129: 2014/12/21(日) 16:28:30 ID:7ePRPCpU





前話はこちら





響「もう、これしかない…」

千早(我那覇さんが、ぽつりと呟く)

亜美「何言ってんのさ、ひびきん!」

響「いいや、決めた! 自分、行かなきゃ」

亜美「そんなの、ゼッタイ駄目だよ!」

千早(亜美が我那覇さんにしがみついて、押さえつける)

響「止めないでほしいぞ、亜美!」

千早(しかし、我那覇さんはそれを振り払って歩き出してしまった)

亜美「だから、そんな服やよいっちには似合わないって!」

響「そんなの、亜美の思い込みでしょ! 今買ってくるぞ!」

千早(…私達は、デパートで買い物をしていた)



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

130: 2014/12/21(日) 16:40:19 ID:7ePRPCpU
亜美「もー、やよいっちはそんなハデな服全然持ってないんだし、合わないって!」

響「やよいにはきっと似合うぞ!」

亜美「ひびきん、やよいっちを自分のペットみたいに思ってんじゃないの?」

響「確かにやよいはかわいいけど、そこまでは思ってないぞ! だいいち、家のみんなに無理矢理服着せたりもしたことないし!」

千早(みんながいなくなってしまって、プロデューサー達が捜索をしている)

千早(私、春香、美希、我那覇さん、亜美…私達も何かできないかと、集まってみたけれど…)

千早(結局、有効な手は何も思いつかず。私達にできることは、彼らに任せて待つことだけと、結論が出てしまった)

美希『ねぇねぇ、そろそろやよいの誕生日だよね?』

千早(そんな時、美希がそんなことを言った。確かに、もう1週間もしないうちにその日が来る)

千早(…高槻さんの行方は未だわかっていない。けれど…)

美希『後でゼッタイ必要になるの。プレゼントがないと、やよいガッカリするでしょ?』

千早(戻ってきた時のため…そのために、みんなでプレゼントを買いに行こうと、そう決まった)

131: 2014/12/21(日) 16:48:34 ID:7ePRPCpU
響「とにかく、自分はこれをプレゼントするぞ! もう決めたもんね!」フンッ

亜美「ま、やよいっちならなんでも喜んでくれると思うけどね…亜美はしーらないっと」

響「それじゃ、店員さーん! ラッピングお願いしまーす!」

千早「ふふ…」

美希「ちーはやさん!」ギュッ

千早「ひゃッ!? み、美希! いきなり背中から抱きついてこないで!」

美希「あれ? それって…リボン? それ、やよいへのプレゼント?」

千早「いえ、これは…」

美希「春香に?」

千早「ええ、そうよ」

美希「春香の誕生日も、すぐだもんね。一緒に買っちゃった方がお得なの」

千早「うん…」

132: 2014/12/21(日) 16:56:23 ID:7ePRPCpU
春香「響ちゃん、それやよいにあげるの?」

響「そ! きっと似合うと思うぞ」

春香「ふむふむ。それなら私は、それに合ったパンツを探してみましょうか」

亜美「よーし、もうこの際だ、みんなでやよいっちをオシャレにしちゃおっか!」

ワイワイ

千早「パンツ…? た、高槻さんに下着を…?」

美希「いやいや、下着じゃなくて下に履くものなの。千早さんの履いてるデニムとか」

千早「デニム…? 美希、これはジーンズというのよ」

美希「千早さんには今度、ちゃんと教えなきゃダメかもね…もったいないの」

千早「は、はぁ…」

美希「そういえば…」

千早「?」

美希「最近の春香、リボンしてないよね」

千早「…ええ。だから、と思ったのだけれど…」

133: 2014/12/21(日) 17:05:52 ID:7ePRPCpU
美希「なんでだろうね? もう大海のフリする必要もないのに」

千早「『偽物』にリボンを引き裂かれてたから…それでかしら」

美希「そんなの、自分の家に帰れば他のがあるはずだし。ゼンブなくなってたとしても、買えばいいし…リボンがないと春香だってわかんないの」

千早「そ、そんなことないでしょう?」

美希「春香に直接聞いてみたら?」

千早「聞けないのよ、なんだか…」

千早(『アイ・ウォント』が戻ってきて…表面上は、いつも通りだけれど)

千早(でも、瞳の奥底はどこか冷たくて…なんだか、半年前の…あの時の春香に、戻ってしまったような感じがして)

千早「………」

美希「うーん。もしかしたら、みんなが戻ってくるまではつけない、とか決めてんのかもね」

千早「………」

美希「じゃ、誕生日の頃ならちょうどいいかも。ミキもプレゼントはリボンにしよっかな、千早さんのとは色違いの」

134: 2014/12/21(日) 17:20:01 ID:7ePRPCpU
………

……



亜美「よしよし、これでばっちしだね!」

響「みんなが帰ってきたら、他のみんなのプレゼント選びも手伝わないとね」

春香「ね、ね、千早ちゃん」

千早「ど、どうしたの? 春香」

千早(荷物が少し多いと気づかれたかしら…? いえ、でもリボンだけだし…)

春香「ずっと美希とプレゼント選んでたよね?」

千早「え、ええ。美希は服選びのセンスがいいから」

春香「なんか、話し込んでたし…何話してたの?」

千早「いえ、大したことではないわ。誕生会のことや、いなくなってしまったみんなのことよ」

春香「割と、大したことだと思うけど…むむ、なんだかジェラシー」

135: 2014/12/21(日) 17:27:37 ID:7ePRPCpU
美希「そう言えば…千早さんと響は一人暮らしだからいいとして…亜美、春香、今日出てきて大丈夫だった?」

