498: 2014/08/16(土) 03:00:13 ID:dGztPQdU





前話はこちら





P「すまん千早、あの番組にはやよいが出ることになった」

千早「え…」

P「でも千早、お前最近伊織の休業の穴を埋めるために他にもいくつか入ってるだろ?」

千早(水瀬さんの失踪は、プロデューサー達には『家の都合による休業』として伝えられている)

千早(しかし、水瀬さんがいない水瀬家ではもう捜索が始まっている)

千早(律子が盾になって耳に入らないようにしているけれど、プロデューサー達にはいつ知られてもおかしくはない…)

P「最近働きすぎだと思うんだよ。ちょうどいい機会だ、羽を伸ばしてこい」

千早「私はやれます」

P「駄目だ駄目だ、もう決まったことだ」

千早「………」

千早(こうして、不本意ながらもオフの日ができてしまった。いえ、プロデューサーは最初からそうするつもりだったのでしょうね)

千早(とはいえ、プロデューサーの言う通り、ちょうどいい機会なのかもしれない。私が疲れているとかそういう話ではなく…)

千早(水瀬さんが失踪した、この事件のことを調べるため。そのための時間ができた)



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

497: 2014/08/16(土) 02:29:22 ID:dGztPQdU
前回までのあらすじ

アヴドゥル「なにかわけがあるな…こいつ…JOJO!」

承太郎「うむ」

ドギューン

ビチャ ブチャ グニッ

ジョセフ「うええ~この触手がきもち悪いんじゃよなァ~肉の芽をはやく抜きとれよ! 早く!」

ポルナレフ「ブヘックショォ!」

承太郎「何ッ!」

ジャン・P・ポルナレフ ー氏亡ー

499: 2014/08/16(土) 03:30:58 ID:dGztPQdU
千早(先日、876プロに出かけた律子達は言った…)

律子『日高さんは既に「偽物」だった…私達を襲ってきた』

律子『でも、それよりも重要なのは…私は今回のことは水谷さんにしか話していない。誰にも言うなと釘も刺した。それなのに、伝わっていた』

律子『水谷さんも…いえ、ひょっとしたら涼も…876プロの全員が「偽物」に成り代わっているのかもしれないわ』

千早(そして、結局その後鈴木さんが見つかることはなかったらしい)

律子『ネットで調べてみたけど…彼女、最近顔を出していないみたい』

千早(つまり…私達は、最も重要な手がかりを失ったことになる)

千早(そして、私は…あることが気になっていた)

千早「765プロも876プロも、『弓と矢』があり…そして、アイドルが『偽物』と入れ替わっていた…」

千早「ということは、他のアイドル事務所もそうなのでは…?」

千早「そして、私達765プロも…いずれそうなってしまうのでは!?」

千早「だとしたら…いいえ、断じてさせるわけにはいかないわ。そんなことは…」

500: 2014/08/16(土) 03:52:52 ID:dGztPQdU
千早(美希の話によると、彼女達は『完全なアイドル』を名乗っていたらしい)

千早(この世に完全なものなどない…なんて話は置いておいて)

千早(その『完全なアイドル』が…私達の中に潜んでいる)

千早(何食わぬ顔をして765プロの中に入り込み…そして、水瀬さんをどこかにやってしまった)

千早(この獅子身中の虫! これだけは一刻も早く取り除かなくてはならないッ!)

千早(けれど、私達はアイドル…この前はたまたま予定が合ったけれど、忙しくて顔を合わせることもできない日々が続いている)

千早(その間にも奴らの魔の手は伸びているかもしれない…)

「千早ちゃん?」

千早「!」

501: 2014/08/16(土) 04:07:28 ID:dGztPQdU
春香「送りの人がいないみたいだけど…今から帰り? 早いね」

千早「春香…」

春香「ま、私もなんだけどね。予約してたスタジオが急に閉まっちゃって…」

千早「春香…それ以上近付かないで」

春香「え?」

ゴゴゴゴゴ ゴゴゴ

千早(そう…奴らは何食わぬ顔で他人に成り代わっている)

千早(確証を持てるまで、誰が相手だろうと油断はできない)

ズ…

春香「え、千早ちゃん?」

千早「春香…スタンドを出して」

春香「………」

502: 2014/08/16(土) 04:12:16 ID:dGztPQdU
春香「や…」

春香「やだなぁ~、千早ちゃん。私があれ以来『アイ・ウォント』を出せなくなったのは知ってるでしょう?」

千早「…そう、だったわね」

千早(流石に、偽物だったとしてもこんなことに引っかかるくらい迂闊ではないか)

春香「千早ちゃん、どうしたの? なんか怖いよ」

シュパ!

