390: 2014/07/12(土) 01:02:14 ID:QuenNeIA





前話はこちら





ゴゴゴゴ

千早「高木社長のファイルから…」

千早「文字が浮かび上がってきたわ…これは一体…」

貴音「まさに、書き殴ってあるという形容が似合う字ですね。相当切羽詰まった状況で書かれたもののようです」

やよい「これ…伊織ちゃんの字に似てるかも」

雪歩「そうかな…? …そうかも。崩れてるけど、これ、伊織ちゃんの文字だよ!」

響「ってことは、これは…」

真「伊織の残したメッセージ…ってことか」

ドドドドド

千早「内容は…」

『XXX-XXXX-XXXX』

千早「数字の羅列ね。どういう意味を持っているのか」

あずさ「えっと、これは…電話番号じゃないかしら?」

真「これは、他の文字と比べて結構正確に書かれてるね。携帯電話の番号かな」

響「でも、自分の携帯にみんなの番号入ってるけど…どれとも違うぞ?」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

391: 2014/07/12(土) 01:36:46 ID:QuenNeIA
貴音「知らない電話番号、ですか…」

雪歩「誰の番号なんでしょう」

やよい「犯人だったりして」

シーン…

千早「…犯人って? 高槻さん」

やよい「偽物の伊織ちゃんを連れてきて、本物の伊織ちゃんをどこかにやっちゃった人です!」

千早「そんな人がいるの…? 単独犯ではないの」

真「いや、でも…結構、ありうるんじゃあないかな…それ」

千早「真?」

真「あの偽物には謎が多すぎる、伊織と同じ姿をしていたけど、人間でもない…」

真「何か、大きなものが動いてる気がしてならないんだ。裏で誰かが手を引いていても不思議じゃあない」

貴音「そして、その誰かは私達全員を、伊織と同じように偽物と入れ替わらせるつもりなのかもしれません」

千早「そう、かしら。私は直接見たわけじゃあないからどうとも言えないけれど…」

真「そういう存在がいて、奴らに指示を与えているのだとしたら…連絡を取る手段が必要なはずだ。つまり…」

雪歩「携帯電話…」

392: 2014/07/12(土) 01:46:10 ID:QuenNeIA
貴音「伊織が、何らかの手段でこの番号を知ることができたというのなら…」

響「これは、伊織が残した大きな手がかりだ!」

真「ちょっと待って、伊織の携帯にも…」スッ

真「やっぱり! 同じ番号が残ってる! 名前は入ってないけど」

貴音「この電話の主が、全ての元凶である可能性は高いですね」

やよい「それなら、さっそくかけてみましょう!」

真「そうだね、こうしてる間にも伊織はどうなってるかわからないし」

あずさ「うーん…ちょっと、待って」

やよい「あずささん?」

あずさ「これ、かけちゃってもいいのかしら」

響「これが繋がれば、犯人がわかるんだよ!」

千早「繋がれば、わかる…果たして、そうと言えるのかしら」

真「…どういうこと?」

393: 2014/07/12(土) 01:59:15 ID:QuenNeIA
千早「電話をかけて、元凶が出たとして…その相手が『誰』かわかるものかしら?」

千早「知っている人ならば、声でわかるかもしれないわ。でも、そうでなければ本人を特定するのは不可能よ」

雪歩「もし、その人に気づかれて、別の電話とか使うようになっちゃったら…この番号、意味なくなっちゃうよ」

やよい「あぅ…」

響「そっか…そうかも…」

真「で、でも…これが犯人の正体に繋がるかもしれないのに、使えないなんて…」

雪歩「電話をかけなくても、番号から調べることはできる…と思う」

真「! 確かに…そういう手もあるのか。それなら、相手には気づかれにくいかも」

貴音「…申し訳ございません。私には何が何やら…」

雪歩「あっ、えっと、つまり…」

あずさ「こういうのは、律子さんが詳しそうね。聞いてみましょう~」

響「他に、こういうのを調べられそうな人っていないの?」

千早「いたとしても…スタンドに関わることよ。一般人はあまり巻き込まない方がいいわ」

394: 2014/07/12(土) 02:12:22 ID:QuenNeIA
すみません、今の状態でこれ以上書き進めるのは無理だと判断しました
続きは明日書きます

