569: 2015/12/19(土) 12:09:18 ID:P4Gm2AEM





前話はこちら





真「よっと」グイッ

起き上がって、体を捻る。

雪歩「真ちゃん、もう動いても大丈夫なの?」

真「うん、痺れも抜けたし問題ないよ。それにしても…」

サラ…

工場を風が吹き抜け、瓦礫の隙間から砂が舞い上がる。

真「ボクが敵わなかった相手を、一人で…すごいな雪歩は」

雪歩「ううん、それは違うよ」

真「?」

雪歩「えーと、この辺りに…」スッ

雪歩は熱で変形した金属棒を拾い上げた。

真「これは…」

雪歩「私一人じゃきっと勝てなかった。真ちゃんと一緒だったから、勝てたんだよ」

真「…そっか」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

570: 2015/12/19(土) 12:10:48 ID:P4Gm2AEM
真「それにしても、あの『ファースト・ステージ』がねぇ…」

FS「違ウ、菊地真」ズッ

真「わっ!?」

雪歩「ファ、『ファースト・ステップ』…さん?」

FS「サン、ナドト他人行儀ナ呼ビ方ヲシナイデ ホシイデス、雪歩」

FS「会社ノ上司ガ部下ニ接スルヨウニ、気軽ニ呼ビツケテ クダサイ」

雪歩「は、はぁ…」

FS「ソシテ聞イタナ? 菊地真、私ノ名前ハ『ふぁーすと・すてっぷ』ダ。『ふぁーすと・すてーじ』トハ 二度ト呼ブナ」

真「えらっそうだなぁ…さっきまでいじけてたくせに…」

FS「君ハ一度沈ンダラ 永遠ニ沈ンデイルノカ? ドン底ノ人生ダナ」

雪歩「駄目だよ、『ファースト・ステップ』。ちゃんと真ちゃんとも仲良くしないと」

FS「ハイ。雪歩ガ ソウ言ウノナラ従イマス」

真「………」

571: 2015/12/19(土) 12:12:33 ID:P4Gm2AEM
FS「ト、言ウ訳ダ菊地真。君トモ仲良クシテヤル、感謝シロ」

真「おまえな~、雪歩とボクとで態度が違いすぎないか?」

FS「当タリ前ダ。君ニ媚ヲ売ッテ 一体何ニナルト言ウノダ」

真「雪歩に媚を売ったら何になるのさ」

FS「ソレハ…フヒッ」

真(気持ち悪いスタンドだなぁ…)

FS「ソレデ…コレカラ ドウスルツモリダ? 菊地真」

雪歩「このまま、島を回ってみんなを探すの?」

真「いや…」

572: 2015/12/19(土) 12:14:43 ID:P4Gm2AEM
真「やっぱり、牢獄を目指そう。そこに捕まってるみんなを助けるのが一番手っ取り早い」

雪歩「でも、そこの門番が凄く強いんじゃあ…?」

真「もちろん、闇雲に突っ込んだりするつもりはないよ。戦う必要はない…戦闘が目的じゃなければ、風穴くらいは空けられるかもしれない」パンッ

拳を手のひらに打ち付ける。

FS「フム」

真「さっきまでのボクは勘違いしてたんだ。なんでも一人でやろうって、やらなきゃいけないって」

雪歩「真ちゃん」

真「でも…うん、二人ならきっと行ける。着いてきてくれる、雪歩?」

雪歩「もちろん!」

雪歩(私も戦う…戦えるんだ、もう真ちゃんを一人で戦わせたりしなくていい)

雪歩(進もう、きっとみんなもどこかで戦ってるはずだから)

………

……


573: 2015/12/19(土) 12:16:02 ID:P4Gm2AEM
ピチャ…

響「うぎゃっ!」

P「どうした、響!? 敵か!?」チカッ

響「まぶしっ! 天井から水滴が落ちてきただけだぞっ、ライトこっち向けないでっ」

P「あっ、すまん…湿気が多いのかな? 霧も出てるし…」

美希「狭いとますますジメジメしてヤなの」

P「嫌って、美希…」

ピチャン…

暗い洞窟の中、懐中電灯の明かりと水滴の音だけが存在している。

P「お前がこの中を進んでみようって言ったんじゃあないか」

響「見るからに怪しい洞窟に飛び込んでいくからびっくりしたぞ…」

美希「それにしてもプロデューサー、よく懐中電灯なんて持ってたね」

P「何があるかわからなかったからな…鞄の中に色々入れてきたんだ」

574: 2015/12/19(土) 12:16:58 ID:P4Gm2AEM
美希「この奥、何があるんだろ?」

響「何かはありそうだけど…実際に確かめないとわかんないぞ」

P「危険なものじゃなければいいが」

美希「この島にいる以上、キケンじゃないコトなんてないと思うケド」

P「それはそうかもしれないけどさ」

響「ま! 何かあっても自分たちがなんとかするから、プロデューサーは安心してていいぞ!」

美希「響! 危ない!」

響「えっ!? 敵か!? どこから…くっ、見えないぞ…」キョロキョロ

美希「うそうそ、なんにもいないよー♪」

響「…もー! 美希ー!!」

P「お前ら、もう少し緊張感をだな…」

575: 2015/12/19(土) 12:19:01 ID:P4Gm2AEM
「きゃああああああっ!!」

P「!?」

美希「奥から悲鳴が…行こ!」

響「うん!」

P「あ、待て、走るなお前達!」

響「あっち、明るくなってる…」

美希「何かあるに違いないの」

三人は明かりの灯る方向に、ぐんぐん進んでいく。

カッ!

美希「!」バッ

天井から降り注ぐ照明を、手で遮る。

ゴゴゴゴゴ

P「開けた場所に出たな…」

響「なんだ? 洞窟の中なのに、上の方に電気がついてる…」

美希「なんか、工事現場か…それか秘密基地? みたい」

576: 2015/12/19(土) 12:20:24 ID:P4Gm2AEM
???「来たか」

美希「!?」

響「誰かいる…!」

岩肌に囲まれた空間の中心に、女が一人立っている。

ゴゴゴゴゴゴ

サラサラ…

その足元には小さな砂山が一つ。

???「どこかから逃げてきた『複製』相手じゃ、あまりに退屈すぎてね…」

P(砂…敗北した『複製』か…? 同士討ち…?)