千早の『インフェルノ』が、千早の指をうっすらと切る。

タラ…

千早「じゃあ春香、貴女からは血が出る? 見せてくれないかしら」

春香「えぇ? 痛いよ、なんでそんなこと…」

千早「見せなければ、貴女だろうが容赦はしない」

春香「千早ちゃん…?」

503: 2014/08/16(土) 04:19:20 ID:dGztPQdU
春香「………」カリッ

春香は、左手の親指を口に入れ、噛んだ。

ポタッ

千早に向けた親指の腹から、赤い液体が滴り落ちた。

春香「これで…いい?」

千早「…ええ、いいわ春香。ごめんなさい、ありがとう」

春香「千早ちゃんが意味もなくこんなこと言うわけないからね」

春香「どういうことか、説明してくれる?」

千早「…聞いていないの?」

春香「何が?」

千早「実は…」

………

504: 2014/08/16(土) 04:57:13 ID:dGztPQdU
春香「伊織が…」

千早「何の目的があるのかはわからないけれど…」

千早「876プロは既に手に落ちた、敵は強大よ。このまま指を銜えて待っていてはいずれ全滅するわ」

春香「私達の中に敵が潜んでるって…やられたのは伊織だけじゃあないってことだよね。誰かわからないの?」

千早「いえ、わからない…けれど、見分ける方法はある」

春香「それがさっきの?」

千早「ええ。奴らはスタンドが違う…それと、血が流れていない」

千早「…この方法で見分けていないのは春香、貴女だけだったのよ」

春香「私だけ?」

千早「亜美と真美は常日頃から『ワープ』を使っているから。片方でも偽物なら『スタートスター』は使えなくなるはず」

千早「いなくなってしまった水瀬さんを除けば、春香以外の全員は白だったわ」

505: 2014/08/16(土) 05:07:08 ID:dGztPQdU
千早「だから、私は…貴女がそうだと思っていたのだけれど」

春香「本当に、そんな人がいるの?」

千早「いるはずなのよ。入れ替わっていなければ…同じ人物が二人もいれば、誰かしらが気づくはずだわ」

千早「それに…水瀬さんが一人になるタイミングを見て、彼女を始末することも難しいと思う…」

千早「のだけど…わからない。こうしてアイドル全員が白だというのなら、そうじゃあないのかもしれない…」

春香「アイドル以外の人は?」

千早「アイドル…以外?」

春香「765プロにいるのは、私達だけじゃあないでしょ。プロデューサーさんとか、小鳥さん…あるいは」

春香「マネージャーの大海さんとか」

千早「………大海さん」

506: 2014/08/16(土) 05:13:06 ID:dGztPQdU
春香「876プロにもあったってことは、犯人は『弓と矢』をばらまいている…」

春香「何かは知らないけど、きっと『スタンド使い』になることと『偽物』は関係があるんだと思う」

春香「プロデューサーさんも小鳥さんも、『スタンド使い』じゃあない…それは私が保証する」

春香「でも、大海さんは? 今年になって入ってきて、私達は彼女のことを何も知らない」

千早「彼女が『スタンド使い』かもしれないということ?」

春香「あるいは…大海さん自体が、『偽物』なのかもしれない」

ゴゴゴゴゴゴ

千早「そ…そんなこと…」

春香「ありえないと思う?」

千早「………」

507: 2014/08/16(土) 05:42:17 ID:dGztPQdU
春香「この前、千早ちゃんも言ってたよね。大海さんは私に似てるって」

千早「い、言ったけれど…だからと言って、そうと決めつけるのは早いのではないかしら」

春香「それだったら…思い過ごしなら、それでいいんだけどね」

千早(でも…確かに、敵が潜んでいるというのなら他に考えられない)

千早(違うのなら違うで…春香の言う通り、それでいい。事務所の中に、『偽物』など潜んでいないということなのだから)

千早「そうね…調べてみる価値はあるわ」

春香「そうと決まったら!」

千早「行くしかないわね…」

春香「…で、大海さんって今どこにいるんだろ?」

千早「…プロデューサーに聞いてみましょう」

508: 2014/08/16(土) 06:46:00 ID:dGztPQdU
千早(プロデューサーの話によると、大海さんは美希と我那覇さんを送って都内のフェスにいることがわかった)