397: 2014/07/13(日) 01:28:15 ID:ve2s5QgI
真「残りのメッセージは…」

『”?カニ&ヲ>ケロ』

『タカギしャ$#うハイ#?イる』

真「上の方は読めないなぁ…蟹? ケロ? どういうことなんだろ」

千早「蟹とカエル…かしら? この二つから連想するものと言えば…」チラッ

やよい「はい?」

響「やよいとは絶対関係ないと思うぞ…」

真「最初の2文字がどうしても読めないな…11? アルファベットのNにも見えるし、ただ擦っただけな気もするし…」

やよい「うぅ~、せっかく伊織ちゃんが書いてくれたのに、読めなきゃイミないかも…」

あずさ「下の方は、『高木社長はい…』うーんと、あとは…よく、わからないわね~」

貴音「高木社長…やはり、今回の件に関係あるのでしょうか」

雪歩「この残されていた電話番号は、高木社長が氏ぬ前に使っていた番号とは違うみたいですけど…」

千早「それで正体が分かるようなら、相当間が抜けてるわね」

雪歩「だ、だよね…連絡に同じ携帯を使ってたら、番号だけですぐにバレちゃう」

398: 2014/07/13(日) 01:46:45 ID:ve2s5QgI
真「わかるのは、切羽詰まった状況の伊織が高木社長についてわざわざ書いたってこと」

千早「恐らく、『高木社長は生きている』ということね」

雪歩「そう言われてみれば、この文字もそう読めるような…」

やよい「高木社長が、犯人なんですか?」

響「自分、やっぱり高木社長が怪しいと思うぞ! 氏んだと思わせて、裏で変なことしてるんだよ!」

あずさ「それを決めるには、わかってることがちょっと足りないかもしれないわね」

貴音「とりあえず…今断定できることは、二つ…ですかね」

雪歩「二つって? 四条さん」

貴音「まず、この文字を残したのは間違いなく伊織ということ」

貴音「あの偽物からは血は出ません、伊織もそれをわかっていたのでしょう。この血は伊織のつけた目印です」

真「血は固まれば『固体』になる、そうなれば『スモーキー・スリル』で運べるからね」

千早「………」

貴音「筆跡も、荒れてはいますが伊織と同じものです。他の人物がこのように資料の裏というわかりにくい場所に言葉を用意する理由が何も考えられません」

399: 2014/07/13(日) 02:08:14 ID:ve2s5QgI
あずさ「二つって言ったけど。もう一つは何かしら?」

貴音「少なくとも、敵は身近にもう一人いるということ…です」

やよい「えっ!?」

真「もう一人、だって? 伊織の偽物だけじゃないのか!? 伊織は、あいつにやられたんじゃ…」

千早「…電話番号ね」

貴音「ええ。偽物の持っていた携帯電話は伊織本人のものです。入れ替わった時に取り上げられたとして…伊織はどこでこの番号を知ったのでしょう」

あずさ「あ、そっか。伊織ちゃんがどこかに行く前には、携帯電話にその番号は入ってないのね」

貴音「つまり、この電話番号を使った人物が、他にいるということです。そして、その者は恐らくあの伊織の偽物と同じように何食わぬ顔で事務所で過ごしている」

雪歩「この番号、伊織ちゃんが個人的に知り合った人の番号って可能性はないの? それなら伊織ちゃんが知ってるのも、携帯電話に履歴があるのも変じゃないよ」

真「伊織の携帯に残っていた同じ番号は、全部1週間以内にかけられている。それより前にはかけた様子はないし、携帯の電話帳にも載ってない」

響「素直に考えれば、入れ替わった後に使い始めた番号ってことだね。やっぱり、この連絡先の奴が犯人なのかな」

真「やっぱり、この番号…調べてみたいなぁ。すぐ目の前に手がかりがあるっていうのに…」

千早「…水瀬さんの命がかかっているかもしれない。不用意な行動は慎むべきよ」

真「………そう…だね。うん、そうだよね…」

400: 2014/07/13(日) 02:18:58 ID:ve2s5QgI
雪歩「や、やっぱり…事務所にいる誰かが偽物ってことですかぁ…?」

貴音「あるいは、全員…この中にもいるかもしれませんね」

響「じ、自分は本物だよ!」

真「怪しいなぁ。本当かなぁ?」

響「嘘じゃないってばー!」

あずさ「何か、本物と偽物を見分ける方法とか、ないのかしら~?」

やよい「えっと、スタンドを出してみればいいと思います! いつも通りのスタンドなら、本物だってわかります!」

あずさ「確か、偽物の人はスタンドが違うのよね~? なら、『ミスメイカー』」ズッ

響「『トライアル・ダンス』! よし、これでいいよね!」バン

千早「『ブルー・バード・インフェルノ』」ヒュゥゥゥ

雪歩「………」

やよい「あれ? 雪歩さん、どうしたんですか?」

雪歩「あ、あの…私、スタンドの出し方がわからないんだけど、どうすれば…」

響「雪歩のスタンドって、確か…」

真「自我を持って一人歩きするスタンド、『ファースト・ステージ』…雪歩は自分でコントロールできないのか」

401: 2014/07/13(日) 02:26:56 ID:ve2s5QgI
響「ゆ、雪歩…もしかして…偽物なのか!?」

雪歩「ち、違うよ! うぅ、どうすればいいの…?」

真「見分ける方法はもうひとつあるよ」ヒョイ

真が、伊織のメッセージを写した紙を右手で拾い上げる。

雪歩「へ?」

真「『ストレイング・マインド』」パキパキ

紙を持った手を、手首まで黒い鎧が覆い…

ヒュッ

ピッ

左腕に、紙を振り下ろした。

プツッ

先端が腕を掠め、切り口から血が滲んだ。

雪歩「ひ…! ま、真ちゃん! 何やってるの…!?」

真「血だよ。あいつらは血が出ない、こんな風に切ってみて血が出なかったらそいつは偽物だ」

402: 2014/07/13(日) 02:33:10 ID:ve2s5QgI
雪歩「て、手当てしなきゃ…アイドルが傷なんて作っちゃ駄目だよ!」

真「目立たないところを切ればいいし…やよい」

やよい「はいっ! 『ゲンキトリッパー』」

ワラワラ…

やよいの細かいスタンドが真の腕の傷口の中に入り込んでいき、切り口を塞いでしまう。

真「ほら、『ゲンキトリッパー』で綺麗に塞げば傷は残らないよ」

雪歩「」クラ…

雪歩の足がふらつく。

雪歩「な、なんか…真ちゃんが大事なものを失っちゃってるような…」

あずさ「気持ちはわかるわ、雪歩ちゃん。でも、『スタンド使い』ならこれくらいは普通なのよ」

雪歩「そ…そうなんですか…?」

貴音「それでは、雪歩が本物かどうか確かめましょうか」

雪歩「え」

真「ほら、動かないで雪歩。痛くしないようにするから」

雪歩「ひ…ひぃっ!」

403: 2014/07/13(日) 02:47:22 ID:ve2s5QgI
響「雪歩も、本物みたいだね! よかったよかった」

雪歩「うぅぅぅ…」ブルブル

貴音「まず、すべきことは獅子身中の虫を見つけ出すこと…ですね」

真「そして、電話番号を調べる…伊織が残した三つのメッセージからだと、できることはこれくらいかな」

千早「…いえ、メッセージは三つではないわ」

やよい「へ? いち、に、さん…三つですよ?」

あずさ「千早ちゃん…もしかして、疲れているのかしら? ソファに横になる?」

千早「違います!」

響「メッセージが三つじゃないって、どういうこと?」

千早「この『血』も、水瀬さんが残したメッセージだと考えられるわ」

貴音「『血』? それは、単なる目印では?」

千早「問題は、この血が『誰のものか』…ということよ」

真「誰のって、そりゃ伊織のでしょ。わざわざ乾いてから張り付けられてるんだから、うっかりついたとは考えられないよ」

千早「ええ。そう、これは水瀬さんの『血』よ」

千早「だから…『血』に辿らせればいい。そうすれば、水瀬さんの居場所がわかるわ」

404: 2014/07/13(日) 02:55:08 ID:ve2s5QgI
雪歩「ち、血に辿らせる…って?」

やよい「あ! あの人のスタンドですね!」

響「? どういうこと?」

千早「そういうスタンドがあるのよ。確か、『リビング・デッド』と言ったかしら」

あずさ「ああ、この前話してくれた…876の鈴木ちゃんだったかしら~? その子のスタンドね」

千早「正確に言うと876プロ所属というわけじゃあないそうですけどね」

やよい「『血』をスタンドにして、持ち主のところに勝手に向かっていく…あれなら、伊織ちゃんのいるところ、わかるかも!」

千早「電話番号から調べるのは時間がかかりますし…事務所に潜む偽物を見つけても、根本的な解決にはなりません。これが一番手っ取り早い方法かと」

貴音「少なくとも…伊織を助けることはできるかもしれませんね」

やよい「それじゃ、すぐ鈴木さんに連絡しないと!」

真「…誰か、知ってるの? その人の連絡先」

千早「水谷さんに頼めば呼んでくれると思うわ」

405: 2014/07/13(日) 03:07:13 ID:ve2s5QgI
やよい「あれ、でも…確かあれって乾いたり凍ったりしてたら動かなくなるんじゃ?」

千早「そんなもの、水で戻せばいいわ」

やよい「そ、それで本当に…大丈夫なんでしょうか…?」

千早「わからない…けれど、試してみる価値はあると思うわ」

千早「水瀬さんが心配だし…早い方がいいわね。それこそ、明日にでも」

響「そうだね! 千早、頼むぞ!」

千早「私? 無理よ、明日はドラマの収録が入っているもの。他の人はできないかしら?」

雪歩「えっと、私達、明日から県外でイベントがあって…泊まりで…」

やよい「あ、私も一緒です…」

あずさ「ごめんなさい~、私も明日は大事なオーディションがあって…」

響「自分達は、明日はレッスンだけだけど…」

貴音「しかし、本番は三日後…」

真「本番前の明後日に休みを入れる分、明日はみっちりやっておきたい」

「……………」

………………………………

406: 2014/07/13(日) 03:15:37 ID:ve2s5QgI
………

……



律子「…で…」

律子「私が駆り出されるのね…はぁ…」

ブロロロロ…

翌日。律子が、車に乗って876プロに向かっていた。

絵理『サイネリアに、用事?』

絵理『…わかりました。2時くらいに、事務所に来てください』

律子「水谷さんも鈴木さんも、知らない仲じゃないし約束は簡単に取り付けられたけど」

律子「まったく、あいつら私を便利屋かなんかと勘違いしてないかしら? 電話番号のことも、後で調べないとだし…」

美希「すぅ、すぅ…」

車の後部座席では、シートベルトに巻かれた美希が横になっていた。

律子「美希! そろそろ着くわよ、起きなさい!」

美希「むにゃ…着いてから起こしてー」

407: 2014/07/13(日) 03:37:31 ID:ve2s5QgI
ブルルル…

876プロ事務所の前に、車を停める。

バンッ

後部座席のドアを開いた。

律子「ほら、着いたわ! 起きる起きる!」

美希「律子一人で行ってきてよ。ミキはここで待ってるから…あふぅ」

律子「ワガママ言ってないで降りなさい! それと律子さん!」グイッ

美希を引っ張て無理矢理引きずり下ろす。

美希「用事って、ちょっとしたことでしょ? ミキが来る必要ないって思うな」

律子「…念のためよ」

美希「なんでミキなの? 千早さんとか、真クンとか、テキニン? は他にいるって思うな」

律子「事務所のボードに書いてあったでしょう、他はみんな忙しいの」

美希「フーン。暇なのは律子だけだったんだね」

律子「私だってそんなに暇じゃないわよ、暇なのはあんただけ。用事終わらせて帰ったら、さっさと仕事片付けないと…」

408: 2014/07/13(日) 03:45:00 ID:ve2s5QgI
ガチャ

ビルの二階にある事務所の扉を開き、中に入る。

律子「おはようございます」

愛「あれ? 律子さん!! おはようございまーす!!」

美希「あ、愛だ。おはようなの」

愛「あっ、美希センパイも!! お久しぶりですっ!! どうしたんですか!?」

律子「今日、水谷さん達と約束をしているんだけど…」

愛「絵理さんなら、さっき外にお菓子を買いに行っちゃいましたよ」

律子「…入れ違いってこと?」

美希「間が悪いの」

律子「………」

愛「今は、私一人でお留守番ですっ!!」

409: 2014/07/13(日) 03:53:07 ID:ve2s5QgI
律子「一人で、ってことは、他には誰もいないのね?」

愛「そうですね、ちょっと寂しかったけど、お二人が来てくれてよかったです!!」

美希「座っていい?」ドサッ

律子「座ってから言わない」

愛「はいっ、絵理さんが戻ってくるまで待っててください!!」

律子「…それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」コトッ

律子がテーブルの上に菓子パンほどの大きさをした、透明の円柱状の入れ物を置く。中に、赤い液体が少量入っているのが見える。

美希「それ、なに?」

律子「プラスチックのケースよ。この中に伊織の血が入っている」

律子「この『血』をスタンド化させれば、『コンパス』のように伊織の居場所を指し示すようになるわ」

律子「薄いガラスくらいなら割ってしまうそうだから、強度は結構強めのを選んだのよ」

美希「このテーブルの上に置いてあるケーキ、食べていい?」モグモグ

律子「だから、食べてから… ………」

愛「はいっ、どうぞ!!」

410: 2014/07/13(日) 03:58:22 ID:ve2s5QgI
愛「………」

ス!

