429: 2015/07/15(水) 01:43:15 ID:hhdz25L6





前話はこちら





やよい「ふぅーっ…やっと落ち着きましたぁ…」

あずさ「よしよし、頑張ったわねやよいちゃん」ナデナデ

戦いが終わり、三人は遊園地のベンチに座っていた。

あずさ「それで、千早ちゃん」

千早「はい、なんでしょうかあずささん」

あずさ「ここ、島のどの辺りかわからない?」

千早「私に聞かれても…私も、ここに来たばかりですし」

あずさ「そうよねぇ」

やよい「やっぱり、元の場所に戻ることはできないんでしょうか…」

千早「…寮みたいな場所だったかしら。そんなところに戻る必要はないわ」

やよい「え?」

千早「この事件を起こしたあの人を倒せば、それで全て終わる」

やよい「あの人、ですか?」

あずさ「何か知ってるのね、千早ちゃん。話してくれるかしら?」

千早「それは…わかりました、話します」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

430: 2015/07/15(水) 01:56:29 ID:hhdz25L6
あずさ「まさか、高木会長が…」

やよい「信じられないです…」

千早「あの人は誰よりもアイドルに対して真っ直ぐだった。だからこそ…ああなってしまったのかもしれない」

あずさ「とにかく、会長を止めるべき…なのよね」

千早「ええ。恐らく、島のどこかにはいるはずなのですが」

千早「…この霧さえなければ、律子が『ロット・ア・ロット』ですぐに見つけてくれると思うのだけれど」

やよい「そういえば、さっきのあずささんの『複製』、千早さんをどこに連れて行こうとしたんですかね?」

あずさ「確かに…そう、よね」

あずさ「うーんと、私たちが来た方角からコースターの非常出口の方角を考えると…あっちの方向かしら」

やよい「そっちじゃなくて、あっちだと思います」

千早「行きましょう。その先に、何かあるかもしれない」

………

……


433: 2015/07/16(木) 01:42:58 ID:CiiZdutA
ザワザワ

島の施設、その中の一つがざわめいている。

「765プロのアイドル達がこの島に乗り込んできたらしい」

「三浦あずさと高槻やよいが外出したまま戻ってきてないそうよ」

「数名は確保したけど、星井美希と我那覇響が…」

ゴゴゴゴゴ

その陰で、職員達の会話を聞いている人物がいた。

雪歩「………」

雪歩だ。

タッタッタ

雪歩は見つからないように、施設のある一室に向かう。

ガラッ

雪歩「真ちゃん!」

真「お、雪歩」ガーッ

扉を開くと、その中で、真が一人エアロバイクを漕いでいた。

434: 2015/07/16(木) 01:51:25 ID:CiiZdutA
真「よっと」タンッ

エアロバイクの上から飛び降りる。

雪歩「はい、水」

真「ありがと」

グビッグビッグビッ

真「ぷは…」

雪歩からペットボトルを受け取ると、一気に飲み干した。

真「で、どうだった?」

雪歩「うん。真ちゃんの言った通り、みんな動いてるみたい」

真「そっか。思ってたより早かったな」グイッ

真「んーっ…」グーッ

真は肩にかけたタオルで汗を拭うと、体を伸ばした。

真「みんなが動き出したのなら、ボクもじっとしてはいられないな」

435: 2015/07/16(木) 01:55:16 ID:CiiZdutA
真「お待たせ」

シャワー室から、トレーニングウェアから着替えた真が出てくる。

真「さ、まずはここから出ようか」

雪歩「でも…どうやって出るの?」

真「ん?」

雪歩「なんか、ピリピリしてるみたいだし…入り口にもいっぱい職員の人がいるよ。出ようとしたら、すぐ捕まっちゃうよ」

真「わざわざ出入り口から出る必要はないよ」ピキピキ

真は右手に『ストレイング・マインド』を纏わせると…

真「オラァッ」

近くの壁を殴り、ブチ抜いた。

パラパラ

真「よっと」

壁に人が通れるくらいの大きな穴が空き、真はためらわずにそこをくぐった。

真「さぁ。誰か来る前に行こう、雪歩」

雪歩「う、うん…」

436: 2015/07/16(木) 02:47:16 ID:CiiZdutA
ガサッ

真と雪歩が、二人で森の中をかき分けながら進んで行く。

雪歩「真ちゃん、これからどうするの?」

真「んー、どうしようか。まずは誰かと合流したいところなんだけど」

雪歩「ここって、牢獄…ってのがあるんだよね。真ちゃんも暴れて捕まってた」

真「う…ま、まぁ本当のことだけどさ」

雪歩「そこに行けば、誰か捕まってるんじゃないかな」

真「…あそこに閉じ込められたら、出ることは不可能だよ」

雪歩「え」

真「あの牢獄の番人…あのスタンドはヤバすぎる。どうしようもなさでは春香の『アイ・ウォント』以上かもしれない」

雪歩「そ、そんなに…?」

真「前まではしばらくすれば帰してもらえたけど」

真「今の騒ぎじゃ、765プロが全員捕まらない限りは出してもらえないだろうな…」

真「だからこそ、今まで大人しくしてたんだよね。いざって時に捕まったままじゃ話にならないから」

雪歩「真ちゃんがそこまで…」

439: 2015/07/21(火) 22:25:48 ID:fdCZ3chQ
真「とにかく…あそこは後回しにするしかない。ボク達だけじゃあ絶対に勝てない」

雪歩「真ちゃん…」

真「だから、まずは残ってるみんなと合流しよう」

雪歩「う、うん。そうだね、まだ捕まってない人もいるらしいし…」

真「美希と響は無事なんだよね?」

雪歩「それと、あずささんとやよいちゃんも見つかってないみたい」

真「そっか。それじゃ、まずはその誰かと合流するのを目指すか…」

雪歩「うん」

真「ボク達だけじゃあどうにもならないかもしれないけど…」

真「みんな一緒なら、誰が相手だって勝てる。…たぶんね」

雪歩「…うん、そうだね」

雪歩(でも…)

雪歩(その『みんな』の中に、私って入っているのかな)

雪歩(私は、自分でスタンドを使うこともできないのに…)

440: 2015/07/21(火) 22:36:29 ID:fdCZ3chQ
ザッザッザッ

真「うーん…」キョロキョロ

真が雪歩の先を歩きながら、周囲を見渡している。

雪歩「…ねぇ、真ちゃん」

真「ん? なんだい、雪歩」

雪歩「誰かと合流するって言ったけど…どうやって合流するつもりなの…?」

真「え、それは普通にこうやって探し回るつもりだけど」

雪歩「真ちゃん…それで、見つかるの…?」

真「見つかるまで歩こう」

雪歩「………!」

真「それが一番手っ取り早いと思うんだ」

雪歩「そ、そう…かな…?」

雪歩(だ、大丈夫…なの…? もっと、いい方法があるんじゃ…)

雪歩「………」

雪歩(うぅ、何も思いつかない…! ダメダメな私…)

441: 2015/07/21(火) 22:48:41 ID:fdCZ3chQ
雪歩「ふぅ、ふぅ…」

真「雪歩。少し、休もうか?」

雪歩「ううん、大丈夫。これくらいでへばってたらアイドル失格だよ」

真「…そっか、じゃあ行こうか」

雪歩(何もできないなら…せめて、真ちゃんの足を引っ張らないようにしなくっちゃ…)

真「ん?」

タタタ

しばらく歩いていると、真が何かを見つけ、駆けていく。

雪歩「真ちゃん?」

真「建物だ…こんな森の中に」ピタ…

真は壁に手をつく。

真「………」スッ

耳をくっつける。

真「中で金属がぶつかるような音がする」

雪歩「え!」

442: 2015/07/21(火) 23:41:44 ID:fdCZ3chQ
真「…よし。中に入ろうか」

雪歩「え!? 危ないんじゃないかな…回り込んで行った方がいいんじゃ…」

真「いや。このまま回り込んでも遠回りだ、それに中に誰かいるかもしれない」

雪歩「そう…なの? そうかもしれないけど…」

ピキピキ

バガン!!

『ストレイング・マインド』で壁をブチ抜く。

真「進もう」

雪歩「………」

雪歩(なんだろ…ちょっと強引だなぁ真ちゃん…)

443: 2015/07/24(金) 19:54:03 ID:Zcl6kEOI
雪歩「ここは…」

カン! カン! カン!

ジ…ジジジ…

真「工場…かな。作ってるものは…」

雪歩「椅子とか、鉄骨とか…だね。何に使うんだろう」

真「ここに誰か、隠れてたりしないかな」ザッザッ

雪歩「あ! 待って、真ちゃん…!」

真「っと、ごめん。足元に気をつけて…」クルッ

バチッ

・ ・ ・ ・

真の視界の隅で、何かが光る。

雪歩「?」

ガッ

シュバァ

真が、ベルトコンベアの上から鉄の棒を拾い上げ、雪歩の顔面に向かって投げた。

444: 2015/07/24(金) 21:00:19 ID:Zcl6kEOI
雪歩「は…」

バチィ!!

雪歩「きゃ…!?」

雪歩の目の前で、『電撃』が弾けた。

カランカラン

シュゥゥゥ…

鉄の棒が地面に落ちる音が、室内に響く。棒は溶けたようにひしゃげていた。

雪歩「な、何…?」

真「…出てこい」

シーン…

呼びかけるが、返事はない。

真「………」キョロ

キョロ

工場内を左右に大きく見渡す。人影は見当たらない。

445: 2015/07/24(金) 21:12:31 ID:Zcl6kEOI
ゴウンゴウンゴウン…

機械は何事もないかのように作業を続けている。

真「機械の陰に隠れてるのか…?」

バリバリバリ

真の背後のベルトコンベアで、金属を『電撃』が伝ってくる。

雪歩「真ちゃん!」

真「!」ピキピキ

雪歩の声に反応すると、腕に『ストレイング・マインド』を纏い…

真「オラァッ!!」バキィィィッ

振り向きながら、裏拳でベルトコンベアを粉砕した。

パリッ

…しかし、真の腕には僅かに『電撃』が流れている。

バリバリ

真「うあああああ!?」バリバリバリバリ

その『電撃』が腕で増幅し、迸った。

446: 2015/07/24(金) 21:18:30 ID:Zcl6kEOI
雪歩「ま、真ちゃんッ!!」

真「大丈夫…腕が少しコゲただけだ」シュゥゥウゥ…

真は、煙が立ち上る腕を抑えている。

雪歩(これって、『スタンド攻撃』…? でも、どこから…)

ゴウンゴウンゴウン

雪歩(隠れるなんていっぱいある…ここで、姿を現さずにああやって『電撃』だけで攻撃してこられたら…)

真「雪歩。危ないから、ちょっと外に出てくれない?」

雪歩「え、でも…」

真「いいから」

雪歩「う、うん…」

壁にあいた穴から、雪歩が工場の外に出る。

雪歩(私は…『スタンド使い』…だけど、自分でスタンドを操れるわけじゃあない…)

雪歩(私がここにいても、真ちゃんの足手まといにしかならない…)

447: 2015/07/24(金) 21:25:44 ID:Zcl6kEOI
雪歩(でも、真ちゃん…相手が見えないのに、どうやって戦うつもりなの…?)