千早(私と春香はそれを聞くとすぐにタクシーでそこまで向かうことにした)

千早(そして…)

……………

千早「………」

大海「あれ!」

春香「おはようございます、大海さん」

大海「春香ちゃん、千早ちゃん。どうしたんですか、こんなところに」

大海「あ、どうぞどうぞ椅子がありますから! 座ってください!」ザザッ

千早「い、いえ…ここで座って話をするために来たんじゃあありませんから…」

509: 2014/08/16(土) 06:50:24 ID:dGztPQdU
大海「それじゃあ美希と響ちゃんのこと見にきたんですか? それなら表からの方がよく見えますよ。フェスはチケットいりませんからね~」

千早「そうじゃあないの、大海さん」

大海「………?」

千早「私は貴女に話があってここに来たんです」

大海「私に…? なんですか?」

千早「ここでは話せません、人目につきますから。一緒に来てくれないでしょうか」

大海「…いいですよ」

千早(なにか、こっちが悪いこと企んでいるように思えるわ…)

千早(いえ…世間から見れば、充分に悪いことなのでしょうね)

千早(何故なら、私はこれから人をひとり消すことになるかもしれないのだから)

千早(でも、事務所を…765プロを守るため、私はやらなくてはならない)

510: 2014/08/16(土) 06:57:48 ID:dGztPQdU
千早(そして、私と大海さんは人目につかないところまでやって来た)

大海「それで、話っていうのは…」

大海「まさか、愛の告白!? 駄目だよ千早ちゃん! そんな…女の子同士でなんて!」

千早「………」

大海「そんな顔しないでくださいよ~、ちょっとした冗談ですから」

千早「…今日は裏方でもスーツなんですね」

大海「はい。こないだのこと、律子さんに話したらこっぴどく怒られちゃいまして…」

大海「でも、やっぱりジャージの方がよくないですか? 痛んでもあんまり気にならないし!」

大海「ほら。このスーツ、買ったばかりなのにもうこんなになっちゃってるんですよ…」

千早(よく見ると、結構汚れてるわ…)

千早(普通の人なら、買ったばかりのスーツをこんなに汚すことはないと思うのだけれど)

511: 2014/08/16(土) 07:08:21 ID:dGztPQdU
千早(さぁ、どうしましょうか…)

千早(『貴女は偽物ですか?』などと、そのまま言っても話すことはないでしょう。なら…)

ズッ

千早の背後に『インフェルノ』が現れる。

大海「千早ちゃん?」

千早(見えてない…いえ、そうと思わせてるだけかもしれない)

千早(日高さんの時、私は彼女がスタンドが見えていないと…『スタンド使い』ではないと思った)

千早(しかし、日高さんは『スタンド使い』そして『偽物』だった)

千早(『完全なアイドル』というのは、多少のことで精神が揺らいだりしないのかもしれない)

大海「…?」

千早(ならば、強攻策に出るわ。例え彼女が本当に無関係だったとしても…多少、ケガをさせてでも見分ける)

512: 2014/08/16(土) 07:11:33 ID:dGztPQdU
千早「ごめんなさい、大海さん」

大海「あ、あの? 千早ちゃーん?」

千早「『インフェルノ』ッ!!」ヒュッ

千早のスタンドが、大海に向かって襲いかかる。

ゴォォォォォ

大海「やめて」

千早「…!」ピタッ

『インフェルノ』の腕が止まる。

大海「本気で…私に攻撃するつもりだったよね? 今…」

千早「見えて…」

千早「いるのね、貴女は…!」

大海「………」

513: 2014/08/16(土) 07:21:49 ID:dGztPQdU
千早「貴女は、『スタンド使い』…!」

大海「………」

千早(そして、春香の…)

大海「もう一度言うよ。やめて、千早ちゃん」

千早(肌に少し傷をつければ…血が出なければ、はっきりする!)

