741: 2016/04/01(金) 23:35:22 ID:PELmP7ig





前話はこちら





ガシャ! ガシャン!

薄暗く冷たい牢獄の中で、檻が揺れている。

看守「うるさいぞ! また貴様か、いい加減にしろ!」

彩音「ケッ、いい加減にするのはどっちよ」ガシャン!

看守が様子を見に来ると、鈴木彩音が檻に蹴りを入れた。

看守「やめろ! そんなに収監を伸ばされたいのか!?」

彩音「どうせ、ここから出られたところであのホテルみたいな場所に閉じ込めるんでしょーが。どこいても同じよ」

看守「はぁ…何が不満だ? 何か不足があれば用意すると言っているはずだが」

彩音「ほー、じゃあ言ったらノーパソとカメラとマイク、用意してくれるワケ?」

看守「用意ならできるが…」

彩音「ネットには繋げられんの? 別にここのことバラしたりしないから」

看守「ここから外部への通信は全面的に禁じている」

彩音「ほーらコレよ。な~にが望むものは用意するよ、ネットに繋げないんじゃ何もイミないっつーの」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

742: 2016/04/01(金) 23:36:43 ID:PELmP7ig
看守「…我々のボスはアイドルの将来のため動いているのだ。ネットなんてどうでもいいだろう」

彩音「どーでもいいかどうかはアタシが決めることよ。アタシにとっちゃアイドルの将来なんざどーだっていいっての」

看守「何ぃ!? 自分さえよければいいのか貴様!?」

彩音「じゃなくて、そもそもアタシはネットアイドルなの!! リアドルのことなんて知るか!」

看守「ん? つまり…アイドルだろう?」

彩音「イマドキ、ネトアも知らないの!? あーやだやだ、これだから流行に疎い老害ドモは…」

看守「…とにかく、次騒いだらただでは済まないと思え」

彩音「おい、逃げんな! ったく、もう…」ドカッ

手を後頭部に回し、壁に寄り掛かって座る。

「よく飽きないわね…」

彩音「あん?」

寄りかかった壁の向こうから声が聞こえてくる。

743: 2016/04/01(金) 23:38:29 ID:PELmP7ig
彩音「逆よ、逆。ここでの生活に飽き飽きしてるから暴れてんの。ってか、アンタ誰」

麗華「…東豪寺麗華よ、魔王エンジェルの。名前くらい聞いたことあるでしょ?」

彩音「魔王エンジェルぅ? なにそれ、知らな~い」

麗華「はぁ!? 知らないわけないでしょ、貴女もテレビくらい観るでしょ!?」

彩音「テレビなんて見てないっての。つまんない番組しかやってないじゃない」

麗華「なんで観てもないくせにつまんないってわかるのよ…アイドルのことバカにしてんの?」

彩音「別に。リアドルはリアドルでラクなもんじゃないってのは知ってるわ、ただアタシとは住む世界が違うってだけ」

彩音「それにしても、なんでも用意するとか言ってるクセにパソコンも用意できないとかホントありえないわよ」

麗華「能天気なヤツね…」

彩音「あ゛あ!? こちとら真剣だっつーの! ああ、こうしてるうちにもランキングが…」

麗華「はぁ…貴女ね、今の状況わかってんの!? そんなランキングなんてどうでもいいでしょうが!」

彩音「だから、アタシにとっちゃリアドルのゴタゴタなんて関係ないんだっつーの!!」

744: 2016/04/01(金) 23:40:04 ID:PELmP7ig
「うるっさいわね、ギャーギャーギャーギャー。静かにしてくれる? ただでさえ寝心地悪いんだから」

