4: 2014/10/18(土) 22:17:11 ID:S.BkRviM





前話はこちら





春香「おはようございまーす!」

電話『とぅるるるるる、とぅるるるるる!』

大海「音無さんっ! 電話が鳴り止みません!」

小鳥「一つずつ処理しましょう! はい、こちら765プロです!」

大海「もしもし、765プロです…ひゃっ! ご、ごめんなさい! 事務所の決定でして、こちらからは何も…」

春香(私が事務所に来ると、小鳥さんと大海さんが電話の応対に追われていた)

大海「あ、春香ちゃん! 助けてください~」

春香「えっと…」

大海「電話に出てくれるだけでいいですから!」

春香「…お仕事、頑張ってくださいね!」タタッ

大海「そんなぁ!」




※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

5: 2014/10/18(土) 22:55:00 ID:S.BkRviM
P「やっぱり、警察に届け出るのが一番手っ取り早い気がするが」

律子「相手の規模がわかりませんし、相手は『スタンド使い』…それに、警察が絡むと後々面倒なことになると思いますよ」

P「だよなぁ…うーん、どうしようか」

律子「私の『ロット・ア・ロット』でも探してみますが…虱潰し、となると時間はかかるでしょうね…」

P「待てよ…? 犯人は別の事務所にも来てるんだよな? だったら…」

春香(他の部屋では、プロデューサーさんと律子さんが例の車について話し合いをしている)

春香(私達の持つ手がかりは、美希が撮った車の写真と、電話番号。それと…)

春香(情報を聞き出そうにも、『偽物』達は砂になって消えてしまう。だから私達はこれだけでどうにか犯人を見つけなければならない)

春香(これらの手がかりは大人であるプロデューサーさんや律子さんの方が有効に使えるだろう…だから、私が個人的にできることはほとんどなくなってしまった)

6: 2014/10/18(土) 23:17:34 ID:S.BkRviM
春香(昨日…『偽物』達が765プロに攻めて来て)

春香(私はあの後、家に帰った。もう大海さんのところにお世話になる必要もないからね)

春香(私の『偽物』…あの子は私を完璧に演じていたようで、家族は何事もなかったかのように私を迎え入れてくれた)

春香(説明する手間が省けたとは言え、『自分以外の自分の存在』を感じ、薄ら寒さを感じた…)

亜美「あ、はるるんおはよー」

春香「おはよ、亜美」

春香(律子さん…それと、亜美は昨日『偽物』達が攻めて来た時仕事で外出中だった)

春香(もしかしたら、仕事場にも『偽物』達が来たかもしれない…と考えたけど、そんなことはなかったみたい)

亜美「ねー、ほんとにみんな…連れて行かれちゃったの?」

春香「…うん」

春香(でも、他のみんな…伊織、やよい、真、雪歩、真美、あずささん、貴音さん…765プロのアイドルの半分以上が行方不明となってしまった)

7: 2014/10/18(土) 23:23:01 ID:S.BkRviM
春香(昨日…765プロに攻めて来た『偽物』達を倒し、プロデューサーさん達に全てを話した後)

春香(あの後、私は家に帰った。もう大海さんのところにお世話になる必要もないからね)

春香(私の『偽物』…あの子は私を完璧に演じていたようで、家族は何事もなかったかのように私を迎え入れてくれた)

春香(説明する手間が省けたとは言え、『自分の知らない自分が生活していた』という事実に、私は薄ら寒いものを感じていた…)

亜美「あ、はるるんおはよー」

春香「おはよ、亜美」

春香(律子さん…それと亜美は、昨日は仕事で外出中だった)

春香(もしかしたら、仕事場にも『偽物』達が来たかもしれない…と考えたけど、そんなことはなかったみたい)

亜美「ねー、ほんとにみんな…連れて行かれちゃったの?」

春香「…うん」

春香(でも、他のみんな…伊織、やよい、真、雪歩、真美、あずささん、貴音さん…765プロのアイドルの半分以上が行方不明となってしまった)

8: 2014/10/18(土) 23:38:24 ID:S.BkRviM
春香「千早ちゃんは…」キョロキョロ

千早「いるわ」

春香「あ、おはよ千早ちゃん。ケガは大丈夫だった?」

千早「ええ、骨までは達していなかったし…切り口が綺麗すぎると、思ったよりは重傷ではなかったみたい」スッ

春香(千早ちゃんの右腕には、包帯が固く巻かれていた)

千早「力を入れると傷口が開くから、右腕は使えないけれど」

亜美「あんまムリしない方がいいと思うよ」

響「やよいがいればよかったのにね、『ゲンキトリッパー』で傷を埋めて貰えばすぐにでも動かせるぞ」

春香「とりあえず、よかった…のかな」

美希「ねぇ、みんな。今日はなんで集まったの?」

春香「なんでって…」

美希「言われたから来たケド…こうして事務所に来る必要、ないって思うな」

9: 2014/10/18(土) 23:51:08 ID:S.BkRviM
春香(765プロは…活動を停止した)

春香(アイドルの半分が行方不明になってしまったことと…残った私達の安全を確保するために…決まったことだ)

亜美「うん、亜美も思った。仕事がないなら、集まらなくてもいいんじゃん?」

美希「昨日みたいに、『偽物』達が攻めて来るカモ…いや、ゼッタイ来ると思うの」

春香(美希の言うことはもっともだと思う。失敗したとわかって、大人しく引き下がるとはとても思えない)

春香(また、この765プロを襲ってくるはず。万全な状態で…)

春香「でも、私は…こうして集まってた方がいいと思う」

亜美「なんで?」

春香「バラバラになってたら、それこそ危ないよ。誰がいつ襲われるか、襲われたのかもわからない」

春香(私が『偽物』と『入れ替わっ』たのは、ライブの後、一人でいる時だった)

10: 2014/10/19(日) 00:05:01 ID:f2u3litc
千早「私もそう思うわ。一人でいる所を襲われた方が危険でしょう」

響「それに、律子の『ロット・ア・ロット』もあるからね。事務所にいた方が、何かあった時にわかると思うぞ」

美希「うーん、言われてみればそうカモ」

亜美「そんじゃ、亜美達にできることは…兄ちゃんやりっちゃん達が車の持ち主を見つけるのを待つだけか」

シーン…

春香「ところで亜美、『スタートスター』は使えないの?」

亜美「使えるなら、とっくに使ってんだけどね」

響「真美達…連れ去られたみんなは、少なくともこの町にはいない…ってことか」

春香(みんな…今、どこにいるんだろ…?)

………

……


11: 2014/10/19(日) 00:21:08 ID:f2u3litc
やよい『う…!』ドサッ

真美『やよいっち!』

真『逃げるんだ、真美! こいつはヤバい…!』ギギギ

ハルカ『逃がすと…思う? 無駄だよ、無駄』

ハルカ『「アイ・リスタート」』ドォン



……

………

真美「まこちん! やよいっち!」ガバッ

真美「…あれ? 夢…?」

真美「じゃない。どこだろ、ここ…」キョロキョロ

真美(ホテル? の、部屋の中かな?)

真美「そうだ。765プロに、たくさんのアイドル達が来て…車に乗せられて…」

真美「真美達は、ユーカイされたんだ!」

12: 2014/10/19(日) 00:34:00 ID:f2u3litc
真美「そんで、ここに閉じ込められて…うぅ、ゲームでよく見る展開!」

真美「もしかして…こっから脱出しなきゃいけないとか…それか、頃し合いなんかさせられちゃったりとかしちゃったりする感じ!?」バッ

自分の体中をまさぐる。

真美「うーん。バクハツする首輪とかついてるかも? って思ったけど、そういうのはないみたいだね」

真美「部屋の中に、何かないかな」キョロキョロ

・ ・ ・

真美「…改めて見ると」

真美「なんか、すっごく…セレブっぽい部屋じゃない? ベッドもフカフカだったし…」

真美「まず、目立つのはこのでっかいテレビ! これでゲームしたら大バクハツじゃない!?」

真美「このソファ! 『ダメ人間にする』とか言ってネットで見たことあるやつじゃん!」ボフッ

真美「わっ、冷蔵庫に飲み物がギッシリ!」ガチャ

13: 2014/10/19(日) 00:46:26 ID:f2u3litc
真美「他には、なんかないかなー」ゴソゴソ

真美「…これは」

真美「ゲーム機だ! うわっ、このでっかいテレビでゲームできちゃうの!?」

真美「携帯ゲームもある! しかもこれ、今度パパに頼もうと思ってた新型だ!」

真美「うーん、誰のものかわからないけど、ちょっとくらいなら…」スッ

ピタ…

真美「や…真美はユーカイされたんだ。まず、ここがなんなのか調べないと」

真美「カーテン開けて、外は…」シャッ

真美「うーん、森しか見えない…ここ、森の中なのかな…?」

真美「結構、高いなぁ…こっからは降りられなさそうだね」

14: 2014/10/19(日) 00:51:59 ID:f2u3litc
真美「こっちの部屋は…」ガチャ

真美「お風呂とトイレか。ほんと、ホテルみたい」

真美「お風呂でっかいな~。泡とかブシューって出るんじゃない? これ」

真美「っと、ダメダメ。調べないと」

真美「このドアは…出口? 開くのかな」

ガチャ

真美「ありゃ、あっさり開いちゃった」

キョロキョロ

真美(外は…ふつーに、ホテルの廊下って感じ。ドアが並んでる)

真美(他の部屋には、誰かいるのかな? みんなは…)

バタン!!

