348: 2015/06/03(水) 00:37:07 ID:eml6EQaU





前話はこちら





美希「さてと…」

美希「それじゃ、早く進も? 会長を倒しに行くの」

P「待て待て美希、みんないなくなったんだぞ、闇雲に進んでも危険だ」

美希「だから、なの。いつまでもこんなとこいても仕方ないって思うな」

響「さっきまで寝てた奴の台詞とは思えないぞ…」

P「何があるかわからないんだ、お前達にまで何かあったら…」

美希「ミキ、プロデューサーよりは強いから大丈夫だと思うよ。響もいるし」

P「そりゃ、俺はスタンドなんて使えないし見えないけど…それとこれとは話が違う」

P「お前がいくら強かったとしても、何も考えないまま進んでたらいつか絶対に捕まる」

響「美希ー、自分もそう思うぞ」

美希「んー…それじゃ、どうすんの?」

P「まず、いなくなったみんなと合流しよう。6人でも、あの会長の護衛1人に太刀打ちできなかったんだ。みんな一緒じゃないと、きっと高木会長には勝てない」

美希「じゃ、それで」

P「それでってなぁ…」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

349: 2015/06/03(水) 00:40:55 ID:eml6EQaU
美希「でも、それなら律子…さんを最初に見つけるのがいいって思うな」

P「そういえば、律子のスタンド…で探せるって言ってたな。でも、それならここに衛星を飛ばしてきてもおかしくないはずだが…」

響「この霧のせいかもしれないぞ。…たぶん、これのせいで律子の『ロット・ア・ロット』が壊されたりして上手く使えないんだと思う」

P「それならいいんだが…律子は無事なんだろうか。心配だな」

美希「プロデューサーが一番心配なのは千早さんでしょ?」

P「…は?」

美希「違うの?」

P「違うと言うか…あいつのことも心配だけど、なんでそこで千早が出てくるんだ…?」

美希「だってプロデューサー、千早さんのこと好きだよね?」

P「ああっ!?」ビクッ

響「美希、そんなはっきり言っちゃ駄目でしょ」

P「ちょ、ちょっと待てお前達…何か変な勘違いをしてるんじゃあないか…? あいつはアイドルで俺はプロデューサーだぞ!」

響「あー、うんうん。そうだよなー。わかってるぞー」

美希「あふぅ…ジョーダンなの」

P「お前らなぁ…」

350: 2015/06/03(水) 00:46:20 ID:eml6EQaU
美希「ま、いいや。早く行こ」

P「ああ、しっかりな」

響「プロデューサー、船で待ってるつもりなの?」

P「ん? そのつもりだが…何か駄目か?」

響「駄目じゃあないけど、一人でいると危ないと思うぞ」

美希「プロデューサーが『複製』に見つかったらすぐやられちゃうの」

P「……………」

P「…すまん、俺も一緒に着いていっていいか」

美希「どうぞなの」

P(情けない話だが…こうしてアイドルに守ってもらわないと島にいられない…俺には心配することしかできないのか…)

P(しかし、千早や律子も確かに気にかかるが…)

P(散り散りに連れて行かれたみんな…そして、以前の事務所襲撃で捕まったみんな…無事だろうか…)

………

……


351: 2015/06/03(水) 00:52:40 ID:eml6EQaU
やよい「あずささん、待ってくださーい!」

あずさ「あら」

煉瓦で舗装された道を進んでいたあずさが、足を止め、やよいの方へと振り向いた。

やよい「うぅー、先にぐんぐん行かないでほしいかも~」

あずさ「ごめんなさいね、やよいちゃん。ちょっと考え事してて」

やよい「考えごと、ですか?」

あずさ「ええ。私達が今使ってるホテル…あそこには、765プロのアイドルは私とやよいちゃんしかいなかったわよね?」

やよい「はい。でも、他の皆さんもあの時捕まってましたよね? どこに行っちゃったんでしょう…」

あずさ「他にも、あそこのような施設があるかもしれないって思って、外出許可を貰って出てきたわけだけど…」

やよい「えへへ、こんなことしてるってバレたら係の人に怒られちゃいますね」

あずさ「でも…向こうに見える建物、ホテルとちょっと違うわよね?」ピッ

ゴゴゴゴゴゴ

あずさが指差す煉瓦の道の先には、大きな塀がそびえ立っていた。

352: 2015/06/03(水) 01:05:42 ID:eml6EQaU
二人が塀の側まで辿り着くと、高い高い白い壁の底部に、扉が一つあるだけだった。

あずさ「うーん、やっぱりホテルではなさそうね」

やよい「窓とかもついてないし…ちょっと、違うかも」

あずさ「でも、扉があるってことは中に何かあるかもしれないわね」

やよい「えーっと…」グッ

やよい「んんーっ」ググーッ

やよいは両手でドアノブを握ると、力一杯引っ張った。

やよい「はぁっ、駄目ですあずささん、この扉鍵がかかってますよ!」

あずさ「大丈…」

ビーッ ビーッ ビーッ

あずさ「あら? 何かしら、この音」

やよい「あっ! これです!」

二人の腕には金属製の腕輪がつけられていて、そこから警報音が出ている。

353: 2015/06/03(水) 01:14:07 ID:eml6EQaU
あずさ「えーっと、確か…『昼までには戻ってこい』って言われて、これをつけてもらったのよね」