愛が、懐から包丁を取り出す。

ゴゴゴゴゴ

美希「美味しい! いいとこのケーキに違いないの!」

律子「2個はやめておきなさいよ」

愛「………」

ゴゴゴ

美希も律子も、後ろを向いている。

美希「律子のケチー」

律子「ケチとかじゃなくて、甘いものばっかり食べてると…」

愛「………」グ…

手に持っている包丁を、ゆっくりと上げる。

411: 2014/07/13(日) 04:03:21 ID:ve2s5QgI
愛「とりゃー! くらえーっ!!」グオン

ドシュゥウゥゥゥゥウ

美希に向かって、包丁を投げつけた。

美希「『リレイションズ』」パシッ

後ろを向いたまま、背後にスタンドを出して空中で掴み取る。

ヒュッ

愛「わっ!?」バッ

包丁を投げ返すが、間一髪で避けられた。

ドスゥ

壁に突き刺さる。

愛「な…なんで…」

美希「お客さんに対して、あんまりなサービスじゃないカナ」クル

ソファから立ち上がり、振り向く。

愛「私が攻撃を仕掛けることがわかったんですかっ!!?」

美希「本気で言ってるの、それ?」

412: 2014/07/13(日) 04:12:13 ID:ve2s5QgI
律子「嘘が上手い下手以前の問題よ、時間を決めて待ち合わせしているのに、直前で買い出し?」

律子「ケーキが置いてあるのに、お菓子を買いにいった? どうかしてるわ」

愛「わわ、全部バレてる…」

律子「それでもって、今のかけ声…馬鹿にしてるの?」

愛「? 何か言いましたっけ、あたし?」

美希「…ほっぺた」

愛「え?」

美希「今ので、ちょっと切れてる」

愛「あ…ほんとだ」スッ

ほっぺたに触る。うっすらと切り傷がついている。

美希「血が出ないってことは…偽物なの」

アイ「…あぁ~」

ゴゴゴゴゴ

413: 2014/07/13(日) 04:24:07 ID:ve2s5QgI
律子「876プロにも『弓と矢』があったと聞いて、こっちもそうなのかと思ったけど…案の定ね。美希を連れてきて正解だったわ」

美希「765プロとはそこまでカンケーないし、ニセモノさん達が何がしたいのかはよくわかんないケド…」

美希「ミキ達を襲ってきたってことは、敵だってことだよね?」

ググ…

律子(? 今…壁に刺さった包丁が、動いた? 刺さり方が不安定なのかしら)

グルン

・ ・ ・ ・

ギュオン!!

包丁はひとりでに壁から抜け、刃先を美希の方に向けると、真っ直ぐに飛んでいく。

美希「へ?」

律子「ロ…『ロット・ア・ロット』!」ヒュン

ガゴッ!!

箱状の人工衛星のようなスタンドが美希の前に現れ、包丁を受け止める。

アイ「もう知られちゃってるんですね、私達のこと…」

アイ「だったら、もうやっつけちゃいますよっ!! 私のスタンド、『フラワー・サークル』でっ!!」

418: 2014/07/19(土) 01:09:49 ID:4c9ZpmRs
キュル キュル

律子「包丁がひとりでに飛んできた…」

律子(スタンド能力…? でも、スタンドのヴィジョンは見えなかったわ…)

美希「危なかったぁ…律子、ナイス!」

アイ「まだ終わってないですよ!!」

ピキッ!!

律子「ん!」

律子(『ロット・ア・ロット』にヒビが入っている…飛んできた勢いは、受け止めた時に止まったはず…)

ミシミシ

律子(この包丁自体が意思を持って動いている!?)

律子「美希! 伏せなさい、突き破ってくるッ!」

バガッ!

律子「!」

受け止められた包丁が、箱を貫通し美希へと襲いかかる。

419: 2014/07/19(土) 01:22:57 ID:4c9ZpmRs
美希「わざわざ伏せるなんてしなくていい」

シュパ!

ガシッ

美希のスタンドが、素早い動きで持ち手の部分を掴んで押さえつける。

ドドドド

美希「目の前から来ても、来るとわかってれば受け止めるのなんてカンタンなの」

アイ「速い…」

グ…ググ

包丁が、手の中で震えている。

律子「み、美希…」

美希「けっこー強いパワーで動いてるの。ミキの『リレイションズ』の方が強いみたいだケド」グ

グニャァ

包丁の刃を先端から渦を巻くように丸めて…

ブチン

根元を捻り切ってしまう。

420: 2014/07/19(土) 01:38:33 ID:4c9ZpmRs
アイ「ああーっ! なんてことしちゃうんですか!」

美希「この包丁を飛ばすのがキミのスタンド能力?」カラン

『リレイションズ』が、アスパラに巻かれたベーコンのように丸まった包丁を地面に放りなげる。

アイ「半分正解で、半分違いますよ美希センパイ」

カタカタカタ…

美希「!」

律子「テーブルの上の食器が震えている…」

アイ「行けっ!!」

美希「『リレイションズ』!」

ボギャァァアア

テーブルを蹴り上げた。

ガシャン ガシャン

その上から食器が落ち、割れる。

律子「え!?」

しかし、テーブルは宙に浮いたまま、そこに留まっていた。

421: 2014/07/19(土) 01:51:05 ID:4c9ZpmRs
アイ「それっ、喰らえーっ!!」

グォォォォ

律子「きゃぁぁ!!」

テーブルが美希と律子に飛びかかってくる。

美希「なのっ!」ヒュン

ボゴン

『リレイションズ』で殴るが、勢いは止まらない。

アイ「壊すにはちょっとパワー不足みたいですね!!」

美希「ちょっとだけね」

<LOCK!

テーブルの、殴った部分に円形の印が浮かぶ。

美希「もう一回!」ヒュッ

バギャァァ

ガンッ!

その印を正確に攻撃すると、綺麗な穴が空き、テーブルは地面に落ちた。

422: 2014/07/19(土) 02:02:38 ID:4c9ZpmRs
アイ「わわっと! そんなっ、あっさり壊されちゃうなんて…」

美希「行けっ!」

ギュン

『リレイションズ』が、アイの方に向かっていく。

アイ「なんちゃって…」

律子(? 動かない?)

ゴォォォォ

アイ「ふふっ、全部わかってますよ! 美希センパイの『リレイションズ』は殴ったものに『ロック』をつける能力」

アイ「『ロック』への攻撃は、同じ物体の『ロック』された部分全体に及ぶ…ダメージが倍、倍に増幅する。だからテーブルくらい簡単に壊せるんですね」

アイ「さらに、そこを目印に自分の攻撃を引っ張らせることができる。スピードも上がるし、自分の体を引っ張って射程距離を縮めることもできます」

423: 2014/07/19(土) 02:06:05 ID:4c9ZpmRs
アイ「でも、攻撃さえ当たらなければ『ロック』されないです! 『リレイションズ』の射程距離はたった1m…」

アイ「あたしとの距離は、2m近くは離れている! 『ロック』されてないあたしに、ミキ先輩の攻撃はここまで届かな…」

ォォォオォォ

ボゴォ

リレイションズの攻撃がアイの顔面に入った。

アイ「ぎゃぁ!?」ギュルン

バッキャァァァ

美希「全く動かないから何かあるのかと思ったら、何にもなかったの…」

アイ「な、なんで…? もしかして、射程距離が伸びてるの…?」

美希「『リレイションズ』を出せるキョリはそんな変わってないって思うケド」

美希「さっきの包丁、かすったよね? 顔に」

アイ「あっ!?」バッ

<LOCK!

美希「そして、これで二つ目」

424: 2014/07/19(土) 02:14:32 ID:4c9ZpmRs
美希「『リレイションズ』が投げたものも、『ロック』に引っ張られる」スッ

ピンッ

ポケットの中からおはじきを出し、『リレイションズ』の指が弾き飛ばす。

アイ「いたっ!!」ピシッ

<LOCK!