真美「あっ!? しまった!」

15: 2014/10/19(日) 00:57:06 ID:f2u3litc
真美「うあうあー! どーしよ、カギ持ってないから入れないよー!」グッ

取っ手を掴むが、ビクともしない。

真美「うぅ、ちかたない。ゲームとかいっぱいあったけど、真美の目的はダッシュツであって…」

真美「…? あれ、これって…」

部屋のドアノブの上に、黒いパネルが設置してある。

真美「………」ペタ

パネルに、人差し指をくっつけた。

カチャ

真美「………」グッ

ギィ…

指紋認証が作動してロックが解除され、ドアノブを引くと、扉が開いた。

真美「真美の指で、開いた…」

真美「真美の部屋なんだ、ここ…」

16: 2014/10/19(日) 01:28:11 ID:f2u3litc
真美(こんな部屋貰っちゃっていいの? ラッキー!)

真美(…って思わないって言うと、嘘になるけど…)

真美(それ以上に…気持ち悪い…!)

真美(真美のためにこんな、めっちゃお金かかってそうな部屋を用意するなんて…なんで!? 何のために!?)

真美「!」ハッ

真美(そっか…真美達をユーカイしたのは、あの『偽物』達だ)

真美(今までの『真美』はあの『偽物』がやるから、本物の真美達はここで暮らせって…そういうことなんだ!)

真美「でも、なんかそれって悪の組織! って感じじゃないね」

真美「ろーやとかに捕まえたりゴーモンとかしてるんじゃないかって思ったのに」

真美「とりあえずいおりんも…みんなも、無事なのかな?」

真美「亜美は…『スタートスター』が使えないってことは、近くにはいないみたいだけど」

17: 2014/10/19(日) 02:07:10 ID:f2u3litc
コンコン

………

真美「返事がないなぁ。誰か、中にいないのかな」

クゥー…

真美「お腹空いた…」

真美「みんな、食べ物探しに行ったのかも。どっかにあるかな…」チラ…

ゴゴゴゴゴゴ

真美(真美の部屋…これが真美一人のものっていうのは、ちょこっと王様気分だけど)ガチャ

指紋認証で鍵を解除し、部屋に入る。

真美(ここには誰もいない。一人じゃなにも面白くなんてないよ)ゴソゴソ グイ

テレビの下の棚を漁り、新型ゲーム機をポケットに突っ込む。

真美「よし、行こ」タタッ

24: 2014/11/22(土) 23:18:59 ID:aXb81BMI
ピンポン♪

グーン…

エレベーターのドアが開く。

真美「よっと!」スタッ

真美「ここが一階かぁ。誰かいるかな?」キョロキョロ

真美「ん! あっちからいい匂い!」

ザワザワ

真美「人の声も聴こえるし…行ってみよう!」タッ

25: 2014/11/22(土) 23:28:32 ID:aXb81BMI
ザワザワ

真美(ここは…食堂、かな? テーブルとかイスがいっぱい並んでる)

「うまうま」モグモグ

真美(ご飯食べてる女の子がいっぱいいる。雑誌とかテレビで見たことある人も)

真美(真美と同じで、ここに連れて来られたアイドルかな?)

真美(誰かに話聞いてみよ、765プロのみんなを見なかったかどうかも…)

グゥ~

真美(うぅ、その前にご飯にしよ…)

真美「ねーねーそこのおねーちゃん。ご飯ってどうすればもらえんの?」

「へっ? えっと、あっちのカウンターで直接頼めば作ってもらえるけど」

真美「そっかー、ありがと!」タタタ

26: 2014/11/22(土) 23:39:16 ID:aXb81BMI
「いらっしゃいませ」スッ

カウンターの奥で、能面のような表情の女性が軽くお辞儀をする。

真美(このお姉ちゃん…)

(ここの職員ってことは、この人も765プロに攻めて来たあいつらの仲間なのかな…?)

「何にいたしましょうか」

真美(ま、いっか。真美に攻撃とかはしてこないっしょ。するなら、そもそもこんなところには連れて来ないハズだし)

27: 2014/11/22(土) 23:40:06 ID:aXb81BMI
真美「何があんの?」

「希望があれば何でも作りますよ」

真美「んーと…じゃあ、オムライス!」

「かしこまりました」

しばらく待っていると、カウンターの奥から、オムレツの乗ったチキンライスが差し出される。

「」スッ

奥の人が、ナイフでオムレツに切れ目を入れる。

ドロォ

チキンライスの上でオムレツがパカっと開き、半熟の中身がドロドロと溢れ出す。

「どうぞ」

真美「おお、うまそー!」

28: 2014/11/22(土) 23:49:31 ID:aXb81BMI
ガタン

バッ

席に着くと、テーブルの上に置いてあるケチャップを手に取る。

真美「オムライスにケチャップたっぷりかけて~」ギューッ

パクッ

真美「うむうむ、ほのかなバターの香りがなんとも言えなくて…ライスとの組み合わせ…相性が…なんとも言えない、うまい!」

シーン…

真美「………」

真美「あのさ、ここの料理美味しいね!」バッ

「え…は、はぁ…」

真美(む~…なんか、美味しいのにあんまり楽しくない…)

「………」モグモグ

「…………」ズーン…

真美(よく見てみると…周りのみんな、あんまり楽しそうじゃないなぁ)

真美(いきなし知らない所に連れて来られて、怖がってんのかな)

29: 2014/11/23(日) 00:04:20 ID:hoZqGgjo
??「真美」

真美「?」クルッ

横から声をかけられ、振り向く。

貴音「真美も、ここにいたのですね」

真美「あっ…お姫ちーん!」ガバッ

席を立ち、飛びつく。

貴音「おっと」ガシ

真美「ああ、よかったぁ…みんなともう会えないんじゃないかって思ったよ…」

貴音「私も…真美に会えてよかったです」スッ

テーブルの上からナプキンを拾い、真美の口を拭いた。

真美「会えてよかったって、他のみんなは?」

貴音「いえ。先程から捜索していたのですが、見つけられたのは真美だけです」

真美「あ、そうなんだ…」

貴音「ふふ、真美は賑やかなのですぐわかりましたよ」

30: 2014/11/23(日) 00:22:14 ID:hoZqGgjo
貴音「真美は今まで、どこにいたのですか?」

真美「んっとね、自分の部屋にいたよ。さっき起きたばっかり」

貴音「なるほど」

真美「お姫ちんは、どれくらい前から起きてたの?」

貴音「2時間ほど前でしょうか。皆を捜し大浴場、娯楽場と回り、この食堂に落ち着きました」

真美(娯楽場? ゲーセンかな?)

貴音「皆は、どこへいるのでしょう…」

真美「もしかしたら、真美みたいにまだ起きてない人もいるのかも」

貴音「そうならいいのですが」

真美「しばらくここで待ってようよ。オムライスもまだ途中だし」

貴音「そう言えば、ここにいてわかったことがひとつ…」

真美「え、わかったこと?」

貴音「ここの料理人は腕利きのようです」

真美「たはっ」ガクッ

31: 2014/11/23(日) 00:25:20 ID:hoZqGgjo
「あ、あの!」

真美「ん?」

「765プロの双海真美ちゃんに四条貴音さんですよね…?」

真美「あ、うん! そだよ」

貴音「私達になにか?」

「こ、これって、なにかの番組の企画でしょうか!?」

真美「へ? 番組の企画?」

「私、怪しい人達に攫われて、気がついたらここにいて…でも、誘拐だとしたらこんな待遇おかしいじゃないですか!」

真美「えっと…」

貴音「申し訳ございません、私達もなにも聞かされていないのです」

「う…そ、そうなんですか」

貴音「ですが、何か危害を加えるような意思は感じられません」

真美「だから、安心していいと思うよ」

「…ありがとうございます」

32: 2014/11/23(日) 00:33:42 ID:hoZqGgjo
真美「今の子も『スタンド使い』なのかな?」

貴音「だと思います。しかし…」

真美「?」

『きゃああああああっ!!』

ザワッ

真美「今の…悲鳴!?」

貴音「向こうの…玄関の方向ですね」

ゾロゾロ

真美「うわ、みんな野次馬根性あるなぁ」

貴音「我々も行きましょう」

33: 2014/11/23(日) 00:48:25 ID:hoZqGgjo
ザワザワ

「………」グッ

「うーっ、うーっ…」

玄関に着くと、女の人が職員らしき人物に押さえつけていた。

真美「助けないと…!」

貴音「待ってください、真美」

真美「お姫ちん?」

「ちょっと、何やってんの!?」

「こ、怖い…」

ザワザワザワザワ

周りの野次馬達が騒ぎ立てる。

職員「いいか!」

シーン…

一瞬で静まり返った。

34: 2014/11/23(日) 01:02:07 ID:hoZqGgjo
職員「この女は、脱走を企てた!」

真美(あの人知ってる、Sランクアイドルグループ、魔王エンジェルのとう…なんとかさんだ)

貴音(東豪寺麗華…? 彼女のような大物アイドルも、ここに連れて来られていたのですね)

麗華「なにが脱走よ、ちょっと外の空気でも吸おうと思っただけじゃない!」

職員「だとしてもだ! 我々の許可、監視なく外に出ることは許されない!」

麗華「チッ、いつまで触ってんの、放しなさいよ!」

職員「反省の色が見られないな…」

ズッ

真美「! スタンド…」

ガッ!!