やよい「きっとわたし達が戻らないから、鳴ってるんだと思います!」

あずさ「でも、まだお昼にはちょっと早いような…」

ビー ビー…

音が鳴り止む。

あずさ「消えた…今のは『警告』ってことなのかしら」

やよい「うぅ~、また鳴る前に戻らないとダメかも…」

あずさ「そうね。ここにはまた来ればいいし、一旦戻りましょう」

やよい「はい…」

あずさ「煉瓦の道を通っていけば大丈夫よね?」

やよい「あっ、あずささん! 煉瓦の道は途中までですよ!」

あずさ「あ、そうだったわね…どこから入ったんだったかしら」

やよい「大丈夫ですよ、あずささん!」

あずさ「やよいちゃん、覚えてるの?」

354: 2015/06/03(水) 01:18:53 ID:eml6EQaU
やよい「わたしもあんまり覚えてないけど…じゃーん!ジャラッ

やよいが、あずさに見せびらかすように袋を取り出した。中には豆が詰まっている。

あずさ「この豆は…?」

やよい「食堂で貰ってきたお豆さんです! 来た道を見てください!」

あずさ「あっ、豆が落ちてるわ」

やよい「ここに来るまでに、落としてきました! これを辿っていけば、元の場所に戻れます!」

あずさ「あらあら、それなら安心ね。やよいちゃんはしっかりしてるわね~」

やよい「えへへ…この前、弟達に本を読んであげたんですけど、それをちょっと真似してみたりして!」

やよい「拾って洗って煮れば、食べられるし!」

あずさ「そうね~。それじゃ、この豆を辿っていきましょ」

やよい「はいっ!」

二人は、落ちている豆を辿って煉瓦の道を引き返し始めた。

355: 2015/06/03(水) 01:22:41 ID:eml6EQaU
やよい「あっ!」

あずさ「どうしたの、やよいちゃん?」

しばらく歩いていると、やよいの足が止まった。

やよい「豆が途切れてます! ここからは、脇道に出ましょう!」

あずさ「うふふ。道案内、お願いするわねやよいちゃん」

やよい「はいっ!」ザッ

やよいが脇道に一歩足を踏み出すと*…

「グワッグワッ」カプカプ

「グエッグエッ」モグモグ

その先で二匹の鳥が、道に落ちてる豆を次々咥えて喉奥に流し込んでいた。

やよい「って、はわっ! 鳥さんに食べられちゃってます~っ!」

あずさ「まぁ、絵本の通りね~」

やよい「そんなこと言ってる場合じゃあないですよ~っ!」

356: 2015/06/03(水) 01:37:11 ID:eml6EQaU
やよい「こらっ! それはエサじゃないですよっ!」

「クエー」バサッバサッ

「キー」スイーッ

やよいが両腕を広げて叱りつけると、鳥は馬鹿にしたように平然と飛び立っていった。

やよい「あぅ~っ、これじゃ帰れませんー!」

あずさ「そうね、うーん…どうしましょう」

やよい「早くしないと、腕輪が鳴っちゃいます!」

あずさ「鳴ったら、どうなるのかしら?」

やよい「…どうなるんでしょう?」

あずさ「いいことは、なさそうよね。まず、これをなんとかしましょう」

やよい「え?」

あずさ「『ミスメイカー』」ズッ

フォン フォン

全身が夜空のような模様をした紫色の巨人が、あずさの傍に現れる。

357: 2015/06/03(水) 01:53:07 ID:eml6EQaU
ズズ…

胴体と変わらないほどの大きな両腕を伸ばし、あずさとやよいの腕についている腕輪に指先で触れる。

カチッ!!

『0』の数字が書かれたデジタル時計のようなプレートが、その上に浮かんだ。

あずさ「腕輪を『眠らせ』たわ。少なくとも、『眠って』いる間この腕輪の機能が使われることはない」

やよい「あ、あの…あずささん…?」

あずさ「外すことも出来るかもしれないけど…そうすると、戻る時に*困っちゃうかもしれないから」

やよい「その、スタンド…」

あずさ「『ミスメイカー』? 触れたものに『カウント』をつけて、『ゼロ』になると『眠らせ』て機能を停止させる能力だけど…やよいちゃんには、教えたことあったわよね?」

やよい「はい、それは知ってます! 今、なんかいきなり『ゼロ』になって出てきましたよね!?」

あずさ「あ、そのことね。前は生物も物体も同じような感覚でやってたから、どっちも『91秒』かかってたんだけど…」

あずさ「物体には、元々意識がないから。意識ごと『眠らせ』ようとするんじゃあなくて、機能だけを『眠らせ』ることを意識したら、すぐに『眠らせ』ることが出来るようになったの」

やよい「えーと…? よくわかんないけど、物はすぐに『眠らせ』られるんですよね? すごいです!!」

358: 2015/06/03(水) 02:10:54 ID:eml6EQaU
やよい「でも、どうやってホテルまで戻りましょう…」

あずさ「………」

あずさ「やよいちゃん。このままみんなを探さない?」

やよい「へ?」

あずさ「私も戻れるなら戻りたいけど、たぶん、いっぱい時間かかっちゃうだろうし…また、迷っちゃうかもしれない」

あずさ「だったら、このまま探すのを続けた方がいいと思う」

やよい「………」

あずさ「もしやよいちゃんが怒られるようなことがあったら、代わりに私が謝るわね」

やよい「あっ、あの! そこまでしてもらわなくてもだいじょーぶです!」

あずさ「やよいちゃん」

やよい「そうですよね、やっぱり、みんなを探す方が大事です!」

やよい「あずささん、もし怒られちゃったらいっしょに謝りましょう!」

あずさ「ふふ、ありがと。いっしょなら、ちょっと安心ね?」

やよい「えへへ…はいっ!」

359: 2015/06/03(水) 02:19:04 ID:eml6EQaU
あずさ「それじゃ、さっきの場所に戻りましょう。『ミスメイカー』なら鍵も開けられるから」

やよい「はい!」

ザッ

やよい「?」

あずさ「あら?」

塀のある方角、あずさ達から離れた場所で、何者かが脇道から煉瓦の道路に入ってくる。

やよい「誰でしょうか? 声かけて、いいですか?」

あずさ「そうね~。危ない人かもしれないから、気をつけてね」

やよい「すみませーん! どなたですかー!」

やよいが大声で呼びかけるが…

ザッザッ

やよい「あう…」

やよいの声が聞こえないかのように、そのまま先へと進んでいく。

360: 2015/06/03(水) 02:22:07 ID:eml6EQaU
やよい「うーん、聞こえてないんでしょうか?」

あずさ「結構、離れてるから…あら?」

???「………」ザッ ザッ

先を歩く人物は、肩に何かをぶら下げている。

あずさ「何か…担いてるみたいね。やよいちゃん、見える?」

やよい「はい。わたし、目はいいですから。あれは…」

あずさ「何が見える?」

やよい「えーっと…青い…髪? 人でしょうか、あれは…」

ゴゴゴゴゴ

千早「………」

???「………」ザッザッ

やよい「千早さん…!?」

あずさ「え!?」

361: 2015/06/03(水) 02:32:11 ID:eml6EQaU
あずさ「千早ちゃん…言われてみれば、あれは確かに千早ちゃんだわ。じゃあ、それを抱えているあの人は…?」

やよい「あれは…」

ピタ…

その時、先を行く人物は足を止め…

???「うふふ…」クルッ

長い髪を揺らしながら、あずさ達の方を振り返った。

やよい「あの顔は…」

あずさ「………」

アズサ「ふふふふふ」

やよい「あずささん…!?」

あずさ「はい? 何かしら、やよいちゃん?」

ザッザッ

あずさとやよいの姿を確認すると、あずさと同じ顔をした長髪の女性は、前を向いて再び歩き出した。

362: 2015/06/03(水) 02:35:32 ID:eml6EQaU
あずさ「やよいちゃん? どうしたの?」

やよい「あの人、あずささんですよっ!」

あずさ「…? ?? …?」

やよい「あずささんと同じ顔をしてたんです! 髪型も、昔のあずささんみたいで…!」

あずさ「私のそっくりさんかしら? 世の中にはそっくりさんが3人いるって言うけど、こんなところで会うなんて思わなかったわ」

やよい「あずささんの『偽物』ですよっ!!」

あずさ「え、あの人がそうなの…?」

やよい「はい、伊織ちゃんの…あずささん、見てないんですか?」

あずさ「うーん、会ってないわね。あの時は響ちゃんに会って、突然気を失っちゃったから…」

やよい「それ、響さんの『偽物』ですよ!」

あずさ「あ、そうなのね~。響ちゃんはあの時間は仕事中だって聞いてたから、変だと思ったけど」

やよい「でも、ほんとにそっくりですよね。あのあずささんも…」

あずさ「………」

やよい「………」

364: 2015/06/03(水) 02:46:09 ID:eml6EQaU
タッ!