美希「そして『ロック』をつけたものをぶつけると、ぶつけた所にまた『ロック』できるの」

アイ「くぅ…」

美希「デコちゃんがいなくなっちゃってさ…」

美希「美希ね、今けっこー怒ってるから」

アイ「………」

美希「同じニセモノ…デコちゃんと何かカンケーあるなら、手加減ナシなの」ザッ

律子「美希、気をつけなさい。まだ相手のスタンドの正体が掴めないわ」

美希「それなら、律子もなんかやってほしいって思うな」

律子「しょ、しょうがないでしょう。私のスタンドはこの距離じゃほとんど役に立たないし…」

425: 2014/07/19(土) 02:26:53 ID:4c9ZpmRs
美希「それに…ここでブチのめせばスタンドなんてどうだっていい」

ゴゴゴ

アイ「………」ジリッ

美希の迫力に、アイの足が少しずつ後ずさっていき…

ドンッ

アイ「あっ!?」

背中が壁にぶつかった。

美希「『リレイションズ』!」

その一瞬の隙を見て、一気にスタンドで距離を詰める。

アイ「うわ…」

ヒュッ

ドゴバァ!!

『リレイションズ』の拳がアイの顔面の位置に突き刺さった。

426: 2014/07/19(土) 02:33:24 ID:4c9ZpmRs
律子「や…」

律子「やったの? あっけなさすぎる気もするけど…」

美希「………」

律子「…美希?」

ゴゴゴゴ

壁「ぷはァ~…ぁぁ~」

ゴゴゴゴゴ

律子「な…!?」

アイの顔面が、壁にめり込んでいる。

と言うより、アイの体が底なし沼に沈み込むように壁の中に入り込んでいた。

美希「なに、これは…」

顔面は完全に壁の中に沈んでおり、『リレイションズ』の拳は壁を殴っていた。

スル スルスルスル

やがて、アイの全身が壁に飲み込まれて消えていった。

427: 2014/07/19(土) 02:49:27 ID:4c9ZpmRs
律子「き…消えた…!」

美希「隣の部屋に行ったみたい」

律子「ヘ?」

美希「『ロック』をつけたら大体の場所はわかるの。他の場所に『ロック』はしてないし」

律子「ちょ、ちょっと待って!」カタカタカタ

ノートパソコンのような端末を出し、キーボードを叩く。

ブオン

端末の画面が、ロッカー室にいるアイの姿を映し出した。

律子「出た…『ロット・ア・ロット』のカメラで見つけたわ。確かに隣の部屋にいるみたいね」

美希「…律子、ついでにスタンドの数増やしといて」

律子「へ…?」

カタ カタカタカタ

美希達の周囲に置いてあるものが、一斉に震えだす。

律子「こ、これはまさか…」

美希「思ってる通りだと思う」

428: 2014/07/19(土) 03:13:21 ID:4c9ZpmRs
ガタ!

流し台の引き出しが勝手に開く。

ピン ピンッ

ポスターの画鋲が壁から抜ける。

バガン

部屋の隅に置いてあった段ボールが開いた。

律子「み、美希…」ビタッ

律子と美希が背中合わせになる。

ギュン! ギュギュン!

食器、文房具、中身入りのペットボトルなど、周囲の物体が二人の方にひとりでに飛びかかってきた。

律子「『ロット・ア・ロット』!」

フォン フォン

ゴガッ! ガゴ

律子は周囲に大量の衛星を出し、飛んでくるものを止める。

429: 2014/07/19(土) 03:20:32 ID:4c9ZpmRs
ミシ ミシ ミシ

律子「ああ…!」

律子(駄目だわ…! 一時的に動きを止めたとしても、すぐに襲いかかってくる! 止まらない!)

ゴォォォォ

律子(それに、引き出しのように箱の大きさを上回るものは『ロット・ア・ロット』には止められない!)

律子「ぐぁ!」

ドス! ドスッ

手足にフォークが突き刺さる。

律子「み…美希ッ!!」

ボトン ボト

・ ・ ・ ・

美希の方に飛んできた物体が次々と、電池の切れたラジコンの飛行機のように地面に落ちていく。

美希「それっ」キュッ

ボトン

『リレイションズ』の手が表面を撫でると、引き出しはあっさりと勢いを失った。

430: 2014/07/19(土) 03:38:33 ID:4c9ZpmRs
律子「…美希?」

美希「あれ、律子。なんか大変そうだね」

美希「ほいっと」ススッ

同じように律子に刺さっていたフォークを撫でる。

ポトッ

抜け落ちた。

律子「………」

美希「こんなものカナ? もう飛んでくるものはないの」

律子「…どういうこと? 糸の切れたマリオネットみたいに止まったわ…」

美希「ああ、これこれ」ヒョイ

地面に落ちた引き出しを拾い上げ、裏面を律子に見せる。

律子「これは…何? ひまわりの花が描いてある?」

美希「ちがうちがう。はなまるなの、『リレイションズ』の指でなぞったからこんななってるケド」

律子「はなまる…」

431: 2014/07/19(土) 03:52:28 ID:4c9ZpmRs
美希「そ、包丁とか飛んできたものには全部これが描いてあったの!」

律子「………」

美希「テーブルにも描かれてたし、なんかカンケーあるのかなって思って撃ち抜いたら止まったの」

律子「………」

美希「消したらこんな風に止まるし、タブンこれで操ってるの」

律子「………」

美希「律子?」

律子「わかったのならちゃんと言いなさい!」

美希「ひゃ!」

律子「…なるほど、『はなまる』を描かれたものをスタンドにして操る能力ね」

美希「最初から、そこら中のものゼンブに描いておいたんだと思う」

律子「今日、この時間に私達が来ることはわかってたでしょうからね」

律子(すると水谷さんも日高さんと同じ…? だとしたら鈴木さんはもう…)

432: 2014/07/19(土) 04:07:52 ID:4c9ZpmRs
律子「さて、能力もわかったことだし…」

美希「あの愛の偽物を倒さないとね」

律子「待ちなさい美希。今日のところは引き上げるわよ」

美希「…へ? なんで?」

律子「相手はこの事務所全体に罠を仕掛けているわ。そんなところにわざわざ飛び込んでいく必要はないでしょ」

律子「それに、私とあんたで行く必要もない。765プロには有利に戦えるスタンド使いがたくさんいるんだから」

美希「その間に逃げられたり、ミキ達を襲ってきたら?」

律子「襲ってくるなんて、できるもんならとっくにやってくるでしょ」

律子「恐らく、人の目がある間は向こうから積極的に襲ってはこないと思う。こっちにはスタンド使いが大勢いるから、それも抑止力になっているんでしょう」

律子「それに、逃げることもないわ。あいつらの目的は本物と入れ替わることよ、伊織の偽物は1週間ずっと765プロにいた」

美希「でも、逃げるのってどうなのカナ? なんかヒキョーな気がするケド」

律子「美希、これは遊びじゃあないの。伊織は行方不明なのよ、危険な橋は渡るべきじゃあないわ」

美希「はーい、わかったの」

433: 2014/07/19(土) 04:16:40 ID:4c9ZpmRs
律子「そうと決まったら、こんなところさっさと出るわよ…」

アイ『そうは…させませんよ!!』

・ ・ ・ ・

アイ『いつまで経ってもこっちの部屋に来ないから、どうしたのかなって思ったら…』

美希「このうるさい声は…どこから?」キョロキョロ

律子「コンサートホールみたいに響いてくる…」

アイ『まさか、逃げるだなんて! そんなこと言い出すとは思いませんでした!!』

律子「わ…私達の会話が筒抜けになっているッ!!」

律子(そういえば…彼女は隣の部屋にいたのに、周囲の物体は私達のいる場所に飛んできた…)

律子(わかるの!? 私達のいる場所が、私達のやっていることが!)

アイ『でも! あたしの「フラワー・サークル」は逃がしません!!』

律子「美希! 走るわよ!」タッ

美希「おっけー!」ダダッ

434: 2014/07/19(土) 04:22:39 ID:4c9ZpmRs
ズボッ

律子「きゃ!?」

グボッ

美希「あれ!?」

ズブズブ…

律子「足が! 沈んでいくッ!」

アイ『この事務所に来た時点で、もう遅いんですよ…』

律子(『はなまる』をつけた物体を自身のスタンドにする能力…)

律子(さっき、彼女はこの事務所の壁を抜けていた…『はなまる』をつけられてスタンドになったのは、事務所に置いてあるものだけじゃあない…)