麗華「その声…」

「あら、誰かと思えば東豪寺さんのとこの麗華様じゃない。アンタも捕まってたのね」

彩音「アンタ、センパイの知り合いのデコ!?」

「あっ、ああ、え、えーと……………」

「………佐藤?」

彩音「鈴木よ! 鈴木彩音!」

彩音「イヤ鈴木でもない! アタシは電子の妖精サイネリアよ!」

「はぁ…で、その電子の鈴木さんがどうしてこんなところにいんのよ? アイドルでもないのに」

彩音「メンテナンスのオッサンみたいに言うな! アタシだってよくわかんないわよ」

彩音「センパイの様子がおかしいと思って、876の事務所に忍び込んで気づいたらここに連れてこられて…ああもう、なんでアタシがこんな目に…」

「アンタも一応『スタンド使い』だったわね。だからじゃないの?」

彩音「一応ってナニよ! あーもう、好きでなったワケでもないのに!」

「自分の都合で使ってよく言うわ…」

745: 2016/04/01(金) 23:42:05 ID:PELmP7ig
麗華「スタンド…」

「ここにいるってことは、アンタも『スタンド使い』にされたんでしょ? あの『弓と矢』で」

麗華「そうよ、あの『弓と矢』が来てから全部おかしくなったのよ…」

「ああ。やっぱり、876だけじゃなかったのね。アンタのところにも…いいえ、きっとあらゆるアイドル事務所にあの『弓と矢』は現れた」

麗華「なんなのよ、スタンドとか『弓と矢』とか…なんで私達はこんなところに閉じ込められなきゃならないの…!」

彩音「なによ、今の状況わかってんのとか言って、そっちだってわかってないんじゃない」

麗華「閉じ込められてるのは事実でしょう!」

「だーから。うるさいっての、キーキー騒いでも何も変わんないでしょうが」

麗華「なんで貴女はそうやって平然としていられるのよ…」

「色々あったのよ。色々」

彩音「って言うか…ナニ? アンタら知り合い?」

「ま、昔からちょっと…ね」

麗華「そうね。アイドルになる前からの付き合いかしら」

彩音「フーン…まぁ、アンタ達のことはいいわ」

746: 2016/04/01(金) 23:45:17 ID:PELmP7ig
彩音「デコ、アンタのスタンドでここから脱出とかできないの?」

「無理ね」

彩音「つっかえないわね…そこらの看守からヒョイっとカギ奪えばいいだけじゃない。そんなのもできないの?」

麗華「偉そうね貴女…」

「鍵を奪い取るのも、檻から出るのも…それ自体は簡単にできるわ」

彩音「じゃあやんなさいよ。アタシの『ワールド・オブ・ペイン』じゃ滑って上手くいかないのよ」

麗華「貴女は出来ないのね…」

「無駄よ。例え逃げ出したとしても、すぐに捕まるわ。アイツがここにいる以上、誰も逃げられやしない…」

「いや、アイツらか…ったく、あんなのが三人もいるなんてどうかしてるわ」

麗華「貴女にしては弱気ね。まぁ、無理もないけど」

「勘違いしないで、ビビってるワケじゃあないわ。強がったところでできないことはできないのよ」

「そもそも、牢屋から抜けたところでここは孤島。出られやしないわ」

麗華「島? 島なの、ここ?」

彩音「アンタ、それをどうやって…」

747: 2016/04/01(金) 23:50:19 ID:PELmP7ig
スゥ…

麗華「! 『煙』…?」

牢獄の中を、うっすらと『煙』が漂う。

「情報はここから勝手に聞こえてくる」

麗華「貴女…スタンドを使いこなして…」

「麗華。アンタもスタンドの使い方くらい覚えておきなさい、使いこなせば便利なモンだから」

麗華「え? でも…」

「そこの田中だって使えんのよ。使う気があれば誰だって使えるわよ」

彩音「誰が田中だ!」

「今は、待つ時だわ」

彩音「待つって…ナニを?」

「それは…」

………

……


748: 2016/04/01(金) 23:51:35 ID:PELmP7ig