二人は同時に、アズサの背中に向かって走り出した。

あずさ「やよいちゃん。あれは私の『偽物』なのよね」

やよい「はい。それで、その『偽物』が千早さんを連れて行こうとしてるってことは…」

あずさ「あの千早ちゃんは本物かもしれないわ…!」

アズサ「ふふ」カツ カツ

二人の足音を耳にして、アズサは歩くペースを上げた。

あずさ「やよいちゃん、『ゲンキトリッパー』を…」

やよい「もう行かせてます、でも…」

ウー ウッウー

分裂した『ゲンキトリッパー』の進むスピードは、アズサの歩く速度と同じくらいだった。

やよい「うぅー、『ゲンキトリッパー』のスピードじゃ追いつけないかも…伊織ちゃんや貴音さんのスタンドなら、びゅびゅーんって行けるんですけど」

あずさ「距離が離れすぎてるわね。もっと近づかないと」

あずさ「あっちは千早ちゃんを抱えている。その分、走るのはこっちの方が速いから追いつけるはずよ」

やよい「はい!」

365: 2015/06/03(水) 03:00:00 ID:eml6EQaU
タタタタタ

走るごとに、アズサとの距離がぐんぐん縮まっていく。

やよい「もうちょっと…! 千早さん、待っててください…!」

アズサ「ふふ、元気ねやよいちゃん…」

やよいの方が、あずさの少し先を走っている。

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』」ブオン

やよい「!」

アズサの近くに、全身の至る所から棘が生え、鎖やロープなどが腕に巻きつけられている、過剰な装飾がなされた人型のスタンドが出現する。

あずさ「これが彼女の…私の『偽物』のスタンド…」

あずさ「『ミスメイカー』とは全然違う形なのね」

アズサ「えいっ」ス…

アズサのスタンドが両腕を上げると…

ダンッ!!

地面の煉瓦に振り下ろし、叩きつけた。

366: 2015/06/03(水) 03:04:49 ID:eml6EQaU
やよい「!」バッ

やよいは、飛んでくるであろう攻撃に身構えるが…

やよい「…? なんにも起こらない…」ス…

煉瓦には何の変化もなく、やよいは構えを解いてそのままアズサを追いかけようとする。

あずさ「! やよいちゃん、待って…!」

やよい「へ?」カチリ

やよいが『ゾーン・オブ・フォーチュン』の手が触れた辺りの地面を踏むと…

ガン! ガガンッ

やよい「わっ!?」グラッ

煉瓦が剥がれ、ひとりでに道の両脇に積まれていく。やよいはそれに足を取られ、体勢を崩した。

アズサ「こんなところで何をしてるのかなって思ったけど…やっぱり、ここから出ることを諦めてないのね~」

アズサ「そのためには、仲間が必要…千早ちゃんを餌にしたら、思った通り追いかけてきたわ」

アズサ「うふふ♪ だったら、もう反抗する気も起きないほどに痛めつけてあげるわね~♪」

ガラガラガラ!!!

道脇に積み上がった煉瓦が、やよいに襲いかかるように崩れだした。

367: 2015/06/03(水) 03:11:09 ID:eml6EQaU
スタンド名:「ミスメイカー」
本体:三浦 あずさ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:D 射程距離:E(3m) 能力射程:C(10m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:E
能力:生物だろうが物体だろうが「91秒」で「眠らせ」る、あずささんのスタンド。
触れたものには「カウント」がつき、「カウント」の数字がゼロになるとその対象は「眠る」。
「眠らせ」たものは一時的にその機能を停止し、能力を解除することで再び動き出す。
既につけた「カウント」に触れていると数字は早く減っていき、また、意識のない物体であれば「91秒」を待つことなく一瞬で「眠らせ」ることが可能。
胴体と同じくらいに巨大な両腕は非常に高いパワーを誇るが、本体であるあずささんののんびりとした性格を反映したように、スピードはそれほど速くはない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

お待たせしました。続きは明日書きます(明日書くとは言ってない)

371: 2015/06/12(金) 00:38:49 ID:PRh.AEU.
ガラ ガラガラ

崩れてきた煉瓦は、やよいを押し潰そうとしながら、元の板状の形に戻ろうとする。

グォォォォォォォォ

やよい「わーっ!」バッ

やよいは頭を守るように腕を被せ、体を丸めた。

やよい「………?」チラ…

煉瓦が襲ってこないので、顔を上げると…

あずさ「………」グググ

『ミスメイカー』が両腕を広げて、倒れくる煉瓦の壁を押し留めていた。

やよい「あずささん! あ、ありがとうございます」

あずさ「いいえ、お礼なんて大丈夫よ~」

グッ!!

『ミスメイカー』の腕が、少しずつ壁に押されている。

やよい「!」

あずさ「だって、まだ助かったわけじゃないもの…!」

372: 2015/06/12(金) 00:40:14 ID:PRh.AEU.
やよい「あずささんの『ミスメイカー』でも止められないんですか…!?」

やよい「あっ、でも能力で『眠らせ』れば!」

あずさ「いいえ、やよいちゃん…もう『眠らせ』てるの。でも…」

ゴゴゴゴ

あずさ「この壁は止まらない! それに、力も凄く強いわ…! 『ミスメイカー』で抑えているけど、長くは保たないわ!」

やよい「わわっ、大変ですっ」

ピョコッ ピョンッ

やよいの背中に乗っていた『ゲンキトリッパー』の分体が、壁へと飛び跳ねていく。

やよい「んしょっ!」バッ

ウー ウウーッ

やよいが立ち上がって抜け出しているうちに、『ゲンキトリッパー』は煉瓦の隙間へと入り込み…

ドジャァァーン

隙間を『くっつけ』、壁の動きを止める。

373: 2015/06/12(金) 00:42:57 ID:PRh.AEU.
やよい「『くっつけ』ました! けど…」

ミシッ…

やよい「すぐに倒れてくるかも…あずささん、早く!」

あずさ「ええ!」タッ

『ミスメイカー』の手を放し、あずさもその場から脱出した。

バタァァァン

直後、煉瓦が倒れ込み、元の石畳に戻る。

やよい「危なかったです~」

あずさ「あのスタンドの能力かしら」

やよい「どんな能力なんでしょう…」

あずさ「うーん、そうねぇ…」

アズサ「………」スーッ

やよい「…追いかけながら考えましょう!」

374: 2015/06/12(金) 00:48:07 ID:PRh.AEU.
タッタッタ

アズサ「そーれっ」ドンッ

アズサが『ゾーン・オブ・フォーチュン』で地面を殴りつける。

あずさ「!」バッ

やよい「!」ババッ

それを見て、二人はそれぞれ左右に広がり、ルートを変えた。

あずさ「さっき、あのスタンドが触れた場所をやよいちゃんが踏んだら煉瓦が襲ってきた…」

やよい「あそこを踏んだら危ないかも!」

タタタ

アズサ「あらあら~、避けられちゃったわね~」

やよい「?」

チラ…

アズサの様子に何か違和感を覚え、やよいはあずさの方を見た。

ザワザワ

道を挟んで左方、脇に立ち並ぶ木が揺れている。

375: 2015/06/12(金) 00:58:08 ID:PRh.AEU.
アズサ「そこを踏まなければ…大丈夫だって、思ったかしら~?」

やよい「あずささん!」

あずさ「?」

カチリ

・ ・ ・ ・

ビュ!!