???「待ってたよ。765プロの『スタンド使い』達」

P(黄金のウェーブがかった髪、均整の取れた磨き抜かれたスタイル…左右で異なる色をした、まっすぐな瞳)

美希「このヒトは…」

響「おまえは…! オーバーランクの…」

P「レモン…!」

レオン「レオンだっ! 柑橘類じゃあない!」

577: 2015/12/19(土) 12:21:20 ID:P4Gm2AEM
レオン「と…そんなことはどうでもいいんだ」

レオン「星井美希…それと我那覇響か。まずはここに来てくれたこと、歓迎するよ」

P(アイドルランクという枠組みの外にいるオーバーランクアイドル…その実力は、あの日高舞にすら匹敵すると言われている現代の伝説)

P「あの玲音が相手なのか…!?」

響「こいつは本物の玲音じゃあない。関係ないぞ」

レオン「本物じゃあない、か。確かにアタシは玲音の容姿と記憶を持っただけの『複製』にすぎない」

P「ちょっと待て、どうして玲音の『複製』がこんなところにいるんだ…?」

P「本物の玲音に成り代わって、アイドルになること…『複製』はそのために生み出されたんじゃないのか?」

レオン「それは高木が勝手に言ってることだ。アタシの生きる意味はアタシが決める」

P「は…」

レオン「アイドルにはそれほど興味はないし…高木が考えていることなんて、アタシには関係がない」

P「か、関係ない…?」

レオン「まぁ、アイドルをやれと言われたってアタシ自身にやる気がなければどうしようもないし、高木からはここを…」チラッ

空間の奥に、不自然に扉が取り付けられている。

レオン「正確に言えば、あの扉の中にあるものを任されてるわけだ」

578: 2015/12/19(土) 12:23:36 ID:P4Gm2AEM
響「あの扉…あの奥に、何かあるのか?」

美希「もしかして、会長が隠れてるとか?」

レオン「それは、教えられない。知りたかったら…」スッ

服の中から、カードを1枚取り出して見せる。

レオン「アタシに勝てばわかる。カギはアタシが持ってる」

美希「ふーん。勝てばいいんだ?」

レオン「ああ。勝てなければそれまでだ」

P「おい、美希…」

美希「わざわざこうやって誰かが守ってるってことは、何か大事なものがあるに違いないの」

響「それに…こうして会っちゃったら、逃がしてもらえるわけもないぞ」

レオン「構わないよ」

響「へっ?」

サラ…

小さな砂山が散らばり、地面に溶けていった。

レオン「どうにも、この程度の相手では満たされなくてね…」

579: 2015/12/19(土) 12:25:53 ID:P4Gm2AEM
レオン「尻尾を巻いて逃げるのなら追いはしない。そんな精神力ならどの道この島じゃ生き残れない」

レオン「そんなヤツとは…戦う価値もない」ズッ

美希「!」

ゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴ

レオンの傍に、四本足で地に立つ獣のようなスタンドが出現する。

レオン「これがアタシのスタンド『アクセルレーション』」

美希「見たことないカンジのスタンドだね…」

レオン「強いよ。アタシはこいつと『スタンド使い』の頂点を目指す」

響「『スタンド使い』の頂点…?」

レオン「ああ。生まれたからには頂点を目指す。生き物として自然なことだろう?」

美希「生き物って、『複製』でしょ? 血も流れてない」

レオン「心臓が動いていれば、それで生きていると言えるのかい?」

美希「……………」

レオン「戦うため…そして勝つため。アタシはそのために存在している。それだけだ、『複製』だとか人間だとかアイドルだとか、そんなものはどうでもいい」

580: 2015/12/19(土) 12:27:51 ID:P4Gm2AEM
美希「行こ、響」

響「うん」

P「大丈夫なのか…? あいつ、なんかヤバいぞ…」

響「わかんない…けど、確かにあいつの言う通りここで逃げ出すならこの先やっていけないぞ」

P「そうか…」

美希「ま、プロデューサーは心配しないでいいよ。勝ってくるから」

P「そうだな…」

P(きっと大丈夫だ。美希と響は事務所にやってきた『複製』達のほとんどを二人だけで倒してしまった。こいつらは強い)

美希「行くよ、『リレイションズ』」ズッ

美希の前にスタンドが立った。

レオン「さぁ見せてくれ、キミ達のスタンドを…」

響「行くぞ、『トライアル・ダンス』!」シュン

響の体に、スタンドが憑依した。

レオン「…キミ達の強さをッ!」

581: 2015/12/19(土) 12:28:43 ID:P4Gm2AEM
グッ

響「だっ」ビュン!!

響が脚をバネにし、ロケットのようにレオンに突っ込んていく。

響「ドラ…」ヒュ…

・ ・ ・ ・

蹴りを見舞おうとするが、その場にレオンの姿はない。

レオン「おっと」ズザザ

響「ん!?」キキッ

後方からの声に反応し、響はそのままブレーキをかける。

レオン「待つのは性に合わないようだね、お互い」

響(なんだ…!? なんでそんなところにいる…?)

響(自分が飛び出したのと同じ瞬間に、あいつも自分のいた方に向かって飛び出してきたのか…!?)

レオン「アタシの『アクセルレーション』と速さ比べと行くか…」

美希「よそ見ゲンキン! なの!」

レオン「と、まずは星井が先か」

582: 2015/12/19(土) 12:30:12 ID:P4Gm2AEM
美希「えい!」ドォ

レオンに向かって拳を繰り出す。

レオン「遅い」

「ヴォヴ…」

美希「う…!?」ギィン!!

獣が唸り声を上げたかと思うと、爪が『リレイションズ』の腕を跳ね上げていた。

レオン「行くよ…『アクセルレーション』」

美希「守…」バッ

ヒュオッ

美希「っっっ!?」グシャア!

守ろうと交差した腕をすり抜け、『リレイションズ』の胴体に前足が叩きつけられる。

美希「こ…このパワー…」ギリギリ

美希「ああああっ!?」ドッギャァァァン

ドバン!!

美希はスタンドごと吹っ飛ばされ、岩盤に体を叩きつけられた。

583: 2015/12/19(土) 12:32:07 ID:P4Gm2AEM
響「へ…」

P「は…み、美希…?」

レオン「これで終わりじゃないだろう? 立て、星井」

美希「……う…」

レオン「今の一撃でもう立てないのかい? この程度なのか? キミは」

響「おおおおおおおおおっ!!」ダヒュン!

レオン「ん!」

ダム! ダム! ダム! ダム! ダム! ダム!

響が、洞窟の中を跳び回る。

レオン「へぇ…」

ダムッ!

P「うわっ!」バッ

縦横無尽に跳び跳ね、プロデューサーの近くをも掠めていく。

P「ひ、響の奴、俺達まで巻き込むつもりか…!?」

584: 2015/12/19(土) 12:32:46 ID:P4Gm2AEM
パラパラ…

壁を蹴るたびに洞窟が削れ、砂となって落ちている。

レオン「………」キョロキョロ

レオンは跳び回る響の姿を目で追おうとするが、ゆっくりとした動きで全く着いていっていない。

響「うおおおおおおおおおおお」

レオン「速いね、目にも留まらない」

ヒュン

しかし次の瞬間、『アクセルレーション』が、響の背中にぴったりと張り付いていた。

響「………は?」

レオン「でも、アタシの『アクセルレーション』にとってはそうじゃないみたいだ」

ズシャァ!!