麗華「う! ………」ガク

職員のスタンドに拳を叩き込まれ、麗華は気絶した。

35: 2014/11/23(日) 01:11:05 ID:hoZqGgjo
「な、なにあれ…?」

「何か出た…」

「あれは…」

ザワザワザワ

真美「あれ…? みんな、スタンドのこと知らないの…?」

貴音「…見える以上、『スタンド使い』ではあるのでしょうが」

真美「スタンドを見たことがない? 自分で使ったこともないのかな?」

貴音「スタンドは、戦おうとする強い精神が必要なものです」

貴音「彼女達は、恐らく『スタンド使い』と戦う機会がなかった。使う必要もなかったのでしょう」

真美「そっか、真美達ははるるんがいたからこうやってスタンドを使えるけど、そうじゃなかったら…」

真美「ここに連れて来られた時も、何がなんだかわからないうちに捕まっちゃったんだろうね。765プロにもいっぱい『偽物』が来てたし」

貴音「中には、扱える…あるいは無意識に扱っているような人もいるのでしょうが、そうでない者も少なくないようですね」

職員「静かに!」

36: 2014/11/23(日) 01:15:19 ID:hoZqGgjo
職員「諸君の生活は保証する! 望むものがあればそれも用意する!」

麗華「………」

職員「しかし、この者のように脱走や反乱を企てるなら…」

職員「えーと…」ゴソゴソ

ピラッ

ポケットの中から紙を一枚取り出し、見る。

職員「そうだ、3日間、独房に入ってもらう!」

「独房…? どこかに閉じ込められるの!?」

「それより、脱走は許さないって…もしかして、ずっとここで暮らせってこと!?」

「そ、そんなわけないでしょ? 番組のドッキリよ! そのうち出られるわよ!」

ザワザワ

ザワザワ ザワザワ

37: 2014/11/23(日) 01:30:51 ID:hoZqGgjo
黒服「」ザッ ザッ

二人の黒服がやってきて、麗華をどこかに連れ去っていく。

真美「やっぱり、あいつら真美達をここから出す気はないようだね」

真美「『偽物』と入れ替えさせて、本物はここで一生暮らせって…そういうことなんだよ」

貴音「それより、真美」

真美「?」

貴音「今、気になる言葉が聞こえましたね。独房とか」

真美「うん。ここの部屋みたいなフカフカのベッドなんかないよ、きっと」

貴音「もしかしたら、765プロの皆がいるかもしれません」

真美「あ、そっか! みんな、こんなところでじっとなんてしてられないもんね」

真美「いおりんなんか、『この伊織ちゃんをこんな狭いところに押し込むなんて!』とか言って何回も捕まってそうだし!」

貴音「そうでなくても、先程の麗華嬢など、ここから出ようとする者…我々に協力してくれる者はいるでしょう」

38: 2014/11/23(日) 01:41:56 ID:hoZqGgjo
真美「それじゃ、さっきの黒服を追いかけよう!」

貴音「尾行ですね。しかし、敵は大勢います。気づかれないよう」

貴音「まず、そこの職員の目を誤魔化す必要がありますし、外にも見張りがいるでしょうから…私の『フラワーガール』で…」

真美「いや、大丈夫だよ。待っててお姫ちん」

貴音「?」

真美「あああああああああああ!!」

ザワッ

真美「やだよ!! 一生ここに閉じ込めるん気なんだ! おうちに帰してよっ!!」

………

「いやあああああああっ!!」

「出して、帰して!!」

「嫌っ! なんでこんなことに…!!」

真美が叫ぶと、蜂の巣をつついたように騒ぎが大きくなる。

39: 2014/11/23(日) 01:47:08 ID:hoZqGgjo
ギャーギャー

職員「お、落ち着いてください! 騒ぐな! お前達も独房に入りたいか!」ズズッ

「さっきの変なので押さえつける気よ!」

「やめて! あああああっ!」

貴音「これは…」

真美「さ。お姫ちん、ドアの前に」

タタッ

「何事だ、騒がしい!」ウィーン

自動ドアが開き、外で監視していた職員が建物の中に入ってくる。

貴音「」スッ

真美「」ススッ

それと入れ替わるように、二人はこっそりと外に出た。

46: 2014/11/30(日) 15:14:25 ID:.Z531Mro
ガサッ ガサ

黒服が、森の中を進んでいく。

貴音「真美、足下に気をつけてください」

真美「なんか踏んだりして音出しちゃったら、バレるもんね」

二人は木の陰に隠れながら、その後を追跡していく。

真美「それにしても…ここって、どこなんだろ?」

貴音「どこかの山奥…ですかね」

真美「どこかって?」

貴音「どこか、としか」

真美「ま、そうだよね。全然見たことない場所だし。とりあえず、今はみんなを捜そっか」

貴音「そのためにも、あの者達を見失うわけにはいきませんね」

47: 2014/11/30(日) 15:32:21 ID:.Z531Mro
しばらく後をつけていると、コンクリートの壁が見えてきた。

ギィ…

黒服達は、壁の根元にある扉を開け、その中に入っていった。

バタン

貴音「これが牢獄…なのでしょうか」

真美「結構でかいね。3階建てくらい?」

貴音「それほど多くの者の収容を想定しているのでしょうか? それとも…」

真美「なんでもいいよ、おっじゃましまーす」キィッ

真美が扉を開け、中に飛び込んでいく。

貴音「真美、気をつけて」スッ

バタン!!

貴音「!」

真美「え?」

二人が中に踏み込んだ瞬間、扉が勢いよく閉まった。

48: 2014/11/30(日) 15:39:50 ID:.Z531Mro
ゴゴゴゴゴ

真美「んーっ、開かない…」グググ

貴音「真美、下がってください」

ヒュ

ドォォン

『フラワーガール』が扉を叩いた。

真美「やったか!?」

シュゥゥ…

貴音「固い…」

ヒュン

ガァン!

横の壁を殴りつけるが、びくともしない。

貴音「壁も…『フラワーガール』で破壊できないとなると、かなりの強度ですね」

49: 2014/11/30(日) 15:50:31 ID:.Z531Mro
真美「これって、まさか、閉じ込められちゃった!?」

貴音「」キョロキョロ

建物の中を見渡す。

貴音「ここは、牢獄…には見えませんね」

真美「そだね、3階建てだと思ってたけど、上の方までずっと吹き抜けになってるし」

真美「並んでるのも、オリじゃない。棚かな?」

カッ カッ

棚の一つに向かって歩いていく。

貴音「ふむ、箱が並んでいますね。中身は…美容品ですか」

真美「こっちには服が置いてあるよ、こんないっぱい」

貴音「倉庫…?」

50: 2014/11/30(日) 16:03:06 ID:.Z531Mro
真美「あいつらもここに入ってったよね? ろーや目指してたんじゃないの? なんでこんなところに…」

貴音「それは、恐らく…」

??「そう!」

二階の棚の陰から、黒服の一人が姿を現す。

??「ここに来たのは、お姫ちん達を閉じ込めるため」スチャ

そう言いながら、サングラスを外す。

真美「!」

真美(遠くからじゃよくわかんなかったけど、あの顔は…)