木の幹から、一本の枝があずさに向かって槍のように伸びてきた。

あずさ(触れてないのに、木が襲いかかってきた…)

あずさ(だめ、『ミスメイカー』じゃ間に合わ…)

ビタン

その時、あずさの足が地面にピタリと『くっつい』て止まった。

あずさ「え? きゃっ!」バタン!

そのままの勢いで、あずさは膝をついて倒れる。

ギュォン!

鋭く伸びた枝が、あずさの頭上を貫いていく。

376: 2015/06/12(金) 01:03:22 ID:PRh.AEU.
アズサ「あら…」

やよい「あずささん! 大丈夫ですか!」

あずさ「ええ、ありがとう。『ゲンキトリッパー』のお陰でお団子にはならずに済んだわね…」

やよい「どういうことなんでしょう、あんなところに触ってないはずなのに」

あずさ「わからないわ。一つだけ言えるのは…」

千早「………」

アズサ「ふふっ」

あずさ「だからって追いかけないでいると、千早ちゃんを連れてかれちゃうってことよね」

377: 2015/06/12(金) 01:14:58 ID:PRh.AEU.
ゴゴゴゴゴ

二人がアズサを追いかけていると、白い壁が目の前まで迫ってきて来た。

アズサ「うふふ」

ガチャ

アズサは扉を開け放し、壁の向こうへと進んで行く。

タタッ

あずさとやよいはためらうことなく、その後に続いていった。

あずさ「! これは…」

リンゴン リンゴン

木馬がきらびやかな屋根の下で回っている。

ゴォォォォォ…

高所を走るレール、ゆっくり回転する観覧車、コーヒーカップ、サーキット場…

やよい「わぁ…」

あずさ「まぁ」

壁の中は、遊園地だった。

379: 2015/06/12(金) 11:56:18 ID:PRh.AEU.
やよい「誰もいませんね」

あずさ「ここにお客さん来るのかしら?」

アズサ「お客さんは、あなた達よ~」

カチリ

あずさ「あっ!」クルッ

通ってきた起動音に、あずさ達が振り向く。

あずさ「扉が…」

やよい「消えちゃいました…!」

アズサ「その入り口は私のスタンドの能力で作ったもの。役目を終えれば自動的に消えるわ」

あずさ「あなたの『スタンド能力』…?」

アズサ「私のスタンド『ゾーン・オブ・フォーチュン』は…触れたものを『罠』に変える。それが能力」

やよい「!」

あずさ「!」

アズサ「ふふっ、『どうしてバラすのか?』って不思議そうな顔ね~」

アズサ「だって…今ここにいる時点で、もう既にあなた達は私の『罠』に嵌っているんだもの」

382: 2015/06/19(金) 23:22:36 ID:CG5W8bPw
やよい「もう罠にはまってる…?」

あずさ「つまり、ここに閉じ込めた時点で目的は達成されている…」

あずさ「この遊園地全体があなたの『罠』…ってことかしら?」

アズサ「うふふ、よくできました。その通りよ~」

やよい「だったら、『罠』を仕掛ける前に『くっつけ』ちゃいます!」バッ

ウッウー ウーウー

『ゲンキトリッパー』の分体が、アズサに向かっていく。

ズァァァァァ

カチリ

ブシュゥゥゥゥーッ

しかし、アズサの手前で石造りの地面から噴水が上がり、『ゲンキトリッパー』が跳ねあげられた。

やよい「わっ!?」

あずさ「『罠』が起動した…」

383: 2015/06/19(金) 23:25:20 ID:CG5W8bPw
あずさ「何故…? そのスタンドは、どこも触ってないのに…」

アズサ「一つ言い忘れたけど、『罠』は一度仕掛ければ『射程距離』で能力が解除されることはないわ」

あずさ「能力の『射程距離』がとても広いのね」

アズサ「少なくともこの島の中なら、ね」

あずさ「…島?」

やよい「えっ!? 島だったんですか、ここって?」

アズサ「そんなこと言ったかしら~?」

あずさ「聞き間違いかしら…」

やよい「確かに聞きましたよ!」

アズサ「うふふ」

やよい「うふふじゃありませんっ!」

アズサ「ま、ここがどこだって関係ないと思うけどね」

アズサ「だって、『ゾーン・オブ・フォーチュン』の『罠』が張り巡らされている以上…」

アズサ「あなた達がこの遊園地から出ることはできないのだから」

ゴゴゴゴゴゴゴ

384: 2015/06/19(金) 23:28:23 ID:CG5W8bPw
あずさ「いいえ、出る方法はあるわ」

アズサ「?」

あずさ「目の前のあなたを倒せばいい。『射程距離』で解除されなくても、スタンドを止めれば能力も解除されるでしょう?」

アズサ「ふふ、なるほどね。でも、私の周りにはまだ『罠』が仕掛けてあるかもしれないわよ~?」

タッ

アズサ「あら」

あずさがためらうことなくアズサへと向かって走っていく。

あずさ「少なくとも、今やよいちゃんの『ゲンキトリッパー』が通った場所…そこには『罠』は仕掛けていない」

アズサ「そうね~。でも、そこからじゃスタンドを飛ばしても届かないわよ?」

あずさ「えいっ!」バッ

走り幅跳びのように、その場で踏み切る。

ズズッ

あずさ「『ミスメイカー』!」

空中で、紫の巨人が巨大な腕を振りかざした。

385: 2015/06/19(金) 23:31:24 ID:CG5W8bPw
あずさ「例え地面に『罠』を仕掛けてあったとしても…」

あずさ「踏まなければ、踏む前に攻撃すれば…!」

ゴッ!!

『ミスメイカー』の腕が、アズサに向かって振り下ろされる。

あずさ(頭に触れれば…いえ、どこでもいい。どこだろうと『眠らせ』さえすればもう逃げられない!)

アズサ「えっと、もう一つ言い忘れてたけど」

カチリ

ドボン!!

床から、石が砲弾のように打ち上がる。

あずさ「え…?」

アズサ「別に、『罠』は触れられなくても発動できるの。私が見える範囲なら」

やよい「あずささんっ!」

ドス ドス

あずさ「うっ!!」ドサァ!!