亜美「ほぇ?」

春香「何が?」

美希「家の人に外出ちゃ駄目、とか言われなかった?」

春香「別に、そういうことは言われてないけど…何かあったの?」

美希「んーとね。今日、ミキが外に出ようとしたら、お姉ちゃんに止められたの。何か危ないことしてるんじゃないかって」

亜美「え、まさかスタンドのことバレちゃった!?」

美希「そこはバレてないっぽいけど、お姉ちゃん心配性だから。765プロのこととか調べて、ヘンなことが起きてるんじゃないかって思ったらしいの」

千早「…実際、起きているのよね…変なこと」

響「あ、でもそういうことだと、亜美のところは大変なんじゃないのか!? 真美が帰ってきてないから!」

亜美「ああ、それね…」

136: 2014/12/21(日) 17:57:45 ID:7ePRPCpU
亜美「みんながいなくなっちゃった日、亜美はりっちゃんと一緒にいたんだけど」

春香「二人は外回りだったから無事だったんだよね」

亜美「兄ちゃん達から電話来た後、一緒にうちまで来てね」

律子『報告遅れてすみません。この度、765プロでは合宿を行うことになりまして…』

亜美「って、合宿ってことにして後からママ達からサインもらったんだ。だから、そんなに心配してないと思うよ」

美希「へぇ、うちにも来てもらおっかな」

春香「合宿…ね。そういうことにしておけば、私達がいなくなっても不自然にはならないね」

響「え…別に、自分達はあんな奴らに負けたりしないぞ」

春香「そういうことじゃないよ。今、765プロは休止中だし…」

春香「それに、みんながどこに行ったかがわかったら、そこに乗り込まなきゃいけないでしょう?」

響「あ…そっか! ピヨ子にみんなのエサやり頼まなきゃ…」

137: 2014/12/21(日) 18:31:33 ID:2P3oMEyo
電話『とぅるるるるるるる』

千早「あら…電話だわ」ピッ

亜美「千早お姉ちゃん、着メロ設定とかしないの?」

千早「もしもし」

P『千早…無事か?』

千早「プロデューサー。ええ、何事もありません。どうしました?」

P『…車の持ち主がわかった』

千早「! 本当ですか」

美希「ちょっと待って、千早さん」ヒョイ

千早「み、美希?」

ポチ

P『なんだ、みんなもそこにいるのか?』

美希「はい、これでみんなに聞こえる」

138: 2014/12/21(日) 18:40:06 ID:2P3oMEyo
春香「プロデューサーさん? どうしたんですか」

P『ああ、今千早には言ったが…車の持ち主がわかった』

亜美「車って…」

美希「ミキが撮ったやつだよね」

響「なんでわかったんだ?」

P『他の事務所も同じように襲われていてな…「スタンド使い」から逃げて避難している人達と連絡を取って、それでわかったんだが』

千早「そんなこと、どうだっていいでしょう。誰なんですか、その持ち主というのは」

P『あれは高木社長のものだ』

千早「! 高木社長…」

春香「………」

P『社用ではなく、個人で持っていたものらしい。複数人の証言がある、確かだと思う』

139: 2014/12/21(日) 18:50:37 ID:2P3oMEyo
響「でも、高木社長って…」

亜美「そうだよ、社長は、あの時氏んだハズじゃ」

美希「…『偽物』」

響「え?」

美希「あの時、氏んだのは『偽物』だとしたら…本物の社長は、今も生きているとしたら?」

亜美「そ、そんなことありえないって! だって、あの時…」

千早「ありえないと、断定する方が難しいのではないかしら」

亜美「千早お姉ちゃん?」

千早「『偽物』は、血が出ない…と言うことは、息もしないし脈もない。氏んだふりをすれば、誰も生きていると気づかないわ」

響「そう言われてみると…なんか、変な気がしてきた…」

千早(私が見た、あの後ろ姿…あれは、高木社長だったの…?)