真「あれ?」

ザザ…ン

真が森を抜けると、海岸沿いに出た。

真「牢獄って…こっちでよかったっけ?」

雪歩「私に聞かれても」

真「だよね…うーん、参ったな」

雪歩「本当に、こっちで合ってたの?」

真「方向は合ってたと思うんだけど…この『霧』だし、森なんて全部同じに見えるからな…どこかでズレたのかな」

雪歩「一回引き返す?」

真「戻ろうとしたら、余計迷う気がするなぁ。このまま牢獄を探した方が…」

雪歩「でも、無闇に動いたら、もっともっと迷っちゃうと思うよ」

真「うーん…」

749: 2016/04/01(金) 23:52:44 ID:PELmP7ig
真「ん?」

雪歩「『ファースト・ステップ』、なにかわからない?」

FS「フム、『ふぁーすと・すてーじ』ノ頃、一帯ヲ歩キ回ッタ事モ アルノデスガ…シカシコノ『霧』デハ目印ニ ナルモノモ見エマセン…」

真「………」

雪歩「真ちゃん?」

FS「ドウシタ、菊地真。コンナ時ニ何ヲ 呆ケテイル」

真「何かが近づいてくる…」

雪歩「なにか?」

FS「近ヅイテクルト言ッテモ『霧』デ見エナイシ、音モ シナイガ」

真「いや、ボクも何も見えないし聞こえない…でも、何かが近くに来るのはわかる」

FS「ぼけタカ?」

真「凄い勢いだ、車か…?」

ギャルルルル…

雪歩「! 聞こえた…こっちに来る」

FS「確カニ、何者カガ向カッテキテイルヨウデスネ」

750: 2016/04/01(金) 23:54:06 ID:PELmP7ig
ゴゴゴゴゴ

ギャルルルルルルル

『霧』の中から、直径1m程度の前輪が姿を表す。

雪歩「バ、バイク…? 『自転車』…?」

真「いや、スタンドだ…」

ギュイイン

走ることよりも轢くことを目的としたような大げさな両輪をつけた真っ黒な単車のような形状をしたスタンドが真達を横切る。その上に、誰かが乗っている。

真「ボクだ…!」

マコト「止まれ、『ザ・バイシクル』」

ギュリィィィ

単車がブレーキをかけ、地面を引っかきながら回転し、真達に車体の側面を向ける。

マコト「………」

ゴゴゴゴゴゴ

雪歩「真ちゃんの…」

真「ボクの…『複製』か!」

751: 2016/04/01(金) 23:54:56 ID:PELmP7ig
スッ

マコトはハンドル片手に、もう片方のふわりと伸ばし、手のひらを上向きで差し出した。

マコト「さぁ…迎えに来たよ。プリンセス達」

真「………」

雪歩「………」

FS「………」

真「………………」

マコト「お城から抜け出したりして…いけない子達だ」

真「………………………………………」

マコト「あれ、お気に召さなかったかい?」

真「な、な、な、な、なんのつもりだ…!? あああ…? ふざけてんのか…!?」ババッ

真は体を震わせながら、手を交差させて身構えた。

マコト「駄目だよハニー。ふざけてんのか、なんて。そんな乱暴な言葉、キミには似合わない」

真「うあああああ…」ゾゾゾゾ

真の全身に鳥肌が立つ。両肩を抱きすくめて掻き毟った。

752: 2016/04/01(金) 23:55:57 ID:PELmP7ig
雪歩「髪が短い…」

マコト「おっと、長い方が好みだったかな?」

雪歩「…本当に、真ちゃんの『複製』なんだね」

真「ええ!? なんで今ので納得したの!?」

マコト「そうさベイビー。ボクは『アイ・ディー・オー・エル』の能力でキミの記憶から生まれた」

マコト「そしてアイドル菊地真そのもの…となれば、演出するべきはかっこよさ…皆の王子様、だろう?」

真「ゆ、雪歩、本当にアイドルやってる時のボクってあんななの…?」

雪歩「え? うーん、まぁ…ちょっと極端かもしれないけど、大体あんな感じ…かなぁ?」

真「えぇぇぇ…」

雪歩「そんなに恥ずかしい?」

FS「イツモ自分デ ヤッテルクセニ」