真「ふーっ…」ピキピキピキ ビキッ ビキ

真の全身が、『ストレイング・マインド』の黒い鎧に覆われる。

カシャン ガシャン

タッ!!

すぐ近くで動く機械の一つに突っ込んでいくと…

真「オラァッ!」バッキャァァァァァンン

思いっきり、殴り飛ばした。機械はバラバラになって、部品が宙に舞う。

雪歩「え…!?」

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」バンッ ドンッ バキバキッ メキャッ バキャン

工場の中のものに片っ端から殴りかかり、どんどんブッ壊して地面を平らにしていく。

パリパリ

途中、どこかから『電撃』が襲いかかってくるが…

真「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」ベキッ バキバキバキ メシャッ バキャン バギャア

真に届く前に、破壊された欠片ごとブッ飛んでしまう。

448: 2015/07/24(金) 21:30:18 ID:Zcl6kEOI
真「よし」

バァーン

工場の床に、機械の残骸だけが散らばっている。

真「これでもう、隠れる場所はない…そうだろ?」

ドドドドド

ユキホ「ふーん…」

ドドド

雪歩と同じ姿をした『複製』が、そこに立っていた。

雪歩「わ、私が…いる…」

真「雪歩の『偽物』か」

ユキホ「『偽物』って呼ばれ方は…」

ユキホ「あんまり好きじゃないなぁ。なんだか、そこにいる本物さんに劣ってるみたいだから」

雪歩「えっ…?」

ユキホ「そうでしょう? なんでもかんでもダメダメダメダメ…今もそうやって外から見てるだけの人に」

雪歩「………」

449: 2015/07/24(金) 22:09:58 ID:Zcl6kEOI
真「こそこそ攻撃してきたヤツの台詞とは思えないな」

ユキホ「別に。スタンドは有効に使ってこそでしょう?」

真「で? 雪歩の『偽物』がこんなところで何をしてるんだ」

ユキホ「………フー」

物憂げにため息をつく。

ユキホ「もうわかってるだろうし、わからなくても知ったところでどうでもいいから言うけど…」

ユキホ「今、ここの外から確保に失敗した765プロのアイドルが来ている」

雪歩「!」

ユキホ「そして…それを知ってか知らずか、確保済みなのに勝手に動き回ってる人もいるみたいだし」

真「………」

ユキホ「たかが数人だけど…集まると厄介なことになるかもしれない。だから、私たちが散らばって確保に来てるってわけ。今度は好き勝手できないようにね」

真「知ったところでどうでもいい、っていうのは…」

ユキホ「決まってるでしょう。真ちゃん達は、ここで私に倒されるからだよ」

真「………」

ゴゴゴゴゴゴゴ

450: 2015/07/24(金) 22:29:24 ID:Zcl6kEOI
雪歩「真ちゃん…」

真「雪歩は下がってて。ボクが戦う」

雪歩「う、うん」

ユキホ「そうやって、真ちゃん一人に戦わせるつもり?」

雪歩「…!」

真「なんだ、ボク一人じゃあ不満かい?」

ユキホ「………」

真「かかってきなよ」クイッ

ユキホを指差すと、その指を引いた。

ユキホ「言われなくても…」

バチッ!!

真「!」

ユキホの体から火花が散る。

451: 2015/07/24(金) 23:07:57 ID:Zcl6kEOI
ユキホ「これが私のスタンド『コスモス・コスモス』。能力は…」パリッ

バチバチッ

壁に通っている鉄製のパイプに、『電気』が走っていく。

ユキホ「『電流』を流す。そして…」

バリバリバリ

その途中で、『電撃』が、爆発するように広がった。

ユキホ「拡散する…それだけ」

真「………」

シュゥゥゥゥ…

広がった後の鉄パイプが、溶けてひん曲がっている。

ユキホ「それだけだけど、鉄が熱でねじ切れるくらいのパワーはあるよ」

ユキホ「真ちゃんの『ストレイング・マインド』でも、流されたら無事じゃあ済まないかもね」

真「………」ザッ

パキッ

足を開き、腰を落とす。関節から割れるような音が鳴った。

456: 2015/07/31(金) 23:43:15 ID:GssFUmHo
タッ

壁際のユキホに向かって、真は跳ぶように真っ直ぐ突っ込んでいく。

ユキホ「………」ス…

パチッ

ユキホはそこから一歩も動くことなく、右手を上げた。指先から、火花が散る。

ユキホ「『コスモス・コスモス』」ヒュッ

床に振り下ろした。

バチバチバチ!!

ユキホの足元から真に向かって、『電撃』が亀裂のように地面を走ってくる。

真「うお…!」タッ

大きく跳び上がって、躱す。

真(そうか、『電気』のスタンド…ってことは)

バリバリィッ

真のちょうど真下で、『電撃』が爆発する。

真(電気が伝わる限り、この工場全体が射程距離か…!!)

457: 2015/07/31(金) 23:53:16 ID:GssFUmHo
真「ぐっ!」ピシ!

火花が『ストレイング・マインド』の表面にかすり、僅かにヒビが入った。

真「っと」スタッ

ユキホ「………」パリ

着地し、再び向かっていくが、ユキホは指を向けたまま何もしてこない。

真(『電撃』は、連続しては撃てないらしい…チャージする時間が必要なんだろうか)

ユキホ「………」

真(恐らく、撃てるようになるまでそうは時間はいらないだろう…なら)タッ

走り幅跳びのように踏み切り、ユキホに飛びかかる。

真「『電気』を通る物体のない空中からなら…!」

スッ

ユキホ「甘いよ」

バチィッ!!

今殴りかかろうと言う瞬間、目の前で火花が弾けた。

458: 2015/08/01(土) 03:47:12 ID:vrM7i.e6
ドッ

ゴロゴロゴロ

その衝撃で真は吹き飛ばされ、床を転がった。

ユキホ「ふぅ」

真「………」シュゥゥゥゥ

真が身につける『鎧』から、煙が立ち上る。

ユキホ「空気にだって電気は通るんだよ? 雷は空気を通って地上に落ちるでしょう?」

ユキホ「まぁ、金属に比べれば通る距離なんて『静電気』みたいなものだけど。近くから撃てばこんなものだよ」

真「………」

雪歩「真ちゃん!」

ユキホ「さてと。次はあなただよ」ジロッ

雪歩「ひっ!?」ビクッ

ユキホ「その怯えた態度…本当にイライラするなぁ。こんなのが私の元って考えるだけで虫唾が走るよ」

ユキホ「頃すなとは言われてるけど…」

ユキホ「それ以外なら、何やってもいいんだよ? アイドルとして『再起不能』にすることも」

459: 2015/08/01(土) 03:59:44 ID:vrM7i.e6
ガシャ!

ユキホ「………」クルッ

金属が擦れる音に、ユキホは目を向ける。

真「待てよ…」ユラ…

見ると、真がゆっくりと起き上がっていた。

真「ボクはまだ倒れちゃあいないぞ…!」

ユキホ「ふーん…」

真「雪歩!」

雪歩「!」

真「こいつはキミに強い殺意を抱いている…ボクが戦っているうちに逃げるんだ」

ユキホ「ふふっ」

真「何がおかしい?」

ユキホ「だって、真ちゃん。スタンドも扱えないあの子が一人で逃げたところで、一体何の意味があるの? いずれ捕まるだけだよ」

真「それは…」

ユキホ「萩原雪歩だって、それくらいわかってる。だから、逃げない。逃げられないんだよ、一人になるのが怖いから」

460: 2015/08/01(土) 04:14:13 ID:vrM7i.e6
雪歩「わ、私は…」

ユキホ「そうでしょ? 私はあなたの記憶を持ってるんだよ、だからわかる。だから、何もできないくせにそこにいる」

雪歩「私…は…」

真「おい、おまえ…」

ユキホ「それと…一人になるのが怖いってのは、真ちゃんにも当てはまるよね」

真「!」

ユキホ「中から、聞こえてたよ。強引にここを行こうって、ここに誰かいるかもしれないって入ってきたんだよね」

ユキホ「どうして? 萩原雪歩の言ったように、遠回りすればよかったのに。私みたいに、敵がいるかもしれないのに」

ユキホ「慌てちゃって…そんなに早く、誰かと合流したかったの?」

真「う…」

ユキホ「ま…それもそっか。765プロが攻められた時、みんななすすべもなく捕まっちゃったんだもんね」

ユキホ「それもこれも、みんな一人でいたから。バラバラだったから」

真「ううう…」

ユキホ「ねぇ。一人で戦うのって、そんなに怖い? 一人になるのって、そんなに怖い?」

真「うわあああああああああ!!」

461: 2015/08/01(土) 04:25:24 ID:vrM7i.e6
ユキホ「焦るよね…萩原雪歩がやられたら、真ちゃんは本当に一人になっちゃうから」

ダッ

色んなものを振り払うように、真がユキホの方へと向かってくる。

ユキホ「真ちゃんのスタンド。いくらパワーが強くたって、近づけさせなければいいだけだよね」ヒョイ

ユキホ「『コスモス・コスモス』」ジジッ

金属片を拾い上げ、『電気』を通す。

ユキホ「はい」ヒュッ

それを、真に向かって投げた。

コォォォ

真(殴ってブッ壊す……いや、ダメだ! あの小さい金属片に詰まった『電流』を、モロに流されることになる…!)

真「く…!」タッ

横っ飛びで、躱す。

バチチィッ!!

真「ぐあっ…!」ガリ ガリ

金属片から放出される爆発するような『電撃』が、鎧を削った。

462: 2015/08/01(土) 04:32:28 ID:vrM7i.e6
真「はぁ、はぁ」ガシャン

その場に、膝をついた。

真(威力が強い…! 『ストレイング・マインド』のガードも、お構いなしかっ…!)

真(しかも発動も、攻撃自体もとにかく速い! このままじゃ…)

ユキホ「もう一個」ポイッ

フワ…

放られた金属片が、真へと迫る。

真(やられ…)

ヴンッ…

その時。真の視界の横から、金属棒が飛んできた。

カンッ!

棒が、金属片とぶつかる。

バリバリバリ!!

カラン

移動してきた『電撃』によって折れ曲がり、地面に落ちた。

463: 2015/08/01(土) 04:40:36 ID:vrM7i.e6
真「…え?」

ユキホ「…何のつもり?」

雪歩「………」

ユキホ「萩原雪歩…!!」

棒を投げてきたのは、雪歩だった。

真「ゆ、雪歩…? なんで…」

ユキホ「なんで、工場の中に入ってきたの? 怖くないの? 怖いでしょう」

雪歩「怖いよ…」

雪歩「でも、私が何もできなくて…そのせいで真ちゃんが傷つくのを見ている方がよっぽど怖いよ…!!」

真「…!」

464: 2015/08/01(土) 04:44:11 ID:vrM7i.e6
ユキホ「真ちゃんが傷つくのが怖い、ね…」

ユキホ「でもさ。それって真ちゃんの方にも言えることだよね?」

ユキホ「それが嫌だから、何もできないあなたには外にいてもらってたのに…身勝手だとは思わないの?」スッ

話しながら、ユキホは床に向かって手を伸ばす。

真「オラァッ!!」ドヒュゥウウウ

届く前に、真はユキホに金属片を投げつける。

ユキホ「………」サッ

カイン!!