140: 2014/12/21(日) 19:02:04 ID:2P3oMEyo
P『高木社長が生きている…それは正しいと思う』

亜美「兄ちゃん」

P『これは律子が見つけたものなんだが』

千早「何かあるのですか?」

P『ああ。海外のサイトに、高木社長の写真があってな」

千早「写真、ですか」

P『いや写真だけじゃあない、日本でアイドル事務所をやっていることや、海外研修に来たということが書かれていた』

P『しかも、日付は1年前から最近まで毎日…つまり、社長はその間ずっと海外にいたってことだ…』

亜美「1年前から…!?」

P『俺達が社長が氏んだのを見たのは半年前だ、これは明らかにおかしい』

美希「やっぱり、途中から『偽物』と入れ替わってたってことだね」

響「じゃあ、この出来事は高木社長がやっているってことなのか!?」

千早「恐らく…そう、でしょうね」

亜美「…信じらんない」

141: 2014/12/21(日) 19:17:50 ID:2P3oMEyo
美希「でも、これではっきりしたね。敵は、高木社長なの」

春香「………」

響「プロデューサー、高木社長の居場所は?」

P『…それが、わからないんだ』

響「わからない?」

P『ああ…足取りが掴めないんだ。自宅を訪ねてみたが、本人もいない、車もない、手がかりになるようなものもない』

P『わかるのは、少し前に社長が海外から戻ってきたってことくらいか…』

春香「………」

亜美「でも…あんな大勢のアイドルがいなくなってるんだよ? なんかないの?」

P『交通機関は律子がスタンドで監視しているし、本人はまだこの近くにいるはずなんだ。今、全力で…』

春香「ちょっと待ってください」

千早「春香?」

142: 2014/12/21(日) 19:24:50 ID:2P3oMEyo
亜美「どったのはるるん?」

P『何だ、春香?』

春香「本当に、犯人は社長なんでしょうか」

P『何?』

千早「他に、犯人がいるということ…?」

春香「って言うか…高木社長を疑うんなら、もっと怪しい人がいるんじゃないかなーって」

美希「なんでそう思うの?」

春香「なんで…って言うか、これ」スッ

春香が、自分の携帯の画面をみんなに見せる。

響「これは…高木社長…!?」

春香「私の『偽物』から取り上げた携帯のカメラに残ってたんだよね。日付は…」

千早「水瀬さんが『偽物』だと判明した1週間前…!?」

亜美「え、なになにどゆこと?」

143: 2014/12/21(日) 19:37:01 ID:2P3oMEyo
P『な、なんだ? 何を話しているんだ?』

春香「この高木社長、どう見ても記念撮影って感じじゃあないよね…倒れてだらんとしてるし、頭が切れてるのか、ちょっと血も出てる」

響「ちょ、ちょっと…なんでそんな写真があるんだ!?」

春香「私が言いたいのは、それ…なんでこんな写真があるんだと思う?」

千早「な、なんでって…」

春香「まず、この社長は本物。『偽物』だったら、血は出ない」

美希「ここ…事務所の廊下だよね」

亜美「待ってよ、その日、亜美も事務所にいたけど社長なんか見なかったよ!?」

千早「一週間前…確か、真達が言ってたわ。『偽物』と発覚する一週間前には、水瀬さんは入れ替わっていたって」

千早「…! 水瀬さん…そう言えば、番号を残していたわ…あれは春香の携帯電話から…」

144: 2014/12/21(日) 19:48:34 ID:2P3oMEyo
春香「社長は、きっと海外にいて、何も知らなかったんだよ。だから事務所に来た」

春香「高木社長が犯人だったとして、氏んだと思われているのにわざわざ自分から姿を見せにくるなんてマヌケでしかないからね」

亜美「えーでもでも、社長が事務所に来たら来たで、誰か気づくっしょ?」

春香「それは私も悩んだんだけど…社長だし、みんなを驚かそうと思ってこっそり入ってきたんでしょ」

亜美「あー、なっとく…」

春香「そして、以前から事務所にいた私の『偽物』に襲われた。多分…伊織と一緒に」

春香「その中で伊織は一度この携帯を奪った。そして、この写真を撮った」

千早「『アイ・リスタート』が相手…水瀬さん、氏にものぐるいだったでしょうね…」

春香「伊織が『偽物』と入れ替わるのと一緒に、社長も連れて行かれた。だから、亜美達が社長を見ることはなかった」

春香「ってのが、私の意見」

美希「なんかよくわかんないケド、とりあえず社長は犯人じゃあないってコト?」

春香「うん、私はそう思う」

145: 2014/12/21(日) 19:53:08 ID:2P3oMEyo
響「えーと春香、思ったんだけど…」

春香「何?」

響「社長が犯人じゃないとしてさ、じゃあ誰が犯人なの?」

千早「春香、もっと怪しい人がいると言っていたわね。心当たりがあるの?」

春香「そもそも、なんで社長は海外に行けたの?」

千早「え?」

春香「なんで、私達はそのことを知らないの?」

亜美「それは、社長が『偽物』と入れ替わってたからっしょ?」

春香「違うよ。社長がいなくなるんだよ? 765プロに話がいかないのはおかしい」

亜美「?」

春香「社長は、なんで私達に何も言わないで海外に行っちゃったの?」

亜美「あ…それは確かにそうかも」

146: 2014/12/21(日) 20:04:08 ID:2P3oMEyo
春香「プロデューサーさん、社長は海外研修に行ってたんでしたっけ?」

P『あ、ああ…どうやらそうらしい』

春香「その海外研修の話はどこから来たのかな…?」

美希「そういう話って、けっこー偉い人が持ってくるよね?」

春香「誰か、社長に話を持ちかけた人がいるはずだよね」

千早「そしてそれは、社長よりも…」

春香「多分、急な話だったんでしょう…私達が入れ替わったことにも気づかないくらいに」

響「強引だなぁ、社長みたい…」

春香「社長はきっと、私達にはその人から話が行くと思っていたはず。だから、誰も話を聞いていなかった」

亜美「その人、って765プロの人だね。亜美達も知ってる…」

P『春香、まさか…』

春香「ええ、いるでしょう? 一人、思い当たる人が」

147: 2014/12/21(日) 20:10:53 ID:2P3oMEyo
P『! そうか、まずい…』

千早「どうしたんです?」

P『あれが社長の車だとわかった時、あの人も訪ねたんだ…車は置いてなかったが…』

P『荷物をまとめて…遠出の準備をしていた! この町から出て行くつもりだ!』

美希「あまり遠くまで行かれると、律子の『ロット・ア・ロット』でも追えないかも…」

亜美「そんなら、急がなきゃ! 逃げられちゃったら終わりだよ!」

P『律子、出るぞ! それと、スタンドを…』

響「よし、自分達も!」

春香「うん。行こう、みんな!」

………

……


148: 2014/12/21(日) 20:20:03 ID:2P3oMEyo
グッ…

「ふむ…スーツケースが閉まらないな」

「…うーむ、こんなに多くはいらないか。必要なものは向こうにあるし、財布と携帯電話と…後は少しで充分だな」

「いかんいかん。これからと思うと、ついつい張り切りすぎてしまう」

「気がかりは…765プロか。皮肉なものだ、あそこだけが最後まで落ちないとは」

「まぁ、いい。残った事務所あれ一つだけだ、『複製』だけでもどうにでもなるだろう」

「それよりも、早くしなければ…順二朗のことに気づいた以上、私に辿り着くまでそこまで時間はかからないだろ」

『かがやいたー♪ ステージーにーたーてばー♪』

「む? 『複製』から着信か。なんだ、こんな時に…」ス…

149: 2014/12/21(日) 20:28:47 ID:2P3oMEyo
ピタ…

「待て、これは天海君の携帯電話だ…彼女の『複製』は倒されたはず、と言うことは…」

「ふーむ、天海君が携帯に残っていた番号からかけているのか。なら、これは…」

春香「出る必要はないですよ。もう、わかりましたから」

「!」クルッ

男が振り向くと、部屋の外に携帯を持った春香達が立っていた。

千早「この番号からかかるということは、やっぱり…貴方なんですね」

千早「貴方が、『偽物』達を使って…皆を連れ去って行ったんですね…!!」

「…ああ、そうだよ如月君。全て私がやっていることだ」

春香「お久しぶりです。高木順一朗…会長」

順一朗「1年と…しばらくぶりだね。天海君」

155: 2015/01/17(土) 22:36:37 ID:yNetfD42
キキーッ

律子「っと!」バタン

家の前に車を停めると、その中から律子が飛び出してきた。

律子「急いでください、プロデューサー!」

P「ちょ、ちょっと待て…今エンジンを…」

プロデューサーがシートベルトを外しているうちに、律子は家の中に踏み込んでいく。

バンッ

律子「はぁ、はぁ」

美希「あ、律子…さん」

部屋に足を踏み入れると、アイドル達と…その男がいた。

順一朗「おや、君達も来たのかね」

律子「『高木』…」

P「『順一朗』…!」タッ

数秒遅れて、プロデューサーが部屋に入ってくる。

156: 2015/01/17(土) 22:39:15 ID:yNetfD42
P(半年前…高木社長が氏んだ、そう思っていた時…)

………

順一朗『そうか、順二ちゃんが…』

順一朗『私が社長に戻るか…そうしたいのは山々だが、私も私でこっちで投げ出せない仕事が山積みでね。すまない、そちらには戻れない』

順一朗『君には負担をかけてしまうことになるが…何か困ったことがあるなら、いつでも連絡くれたまえ』

………

P(経営方面は不慣れだった俺は、会長には何度も助けられた)