響「んがっ!?」バキャ

ドォォォォン!!

『アクセルレーション』の一撃で、響は地面へと撃ち落とされた。

585: 2015/12/19(土) 12:35:29 ID:P4Gm2AEM
P「ひ…響ッ!」

レオン「確かに速い…だけど、追えなくもないな」

響「う…」ググ…

膝をついたまま、両手をついて顔を上げる。

響「じ、自分の『トライアル・ダンス』より速いなんて…そんなの、ありえないぞ…それに、このパワー…」

響「能力じゃあない、たかねの『フラワーガール』みたいに素で強いんだ…!」

P「まさか、会長の言っていた『最強の三体』…その一体がこいつなのか…!?」

レオン「並び立つようなものを最強とは言わないさ」

響(スタンドだけじゃあない…こいつ自身も、今までの奴らとは全然違う…)

響(例えば、涼の『複製』も本物とは全然違ったけど…あれだって、自分の思う『アイドル』ってやつを演じてただけだ)

響(『スタンド使い』として戦うこともあるけど、それは自然じゃあない…あくまでも本分は『アイドル』なんだ。自分たちだってそう)

響(でも、こいつは違う! これが、自然体なんだ! 『スタンド使い』の頂点を目指すと言っていた…こいつは自然に『スタンド使い』として存在してる…!)

586: 2015/12/19(土) 12:36:23 ID:P4Gm2AEM
レオン「………」カツ カツ

響「う…」

レオンが、ゆっくりと響の方に歩いてくる。

ゴゴゴゴ

レオン「どうしたんだ? まさか、今ので戦意喪失したわけじゃあないだろう?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

P(俺はスタンドが見えない…だから何が起きているのか正確にわかるわけじゃあない…)

P(だが、これだけは理解出来る…あいつは強すぎる! 美希も響も…あいつに対してまるで歯が立たない…!!)

響「く…」

P「響、駄目だ! 一人じゃ敵うわけがない!」

レオン「まだ目は氏んでいないか」

ヒュン

そう言うと同時、『アクセルレーション』が響の目の前に現れるが…

響「たっ!」ダム!

響は後ろに思いっきり跳び退いた。

587: 2015/12/19(土) 12:38:21 ID:P4Gm2AEM
響「…!」

しかし、『アクセルレーション』は響の動きを予想していたかのようにピッタリ着いてくる。

レオン「そこだ!」グオッ

響「ドラァ!」ヒュッ

キン!

空中で、響の脚とスタンドの前脚がぶつかり合う。

響「わっ…!」ズザザザザザ

レオン「!」ザザッ

その衝撃で、お互いに弾かれた。後方に跳んでいた響の方が大きく跳ね飛ばされる。

響(パワーもスピードも、自分より上…)

レオン「撃ち合うだけじゃあ浅い。アタシには勝てないよ」

響(プロデューサーの言う通り、こんな奴に一人じゃ敵うわけがない…確かにその通りだ)

ドドドドドド

美希「………」

響(でも、自分は一人じゃない!)

588: 2015/12/19(土) 12:39:58 ID:P4Gm2AEM
跳ね飛ばされたレオンの背後に、ちょうど美希が立っている。

響(不意打ちはズルいか…? いや、最初からこれは自分と美希との戦いだ!)

美希「『リレイションズ』ッ!!」シュバッ

レオンに向かって拳を撃ち出す。

レオン「ん!?」クルッ

予想外と言わんばかりに、レオンが美希の方を振り返った。

響(今気づいても遅い!)

響(スタンドがいくら速くても、本体は違う! スタンドを動かすまでには考える時間が必要…)

美希「なのっ!」ドォ

遮るものはない。次の瞬間には、『リレイションズ』の拳がレオンに叩き込まれる。

ヒュン

・ ・ ・ ・

キィィィン!!

響「は…」

そう思った瞬間、『アクセルレーション』がそこにいて、美希の攻撃を弾いていた。

589: 2015/12/19(土) 12:42:11 ID:P4Gm2AEM
美希「これは…」

レオン「そこだッ!」ゴッ

美希「んっ!」バッ

ズガン!!

ドサァ!

すぐさまもう片方の腕を差し出すが、その上からそのままスタンドの腕を叩きつけられる。美希の体が大きく地面を跳ね、そのまま背中から落ちた。

P「な…なに…」

レオン「なるほどね、狙いはよかったかもしれない」

響「さっき、自分に着いてきたのもそうだった…」

響「速いとかそーいうレベルじゃあない! 今のは、完全に読まれていなきゃおかしい! 未来が見えているのか…!?」

レオン「半分正解だ、我那覇。少なくともアタシには未来なんて見えない」

「グゥゥゥ…」

レオン「でも…『アクセルレーション』、こいつはジャジャ馬でね。アタシが考えるより、アタシが動かそうとするよりさらに早く動くことが出来る」

レオン「数秒先の未来を『先取り』できる…と、そう言った方がわかりやすいかな?」

響「未来を…『先取り』する…だって!?」

590: 2015/12/19(土) 12:44:34 ID:P4Gm2AEM
レオン「頭の中でギアを入れる…すると、『アクセルレーション』は『1秒先』、『2秒先』へと進む」

レオン「『2秒先』の『アクセルレーション』は我那覇、キミが後ろに跳ぶのを知っていて、キミにそのまま攻撃しようとしている」

レオン「例えアタシの氏角を突こうが、ガードしようが、避けようが、フェイントを入れようが…『アクセルレーション』は既にそこにいる」

響「そんな能力が、なんであんなに正確に…」

レオン「自分のスタンドも使いこなせず何が頂点だい? まぁ、使いこなせるようになるまでに時間はかかったけどね」

レオン「とにかく…アタシに不意打ちは通用しないし、どれだけ速かろうが『アクセルレーション』に追いつくことはできない」

<LOCK!