千早「『インフェルノ』!!」ヒュ…

ドボォ

千早「…!?」ギギギ

『インフェルノ』が攻撃する前に、千早の背中に、何者かの腕が突き刺さる。

千早「ぐぅっ」グラッ

千早(スタンド攻撃…!? いつの間に、見えなかった…)

514: 2014/08/16(土) 07:25:12 ID:dGztPQdU
大海「無駄無駄ァ」ヒュ ヒュン

千早「がっ…!!」ボコ ボゴォ

バタン

背中から衝撃を受け、千早はうつ伏せになって倒れる。

大海「こうなったらもう…今はあなたの相手はしていられない」クルッ

タッ

千早「ま、待って…!」ムクッ

・ ・ ・ ・

千早「」キョロ

千早「いない…」キョロキョロ

千早が立ち上がると、もう大海の姿は見えなくなっていた。

515: 2014/08/16(土) 07:29:18 ID:dGztPQdU
千早「………」ザッ ザッ

ザワザワザワ

千早(? ステージの方が騒がしいわ…)

「おい、美希ちゃんの姿が見えないぞ!響ちゃんもだ!」

「アイドルが…まとめて消えちまった!」

千早「え…」ドクン

ドクン ドクン ドクン

鼓動が早まっていく。

千早「春香…」

バッ

千早「春香! どこ、春香!!」

………

辺りを見回して呼びかけるが、彼女の姿は、どこにもなかった。

千早「く…」

千早「ああああああああっ…!!」

521: 2014/08/22(金) 20:16:10 ID:5YMyrv4Y
タッタッタッタ

千早「はぁ、はぁ、はぁ」

大海を見失った千早は、急いでタクシーを呼び、事務所の前まで戻ってきた。

千早(春香、美希、我那覇さん…みんな消えてしまった)

千早(嫌な予感がする…他のみんなは無事なの…!?)

ブロロロロ…

一台の車が、事務所に向かう千早とすれ違うように出て行く。

・ ・ ・ ・

千早(今の車…)

千早(事務所では見かけない車だわ。何故、今ここから出て行ったの? 怪しすぎる…)

千早(それに、なにかしら…運転していた『男性』? 後ろ姿にどこか見覚えがあった)

千早(追うべきだと思う…けれど)

千早(…私の足で車には追いつけない。それに、事務所にいる人達が心配だわ)

522: 2014/08/22(金) 20:39:20 ID:5YMyrv4Y
シン…

建物の中に足を踏み入れるが、物音一つ聞こえない。

バンッ

手前の部屋から扉を開いていく。

千早「誰か…」

バンッ

千早「誰か、いないの!? 誰か!」

「う…」

千早「!」

「ぅぅ…」

千早(奥の部屋から呻き声が…)ガチャ

P「………」ダラン

千早「プロデューサー!」

523: 2014/08/22(金) 20:58:48 ID:5YMyrv4Y
千早「だ…大丈夫ですか!」タッ

部屋に入り、奥で倒れている彼の下にすぐさま駆け寄っていく。

P「………」

千早(気を失っている…外傷はあまりないけれど)

千早(嫌な予感が、現実のものに…『偽物』達が、ついに動き出した!)

千早(私達アイドルだけでなく、プロデューサーまでが巻き込まれて…!)

ピラッ

千早「………?」

視界の隅で、何かがめくれた。

ペラペラ

真っ黒な何がが旗のようにはためいている。

千早「」スッ

右手を伸ばして掴もうとするが…

千早「…え?」

右腕の、肘から先が、なかった。

524: 2014/08/22(金) 21:21:36 ID:5YMyrv4Y
ゴゴゴゴゴゴ

切断面を見ると、まるで剣の達人が藁の束を切ったかのような綺麗な切り口だった。

出血はないが、肘から先がそのまま透明になってしまったかのように、切断面の血管から血が行き来するの流れているのが見える。

千早「な…なに、これは…! 『スタンド攻撃』!?」

千早(感覚はある…でも、見えなくされたわけじゃあない…確かにある、でもここにはないッ)

ピラピラ

千早「あら…?」

ゴゴゴ

千早(黒い布のようなものがはためいていると…それだけだと思っていた)

千早(でも…それだけじゃあない! 私の目の前から、窓際まで…)

ズズズズズ…

千早(プロデューサーがいた場所が、空間が真っ黒に塗りつぶされている!!  プロデューサーがいない…!)

525: 2014/08/22(金) 21:38:25 ID:5YMyrv4Y
ピラピラ

千早「こ、この裏…いえ、表側は…!」バッ

ゴゴ

回り込み、黒い布の表側を確認する。

その表面には、部屋の窓、プロデューサー、そして、千早の右手が描かれていた。

千早「『空間』が…『めくられて』いるッ!!」

千早(奇妙だけれど、そうとしか言いようがない! プロデューサーと私の腕が、部屋ごと巻き込んでめくられている!!)