亜美「そして…叩きのめすためだよ」

貴音「亜美? いや…」

真美「『偽物』…」ギロッ

アミ「おっと、真美なら『ワープ』できないからわかるよね?」

真美「『スタートスター』で調べるまでもないよ。本物の亜美じゃあないなんて、一目見ればわかる」

貴音「やはり、我々の追跡に気づいていたようですね」

アミ「そりゃ、あんな音立てながらじゃね。耳はいいんだよ、アミ達」

51: 2014/11/30(日) 16:13:52 ID:.Z531Mro
真美「んっふっふっ」

アミ「? 何笑ってんのさ、真美」

真美「ちょっち安心したんだよ」

アミ「安心?」

真美「『偽物』がここにいるってことは、亜美は入れ替わってないってこと…無事だってことだよね?」

アミ「んー、そうタンジュンなことでもないんだけどね」

貴音「?」

アミ「向こうじゃ色々と苦戦してるみたいでさ、まだ、765自体が落ちてないらしいんだよ」

貴音「ほう」

真美「おおっ、まだみんな頑張ってるんだ!」

アミ「でさ、せっかく捕まえた真美やお姫ちんも…こうして大人しくしないで、出てくるからさ…」

アミ「やっぱ、765プロはテッテー的に叩いておかないとダメだと思うんだよね、アミは」

貴音「………」

52: 2014/11/30(日) 16:21:50 ID:.Z531Mro
真美「魔王エンジェルのお姉ちゃんは?」

アミ「他の人に運ばせたよ」

貴音「他の人…ですか」

アミ「今、倉庫の裏口から出て行ったところじゃないかな?」

貴音「なるほど。では…」

貴音「貴女をすぐに倒して追いかければ、間に合いそうですね」

ゴゴゴゴゴ

アミ「いいや、アミ達には勝てないよ!」

マミ「そう、マミ達二人にはね!」バッ

アミの後ろから、もう一人の黒服が飛び出してくる。

真美「真美の『偽物』…!?」

貴音「もう一人も潜んでいましたか」

53: 2014/11/30(日) 16:31:55 ID:.Z531Mro
真美「二人で来るってことは、『スタートスター』みたいに二つで一組のスタンド!?」

マミ「違う違う、二人じゃないと使えないようなケッカン品と一緒にしないでよ」

真美「ケ…ケッカン品!?」

アミ「アミのスタンドはどんなものも破壊するさいきょーのホコ!」

マミ「マミのスタンドはどんな攻撃も効かないさいきょーのタテ!」

アミ・マミ「「いわば、さいきょーのホコタテ!」」

貴音「では、互いに攻撃したらどうなるのですか?」

マミ「おっと、その手は食わないぜダンナ!」

アミ「そう、さいきょーとさいきょーが一緒になればもっとさいきょーなのさ!」

マミ「しかも、こっちにとって怖いのはお姫ちんだけ。真美は、亜美がいなけりゃ役立たずだもんね?」

真美「む…」

アミ「さぁお姫ちん、二対一でアミ達に勝てるかな!」

貴音「二対一、ですか…」

54: 2014/11/30(日) 16:40:29 ID:.Z531Mro
アミ「行くよ、アミのさいきょーのスタンド!」ズズズ

吹き抜けの柵から身を乗り出し、スタンドを出す。

頭部が巨大なレンズになっており、腹部から大砲の筒が飛び出している。

アミ「そして喰らえッ、アミのさいきょーの攻撃!!」コォォォォォ…

レンズが周囲から光を吸い込み、スタンドの体が輝きだした。

真美「! ヤバいよお姫ちん、何かチャージしてる!」

貴音「………」

アミ「『デイブレイク…』!」カッ

貴音「『フラワーガール』」

ヒュォッ

『フラワーガール』が、貴音の下から一瞬で、アミの目の前まで距離を詰める。

アミ「え?」

55: 2014/11/30(日) 16:41:45 ID:.Z531Mro
アミ「何…」

ボギャ

アミ「ぐびゃ!」ドヒュゥゥーッ

マミ「は」

殴り飛ばされ、アミの体はマミの横を飛んでいき…

バギャア!!

後ろの棚に叩き込まれた。

アミ「うぐっ ぐぅぅ…」

マミ「………へ?」

真美「」ポカン

貴音「確かに…」

貴音「これで二対一ですね」

56: 2014/11/30(日) 16:48:07 ID:.Z531Mro
マミ「………」クルッ

アミ「」ピクピク

マミは振り返ってアミを見たが、動けそうもなかった。

貴音「さて、これで最強の矛とやらはなくなったわけですが」

マミ「!」バッ

向き直ると、『フラワーガール』が目の前に迫っていた。

貴音「貴女にも…倒れてもらいます」

ヒュッ

マミに向かって真っ直ぐと突きを繰り出す。

マミ「くっ…『マイルド・スノー』ッ!!」

ボスッ!!

貴音「ん!」

グ グググ

マミ「はーっ…」

『フラワーガール』の拳は、『雪』の盾に阻まれていた。

57: 2014/11/30(日) 17:06:19 ID:.Z531Mro
真美「あれは…あれが真美の『偽物』のスタンド…?」

マミ「『マイルド・スノー』」

貴音「」スッ

ドスゥ!!

もう片方の手で、雪の盾を殴る。

ググ…

貴音(破れない…)

グリグリ

貴音(力を加えるほどに固まり、強固になる…雪のような性質を持つスタンド…)

マミ「………」ス…

サッ!

雪が攻撃を防いでいるうちに、棚の陰に隠れていった。

58: 2014/11/30(日) 17:15:39 ID:.Z531Mro
真美「引いた…?」

貴音「なら、深追いする必要もないでしょう。我々も、裏口に向かい…」

『フラワーガール』を下げようとするが…

貴音「…!」

真美「お姫ちん?」

グググ グググ

貴音「手が…『雪』に覆われている…!? これでは動けない…」

貴音(押さえつける力が強い…これを振り払うには、射程距離が遠すぎる)

真美「お姫ちん、大丈夫!?」

貴音「真美、こちらは私がなんとかします! 追跡を!」

真美「あ…うん!」ダダダ

倉庫の奥に向かって走っていく。

59: 2014/11/30(日) 17:46:15 ID:.Z531Mro
ス…

貴音「!」

『フラワーガール』の手を覆っていた雪が、離れ…

ヒュン ヒュヒュン

次々と、真美の方へと向かって行く。

貴音(何…)

真美「へ?」

貴音(本体を先に倒すか…いえ、隠れられてはここからでは正確な場所が分からない…)

貴音「『フラワーガール』!」ギュオン

『フラワーガール』がすぐさま雪を追い抜き、真美の前に立ちはだかった。

ビタ! ビタ ビタッ

貴音「く…」

雪が、スタンドの体を埋めるように張り付いていく。

60: 2014/11/30(日) 18:01:18 ID:.Z531Mro
グググ

『フラワーガール』がどんどん雪に覆われていく。

貴音「ぐっ」ドサッ

貴音が膝を着いた。

貴音(重い…ぶつかった衝撃などはほとんどありませんが、質量に押し潰される…)

真美「お姫ちん!」

貴音「真美…行ってください」

真美「でも…」

貴音「私達には多くの仲間が必要です…まずは、牢獄の場所を突き止めることが重要なのです」

貴音「例え私が敗れても、それさえわかっていれば…真美さえ無事なら、ちゃんすはある」

真美「………」クルッ

タタタ

真美は『フラワーガール』に背を向け、走った。

61: 2014/11/30(日) 18:08:10 ID:.Z531Mro
ガシッ!!

棚からスコップを見つけ、手に取る。

真美「」グッ

貴音「真美…!?」

真美「『スタートスター』!」

再び、雪に覆われた『フラワーガール』の前に立つと…

真美「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」ズバッ ズバッ

『スタートスター』が、スコップで雪をかき出していく。

ズボッ

貴音「………」バラッ

『フラワーガール』が薄くなった雪の層を突き破り、払った。

62: 2014/11/30(日) 18:44:05 ID:.Z531Mro
真美「」タッタッタッ

真美が、貴音の下へ戻ってくる。

貴音「真美、何を…」

真美「バーカ、お姫ちんのバーカ!」

貴音「ば…馬鹿…?」

真美「なんとかするって、全然なんともなってないじゃん!」

貴音「それは…それより真美、何故戻って来たのですか!」

真美「お姫ちんが、真美をかばったからだよ!」

貴音「はい…?」

真美「お姫ちんが真美に行けって言ってくれた時、真美を信じて送り出してくれたんだと思った」

真美「でも、なんでさ! 真美の前に立って攻撃受けて、そんなのピンチになるに決まってんじゃん! 真美にはあれくらいも防げないって思ったの!?」

貴音「ち、違…」

63: 2014/11/30(日) 18:44:50 ID:.Z531Mro
真美「ねぇ、真美ってそんなに頼りない? お姫ちんも、亜美がいなきゃなんもできないって思う!?」

貴音「真美、落ち着いてください…」

真美「落ち着いてないのはお姫ちんの方だよ!!」

貴音「は…」

真美「真美を逃がして…それからどうするつもりだったのさ」

貴音「…捕まる、でしょうね。しかし私が独房に放り込まれたとしても、真美がいるなら脱出できるかもしれません」

真美「それまでに、お姫ちんが何されるかなんてわかんないじゃん!」

貴音「私は平気です。覚悟は…しております」

真美「なんでそんな弱気なのさ! 負けることなんて考えちゃダメじゃん!」

貴音「私とて負けたいなどとは思っておりません! ですが、あのスタンドは…」

貴音「あの雪のスタンドには私の攻撃が通用しませんでした…そして集まれば『フラワーガール』を押さえ込むほどの力…」

貴音「私でも確実に勝てるかどうかはわかりません…それならば、二人とも捕まるという最悪の事態だけは避けなければ…」

真美「二人でも、あいつに勝てないってそう思ってるの?」

貴音「それは…」

64: 2014/11/30(日) 18:47:50 ID:.Z531Mro
真美「勝とうよ」

貴音「………」

真美「『ワープ』できなくて、ちょっち頼りないかもしんないけどさ…なんにもできないわけじゃないよ」

貴音は、『フラワーガール』を見る。

貴音(真美は…雪に押し潰されそうだった『フラワーガール』を助け出してくれた)

貴音(今の『すたぁとすたぁ』は無能力…しかし無力ではない、ですか)

真美「もっと真美のこと、頼ってよ。仲間なんだからさ」

貴音「…時間がありません。すぐに彼女を倒し、目的を遂げなくては」

真美「………」

貴音「真美」

真美「ん」

貴音「行きましょう。そうですね、二人ならばきっとできます」

真美「もち! 気合いフルパワーでやっちゃうもんね!」

68: 2014/12/07(日) 00:23:34 ID:wePvZUL6
プルプル

真美「! 真美がかきだした雪が…」

ビュバ!

真美「うわ、飛んできた!」

貴音「『フラワーガール』」ヒュ

ガシ!