P「信じられない…」

順一朗「………」

P「本当に…あなたなんですか」

千早「信じようが信じまいが」ザッ

千早が、プロデューサーをかばうように前に立つ。

千早「これが私達の辿り着いた答えです。プロデューサー」

157: 2015/01/17(土) 22:40:14 ID:yNetfD42
律子「こちらに戻っていたんですね」

順一朗「あぁ。こちらに用事があったからね」

律子「全国を回っていたそうですが…充分な成果は得られましたか」

順一朗「あぁ…もう、用は済んだよ」

律子(高木順一朗、高木順二朗社長の従兄弟…いえ、765プロの元社長と言うべきかしら)

律子(小鳥さんも、アイドル達も、プロデューサーも、順二朗社長も、そして私も…元を正せばみんなこの人によって集められた)

律子(つまり、765プロという事務所を作った人物…!)

順一朗「せっかく訪ねてきてくれたのだ…どれ、お茶でも淹れてこよう」ス…

春香「動かないで」

順一朗「………」ピタ

春香「そのまま、そこの椅子にでも座っててください」

順一朗「………」

順一朗は、言われるままに椅子に腰掛ける。

158: 2015/01/17(土) 22:42:18 ID:yNetfD42
順一朗「君達の活躍は…」

響「!」バッ

順一朗の声色が変わる、それに反応して、アイドル達は警戒の態勢をとった。

順一朗「いつでも見て、聞いていた。仕事をしていても、離れた地にいても。日々名を広げていく君達を、自分のことのように誇らしく思っていた」

順一朗「そして『スタンド使い』としても…私自ら出向いたとは言え、こうして私のことを突き止めた。素晴らしい…」

春香「………」

順一朗「本当に、素晴らしい…君達は…」ス…

順一朗は目を閉じ、座ったまま天井を仰ぐ。大きく息を吐きながら、顔を降ろし…

順一朗「765プロは、もういらない」

目を開くと同時、そう告げた。

159: 2015/01/17(土) 22:43:25 ID:yNetfD42
ズズッ

美希が、『リレイションズ』を出した。

ゴゴゴゴゴ

美希「いらないとか、言うだけならなんだっていいケド…」

美希「その前に、765プロのみんなを返して」

亜美「真美は? みんなは無事なの!?」

春香「もし何かあったら、無事はちょっと保証できないです」

順一朗「ふむ…君達は一つ勘違いをしているな」

千早「…勘違い? あの『偽物』達は貴方が差し向けたのでしょう?」

順一朗「確かに、『弓と矢』を様々な事務所に送ったのも、彼女達を君達のところにやったのも私だ」

順一朗「だが、これだけは信じてほしい。私は、君達に危害を加えるつもりはなかった」

P「なかったって…現にみんな傷ついてるじゃあないですか! 千早なんて、ほら! 腕に包帯巻いて!」

160: 2015/01/17(土) 22:45:37 ID:yNetfD42
順一朗「私も、彼女達を100%統制できていたわけじゃあない。いや、ある程度統制した上で、それでも手段が強引になってしまったのも認める」

順一朗「それでも、私は君達を痛めつけることが目的ではないし…そうなってしまったのは私としても申し訳なく思う」

順一朗「もっと穏便に済むと思っていたのだがね…君達が想像以上に強かったと言うべきか。天海君の件で、皆鍛えられたのだな」

春香「………」

美希「傷つけるのが目的じゃないなら、じゃあ、目的っていうのはやっぱり、美希達を『偽物』と入れ替わらせるコト?」

順一朗「簡単に言えば、そうなる」

響「それで、自分達を偽物と入れ替えて、どうするつもりなんだ? それに、何の意味があるんだ?」

千早「…『完全なアイドル』」

亜美「ほぇ?」

順一朗「ほう、如月君はもうわかっているようだね」

千早「いえ、わかったわけではありませんが…『偽物』達は、自身のことをそう呼んでいた。それが気になって」

161: 2015/01/17(土) 22:47:49 ID:yNetfD42
律子「完全な…アイドル」

美希「それ、ミキも聞いた。なんなの? カンゼンなアイドルって」

順一朗「君達はいつまでアイドルを続けるつもりかね?」

千早「はい?」

美希「質問を質問で返さないで欲しいって思うな」

順一朗「いや、これが重要なことなのだ。すまないが、先に答えてくれたまえ」

亜美「そんなこと言われても…先のことなんてわかんないよ」

春香「私は、できることならずっとやりたいですけど」

順一朗「ずっととは、いつまでだ? 10年? 20年?」

春香「へ?」

順一朗「まさか、50年とはいかないだろう」

美希「50年って、春香おばあちゃんになっちゃうの」

響「春香だけじゃなくみんなおばあちゃんだぞ…」

162: 2015/01/17(土) 22:50:22 ID:yNetfD42
順一朗「私はこの業界に飛び込んで、これまで数えきれないほどのアイドルを見てきた」

順一朗「私がプロデューサーとして手がけた中から、ほんの一握りの星が、あの舞台で輝き…そして消えていった。その日々のことは、昨日のように覚えている」

P「………」

順一朗「しかし、今…あの輝きはない。今なお芸能界にしがみついている者がいても、今なお輝いているとしても、それはあの時の輝きではない」

美希「うーん…それはそうかもしんないケド」

順一朗「今、この時代にこそ、あのアイドルが必要だ…そう思っても、あの日の少女はもうどこにもいない」

P「はぁ…」

順一朗「しかし、だ。君、ちょっと来てくれたまえ」スッ

プロデューサーを指差す。

P「へ? お、俺ですか?」

順一朗「そう、君だ。こっちに来てくれ」

P「えーと…」チラッ

アイドル達の顔を、順番に見回す。

163: 2015/01/17(土) 22:51:49 ID:yNetfD42
順一朗「心配するな、何も人質に取ろうというわけじゃあない。第一…」

春香「………」

響「………」

美希「………」

千早「………」

亜美「む~ん」

ゴゴゴゴゴ

順一朗「この距離で、君達を相手に人質など取っても無駄だ」

P「…わかりました」ス…

律子「気をつけてください」

プロデューサーは警戒しながら、順一朗のもとへ近づいていく。

164: 2015/01/17(土) 22:55:03 ID:yNetfD42
美希(千早さん、何か妙な動きをしたら…)