レオン「!」

レオンと『アクセルレーション』の左腕に、『ロック』の模様が浮かび上がる。

美希「ふぅっ…」ムクッ

レオンが美希を見ると、ちょうど体を起こしていた。

レオン「なるほど、あくまでも『アクセルレーション』が存在できるのは能力を使った時点での『1秒後』…それに対応することで、未来を変えたってことか」

美希「そんな大層なものじゃないと思うケド」

レオン「そして、地面に叩きつけられた衝撃もスタンドで防いだか…やるね、星井。それでこそだ、アタシに直接能力をつけた『スタンド使い』はキミが初めてだよ」

美希「そんな上から目線で褒められたってゼンゼン嬉しくないってカンジ」

593: 2015/12/31(木) 23:23:21 ID:NOjUNTjg
レオン「さて、こうして『ロック』が一つついたわけだけど」

ドドドドド

レオン「次は何を見せてくれるのかな? 星井」

美希(………)

レオン「まさか、これ一つ程度で勝利への道が拓けるだなんて思ってないだろう?」

美希「………」スッ

構える。

レオン「吼えろ『アクセルレーション』!!」

「クアアアアアアアアアアァァァッ!!!」

ヒュン

地面を揺るがすほどの叫び声を上げると、凄まじい速度で美希へと襲い掛かる。

美希「『リレイションズ』!」シュ

それに合わせ、躊躇いなくスタンドの腕を振り下ろすが…

ヒュン

軌道上から『アクセルレーション』が姿を消す。

594: 2015/12/31(木) 23:23:53 ID:NOjUNTjg
ズガッ

美希「う…っ!」

レオン「『1秒』…」

『リレイションズ』の体に前脚が叩きつけられ、美希の体が折れ曲がった。

P「美希!」

美希「なのっ」バッ

レオン「もう『1秒』」

シュン

『アクセルレーション』に手を伸ばすが、一瞬でレオンの下へ戻っている。

美希(戻るのも速い…)

レオン「『アクセルレーション』の能力はスタンドに流れる時間を少し進めるだけ、ごく単純なものだ」

レオン「だけど、単純がゆえに強い。単純がゆえに、対抗できない」

595: 2015/12/31(木) 23:24:49 ID:NOjUNTjg
レオン「まだまだ行くぞッ!」

「ゥォォォォォオオ…!」グオッ

美希「!」

レオンがスタンドと一緒になって突っ込んでくる。

美希(射程距離は5mくらい…でも、本体のレオンもスタンドに体を引っ張られてすごいスピードで動いてくる!)

ビュォォォ

美希(『複製』だからあのスピードに着いていっても平気なんだ…!)

レオン「せぇやっ!!」ヒュゴッ

槍のように、スタンドの前足を鋭く突き出す。

美希「なのっ」ブンッ

シュバァ

レオン「遅い!」キキッ

それに合わせて美希が大きく腕を振り回すが、『アクセルレーション』は既に美希の反対側に移動している。

美希「!」ブンッ

それに引っ張られてレオンも射程の外へ一瞬で動き、腕が空を切る。

596: 2015/12/31(木) 23:25:25 ID:NOjUNTjg
レオン「一発当てられたから、また当てられると思ったか?」

美希「ううん、思ってないの」

響「うりゃあ!」キキッ

レオン「!」

美希「いくら速いったって、そっちは一人でしょ!」

『アクセルレーション』が移動した地点に、響が現れる。

響「ドラァ!」シュッ

美希「なのっ!」ゴォッ

『リレイションズ』の拳と響の脚が、同時に襲いかかる。

レオン「ふっ…!」

シュッ

キィン!!

美希「んっ!」

レオンは一瞬笑ったかと思うと、『アクセルレーション』で美希の腕を弾き飛ばした。

597: 2015/12/31(木) 23:26:36 ID:NOjUNTjg
ヒュン

響「うお…」

それと同時に、響の目の前に攻撃したばかりのスタンドが現れ…

レオン「一人でも…コイツなら二人の相手はできるよ」

キィン!!

P「あ…!」

響に攻撃を叩き込んだ。

響「ぐぐ…」ブルブル

レオン「ん!」

腕を震わせながらも、攻撃を受け止めている。

響「まだ…まだ!」

レオン「怯まないか…!」

美希「なのっ!」シュゴッ

レオン「!」

続けて美希が攻撃を仕掛けてくる。

598: 2015/12/31(木) 23:27:32 ID:NOjUNTjg
レオン「はぁっ!」ダンッ

響「わっ」フラッ

響を思い切り突き飛ばすと…

ヒュン

ズガァ!

スタンドの時間を『1秒』進めて美希の攻撃を防ぐ。

響「うおおっ!」シュバ

レオン「そう来るか…」

しかし、次の瞬間にはもう響が攻撃を仕掛けている。

美希(攻撃を当てるには…絶え間なく攻撃すること! やっぱり、一人じゃ限界があるの!)

美希(それに、スタンドだってそんな何秒も何秒も飛ばすことはできないハズ!)

599: 2015/12/31(木) 23:28:11 ID:NOjUNTjg
レオン「…次で『5秒』か」

ゴォッ!

響「んっ!?」

『アクセルレーション』が響の目の前に詰め寄る。

レオン「はあああぁッ!!」ガガガガガガガガッ

響「うわっ!!」

そして、次々と攻撃を叩き込み…

レオン「だっ!」シュバァ

響「うぎゃぁっ!!」ズギャァァン

吹っ飛ばした。

美希「飛ばせるのは全部で『5秒』くらいが限界みたいだね」

レオン「!」

美希「ここっ!」バッ

レオン「………」

しかし、無防備になったレオンの『ロック』めがけて、『リレイションズ』が襲いかかる。

600: 2015/12/31(木) 23:29:06 ID:NOjUNTjg
響「よし、行けっ!」

美希(一瞬あればスタンドは戻ってくる…)

美希(でも、一瞬あれば充分! それまでの間に、いっぱい『ロック』つけちゃうから!)

美希「なのなのなのなのなのなの」ズババババ

美希はレオンに向かってラッシュを放とうとする。

バサッ

美希「!?」

レオン「………」

拳が届く直前、砂にまみれた服が、美希とレオンの間に現れた。

響「あ、あいつ…さっき砂になった『複製』の服を引っ張り出して…!?」

バキィ!!

服の上から、『ロック』をつけた部分に拳が打ち込まれる。

レオン「く…」

・ ・ ・ ・

しかし、『ロック』による拡散は起こらない。

601: 2015/12/31(木) 23:30:46 ID:NOjUNTjg
美希「な…なのっ!」ドン ドン

レオン「………」

ヒュン

ガァ!!

数発打ち込んだところで、『アクセルレーション』が戻ってくる。

美希「うぅ…!」

レオン「ふぅ」ズル…

レオンが顔に被さった服を退かすと…

レオン「ぜあっ!!」

「グルァッ!!」

バキィィィン!!

獣が吼えた。

美希「わっ」ヒュオ…

ドサッ!!

