆われていく。

貴音「………」

イオリ「ハッ…で、そのドアをどうすんの? 『硬化散弾銃』で撃ち出すつもり?」

イオリ「やよいが人質になってんのよッ! まさかやよいごとやるつもりじゃあないでしょうねェ~ッ!?」

真「」パキッ

両手の拳を握りしめる。

貴音「真」ポイッ

タッ

真「オラァッ!!」ドォッ

貴音が投げたドアに向かって、思い切り殴り掛かった。

292: 2014/06/13(金) 21:46:02 ID:s0UDF0os
バッギャァァァーァン

コナゴナになったドアの破片が、イオリに向かって飛んでいく。

イオリ「しょ…」

やよい「………」

イオリ「正気か、アンタ達はッ!!」

ゴォォォォ

イオリ「だったら…お望み通り、やよいを盾にしてやるわッ!!」バッ

やよい「わっ」

イオリはやよいの体を掴んで前に出し、その陰に隠れた。

ドス ドッ ドグァッ

『硬化散弾銃』が、やよいの身体に突き刺さる。

293: 2014/06/13(金) 21:48:44 ID:s0UDF0os
真「やよい!」

イオリ「なーにが『やよい!』よッ! こうなることも予想できないの!?」

イオリ「これはアンタ達がやったのよ! アンタ達が悪いのッ!!」

イオリ「アンタ達が…」

モゾモゾ

イオリの腕あたりで、何かが蠢いている。

ウー ウッウー ウー ウー

やよいを掴んでいる腕から、欠片を持った、粒のような『ゲンキトリッパー』が這い上がってきた。

イオリ「…………… な…」

ピタッ ピタ ビタァァ

イオリ「! ………」

『ゲンキトリッパー』は次々とイオリの身体に這い回り、ドアの破片を『くっつけ』ていく。

294: 2014/06/13(金) 21:54:42 ID:s0UDF0os
真「オラァ!!」パリン

イオリ「う!」

ヒュン

そうしているうちに、次の『硬化散弾銃』が撃ち出される。

イオリ「リ…『リゾラ』!」バッ

ポロ ポロ

破片は『リゾラ』の手に触れ、さらに小さな欠片になって崩れ落ちるが…

ウッウー ウーウー

・ ・ ・ ・

ピタ ピタ

それも『ゲンキトリッパー』が拾い上げ、イオリの体にどんどん『くっつけ』られる。

真「物体を触れただけでバラバラに崩してしまうおまえの『リゾラ』に『硬化散弾銃』は通用しない…」

真「でも、その破片を『くっつけ』てしまえばどうだ?」

貴音「やよいを人質にしている以上…『くっつけ』る能力からは逃れられない」

イオリ「あ…あああ…あ…!!」

295: 2014/06/13(金) 21:59:45 ID:s0UDF0os
ビタ ビタァ

イオリ(まずい、このままじゃ…落とさなくては…体に『くっつい』た破片を『緩め』て落とさなくては!)

貴音「真!」ヒョイッ

貴音がドアを剥ぎ取って持ってきて…

真「オラァッ!!」バギャィィン

真が殴って撃ち出し…

やよい「『ゲンキトリッパー』」ウッウー

やよいが『くっつけ』る。

ピタッ ピタ

イオリ「うおっ」

イオリ(こ…こいつらのペースの方が圧倒的に早い…全然間に合わない…)

ガチッ ガチ

イオリ(そして…もう腕が曲がらない! ドアの破片がくっついて…)

296: 2014/06/13(金) 22:03:09 ID:s0UDF0os
イオリ「こ、この…この伊織ちゃんが…こんなヤツらにッ!!」

真「おまえの存在そのものが、伊織に対する侮辱だ。ゲス野郎め」

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」

バギ バギュ バガスッ バギャァァ バギュン

ビタ ビタァ ビタッ ビタァン

イオリ「きゃあああああああああああああ」

ドドドドドド

体がどんどん破片に覆われていく。

イオリ「ま…負ける…私が…『負け』…あああっ」

ドドドドド

イオリ「あああああああああああああああッ!!」

ガァァーン!!!!