石に弾き飛ばされ、あずさは地面に落ちた。

386: 2015/06/19(金) 23:32:56 ID:CG5W8bPw
アズサ「うふふ…」クルッ

スタスタ

アズサはそれを見ると、千早を連れたまま遊園地の奥へと歩いていった。

やよい「あずささん、大丈夫ですか!?」

あずさ「うん…なんとか、ね」

やよい「今治します!」

あずさ「えーと…そうね、お願いするわ」

やよい「はいっ」

ピョコピョコ

あずさの傷口に小さなやよいのスタンドが入り込み、埋めていく。

やよい「あっ、あずささんの『偽物』はっ!」バッ

アズサ「ふふ」

やよい「あっ、よかった…まだ追いつけそうなところにいます!」

あずさ(………)

387: 2015/06/19(金) 23:34:24 ID:CG5W8bPw
やよい「行きましょう! 『罠』なんて、私の『ゲンキトリッパー』で全部使わせちゃいます!」

あずさ「待ってやよいちゃん。『ゲンキトリッパー』を使う必要はないわ」

やよい「へ? でも、そのまま行こうとしたら、そこらじゅうにもういっぱいいーっぱい『罠』が仕掛けてあるから…」

あずさ「それはないわ」

やよい「へ?」

あずさ「『罠』同士は近くに仕掛けられないか、あるいは個数か…何かしらの制限はあるはずだから」

やよい「な、なんでわかるんですか?」

あずさ「だって、何の制限もなく本当にそこらじゅうに『罠』を敷きつめられるのなら…」

あずさ「私たちはとっくに『再起不能』させられているだろうし…彼女がああやって千早ちゃんを連れていく意味がないもの」
*
あずさ「荷物になる千早ちゃんを置いて、自分はさっさと園外に出てしまえばいい。そして『罠』を起動! それで勝ちよ」

やよい「あ…」

あずさ「そうしないってことは、千早ちゃんを解放したら、その方法で100%私たちを始末できる自信がないってこと」

あずさ「つまり、能力を無制限に使えるわけじゃあない」

やよい「それなら、あんまりムダ使いできないかも…」

あずさ「そうね。だから千早ちゃんを連れて、私たちをさらに誘き出そうとしているのよ」

388: 2015/06/19(金) 23:35:38 ID:CG5W8bPw
アズサ「………」テクテク

やよい「どこかに向かってるみたいですけど、追いかけていったら…」

あずさ「恐らくその先には大量の『罠』が仕掛けているでしょうね」

やよい「じゃあ、その先の『罠』を『ゲンキトリッパー』で…」

あずさ「待ってやよいちゃん」

やよい「うぅ~、なんですかあずささん?」

あずさ「さっきのはやっても無駄だから待ってと言ったけど…今度はやってはいけないわ」

やよい「なんでですか?」

あずさ「いくらダメージが分散されると言っても、もしも全て…いえ8割でも潰されればやよいちゃんは氏んでしまうかもしれない」

やよい「え…」

あずさ「それくらいのことはやってくる…あるいは起こりうる相手だということよ」

あずさ「ここは、彼女を倒すことに集中しましょう。倒せばどの道『罠』は全て解除される」

やよい「…はい、わかりました」

389: 2015/06/19(金) 23:38:27 ID:CG5W8bPw
タタタッ

アズサ「あら、まっすぐ向かってきわね」

あずさ「ええ。考えた限りあなたがこの道でそれほど多くの『罠』を仕掛けているとは思えなかったから」

アズサ「そうね。あなた達の話してたことはだいたい正解よ」

やよい「あれ、聞こえてたんですか?」

アズサ「私たち『複製』…『完全なアイドル』は感覚に優れているから」

あずさ「『複製』?」

やよい「『複製』って、どういうことですか!? あずささんのことを機械とかでガーってやってできたんですか!?」

アズサ「そんなこと言ったかしら~?」

あずさ「聞き間違いかしら…」

やよい「確かに聞きましたよ!」

アズサ「あら~?」

やよい「あら~? じゃありませんっ!」

390: 2015/06/19(金) 23:40:16 ID:CG5W8bPw
アズサ「まぁ、私のことなんてどうでもいいわ」

やよい「どうでもよくないですよっ」

アズサ「それより…」ズッ

『ゾーン・オブ・フォーチュン』が、アズサの中に戻っていく。

あずさ「どこかに『罠』を仕掛けたわね」

やよい「どこから…」

カチリ

グワッ!!

コーヒーカップの柵が触手のように伸び、背後から二人の足を掴もうと襲い掛かる。

ビタッ

が、その直前で動きが止まった。

やよい「来ても…大丈夫です、『くっつけ』て止めました」

ウー ウー

二人の後ろを追いかけるように、『ゲンキトリッパー』の大群が走っている。

391: 2015/06/19(金) 23:41:35 ID:CG5W8bPw
アズサ「わからないのよね~。そこまでわかっていたのに、どうして遊園地の入口を探して逃げようだとか思わなかったの?」

アズサ「もちろんそこにも『罠』は仕掛けてあるけど、こっちに来るよりは賢いと思わなかった?」

あずさ「えっと、ごめんなさい…何を言いたいのかがよくわからないわ」

アズサ「そうよね~。だから私もここに来たんだけど」

カンカンカン

アズサが階段を登っていく。

あずさ「………」カンッ

あずさもその後に続いていこうとするが…

あずさ「…やよいちゃん?」クル

振り向くと、やよいは階段の下で立ち止まっていた。

やよい「あ、あの…あずささん、ここって…」

あずさ「あ…」

あずさ(やよいちゃんは高いところが苦手だったわ…この先は…)

392: 2015/06/19(金) 23:42:50 ID:CG5W8bPw
カチリ

あずさ「あら?」ガシッ!

やよい「へっ!?」ガシッ!!

二人の足が、床に固定された。

ガタガタガタガタ

やよい「えっ、えっ!?」

階段がエスカレーターのように、ひとりでに動いて二人を上まで運んでいく。

あずさ「『ミスメイカー』で止め…」

アズサ「ふふ、もう遅いわ」

ドザァ!!

あずさ「きゃ!」

やよい「はわっ!」

二人が運ばれた先は、ジェットコースターの…最後部座席だった。

393: 2015/06/19(金) 23:46:07 ID:CG5W8bPw
キリ…キリキリキリ

二人を乗せたコースターが、ゆっくりと動き出す。

やよい「えっ、えっ…」

あずさ「………」ジ…

あずさは先頭に目を向ける。横になっている千早と、こっちを向いて座っているアズサの姿が見えた。

アズサ「さぁ、ここからが本番よ…」

アズサ「アトラクション、楽しんでくださいね♪」

394: 2015/06/19(金) 23:50:05 ID:CG5W8bPw
スタンド名:「ゾーン・オブ・フォーチュン」
本体:ミウラ アズサ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:C スピード:D 射程距離:E(1m程度) 能力射程:A(数km)
持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
能力:触れたものを何だろうと「罠」にするアズサのスタンド。
「罠」は直接触れるかアズサの意思で起動し、一度発動すると、元の形に戻る。
一度設置した「罠」は相当離れても、消えたりせずその場に残る。
ただし、「罠」を設置するためのスタンド自体の射程距離は短い。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

今回はこれでようやく終わりです。
今後は出来次第書けた分を投下する方式にしようと思います、どうしても進まなければ自分で指定するかもしれませんが…

397: 2015/07/06(月) 02:56:56 ID:WxxCwp7A
ゴゴゴゴゴ

キリキリキリ

レールの底にあるチェーンリフトが、コースターを押し出している。

やよい「駄目っ、駄目ですっ、このままじゃ…」

アズサ「うふふ、やよいちゃんはもういっぱいいっぱいみたいね~」

アズサ「もちろん、この先のレールにもたーっぷり『罠』があるわ。無事に抜けられるかしら~?」

あずさ「いえ、抜ける必要なんてないわ」

あずさ「やよいちゃん、『ゲンキトリッパー』を。出る前にローラーを『くっつけ』て止めちゃいましょう」

やよい「あっ…! そ、そうですね! それじゃ、今…」

アズサ「もちろん…あなた達が座っているそこにも『罠』は仕掛けてある」

カチリ

ガン! ギン!