律子「この事務所が! この建物全体が、スタンドになっているッ!!」

アイ『あなたたちはもう、あたしのお腹の中なんですっ!!』

ズブブブブ…

律子「ああああああ…!!」

美希「………」

435: 2014/07/19(土) 04:33:09 ID:4c9ZpmRs
スタンド名:「リレイションズ」
本体:星井 美希
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:C スピード:A 射程距離:E(2m) 能力射程:C(10m)
持続力:A 精密動作性:A 成長性:D
能力:触れたものを「ロック」し、狙った相手は逃がさない美希のスタンド。
「リレイションズ」の拳や、投げたものは半自動的に「ロック」を追尾する。
「ロック」への攻撃は他の「ロック」へと伝わり、同じ量の衝撃が走る。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ロット・ア・ロット」
本体:秋月 律子
タイプ:遠隔操作型・群体
破壊力:E スピード:E 射程距離:A(数km以上) 能力射程:A(数km以上)
持続力:A 精密動作性:A 成長性:完成
能力:羽のついた小箱のような小型スタンドを操作できる律子のスタンド。
PCのような端末型スタンドで呼び出し、カメラのついた個体から本体の端末に映像を送れる。
動きは非常に遅く、破壊力も皆無だが、射程距離はとても広く、数も多い。また、正確に動く。
箱の中にものを入れることができ、また射出することもできる。
数が多いため破壊しても律子へのダメージはほとんどなく、また下手に破壊すると「麻酔液」が出てくる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「フラワー・サークル」
本体:ヒダカ アイ
タイプ:特殊型・憑依
破壊力:? スピード:C 射程距離:C(15m程度) 能力射程:C(15m程度)
持続力:? 精密動作性:E 成長性:C
能力:愛の偽物のスタンド。「はなまる」を描いた物体を自身のスタンドとして操作できる。
操作する物体の性質により、性能は大きく変化する。巨大なものほどパワーは強く、また多くのスタンドパワーを要する。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

442: 2014/07/26(土) 17:25:17 ID:/3OR5jfs
ゴゴゴゴゴ

律子「あああああ…!」

ズブブブ

律子「沈む…! 床の中に体がどんどん沈んでいくわッ!」

美希「………」

律子「美希、何をボーっとしてるの!? あんただけでも『リレイションズ』で逃げなさい!」

美希「…一応、やってみるケド」ブゥン

ガガッ

<LOCK! LOCK!

『リレイションズ』が床を叩くように殴るが、ビクともしない。

美希「床を壊すには… ………」

美希「ちょっと時間が足りそうにないってカンジ。その前にゼンブ床の中なの」

律子「く…」

444: 2014/07/26(土) 17:47:37 ID:/3OR5jfs
アイ『ふっふっふ、これで終わりですねーっ!!』

律子「私達をこのまま生き埋めにするつもり…!?」

アイ『ああ、安心してください。命まで取るつもりはありませんから!!』

美希「…へぇ?」

アイ『まずは気絶させて、体の自由を奪って、そして引き渡したら作って…入れ替わらせてあげます!!』

美希「なんか、いいコト聞いたかも」

律子「何がよ!? 私達を『再起不能』させるって…」

美希「だって、この人達ミキ達を頃す気はないんでしょ?」

美希「なら、デコちゃんも多分生きてるってことなの」

律子「! そうか…」

律子(考えてみれば、相手には私達を生かしておく必要なんてないわ…何か理由があるの?)

律子(それに…『作る』? 作るって言ったわね…そういう『スタンド使い』がいる?)

律子(だとしたら…そいつが、全ての『元凶』?)

445: 2014/07/26(土) 18:03:16 ID:/3OR5jfs
律子「でも…」

律子「そんなのがわかったところで、何だって言うのよッ! 私達はこのまま沈むッ!」

美希「沈むまでにはまだ時間があるの。律子、『ロット・ア・ロット』で…」

律子「本体を叩けって? 相手の姿はとっくに捉えているわ! 隣の部屋にいる!」

キュルキュル

律子「でも、『ロット・ア・ロット』の攻撃は箱の中身を射出するだけ、数発で相手を気絶させられるような威力なんてないわよ!」

律子「破壊すれば『麻酔液』が出るけど…他の個体に破壊させるまでの時間で逃げられるし、体を麻痺させてもスタンドは止められない!」

律子「いえ、そもそも血が流れていないような相手…肉体が麻痺するかもわからないし、例え包丁を突き刺した所で倒せるとは思えない!」

美希「律子」

律子「無理! もう、止められないわ…!」

美希「律子…誰が本体を叩けとか言ったの?」

律子「へ?」

446: 2014/07/26(土) 18:14:53 ID:/3OR5jfs
美希「忘れたの? 操るには『はなまる』が描いてないといけない。この部屋の床に沈むっていうなら…」

律子「あ…ロ、『ロット・ア・ロット』!」カタカタ

バン!

部屋の中に、カメラのついた衛星が散りばめられる。

キュルキュル

ジーッ

律子「! あったわ、電気スタンドの裏にマークが! この位置からじゃ見えないところにあったのね」

美希「律子!」ポイッ

カラン

美希が足下に落ちているフォークを放り投げ、衛星の箱の中に入れる。

律子「よし、行けッ!」カタカタ

フォン

フォークを入れた衛星が、一瞬で電気スタンドの裏に移動し…

ドシュゥゥゥゥ

そのうらの『はなまる』マークに向かって中身を飛ばす。

447: 2014/07/26(土) 18:24:20 ID:/3OR5jfs
ガッ

フォークの先端が、『はなまる』を削る。

律子「よし、やっ…」

ズブブブ…

・ ・ ・ ・

しかし、沈む速度は落ちない。

キュルキュル

ジーッ

フォークを飛ばした『ロット・ア・ロット』のカメラが、律子の手元の端末に映像を送る。

律子「だ…」

律子「駄目だわ…見えないけど、フォークでちょこっと削ったくらいじゃあ、あのマークは『はなまる』のまま…消せない」

ズブブ

既に胸あたりまでが床の中に入っている。

律子「『ロット・ア・ロット』でもっと飛ばそうにも、もう間に合わ…!」

448: 2014/07/26(土) 18:25:03 ID:/3OR5jfs
訂正

>律子「駄目だわ…見えないけど、フォークでちょこっと削ったくらいじゃあ、あのマークは『はなまる』のまま…消せない」
律子「駄目だわ…ォークでちょこっと削ったくらいじゃあ、あのマークは『はなまる』のまま…消せない」

見えます

449: 2014/07/26(土) 18:40:01 ID:/3OR5jfs
<LOCK!

律子「………」

美希「ううん、これで間に合った。フォークに『ロック』をつけておいたの」ジャラ

美希は、先程周囲から飛んで来た物体をいくつも近くにかき集める。

美希「『リレイションズ』っ!!」シュバッ

ヒュ ヒュ ヒュ ヒュン!

それらを部屋の隅にある電気スタンドから左にずらした方向に投げると…

ククッ…

その手前で、餌を見つけた魚の群れのように一斉に曲がり…

ドドッ ガシャァァァ

電気スタンドの後ろの床に、次々と叩き込まれる。

450: 2014/07/26(土) 18:57:23 ID:/3OR5jfs
ドドドドドド

美希「よし」ズズ

律子「」ズズズ

『はなまる』は消え、二人の身体が元の高さへと押し戻された。

ドドド

美希「これで、脱出完了かな」

律子(やっぱり…)

律子(真面目にやってさえくれれば、美希は誰よりも頼りになるわね…口には出さないけど)

美希「さて、と。律子、愛の偽物はそっちの隣の部屋だったよね?」

律子「え?」

美希「確かロッカー室だっけ? このまま乗り込んでやるの」

律子「ちょ、ちょっと、待ちなさい!」

451: 2014/07/26(土) 19:19:13 ID:/3OR5jfs
律子「さっき言ったでしょう! 危険な橋は渡るべきじゃあない、外に出るわよ!」

美希「大丈夫なの。あの能力じゃ今以上のことはできないって思うから」

律子「よく考えてみなさい。彼女は壁に飲まれて姿を消した」

律子「ってことは、今私達を引きずり込もうとしたみたいに自分を下の階に移動させることだってできるし、逆に上の階に移ることだってできるはずよ」

律子「あんたの『リレイションズ』が壁や床を壊すには時間がかかるでしょう?」

律子「私達が階を移動するには階段を使うしかない。永遠に追いつくことはできないわ」

律子「奥の部屋に行くなんて、鼠が自分で猫の口に飛び込んでいくようなものよ!」

美希「そんなの、今みたいに『はなまる』を消していけばなんの問題もないって思うな」

律子「…それよ」

美希「?」

律子「『はなまる』を消せば止まる…弱点がはっきりしている。だからこそ、何の対策もしてないとは考えられないわ」

美希「あの抜けっぷりで、そんなことまで考えてるの?」

律子「…なんだか私も自信なくなってきた」

452: 2014/07/26(土) 19:52:46 ID:/3OR5jfs
美希「ここから出るなら、倒してからの方が楽だって思うな」

律子「確実に倒せるなら、私だってそうしたいわ。外に出るにも、何か仕掛けているのかもしれないし」

律子「でも、深追いして窮地に陥る可能性がある以上ここは引くべきよ」

美希「あふぅ…メンドーなことはここで終わらせた方がいいの」

美希「それに、あの偽物には聞かなきゃいけないことがいっぱいあるでしょ? デコちゃんの居場所とか、鈴なんとかって人はどうしたのとか」

律子「それは…」

美希「はぁ…もう、いいよ。律子が来なくてもミキ一人で行くの」

律子「なに?」

美希「律子はもう帰ったらいいの。じゃあね、バイバーイ」タッ

律子「ま、待ちなさい!」

律子(こんなところにあんた一人で置いていけるか…って、それが狙いかっ!?)