『アクセルレーション』の方がパワーは断然強く、美希はスタンドごとブッ飛ばされる。

602: 2015/12/31(木) 23:32:03 ID:NOjUNTjg
響「く…」

美希「ミキの『リレイションズ』の『ロック』を…あんな方法で…」

レオン「一番怖いのは『ロック』を重ねさせることだからね。アタシが可能な限りそれはさせない」

美希(油断ってのがゼンゼンないの…)

美希(さっき『ロック』をつけられたのは反撃されると思ってなかったから…それがわかった今、当てさせないつもりなんだ)

P「いや…でも当たった…俺でもわかる、確かに攻撃は当たったぞ!」

レオン「ああ。今のは良かったよ、多少強引だったが」

響「でも…」

美希「うん…」

レオン「二人はわかってるみたいだね」

P「え?」

美希「今みたいにやってても勝てない…たとえ『ロック』を防がれなかったとしても…」

響「『複製』の体は丈夫だ…それに、あのスタンドもパワーが違う…自分達の腕や脚が先に潰れちゃう」

P「そんな…」

603: 2015/12/31(木) 23:32:44 ID:NOjUNTjg
レオン「そこまでわかっていても…」

美希「………」

レオン「まだ目の輝きは氏んでいないか」

美希(ちょっとやそっとじゃあの人には敵わない…)

美希(きっと、勝つためには…全部出し切らないとダメなの)

響「美希」

美希「?」

響「あれ、やってみよう」

美希「あはっ、響も同じコト考えてた」

レオン「フフッ、次は何を見せてくれるのか…」

タッ!

レオン「!」

美希が、レオンに向かって駆け出した。

604: 2015/12/31(木) 23:34:03 ID:NOjUNTjg
ドドドドドド

レオン(星井単独で…? それに、自分から…?)

美希「………」

ドドドド

レオン(何を企んでるのかわからないが…)

レオン「正面から叩き潰す! それが頂点を目指すってことだ」グオッ

『アクセルレーション』が地を蹴る。

美希「行くの…」

『リレイションズ』が美希の前に飛び出し…

美希「響ッ!」

響「うん!」ズオッ

響の体から、『トライアル・ダンス』が抜け出る。

レオン「…!?」

スゥッ

そして、『リレイションズ』の中に入っていった。

605: 2015/12/31(木) 23:37:57 ID:NOjUNTjg
レオン(これは…)

ゴゴゴゴゴゴ

『リレイションズ』の体に、虎のような文様が浮き出る。

ギラン

瞳が、水色に光った。

レオン(我那覇のスタンドが、星井のスタンドに取り憑いた…?)

レオン「関係ない…喰らえッ!!」

ヒュッ

美希「………」

ゴォッ!

レオン(速い! けれど…)

ヒュン

腕の動きに反応し、スタンドを『1秒』先に進める。

606: 2015/12/31(木) 23:41:48 ID:NOjUNTjg
レオン「『アクセルレーション』は、常にその上を行…」

ユラ…

バチィィィィィン!!

レオン「………!?」

<LOCK!

『アクセルレーション』が『進められた』その瞬間、『ロック』に吸いこまれるように一撃が叩き込まれた。腕が大きく弾かれる。

美希「ドラァッ!」ゴォッ

レオン「………」

間を置かず、『リレイションズ』の攻撃が襲いかかる。迫る拳を見ようともせず、レオンは『ロック』を打ち込まれた左手を見ている。

ヒュヒュン

そして、『アクセルレーション』が時間を『進め』た。

レオン(入る…このタイミングで反撃なんて…)

ドギャァン!!

レオン「ッ!?」バリバリバリ

そう思った瞬間に、既に『リレイションズ』の腕が左腕に突き刺さっていた。

607: 2015/12/31(木) 23:52:00 ID:NOjUNTjg
レオン「ぐあ…っ!?」

美希「ドラララララララララ」シュン

・ ・ ・ ・

レオン(拳の動きが…見えない!)

ドッギャアァァァァァァン!!

レオン「うおおおおおっ!?」

ズザザザザザ

殴られたのか、衝撃で飛ばされるが、踏みとどまった。

<LOCK! LOCK! LOCK! LOCK!

しかし、全身に『ロック』がつけられている。

レオン(速い…なんてもんじゃない、なんだこれは…!?)

美希「『リレイションズ…」

響「オーバーマスター』」

美希「『スタンド使い』の頂点を目指すとか言ってたよね」

美希「だったらそれを超えて、ミキ達が頂点に立つ」

610: 2016/01/31(日) 22:46:12 ID:557ly.z.
シュゥゥゥゥゥ…

P(風向きが変わった…)

P(何かわからんが、美希と響の有利な方向に)

ドドド ドドド

美希「行くよ、『オーバーマスター』」

レオン「! 『アクセ…」

ガッ

レオン「っっ…!」

気付いた時には、レオンにつけられた『ロック』に腕が突き刺さっている。

グググ…

バチィィン!!

押し込まれる腕を、『アクセルレーション』で思い切り弾いて振りほどく。

美希「ドララララララ」ゴォッ

レオン「うおっ…」バッ

追撃が来るが、後ろに跳び、ギリギリ攻撃が届かない場所まで出た。

611: 2016/01/31(日) 22:47:57 ID:557ly.z.
美希「ふぅ…」

レオン(射程距離は『リレイションズ』と同じか…?)

響「ん、ちょっと遠かったか」

レオン(『トライアル・ダンス』と一体化しているんだ、星井の射程と我那覇の射程が重なる部分があのスタンドの射程距離になるのか)

レオン「ぐっ…」

ビリビリ

レオン(重い…腕がまだ痺れている)

<LOCK! LOCK!

レオン(そして速い! 今ので2発…)

<LOCK!

レオン(いや、3発…)

レオン「うあああっ!!」バリバリバリ

衝撃が、全身の『ロック』に伝わっていく。

レオン(『ロック』に引き寄せられ、どんどん強く、速く、そして正確になっていく…)

612: 2016/01/31(日) 22:51:13 ID:557ly.z.
ザッ

レオン「!」

ゴゴゴゴ

美希「………」ザッ ザッ

ゴゴゴゴゴゴ

レオン(星井が近づいてくる…)

美希「………」

ゴゴゴゴ

レオン「く…『アクセルレーション』!!」

ヒュン

美希「………」ジッ

ヒュン

美希「んっ!」

時間を『進め』、左右にフェイントをかけながら距離を詰める。

613: 2016/01/31(日) 22:53:46 ID:557ly.z.
キュイイン

レオン(『リレイションズ』の眼が見ている…これがあの高速反応を可能にしているんだ)

レオン(そして…『オーバーマスター』のスピードは、『アクセルレーション』を完全に上回っている!)

レオン「だが…」

ヒュン

美希「!」

『1秒』後の『アクセルレーション』が、美希の背後に回っている。

レオン(眼の届かない氏角なら…!)グオッ

美希の脇腹を抉ろうと、爪が迫る。

ユラ…

・ ・ ・ ・

ズバァ!!