あずさ「うっ!?」

やよい「わっ!?」

ジェットコースターの安全レバーが、二人をシートに挟み込んだ。

398: 2015/07/06(月) 03:00:24 ID:WxxCwp7A
アズサ「大人しくしててね。少なくともこのコースターが坂道を登り始めるまでは」

やよい「『ゲンキトリッパー』が…出せませんっ…!」ググッ

あずさ「『罠』自体が『スタンド能力』だから…押さえ込まれちゃうのね」ググ

あずさ(いち、に…先頭まで、座席がいっぱいだわ…そして、恐らくそのほとんどに『罠』が仕掛けられているでしょう)

キリキリ…

あずさ(このままジェットコースターがびゅーんって落ち始めたら、一番前を目指すのはちょっと大変かもしれないわ)

あずさ(…その気になれば、このレバーが上がった瞬間、レールに降りて逃げることはできなくもない。やよいちゃんの『ゲンキトリッパー』を使えば安全にレールの上に落下できる)

あずさ(でも…)チラリ

コースのちょうど中間あたりに、足場と、隣接した階段が見える。

あずさ(緊急用の出口がある。あそこで降りられたら、私たちが降りて下から向かおうにも間に合わない…間に合ったとしても『罠』が仕掛けられているはず)

アズサ「うふふ」

あずさ(あの人もそれをわかって、ああやって一番前に座ったまま何もしないのね)

ゴゴゴゴゴゴ

406: 2015/07/14(火) 10:26:59 ID:vTfd6.EQ
ゴォォォォォォォ

やよい「うぅぅぅぅっ…!」

ジェットコースターがカーブする度に、体に重力がかけられる。

あずさ「…やよいちゃん、もういいわ。私の『ゲンキトリッパー』を解除して」

やよい「えっ?」

あずさ「ここにいるだけじゃあ、彼女は捕まえられない」

ガッ

背もたれの上に足をかける。

あずさ「私が、一番前まで行くわ」

やよい「そんな、危ないですよっ!」

あずさ「ええ、危ない…だから、やよいちゃん。後ろの席から私を手伝って」

やよい「そんなこと…」

ポンッ

下を向くやよいの頭に、手を置く。

あずさ「お願いね」

407: 2015/07/14(火) 10:30:26 ID:vTfd6.EQ
ドクン ドクン ドクン

あずさ「ふぅ…」スッ

ピタ…

やよい「………」

あずさ「ありがとう、やよいちゃん」

ゆっくり、慎重にコースターを移動していく。

アズサ「そんなゆっくりで…私のところまで着くのはいつになるのかしらね~」

あずさ「ゆっくりでも、近づいていけばいつか辿り着くと思うの。方向は間違ってないから」ス…

トンッ

言いながら、あずさは前のシートに足を着いた。

アズサ「わかってる? 『くっつけ』ながら向かってくるってことは…」

カチリ

あずさ「!」

アズサ「私が仕掛けた『罠』から逃げる暇がなくなるってことよ?」

408: 2015/07/14(火) 10:32:32 ID:vTfd6.EQ
バガッ

コースターの中心が広がり、ドーナツのように穴が空く。

やよい「あ…!!」

ズズッ

あずさ「きゃ…!」グラッ

シートも手前の方に引っ張られ、足を取られる。

あずさ「っ!」ガシィ!!

前のシートの背もたれを掴み、橋を作るような体勢で踏みとどまった。

ゴォォォォォォォ

あずさ「う…」

目の前でレールが流れている。

アズサ「頑張るわね~。そこからどうするの?」

あずさ「何も…しないわ」

ズズズズ…

あずさ「一度起動した『罠』は、しばらく経てば元に戻る…でしょう?」

409: 2015/07/14(火) 23:29:44 ID:vTfd6.EQ
ガシッ ガッ

あずさ「ふぅ、ふぅ」

走るジェットコースターの上を、あずさは慎重に進んで行く。

アズサ「一つ、いい?」

あずさ「…なにかしら?」

アズサ「どうして、そこまでする必要があるの?」

あずさ「そこまで…っていうのは、どういうこと?」

アズサ「私達の目的は『完全なアイドル』としてあなた達の代わりをし、アイドルとしてのあなた達を永遠に残すことよ」

アズサ「あなた達を傷つけることが目的じゃあない…あなた達がそうやって向かってくるからそうせざるを得ないだけ」

あずさ「………」

アズサ「この島で不自由なことはできる限り対処するし、いつまでも閉じ込めておくつもりはない。私たちの存在が受け入れられるようになれば、あなた達は自由に生きられるわよ」

あずさ「でも…私は…」

アズサ「運命の人を見つけたいのよね? だからアイドルを始めた」

アズサ「でも、それなら私が代わりに探すわ。あなたの記憶を持っているんだもの。きっと見つけられる。そして、あなたがその人と結ばれた後も、アイドルとしての三浦あずさはこの世に残り続ける」