律子(く…どの道、美希が行くなら私も行くしかないじゃないの!)

453: 2014/07/26(土) 19:58:20 ID:/3OR5jfs
カラ…

美希「…ん?」クル

律子「え?」クルッ

コロコロコロ…

音のした方に振り向くと、赤の油性ペンが転がっている。

キュポ!

ペンのキャップが、ひとりでに外れた。

スゥッ

宙に浮き、ペン先が地面に向く。

美希「………」

律子「ま…まさか」

シュゥッ

律子「『ロット・ア・ロット』!」カタカタ

ドッ

床に落ちようとしていたペンを、衛星が受け止めて阻止する。

454: 2014/07/26(土) 20:09:20 ID:/3OR5jfs
律子「ペンを操って…! これで『はなまる』を書いて私達が消したものを再びスタンド化させるつもりだったのね…!」

律子「危なかった、『ロット・ア・ロット』で止めなければまたここの床に沈まされるところだったわ!」

美希「………! 律子!」

コロ

律子「………」

コロコロ

律子「………………」

カラカラカラカラカラカラ

律子「うおおおおおおおお!?」

ゴゴゴゴ

律子「た…大量のペンが転がってくる! どこにこんな量が隠れてたの!?」

ズルズル…

律子「あ…! 『ロット・ア・ロット』の中に入れたペンも…這い出てくる…!」

ゴゴゴゴゴゴ

美希「………」

455: 2014/07/26(土) 20:31:24 ID:/3OR5jfs
美希「…律子、逃げるの」

律子「み、美希?」

美希「確かに…これはちょっとヤバそうかも」

律子「あんたねぇ…」

律子(とは言っても…こんなのを見せられたら『消せばいい』で済まないのは誰にでもわかるわね)

律子「!」

キュキュッ

ドドドドド

律子「ペンが一斉に床に『はなまる』を描き始めたッ!」

美希「律子、走ろう! ドアまでダッシュ、なのっ!」

ダダダダダッ

律子「」カタカタカタ

美希「」ヒュッ ヒュヒュッ

『ロット・ア・ロット』でペンを押しのけたり、『リレイションズ』で拾い上げたりして妨害しながら、入り口のドアに向かって行く。

456: 2014/07/26(土) 20:44:25 ID:/3OR5jfs
アイ『ふふん、あたしは「逃がさない」ためにこの舞台を用意したんですよ?』

アイ『あなたたちが向かっているドアは「フラワー・サークル」で固く閉ざされているッ!!』

アイ『しかも「はなまる」マークは外側! そこからじゃあ余程のパワーがなければ開きませんよっ!!』

律子「パワー? そんなもの、必要ないわ。『ロット・ア・ロット』」

ブゥン

ジー…

外に出現した『ロット・ア・ロット』が、扉の外側を映し出す。

美希「『リレイションズ』」ズズッ

美希のスタンドが壁をすり抜け、衛星の箱の中に入ったペンを受け取り…

ヒュッ ヒュッ

扉の『はなまる』に×印をつける。

美希「でいやっ!」バガァァン

そのまま、ドアを蹴り開けた。

アイ『………!』

457: 2014/07/26(土) 20:53:38 ID:/3OR5jfs
美希「!」

ジャラァァッ

事務所の外の廊下には、パチンコ玉が敷き詰められていた。

ズルッ

律子「きゃっ…!」ドタン

足を取られ、尻餅をつく。

アイ『これはどうですかっ!! まともに立てませんよ!!』

律子「いたたたたっ! く、食い込むっ!」

美希「律子、それよりこれ…」

ズズズズズ

美希「パチンコ玉が回って…動いてる…!」

律子「階段の方に向かっている…?」

アイ『階段の方に進みたいなら、進ませてあげますよ!』

アイ『このまま突き落として、大怪我させちゃいますっ!!』

458: 2014/07/26(土) 21:06:06 ID:/3OR5jfs
ゴォォォォ…

貨物列車のような勢いで運ばれていく。

美希「律子、出せるだけ出して」

律子「ええ、わかったわ」カタカタ

ブン ブン ブォン

美希の周りに、大量の『ロット・ア・ロット』が出現する。

美希「それっ」ヒュババ

<LOCK! LOCK! LOCK!

『リレイションズ』がそれに片っ端から触れ、『ロック』をつけていく。

アイ『…? 何をやってるのかわかんないけど…』

アイ『これで終わりですっ!!』

ゴワッ

律子「きゃ…!」

美希「わわっ」

階段の所で道が途切れ、二人は宙に放り出された。

459: 2014/07/26(土) 21:21:58 ID:/3OR5jfs
律子「」カタカタ

フォン

衛星が下り階段の2mほど上に、等間隔で段階的に並ぶ。

律子「美希!」ガシッ

律子が、空中で美希の身体に掴まる。

美希「やっ」ヒュッ

グオン

『リレイションズ』が衛星に向かって拳を突き出すと、二人の身体が僅かに引っ張られる。

美希「たっ」バヒュ

ググッ

ググググググググ

衛星についた『ロック』に身体を引っ張らせながら、ゆっくりと階段の下まで降りていく。

スタッ

タタタタ

1Fに足から着地すると、二人は外まで走っていった。

460: 2014/07/26(土) 21:38:21 ID:/3OR5jfs
律子「よし、脱出成功ね…」ガチャ

車に乗り込み、キーを差し込む。

律子「美希、シートベルト締めて」

美希「追ってこないかな?」

律子「屋内なら強力なスタンドだったけど、外だと大したことないでしょう。それにこっちは車よ、仮に追いかけて来ても追いつけっこないわ」

ブロロロロ…

車を出す。

律子「恐ろしいスタンドだったわ…中に入ってあれくらいで済んだのは運が良かったわね」

律子「でも、765プロには多くの『スタンド使い』がいる。これでもう私達が勝ったも同然よ、ふふふ」

美希「なーんか、フに落ちないってカンジだけど」

美希「結局、『血』でデコちゃんを探すのは無理になっちゃったね」

律子「そうね…鈴木さん…彼女はどうしちゃったのかしら」

461: 2014/07/26(土) 21:49:09 ID:/3OR5jfs
ズン!!

ガタガタ

美希「わ!? 何、地震?」

シーン…

律子「地震…にしてはすぐ収まったわね」

律子「それに、今の音は…?」

ズン!!

ガタガタガタ

律子「まただわ、何かしら…」

美希「うーん、近くで何かあったのカナ…?」キョロキョロ

美希「………………………嘘」

律子「何? どうしたの、美希?」

462: 2014/07/26(土) 21:49:53 ID:/3OR5jfs
美希「り、律子…うしろ…」

律子「後ろ…?」クイッ

バックミラーを調整する。

ズン!!

鏡に、何かが上から落ちてくるような姿が映る。

律子「………は」

…ビルだ。

ググ…

…ッズン!!

ビルが、少しずつ飛び跳ねながら、車を追いかけて来ていた。

律子「はぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?」

アイ『「フラワー…サークル」っ!!!』

アイ『言ったじゃあないですか…逃がさないって!!』

464: 2014/07/27(日) 12:05:48 ID:X74edQxU
おつ
規格外すぎる

468: 2014/08/02(土) 01:09:14 ID:NOt8/LD6
前回までのあらすじ

ポルナレフ「ゆるせ小僧! あとでキャラメル買ってやるからな」ザバッア

バッ

小僧「うああーッ 目に砂がーッ」

花京院「まずい…失明の危険がある 車を出そう 早く医者の所へ連れていかねば…」

469: 2014/08/02(土) 01:18:56 ID:NOt8/LD6
アイ『おりゃー!!』

ズゥン!!

律子「ぐっ」ガタガタ

背後から迫り来るビルが着地する衝撃で、車体が上下に揺れる。

律子「『はなまる』を書いたものを操る能力…ビルから出れば安全だと思っていた」

グゥン…

律子「まさか、ビルそのものを操るなんて! どういうスタンドパワーしてるのよっ…!」

ズン!!