千早(わかってるわ)

P「で…何故、俺を?」スタ

順一朗「それはな…」スッ

キラリ

プロデューサーが前に立つと、順一朗は鋏を取り出し…

P「な…」

響「あぶないっ!」

千早「『ブルー…」

チョキン

プロデューサーの髪の毛の、ほんの先端を切った。

千早「…え?」

165: 2015/01/17(土) 22:56:51 ID:yNetfD42
順一朗「うむ、これでいい。ありがとう」パラ…

P「は、はぁ…」

プロデューサーが頭を押さえながら、手前に戻ってくる。

千早(な、何…? プロデューサーの髪の毛を切った? 一体、何のために…)

順一朗「さて」スッ

どこから取り出したのか、順一朗はペンライトのような棒を握っている。

ジ…

その棒の先から光が出て、先程切り取った髪の毛に照射される。

美希「? …??」

順一朗「次は…」バッ

今度は、棒を誰もいない壁に向けた。

ジ…ジジ…ジジ

1mほどの横長の光が、地面から少しずつ上に競り上がっていく。

166: 2015/01/17(土) 23:00:50 ID:yNetfD42
律子「な、なに…なにやってんの…?」

亜美「いや…なんか、出てきてるよ!」

ジジ…ジジジジ

光が通り過ぎた部分から、空間に印刷しているかのように、立体が現れる。

千早「こ、これは…」

順一朗「よし」キュッ

出力が終わり、棒を仕舞う。そこにあったのは…

p「………」

P「お、俺…だ…」

本物と寸分違わない、プロデューサーの体だった。

167: 2015/01/17(土) 23:03:12 ID:yNetfD42
順一朗「これが私のスタンド、『アイ・ディー・オー・エル』だ。能力は、人や物の記憶から『複製』(コピー)を造り出すこと」

順一朗「DNAには生物の記憶が詰まっている。彼の髪の毛を使い、今の彼と同じ『複製』を作った」

春香「これで、私達の『偽物』…いえ、『複製』を作り出していたんですね」

順一朗「そう。そして、これが重要なのだが…こうして元さえあれば、私は何度でも『複製』を作り出せる」

順一朗「そして、『複製』は…歳を取ることがない…寿命もない。何かアクシデントでもない限り、永遠に同じ姿で居続ける」

千早「…!」

順一朗「そう。だから…『完全なアイドル』」

順一朗「所詮、アイドルは一過性のものだ。流行で、経年で、事故で…すべてのアイドルは、いずれ消える」

P「………」

順一朗「しかし、私の造った『複製』は消えない。例え私が氏のうとも、永遠にこの世に残り続ける」

順一朗「私は素晴らしいアイドル達一人一人を、永遠に、この世に残したいのだ」

168: 2015/01/17(土) 23:05:28 ID:yNetfD42
亜美「かいちょーが何をしたいのかは、わかったけど…」

亜美「でも、なんで『弓と矢』をバラ撒く必要があったの? なんで、亜美達を『スタンド使い』にしたのさ!」

響「それに、自分達を『複製』と入れ替わらせる理由にもなってないぞ」

美希「そうだよ、そっちでカッテに『複製』を造ってればいいって思うな」

順一朗「順番に話す。それを…彼の『複製』を見てくれ」

P「俺の『複製』?」

p「………」

春香「そう言えば、さっきから動かない…」

千早「…なんだか、全く生気が感じられないわ。と言うより…」

律子「まるで、人形みたい…」

169: 2015/01/17(土) 23:08:28 ID:yNetfD42
順一朗「人形か…その通りだ」

律子「え?」

順一朗「その『複製』には精神がないのだ」

P「精神が…ない?」

順一朗「そう。ただ『複製』しただけでは、見た目くらいしか再現できない。所詮、それは彼と同じ姿をした人形に過ぎない」

千早「いえ…でも、だったら…あの『偽物』…『スタンド使い』達は、一体…」

順一朗「そこで出てくるのが…『矢』だ」

春香「『矢』…」

170: 2015/01/17(土) 23:11:04 ID:yNetfD42
順一朗「この『弓と矢』は人を選び、才能を引き出す」

律子「ちょっと待ってください。そもそも、あなたはどうやってその『弓と矢』を手にしたんですか?」

順一朗「さぁ、いつだったか…確か、10年…20年…もっと前か? 私がプロデューサーとして活動していた頃だ」

順一朗「その時、私は当時担当していたアイドルを探していてな…彼女はいなくなった時、いつもある公園にいた」

順一朗「そこで…何故あんな場所に落ちていたのか? 誰かが落としたのか? わからないが、その公園で私は『矢』を拾ったのだ」

順一朗「そして…そのアイドルの引退が決まった日だろうか、自分で『弓と矢』の形に修復し、家に飾っていたそれから、私は一つの才能を得た」

律子「それが…『アイ・ディー・オー・エル』」

順一朗「そうだ。そして、そこまで昔ではないか…少し前の話だ」



……

………

171: 2015/01/17(土) 23:13:40 ID:yNetfD42
私はこの世界に関わっているうちに、だんだん消えていった…消え行くアイドル達のことを考え、彼女達のことを…彼女達が輝いていた軌跡を、どうにか世に残したいと…そう考えるようになった。

その想いを振り払うように765プロを立ち上げたが、君達の才能を見ていたらと、その想いは消えるどころか、尚更強くなった。

順一朗『ふぅ…』ジジジ…

しかし、私がアイドルの『複製』を造ろうとした時、そこの彼のように…精神を持たない人形しか造ることはできなかった。

順一朗『私が世に残したいのは、こんな人形じゃあない! 歌って踊れる…「アイドル」だ!』

私は、どうにかして精神を持つ『複製』を造ることは出来ないかと…仕事が終わると毎日のように、人形を作り続けていた。

そんな、ある日のこと…

ヒュッ

ドスゥ!!