レオン「…っ!?」ビリビリビリ

『オーバーマスター』が振り向いたと思うと、既に『アクセルレーション』の攻撃は薙ぎ払われていた。

614: 2016/01/31(日) 22:57:28 ID:557ly.z.
ブオッ

増幅した衝撃で、レオンの身体が飛ぶ。

レオン「あっ…がっ…!」バリバリバリ

自分の体を抱くように押さえつけ、その場に踏みとどまった。

レオン「はぁぁぁ…」

美希「流石に頑丈だね」

レオン「『ロック』を使ったのか…? でも、タイミングも合わせずこんな鋭い攻撃が出来るのか…?」

美希「タイミングはわかってたよ」

レオン「見えていた…? 『リレイションズ』の眼は全方向見通せるのか…?」

美希「ゼンゼン。ミキからはどこにいるかわかんないの」

レオン「なに? だったら、今のは…」

響「自分のこと、忘れてないか?」

レオン「! そうか…我那覇、キミが…」

響「うん。『オーバーマスター』は自分のスタンドでもあるんだぞ」

615: 2016/01/31(日) 23:00:55 ID:557ly.z.
響「こいつはただ乗り移って凶暴化してるのとは違うからね、自分からもある程度は動かせるぞ」

レオン「このスタンドの練度…付け焼刃じゃあないな」

美希「うん。いっぱい練習したの。半年前の事件の時に」

レオン「天海春香が『弓と矢』を使い、キミ達全員を『スタンド使い』にした事件か」

響「あの時、春香の『アイ・ウォント』を倒すために二人で特訓したんだ」

美希「結局、使うことはなかったケド」

レオン「………」

美希「ミキの『リレイションズ』の『ロック』と『正確性』…」

響「自分の『トライアル・ダンス』の『パワー』と『スピード』」

美希「これがミキ達の切り札、『オーバーマスター』! なの!」

レオン「ふ…」

響「? 笑ってるのか?」

616: 2016/01/31(日) 23:02:42 ID:557ly.z.
レオン「あの程度で終わるとは思っていなかったが…まさか、こんな牙を隠していたなんてね」

美希「それはどうもなの」

レオン「いや…氏角からの攻撃なんて、小細工だった…」

響「で、どうするんだ?」

レオン「どうする? 愚問だな…」

ダッ

美希「!」

響「!?」

『オーバーマスター』に向かって真っ直ぐに突っ込んでくる。

レオン「正面突破…それ以外にないッ!!」

響(『オーバーマスター』の動きは見ているはず…何考えてるんだ!?)

「ァァァァァァァァアアアアアアアア!!」

美希「ん!」ビリビリ

『アクセルレーション』の咆哮に、空気が震える。

617: 2016/01/31(日) 23:07:06 ID:557ly.z.
レオン「そこだッ!!」ヒュン

美希「………」

キュオン

『オーバーマスター』の眼が、目の前に現れる『アクセルレーション』を捉える。

美希「ドラァ!」ゾゥン!

美希はそのまま攻撃に移ろうとするが…

レオン「『アクセルレーション』ッ!!」

ヒュン

・ ・ ・ ・

能力を発動した『アクセルレーション』が、より懐に入り込んだ。

レオン「はぁっ!!」

ドグォッ!!

美希「きゃっ!?」

響「うぎゃっ!?」

『オーバーマスター』と共に、美希と響が弾き飛ばされた。

618: 2016/01/31(日) 23:13:03 ID:557ly.z.
P「美希! 響!」

美希「だ、大丈夫…!」

響「これくらい、なんともないぞ!」

レオン「なるほど、一体化したスタンド…ダメージも二人分、か」

美希「今のは…」

響「ギリギリまで、本当に攻撃する直前までスタンドを『進め』たのか…」

レオン「ああ、そうだ」

ヒュン

美希「また来た…!」

響「ドララララララララ」

シュババァ

牽制するように、『ロック』に引っ張らせ何発ものジャブを放つ。

チリッ

レオン「う…!」ビリッ

一発かすった腕のダメージが、全身に何倍にも増幅する。

619: 2016/01/31(日) 23:15:41 ID:557ly.z.
レオン「うおおおおおっ!!」

ヒュン

ズギャン!!

美希「うあっ…!」

響「ぐあっ…!」

獣の前脚が、思い切り『オーバーマスター』の腕を弾いている。

レオン「アタシに対してその程度の攻撃が足止めになるとでも思うのか!?」

美希「ドラァ」ヒュバァ

レオン「見てから反応できる…?」

ヒュン

バキィ!!

美希「ん…!!」

スタンドの腹に、脚が突き刺さる。

レオン「だったら、見る時間を潰す! キミ達のスタンドが0.01秒で反応するのなら、アタシは0.001秒の隙を突く!!」

620: 2016/01/31(日) 23:19:10 ID:557ly.z.
ギン! ガンッ! ガガッ!

美希「ううっ…!」

響「あっ! ぐぅっ…!」

ほとんど一方的に、『アクセルレーション』の攻撃を喰らい続ける。

レオン「はああっ!!」

・ ・ ・ ・

突然、『アクセルレーション』の攻撃が止んだ。

美希「ドララララララ」ズバババババ

レオン「ぐっ! ぐああっ…」ガッガガガガギガガギガガッ

能力が使えない『アクセルレーション』に、ここぞとばかりに『オーバーマスター』の嵐のような攻撃が叩き込まれる。

レオン「『5秒』が切れれば反撃されるか…そうだろうね、だけどそれがなんだい!? キミ達の全力を、無事で済まそうなんて虫のいい話だ!」

ヒュン バキャッ!!

美希「く…っ!」

再びギリギリのタイミングまでスタンドを『進ませ』、美希の体をブッ飛ばす。

レオン「言ったろう!? どれだけ速かろうが『アクセルレーション』には追いつけないと!」

621: 2016/01/31(日) 23:22:26 ID:557ly.z.
P(また、風向きが変わっている…俺にも、あいつらが押されているのはわかる…)

P(できることならなんとかしたい、だが…)

P(俺にスタンド攻撃ができない春香の『複製』相手の時でも、俺はほとんど役に立たなかった…)

P(ここで飛び出していっても、あいつらの足を引っ張るだけだ)

P(何より…)

美希『勝ってくるから』

P(あいつらは勝つと言った。言った以上、絶対に勝つ!)