真「自分で演じるのと外から見るのは違うよ! いつもならファンのみんなも盛り上がってるから気にならないけどさ…!」

マコト「ボクのためにキミを悲しませちゃったみたいだね…すまない、ハニー」

真「くぅぅ…! 倒す、コイツだけは倒さなきゃダメだ…!」

753: 2016/04/01(金) 23:56:43 ID:PELmP7ig
マコト「ああ、ボク達は戦わなければいけない運命なのか…」フルフル

額に手を当て、首を振った。

真「やめろよ、そのわざとっぽい喋り方…!」

マコト「キミ達を傷つけたくはない…でも、仕方ない…ボクの『ザ・バイシクル』で」

ギャルン!

真「!」

スタンドの両輪が『回転』し、走り出す。

マコト「倒す…出来るだけ、早く。ボクにできるのは…それだけだ」

ブオン

その姿が、『霧』の中に消えた。

真「…こっちのセリフだ。一刻も早く終わらせよう」ギギギ

『チアリングレター』を両腕に纏う。

雪歩「行こう、真ちゃん」

真「いや。雪歩は下がってて」

雪歩「え…?」

754: 2016/04/01(金) 23:57:36 ID:PELmP7ig
雪歩「ちょっと待ってよ真ちゃん。私、前はスタンドを扱えなかったけど、今は違うんだから…!」

真「雪歩には、アイツの能力を観察してほしい」

雪歩「え?」

真「恐らく、『近距離パワー型』だとは思うけど…どんな能力か、まだ全部はわからない。だからまず、ボクが打って出る」

真「『ファースト・ステップ』の能力ならやり過ごせるだろう? 『穴』に潜って、あのスタンドの能力を分析してほしいんだ」

雪歩「………」

真「任せて、いいかな?」

雪歩「…わかった。そういうことなら…気をつけて、真ちゃん」

真「うん」

ヴォン スゥーッ

雪歩は『穴』の中に入り込み、真のいる場所から離れていった。

真(さて…)

ゴゴゴゴゴゴ

真(どこから来る?)

755: 2016/04/01(金) 23:58:38 ID:PELmP7ig
ズオン

マコト「オラァ…!」

『霧』を破って、真の背後からマコトがウィリーしながら突っ込んでくる。

真「やっぱり、『近距離パワー型』か…?」ギッ

振り向きながら、腕を畳んで握りこむ。

真「なんにしても、ボク相手に近接戦闘を挑むのは間違いだよ」ギギ

ギャルルルルルル

真「オラァッ!!」ギュオッ

腰に捻りを入れ、『回転』する前輪に向かって拳を叩き込んだ。

ガッシィィィィィン

マコト「………」

真「砕けろッ!!」

ギュル…

真「ん…!?」

車輪に撃ち込んだ拳が、下へと逸れていく。

756: 2016/04/01(金) 23:59:45 ID:PELmP7ig
マコト「間違いはキミの方だよ。残念だけど」

ギャルルルルルル

『回転』に巻き込まれ、真の腕がどんどん車体の下へと引きずり込まれる。

真「な…何…!?」

マコト「雪歩にボクの能力の分析を頼んでたみたいだね。でも『ザ・バイシクル』の能力は『回転』するだけ、ただそれだけさ。分析するまでもない」

キュイイン

真「うおっ…」ガクン

バタン!!

真は腕に引っ張られるようにバランスを崩し、倒れる。

マコト「でも…『回転』の力は、無敵だ」

グオッ

『ザ・バイシクル』の前輪が倒れた真を踏み潰そうと襲い掛かる。

真「くっ!」

ガッ!!

真は腕をタイヤと自分の間に挟み込んで身を守った。

757: 2016/04/02(土) 00:01:10 ID:Kyhxfy1.
ピタ…

後輪の動きが止まった。

マコト「それも間違いだ。キミがやるべきは、守ることじゃなく逃げることだった」

ギャリリリリリリリ

真「ぐっ! うああああああ…!」

前輪の『回転』が、『チアリングレター』を蝕んでいく。

真(バカな…! 『最硬』の『チアリングレター』だぞ…砕くならともかく削っている、だって…!?)