順一朗『うっ!? な、なんだ!? 何が起きた!?』

自分で試したわけじゃあない。それは、たまたま…

いや、と言うよりは、まるで…『弓と矢』が自分の意志で動いたかのように、私の造った人形のうちの一体を貫いたのだ。

172: 2015/01/17(土) 23:17:40 ID:yNetfD42
スタンドは精神力が具現化したもの。精神を持たぬ人形が得ることはない…

得たところで…精神がないのだ。『矢』で貫かれようが、何の意味もない…

私はその時まで、そう思っていた。

しかし、彼女は…

『………』キョロキョロ

自分の意志で首を動かし、立ち上がり、歩いてみせ…

『おはようございます!』

そして、私に話しかけてきたのだ…

順一朗『あ、ああ…あああああ…』ボロボロボロ

私はしばらくの間、赤ん坊のように泣きわめいていた…涙が止まらなかった…

この時…私が長年抱いてきた想いは、とうとう遂げられたのだと…

私は自分のやってきたことは、間違っていなかったのだと…そう思った…

173: 2015/01/17(土) 23:20:32 ID:yNetfD42
………

……



順一朗「そう…スタンドは精神の力…」

順一朗「『複製』がスタンドを持った時…知性の方がスタンドに引っ張られて、『複製』は精神を得たのだ」

春香「それで、他の人形にも『矢』を?」

順一朗「いいや、そう上手くはいかなかった。成功したのは最初だけでな…私が自分で試してみても、人形は『矢』で貫かれた瞬間、砂となって消滅してしまうのだ」

響「え? それじゃ、あのたくさんの『偽物』達はどうやって造ったんだ…?」

順一朗「簡単な話だ。要は、『複製』がスタンドを持ちさえすればいいのだ」

・ ・ ・ ・

響「…ん?」

174: 2015/01/17(土) 23:22:34 ID:yNetfD42
順一朗「逆転の発想だ、『複製』したアイドルが『スタンド使い』になれないのなら…」

ゴゴゴゴ

順一朗「本物を『スタンド使い』にしてから『複製』しまえばいい…そうだろう?」

ゴゴゴゴゴ

千早「な…」

律子「なんですって…!?」

順一朗「まず、自分で試してみた。君達も順二ちゃんとして接してきた彼だが…あれは私の『複製』だ」

P「あ、あの社長は、あなたの…!?」

順一朗「結果は…言うまでもないだろう? 君達の方が、彼と接してきた時間は長いはずだ」

亜美「上手くいってたんなら、別に頃す必要なかったじゃん! あれで亜美、胸がすっごくキューってなっちゃったんだかんね!」

順一朗「頃す? …ああ、彼が『矢』に触れて氏んでしまったのは偶然だよ。砂にはならなかったが、あれで精神が失われてしまったようだ」

順一朗「しかし、彼がやるはずだったことは、天海君がやってくれたし…医者に氏んでいると診断された以上、そのままにするほかなかった」

175: 2015/01/17(土) 23:30:01 ID:yNetfD42
春香「ちょっと待ってください…『複製』にスタンドを与えるため…?」

順一朗「?」

春香「それだけのために…」

春香「ただ、それだけのために…事務所に『弓と矢』を送り込んで、アイドル達を『スタンド使い』にしたっていうんですか…!?」

順一朗「そうだが?」

春香「くっ…」グッ

千早「…春香?」

春香は、拳を壊れそうなくらい強く握りしめていた。

順一朗「今はわからなくてもいい。だが、いずれわかる日は来る」

順一朗「そして、これは君達のためにもなるのだ」

176: 2015/01/17(土) 23:38:31 ID:yNetfD42
美希「ねぇ、一ついい?」

順一朗「何かね?」

美希「さっき、エイエンにこの世に残るとか言ってたケド…ミキが戦ってきた『複製』って、けっこーカンタンに消えちゃったよ?」

千早「そうよ、彼女達は多少頑丈だけれど…『負け』を認めると、すぐに砂になってしまうわ」

順一朗「ああ、そうだな。これには私も参ったよ…『負け』を認めると、魂の力は非常に弱くなってしまう…結果、彼女達は精神を失い、体を保てなくなってしまう」

順一朗「そんなものはテレビの前には出せないし、私の氏後、精神が失われてしまったら二度と元に戻すことはできない」

響「そうだぞ、会長の計画は、最初から終わってるんだ!」

順一朗「そこで、私は考えた…『負け』るのが駄目なら、彼女達が『負け』ない環境を造ればいい」

響「は…?」

177: 2015/01/17(土) 23:48:24 ID:yNetfD42
順一朗「もしも全てのアイドルが『複製』に…同じ『仲間』になったら」

順一朗「すべての『複製』(アイドル)が同じ意思を持ったら…そこには、勝者も敗者もいない。それなら、彼女達が消滅することもないだろう?」

順一朗「だから私は、すべてのアイドルを『複製』に変えることにした」

律子「そ、そんな、馬鹿な話…!」

P「みんな『複製』にして、勝ち負けもないなんて…」

P「上手く言えないけど…なんか違いますよ、それ」

千早「プロデューサー」

順一朗「そうかね? では、何故競う必要がある? 何故、潰し合わなければならない? みんなそれぞれ素晴らしいものを持っているのに」

P「競い合ったから、戦ったから…頑張ったからこそ、今の皆があるんだ! 会長が手がけてきたアイドルだって、そうでしょう!?」

順一朗「それは、そうかもしれない。しかし、今や彼女達は完成されたアイドルだ」

順一朗「その『複製』ならば…それは既に完成されている。競い合う必要はない」

178: 2015/01/17(土) 23:53:59 ID:yNetfD42
亜美「そうだとしても、アイドルとして出てくるのは『偽物』でしょ!? 本物の亜美達とは違うよ!」