ユキホはたやすく避け、金属片は後ろの壁にぶつかった。しかし、攻撃は中断されている。

465: 2015/08/01(土) 04:52:37 ID:vrM7i.e6
真「…雪歩」

雪歩「…ごめんね、真ちゃん。勝手な真似して」

真「ううん、こちらこそ。情けない姿を見せちゃったね」

ユキホ「大変だね。スタンドも使えないその子に出しゃばられると、邪魔でしょう?」

真「そう、思うかい?」

ユキホ「…?」

真(ボクは何を焦っていたんだ…何を勘違いしていたんだ。これじゃ、あの『ファースト・ステージ』と同じじゃあないか)

真「雪歩の『偽物』。悪かったね、手を抜いてて。ここからは、本気で行くよ」

ユキホ「手を抜いてた…? そうは見えなかったけど」

真「すぐに…」ス…

真が両腕を前に出すと…

ギッ!!

鎧の背中が、大きく割れた。

真「わかるよ」

466: 2015/08/01(土) 04:54:23 ID:vrM7i.e6
スタンド名:「コスモス・コスモス」
本体:ハギワラ ユキホ
タイプ:一体化型・発動
破壊力:A スピード:A 射程距離:D(電流の届く範囲) 能力射程:D(電流の届く範囲)
持続力:D 精密動作性:E 成長性:C
能力:ユキホの体から発する「電流」のスタンド。
どんな生物も、その身体ではごく僅かで微弱な「電気」が流れている。
血の流れていない「複製」も、体を動かすためには脳からの電気信号が必要であり、例外ではない。
「コスモス・コスモス」はその「電気」を体内で限りなく増幅させ、攻撃に転換する。
一度体内から放たれた「電撃」は、一度だけユキホの意思で拡散する。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

475: 2015/08/16(日) 17:12:04 ID:n.zhK5FE
ギギギギギギギ

全身を覆っていた鎧が、音とともに少しずつ両腕に集まっていく。

ユキホ「これは…」

ギギギギ

蝶が蛹から羽化するように、真の姿が露わになっていく。

ギッ!

やがて真の両腕が、巨大な黒い手甲に覆われた。

ギギギ

両手の指を、人差し指から波打つように、感覚を確かめるように曲げる。

真「『ストレイング・マインド… ………」

ググ…

ギッ!!

拳を握りこむと、軋む音が鳴った。

真「『チアリングレター』」

476: 2015/08/16(日) 17:40:47 ID:n.zhK5FE
ユキホ「『チアリングレター』…それが本気の表れ? 私にはガードを下げたようにしか思えないけど」

真「………」タッ

ユキホ「動きも…全身に纏ってるわけじゃあないから、こっちに向かってくる速度が遅くなってるよッ!」バチッ

バリバリ

真に向かって、『電撃』が走っていく。

真「オラァ…!」グァン!!

バッキィィィーン

真は腰を落とし、拳でアッパーをかますように地面をすくい上げた。

ユキホ「!?」

ジッ!

機械の残骸が打ち上げられ、地面を走る『電撃』が真の前で途切れる。

真「『電気』が通る道をなくせば、ここまで攻撃は届かないだろ…!」

パラパラ

真がすくい上げた鉄の破片が、宙に舞っている。

ユキホ「…その防ぎ方は間違いだね」

477: 2015/08/16(日) 18:06:13 ID:n.zhK5FE
バチィッ!!

攻撃が途切れた場所で、『電撃』が拡散する。

ヒュン ヒュン

その衝撃で、真が打ち上げた鉄の破片が手榴弾のように飛散した。

ユキホ「ほら! そうやって腕だけに鎧を集めたら…!」

バババババ

真に襲い掛かった破片が、彼女の周囲から消えた。

・ ・ ・ ・

真「集めたら…なに?」バラッ

ガシャン

真が手を開くと、掴み取った破片が落ちた。

ユキホ「………」チラッ

雪歩「ふーっ…」

真の後方では、雪歩がユキホの方を見据えながら足元の瓦礫をどかしていた。

486: 2015/10/12(月) 01:35:19 ID:4w8ua6Vk
ユキホ「………」ジ…

雪歩の立っている位置から自分の位置までを、視点で辿り、足元を見る。

グオッ

雪歩「!」

視界の隅から、真が懐に向かって潜り込んできた。

真「たっ」ヒュッ

ユキホ「っと…!」バッ

すくい上げるようなアッパーを、飛び退いて躱す。

パチッ

真「!」ババッ

ユキホの指から火花が走るのが見えると、真はすぐさま離れていった。

ユキホ「………」

真「どこを見ているんだい?」

ユキホ「…やっぱり、まずは真ちゃんからか」

487: 2015/10/12(月) 01:36:12 ID:4w8ua6Vk
スッ

ユキホが真に向かって人差し指を向ける。

真「!」タッ!

それに反応して、真は横に大きく跳んだ。

ユキホ「………」スゥ…

真「!」

逃げる真の姿を、ユキホは指で追っていく。

キキッ

真「オラァッ」ダッ

真はブレーキをかけると、ユキホに飛びかかった。

ユキホ「逃げきれないと判断したのはいいけど、向かってきたのは失敗だったね」

バチッ

ユキホ「『コスモス・コスモス』」

バリバリバリ

ユキホの指から放たれた『電撃』が、空中で拡散しながら真へと襲いかかる。

488: 2015/10/12(月) 01:36:57 ID:4w8ua6Vk
真「オラァッ」グオッ

バッチィィィィン!!!

真は正面から殴りつけ、拳と『電撃』がぶつかり合う。

真「ぐあっ!?」グオッ

ガシャン!!

衝撃で真は弾き飛ばされ、背中から地面へと叩きつけられた。

ユキホ「…!」

真「くっ、なんてパワーだ…!」バッ

すぐに起き上がり、ユキホの射程距離から外れる。

ユキホ(なんてパワー…?)

ユキホ(それはこっちの台詞だよ、『コスモス・コスモス』とまともにぶつかりあって無事でいられるのがまずおかしい…)

489: 2015/10/12(月) 01:37:43 ID:4w8ua6Vk
ユキホ「とは言っても…」

ダダダ

真はジグザグにステップを踏みながらユキホへと近づいていく。

ユキホ(『硬化散弾銃』を除けば、真ちゃんのスタンドは基本的に近づかなければ攻撃することはできない)

ユキホ(どういう形であれ、最終的には私に向かってくる)

タッ

真が再びユキホの射程距離内へと踏み込んだ。

ユキホ(私は魚が網にかかるのを待つように、近づいてきた真ちゃんを狙えばいい)スッ

バチバチッ

ユキホ(この距離なら逃げられない、入った!)

真「うおおおおお」グォォ

真は前方に向かって手を広げ…

真「だっ!」パシィ!!

ユキホ「は…?」

宙に放たれた『電撃』を、拡散する前に握り潰した。

490: 2015/10/12(月) 01:39:02 ID:4w8ua6Vk
ジッ…

ギッ ピシッ パキッ

真「うぐっ…!」ビリビリ

『チアリングレター』の手の中で『電撃』が増幅し、僅かにヒビが入った。

ユキホ「………」

真「ふーっ…」パリッ

ダッ!!

体の痺れを振り払うように、すぐさま突っ込んでいく。

雪歩「やった…これで『電撃』は出せない、真ちゃんのチャンスだよ!」

真「オラァァァッ!!」ドォォ

『コスモス・コスモス』を撃ち終わったユキホに、真の拳が迫り来る。

ユキホ「………」パリッ

真「え!?」ビクッ

バチバチィッ!!

しかし、それが命中する前に、ユキホの体から宙に向かって『電撃』が走った。

491: 2015/10/12(月) 01:40:15 ID:4w8ua6Vk
真「くっ!」バッ

真は自分の体をかばうように両腕を交差させ…

バチィッ!!

そこに『電撃』が叩きつけられた。

真「うおおおおおおおおお」ビキビキビキッ

『チアリングレター』のヒビが広がっていく。

ドサァ!!

その場に尻餅をついた。

ユキホ「連続しては撃てない…誰がそんなこと言ったの?」

ユキホ「『コスモス・コスモス』は私の体に溜まった『電流』を放出するスタンド。溜められる『電撃』の量には限りがあるけど、それ以内なら何回でも撃てる」

ユキホ(ただ…出力を抑えたとはいえ『コスモス・コスモス』を握り潰して止めるなんて)

ユキホ(二発目も、しっかりと防がれた…ガードを空けたと言っても、隙ができたわけじゃあない…か)

真「………」ギギッ

ユキホ(『チアリングレター』を完全に破壊するには今と同じ出力であと2発…いや、3発ってところかな)

ユキホ(最大出力なら1発で破壊出来るかもしれないけど、外したら…あれも一撃必殺のスタンド、慎重に行こう)

492: 2015/10/12(月) 01:40:52 ID:4w8ua6Vk
雪歩「真ちゃ…」フラッ

雪歩は真の方へと近づこうと金属の床に足を踏み出すが…

バチィッ!!

雪歩「っ…!!」

その手前で『電撃』が弾ける。

ユキホ「あなたはそこでじっとしてて。ご主人様から『ステイ』を言い渡された犬のようにね」

雪歩「う…」

ユキホ(こうして出てきたところで、あなたに出来ることなんて、ほとんどないでしょう?)