真(それだけじゃあない、ボクの攻撃もあっさりと防いでいた…! これが『回転』の力なのか…!?)

ギャルルルルル

マコト「どうした、これで終わりかい!? 亀みたいに丸まっていても、助けは来ないよ!」

ツーッ

マコト「ん?」

『穴』が一つ、真の下へ滑るように移動してくる。

758: 2016/04/02(土) 00:02:14 ID:Kyhxfy1.
ニュッ

穴の中から、白く細い手が現れ…

グイッ

真「おおっ!?」スポン

真を掴み、『穴』の中へと引きずり込んだ。

マコト「!」ガッ!

ギュルルルルル

ズバッ!

前輪はそのまま砂浜の上の穴へと落ち、引っ掻く。5m近くの砂柱が上がり、パラパラと落ちた。

シュルルル…

『穴』は意に介すこともなく、小さくなってひとりでに消えていった。

マコト「…なんだい、そのスタンドは?」クル

雪歩「………」

真「うぅ…」

マコトの視線の先に、仰向けに倒れた真を抱きかかえる雪歩がいた。

759: 2016/04/02(土) 00:03:19 ID:Kyhxfy1.
真「ゆ、雪歩…雪歩以外の生物は『穴』には入れなかったんじゃ…」

雪歩「中に入るのはね。通り抜けるだけならできるよ」

真「ありがとう、助かったよ…」

雪歩「真ちゃん。礼を言うのはあの人を倒してからだよ」

FS「ソノ通リ。マダ戦イハ終ワッテイナイノダ、甘エルナヨ菊地真」

真「べ、別に甘えてるわけじゃ…」

マコト「へぇ、面白いな」ザッ

マコトが、砂浜の上に立つ。

真「! スタンドから降りた…」

マコト「その雪歩の能力、記憶の中の情報にはなかった」

雪歩「………」

マコト「動く『穴』の中に入る…そして、『穴』から『穴』へ移動させられる。『ファースト・ステージ』からの進化ということは、これも『返す』能力なのかな」

真「! こいつ…」

マコト「せっかく能力を見せてくれたんだ、隠していたら雪歩に失礼だな。ボクも、全部見せてあげよう」

真「なに?」

760: 2016/04/02(土) 00:04:22 ID:Kyhxfy1.
マコト「さぁ、真の姿を見せろ『ザ・バイシクル』」

ガシャン ガシャン

スタンドが戦隊モノのロボットのように変形し、二本の足で立った。

キュイイイイイン

二つついていた車輪は両腕の先に位置し、『回転』を始める。

マコト「さぁ、第二幕の始まりだよ。お嬢様方」

真「『自転車』のスタンドが、人型に変形した…!」バッ

真は立ち上がって構えをとる。

雪歩「真ちゃん」

真「え、なに? 雪歩」

雪歩「やっぱり、一緒に戦おう。そっちの方がいいよ」

真「あ、ああ。そうだね…あいつ、『スタンド能力』を隠す気もないみたいだし…」

雪歩「うん。行こう、真ちゃん、『ファースト・ステップ』」

FS「ALRIGHT* Yukiho. シッカリ着イテコイ、菊地真」

真「くぅ…」

765: 2016/04/17(日) 23:44:12 ID:8LZDvSwQ
ウィィィィン…

両腕の先に付いた車輪を電動ノコギリのように『回転』させながら、スタンドが二人へと迫る。

真(ボクの『チアリングレター』も削る車輪が、腕に二つ…)

ザッ

真「!? 雪歩!?」

雪歩「はっ」ヴォン

雪歩が前に飛び出して行き、空中に『穴』を開ける。

マコト「オラァ!」ギュゥオ

『回転』する車輪が『穴』に突き刺さった。

雪歩「この『回転』の力を『返せ』れば…」

ピキッ

雪歩「えっ!?」

空が割れた。

FS「駄目デス雪歩…『穴』ノ展開ガ間ニ合ワナイ、さいずガ大キスギル」

766: 2016/04/17(日) 23:45:00 ID:8LZDvSwQ
パリィィン

『穴』が、引き裂かれるように砕け散った。

雪歩「っ…!」

マコト「オラァッ」ギュイイン

『ザ・バイシクル』が腕を振り上げ、雪歩に向かって振り下ろす。

真「だっ!」

ギィン!