美希「わわわわわわ」ガタガタガタ

美希「ど、どんどん揺れが大きくなってる…近付いてきてるの!」

律子「って言っても…」グルルッ

キッ

ギュゥゥーン

ハンドルを左に切り、ブレーキを軽く踏みながら交差点を曲がる。

律子「あの図体じゃすぐには曲がれないでしょう! 全体を交差点の真ん中あたりまで持っていかないと、横の建物に引っかかるわ」

470: 2014/08/02(土) 01:34:20 ID:NOt8/LD6
美希「り、律子!」

律子「何よ!?」

メグッ

ビルの壁が生き物のようにグニャグニャと変形し、交差点の角にある建物や、その傍の信号機に絡み付いた。

美希「そのまま突っ込んでくる…」

メリュリュリュリュ

周囲の物体を食い込ませながら、876プロ事務所のビルが無理矢理その体を押し付け…

ブリュンッ

その空間を押し通った。横の建物には、傷一つついていない。

ブチブチ…

通り過ぎた場所にある信号機とガードレールがビルに食い込んだまま、移動とともに地面から引き抜かれていく。

ドスン!!

ズン ズン

再び、律子達の乗っている車を追跡し始めた。

471: 2014/08/02(土) 01:41:07 ID:NOt8/LD6
律子「こ、こんな無理矢理曲がってくるなんて…!」

美希「このままじゃ追いつかれて…」

ブロロロ…

対向車線から、車が向かってくる。

美希「!」

「うわああああ!? なんだありゃッ!? と、止ま…」

グォ…

ドズン!!

ビルの下敷きになった。

ゴゴゴ

美希「つ… ………」

美希「潰されたッ! 人が、氏んだ…!」

ゴゴゴゴゴゴ

472: 2014/08/02(土) 01:50:11 ID:NOt8/LD6
律子「いや…」

ズブズブ

「な、なに…? オレが車ごと飲み込まれて…」

潰されたと思った車が、ビルの下の部分と一体化していた。

律子「辛うじて生きているみたい」

「ひぃぃ~っ、助けて! 誰かッ!!」

ズドン!

「半年前に買ったばかりの新車が潰されるゥゥゥーッ! ローンもまだまだ残ってるのに!」

ズドン!

ミシミシ…

ビルに触れた車が、どんどん壁に食い込み、取り込まれていく。

律子「なるほど、私達を潰す気かと思ったら…ああやって生け捕りにしようとしていたのね」

律子「同じくらい大きな建物を取り込むのは流石にできないみたいだけど」

473: 2014/08/02(土) 02:08:19 ID:NOt8/LD6
グム…ムムム…

壁にめり込んだ車体がどんどん内側へと飲み込まれていき、見えなくなる。

律子「………」

律子「流石に、スタンドパワーは無限とはいかないみたいね」

美希「うん、ああやってモグモグ食べてるうちはこっちに向かう動きが遅くなってるの」

アイ『取り込んでいる間は動かない!!』

美希「!」

アイ『だから逃げ切れる…そう思ってますか!?』

律子「何を…」

アイ『ふふふ、違いますよ!! こうやって車を取り込んでいるのは…』

メキ…メキ

ビルの形状が変わっていく。

アイ『さらに! 追いつきやすくするためですっ!!』

474: 2014/08/02(土) 02:14:46 ID:NOt8/LD6
ズモッ!

ビルの下に、巨大なタイヤが出現する。

・ ・ ・ ・

グギ ガギギギギギ

やがて、ビル全体が大きなトラクターのような形状に変化していった。

美希「こ、これは…」

律子「もう…なんでもアリね」

ギュルルルルル…

タイヤが回転を始める。

アイ『GO!』

バオン!!

グアァァーッン

四輪駆動のビルが、驚異的なパワーで襲いかかる。

475: 2014/08/02(土) 02:21:00 ID:NOt8/LD6
グォォォォォ

美希「り…律子! どーするの!? デカい分、すっごく速いの!!」

律子「ち…」ガッ

アクセルを思い切り踏み込む。

ブォォォォォォォォ

アイ『あーっはっはっは! 無理ですよォォーッ、この圧倒的スタンドパワー!』

アイ『スピードを出した所でこっちの方がもっと速いです!!』

律子「………」ギュルルルルルル…

アイ『それに…』

律子「!」ガッ

キィィーッ

スピードはそのままに、前方の車をハンドルさばきで無理矢理追い越した。

パァーッパッパッパァーッ

辺りにクラクションの音が鳴り響く。

アイ『他にも車は走ってるんですよ? 私に追いつかれる前に事故っちゃいますって!!』

476: 2014/08/02(土) 02:29:30 ID:NOt8/LD6
ガッ

ミシミシミシ…

ビルのタイヤに踏みつぶされた車が、タイヤの中に飲み込まれていく。

アイ『事故をすれば氏ぬこともある…でもあたし達は命だけは助けてあげますよ!!』

アイ『さぁ、車を止めて大人しく踏みつぶされてくださいよォォ~ッ!!』

ゴォォォォォォ…

美希「くぅ…あいつ、勝ち誇ってる…」

律子「…頭にカッチーンって来るわね」

美希「このままじゃどうせ追いつかれるってカンジ。だったら…」

律子「どうするつもり、美希?」

美希「こっちから取り込まれてやるの。中に入って『リレイションズ』を叩き込む」

律子「無理に決まってるわ。さっき床に沈められそうになったでしょう? 一度捕まったら身動きなんて取れやしない」

美希「でも!」

477: 2014/08/02(土) 02:41:45 ID:NOt8/LD6
律子「けど…」

律子「『リレイションズ』を叩き込むってのはいいわね。やってきなさい」

美希「!?」

律子「………」

美希「今、自分でムリって言ったのに…言ってることメチャクチャだよ、律子」

律子「………」

美希「こんなことなら! やっぱりさっきビルの中にいた時に、あいつのとこまで飛び込んでいった方がよかった!!」

律子「ねぇ、美希。さっきまでと今とで決定的に異なっている点があるわ。何かわかる?」

美希「同じなの! さっきも今も、あのビル全部が襲いかかってきてる! 変わらないでしょ!!」

律子「違うわ」

律子「いい、美希? 私達は、今あのビルの『外』にいるのよ」

美希「それが何?」

律子「わからない?」

478: 2014/08/02(土) 02:52:08 ID:NOt8/LD6
グォォォーォォォォン

律子「あの事務所全体があいつのスタンド…その中の状況を全て把握していた」

律子「でも、今はそうじゃあない。外にいる私達の情報を、神のように見通すことはできない」

美希「だったら? あのどデカい車は、こうやってこっちの方に向かってきてるの」

律子「ええ、そうね。じゃあ、あいつはどうやって私達を正確に追いかけて来ているのかしら」

美希「……… …!!」バッ

後部座席から振り向いて、向かい来る怪物に目を向ける。

カシャ カシャ

カシャ

『リレイションズ』の眼が、四階の窓にその姿を捉えた。

美希「見てる…! 愛の偽物が、ミキ達のことを…!」

律子「そう、単純。私達を見つけるには直接『見る』しかないってことよ」

479: 2014/08/02(土) 02:59:40 ID:NOt8/LD6
美希「で、でも…だから? それでさっきと何が違うの?」

律子「いいや、全然違うわ。さっきまではどこにいても居場所がわかった、だから部屋の奥に隠れて篭っていればよかった」

律子「けど、今はそうじゃない。見なければいけない。つまり…」

アイ『………?』

律子「あいつは、窓際に立たなければいけない! 窓の外から飛び込んでいけば、確実に一撃入れられるッ!」

美希「窓の外から…どうやって?」

律子「あそこまで登ればいいわ」

美希「登るったって、あんな高いトコジェット機でゴーって行ったりしないと無理でしょ。ミキはジェット機じゃあないの」

律子「心配しなくても、そこまでの道は私が作るわ」

美希「道を…作る?」

律子「アイドルの進むべき道を切り開く、それがプロデューサーの役目でしょ」

美希「律子」

律子「違うわ、美希」

律子「律子さん、よ」

480: 2014/08/02(土) 03:11:41 ID:NOt8/LD6
キィィーッ!!

アイ『ん!』

律子達の乗る車が急ブレーキをかけ、勢いのまま車体が横に向く。

アイ『おっと~、ついに観念したみたいですね!! 逃げるのは無駄だって』

アイ『さぁ、その車も美希先輩や律子さんごと「フラワー・サークル」で一体化させちゃいますよー!!』

グォォォォオ

グシャァァァァァ

ビルの車輪が、車と衝突する。

律子「美希…!」ビリビリビリ

美希「はいなの!」バンッ

美希が反対側のドアを開き、身を乗り出した。

美希「んーっ…!」モゾモゾ

スッ

そのまま車によじ上り、ビルの壁に手を伸ばす。

481: 2014/08/02(土) 03:16:25 ID:NOt8/LD6
アイ『?』

アイ『あれ、なにやってるんですか? まさか、ここまで登ってくるつもりですか?』

美希「………」プルプル

アイ『でも、無理だと思いますよー。この高さまで生身で登るなんて人間には不可能だし…』

アイ『中に入ろうとしても、外から登るにしても…この「フラワー・サークル」でスタンド化したこの事務所は、触れたものはなんでも取り込んじゃいますから』

律子「へぇ、触れたものはなんでも取り込むのね」カタカタ

ヒュン

律子「だったら、取り込んでもらおうかしら」

ガッ!