千早(そしてめくった後に、この黒い何もない空間が残っている…『空間』の裏側とでも言うのかしら、触るのはやめておきましょう)

スゥ…

千早(! 入り口に誰かがいるわ…あそこにいるのが本体?)グッ

千早「!?」

千早「う、動けないわ…! 右腕が、何かに引っかかっている!」

526: 2014/08/22(金) 21:51:17 ID:5YMyrv4Y
千早「この、『めくられた空間』の中に私の右腕があるから…? 本体の方まで向かって行けない…!」

スッ

千早(あの手の動き、何かをしようとしている…『空間』をつまんで…)

ググ…

ブワッ

千早(空間が私に、覆い被さるように閉じていく…めくられた『空間』を、元に戻すつもり…?)

千早(今、私は裏側にいる…! 完全に閉じた時、裏側にあるものはどうなるの…?)

千早「」タッ

空間が完全に閉じる前に、黒い空間の外へと逃れようとする。

527: 2014/08/22(金) 22:02:32 ID:5YMyrv4Y
グッ

千早(…! 腕が引っかかる…ここが限界なの…?)

千早(右腕が少し、閉じる『空間』に巻き込まれる…)

千早「くっ!」

ガオン!!

・ ・ ・ ・

『空間』が閉じ、千早の右腕も元に戻る。

ブシュッ

しかし、空間の裏側に巻き込まれた千早の腕の中の辺りが、数ミリほど削り取られており、血が噴き出す。

528: 2014/08/22(金) 22:14:53 ID:5YMyrv4Y
グラ…

繋がってる部分が半分以下となってしまった右腕の先が曲がりかけるが…

千早「『インフェルノ』…」ガシッ

ピキピキピキ

左手で受け止めると、凍らせて傷口を塞ぎ、くっつけた。

千早「随分な真似をしてくれるわね」キッ

千早は、入り口に立っている少女を睨みつける。

???「あれ?」

千早「貴女は高槻さん…の、『偽物』…かしら」

???「ちがいますよー」

ゴゴゴ

千早「………」

ヤヨイ「私がやよいです」

ゴゴゴゴゴゴ

529: 2014/08/22(金) 22:20:47 ID:5YMyrv4Y
千早「他のみんなはどうしたの?」

ヤヨイ「みんなですか? みんな、元気ですよ!」

千早「…全員、なの?」

ヤヨイ「伊織ちゃんは、もうちょっと時間かかりそうだけど」

千早「」ギリッ

千早(遅かった…? みんな、やられてしまったの? 私は、間に合わなかった…)

ヤヨイ「それにしても、千早さん…だったんですか。おかしいなぁ」

千早「私がいたら、なにか不都合でもあるのかしら」

ヤヨイ「はい。今日は千早さんはいないって言ってたのに。それに…」

千早「?」

ヤヨイ「…千早さんは、別にいいって」

千早「別に…いい?」

530: 2014/08/22(金) 22:41:15 ID:5YMyrv4Y
千早「それは一体、どういうこと? 私を倒す必要はないということ?」

ヤヨイ「私もよくわかんないですけど、そうじゃないかなーって思います」

千早(私を倒す必要はない…なぜ?)

ヤヨイ「あの、千早さん。間違えてケガさせちゃって、ごめんなさい!」

千早「…何故謝ったりするの?」

ヤヨイ「だって、これからは私が『高槻やよい』ですから! 仲良くしましょう!」

千早「貴女は高槻さんじゃあないわ。高槻さんのフリをするような人と仲良くなんてなれない」

ヤヨイ「もしかして、まだ戦うつもりなんですか? やめた方がいいと思いますけど。腕、取れかかってますよね?」

ヤヨイ「それに私、千早さんと戦う理由なんてないかも」

千早「貴女達がどうでも、私には戦わなければならない理由がある」

ヤヨイ「もう、千早さんひとりしか残ってなくても?」

千早「それでもよ…! 貴女達を全員倒し、みんなを取り戻すッ!!」

531: 2014/08/22(金) 22:50:30 ID:5YMyrv4Y
千早「」タッ

駆け足でヤヨイの方に向かって行く。

ヤヨイ「千早さんの…『ブルー…』えっと」

ヤヨイ「『イ…イ』…スタンド、すっごい速くて強いらしいですけど」ス

ピッ ピッ

空中で『匚』の字を描くように、指を動かす。

ピラッ

千早「!」ガッ

千早の左腕が『空間』ごとめくられて引っかかり、その場で足止めを食らう。

ヤヨイ「近づけなければ何も怖くないかなーって」

532: 2014/08/22(金) 23:02:50 ID:5YMyrv4Y
千早「なるほど、『空間』を平面の絵として捉え…切り取ったりめくったり…」

千早「そうやって、『空間』を操作してるのね」

ヤヨイ「はい。これが私のスタンド、『ゴー・マイ・ウェイ』ののーりょくです」

千早(彼女の視点から見える『空間の裏側』に、私の左腕の切断面があれば…そこは自由に動けるようね)