ユキホ(出しゃばってこないで怯えて隠れていればいいのに)

493: 2015/10/12(月) 01:43:05 ID:4w8ua6Vk
真「………」

ユキホの目が雪歩に向いているのを、真は座りながら眺めていた。

真「『ファースト・ステージ』」ボソッ

FS「…呼ンダカ、菊地真」ズズ

真が呟くと、彼女の体を盾にして、ちょうど雪歩には見えないように、瓦礫の中から白い頭が生えてくる。

真(『ファースト・ステージ』…雪歩の意思とは全く無関係に行動する自立型のスタンド)

真(雪歩にスタンドのことを教えようとする者を無差別に攻撃するというはた迷惑なヤツだった)

真「いたのか。さっさと出てこいよ。お前の能力なら、あんなスタンド楽勝だろ」

真(能力は、こいつが受けたダメージを、触れることで相手に『返す』…)

真(自動操縦型であり雪歩に攻撃が帰ってこないため、こいつ自身がダメージに対しほぼ無敵。それに加えてこの能力…ボクもこいつには酷い目に遭わされた)

FS「知ッテイルダロウ? 私ハ、雪歩ニ姿ヲ見セラレナイノダ」

真(欠点は雪歩のスタンドにも関わらず、雪歩が見える範囲に現れることはできないということだ)

真(雪歩を守るために存在しているのに、雪歩の前には決して現れない…矛盾したスタンド)

494: 2015/10/12(月) 01:45:16 ID:4w8ua6Vk
真「雪歩はスタンドのことを受け入れた、もうそんなルール守る必要はないだろう」

FS「ソウハ イカナイ。『萩原雪歩ヲすたんどカラ遠ザケル』…ソレガ私ガ生マレタ理由ダカラダ。私自身ガ ソレヲ破ルワケニハイカナイ」

真「役立たず…」

FS「役立タズカ…ソウカモ シレナイナ」

FS「私ニハ 何モナイ…水瀬伊織ニ存在ヲ否定サレ、天海春香ノ事件モ終ワッタ。モウ私ハ空ッポダ…『すたんどノヌケガラ』」

FS「出テ行ッタトコロデ…今ノ私ニハ アノ『こすもす・こすもす』ハ 倒セナイ」

真「…なぁ、『ファースト・ステージ』。雪歩のあの姿を見たか」

FS「萩原雪歩ノ事ハ見ナクテモ ワカル」

真「どう思う」

FS「…危険ダ。出テキテ ホシクハナイ」

真「ああ、そうだね。ボクも危険だと思う」

真「でも、それは雪歩に戦う手段がないからだ。戦う手段がないから、ああやって危険でも出てくるしかないんだ」

FS「………」

495: 2015/10/12(月) 01:45:52 ID:4w8ua6Vk
真「『ファースト・ステージ』。今の雪歩に何かが必要だとしたら、それは雪歩を危険から遠ざけることなんかじゃあない」

FS「ナラバ、私ハ ドウスレバ…」

真「もう、わかってるだろう?」

FS「ソレハ…」

真(………)

真はヒビの入った『チアリングレター』を見つめる。

真「『ファースト・ステージ』、もしボクが… ………いや」

真「行ってくるよ」

FS「菊地真…?」

真はユキホに向かって再び走り出す。

496: 2015/10/12(月) 01:46:27 ID:4w8ua6Vk
真「うおおおおっ」

ユキホ「おっと、やっと来たね…待ってたよ。私の『コスモス・コスモス』も既に充電完了している」パチッ

バリバリバリ

3本の『電流』がバラバラに真に向かっていく。

真(1本だけを引きつけて…)タタタ

バチィッ!!

3本の『電流』のうちの1本に近づいていくと、真の近くで拡散する。

真「たっ!!」ダッ

真はそれを横に大きく跳んで躱した。

ユキホ「そこだよ」クイッ

バリバリバリ

残った2本の『電流』が一斉に、真を追いかけるように曲がった。

真「何!?」

ユキホ「その体勢じゃ逃げられないんじゃない?」

497: 2015/10/12(月) 01:47:25 ID:4w8ua6Vk
真「………」ギギギ

グッ

真は右腕を地面につけ…

ダヒュン!!

腕の力だけで跳ねた。その勢いで真の身体は半回転し、足が天井に向く。

ユキホ「そうやって避けるのも計算通り」スッ

真「!」

既にユキホは標準を真に定めている。

ユキホ「空中じゃ避けられない」

真(しまっ…)

ブラン!

真「!?」

ユキホ「なに?」

その時、天井からクレーンのアームが降りてきた。

498: 2015/10/12(月) 01:48:02 ID:4w8ua6Vk
真「これは…」

雪歩「真ちゃん!」

真「雪歩…!?」

雪歩が壁のレバーを操作し、クレーンを下ろしていた。

ユキホ「長さがちょっと足りないみたいだね」

クレーンのアームは、天地が逆になっている真の膝ぐらいに位置している。

ユキホ「関係ない、このまま撃つ…『コスモス・コスモス』ッ!!」

ガッ!!

ユキホ「!?」パリッ

真「………」グ…

足に纏っている鎧の形が手のように変化し、クレーンのアームを掴む。

真「おおっ」グオッ

バリバリ

上体を起こし、躱す。宙に放たれた『電撃』が、空に溶けていった。

499: 2015/10/12(月) 01:48:53 ID:4w8ua6Vk
真「ふっ!」タッ!!

真は振り子の要領で勢いをつけ、ユキホの方に翔ぶ。

ギッギッ

真「おおおおおおおおおおお」

『チアリングレター』を腕に戻し…

真「オラァァァ」ビュ

ユキホ「…!!」

バッキィィィィィン!

ユキホの片腕を、拳で粉々にブッ飛ばした。

雪歩「あ…!」

真「よし…!」

パリッ

・ ・ ・ ・

着地した真の指に、『電撃』が走っている。

500: 2015/10/12(月) 01:50:22 ID:4w8ua6Vk
真「なに…」

ユキホ「…『コスモス・コスモス』」

真「うわあああああああ!!」バリバリバリバリ!!

真の腕で、『電撃』が拡散する。

雪歩「真ちゃん!?」

ユキホ「『コスモス・コスモス』は私の体に流れる『電流』を増幅させるスタンド…」

ユキホ「つまり、私の身体には常に『電流』が流れている…それに触れるってことは、こういうことだよ。真ちゃん」

真「く…」ピキピキピキ

『チアリングレター』全体にヒビが走っていく。

ユキホ「さぁ、わかったでしょう? 真ちゃんじゃ私には勝てない。よくて相打ちだよ」

タッ

真「オラァ!」ブンッ

ユキホ「!?」バッ

ためらわず、ユキホに殴りかかる。すんでのところで躱した。

501: 2015/10/12(月) 01:51:19 ID:4w8ua6Vk
ユキホ「なっ…何考えてるの…!?」タタッ

真「………」ダダダダ

逃げるユキホを追いかけていく。

ユキホ「何も… ……… 何も考えてないの…!?」

真「オラオラオラオラ」ゴォッ

ユキホ「く…ああああっ!!」

バリバリバリバリ!!!

ユキホは残った片腕で、地面に大量の『電撃』を流した。床に『電撃』が迸り、破片を吹き飛ばしていく。

真「うおっ」バッ

雪歩「きゃ…!」

直撃でないのでヒビが大きくなることはなかったものの、その勢いで真の身体もユキホの近くから飛ばされた。

ユキホ「はぁ、はぁ、はぁ…」

真「なんだ。『完全なアイドル』ってのは案外ビビリなんだね」

ユキホ「くっ…! …!!」

真(精神的にボクが追い詰めている…勝てる!)

502: 2015/10/12(月) 01:53:14 ID:4w8ua6Vk
真(雪歩は戦う手段もないのに精一杯頑張った…せめてこいつは、このままボクが倒す!)

真「ふっ!」ガンッ!!

足を思い切り地面に叩きつけると、瓦礫の中から、金属棒が飛び出した。

ガシッ

真「オラァッ!!」ドヒュゥ

それを空中で掴み取ると、ユキホに向かって投げつけた。

真「ふっ!」タッ

真も一緒になってユキホの方へ突っ込む。

ユキホ「………」

ゴォォォォォォォォォ

ユキホ「うっ!」ドスッ

金属棒は、そのままユキホの肩に突き刺さった。

真「…何!?」ピタッ

それを見て、真は足を止める。

503: 2015/10/12(月) 01:53:57 ID:4w8ua6Vk
真(今のは食らうような攻撃じゃあない! 避けることも、『電撃』で弾くこともできたはずだ!)

真(なんで、避けなかった…!?)

ユキホ「考えたね、真ちゃん」ス…

近くのパイプに手を伸ばす。

真(なんだ? パイプに『電流』を流すつもりか…?)

ユキホ「その、一瞬の隙が欲しかったの」

・ ・ ・ ・

真「…!!」バッ

振り向きながら、パイプの先を目で辿る。

ゴゴゴゴ

雪歩「う…」

その先には、雪歩がいた。服がねじ切れたパイプに引っかかっている。

真(さっきの…『電撃』の衝撃でか…?)

504: 2015/10/12(月) 01:54:48 ID:4w8ua6Vk
ゴゴゴゴゴ

真(追い詰めたと思った…)

真(いや、事実そうだ…だけど、だからこそ何をするかわからないんだ…)

真(相手は765プロのみんなと違うんだ、ボクはそれを考えなければいけなかった)

雪歩「うぅ…」

雪歩は先程の衝撃でどこかにぶつけたのか、頭を押さえている。

真(雪歩に、離れろと呼びかけないと…いや)

ユキホ「『コスモス…」バチッ

真(間に合わないか…!?)

真「オラァッ!!」ヒュッ

パリィン

壁の方に飛び込み、拳で殴りつける。パイプが砕け散った。

505: 2015/10/12(月) 01:55:22 ID:4w8ua6Vk
雪歩「あっ!」バッ

直後に、雪歩が起き上がり、壁から離れるが…

バリバリバリ

しかし、真の腕は既にパイプに触れている。

真「うっ!」ビリィッ!!

パイプを伝ってきた『電撃』が、そこに触れている真の身体に流れた。

雪歩「…え」

真「………」ピリッ

真が、自分の手を見つめた。

真「…ごめん、雪歩」

ユキホ「『コスモス』」

真「うっ…うお…ああああっ!!」

バリバリバリ

真の体から、拡散した『電流』が溢れ出す。

506: 2015/10/12(月) 01:55:56 ID:4w8ua6Vk
雪歩「ま」

バリバリバリバリィッ

ドサッ

真の体が浮いたと思うと、肩口から地面に落ちていった。

真「………」シュー

シュー シュー

体の所々が黒く焦げ、煙が上がっている。

雪歩「真、ちゃん…?」

真「………」スゥ…

雪歩「…!」

真の両腕から、『チアリングレター』が消えた。

507: 2015/10/12(月) 01:57:11 ID:4w8ua6Vk
ユキホ「これで、真ちゃんは片付いた」

雪歩「い…」

雪歩「いやああああああああああああああああああああ」

ユキホ「さて、次はあなたの…」

雪歩「あああああああああああああああああああああああああああああああ」

ユキホ「あんまり大声出さないでくれないかな…耳障りだよ」

508: 2015/10/12(月) 01:58:09 ID:4w8ua6Vk
スタンド名:「ストレイング・マインド・チアリングレター」
本体:菊地 真
タイプ:近距離パワー型・装着
破壊力:A スピード:A 射程距離:なし 能力射程:D(5m)
持続力:C 精密動作性:B 成長性:D
能力:最強の硬度と最強の破壊力を持つ、真のスタンド。
本来の真のスタンドは全身を纏う鎧だが、それを一部に集中することで何者にも破壊されない質量と、正確な動きを得た。
基本的には手甲のように両腕に装着する他、足や身体のごく一部など、様々な場所に出すこともできる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ファースト・ステージ」
本体:萩原 雪歩
タイプ:自動操縦型・自律
破壊力:D スピード:D 射程距離:A(ほぼ無限) 能力射程:A(ほぼ無限)
持続力:E 精密動作性:D 成長性:C
能力:雪歩を守るためだけに存在する自立行動スタンド。
雪歩のスタンドに対する未知への恐怖心から発現し、雪歩にスタンドについて話すことをスイッチとして出現し、話した者を追跡していた。
しかし、雪歩がスタンドのことを認識したことで未知への恐怖心は薄くなり、また「ファースト・ステージ」本人にも以前のような強い意思がなくなったため、現在、能力は著しく劣化している。
殴ることで、自分に蓄積したダメージを、与えた相手に「返す」。返したダメージは、「ファースト・ステージ」からは消え、回復してしまう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