ズブブゥ

律子が召喚した『ロット・ア・ロット』が、壁の中にめり込んでいく。

美希「なのっ!」ガッ

『リレイションズ』が、壁に埋め込まれた『ロット・ア・ロット』を掴んだ。

482: 2014/08/02(土) 03:21:03 ID:NOt8/LD6
・ ・ ・ ・

アイ『は…』

律子「私の『ロット・ア・ロット』には、さっき美希がつけた『ロック』が残ってるわ」

ガッ ガッ

美希「なのなのっ」ヒュ ヒュッ

ガシィ!!

高い位置に出現した衛星を、次々に掴んでいく。

律子「それに自分の体を引っ張らせれば…」カタカタカタ

ヒュン ヒュン

ガッ ガガッ!!

アイ『えーっ!!? な…なんだってェーッ!!?!?』

美希「なのなのなのなのなのなのなのなの」ヒュバババババババババ

『リレイションズ』が、美希が凄まじい速度で壁を駆け上がっていく。

483: 2014/08/02(土) 03:25:28 ID:NOt8/LD6
ドドド

・ ・ ・ ・

ドドドド

アイの目の前に、美希の姿が現れた。

美希「なのっ!!」ヒュッ

ガシャァァァァン

窓を割りながら、建物の中へと飛び込んでいく。

アイ「ふ…ふんだ!! ここまで来たのは凄いですよ、でも…」

グォォォォォ

美希「!」

美希の周りに、様々な物体が飛んでくる。

アイ「忘れちゃいましたか!!? この建物の中は、全部私の『スタンド』なんです!!」ズブブブ

そして、アイの足は床に沈み始めている。

484: 2014/08/02(土) 03:32:23 ID:NOt8/LD6
シャァァッ

カーテンが閉まり、美希の視界を奪おうとする。

アイ「さぁ、これで私の姿は見えなくなります!! その間に逃げさせてもらいますよーっ!!」

シャァァァッ

アイの姿がカーテンに隠れ、美希の視界から消えるその刹那…

美希「」ググ

ピンッ

『リレイションズ』が指で、パチンコ玉を弾き飛ばす。

ヒュゥゥゥッ

パスン

アイ「え」

<LOCK!

カーテンの隙間を縫うように飛ばされたパチンコ玉はアイの喉元に命中し、『ロック』が出現した。

485: 2014/08/02(土) 03:40:51 ID:NOt8/LD6
ズブ…

美希「」グッ

美希「そこっ」グオン

アイ「うごッ」バギャァァ

『リレイションズ』の拳が、アイの喉に突き刺さる。

アイ「げ、げほ…」

美希「もう逃げられない」シャッ

カーテンをどかし、アイの前に立つ。

美希「『リレイションズ』は、逃がさない」

アイ「そ、そんな…視界を奪われる直前に私の姿を捉えて玉を当てるなんて…」

美希「姿を捉えて? そんなことしてないの」

アイ「え…? じゃ、じゃあ…なんで私の喉に正確に…」

美希「声がでかいから」

アイ「あ」

486: 2014/08/02(土) 03:58:43 ID:NOt8/LD6
美希「さて、と。色々聞きたいんだケド」

美希「デコちゃんは? 本物の愛はどこ? 鈴木なんとかさんは? キミ達のボスって誰なの?」

アイ「………」

アイ「答えてあたしに何の得があるんですか? 馬鹿馬鹿しい」

美希「だったら、いいよ。律子…さんに何か言われるかもしれないけど、このまま『再起不能』(リタイア)させるの」

アイ「アイドルが『再起不能』するのは人々の記憶から消え去った時だけですよ」

美希「………」

アイ「もしも…アイドルが真に永遠の存在となったなら、それは『完全なアイドル』と言えるんじゃないですか?」

美希「…カンゼン?」

美希「イミわかんない。どゆこと? 何が目的なの?」

アイ「答える必要は…」ギラン

ズヒュゥゥゥゥゥッ

美希「!」

美希を取り囲むように、十数本の刃物が飛びかかる。

アイ「ないんですよォォーッ、美希センパイッ!! 今ここであなたは消えるんですからねェェッ!!」

487: 2014/08/02(土) 04:10:14 ID:NOt8/LD6
アイ「『あの人』の命令では頃すなと言われてたけど…かまわないですよね!! どうせ古いアイドルなんだし!!」

美希「ミキが…古いアイドル?」

美希「その古いアイドルを『カンゼンなアイドル』ってのにするのがキミ達の目的なの?」

アイ「だから答える必要はないですって!! どうせ、あたし達の前には765プロだってこの876プロのように一人たりとも残らないでしょうからね!!」

アイ「この場面を切り抜けられても希望なんて残ってない!! 『完全なアイドル』は次々とあなた達を襲うッ!!」

美希「ふーん、そう…」

ヒュッ

アイ「ごっ」ガッ

喉を裏拳で殴り飛ばす。

アイ「がががっ」バリバリバリ

重ねられた『ロック』分の衝撃がアイの喉に走る。

488: 2014/08/02(土) 04:13:42 ID:NOt8/LD6
美希「襲ってくるなら、それでいいよ。その人達からボスに辿り着けばいい」

アイ「『フ…』」

美希「デコちゃんも取り戻すし、876の人達も…みんな元に戻す」

アイ「『フラワー・サークル』こいつを串刺しにしろォォォォッ!!」

美希「なのなのなのなのなのなの」

ドス ドス ドス ドス ドス ドス

アイ「うばっ、ぎゃあああああああああああああああ」

喉の一点のみに『リレイションズ』のラッシュが叩き込まれ…

アイ(『勝て』…『ない』『負け』)サラ…

バリバリバリバリ

衝撃が何十倍にも膨れ上がる。

アイ「あああああああああああああああ」サラサラサラ…

パァン!!

アイの身体は砂となり、弾け飛んだ。

489: 2014/08/02(土) 04:19:43 ID:NOt8/LD6
カラン カラン

刃物が地面に落ちる。

美希「…真クン達が言ってた、倒したら砂になるってのはホントだったの」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

美希「ひゃ!? ゆ、揺れてる…地震!?」

『いっぱい♪いっぱい♪いっぱい♪いっぱい♪』

美希「あ、電話だ」スッ

ポケットから携帯電話を取り出す。

美希「もしもし、律子…さん?」

律子『美希…日高さんの偽物を倒したのね』

美希「うん、やったの」

律子『そう、倒しちゃったのね…』トン トン

美希「? 律子…さん、なにやってんの?」

490: 2014/08/02(土) 04:30:02 ID:NOt8/LD6
律子『…こんなド派手にやらかしてくれたもんだから。後始末をしなきゃあならないのよ』

美希「後始末…あ、そういえばビルと合体してた車はどうなったの?」

律子『取り込まれていた車は、全て外に吐き出されて元に戻ったわ』

律子『壁の中に取り込んで巨大なタイヤを作って…ってのはスタンドの能力で無理矢理形状を変化させていたみたいね』

美希「人がいっぱい巻き込まれたの。大丈夫?」

律子『ケガ人はいないみたいだけど…巻き込まれた、ってのが二番目に厄介なのよね。目撃者が大勢いるってことだから…』

美希「? 二番目?」

律子『…ま、これは私でどうにかするわ。少なくとも美希、あんたの名前が出てくるようなことには絶対にしない』

美希「ねーねー律子、二番目に厄介って…一番は何?」

律子『………』

491: 2014/08/02(土) 04:30:40 ID:NOt8/LD6
律子『…美希、本当に…本体の、偽物は倒しちゃったのね?』

美希「うん、砂になって消えちゃった」

律子『そう。じゃあ…』

律子『この、国道のど真ん中に立ってるビルを、どうやってどかせばいいのかしらね…』

美希「………」

美希「このままでいいんじゃない?」

律子『いいわけあるかっ!!』

To Be Continued...

492: 2014/08/02(土) 04:31:16 ID:dyugpHEk

493: 2014/08/02(土) 09:14:34 ID:YaL8dTuY
乙!
律子「さん」よってかっこいいな律子prpr

494: 2014/08/03(日) 15:54:39 ID:XcPJlhqg

律子「さん」のくだりがないなと思っていたけどここでくるとは。かっこよくて実にベネ



To Be Continued...






引用元: 千早「『弓と矢』、再び」