622: 2016/01/31(日) 23:25:19 ID:557ly.z.
美希「くぅ…」

響「『オーバーマスター』でも追いつけないなんて…」

美希「考えてみればトーゼンなの、攻撃の瞬間だけを切り取れるんだから時間でも『止め』られなきゃあれに追いつけるスタンドは存在しない…」

響「時を止める!? そんなスタンド、あったら無敵だろ!」

美希「ま、無い物ねだりしてもしょーがないケド」

響「どうするの、『5秒』が切れた一瞬しかまともに当たらない…5秒間は一方的に殴られ続ける!!」

美希「しかも、相手は『複製』…ミキ達より丈夫、か」

レオン「さぁ続けようじゃないか、どちらかが倒れるまでッ!」

美希「あんなこと言ってるケド、続けたら負けるよね」

美希「…ならさっさと終わらせよっか。響」

響「どうやって?」

美希「ボコバコ殴り合ってても勝てないの。『複製』を倒すなら、ミキ達が精神力で買って、負けを認めさせるしかない」

美希「だから、『アクセルレーション』の能力を破る。それしかないって思うな」

響「…なるほどね。それも難しそうだけど…それしかないなら、やるさ」

623: 2016/01/31(日) 23:36:13 ID:557ly.z.
レオン「キミ達は強い…アタシが戦った中でも三本の指に入る」

レオン「だが、それに勝ってこそ価値がある! 『スタンド使い』として、より高みに行ける!!」

美希「勝手に行ってろってカンジ…」

レオン「行くぞッ、『アクセルレーション』!」

ヒュン

響(この、『5秒』先まで行動を『進め』られるスタンド…)

響(それを完全に破るには…)

美希「『リレイション…」

レオン「遅いッ!!」ズギャン!!

美希「うぅぅぅぅ…!!」ドボォ

美希の体が折れ曲がる。

レオン「そこだ!」

ザシュゥ!!

美希「かは…!」

畳み掛けるように、『アクセルレーション』の牙が『リレイションズ』の喉笛に食らいついた。

624: 2016/01/31(日) 23:43:08 ID:557ly.z.
レオン「これで終わりかい…?」

ドドドド

レオン「ん…?」

ドドドドドド

美希「はーっ、はーっ…」

ググググ…

『リレイションズ』の両手が、『アクセルレーション』の顎を掴んでいる。

「グァァァァァ…」

グッグッ

顎は今にも閉じられようとしているが、震える手で押し戻している。

美希「喉はアイドルの命…ゼッタイ、手は出させないの」

レオン(なんだ…?)

美希「ぐぅぅぅ…」ギリギリ

レオン(星井が攻撃を止めている…それだけじゃあない、なにか違和感が…)

625: 2016/01/31(日) 23:45:49 ID:557ly.z.
ダムゥ!!

レオン「! この音は…!」

レオン(そうだ、スタンドが『オーバーマスター』じゃあない!)

美希「殴り合いじゃ勝てない…だったら、『オーバーマスター』は捨てる」

レオン「星井は囮…本命は…」クルッ

響「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」ギュォォォォォォォオオオオ

レオン「こっちか…!!」

レオンが振り向くと、『トライアル・ダンス』を憑依させた響が壁から弾丸のように突っ込んできている。

レオン「だが、『アクセル…」

美希「なのっ!」

ガシッ

レオン「がっ!?」

『リレイションズ』が、顎をこじ開けるように押さえつける。

美希「離さないよ。少なくとも5秒間は、ゼッタイ」

626: 2016/01/31(日) 23:50:39 ID:557ly.z.
レオン「う…」

響「ドラァッ!!」

レオン「おおおおおおおおおお」

ドボガァ!!

レオン「ご…がっ…!!」

響の体が、レオンの背中に突き刺さった。

ズザザザザザザ

二人の体が、地面を転がる。

P「や、やったか…!?」

響「うぅ、どうだ…?」ムクリ

響は立ち上がると、美希の近くまでゆっくりと歩く。

美希「これで『アクセルレーション』の能力は破ったの」

レオン「…破った…?」

響「!」

倒れたまま、レオンは呻くように声を出す。

627: 2016/01/31(日) 23:53:21 ID:557ly.z.
ゴゴゴ

レオン「こんなことで…アタシの『アクセルレーション』を…破ったって…?」

ゴゴゴゴゴゴ

P「こいつ、まだ…!」

響「だったら、何度でも倒してやるぞ…!」

ゴゴゴゴゴゴ

美希「…いや、待って響」

レオン「う……」プルプル

響「え…?」

レオン「うぁ…あぁぁ…うぅ…」

P「な、なんだ…?」

美希「この人、とっくに限界だったみたい…」

レオン「立て…ない…体が…動かない…」

628: 2016/02/01(月) 00:05:08 ID:Smue/UEc
レオン「あぁ…さっきまでずっと立っていられたのに…一度倒れてしまったら、こんなにも立ち上がるのが難しいのか…」