ヤヨイ「千早さん、今、私から見て裏側のところにいますよね」

ヤヨイ「この『空間』を閉じれば、千早さんの全身は削り取られて、終わり…ですけど」

千早「………」

ヤヨイ「頃したら駄目みたいだし、とりあえず足のところだけパタンってやっちゃいますね」スッ

ヤヨイ「逃げようとしても…その右手みたいに、左手だけは貰っちゃいます」

533: 2014/08/22(金) 23:10:25 ID:5YMyrv4Y
千早(『空間』を閉じる…逃げようがないように思えるけれど)

千早(切断面と『めくられ』た『空間』が完全に一致すれば、めくられる前と何も変わらず元に戻る…はず)

千早(けれど…この能力は『空間』を平面で捉えているのに対して、私の行動するこの世界は『立体』…)

千早(単純な位置だけでなく角度や高さなども完全に合わせなければならない、そんなのは不可能に近いわ)

ヤヨイ「一度巻き込まれたら、もう『ゴー・マイ・ウェイ』から逃げる方法はないですよ!」ピッ

ヤヨイが『めくれ』た『空間』の端を掴んだ。

千早「逃げる方法はない? それは嘘ね」

ヤヨイ「?」

534: 2014/08/22(金) 23:30:04 ID:5YMyrv4Y
千早「私の腕は切断された…ように見える」

千早「けれど、それは『空間』の一部が切り取られているからそう見えるだけで…本当は繋がっている」

千早「切られた腕が消えたわけでもない。感覚もあれば、この『めくられた空間』の中にちゃんと存在しているわ」

ヤヨイ「それがどうかしたんですか?」

千早「この『空間』だって、切り取られたというだけで…なくなったわけではない!」

ヤヨイ「うぅ~、よくわかんないです! とりあえず、閉じちゃいますね」ペラッ

千早「私の腕はこの閉じようとしている『空間』の中に存在している、ということは」ヒュン

左腕を真横に伸ばし、『空間』に合わせるように、後ろから前に振り抜く。

535: 2014/08/22(金) 23:51:01 ID:5YMyrv4Y
ドドドドド

千早の左腕が、元に戻った。

ドドド

千早「左腕との切断面が一瞬でも一致すれば、私の腕は『めくられた空間』から引っ張り出せるわ」

千早「しかも、『空間』の中にある私の腕も、同じ動きをする…合わせるのは簡単よ」タッ

パタン!

そのまま、閉じて行く空間の外側へと逃れる。

ヤヨイ「………」

ドドドドド

千早「射程距離内に入ったわ。『ブルー…』」

ピラァ!

千早「うっ!?」

グォォォォォォ

千早(床が動いている…いえ、私のいる『空間』ごと切り取られている!?)

536: 2014/08/23(土) 00:01:01 ID:N1yw5mUs
ヤヨイ「『ゴー・マイ・ウェイ』で切り取った手を戻したのはちょっとびっくりしちゃったけど…」

ヤヨイ「よく考えたら、最初からこうすればよかったかも」

ゴォォォォ

千早「私ごと…この部屋全部を『めくって』いるの…?」

ヤヨイ「はい! このまま壁にくっつけて…」

千早「『閉じ込めちゃいます』?」

ヤヨイ「閉じ込めちゃいます!」

ヤヨイ「はわっ!?」

千早「無理よ。だって、貴女はもう負けているもの」

ヤヨイ「負けてる? 全然そうは見えないかも」

ヤヨイ「千早さん、そんなこと言っちゃめっ! ですよ!」

千早「まだわからないの?」

537: 2014/08/23(土) 00:07:38 ID:N1yw5mUs
シャッ! シャッ!