『フラワーガール』が、真美の服を掴み…

真美「わわわっ」ポーイッ

ボフッ

近くの棚に積まれている布団まで、投げられる。

貴音「」ガシッ

ボスッ

『フラワーガール』は真美が放したスコップを空中で空中で掴み、『雪』を受け止めた。

69: 2014/12/07(日) 00:28:57 ID:wePvZUL6
ボスッ ボササッ

みるみるうちに雪が集まってきて、スコップの先がどんどん白くなっていく。

真美(あっ!)

貴音「く…」グッ

真美(お姫ちんが押されてる…)

真美(また真美を助けようとして…もう!)バッ

貴音「」サッ

真美(へ?)

立ち上がろうとしたが、貴音が目で制止する。

貴音「」スッ

真美(口に指を当てて…喋るなってこと?)

70: 2014/12/07(日) 00:36:34 ID:wePvZUL6
貴音「………」ググググ

グバァ!

ガラン ガラッ

圧力に耐えられず、いや『フラワーガール』が自分からスコップを手放し、地面に滑るように転がっていった。

真美「………」

貴音「よし」ボソ

スゥ

貴音が『フラワーガール』を仕舞う。

ズバババ!

スコップに取り憑いていた『雪』が、『フラワーガール』のいた場所に飛びかかるが…

スカッ

そこには何もなく、空を切った。

71: 2014/12/07(日) 00:48:25 ID:wePvZUL6
ズム…ズム…

『雪』は所在なさげに彷徨い始める。

貴音(相手は上の階、しかも棚の陰に隠れている)

貴音(この『雪』には、律子のスタンドのように目がついているようには見えない。どうやって我々の位置を確認しているのか知りたかったのですが)

ウロウロ

貴音(この様子だと、スタンド自体に探査能力はない…そして、見えない場所にいる本体が得ることのできる情報と言えば)

真美(音だ! 真美達が動く音を聞いて、あいつは攻撃してきてるんだ)

真美(あんまり、正確にわかってる感じじゃないけど。量にものいわせて、それっぽい場所にどんどん叩き込んでくるつもりだ)

真美(今のお姫ちんの動きで、あいつは真美達の場所をパーペキに見失ったみたいだけど)

ズモモモ…

真美(でも、こっからどうすんのさお姫ちん!? 真美達はこっから動けないし、あの『雪』は真美達を捜してる! 触られたら、もしかしたら場所だってバレちゃうかもしんないよ!)

72: 2014/12/07(日) 00:55:36 ID:wePvZUL6
真美(相手からこっちが見えないって言っても、こっちからも見えないんじゃ…)

ガシッ

真美「あれ?」

再び、真美が『フラワーガール』に身体を持ち上げられる。

貴音「よろしいですね、真美?」ボソ

真美「え、ちょっとタン」

ギュン!!

真美「ひああああああ!!」

『フラワーガール』は真美を抱いたまま、凄い勢いで二階まで移動していった。

真美「うぅ…」

ゴゴゴ ゴゴゴ

真美(そっか、『フラワーガール』に乗ってけば真美は音もなく上まで来れる)

真美(真美が見つけるんだ、あいつの姿を! そんで、お姫ちんに教える!)

73: 2014/12/07(日) 01:04:14 ID:wePvZUL6
スゥ…

『フラワーガール』は、ゆっくりと幽霊のように前方に向かっていく。

真美(あ、ちょっとダメダメ。ぶつかっちゃうよ)スッ

棚に衝突しないよう、真美が軌道修正しながら棚の間の通路を通る。

真美(さーてと。かくれんぼの時間だよん、んっふっふ~)

真美(おっと、棚ん中に隠れてるかも。ダンボールとかも気をつけて見なきゃ)

真美は見回してマミの姿を捜す。

一つ、二つと順番に、並行にいくつも並んでいる棚を隅々まで舐め回すように見ていく。

真美(次の棚が最後か。行き止まりだね、そこの棚の陰に…いる!)

『フラワーガール』を操作しながら、二階の一番奥にある棚の陰を覗き込んだ。

真美「そこだっ!」バッ

・ ・ ・ ・

しかし、そこには誰もいなかった。

74: 2014/12/07(日) 01:10:55 ID:wePvZUL6
真美「…あり?」

真美(見逃した? いや、音はしなかった…こっから逃げたとしても、足音がしないなんて…)

真美(もしかして、あれは真美の『偽物』じゃなくて…忍者!?)

ズゥン!!

真美「わ!?」

下の階から、地鳴りの音が聴こえた。

真美「な、なに今の音は…? 下の階から…」

ゴロ…ゴロゴロゴロ

真美「何か転がってる…? 『雪』、転がる…まさか…」

真美「ヤバい、お姫ちんっ! スタンド戻して!」ドンドン

『スタートスター』で『フラワーガール』の肩を叩くが、反応はまるでなかった。

75: 2014/12/07(日) 01:24:41 ID:wePvZUL6
マミ「んっふっふ~。よ~しよし、上手くいったかな~?」

吹き抜けになっている倉庫のさらに上、三階。そこにマミはいた。

マミ「お姫ちんの場所はわかんないけど、一階からは動いてない…だったら、『マイルド・スノー』の大雪玉で一気に押し潰しちゃえばいいんだ!」

マミ「倉庫の中荒らしちゃうから怒られちゃうかもしんないけど…ま、今更だよね~」

ズズゥン…

マミ「ん、部屋にコロコロするやつかけるみたいに、隅々まで雪玉で潰し終わったみたいだね」ヒュルルル

『雪』が、マミのもとに戻ってくる。

マミ「これでお姫ちんは片付いたはず。『本物』の真美はほとんど無力…もうラクショーっしょ」

マミ「うーん…でも、下がどうなってるかわかんないし、念のためもう2、3回かけよっかな?」

??「それには及びませんよ」

マミ「はっ!?」クルッ

ドグォ!!

真美「お…」

グ…ググ…

咄嗟に出した『雪』の盾が、襲来者の拳を防いだ。

76: 2014/12/07(日) 01:30:08 ID:wePvZUL6
ズモモ

シュバッ

『雪』で捕らえようとすると、すぐに引いていった。

マミ「な、何奴…!?」

貴音「なるほど、さらに上に登っていたのですね」

真美「真美が見つけられないわけだ」

マミ「ぬわ、なんでっ!? どうやって!?」

真美「ふつーに、階段登って」

マミ「そーじゃなくて、いつの間に!? ここに近付いてくる音はしなかったのに!」

真美「聞こえるわけないっしょー。雪玉ゴロゴロする音に棚が倒れる音…二階にいた真美までうるさく聞こえてたよ?」

貴音「あれほどの音の中ならば、気づかれず堂々と行動できます」

マミ「はっ、そっか! しまった!」

77: 2014/12/07(日) 01:39:27 ID:wePvZUL6
貴音「『フラワーガール』」ヒュン

マミ「わわっと!」

ガッ!!

貴音「む…やはり、防御が固い…」

マミ「ふふん…お姫ちんの『フラワーガール』でも、マミのさいきょーの盾…」

マミ「『マイルド・スノー』は、壊せないみたいだね」

真美「そだね」ダッ

マミ「!」

『フラワーガール』の攻撃を防ぐマミの横から、真美が向かってくる。

貴音「そのスタンド…伊織の『スモーキー・スリル』と少々似ておりますが、彼女のように器用なことはできないと見ました」

真美「真美の『スタートスター』! パワーはちょっち足りないけど、スピードは充分! 倒れるまで叩き込むッ!」

78: 2014/12/07(日) 01:45:22 ID:wePvZUL6
マミ「く…」

バッ

『フラワーガール』に対するガードを残したまま、マミは奥の棚に逃げ込む。

真美「隠れても無駄無駄無駄無駄ァ! そっちは証明写真、行き止まりだよッ!」

貴音「正真正銘…ですか?」

真美「そう、それ!」ダダダ

真美は鼠を追い込む猫のように、奥に駆け込んでいく。

「はっ…」

マミの姿を捉えると同時…

真美「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃWRYYYYYYYYYYYYYYY」ズバン バババババドババババババ

真美「やっ!!」ギュオッ

「おぶっ!!」グシャ

ドゴン!!

ラッシュを叩き込み、ブッ飛ばした。

79: 2014/12/07(日) 01:54:07 ID:wePvZUL6
サラ…サラサラ…

真美「わお、砂になった…!?」

貴音「!」

『フラワーガール』の手元から、『雪』が消える。

貴音「ふぅ…どうやら、これで決着がついたようですね」

真美「うえー。さっきまで喋ってたのが、目の前で砂になられると、なんか…」

貴音「彼女達は、『敗北』を認めると砂になってしまうのです。人が呼吸をせねば生きていけぬように、食事を摂らねば生きていけぬように…それが、彼女達の在り方なのでしょう」

真美「そういうもの、ってこと?」

貴音「はい、なので真美が気に病むことはありませんよ。兎に角…」

真美「うん…うん! 真美とお姫ちんで掴み取った勝利だね!」

80: 2014/12/07(日) 02:00:01 ID:wePvZUL6
「まだだよ」

真美「へ?」

貴音「何?」

ダダダダダ

棚の奥から、雪崩が起きた。

真美「な、なんじゃー!?」

貴音「く、『フラワーガール』!」バッ

マミ「やめときなよー、お姫ちん。もうそろそろ限界っしょ?」

棚の上からひょこっと、マミが顔を出した。

真美「え…なんで!? 今、砂になったはずじゃ…」

マミ「ああ、あれ? マミじゃないよ、アミだよ。気失っても砂になんなかったからね、連れてきたんだけど…」

マミ「まさか、こうやって役に立ってくれるとは思わなかったよー。んっふっふ~」

真美「…!」ギリッ

81: 2014/12/07(日) 02:07:50 ID:wePvZUL6
真美「亜美は、双子でしょ…」

マミ「双子? そっちはそうかもしんないけどさ、マミにとってはぜーんぜんカンケーないんだよね」

真美「それでも…『偽物』でも、亜美を身代わりにするなんて…!!」

マミ「何怒ってんの? アミを倒したのは、そっちの真美じゃん」

ドドド ドドド

貴音「真美、怒る気持ちはわかります。ですが、その前に目の前の脅威をどうにかしなくては」

真美「…う、うん。わかった…」

ドドドド

貴音(雪の津波とでも言うべきでしょうか。これで下の階まで押し流すつもりでしょうね)

貴音「すぅ、はぁ…」

タラ…

貴音の額から、汗が滑る。

82: 2014/12/07(日) 02:17:52 ID:wePvZUL6
貴音「『フラワーガール』」ヒュ

ドドドドド

ズボッ!!