511: 2015/10/22(木) 22:49:01 ID:HWTxx6q.
グッ グッ

ユキホが肩に突き刺さった金属棒を引っ張っている。

ユキホ「…片手じゃあ抜けないか」スッ

諦めて、手を放した。

ユキホ「腕は…まぁ、仕方ないか。一本で済んだだけマシだね」

真「………」シュー シュー

倒れる真の体から煙が立ち昇っている。

雪歩「あっ、あああっ…!」

雪歩(あぁ、私だ…私のせいだ…真ちゃんは私を助けようとして…)

ユキホ「さて、かわいそうだけど…いや全然かわいそうだとは思わないけど」

ユキホ「あなたも一応765プロだし、見逃すわけにもいかないよね」

雪歩「………」グッ

ベキッ

雪歩は壁のパイプを掴み、熱で曲がった部分をもぎり取る。

ユキホ「…?」

512: 2015/10/22(木) 22:49:48 ID:HWTxx6q.
雪歩「………」ス…

両手でパイプを構え、ユキホに向けた。

ユキホ「なに、それ。そんなので私に勝てるとでも思ってるの?」

雪歩「思ってない…」

その姿勢は堂々としたものではなく、腰が引けている。

雪歩「真ちゃんがやられたんだもの、私が勝てるわけがない…」

ユキホ「だったら、なんでそんなもの持って向かってこようとするの? 逃げたらいいんじゃない?」

雪歩「嫌だ…」

ユキホ「手が震えてるよ。怖いんじゃあないの?」

雪歩「怖いよ…でも、ここで真ちゃんを置いて逃げたりしたら、私はずっとダメダメなままになっちゃうから…」

ユキホ「………」

雪歩「そっちの方がずっとずっと怖いから」

ユキホ「そう…」パリッ

ユキホの体から火花が飛ぶ。

513: 2015/10/22(木) 22:50:33 ID:HWTxx6q.
ユキホ「だったらダメダメなまま終わっていきなよッ!! 『コスモス・コスモス』ッ!!」

雪歩「…!!」

バチバチバチィッ!!

指先から放たれた『電撃』が、真っ直ぐ雪歩へと向かっていく。

雪歩「はぁー…っ」グッ

握り締め、じっと見据える。

雪歩(叩き落として…『電撃』が手元に流れてくる前に放す…)

ジジジジジジ

雪歩(できるわけがない…でも、やらなきゃやられる…!)

ス…

横から伸びてきた手が、雪歩の持つパイプを取り上げる。

雪歩「え?」

「萩原雪歩、ソンナモノヲ振リ回スノハ貴女ニハ似合ワナイ」

パァン!!

その手は雪歩の前に出て、『電撃』を薙ぎ払った。

514: 2015/10/22(木) 22:51:28 ID:HWTxx6q.
雪歩「!」

ユキホ「!?」

カラン カラン

鉄パイプが衝撃で弾き飛ばされ、床に転がる。

?「大事ナノハ…萩原雪歩…」

ドドドド

?「立チ向カオウトスル ソノ『意志』デス」

雪歩「あなたは…」

FS「ソレガアレバ、私ハ戦エル」

ドドドドドドド

モデルのようなすらっとした体型をした、雪のように白い人型が、雪歩の目の前に立っていた。

雪歩「スタ…ンド…!?」

ユキホ「これが『ファースト・ステージ』…?」

FS「………」グッ

スタンドは自分の手を見つめて、感触を確かめるように握りしめた。

515: 2015/10/22(木) 22:52:27 ID:HWTxx6q.
雪歩「あ、あの…あなたは…」

FS「初メマシテ、萩原雪歩。言ワナクテモ、貴女ナラバ理解デキルデショウ」

FS「私ハズット貴女ト共ニイマシタ。貴女ノ中デ、ズット貴女ノ事ヲ見テイマシタ」

雪歩「あなたが…私のスタンド」

FS「ソウデス。ソシテ今…貴女ノ『意志』ニヨッテ生マレ変ワッタノデス」

雪歩「私も、戦えるんですか」

FS「貴女ガ ソレヲ望ムノナラ」

雪歩「でも、どうすれば…?」

FS「すたんどハ感覚デ動カスモノ…アルイハ『命令』シテクダサイ。ソウスレバ、私ハ動キマス」

雪歩「それじゃあ…あの人をなんとかしてくれますか…?」

FS「ナントカ…デハアリマセン、萩原雪歩」

雪歩「え」

FS「菊地真ヲ助ケヨウトシタヨウニ…アノ『複製』ニ 立チ向カオウトシタヨウニ…モットハッキリト、明確ナ意思ヲ持ッテ戦ウノデス!」

雪歩「あっ、あっ、あの…あの人に、攻撃して! 私のスタンドさん!」

FS「ALRIGHT* 了解シマシタ」

516: 2015/10/22(木) 22:53:19 ID:HWTxx6q.
ドドド

雪歩のスタンドがユキホへと向かっていく。

ユキホ「………」

FS「シャァッ」ヒュッ

スッ

振り下ろされた腕を、ユキホは事も無げに躱した。

FS「!」

ユキホ「『コスモス…」パリッ バチバチ

ユキホの体に『電撃』が迸り、肩に突き刺さった鉄の棒に集まっていく。

FS「ウシャア」グオッ

構わず攻撃に行こうとするが…

ピク…

FS「ヌ…」

しかし、その手を直前で止めた。

518: 2015/10/22(木) 22:55:03 ID:HWTxx6q.
ユキホ「コスモス』」

バシュゥ!!

肩から、『電撃』の銃弾が発射される。

FS「チィッ」バッ

退いて攻撃を避けようとするが…

バリバリバリバリ!!

FS「オオッ」ビリッ

『電撃』が空中で一気に拡散し、衝撃を食らう。

雪歩「きゃっ…!」ビリビリ

そして、スタンドが受けた『電撃』の衝撃が雪歩にも伝わった。

ユキホ「失った片腕…真ちゃんが刺してくれたこれが代わりになってくれそうだね」

ユキホ「ううん、それ以上かな? 集中してるからか空中に撃ってもそれほど抵抗を受けない」

FS「ヌ…」シュゥゥゥ…

直撃は避けたが、白いボディが少しコゲついている。

ユキホ「そして『ファースト・ステージ』…真ちゃんと比べたらパワーもスピードも足りなすぎる。何の威圧感もない」

519: 2015/10/22(木) 22:56:25 ID:HWTxx6q.
雪歩「だ、大丈夫…?」タタッ

雪歩がスタンドへと駆け寄る。

雪歩「ちょっとビリっときたけど…」

FS「チッ、ボケナスガ…」

雪歩「えっ?」

FS「『ぱわー』モ『すぴーど』モ 以前ノ水準マデ戻ッタダケカ…シカモ、コレハ…」

雪歩「あ、あの…スタンド…さん?」

FS「オット、失礼。貴女ノ清ラカナ耳ニ 口汚ナイ言葉ヲ聞カセテシマッテ…申シ訳アリマセン」

雪歩「え、えっと、あの…それより、攻撃は…」

FS「結論カラ言ワセテモラウト…『無理』デス」

雪歩「ええっ!?」

FS「私ノ『ぱわー』ト『すぴーど』ハ 人間ヨリ少シ上ト イウ程度…アノ クソッタレ野郎ニ決定打ヲ与エルコトハ デキマセン」

雪歩「で、でも何かしないと…もう一回攻撃して!」

FS「貴女ノ命令デモソレハ聞ケナイ 萩原雪歩」

雪歩「どうして…!?」

520: 2015/10/22(木) 22:58:11 ID:HWTxx6q.
FS「モウ一度私ガ行ッタ所デ 『電撃』ヲ喰ラウノガ『おち』デス。今マデナラ、ソレデモ ヨカッタノデスガ…」

FS「私ハ『遠隔操作』ノすたんどトシテ 生マレ変ワリマシタ。ソノコトデ、私ト貴女ノ間ニ繋ガリガ出来テシマッタ。他ノすたんどト同ジヨウニだめーじモ共有スル」

雪歩「えっと…それって、つまり?」

FS「簡単ニ言ウト、私ガ氏ネバ 貴女モ氏ンデシマウノデス。困ッタ事ニ」

雪歩「氏…」サァァ

FS「他デモナイ貴女ノ頼ミ、出来ルコトナラ私モ聞イテ アゲタイノデスガ…」

雪歩(せっかくスタンドが使えるようになったのに…これじゃあ、何にもできない…)

FS「萩原雪歩…ソレジャア、駄目デス。ソウヤッテ怯エラレテハ 私モ本来ノ『ぱわー』ヲ発揮出来マセン」

雪歩「で、でも…発揮したところで、あの人を倒すことはできないんでしょう…?」

FS「イイエ、萩原雪歩。私ハ、貴女ヲ守ルタメニ生マレタ『すたんど』。ソノタメナラ、ナンダッテ出来マス」

雪歩「なんでも…? 嘘だよ、現にこうやって追いつめられてるじゃない…!」

ユキホ「思わせぶりにスタンド出して、もう終わり?」

ユキホ「だったらさっさと眠っちゃいなよ、『コスモス・コスモス』!!」

バチバチ

雪歩「ひ、『電撃』が…」

521: 2015/10/22(木) 23:00:51 ID:HWTxx6q.
バチバチバチ

『電撃』が宙に広がりながら、雪歩に襲いかかってくる。

FS「萩原雪歩、命令ヲ」

雪歩(命令…何を? どうすれば…)

雪歩(今、どうすればいいかなんて、決まってる)

雪歩「躱さないと…!」

FS「ALRIGHT*。ソレナラ『可能』デス」

雪歩「え?」

ヴォン

ユキホ「なに?」

雪歩の足元に、ぽっかりとマンホール大の『穴』が開く。

雪歩「きゃっ」スポン

逃れようとする間もなく、雪歩はその『穴』の中に落ちた。

バチバチバチ

そして『電撃』が、その上を通り過ぎていった。

522: 2015/10/22(木) 23:01:45 ID:HWTxx6q.
ユキホ「萩原雪歩が…地面に空いた『穴』に入った…!?」

雪歩「………」

真っ暗な空間の中に、雪歩の体が浮いている。

雪歩「こ…これは…!」

天井の『穴』を見上げる。そこから、外の様子が見えた。

FS「地面ニ『穴』ヲ空ケマシタ。何ガアロート、奴ハ コノ中ニハ手出シ出来マセン」

スタンドも、雪歩と一緒に『穴』の中に入ってきている。

ユキホ「避けた? なら…」バッ

雪歩「!!」

ユキホが『穴』の真上に立つのが見えた。

ユキホ「その『穴』に直接ブチ込んであげる!」バチバチ

雪歩「うぅ…!」

今すぐにでも自分に向かって『電撃』が放たれようとしているが、『穴』の中に逃げ場はない。唯一の逃げ道も塞がれている。

雪歩(一時的に『穴』の中に逃げたって…意味なんてない! やられる…)

523: 2015/10/22(木) 23:05:05 ID:HWTxx6q.
バチバチバチ!!