カーテンを閉める。

ヤヨイ「う?」

千早「この『めくられた空間』は、私も含め『平面』になっているわ」

千早「そして私の『インフェルノ』には…腕を凍らせるために奪った『熱』が有り余っている」ヒュッ

チリッ

シュボ!!

メラメラメラ

『インフェルノ』が指で擦ると、カーテンに火が点いた。

千早「炎はプロデューサーと私も巻き込む…けれど、『インフェルノ』で熱を逃がせるわ。でも、貴女のスタンドにそういう機能はないでしょう」

ヤヨイ「え? え?」

千早「その掴んでいる『空間』の端、放した方がいいと思うわよ。…もう遅いけれど」

538: 2014/08/23(土) 00:13:39 ID:N1yw5mUs
ゴォォォォォ

ヤヨイ「わ…あ、ああっ!」ゴォッ

ゴロゴロゴロ

空間の端から伝ってきた火が、ヤヨイへと燃え移り、のたうち回る。

ペラ…

千早「…『空間』が」

ゴォォォォ…

『インフェルノ』の左手の中に、カーテンの火が吸い込まれていく。

シュゥゥゥゥーッ

腕の排気口から、大量の蒸気が吹き出した。

千早「元に戻った」

ヤヨイ「あ…」

千早「能力を解除するなんて、冷静さを欠いたわね」

539: 2014/08/23(土) 00:25:10 ID:N1yw5mUs
千早「『完璧なアイドル』…と聞いていたけれど。不測の事態には対応できないのかしら?」

千早「本物の高槻さんならこれしきで能力を解除することはなかったでしょうね」

ヤヨイ「う…うぅ…」

千早「さて…」

ヤヨイ「!」

千早「決着はつけるわ。高槻さんと同じ姿を殴るというのは、心が痛むけれど」

千早「いえ、あまり痛まないわね…結局、貴女は高槻さんではないのだから」

ヤヨイ「………」スス

ヤヨイ(『インフェルノ』の射程距離は2m…まだ、ちょっと遠い。それに千早さんは…右腕をケガしてる)

ヤヨイ(『ゴー・マイ・ウェイ』の方が一瞬早く発動すれば…まだ、勝てる!)

540: 2014/08/23(土) 00:33:26 ID:N1yw5mUs
千早「『インフェル…」ヒュオン

ヤヨイ(遠い!)スッ スッ

ペラッ

再び、千早の左腕ごと『空間』が『めくられ』る。

ヤヨイ「『ゴー・マイ・ウェイ』!! 両腕、封じまし…」

グッ

パリィィィィィン

ヤヨイ「あぐっ!?」

ヤヨイに凍り付いた『インフェルノ』の右腕が叩き付けられ、氷の破片が弾け飛んだ。

ヤヨイ「おぐ…ぉ…」

千早「何か… ………」

千早「言ったかしら。まぁ、なんでも、いいけれど」

543: 2014/08/23(土) 11:22:06 ID:hW0OwiNA
スタンド名:「ゴー・マイ・ウェイ」
本体:タカツキ ヤヨイ
タイプ:特殊型・無像
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E~C(目の届く範囲) 能力射程:E~C(目の届く範囲)
持続力:C 精密動作性:E 成長性:C
能力:自分の見ている景色を「二次元」として認識し、切り取って「めくる」ことができるスタンド。
「めくった空間」に一部が巻き込まれた時、切り取られた面は「めくった」部分に閉じ込められる。
「空間」を「めくる」際、その裏には何もない真っ黒な領域が残り、「空間」が閉じて元に戻った時、その裏側にあるものはなんであろうと削り取ってしまう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

544: 2014/08/23(土) 22:46:50 ID:.XXhvNCY
相手によっては完封出来そうな能力だな
それでも五感を複数支配程の恐怖感は無いが

586: 2014/09/06(土) 03:50:59 ID:L6QAxFz2
ドグォ!!

衝撃で千早の身体が吹っ飛ばされ、壁にぶつけられる。

ハルカ「はい、射程距離『外』」

千早「く…うぅ…」

ハルカ「さて…」ブオン

『アイ・リスタート』がゆっくりと千早に近付いていく。

ハルカ「徹底的に痛めつけてあげる。千早ちゃんが私に歯向かおうだなんて思わないようにね…」

ダダダ

P「千早っ!!」バッ

千早「え?」

ハルカ「!?」クルッ

プロデューサーが階段の下から駆け上がってきて、ハルカに飛びかかった。



To Be Continued...





引用元: 千早「『弓と矢』、再び」