そして、イオリはドアに包まれ、団子のようになった。

297: 2014/06/13(金) 22:07:53 ID:s0UDF0os
貴音「どうやら、これで…もう動けなくなったようですね」

やよい「ふぅ…」ヘタッ

やよいがその場に座り込む。

真「大丈夫だった、やよい?」

やよい「はい~っ、ちょっと怖くてドキドキしちゃったかも」

真「ごめんごめん」

貴音「さて…まだ、これで終わったわけではありません」

真「そうだね」クルッ

イオリ「………」

瓦礫の山に顔を向ける。

真「話してもらおうか、色々」

298: 2014/06/13(金) 22:09:56 ID:s0UDF0os
真「今から質問をする。ボク達の聞いたことに答えろ」

真「答えるたびに、その瓦礫をどかしてあげるよ」

イオリ「…………」

真「まず…本物の伊織はどこだ?」

イオリ「…………」

貴音「どうやって伊織に化けたのです? 他に、仲間が…顔を変える『スタンド使い』でもいるでしょうか」

イオリ「…………」

やよい「あの、重くないですか…?」

イオリ「………………」

真「返事をするつもりはない、か…」

やよい「このまんまじゃ、苦しくて答えられないのかも…」

真「そうだなぁ…うーん…」

イオリ「」

貴音「…? 待ってください、何かが妙です」

299: 2014/06/13(金) 22:15:35 ID:s0UDF0os
貴音「やよい、『くっつけ』る能力を解除してくれませんか」

真「え、でも貴音…」

貴音「…中から、息をする音が聞こえないのです」

真「え!」

やよい「そ、それって…まさか…」

貴音「わかりません。ですが………嫌な予感がします」

真(まぁ…何かあっても、貴音の『フラワーガール』がいれば大丈夫か…)

真「わかった。それじゃ、やよい」

やよい「は、はい」

ガラララララ…

『ゲンキトリッパー』の能力が解除され、瓦礫が重力に引っ張られていく。

真「ボクがどかすよ。貴音、見張りをお願い」パキッ

貴音「ええ」

ガラガラ…

真が『ストレイング・マインド』に覆われた腕で、山をかきわけていく。

300: 2014/06/13(金) 22:22:19 ID:s0UDF0os
真「……………ん?」

ガサッ ガサッ

真のかき分ける手が早くなっていく。

ガシャ! ガシャァッ!

乱暴なまでに激しく割いていく。

真「なんだって…」

やよい「真さん、なにかあったんですか?」

真「…ない」

真「いないんだ、奴が!」

貴音「いない…?」

やよい「たいへん、探さなきゃ!」

真「逃げたのか、この状況から!? どうやって!?」

ガシャ ガシャ

真「くそっ、出てくるのは破片と砂ばかりだ!」

貴音「………」

301: 2014/06/13(金) 22:29:47 ID:s0UDF0os
貴音「逃げた………」

貴音が瓦礫の中に手を入れ、掬い上げた。

貴音「いえ、彼女がこの瓦礫の山からどうにかして逃れたとは考えにくい。逃げたところを誰も見ていないのですから」

貴音「何かのスタンド能力だとしても…体中に『くっつけ』られたこれから人間だけを抜き出すのは不可能かと思われます」

貴音「…と、なると…」サラ…

貴音の指から、砂がこぼれ落ちる。

貴音「何故…扉の欠片の中に、このように大量の砂があるのでしょう」

真「……… まさか…」パサッ

・ ・ ・ ・

真が何の気もなしに払った砂の下から、服が顔を出す。イオリが身につけていたのと同じものだ。

貴音「これが…この砂が、恐らく…先程まで水瀬伊織を名乗っていた者です…」

真「そんな馬鹿な!? 人間が砂になったって言うのか!?」

やよい「うそ…」

真「くそっ! なんだっていうんだ一体!? 何が起こってるんだッ!!」

To Be Continued...

302: 2014/06/13(金) 22:37:22 ID:s0UDF0os
スタンド名:「リゾラ」
本体:ミナセ イオリ
タイプ:遠隔操作型・標準
破壊力:E スピード:C 射程距離:B(50m程度) 能力射程:B(50m程度)
持続力:B 精密動作性:D 成長性:C
能力:謎のまま消滅した伊織の偽物のスタンド。
触れたものを「弛緩」させる。そこには縮んだもの、くっつけられたもの、固定されたものがなければ始まらない。
それらを「弛緩」させるということは、つまりは緩みっぱなしにしたり、無理矢理引き離したり、不安定な状態にさせたりするということだ。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

303: 2014/06/14(土) 01:04:47 ID:JDcp1g6k
おつー



To Be Continued...





引用元: 千早「『弓と矢』、再び」