マコト「!」

真が横から入ってきて、腕を弾き飛ばした。

雪歩「真ちゃん…」

マコト「へぇ、流石にやるね」

真(全然効いていない…あの『回転』で、殴った衝撃が分散されてるのか!)

767: 2016/04/17(日) 23:45:30 ID:8LZDvSwQ
マコト「オラァ!」ウィン

真「オラァ!」ゴォッ

ガァン!

至近距離で、車輪と拳がぶつかり合う。

マコト「オラオラ」ヒュン ヒュン

真「オラオラオラ」ガシッ ガシ

お互いの手数が増えていき…

マコト「オラオラオラオラオラオラオラオラ」ギュルルルルルルルルル

真「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」ガンガンガンガンガンガン

やがてラッシュの撃ち合いになる。

ガガガガガ

真(こっちの方が多く撃ち込んでるのに…)

ダダダ

真のラッシュを撃つ腕が、どんどん開いていく。

真(『回転』に弾かれる…ガードがこじ開けられる!)

768: 2016/04/17(日) 23:46:29 ID:8LZDvSwQ
マコト「だっ!」キンッ

真「う…!」スカッ

真の両腕が『回転』によって弾かれ、正面ががら空きになる。

マコト「そこだ!」ギュオン

真「………」パッ

真が両手を広げて見せる。鎧がない。

マコト「!」ピタッ

それを見て、マコトは『ザ・バイシクル』の腕を止めた。

ギギギギギ

『チアリングレター』が真の右足に集まっている。

真「オラッ…!!」ズオッ

マコト「ちっ」バッ

ガィン!!

真が放った蹴りを、左腕の車輪で受け止めた。

769: 2016/04/17(日) 23:47:52 ID:8LZDvSwQ
ギュイィィィイ

真「うおっ」グルンッ

『回転』により、脚が車輪の上を滑っていく。その勢いで、真の体が天地逆転しながら宙に浮いた。

真「ふっ!」バタン!

背中から落ちる。受け身を取るが…

マコト「オラァッ!」

立ち上がる暇もなく、『ザ・バイシクル』の腕が迫る。

キュイイイン

真(車輪の横からなら…ブレードの隙間に指を挟み込めば…!)グオッ

マコト「内側から破壊できる…と、考えているのかな?」

ジャキン!

車輪の内側にカバーが現れ、車輪から円板状に変形する。

真「何!?」

真(剥き出しにしていたのは罠か…! でも、このまま行くしかない!)

770: 2016/04/17(日) 23:49:03 ID:8LZDvSwQ
ギュルルルルルル

真(真ん中なら、『回転』の力は少ないはず…)

真「オラッ!」グアシッ

両腕で、円盤の中央を挟み込むように殴った。

キュイイイイ…

真「ぐあっ!」ジリジリジリ

しかし、『回転』する円盤に拳を削られ…

バチィン!!

弾かれた。

真(ダメだ! 真ん中でもこれほどまでに強いのか、この『回転』は…!)

マコト「さぁ、終わりだ」キュィィィィィン

真(やられる…!)