『フラワーガール』の腕が、迫り来る雪の壁を貫いた。

貴音(この雪の津波、規模が大きい分…密度は薄い)

だが、それだけだ。雪崩は止まる事なく迫り続け、『フラワーガール』ごと押し出そうとする。

貴音(今の私に、これを突破できる力は、もう既に残されていないようですね…)

真美「うりゃ!」ドス

バシィッ

真美「駄目だ、『パワー』が違いすぎる…!」

真美も『スタートスター』で壁を突破せんとするが、逆に腕を弾かれてしまった。

83: 2014/12/07(日) 02:30:54 ID:wePvZUL6
マミ「それそれ、流されちゃえー!!」

ズザザザザザ

雪の壁が、真美と貴音をどんどんの手前の吹き抜けの方へと押していく。

真美「うぅ、ヤバい…!」

真美(このままだと、柵通り越して落とされる…こっから落ちたら、直で一階…ただじゃ済まない…!)

真美(もう、ダメだ…!)

貴音「真美」

真美「…お姫ちん?」

貴音「この『雪』には逆らえない…もう、落ちるしかない…そう思っているのですか」

真美「…悔しいけど…その通りだよ。もう、どうしようもない」

貴音「真美。弱気にならないでください、負けることなんて考えてはいけません」

真美「………」

貴音「勝ちましょう。二人ならば、きっとできます」ニコ

二人は、宙に放り出された。

84: 2014/12/07(日) 02:37:26 ID:wePvZUL6
真美「うあああああああ!!」

真美(落ちる、氏ぬ! どうにか…しなきゃ!)

貴音「真美、スタンドを!」

真美「!」ドォン

『スタートスター』を出し、貴音の方に手を伸ばす。

ガシッ

貴音が『スタートスター』の手を取ると…

グッ!!

貴音は『フラワーガール』で、三階の柵を掴んだ。

ズドドドドド

雪崩が、下の階へとなだれ落ちていく。

貴音「ぐ…」ググ

一緒に流されそうになるが、貴音は必氏に、柵と真美から手を放そうとしなかった。

85: 2014/12/07(日) 02:48:44 ID:wePvZUL6
真美「よし、こっから二階に…」

真美は、下の階へと飛び移ろうとするが…

貴音「待ってください、真美」

真美「ほぇ?」

貴音「もしもここで三階に上がれなければ、もう奴は上の階に登らせるような真似はしないでしょう」

貴音「まず階段を潰してくる…そしてどこへ行こうとも、なりふり構わず押し潰してきます」

真美「じゃあ…どうすんのさ」

貴音「こう…するのです!」グイッ

真美「わーっ!?」グイン

遠心力をつけ、真美の体が上の階まで引っ張り上げられた。

86: 2014/12/07(日) 02:55:41 ID:wePvZUL6
真美「いた!」ドサ

三階の床に尻をつく。

マミ「あ…? なんだ、戻って来たんだ」

真美「くっ」クルッ

マミなど眼中にないかのように、真美は振り返って柵に捕まっている貴音に手を伸ば

真美「お姫…!」

そうと、して

貴音「………」

その手が、空を掴む。

『フラワーガール』が花弁を閉じ、『つぼみ』になった。

真美「ち…ん…」

身体を支えるものがなくなった貴音は、下へと落ちていった。

87: 2014/12/07(日) 03:00:52 ID:wePvZUL6
真美「………」ヘタッ

真美は、その場に崩れ落ちた。

マミ「お姫ちんは…助からなかったみたいだね?」

ヒュルルルォ

下の階から、落ちていった『雪』がマミの下へ戻ってくる。

マミ「それにしても、お姫ちんも…真美を助けてどうするつもりだったんだろ?」

真美「お姫ちん…」

マミ「どーせ真美なんて、もっかい落として終わりなのにさ」

真美「………」ムクッ

真美は、立ち上がった。

マミ「ありゃ、まだやる気あるんだ? 一人じゃあ何もできないクセに」

真美「何もできない…?」

88: 2014/12/07(日) 03:09:00 ID:wePvZUL6
マミ「だって、そうじゃん。いちおーコンビってことになってたけど、マミなんてアミがいなくてもゼンゼン戦えんのにさ」

マミ「真美は亜美がいないと何もできない、お姫ちんに助けてもらわなきゃ、何もできないじゃん」

真美「そうだよ」

ゴ

マミ「ん?」

真美「真美ってば、しょっちゅー寝坊してさ…亜美や、ママに起こしてもらわないと遅刻しまくっちゃうし」

真美「にーちゃんやピヨちゃんにだって、いっぱいめーわくかけて、りっちゃんにいっつも怒られてるし」

真美「アイドルの仕事でも…ポカやっちゃって、みんなに助けてもらっちゃうことだって、いっぱいある」

マミ「へー、そーなんだ。そういうキオクもあるけど、真美自身から聞くとピチピチ新鮮だねー」

マミ「マミは『完全なアイドル』だからそういうことなんてしないし、よくわかんないけど」

真美「でもさ。それって、そんなに悪いこと?」

ゴゴ

89: 2014/12/07(日) 03:19:53 ID:wePvZUL6
真美「メンドーなこと全部、人に押し付けるのとかは悪いかもしんないけどさ」

真美「真美が寝坊してたら、亜美やママが起こしてくれる」

真美「亜美が寝坊してたら、真美が起こしてあげる」

真美「誰かとお菓子を分けたら、美味しいね、って言い合える」

真美「それって、そんなに悪いこと?」

ゴゴゴゴ

真美「はるるんの『ジ・アイドルマスター』だって、みんなで力を合わせて勝ったんだ」

マミ「………」

真美「一人で最強より、一人で完全より…」

ゴゴゴゴ ゴゴゴ

真美「真美は、そっちの方がいい」

マミ「ふーん、あっそ…」

90: 2014/12/07(日) 03:21:31 ID:wePvZUL6
マミ「それで? ひとりぼっちの真美は、やっぱり何もできないんだよね~」

真美「一人じゃあない」

マミ「?」

真美「真美がここにいるのは…お姫ちんが、助けてくれたから、引っ張り上げてくれたから」

真美「真美は…」

真美(さっき、お姫ちんの手を掴めなかったあの時…)

貴音『………』

真美(お姫ちんは、言ってた。声は出さなかったけど、確かに真美には聞こえた)

『頼りにしてますよ、真美』

真美「真美は、お姫ちんの想いを背負ってる! だから、真美は一人じゃあない!」

マミ「…よくわかんないなぁ」

91: 2014/12/07(日) 03:31:35 ID:wePvZUL6
マミ「なんか背負っちゃってるみたいだけど」

ドバァ!!

先程と同じ…いや、それ以上の大量の『雪』が、真美へと襲いかかる。

マミ「それごと流しちゃえばおしまいっしょ?」

ドドド ドドド

真美「行くよ、『スタートスター』」ズゥン

マミ「そんなスタンドで、何ができんのさ!」

真美「うりゃあ!!」ズドッ

左手を開き、押し出すように雪の壁へと突き出した。

ドドドドドド

真美「く…」

襲いかかる巨大な力の波に、真美は歯を食いしばり、その場で踏ん張っている。

マミ「ほらほら、そんなんじゃお姫ちんの二の腕だよ真美!!」

92: 2014/12/07(日) 03:32:34 ID:wePvZUL6
真美「負けない…!」

ズ ズズ ズズ

マミ「ん?」

マミ(なんか…目の錯覚? 『スタートスター』の手が、でかくなってるような…)

ズズズズズズ

マミ(いや、気のせいじゃない! 『スタートスター』の体が左手に飲み込まれて…)

真美「輝け! 『スタートスター…!!」

マミ(巨大な、『手』に…!?)

ズォォォォォォォ!!