アズサ「いいこと尽くめじゃない? こんな氏ぬような思いをしてまで逆らう必要が、どこにあるの?」

410: 2015/07/14(火) 23:43:39 ID:vTfd6.EQ
あずさ「確かに…結果だけ見れば、いいことばかりに思えるわね」

アズサ「でしょう?」

あずさ「でも、それだけよ」

アズサ「? それがすべてでしょう?」

あずさ「違うわ。それは結局、与えられただけ。そうなった時点で、もう私の夢じゃなくなっちゃうわ」

アズサ「…?」

あずさ「やっぱり…あなたは私とは違うわね。私の記憶を持っているみたいだけど、持っているだけ」

あずさ「夢は、自分で掴み取ってこそ自分のものになる。自分にとって、価値があるものになるのよ」

アズサ「そのために、痛い目に遭うかもしれないのに?」

あずさ「痛いのは、嫌だけど。譲れないものもあるの」

あずさ「夢を叶えた時に、ちゃんと胸を張っていたいから」

アズサ「理解できないわね…」

あずさ「あなたは生まれた時からすべてを持っていた。だから、わからないのね」

あずさ「理解できなくてもいい。いくら、夢見がちだって言われても…」

あずさ「私は、私の夢を、くだらないものにされたくはない」

411: 2015/07/14(火) 23:49:06 ID:vTfd6.EQ
アズサ「…やよいちゃんは?」

やよい「えっ?」

アズサ「『複製』が稼いだギャラは、ちゃんとやよいちゃん本人に入るようになるわ」

アズサ「それだったら、別にやよいちゃんがわざわざアイドルのお仕事する必要はなくなるわよ?」

やよい「家はちょっと貧乏で大変かもですけど…」

やよい「何もしてないのに、お金だけ貰うなんて、そんなのよくないですよ!」

アズサ「でも、家計のためにアイドルをしているんでしょう?」

アズサ「それに、ここまで地位を築いてきたのはやよいちゃん本人。そのご褒美みたいなものよ、ちょっとくらい楽をしたっていいんじゃない?」

やよい「わたし、たしかにお仕事して、家族を助けられたらって思ってますけど…」

やよい「でも、みんなの前で歌って踊って、それでワーって拍手とかしてもらえるのが嬉しくって、楽しくって、ドキドキするんです!」

やよい「それが、好きだから…じゃなかったら、わたし…アイドルやってません!」

アズサ「ああ、そう…」

412: 2015/07/15(水) 00:00:46 ID:hhdz25L6
カチリ

あずさ「!」

グゴオ

あずさが踏んだシートが勢いよく隆起する。

ゴォォォォォォ

あずさ「んっ!」バッ

上の方で交差しているレールが目の前に迫ってきたが、かがんで潜り抜けた。

アズサ「………」スッ

やよい「! あずささん! あの人、何かやろうとしてますよ!」

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』ッ!!」ピタッ

カチリ

アズサが足元のレールに触れ、新たな『罠』を仕掛けた。

ザン!

やよい「なんっ…!?」

アズサのスタンドが触れた部分が、柱のように変形してせり上がり、コースターの隙間に入り込んだ。

413: 2015/07/15(水) 00:05:21 ID:hhdz25L6
ギギギギギギギ

あずさ「ゆ、揺れる…!」

ギッギギギギギ

あずさ「この軋み方…駄目だわ、切り離される…!」

フラッ

あずさ「え?」

あずさの足が、シートから離れた。

あずさ「『ゲンキトリッパー』が…やよいちゃん!?」

やよい「あ………」

ブチン!!

コースター同士を接続している金具が切れ…

ブワッ

あずさ「きゃああああああああああああああああああああああ」

やよい「うわあああああああああああああああああああああ」

後部座席は横向きに弾け飛び、二人は宙に放り出された。

414: 2015/07/15(水) 00:13:06 ID:hhdz25L6
あずさ「やよいちゃん…!」バッ

やよい「っ!」

ガシッ!!

『ミスメイカー』が空中で手を伸ばし、やよいがそれに掴まる。

アズサ「もう、どうにもならないわね~」

アズサ「二人仲良く…ぺっちゃんこになっちゃいなさい!!」

あずさ「いえ、まだよ…」

ドドドドド

吹っ飛ばされた軌道上には、レールが走っている。

あずさ(このレールを掴んで上に登れば…コースターはこのレールを通る、彼女は先頭にいる! 『ミスメイカー』のパワーなら迎え撃てるわ…!)

あずさ「『ミスメイカー』…! レールを掴んで…!!」バッ

スカッ

しかし、『ミスメイカー』が伸ばした腕は数センチの差で空を切った。

あずさ「あ…」

あずさ(届…かない…駄目…だわ…)

415: 2015/07/15(水) 00:17:22 ID:hhdz25L6
ヒュォォォォォ

二人はコースターからどんどん離れるように落ちていく。

アズサ「ほら…逆らおうとするかこうなるのよ」

アズサ「これに懲りたら、もう大人しくしてなさい? 生きてたら、だけど」

あずさ(落ちる…もう、どうしようも…)

ワラワラ

あずさ「え?」

ウーウー ウッウー

あずさ「これは…!」

『ミスメイカー』の腕に、小さなスタンドが次々『くっついて』いく。

やよい「あずささん!」

あずさ「やよいちゃん…!?」

やよい「これで、どこかに…!」

あずさ「…!」

416: 2015/07/15(水) 00:19:18 ID:hhdz25L6
アズサ「『ゲンキトリッパー』を腕につけて、『くっつけ』られるようにしたのね~」

アズサ「でも、それが何? もう『くっつけ』られる場所なんてどこにもないわよォ~ッ」

あずさ(確かに、もう手の届く場所なんてない…『くっつけ』ようにも、『くっつけ』るような場所なんてない)

あずさ(それでも…)

やよい「あずささん…!!」

あずさ(諦めたりなんて、ぜったいにしない…!!)

あずさ「『ミスメイカー』!!」バッ

横に向かって、思い切り両手を広げた。

ゴォッ

アズサ「!?」

その後ろから何かが近づいてくる。

ォォォ

オオォォォォォォォォ

アズサ「回転…ブランコ…!?」

417: 2015/07/15(水) 00:20:48 ID:hhdz25L6
ピタ

『ミスメイカー』の指先が、空を駆ける回転ブランコの鎖に『くっつい』た。

アズサ「な…何ですってェェェーッ!?」

グゥゥーン

あずさ「くぅぅ…!」

やよい「うぅぅぅぅ…!!」

アズサ「で、でも! そんなものに指先だけくっつけたところで、遠心力に振り回されるだけよ!」

あずさ「『ミスメイカー』…!!」

カチ!!

鎖の触れている部分に、『0』のパネルが表示される。

あずさ「『眠って』!!」

ブチブチブチ

鎖が、繋ぎ止めるという機能を停止し、緩んだ。

ブワッ

二人は腕に『くっつい』た回転ブランコごと、再び宙に放り出される。

418: 2015/07/15(水) 00:22:53 ID:hhdz25L6
ゴォォォォォォォ

ちょうど、コースターの移動先に向かって飛んでくる。

アズサ「嘘よ…」

アズサ「こんなの、嘘に決まってる…!!」

あずさ「はっ!」バッ

ズガァン!!

腕にくっついた『ブランコ』を地面に叩きつけるように、先頭の一つ前のシートに落ちた。

カチリ

メキメキメキメキ

シートが肉食動物のように口を開け、ブランコを捕食する。

あずさ「着いたわ。射程距離内に」

アズサ「…………」

あずさは噛み砕かれたブランコの上に乗って、アズサを見下ろしていた。

419: 2015/07/15(水) 00:25:05 ID:hhdz25L6
やよい「っとと」

ウッウー ウーウー

その下ではやよいがバラバラになったブランコを『くっつけて』いる。

あずさ「さぁ、千早ちゃんを返してくれるかしら?」

アズサ「まだよ…まだ、『ゾーン・オブ・フォーチュン』で直接攻撃すれば…」

あずさ「………」

アズサ「ウシャァッ!」バ

あずさ「『ミスメイカー』」グオッ

アズサ「ぐぶっ…」ドボォ

アズサのスタンドの攻撃が当たるよりも前に、その腹に『ミスメイカー』の腕がめり込んだ。

あずさ「『罠』を張って戦うスタンド…それ自体はあまり強くないのね」

アズサ「あっ!!」ブワッ

ヒュルルルルル

ガコン!!