順一朗「そうかね? 本当に、心の底からそう言えるのかね?」

亜美「ふぇ…?」

順一朗「ファンが求めているのは『偶像』としての君達だ」

順一朗「入れ替わりが起きたことや、諍いを起こしたことによる綻びはあっただろう。しかし、それさえなければ君達も入れ替わりには気付かなかったはずだ」

順一朗「事実、君達は順二ちゃん、天海君や水瀬君が入れ替わったことに気付かなかったじゃあないか」

亜美「う…」

順一朗「確かに彼女達は、君達自身ではない。しかし、アイドルとしての君達を完璧に演じることは出来る」

美希「だから、大人しく入れ替われって、そう言うの?」

順一朗「そうしてもらえるとありがたいのだがね。待遇は保証するぞ」

響「待遇は保証するって…どこに連れて行かれるんだ? みんなもそこにいるの?」

順一朗「個人的に、施設を作ったのだ。娯楽はなんでもあるし、望むものはなんでも用意する」

順一朗「あまり大声では言えないが、『アイ・ディー・オー・エル』を使えば金などいくらでも手に入るのでね」

179: 2015/01/17(土) 23:59:11 ID:yNetfD42
亜美「その施設に…亜美達を閉じ込める気?」

響「自分達に、ずっとそこで暮らせって言うのか!? 冗談じゃない!」

順一朗「しばらくはそうなるかもしれないが、数年…『複製』のことが社会的に認知されるようになったら君達も社会に戻れる。そこで、好きなことをするといい」

律子「社会的に認知って、そんなの、されるわけないでしょう!」

順一朗「いいや、されるよ律子君。どんなにスタンド、『複製』を気味の悪いものと思っても、人は皆求めているのだ。永遠に変わらないものを。俗世と切り離された偶像を」

律子「………」

順一朗「さて、私の考えていることはこれでわかってもらえただろうか。で、どうかね? 大人しく来る気は?」

春香「断ります」

順一朗「ふむ」

180: 2015/01/18(日) 00:05:30 ID:l5lrJmH.
春香「私は自分でアイドルになりたいから…だから、この道を選んだんです。それだけは、譲れない」

美希「ミキも、自分でキラキラしたものを見たいからアイドルやってるの。おとといきやがれなの」

千早「そうね…」

響「今のアイドルとしての自分の居場所は、自分で掴み取ったものだ。他の奴になんて、あげられない」

亜美「そんなことより、さっさとみんなを返せー!!」

順一朗「…まぁ、わかってもらえるとは私も思っていないさ」

律子「わかっていないのはあなたの方でしょう、会長」

順一朗「?」

律子「あなたは5人…私も含めれば、6人の『スタンド使い』に囲まれています。『大人しく来る気は』…なんて、聞ける立場じゃあないんですよ」

ゴゴゴゴ ゴゴゴ

律子「あなたのスタンドは…戦闘用じゃあないでしょう? 終わりです、これで。あなたの理想も何も」

順一朗「まさか…」

181: 2015/01/18(日) 00:07:06 ID:l5lrJmH.
順一朗「まさか私が、何の対策もせずベラベラと喋っているだけだと…本当にそう思ったのかね?」ゴゴゴ

P「がっ…!?」バタン!

千早「!」

突然、千早の後ろにいたプロデューサーが倒れた。

千早「プ…プロデューサー!?」

ヒュン

千早(え?)

何かが千早の視界の隅を掠め、部屋の中に飛び込んでいった。

順一朗「さて」スクッ

順一朗は、平然と椅子から立ち上がる。

美希「逃がさないの、『リレイションズ』ッ!」ドオッ

美希がスタンドで、順一朗に向かって攻撃しようとするが…

ガッ!!

美希「!?」

何者かに、受け止められた。

182: 2015/01/18(日) 00:15:20 ID:l5lrJmH.
美希「なのなのっ」ヒュヒュッ

?「ふっ」ガガッ

順一朗の前に立った何者かは、スタンドの腕だけで、美希の攻撃を捌いている。

千早(小さい…子供?)

千早(美希の『リレイションズ』の拳に当たらないよう、腕の部分を捉えている…)

千早(あれは…何者なの? あれも、『複製』…)

?「大丈夫ですか、高木さん」グググ

千早「………え」

その子供の顔を見ようとして、千早は、信じられないようなものを目にした。

順一朗「ああ…君のお陰でな」

?「それは、何よりです」ググ

千早「『優』…!?」

それは記憶の中の、自分の弟と同じような姿をしていた。

183: 2015/01/18(日) 00:19:22 ID:l5lrJmH.
響「優? 優って…」

春香「確か、千早ちゃんの弟の…」

千早「いえ…違う。優は氏んだ…優の『複製』なの…? いえ、でも…」

優「はっ!」ヒュゴ

美希「むっ!」バッ

少年のスタンドの攻撃に、美希は大きく一歩飛び退く。

キョロキョロ

優「みなさん、初めまして。そして…千早さん」ペコ

少年は辺りを見回すと、丁寧にお辞儀をした。

順一朗「紹介しよう、これがさっき話した、始まりの『複製』…」

順一朗「そして私の造った最強の三体のうちの一人だ」

184: 2015/01/18(日) 00:23:40 ID:l5lrJmH.
千早「ま、待って…あなたは一体…」

優「僕は高木さんの護衛です。今は貴女とは何も話すことはありません…が…」

優「天海春香さん」クルッ

春香「え、私?」

優「『複製』のハルカさんは、あなたが倒したんですか?」

春香「…そうだけど?」

優「そうですか…残念です。彼女には、色々よくしてもらいましたから…」

順一朗「『アイ・リスタート』は4番目だが…『アイ・ウォント』に負けるとは思っていなかったのだがな…」

順一朗「しかし、私がアイドル事務所にばら撒いた『矢』の『複製』を持っているわけでもない…一体どうやって倒したのだ?」

優「………」

千早(怒っている…)

千早(やはり、『複製』…私の記憶の中のあの子とは違うわね。あの子が怒る時はもっと感情的になっていたわ)

185: 2015/01/18(日) 00:28:00 ID:l5lrJmH.
律子「この子一人で、私達全員と戦うつもりですか?」

春香「最強って言ったけど…それは、みんな倒せるくらい?」

響「美希」

美希「んー…ちょっと待って」

亜美「亜美よりコドモみたいだけど、エンリョなくやっちゃうよ~ん」

ザッザ

全員で、二人を取り囲むように並ぶ。

順一朗「ふむ」

優「いえ、流石に6人の『スタンド使い』相手に正面からやりあえるほど強くはありません」フルフル

目を閉じて、ゆっくりと首を左右に二回振る。

優「ですが…」ス…

目をうっすらと開け、その場にしゃがみ込む。

ドォン!!

『アイ・ウォント』、『インフェルノ』、『リレイションズ』、『トライアル・ダンス』、『スタートスター』…5つのスタンドが一斉に襲いかかった。

186: 2015/01/18(日) 00:32:15 ID:l5lrJmH.
順一朗「うむ…これは…」

ゴォォォォォォ

攻撃が、目前に迫る。

優「『ブルー・バード』」

・ ・ ・ ・

少年の横に、765プロの全員が見覚えのあるスタンドが、出現した。

響「こ、このスタンドはッ…!!」ドォッォ

美希「千早さんの…『ブルー・バード』!?」ゴォォォ

千早「同じ…スタンド…?」ヒュゥゥ

ブオンッ!!