ドドドドドド

・ ・ ・ ・

シュゥゥゥゥ…

雪崩が収まった。

『手』も、その背後にいた真美も、その場から一歩も動いていなかった。

真美「…ジェミー』」

93: 2014/12/07(日) 03:34:05 ID:wePvZUL6
スタンド名:「マイルド・スノー」
本体:フタミ マミ
タイプ:遠隔操作型・不定形
破壊力:D~B スピード:C 射程距離:B(20m程度) 能力射程:B(20m程度)
持続力:B 精密動作性:D 成長性:C
能力:大気中の水分を固めて作り出される、「雪」の性質を持ったスタンド。
凝縮すれば攻撃の衝撃をすべて散らしてしまう鉄壁の盾となる。
スタンド自体にはあまり殺傷力はないため、重さや圧力で押し潰したり、押し流したりして攻撃する。
「雪」のようではあるが触っても冷たくなく、常温。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

99: 2014/12/15(月) 01:46:39 ID:bmyZBzA.
ズゥゥン…

マミ「変わった…」

ギュ!!

真美の前に立ちはだかる『左手』が、塞き止めていた『雪』を握りしめ…

真美「うりゃぁ!!」ビュッ

できた雪玉を、棚の上のマミに投げつける。

マミ「………」

バサッ

真美「ありゃ」

ヒュルル…

雪玉はマミの目の前で崩れ、細かい雪となって彼女の周囲に舞い始めた。

100: 2014/12/15(月) 01:51:34 ID:bmyZBzA.
マミ「当たり前じゃん、これはマミのスタンドなんだよ?」

マミ「余程気が動転してるか、余程のマヌケじゃなければこんなのにやられるはず…」

グッ

話してる間に、目の前に巨大な拳が近づいてきている。

真美「うりゃっ!!」ゴッ

マミ「『マイルド・スノー』」

ヒュッ ヒュルルル

ドグゴ!

雪が盾となり、『ジェミー』の攻撃を防ぐ。

真美「!」

マミ「でかくなった分、速度は遅いね。こんなのは見てから対応できる」

101: 2014/12/15(月) 02:00:27 ID:bmyZBzA.
ズモモ

真美「わわっ」ヒョイ

拳が『雪』に覆われようとしていたので、自分の近くまで引っ込めた。

マミ「んっふっふっふ~、どうしたの? ン? 負けないんじゃなかったの!?」

マミ「スタンドが変わったから…それで何か変わんの!? マミのさいきょーの盾は破れないッ!!」

ビシャッ

・ ・ ・ ・

マミ「…ん?」

『雪』の盾の一部が、弾丸となって真美の足下に飛んだ。

マミ(あれ…? 攻撃なんてするつもりじゃなかったんだけど…何?)

ビュン ビュビュン

ベチャ! グチャ グチャッ

マミ「えっ、えっ!?」

『雪』はマミの意思とは関係なく、勝手に攻撃…ではなく、次々と真美のいる方に引っ張られていく。

102: 2014/12/15(月) 02:05:20 ID:bmyZBzA.
真美「破れたね」サクッ

地面に落ちた『雪』を踏みつける。

マミ(『雪』の盾が…盾に、穴が空いた!)

真美「『スタートスター・ジェミー』!!」ドギュン

マミ「うあああっ!!」

ぽっかり空いた穴に向かって、拳が飛んでくる。

マミ(ガードするには『雪』が足りない…ヤバいっ)

ヒョイッ

マミは、奥の棚へと飛び移った。

ゴォォォォ

真美「んっ」ビタッ

マミの目の前で、『左手』が止まる。

103: 2014/12/15(月) 02:12:55 ID:bmyZBzA.
マミ「ふぅ…っ」

真美「………」

マミ「その…『ジェミー』? あんまり『射程距離』は長くないね。1mかそんくらい?」

マミ(マミの『マイルド・スノー』は遠くからでも攻撃できる。このまま近づかせなきゃ大丈夫…)

真美「」ス…

チャキ

マミ(ん!?)

『ジェミー』が手で銃を作るように、人差し指をマミに向けた。

マミ(あの手…指先に、穴が…)

ドギュン!!

マミ「うげっ!?」

『ジェミー』が指から、弾を打ち出してきた。

104: 2014/12/15(月) 02:19:09 ID:bmyZBzA.
マミ「マ、『マイルド・スノー』ッ」

ダスッ!

残された『雪』をかき集めて、弾から身を守った。

マミ「く~っ、そっちも遠くから攻撃できんのか…油断タイヤキ…」

ズルッ

マミ「あ!?」

かき集めた残りの雪が、『ジェミー』の後方へと飛んでいってしまう。

マミ「こ、このスタンド…この能力は…」

真美「いくよん」ビッ

ダン!

中指を立て、そこから一発の弾丸が放たれる。

マミ「うぐ!」ドス

その一発が、マミの胸へと命中した。

105: 2014/12/15(月) 02:32:48 ID:bmyZBzA.
マミ「ぐあーっ、やられ…」ググ

マミ「って、あんま痛くない…」

ズル!

マミ「うお!?」

足が滑る。棚から落ちそうになったが、天板を掴んでとどまる。

マミ「う…」プルプル

しかし、『完全なアイドル』である彼女も自分の全体重を指だけで支えることはできず、今にも指は離れそうだ。

マミ「こ、この…このスタンド…」グググ

真美「」グッ

真美は上半身をひねりながら、左手で拳を作っている。

マミ「このスタンド、『引っ張る』能力だッ! マミの身体が…『引っ張ら』れるッ!!」ググググ

ズルッ

指が、離れた。

106: 2014/12/15(月) 02:39:32 ID:bmyZBzA.
マミ「うあああああああああああああ!!」

ガン ガンッ

マミの身体が、棚の角にぶつかりながら、真美の方へと飛んでいく。

ガッ

真美は、膝を落とし…

真美「うりゃあっ!!」

ボゴォ

マミ「うげぇ!」

振りかぶるように、その『左手』でマミの全身を撃ち抜く。

ギュルルルルルル

ギャン! ガン ゴン ガン ガン

ドグッバァァーン!!

自分の身の丈ほどもある拳に殴り飛ばされ、マミは回転しながらブッ飛んでいった。

107: 2014/12/15(月) 02:54:23 ID:bmyZBzA.
マミ「が、がふ…」ズル…

奥の壁からずり落ちる。

マミ「ぐ…双海真美…許さな…」

真美「おろ、まだ平気そうだね」

マミ「!?」グンッ

『ジェミー』に殴られた効果で、また身体が『引っ張ら』れる。

真美「じゃ、もいっぱつ」グッ

先ほどと同じように、構えた。

ゴォォォォォ

マミ「マ…『マイルド・スノー』ォォォッ!!」

真美「無理無理、守るための『雪』を集めるより、こっちが殴る方が…」グッ

カウンターを合わせるボクサーのように、一歩踏み込む。

真美「早い!」ヒュッ

108: 2014/12/15(月) 03:04:25 ID:bmyZBzA.
ズルッ

真美「はれ?」フワ…

殴ろうとした瞬間、真美の足が床の『雪』に取られ、体が宙に浮いた。

真美「ぎゃっ!」グギャ!

そのまま、鼻から地面に叩き付けられる。

マミ「おお…っと」ヒュン

マミは真美の上を、柵の上を通り過ぎて、吹き抜けから下に落ちようとしている。

真美「!」

マミ「思ったよりはけっこー、強かったよ真美」

マミ「でも、そのスタンドはあくまでも『近距離パワー型』」

マミ「そっちは弾も届かない下の階からでも、こっちにはいくらでも攻撃手段はある」

真美(雪崩に大雪玉…量さえあれば、このスタンドに射程距離はあんま関係ない…)

真美(このまま下に行かれたら…まずい! かも!)

109: 2014/12/15(月) 03:07:59 ID:bmyZBzA.
真美「『スタートスター・ジェミー』!」ゴウッ

マミ「………」ヒュルルルル

マミの周りに、『雪』が集まっていく。

真美「」バラッ

『ジェミー』は吹き抜けから下に向かって、『4』を作るように構える。

真美「はっ!」

ダン ダン ダダダン

人差し指、中指、薬指、そして小指から一発ずつ、弾が飛ぶ。

マミ「………」

ヒュン ヒュヒュン

弾は4発すべて、マミの横を抜けあらぬ方向に飛んでいった。

110: 2014/12/15(月) 03:13:15 ID:bmyZBzA.
真美「………」

マミ「射的は慣れてない? 全然狙いが定まってなかったけど」

ゴォォォ

下から、何かが飛んでくる。

ォォォォォォォ

『ジェミー』の弾を当てられた缶が、勢いよくマミに向かい打ち上げられている。

ドボォ

しかし、それはマミが背中に出した『雪』の盾に防がれた。

真美「!」

マミ「当たると…思った? わざと外した、なんてバレバレだよ。これが狙いだったんでしょ?」ヒュルル

ガシャ ガシャン

缶は勢いを失い、真下に落ちていく。

ズルッ

真美「………!」

マミは、そのまま雪の上を滑って二階へと降りていった。

111: 2014/12/15(月) 03:20:05 ID:bmyZBzA.
シャン

シャンシャンシャン

真美「うあ、これは…」

頭上に、大量の『雪』が集まってきている。

真美(これを落として、真美を押しつぶす気…!?)

真美(その前に、倒す…! …大丈夫!)ヒョイッ

三階の柵の下から身を出して二階を覗き込み、視線と一緒に『ジェミー』の指を向ける。

真美(どこだろ…?)

真美(また、どこかに身を潜めてるのかな…こっからじゃわかんない)

シャンシャンシャンシャン

真美「…………」

カサ…

ドォン!!

何かが動く音を聞くと同時、弾を撃った。

112: 2014/12/15(月) 03:27:38 ID:bmyZBzA.
ズダン!