『ミスメイカー』の拳に打ち上げられたアズサは、コースターの一番後ろのシートに落ちて叩きつけられた。

420: 2015/07/15(水) 00:26:15 ID:hhdz25L6
アズサ「あ…ぐ…」

やよい「やりました! 倒しましたよっ!」

あずさ「ふぅ…」チラ…

千早「………」

先頭の座席に横たわっている千早を見る。怪我などはない。

やよい「終わったから、早く降りましょう。地面に着きたいです~っ…」

あずさ「待っててね。千早ちゃんが起きたら、『ブルー・バード』で軽くして…」スッ

眠る千早の肩に手を置く。

カチリ

・ ・ ・ ・

あずさ「…え?」

シュルシュル

ガシィ!!

千早の手足が、あずさの全身に絡みついた。

421: 2015/07/15(水) 00:28:20 ID:hhdz25L6
あずさ「っ…!?」ガクッ

両手両足を固定され、あずさは座席の下へと倒れる。

やよい「あずささん!? え、え…!?」

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』は…」グ…

やよい「!」バッ

やよいが振り向くと、後部座席で、アズサが体を起こしていた。

アズサ「触れたものを『罠』に変えるスタンド…」

あずさ「触れた…もの」

アズサ「そう…! 千早ちゃんだって例外ではないわ!」

あずさ(身動きが…取れない)

千早「ぐっ…こ、これは一体…!?」

あずさ「目を覚ましたのね、千早ちゃん…見ての通りよ」

422: 2015/07/15(水) 00:31:11 ID:hhdz25L6
アズサ「さぁ、仕上げよ!」

カチリ

ギギギ…

前方のレールが変形し、発射台のように空に向く。

アズサ「これからコースターごとコースから外し…墜落させる…!!」

アズサ「私は『完全なアイドル』…これくらいの高さから落ちてもなんともないけど、あなた達はどう…!?」

やよい「ど、どうしましょう…!?」

あずさ「千早ちゃん、『ブルー・バード』を出せない…?」

千早「駄目です…! 腕が、自分のものでないように動きません…」

あずさ「そう…だったら、やっぱり…やよいちゃん」

やよい「!」

あずさ「まず、私たちの体をコースターに『くっつけ』て。やよいちゃん自身もね」

やよい「は、はい…」

あずさ「そうしたら、『ゲンキトリッパー』でローラーをくっつけてコースターを止めて」

やよい「あっ、そっか、止めればいいんだ…!」

423: 2015/07/15(水) 00:36:32 ID:hhdz25L6
アズサ「うふふ、止める…ね、そんなことはできないわ」

やよい「え…?」

アズサ「もちろん、ローラーにだって『罠』を仕掛けてあるッ! 起動した瞬間、ローラーは座席から外れる!!」

アズサ「『くっつけ』て止めたところで、勢いまでがなくなるわけじゃあない! そのままこの座席は真っ逆さまよ!!」

あずさ「………」

アズサ「『ゲンキトリッパー』でローラーを止める? いいでしょう、やってみるといいわ」

アズサ「その瞬間、『罠』が起動するッ! 逃れることはできないッ!」

千早「『ブルー・バード』さえ…出せれば…!!」

やよい「どうしましょう、あずささん…!?」

あずさ「…構わないわ、やって。やよいちゃん」

千早「え!?」

アズサ「話を聞いていたの!?」

あずさ「ええ、聞いていたわよ~。いいから、やっちゃって、やよいちゃん」

やよい「…はいっ!! わかりましたっ!」

アズサ「ふん…それじゃ、これで終わりね、『ゾーン・オブ・フォーチュン』ッ!!」

424: 2015/07/15(水) 00:41:02 ID:hhdz25L6
ギッ!

ガガガガ…

ピタァ…

発射台となったレールの直前で、ジェットコースターが止まった。

やよい「………」

あずさ「………」

千早「………」

アズサ「と…止まった…」

アズサ「何故!? ど、どうして…どうして、『罠』が起動しないの!?」

あずさ「あなたのその『罠』だけど…」

アズサ「はっ!?」

カチ…

ローラーの上に、プレートが浮かんでいる。

あずさ「私が『ミスメイカー』で、『眠ら』せたから。だから、起動しないの」

アズサ「は…………は!?」

425: 2015/07/15(水) 00:44:34 ID:hhdz25L6
アズサ「な、何!? あ、ありえないわ…!!」

あずさ「ありえないって、何が?」

アズサ「そもそも! あなたは千早ちゃんに押さえ込まれて『ミスメイカー』を出すことなんてできないはずでしょう!?」

あずさ「そうね…今は」

アズサ「今…?」

あずさ「あなたを飛ばしたすぐ後かしら。千早ちゃんに触れる前に、触れておいたの」

アズサ「そんな、嘘よ! そんなの、わかるわけがないわ!!」

あずさ「わかるわ。だって、そこしかないでしょう?」

アズサ「え…」

あずさ「私たちが集まったところでまとめて片付けようとするなら…『罠』を仕掛けるとしたら、ここに仕掛けるしかないのよ」

アズサ「………………」

あずさ「まさか、千早ちゃんにまで『罠』を仕掛けてあるとは思わなかったけど」

千早「あ…」シュルシュル

『罠』が解除され、千早の手足がほどけていく。

あずさ「それじゃ、みんな。降りましょうか」

426: 2015/07/15(水) 00:50:13 ID:hhdz25L6
アズサ「まだ、まだ…まだよッ!! まだ私は負けていない!!」ダッ

アズサが後部座席から、前の方に向かってくる。

あずさ「………」

ピタ…

アズサ「ん!? あ、足が…『くっつい』て…!」

やよい「『ゲンキトリッパー』、捕まえましたっ」

アズサ「やよいちゃん…!!」

あずさ「さて…『ミスメイカー』の能力は『眠ら』せることよ」

あずさ「能力を解除すれば…起きるわ」

ガギンッ!!

シートがローラーと切り離され、打ち上げられた。

427: 2015/07/15(水) 00:51:18 ID:hhdz25L6
ゴォォォ

アズサ「ふふ…これで勝ったつもり…?」

アズサ「さっきも言ったけど、これくらいの高さなんて、私たち『複製』には…」

フワフワ

アズサ「って…風船みたいに浮いてる…?」

千早「『ブルー・バード』…」

千早「コースターを『軽く』しました。空気よりも、もっともっと…」

アズサ「し、しかも『くっつい』てるから離れられない…」

アズサ「ちょ、ちょっと…あ~れ~」

アズサはコースターごと浮いたまま、どこかへと飛んで行った。

428: 2015/07/15(水) 00:54:54 ID:hhdz25L6
三人は、レールの上に座っている。

あずさ「千早ちゃん、ここに来てたのね~。私たちが捕まったあの場には、千早ちゃんはいなかった気がするけど」

千早「ええ。皆を助けるために、残りの皆でこの島に来たんです」

千早「助けに来たつもりが、助けられてしまいましたが…」

あずさ「でも、こうして無事でよかったわ」

千早「あずささんと、高槻さんも…無事なようで安心しました」

あずさ「あ、その前に…」

千早「?」

あずさ「まずは『軽く』して、下まで降ろしてもらえるかしら? やよいちゃんが…」

やよい「………」グッタリ

千早「あ…は、はい。そうですね」

To Be Continued…

431: 2015/07/15(水) 06:28:34 ID:ts971k9s



To Be Continued...





引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2