ユキホの撃った『電撃』が、『穴』の中に撃たれ…

FS「大丈夫デス」

ジッ…ジジジジ

雪歩「え…!?」

雪歩の体をすり抜け、『穴』のさらに奥の方へと吸い込まれていった。

雪歩「………」

FS「何ガアロート、ト言イマシタ」

FS「コノ『穴』ノ中ハ貴女ノ領域。コノ『穴』ノ中ニ存在スルモノハ全テ 貴女ノ物デス、萩原雪歩。無論私モ含メテ」

FS「奴ガコノ『穴』ノ中ニ攻撃シテモ、貴女ニ命中スルコトハナイ」

ユキホ「う…どうなったの? こっちからじゃあ見えない…」

ユキホ「スタンドの能力を生み出した『穴』が消えないってことは…」

雪歩「…私がどういう状態なのか、見えてないの?」

FS「エエ。穴コチラカラハ 見エルシ 聞コエマスガ、アッチニハ届キマセン。まじっくみらート同ジデスネ。真ッ暗ナ『穴』ニシカ見エナイハズデス」

524: 2015/10/22(木) 23:08:27 ID:HWTxx6q.
ヴォン…

雪歩達は『穴』の中に入ったまま出てこない。

ユキホ「…そこにずっと籠もってるつもり?」

スッ

ユキホ「それなら、出てくるまで待ってあげる。出てこないことにはそっちから私に攻撃もできないでしょう? 出てきたところで同じことだろうけど」

FS「フム…」

雪歩「…『穴』がここにあるから、ああやって待ち伏せてるんだよね」

FS「萩原雪歩?」

雪歩「だったら…」

ツーッ

ユキホ「!?」

ズズズズズ

ユキホ「『穴』が…滑るように移動していく…!?」

雪歩(できた…!)

525: 2015/10/22(木) 23:09:32 ID:HWTxx6q.
FS「アア、萩原雪歩…貴女ハ最高デス」

雪歩「え?」

FS「イエ…ソノ調子デス、萩原雪歩。『すたんど』ハ『直感』デ操ルモノ。貴女ハ モウ、立チ向カウタメノ手段ヲ知ッテイル」

雪歩「あの…ところでスタンドさん…」

FS「何デショウカ」

ピタ…

雪歩「なんでさっきからずっと私の背中にぴったりくっついてるの…?」

FS「私ハ 貴女ノ『すたんど』、背後ニ立ツノハ当タリ前デス」

雪歩「最初はくっついてなかったよね? それに、これって立つとは言わないんじゃ…」

FS「ソノ…コウシテイルト 落チ着クノデス。駄目…デスカ?」

雪歩「い、いえ…駄目じゃあないけど…」

雪歩(なんだろう、スタンドってこういうものなのかな…? みんなこんなこと言ってなかったけど…)

526: 2015/10/22(木) 23:10:23 ID:HWTxx6q.
ズズズ

『穴』は地面から壁に伝って動いていく。

ユキホ「あの『穴』…」

ユキホ「追いかけて撃ってもいい。けど、恐らく私の攻撃は届かない…『コスモス・コスモス』には容量がある、無駄にするわけにはいかない…」

ツーッ

ユキホ「………」

『穴』はユキホの動きを伺うようにゆっくりと移動している。

ユキホ「ずっとそこに籠ってるつもり…?」

ユキホは『穴』から目を離すと、ある場所を目指して歩いていく。

ユキホ「なら、それでもいいよ」スッ

雪歩「…?」

ユキホがしゃがんだ。その足元に何かが転がっているのが見える。

ユキホ「真ちゃんに何をされてもいいのならね」

真「うぅ…」

雪歩「!」

527: 2015/10/22(木) 23:12:25 ID:HWTxx6q.
ユキホ「仕方ないでしょう? あなたに手を出せないなら、真ちゃんを『再起不能』させることくらいしか私にはできないから」

ユキホ「やれることからやる…当然のことだよ」

雪歩(私がこの中に隠れてたら、真ちゃんを…)

雪歩「スタンドさん、真ちゃんもこの中に入れ…」

FS「ソレハ『無理』デス。コノ中ニ存在デキル生命体ハ雪歩、貴女ダケデス。他ノ生物ハ コノ空間ニ入ルコトスラ出来ズ追イ出サレマス」

雪歩「それじゃあ、真ちゃんが…!」

FS「菊地真ヲ…助ケタイノデスカ? 萩原雪歩」

雪歩「当たり前だよ!」

FS「ソレハ、何故? 菊地真ニ 助ケラレタカラ?」

雪歩「貸し借りなんかじゃあなくて…私が嫌だから!! 真ちゃんに何かあったりしたら!」

雪歩「そうしなきゃいけないんじゃあなくて、私がそうしたいから!」

FS「ソレデイイ、萩原雪歩」

雪歩「え?」

FS「強ク想ッテクダサイ、萩原雪歩。貴女ノ ソノ想イガ、私ヲ強クスル」

FS「貴女ガ誰カヲ守リタイト言ウノナラ! 私ハ ソノタメノちからト ナリマショウ!」

528: 2015/10/22(木) 23:14:31 ID:HWTxx6q.
ユキホ「ん…?」

シュルシュルシュル

ユキホ「もしかして、先に真ちゃんを『再起不能』にさせる必要もないのかな」

ユキホ「『穴』が小さくなっていく…いつまでもその中にいるとまずいんじゃあないの?」

雪歩「きゃっ」ドサッ

『穴』が完全に閉じると、雪歩とスタンドが壁から飛び出してきた。

ユキホ「『穴』はしばらくすると消える…そして、消えると追い出される。いつまでもその中に籠ってることはできないみたいだね」

雪歩「………」

FS「行クゾ」タッ

そう言うと、スタンドは明後日の方向へと走っていく。

ユキホ「なに、あれ? あなたのスタンド、逃げちゃったけど」

雪歩「追いかけた方がいいと思うよ」

ユキホ「ふっ…それより本体のあなたを始末した方が早いでしょう!!」ダッ

真が倒れてる地点から、雪歩の方に走っていく。

雪歩「…いいんだね、それで」

529: 2015/10/22(木) 23:15:32 ID:HWTxx6q.
FS「フッ」シュルッ

ヴォン

スタンドが地面に触れると、そこに『穴』が空いた。

ユキホ「はああっ!!」バチバチッ

それを気にも留めず、ユキホは雪歩に向かって『電撃』を放つ。

クルッ

雪歩「えいっ」トン

雪歩は振り向いて、壁を人差し指で突く。

ヴォン

ユキホ「!」

すると、こちらにも大きな『穴』が空いた。

スポン

雪歩の体は、そのまま作り出した『穴』に吸い込まれた。

シュゥゥゥ…

そして雪歩を追いかけるように、『電撃』も『穴』の中に入っていく。

530: 2015/10/22(木) 23:17:56 ID:HWTxx6q.
ユキホ「また『穴』…それなら、消えるまで待…」

シュバ!!

雪歩「たっ」スタッ

ユキホ「なっ…!?」

雪歩が、スタンドの空けたもう一方の『穴』から飛び出してきた。

ユキホ「『穴』同士で…移動できるの…!?」

雪歩「あなたは、私が気に入らないんだよね。本当は、真ちゃんより私の方を始末したくて仕方なかったんだよね?」

雪歩「でも、あなたには私を捕まえることは…できないよ」

ユキホ「…!」

531: 2015/10/22(木) 23:18:36 ID:HWTxx6q.
ユキホ「スタンドを使えるようになったからって…調子に乗らないで」

ダッ!!

『射程距離』に入ろうと、ユキホが走って近づいてくる。

雪歩「………」

ユキホ「今ある『穴』は私から見て手前…つまり僅かに私の方にある…飛び込もうとしたらそこに『電撃』を叩き込む!!」

スッ

雪歩が地面に空いた『穴』から、向かって来るユキホから離れた。

ユキホ「また『穴』を作るつもり…? それなら、その前に仕留める! 本体だろうとスタンドだろうと!」

ユキホ「私の『コスモス・コスモス』のスピードを舐めないで…!」

雪歩(わかる…)

雪歩(私がやるべきこと…進むべき道が…見える!)

ユキホ「『コスモス・コスモス』!!」パリッ

『射程距離』に入ったのか。雪歩が出てきた『穴』の手前あたりで、ユキホが立ち止まる。

雪歩「そこですっ!」

その瞬間、雪歩は叫んだ。

533: 2015/10/22(木) 23:23:00 ID:HWTxx6q.
ヴォン

ユキホ「!?」

バリバリバリバリ

ユキホ「きゃあああああああああああああ!?」

『穴』の中から『電撃』が吹き出し、ユキホを襲った。

ユキホ「かはっ…」ダンッ ダムッ ダスッ

その衝撃でユキホはブッ飛び、地面に数度叩きつけられる。

雪歩「ふぅ…」

ユキホ「な…なんで…私が『電撃』でダメージを…」フラッ

FS「オット…立テルノカ。『複製』ト イウヤツハ無駄ニ丈夫ナノダナ」

ユキホ「コ…『コスモス・コスモス』は…私のスタンド…の…はず…それに、今の威力は」

FS「コノ『穴』ニ入ッタ瞬間、モウソレハ 貴様ノモノジャアナクナル」

FS「ソレガ二発分ダ。テメーノ一発分ジャア 足リナイ」

ユキホ「うぅぅ…」ビリビリ

FS「貴様ノ攻撃…『返サセ』テ、モラッタ。ドンナ気分ダ?」

534: 2015/10/22(木) 23:23:32 ID:HWTxx6q.
雪歩「これが…」

FS「エエ、ソウデス萩原雪歩。『穴』ニ吸イ込ンダ相手ノ攻撃ヲ『返ス』」

FS「相手ガ悪意ノ刃ヲ向ケルノナラ…ソレヲ相手ニ刺シ『返シ』テヤリマショウ」

FS「ソレガ私ノ…イヤ貴女ノ能力」

雪歩「あの、スタンドさん」

FS「ハイ。ナンデショウカ」

雪歩「あなたの名前は?」

FS「私ノ名ハ『ふぁーすと・すてーじ』…イエ」

FS「萩原雪歩、貴女ハ 新タナ一歩ヲ踏ミ出シタ…私ノ名前ハ…」

FS「『ふぁーすと・すてっぷ』デス!!」

雪歩「『ファースト・ステップ』」

FS「サァ、萩原雪歩。奴ヲ、倒シマショウ!」

雪歩「うん…うん、『ファースト・ステップ』! 戦おう、一緒に!」

539: 2015/11/11(水) 22:31:05 ID:uEuBDvYk
雪歩「行こう、『ファースト・ステップ』」

FS「ソノ前ニ、萩原雪歩。一ツダケ…」

雪歩「? 何?」

FS「雪歩…ト呼ンデモ イイデショウカ」

雪歩「はい?」

FS「イエ、出過ギタ真似ヲ シマシタ…申シ訳アリマセン、忘レテクダサイ」

雪歩「え、えっと…それくらいなら、別にいいけど」

FS「ホントウニ!?」ズイッ

雪歩「う、うん…」

FS「デ、デハソノ…ユ…雪歩」

雪歩「はい」

FS「ヨシ…」グッ

雪歩「あの…?」

FS「イエ。行キマショウ、雪歩」

540: 2015/11/11(水) 22:33:45 ID:uEuBDvYk
ユキホ「ぐぐ…」シュゥゥゥ…

グラッ

ユキホの足元がふらついている。

ユキホ「私の『コスモス・コスモス』を…」

ユキホ「『穴』に撃ち込んだ攻撃を『返す』! ですって…?」

雪歩「うん。これでもうあなたの攻撃は私には届かない、全て『返す』よ」

ユキホ「調子に乗らないで」

FS「調子ニ乗ッテイルノハ貴様ダ。ヨクモ雪歩ニ 好キ勝手言ッテクレタナ、土下座シロ土下座」

ユキホ「私たち『複製』は『スタンド使い』としての訓練を積んでいる」

ユキホ「765プロの他のアイドルは『弓と矢』の事件で鍛えられた…だから私たちと戦える。でも、あなたは今やっとスタンドを使うことを自覚したばかり」

雪歩「………」

ユキホ「あなたに何が出来るの! さっきまで怯えて震えてたあなたに!」

雪歩「…私は」

ユキホ「?」

541: 2015/11/11(水) 22:39:19 ID:uEuBDvYk
雪歩「みんなが春香ちゃんを止めようとしていたあの時、やっぱり外側から見ている事しか出来なかった」