律子「!?」フワッ

次の瞬間、順一朗と少年以外の体が、一斉に宙に浮き上がった。

187: 2015/01/18(日) 00:41:09 ID:l5lrJmH.
亜美「な、なに…なんでっ!?」

律子「触れられてすらいないのに…私達全員の体を『軽く』した…!?」

優「違います。部屋の『重量』を『奪い』…この部屋の空気を『重く』しました」

順一朗「よっと」グッ

順一朗は、腕の中にスーツケースを抱えていた。

優「順一朗さんの体が浮かないギリギリ、僕も同じくらいの『重量』を残して」

律子「空気を…気体を『重く』…? ですって…」

響「うぐ…体が浮いて、思うように動けないぞ…」バタバタ

美希「『リレイションズ』まで浮いちゃって…パワーが出ないの」モゾモゾ

みんな天井に張りつけられ、思うように動けないでいる。

順一朗「おっとっと…ふぅ、この歳で抱えたまま歩くのは少し厳しいなぁ」スタスタ

優「我慢してください」スタスタ

二人は、涼しい顔で出口へと歩いていく。

188: 2015/01/18(日) 00:47:00 ID:l5lrJmH.
春香(『六感支配』…)ズ…

春香(いや、駄目か…私達がこうして動けない以上、気休めにしかならない)

順一朗「それでは諸君…また近いうちに会おう、はっはっは!」

優「早く行きましょう」

少年は急かすように、順一朗の背中を押す。

ドサッ!!

優「………」クルッ

何かが落ちる音がして、少年は振り向いた。

千早「………『ブルー・バード』」スクッ

片膝をついていた千早が、立ち上がった。

優「千早…さん」

千早「天井から『重量』を『奪った』」

優「『同じスタンド』…『同じ能力』」

189: 2015/01/18(日) 00:53:12 ID:l5lrJmH.
優「順一朗さん、先に行っててください」

順一朗「ああ…そうさせてもらうよ」ガララッ

スーツケースを押しながら、順一朗は去っていく。

千早「待って…!」

優「通しません」スッ

順一朗追おうとする千早の前に、少年が立ちふさがる。

律子「千早…!」

美希「千早さん」

亜美「千早お姉ちゃん!」

響「千早っ!」

春香「千早ちゃん」

千早「行くわよ…」スッ

優「………」ス…

お互い、向き合って構えた。

190: 2015/01/18(日) 00:55:41 ID:l5lrJmH.
千早「はぁっ!!」ゴォッ

千早が『ブルー・バード』で殴り掛かるが…

優「………」パシッ

千早「!」

少年の『ブルー・バード』が腕を掴むと…

フワ…

『重量』を千早の方に『与え』ると、顔の高さまで全身が浮いた。

グイッ

千早「きゃ…」フラッ

空中で、今度は『重量』を『奪い』ながら、腕を引いた。千早の『ブルー・バード』が手前に引っ張られる。

優「んあっ!!」ズダン!!

千早「うっ…!!」バキャア!

ザザザザッ

そのままの流れで蹴りを鎖骨の辺りに叩き込まれ、千早はスタンドごとブッ飛ばされた。

191: 2015/01/18(日) 01:01:06 ID:l5lrJmH.
千早「ごほっ、ごほ…」

千早は膝をついて、咳き込んでいる。

千早(速く、強い…そして正確…私の『ブルー・バード』より、全てにおいて上…)

優「それは本来のスタンドじゃあないですからね…こんなものでしょう」スタッ

千早の目の前に立つ。

千早「う…『ブルー…」

優「………」スッ

スタンドを構えようとするが、それよりも早く少年は千早の耳元に顔を近づけた。

優「………」ボソッ

千早「え?」

優「では」クルッ

スタスタ

千早の耳元で何かを囁くと、少年はそれ以上は何もせず去っていった。

192: 2015/01/18(日) 01:07:18 ID:l5lrJmH.
春香「おお~う」フワ…

しばらくし、『重く』された空気が部屋の外の空気と混ざってくるにつれ、みんなゆっくりと地面に降りてきた。

律子「あれが、『ブルー・バード』…めちゃくちゃやってくるわね…」

響「むー、次会ったら勝つ!」

亜美「うむ! 亜美も次は本気でやっちゃうからね!」

千早「………」

美希「ねぇ、千早さん」

千早「え? な、何かしら、美希」

美希「最後、あの子供なんか言ってなかった?」

千早「それは…」

千早は、先程少年に言われた言葉を思い出していた。

優『話したいことがあります。明日、一人でまたここに来てください』

千早「なんでも…ないわ」フルフル

美希から目を反らし、ゆっくりと首を左右に二回振った。

To Be Continued…

193: 2015/01/18(日) 01:09:04 ID:l5lrJmH.
おっと、今回の分はこれで終わりです

スタンド名:「アイ・ディー・オー・エル」
本体:高木順一朗
タイプ:特殊・道具型
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E(1m) 能力射程:E(1m)
持続力:A 精密動作性:A 成長性:完成
能力:高木順一朗が持つ、すべての始まりのスタンド。
ペンライトのような形状をしており、光を照射したものに宿った記憶の中から「複製」を作り出す。
生物も「複製」できるが、ただ「複製」しただけでは精神が失われてしまう。
「精神」を定着させるためには、精神を引っ張るための力…「スタンド」が必要となる。
だからこそ、順一朗はアイドル事務所に「弓と矢」を送り込み、アイドル達を「スタンド使い」にしていた。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ブルー・バード」
本体:「優」
タイプ:近距離パワー・標準
破壊力:C(E~A) スピード:A 射程距離:C(12m) 能力射程:C(12m)
持続力:C 精密動作性:B 成長性:C
能力:もう一つの「ブルー・バード」。姿は千早のものとほぼ同じだが、仮面をつけていない。
体格が一致している優は、その性能をフルに引き出すことができ、性能は千早のものを全ての面で上回る。
「気体」も含め、周囲のあらゆるものの「重量」を自由自在に操ることができる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

196: 2015/01/18(日) 16:18:11 ID:YSSwwnqE
乙!
声も「んあ」なんだな
> 腕に包帯巻いて!
なぜか胸にみえた



To Be Continued...