ガシッ

真「え?」

足が掴まれる。見ると、地面の『穴』から手が伸びていた。

771: 2016/04/17(日) 23:50:47 ID:8LZDvSwQ
グイッ

マコト「何!?」ガキィ

『穴』が移動し、真の体を引っ張った。行き場を失った円盤が地面に叩きつけられる。

マコト「オラオラオラオラ」ダンダンダンダン

真「いたたたたたたた!?」ズルズルズル

真は倒れたままの姿勢で砂浜を引き摺られ、マコトの攻撃を避けながら離れていく。

FS「雪歩、菊地真ヲ救出シマシタ」ズズ

雪歩「ありがと、『ファースト・ステップ』」

『ザ・バイシクル』の射程距離外に出ると、『穴』の中から『ファースト・ステップ』が出てくる。

真「くあーっ、髪! 後ろだけ坊主になってたりしてないよね!?」

雪歩「大丈夫、綺麗な髪だよ」

マコト「逃がしたか…」

マコト「まぁ、今のでわかったかな。『ザ・バイシクル』はキミの『チアリングレター』よりも上だ」

772: 2016/04/17(日) 23:52:01 ID:8LZDvSwQ
真「くそっ…! 『回転』の力に勝つのは無理なのか…!?」

雪歩「あの車輪…円盤以外を攻撃するのはできないかな? 本体を直接狙うとか」

真「不可能…ではないけれど、あいつのスタンドは本体の近くにくっついている『近距離パワー型』だ。難しいと思う」

雪歩「スタンドの、腕以外の部分を狙うのはどう?」

真「それも難しいな…ボクのスタンドがこうだからわかる。気をつけるべきなのが両腕だけと言っても、正面からあの両腕を避けて攻撃するのは並大抵のことじゃないよ。しかも、あっちの方がパワーは上だ…」

雪歩「…正面から、行かなければ…」

真「え?」

雪歩「お願い『ファースト・ステップ』」

FS「ALRIGHT*」タッ

『ファースト・ステップ』が単独で『ザ・バイシクル』に向かっていく。

マコト「オラァッ!!」

FS「フン」ヴォン

スポ

マコト「!」ブゥン

『ファースト・ステップ』が目の前に『穴』を作ると、その中に入り、『ザ・バイシクル』の攻撃を空振らせる。

773: 2016/04/17(日) 23:53:57 ID:8LZDvSwQ
雪歩「真ちゃん! この『穴』に!」ヴォン

真「オラァッ」ヒュ

スポ

雪歩が真に向かって『穴』を作ると、示し合わせたように拳を撃ち込む。

ゴォッ

撃ち込んだ拳が『ファースト・ステップ』の入っていった『穴』から飛び出し、マコトに襲いかかる。

マコト「『ザ・バイシクル』」ヒュ

グワァァン

だが、割って入った『ザ・バイシクル』の腕に平然と受け止められた。

真「何…」

マコト「発想は悪くない」

マコト「でも、雪歩。キミの『穴』には充分に警戒している。あらかじめ予測できれば、こんなものは…」

マコト「こうだッ!」ギィン

真「ぐあっ!」グリッ

『回転』に腕を引っ張られ、『穴』に引きずり込まれそうになる。肩が『穴』に締め付けられている。

774: 2016/04/17(日) 23:56:36 ID:8LZDvSwQ
マコト「ボクのもとに引き寄せたいけど…キミが通り抜けるには、そっちの『穴』はちょっと小さいみたいだ」