雪歩「怯えて震えている…そうだね。ずっと、それしかできなかった。蚊帳の外は嫌だって…そう言っていたのに」

ユキホ「………」バチッ

タッ

姿勢を低くして、雪歩へと向かってくる。

FS「私ノ役目ハ雪歩ヲ守ルコト…ズット ソウ思ッテイタ。ダガ違ウ」

FS「私ハ雪歩ト共ニ戦ウ、私ガ雪歩ノ刀トナル。雪歩ト一緒ニ戦ウ! ソノタメニ 生マレテキタ!」

雪歩「そう、一緒…」スッ

ゆっくりと手を上げ、前に向ける。

ユキホ「そこに『穴』を作れる壁はない!」バチィッ!!

肩から伸びる棒の先端から、『電撃』を放つ。

ウォン…

・ ・ ・ ・

雪歩「みんなと一緒に、私も…戦う」

ユキホ「空中に…『穴』が…!?」

542: 2015/11/11(水) 22:49:15 ID:uEuBDvYk
雪歩の前方に空けられた『穴』に、『電撃』が吸い込まれていき…

雪歩「『返し』て、『ファースト・ステップ』」

FS「ALRIGHT*」ヴォン

バチバチバチ

『ファースト・ステップ』が空中に手を伸ばすともう一つ『穴』が開き、そこから『電撃』が飛び出す。

ユキホ「『コスモス・コスモス』ッ!」バチッ

パァァァン

ユキホはそれに自分の『電撃』をぶつけ、相頃する。

シュゥゥゥ…

ブオッ

発生した煙の中から、『ファースト・ステップ』が飛び出してくる。

ユキホ「!」

FS「ウシャア」ブオン

ユキホ「たっ」ザッ

後ろに傾きながら、『ファースト・ステップ』の拳を躱す。

543: 2015/11/11(水) 22:56:27 ID:uEuBDvYk
ババッ

ユキホはそのまま跳び退いて間合いを取った。

FS「チ…素早イ ヤローダ」

ユキホ(萩原雪歩のスタンド、私の『電撃』がことごとく『返さ』れる…)

ユキホ(迂闊に攻撃はできないし、今のように守るため撃ち尽くせばそこを狙われる)

ユキホ(今のが真ちゃんだったら…『ファースト・ステップ』よりもパワーもスピードも数段上だったら…)

雪歩「引く気がないのなら…あなたを倒す」

ユキホ(見ている…)

ユキホ(何、その目は…? さっきまで、ペットショップから知らない家に連れてこられたばかりの子犬みたいな顔してたくせに…)

雪歩「………」

ユキホ(目が据わってる…追いつめられてからの、この精神力…)

ユキホ(これが…これが、本当にさっきまで隅っこで震えていた、あの萩原雪歩なの…!?)

ユキホ(私の中にあるのは、内側から見た『記憶』でしかない…これが、外から見た萩原雪歩…)

ユキホ(それが今、スタンドを得た…意思が明確な形となって襲ってくる…!)

544: 2015/11/11(水) 22:59:18 ID:uEuBDvYk
ユキホ「でも…それが何? その程度で私に勝てるとでも…?」

雪歩「………」

FS「引カナケレバ好都合ダナ。攻撃ハ全テ『返ス』」

ユキホ「やってみなよ…」

パリッ

ユキホの体に『電流』が戻ってくる。

ユキホ「うあああああっ!」ダッ

闇雲とも言える勢いで、ユキホが突っ込んでくる。

ユキホ「えいっ!」バチバチッ

肘の先のなくなった腕を、『電撃』を纏わせながら振るってくる。

雪歩「んっ!」バッ

雪歩はそれを難なく躱すが…

ユキホ「ふっ!」グオッ

雪歩「うっ」ドス!

もう片方の腕が、雪歩のボディに叩き込まれる。

545: 2015/11/11(水) 23:02:56 ID:uEuBDvYk
ヴォン…

ユキホ「………」

しかし、そこには『穴』が浮かんでいた。ユキホの拳が『穴』の中に刺さっている。

雪歩「そこっ」ヴォン

ヒュ

『穴』を開く。そこから拳の形をしたエネルギーの塊が飛び出し、ユキホに襲いかかる。

バキッ

雪歩「!」

ユキホはそれを避けるそぶりすら見せず、体で受け止めた。

ユキホ「これしきで怯むと思った…?」ズッ

バチバチバチッ

『電撃』を発しながら、雪歩へと手を伸ばす。

雪歩「きゃ…!」ヒュン

作ったばかりの『穴』に飛び込む。自分の体より小さな『穴』に、雪歩の体が吸い込まれていった。

ユキホ「へぇ…」パチッ

546: 2015/11/11(水) 23:12:51 ID:uEuBDvYk
ズルッ

ズズズ

『穴』は空中から地面へと落ち、ユキホから離れるように移動する。

ユキホ「『穴』ができたのはあくまでも空中…じゃなきゃあ入ることもできない」

ユキホ「今の状況でそうしたってことは、自分自身には『穴』は開けられないみたいだね」

ユキホ「それにもう一つ『穴』を作れば、『返せ』たはずなのに…そうはしなかったってことは二つより多くは出せないんでしょう?」

ニュ

雪歩「………」

ユキホの射程距離の外に着くと、雪歩が『穴』から出てくる。同時に、『穴』が消えた。

547: 2015/11/11(水) 23:16:19 ID:uEuBDvYk
雪歩「はぁっ…」

FS「大丈夫デスカ」

雪歩「大丈夫じゃ…ないかも、怖いよ…」

雪歩「アイドルのオーディションとは違う、直接敵意を向けられて本気で私を倒そうとしてくる…」

FS「雪歩…」

雪歩「でも、みんなこの怖さに向き合ってきたんでしょう。私一人だけ泣き言なんて言ってられないよ…」

FS「………」キュン

FS(雪歩…決意ニ燃エル貴女ノ瞳ハ ナント美シイノデショウ…)

FS(ソレヲ間近デ見ラレルコトノ、ナント幸セナコトカ)

FS(アア、コノ感動ヲ誰カニ伝エタイ…共有シタイ…)

雪歩「『ファースト・ステップ』」

FS「ア、ハイ。ナンデショウカ」

雪歩「私たちであの人に…勝とう」

FS「Yeah. OK, Yukiho. ALRIGHT*!」

548: 2015/11/11(水) 23:18:58 ID:uEuBDvYk
ドドドドドド

ヴォン

雪歩「えいっ」ヒュッ

『穴』を作り、『ファースト・ステップ』と一緒にその中に飛び込む。

ズズズ

『穴』はユキホの周囲を、大きく円を描きながら移動する。

ユキホ(『穴』はそのうち消える…出てきた瞬間を…)スッ

手を『穴』の方に向け、雪歩が『穴』から出てくるのを待ち構えるが…

ユキホ「…いや」

引っ込める。

雪歩「ふぅっ」ヒュッ

ユキホ(『穴』は一つ…ここで撃てば、もう一つ作られて『返され』る)タッ

雪歩が『穴』から飛び出したのを見て、直接走っていく。

549: 2015/11/11(水) 23:24:29 ID:uEuBDvYk
ユキホ「攻撃を『返す』能力…確かに厄介だけど」

ユキホ「私が不用意に『電撃』を撃たなければ、萩原雪歩自身には決定的な攻撃手段はない!」

ユキホ「そして『穴』は萩原雪歩自身には作れない…触れて流せば『返す』ことはできない!」

ユキホ「近距離で一発で確実に…倒す!」

雪歩「………」

ツーッ

ユキホ「ん!?」

雪歩が出てきた『穴』はまだ消えておらず、ユキホへ向かって移動している。

ユキホ「出てきたのは萩原雪歩だけ、スタンドはあの中か…」

ユキホ「でも、どうするの? 私に近づいてきても返す『電撃』はない…スタンドの運動能力も萩原雪歩本体と大差はない、何も変わらない!」

ユキホ「『コスモス・コスモス』! 『穴』から出てきたら最後、スタンドに直接この『電撃』を叩き込む!」バチバチバチ

550: 2015/11/11(水) 23:28:48 ID:uEuBDvYk
ヴォン

ユキホ「………」

雪歩「………」

雪歩が、足元に『穴』を開けている。

ユキホ(何をしているの…? 何のために、そんなところに『穴』を…?)

ズズッ

『ファースト・ステップ』が『穴』から姿を現わす。

ゴゴゴゴ

FS「………」

ユキホ「う…?」

ゴゴゴ

その手には、鉄パイプが握られていた。

ユキホ(萩原雪歩が『穴』を開けたのは、スタンドにこれを渡すため? でも、それが一体…)

551: 2015/11/11(水) 23:35:25 ID:uEuBDvYk
ズズズ

ズズズズズズ

ユキホ「…!!」

『ファースト・ステップ』が出てきた『穴』が、そのまま鉄パイプへと移っていく。

ユキホ「あ…」

ユキホ(萩原雪歩やスタンド自身には『穴』を開けることはできない…)

ユキホ(でも、持っている武器になら…)

FS「シャァ」ヒュッ

ユキホ「あああっ!」

ガンッ!!

叩き下ろされたパイプを、腕で防ぐ。

ユキホ「あ…」

バチバチバチ

ユキホ「あああ…!」

ユキホの体に流れている『電流』がパイプへと流れ、そのまま『穴』の中へと吸い込まれていった。

552: 2015/11/11(水) 23:41:54 ID:uEuBDvYk
カラン

『ファースト・ステップ』の手からパイプが落ち、『穴』も消えた。

雪歩「捕まえた」

ユキホ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

ユキホ(『電撃』が撃てない…全部、持って行かれた!)ダッ

ユキホは『ファースト・ステップ』に背中を向け、必氏に距離を取ろうとする。

FS「………」

ユキホ(空中からの『電撃』なら問題ない…地面を伝って来たら…絶対に避ける!)