美希「無理しない方がいいって思うな」

レオン「はは…まさか、もったいつけて出した『オーバーマスター』を囮に使うなんて思わなかったよ」

美希「自分で言ってたでしょ? いくら速くても追いつけないって。だったら、止めるしかないの」

響「スタンドが一つじゃあ、動きを止めても攻撃できないからね…だから、分かれたんだぞ」

レオン「『オーバーマスター』があったから、アタシは思い切り攻撃に行かざるを得なかった…そこを突いたのか」

美希「響が、言わなくてもわかってくれて助かったの」

響「わかるぞ。半年前…いや、ずっと一緒に頑張ってきたしっ」

629: 2016/02/01(月) 00:08:49 ID:Smue/UEc
レオン「キミ達は、力を合わせることで信じられないパワーを発揮してくるね」

美希「凄いパワーは出たケド、あんまり役に立たなかったの」

レオン「『オーバーマスター』のことじゃあない。スタンドの性能を越えた、何かもっと大きな力だ」

響「うん…」

レオン「ま、一人ならアタシの方が強いけどね」

響「往生際が悪いぞ!」

美希「負けは負け、素直に認めるべきだって思うな!」

レオン「ああ…」

サラサラ

レオンの体が、指先から砂に変わっていく。

響「あ…」

レオン「認めてるよ。アタシの『精神』は、ちゃんと認めている。キミ達の勝ちだって」サラサラ

630: 2016/02/01(月) 00:16:51 ID:Smue/UEc
レオン「鍵はもう取り出せないが…アタシが消えたら持っていてくれ」

響「う、うん…」

美希「ねぇ、他の『最強の三体』について教えて」

レオン「ああ…彼女達も、強いよ。キミ達が戦うかはわからないが」

レオン「能力については言えないが、あの能力にはアタシも勝つのは難しいかな…」

美希「………」

サラサラ

美希「消えるん…だね」

レオン「そうだな…」

レオン「でも、いい。満足だ。キミ達と戦えて…よかった」

そう言うと、レオンは消え去った。

サラサラ

その場には彼女の着ていた服と、彼女だった砂だけが残されていた。

631: 2016/02/01(月) 00:23:06 ID:Smue/UEc
P「美希、響…勝ったんだな…」

美希「さてと」ヒョイ

美希はレオンの服を拾い上げ、ポケットの中からカードキーを取り出す。

P「ちょ、ちょっと待て美希、労いの言葉くらい言わせてくれよ」

美希「ミキ達には、止まってる時間なんてないの。進まなきゃ」

P「はぁ…ま、とりあえずお疲れ様…」

響「ありがと。ふぅ、どっと疲れたぞ…」

P「ああ、見えなくてもあいつが強かったのは伝わったよ。こんなのがまだ二人もいるんだな…」

響「その二人だけじゃなく、まだまだ『複製』はいっぱいいると思うぞ。それに、会長も…」

P「…あの扉の奥、何があるんだろうな?」

響「うーん、お菓子とかいっぱい入ってたり…?」

P「そんなものを門番に守らせるか…?」

美希「えいっ」ビッ

ギギギギ…

美希が傍についているリーダーにカードキーを読み込ませると、扉が開いていく。

632: 2016/02/01(月) 00:29:53 ID:Smue/UEc
ゴゴゴゴゴ

美希「え…? なにこれ。部屋?」

P「さっきまで岩肌に囲まれてたのに…なんだここは、マンションの一室か…? しかも家具まで置いてある…人の住めるようなスペースだ…」

響「! ベッドの上! 誰かいるぞ!」

???「ん…」ゴシゴシ

中老の男がベッドから上体を起こし、目をこすっている。

P「あれは…」

???「君達は…なんだ、これは夢か…?」

美希「見覚えがあるの…」

響「高木…会長!?」

???「え?」

美希「ここにいたのッ!」

響「くたばれッ!!」

二人はベットの上の人物をボコボコにしようと飛び込んでいく。

???「おおっ!?」

633: 2016/02/01(月) 00:37:14 ID:Smue/UEc
P「ま、待て待て待て待て! 落ち着け! 似てるが、違う!」

響「へ?」

美希「あれ、言われてみると…」

???「き、君…星井君に、我那覇君まで…本物、なのか…?」

美希「もしかして、社長?」

順二朗「ああ…まさか、君達が来てくれるとは…」

美希「…社長って、こんな顔だったっけ?」

響「あれ、言われてみれば確かに…最後に見た社長の顔と違うな」

P「いや、だからあれは社長じゃなくて会長の『複製』が社長を名乗ってただけで本物の社長は海外に…えーと…こんがらがってきた」

美希「とにかく、本物なんだね? スタンドも見えないみたいだし」

順二朗「む、君達が『スタンド使い』になったというのは本当のことだったのか…」

響「あ、スタンドのことは知ってるんだ」

P「で、どうして社長がここに…?」

順二朗「それは、話すと長くなるのだが…」

634: 2016/02/01(月) 00:51:04 ID:Smue/UEc
響「春香の『複製』…あいつが…」

美希「デコちゃんはその時に入れ替わったんだね」

順二朗「ああ。気付いた時には、私はこの部屋に閉じ込められていた」

P「帰ってきてたのなら、まず俺達のところに顔出してくれれば…」

順二朗「いや、そのだな。君達を驚かせてあげようと…思ったのだが…まさか、こんなことになっているなんて…」

美希「会長って、ほんとはた迷惑なの」

順二朗「これも順一ちゃんなりに、アイドルの未来を考えての行動なのだろう…だが、こんなことをしてまでやることではない…」

響「全部、『弓と矢』のせいだぞ! 『アイ・ディー・オー・エル』が使えるようになったから、会長はおかしくなったんだ!」

P「どこかに割り切れない気持ちがあったのかもしれませんね。俺だって、みんなのアイドル活動の終わりを考えたら、会長の気持ちはわからなくもない…」

響「自分、まだまだアイドルやめるつもりはないぞ」

美希「終わりのコトなんて、今から考えても仕方ないってカンジ」

P「そうだな…気持ちはわからなくもないが、それでも今、会長のやってることに賛同はできない」

響「うん」

美希「止めよう、ゼッタイに。こんなことは、やめさせなきゃなの」

635: 2016/02/01(月) 00:58:00 ID:Smue/UEc
P「それにしても、会長はなんで社長をこんなところに…? 門番をつけて守らせてまで…」

順二朗「門番…」

響「すっごい強かったぞ。ま、自分達で倒したけどね」

順二朗「恐らく、それは私ではなく…あれのためだろうな」

美希「あれ?」

順二朗「ちょっと待ってくれたまえ、えーと、こっちに…」ペタペタ

順二朗は部屋の壁を探り始める。

順二朗「えーと、確かここに…おお、あった」

カパッ

ポチ

壁の一部が開き、中のスイッチを押す。

ゴゴゴゴゴゴ

すると、部屋の奥がゆっくりとこじ開けられていった。

636: 2016/02/01(月) 01:00:56 ID:Smue/UEc
ゴゴゴゴゴ

開いていく壁の隙間から、額縁のようなものが見える。そして、中には何かが飾られていた。

P「…!?」

ゴゴゴゴ

順二朗「…これだ」

中のものが、完全に姿を現わした。そこにあったのは、一組の…

ゴゴゴゴゴゴゴ

P「こ、これは…まさか…!」

響「ここにあったのか…!? きっと、これがオリジナルの…」

美希「…『弓と矢』!」

TO BE CONTINUED→

637: 2016/02/01(月) 01:06:03 ID:Smue/UEc
スタンド名:「アクセルレーション」
本体:レオン
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:A 射程距離:D(5m程度) 能力射程:D(5m程度)
持続力:C 精密動作性:E 成長性:C
能力:四足歩行の獣のような姿をした、レオンのスタンド。「最強の三体」のうちの一体。
野生の獰猛さ、力強さ、瞬発力を兼ね揃え、しかもあらゆるスタンドを上回る。
スタンドに体を引っ張らせることで、本体のレオンも高速の移動が可能。(常人ならば筋肉や骨に異常が出るが、「複製」であるレオンはある程度耐えられる)
スタンドの時間を「進め」、最大で「5秒」先までの未来の状態を先取りできる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「リレイションズ・オーバーマスター」
本体:星井 美希&我那覇 響
タイプ:近距離パワー型・複合
破壊力:A スピード:A 射程距離:E(美希から2m以内かつ響から10m以内) 能力射程:D(美希から5m)
持続力:D 精密動作性:A 成長性:?
能力:美希の「リレイションズ」に響の「トライアル・ダンス」が憑依した姿。
「トライアル・ダンス」の能力射程と、「リレイションズ」の射程距離の重なる部分が射程距離となる。
「リレイションズ」の能力はそのままに、荒々しい獣のような「パワー」と「スピード」を得た。
その脅威は嵐のように、際限なく増幅していく。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

>>635の「/おわり」はミスです

638: 2016/02/01(月) 01:33:28 ID:33G40OD.

後は伊織かな
もう伊織はどれだけ出てないのか……



To Be Continued...





引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2