弾は地面にぶつかった。

マミ「ふ、んふふ…」

カサ…カサカサ…

音は、破れた包装紙が風で揺れているだけのものだった。

ゴゴゴゴゴ

マミ「ゲームオーバーだよ真美! 『雪』は集まった!」

ドボォォォォ

真美を、三階の全てを落ち潰そうと、空から『雪』の滝が降り出した。

マミ「そっから下まで、頭から落ちてみる!? まだ助かるかもよ!?」

真美「………」ボソ

マミ「え、何?」

真美「『引っ張る』」

113: 2014/12/15(月) 03:34:26 ID:bmyZBzA.
真美「」ズルリ

ギュン!

真美は三階の床から降りると、地面に着陸しようとする飛行機のように、斜め方向で二階へと落ちてきた。

ズズゥゥン…

マミ「何!?」

真美「『ジェミー』の能力は、『引っ張る』んだからさ~」

真美「地面とか、壁とか…動かないものに打ち込めば、真美自身を『引っ張る』こともできる」ギュッ

ミシ…

ギュォォ

『ジェミー』の拳を握りしめながら、真美が突っ込んでくる。

マミ「うっ、く…」

真美「『雪』はないよ! 食らえ、『スタートスター…」

バァァァァン

その時。倉庫三階の床が、抜けた。

114: 2014/12/15(月) 03:39:54 ID:bmyZBzA.
真美「なっ…」

マミ「ふふっ、こんなことはやったら後で怒られるから、したくなかった…『雪』の圧力で、三階ごと壊して埋めるなんてね」

マミ「でも、これでマミの勝ちだ! 三階が落ちてきてもマミは耐えられる…その上の『雪』は、マミのスタンド!」

マミ「この二重の圧力に、真美は耐えられない!」

真美「く…『スタートスター・ジェミー』!!」バッ

真美を守るように、手のひらを上に向ける。

ドザアァッ

真美「う…うお…」

マミ「あははっ、いくら『パワー』があったってねぇ、こんなもんを防ぎきれるスタンドなんてないよ!!」

メキ…メキメキ

上からかかってくる重量で、二階の棚も潰れ始めている。

マミ「さぁ、潰れろ! 潰れてしまえッ、真美ッ!!」

115: 2014/12/15(月) 03:43:25 ID:bmyZBzA.
ビシ ビシビシビシ

ガラァァン

真美「わ!?」

そして、二階も抜け…

ズドドドドドド

ズズゥゥゥゥン…

その上から、膨大な『雪』が辺りを埋め尽くし、倉庫は白く染まった。

シン…

ズボッ

雪原から、腕が生える。

マミ「あーっはっはっはっは!!」ズルルッ

そこから、マミが上に這い出てきた。

116: 2014/12/15(月) 03:51:28 ID:bmyZBzA.
マミ「終わった! 『本物』よりも、私の方が上だった!」

マミ「や、マミの方が上だ! 上なんだ!」

「んぎ…」

マミ「んん~?」

「んぎぎ…ぎぎ…」

マミ「雪の下から声が聞こえるね。生き埋めになってんのかな?」

マミ「そだなぁ、『許してください、出してください』って言えば出してあげるよ? 牢屋行きだけど! あはは!」

「………」

マミ「え、何? 聞こえないよ?」

「下はあなただと、そう言ったのです」

声は、地面からではなく背後から聞こえた。

117: 2014/12/15(月) 04:00:47 ID:bmyZBzA.
マミ「は…」クルッ

ドドドド

貴音「これで…王手、と言ったところでしょうか」

ドドド

マミ「お…お姫ちん!? なんで…」

貴音「私は一階にいたので、二階より上が瓦礫になる前に離れることができ…」

貴音「降り注ぐ雪には『フラワーガール』で穴を空け…ここまで上がって来れました」

マミ「ど、どうして…」

貴音「貴女の『雪』のスタンドです。あれが、私の落ちた真下に敷いてあったので、落ちても大した怪我は負いませんでした」

貴音「そして、先ほどの降雪…量は多いですが、範囲が広いだけに集中している訳ではありませんでした」

貴音「それならば、私の『フラワーガール』は簡単に貫通させられます」

マミ「違う! 聞きたいのはそんなことじゃあない! お姫ちんの体力はもうなかった、『フラワーガール』は使えないはずだよ!!」

118: 2014/12/15(月) 04:04:33 ID:bmyZBzA.
貴音「この倉庫、私達の生活に必要な物資はなんでも揃っていますね」

マミ「え?」

貴音「もちろん、食品の缶詰なんかも…」ポトン

カラン

マミ「缶…詰…?」

真美『はっ!』ダン ダン ダダダン

マミ『当たると…思った? わざと外した、なんてバレバレだよ。これが狙いだったんでしょ?』ヒュルル

マミ「あ、あれは…あれは、マミに攻撃しようとしたんじゃあなくて…」

マミ「真下に落ちたお姫ちんの所に、この缶詰を落とすために…!!」

「そゆこと」フフン

雪の下から、得意げな声が聞こえた。

貴音「缶詰というものはあまり口にしたことはなかったのですが、これがなかなか…」

119: 2014/12/15(月) 04:07:24 ID:bmyZBzA.
真美「確かに真美は、一人じゃあ何もできない。でも…」

マミ「う…」

真美「二人いれば、なんでもできる」

真美「みんながいれば、もっとなんでもできる!!」

貴音「さて…貴女の頼みの綱の『マイルド・スノー』は足下にあります…が」

マミ「………」

貴音「………」

マミ「『マ…」ゴゴゴ

地面から、雪の柱が競り上がろうとするが…

ヒュオッ

スッ

マミ「イルド…」

マミ「すっ」ズグバァ!!

ドサッ

目にも留まらぬ速さで、マミは『フラワーガール』に切り捨てられた。

120: 2014/12/15(月) 04:14:11 ID:bmyZBzA.
サラ…サラサラ

スゥ…

マミが砂になり、『雪』は融けるように消えていった。

真美「うんせ!」ガッシャァァァ

真美の上に積まれていた瓦礫を、『ジェミー』で一気に押しのけた。

貴音「ぐれぇとな相手でした」

真美「でも、真美達のコンビーフの勝ちだね!」

貴音「先ほどの缶詰でしょうか?」

真美「や、そうじゃなくて…えっと…ま、いっか」

121: 2014/12/15(月) 04:27:27 ID:bmyZBzA.
真美(それから…)

真美「ふーっ、ごちそうさま」

貴音「………」

真美(あの後、連れてかれた人達の姿はもうなかったし、足跡も残ってないしで、追っかけることはできなかった)

真美(だから、お姫ちんと相談して…この、ホテルみたいなとこに戻ってきて、今晩ご飯を食べてる)

真美(結構人多いし、そんな長い時間外にいたわけじゃないから、こっそり戻ってきても気づかれなかった)

真美(そして、帰ってきてからも探してみたけど…765プロのみんなは、真美とお姫ちん以外はやっぱしここにはいないみたい。どこにいるんだろ?)

真美(ここのことは、ちょくちょく調べてみるつもりだけど…真美達は…しばらくは、ここにいるしかないのかなぁ…)

真美「お姫ちん、ここのご飯美味しいよね! しかもタダだし、なんでも作ってくれるし!」

貴音「………」

真美「はぁー、でもキュークツだよね…一生ってのはやだなぁ。みんなもいないし…」

貴音「………」

真美「お姫ちん?」

122: 2014/12/15(月) 04:32:25 ID:bmyZBzA.
貴音「これだけ…なのですか…」

真美「へ?」

貴音「夕食は、これしか出してもらえないのですか…!」

真美「うーん、でも食べられるもの、今ここの食堂に残ってるので全部らしいし」

真美(ジムイン? ショクイン? のねーちゃん達が倉庫がメチャメチャになってるのを話してた)

真美(あの真美の『偽物』達をやっつけたから、真美達がカンケーあるってことはバレてないっぽいけど…)

真美(倉庫には缶詰もそうだし、その他にも色々食べ物が置いてあって…それは、全部ダメになっちゃったから、おかわりする分なんてないのだ)

貴音「一体、何故…昼は、昼はあんなにも食べさせてくれたではありませんか…!!」

真美「お姫ちんが食べたら、すぐ全部なくなっちゃうよ!」

To Be Continued...

123: 2014/12/15(月) 04:35:25 ID:bmyZBzA.
スタンド名:「スタートスター・ジェミー」
本体:双海 真美
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:C 射程距離:E(1m) 能力射程:C(10m)
持続力:D 精密動作性:C 成長性:B
能力:真美の体を覆えるほどの巨大な「左手」のスタンド。
指先から「ジェミー弾」と呼ばれるテニスボール大の弾を打ち出し、弾に触れたものや、拳で殴ったものを「引っ張る」。
以前の「スタートスター」と比べると速度は遥かに劣るものの、パワーはメチャメチャ上がっている。
そのため衝撃にはかなり強いが、ダメージがあれば、真美の左手に返っていく。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

124: 2014/12/15(月) 09:23:10 ID:YJcNXn8s
真美、その通りだww

125: 2014/12/15(月) 09:25:19 ID:F4nSffZk
熱い展開だ
ジェミーこれで成長性まだBあるのか





To Be Continued...




引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2