ユキホ(まだ…まだ、私は負けたわけじゃあない!)

ユキホ「負けたくない…萩原雪歩、あなたにだけは負けない…!」

雪歩「ううん、違うよ」

雪歩「あなたはもう負けてるし、その相手は私でもない」

FS「『返ス』ゾ」ヴォン

『ファースト・ステップ』が、ユキホに向かって『穴』を開けた。

553: 2015/11/11(水) 23:45:32 ID:uEuBDvYk
ユキホ「!」

バチバチッ

空気中を、広がるように『電撃』が走る。

ユキホ「空中に…駄目だよそれじゃ、私までは届かな…」

バリバリバリ

ユキホ「!?」

放たれた『電撃』は、ユキホに近づくにつれて一点に集まっていく。

ユキホ「なに…『電撃』が真っ直ぐこっちに向かってくる…!? しかも集中して…!?」

雪歩「真ちゃんと戦ってる時、あなたは真ちゃんに勝てないと悟って私を狙ってきた。その時点で、もうとっくに…あなたは負けてる」

ドドドドド

雪歩「電気は、抵抗の大きいところから抵抗の少ないところに流れていく…」

ユキホ「あ…」

ザンッ

ユキホ「あああ…!?」

雪歩「真ちゃんあなたの肩に刺した…その棒は避雷針! 絶対に逃げられないよ…!!」

554: 2015/11/11(水) 23:48:58 ID:uEuBDvYk
バチバチバチ

ユキホの肩の棒に、『電撃』が吸い込まれていく。

ユキホ「おっ」パリッ

ユキホ「あああああああああああああああああああああああああああああああ」

バリバリバリバリ

『電撃』が、ユキホの体で爆発した。

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ユキホ「………」

ユキホは煙を吹きながら倒れた。微動だにしない。

雪歩「か、勝った…の…?」

真「………」

雪歩「あ…! 真ちゃん!」タッ

倒れている真の下へ駆け寄っていく。

555: 2015/11/11(水) 23:52:04 ID:uEuBDvYk
雪歩「真ちゃん、しっかりして!」ユサユサ

雪歩は、両手で真の体を揺さぶる。

真「………」

雪歩「息は…してるみたいだけど…」

FS「ナラ平気デショウ。コイツモ無駄ニ丈夫デスカラ」

真「ま…」

雪歩「あ、真ちゃん! よかった、目を覚まし…」

真「まだ…だ、雪歩…」

雪歩「え?」

バチバチバチ

ドゴォォォォォン

雪歩達に向かって『電撃』が襲いかかり、近くで激しく拡散する。

雪歩「きゃ…!?」ブオッ

真「がっ」ドサッ

その衝撃で雪歩と真の体が吹き飛ばされ、離れ離れになってしまった。

556: 2015/11/11(水) 23:54:44 ID:uEuBDvYk
雪歩「な、何…!?」グッ

雪歩が立ち上がり、顔を上げると…

ユキホ「はぁー、はぁー、はぁー」

雪歩「…!」

倒れていたはずのユキホが、起き上がっていた。

雪歩「あなた、まだ…」

FS「シブトイやろーダ」

ユキホ「うっ!」

ポロッ

雪歩「!」

ユキホの指先が崩れ落ちた。

パラパラ

ユキホ「私の体が砂になってきている…私はもうすぐ消滅する…」

雪歩「あなたは…」

FS「サッサト消工口」

557: 2015/11/11(水) 23:59:08 ID:uEuBDvYk
ユキホ「消えるのは…嫌だ」フラ…

おぼつかない足取りで歩く。

ユキホ「何もできずに消えるのだけは…」

雪歩「!」

ユキホ「それだけは嫌だ…!!」

真「………」

雪歩「真ちゃん!」

ユキホは、雪歩から十数メートル離れた位置で倒れている真の傍に立つと、自分の腕を彼女に向けた。

雪歩「真ちゃん! 起きて!」

真「………」

真からは返事はない。今のショックで気を失ったようだ。

ユキホ「萩原雪歩…認めるよ、あなたは私が思ってたよりもずっと強い人間だった」

ユキホ「でもね…あなたはやっぱり何もできないんだよ」

雪歩「うぅ…」

ユキホ「そこからじゃあ、私を止めることはできない」

558: 2015/11/12(木) 00:01:12 ID:JWTAnV5o
FS「マタソレカ。菊地真ヲ道連レニデモ スルツモリカ? ツマンネー事ヲ スルンジャアナイ、下衆野郎ガ」

ユキホ「つまらない事…ふふ、そうかもね」

ユキホ「でも…私だって765プロを一人くらい『再起不能』させないと…! それさえできず消えるなんて、私が生まれた意味がない!」

FS「雪歩」

雪歩「………」

『ファースト・ステップ』が雪歩の顔を伺う。

ユキホ(さぁ、どう出るの…? どうしようが私の『コスモス・コスモス』の方が速い!)

ユキホ(それでも、もし…もし、止められるのなら…萩原雪歩は…)

雪歩「…放してください」

ユキホ「………」

雪歩「真ちゃんから手を放して…ください」

FS「ぼけなす野郎。雪歩ガ コウ言ッテイルノダ、サッサト放スガイイ」

ユキホ「頼み事なんてしてないで、自分で止めてみなよ!」

雪歩「………」

雪歩は動くことなく、じっとユキホを見つめている。

665: 2016/02/10(水) 01:44:51 ID:5.VtIgW2

ユキホ「さぁ、萩原雪歩! どうするの!? そのスタンドで、あなたに何ができる!?」

ユキホ「私を止めてみなよ、できるものならッ!」

雪歩「………」

雪歩「真ちゃんを放して、攻撃をやめて」

ユキホ「は…?」

FS「萩原雪歩ガ コウ言ッテイル。サッサトヤメルガイイ」

ユキホ「はっ…」

鼻で嗤う。

ユキホ「放して!? やめて!? なに、それ!? それで、本気でやめてもらえるとでも思ってるの!?」

雪歩「………」

ユキホ「頼み込むんじゃなくて、自分で止めてみなよ!!」

雪歩「…もう一度、言うよ」

雪歩「真ちゃんを放して。攻撃をやめて」

ユキホ「…!」

559: 2015/11/12(木) 00:03:01 ID:JWTAnV5o
ユキホ(諦めたの…? 所詮…この程度なんだね、萩原雪歩というアイドルは…)

ユキホ「だったら…お望み通り真ちゃんを片付けてあげる…!」バチッ

雪歩「………」

ユキホ「『コスモス・コスモス』ッ!!」バチ バチ バチ

ズアッ!!

『電撃』を纏った腕が振り下ろされ…

ドス!!

真の体を貫いた。

真「う…」

・ ・ ・ ・

ユキホ「は…」

ヴォン…

ユキホ「こ、これは…菊地真…真ちゃんの体にある『これ』はッ!」

560: 2015/11/12(木) 00:05:11 ID:JWTAnV5o
雪歩「止めることは…」

雪歩「もう、してる。私は『放して』って頼んだんじゃあなくて…」

FS「心優シイ雪歩ハ、ワザワザ貴様ニ忠告シテイタノダ。『放シタ方ガイイ』トナ」

ユキホ(服に隠れて見えなかった…真ちゃんの背中に、『穴』が…!!)

ユキホの腕が、真の背中に開いた『穴』に突っ込んでいる。

FS「貴様ノ言ッタ通リ、雪歩ヤ私自身ニ『穴』ヲ空ケルコトハ 出来ナイガ…」

FS「ソレ以外ナラバ、壁ダロウガ、水ダロウガ、空気ダロウガ、ソシテ人間ダロウガ…何ニダッテ『穴』ハ作レル」

ユキホ「ははっ…」

雪歩「空けても傷にはならないみたいだから…真ちゃんの体に『二つ』、空けておいた」

ズビュ!

真の背中に空いたもう一つの『穴』から、『電撃』が飛び出し…

ユキホ「あああッ!!」

バリ バリ バリ バリ

避ける事もできず、ユキホの体に駆け巡った。

561: 2015/11/12(木) 00:06:33 ID:JWTAnV5o
ユキホ「…あはっ」ビリッ

ユキホ「あはははははっ! 萩原雪歩…」

雪歩「………」

ユキホ「これが、私の元になったアイドルか…あはははははは」

ユキホ「はっ!」

バルルッ ジャジャジャジャギャギャァァン

『電撃』が弾け、眩いばかりに発光する。

シュー シュゥゥゥ…

雪歩「…さよなら」

収まる頃には、ユキホの姿は跡形もなく消え去っていた。

562: 2015/11/12(木) 00:07:12 ID:JWTAnV5o
FS「終ワリマシタネ」

雪歩「…うん」

FS「貴女ヲ危機カラ守ルノデハナク、貴女ト一緒ニ危機ニ立チ向カウ」

FS「『立チ向カウ者』…ソレコソガ、私ノ アルベキ姿ナノデスネ」

雪歩「あっ、あのっ」

FS「ドウカサレマシタカ、雪歩?」

雪歩「その…ありがとう」

FS「礼ナド言ウ必要ハアリマセン。私ハ貴女ノすたんど…ヤッタノハ『貴女自身』ノ意思ナノデス、雪歩」

雪歩「私…自身」

FS「私ハ イツデモ貴女ノ傍ニ イマス。必要トナッタラ、マタ 呼ビダシテクダサイ」ス…

そう言うと、『ファースト・ステップ』は姿を消した。

雪歩「…でも、ありがとう」

真「ううん…」

雪歩「真ちゃん! しっかりして、真ちゃん!」

To Be Continued...

563: 2015/11/12(木) 00:09:38 ID:JWTAnV5o
スタンド名:「ファースト・ステップ」
本体:萩原 雪歩
タイプ:遠隔操作型・自律
破壊力:C スピード:C 射程距離:C(20m程度) 能力射程:C(20m程度)
持続力:C 精密動作性:C 成長性:A
能力:「ファースト・ステージ」が次のステップへと進んだ、雪歩が戦うための力。
自動操縦型から遠隔操作型のスタンドに変化し、以前の「ファースト・ステージ」の、自分が受けたダメージを触れた相手に「返す」能力は完全に消滅した。
二つまで「穴」を空け、その中の空間に入ることができる。空間を通り抜けて、「穴」同士を移動すること、も可能。
「穴」の中の空間にはあらゆるものを入れることができるが、生物は雪歩と「ファースト・ステップ」以外は入ることができず、押し返されてしまう。
「穴」に入った攻撃のエネルギーはもう片方の「穴」へと通り抜けて、「返す」ことができる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

564: 2015/11/12(木) 07:40:47 ID:YFTQ1a6g
激アツ

それにしてもFSがただの変態紳士的ファン

565: 2015/11/12(木) 13:35:33 ID:POMul0G2

これでアイドルたち全員が単独でも戦えるようになったな



To Be Continued...





引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2