真(ダメだ、腕を引っ込めないと…腕を折られる!)シュポン

真「はぁっ!」ドサッ

腕を引っこ抜き、その反動で尻餅をついた。直後、『穴』が消える。

マコト「何をしようとボクには勝てない! 『回転』の力は無敵だ!」

ヴォン…

・ ・ ・ ・

『ザ・バイシクル』の足に『穴』が開いた。

雪歩「『ファースト・ステップ』」

マコト「………」チラッ

FS「………」ズッ

『穴』から出た『ファースト・ステップ』の手が、足に触れていた。腕はそのまま『穴』の中に戻っていき、『穴』ごと消える。

マコト「スタンドに空いた『穴』からボクを直接狙うつもりか…? 離れろ、『ザ・バイシクル』!」スッ

『チアリングレター』の腕が届かない程度に、スタンドに距離を取らせる。

775: 2016/04/17(日) 23:59:20 ID:8LZDvSwQ
マコト「ボクをスタンドから分断させるか? それとも…」

マコト「この『穴』から腕を出しても、せいぜい握り潰すくらいしかできない。『チアリングレター』のパワーなら脅威だが…その前に『ザ・バイシクル』の腕が削り落とすよ」

キュイイイイイン

さらに『回転』のスピードが上がる。

雪歩「いくら『回転』させても、一つだけ絶対に攻撃が届かないところがあるよ」

マコト「なに?」

ツゥゥーッ

右腕の円盤に移動する。

雪歩「『回転』してる上なら…!」

雪歩「あそこなら、『穴』も一緒に『回転』する! コーヒーカップに乗ってる時みたいに、あの腕の円盤は回ってないのと同じだよ!」

ズッ

マコト「は…」

円盤上の『穴』から、『チアリングレター』が顔を出し…

ガシィ!

円盤を掴んだ。

776: 2016/04/18(月) 00:00:55 ID:bMJxSBC6
ギリギリ

マコト「うお…!」

『チアリングレター』が、円盤を握り潰そうとする。

マコト「オラァ!」ヒュ

『回転』する左手を叩きつけるが…

マコト「ぐぅっ!?」バチィッ!!

弾き飛ばされる。

真「同じ『回転』同士だ! 止めようたってそうはいかないよ!」

ミシ…

掴まれた円盤から、僅かに軋む音がした。

マコト「『回転』を止めろ『ザ・バイシクル』ッ!」

ピタ…

真の腕が出た右腕だけが、『回転』を止めた。

真「うおっ!」スポン

それを見ると、真は慌てて『穴』から腕を引き抜いた。

777: 2016/04/18(月) 00:02:36 ID:bMJxSBC6
真「か、片方だけ止められるのか…」

雪歩「大丈夫、今度は…」

ギャルルルルルルルルルル

雪歩「え?」

バイクの形に変形した『ザ・バイシクル』が、雪歩に襲いかかってくる。

マコト「来い!」グイッ

雪歩「きゃ…!」ブワッ

真「雪歩!」

『穴』の中に逃げる間もなく、雪歩はマコトの腕に攫われる。

ギャルルルルルルルル

真「くそっ、待て!」ザッザッ

浜辺から森の方に走っていくマコトを追いかけるが、砂浜に足を取られてどんどん離されていく。

ダン!!

雪歩「うっ!」

森の入り口に辿り着くと、マコトは木の幹に雪歩の体を叩きつけた。

778: 2016/04/18(月) 00:04:30 ID:bMJxSBC6
マコト「よくわかったよ。まずは雪歩をどうにかするのが先だとね」ガシッ

『穴』を作れないように、雪歩の腕を押さえつける。

キィィィィィィ…

雪歩「!」

マコト「キミを傷つけるのはボクの心も痛むが…『再起不能』してもらう」

人型に戻った『ザ・バイシクル』の『回転』する腕が、後ろの木を削りながら、雪歩の体を引き裂こうとする。

FS「貴様ッ…!」

マコト「じっとしていろ『ファースト・ステップ』、おまえをズタズタにしてもいいんだぞ? そうなれば雪歩も同じようになるけどね」

雪歩「………」

マコト「恐怖で声も出ないかい? 悪く思わないでくれよ、コイツは手加減できなくてね…」

雪歩「恐怖? ううん、怖くないよ。だって、私は一人じゃあないから」

マコト「菊地真のことか? 彼女が来るよりも、『ザ・バイシクル』がキミの腕を引き裂く方が早…」

パァン!!

マコト「ぶ…!?」

マコトの顔で、何かが爆発した。

779: 2016/04/18(月) 00:06:05 ID:bMJxSBC6
パラパラ…

マコト「ぺっ、ぺっ…これは…砂!?」ゴシゴシ

目を閉じて、顔に張り付いた砂を拭う。

マコト「『チアリングレター』で砂を『固め』て、投げつけてきたのか…! くそっ!」ブルッ

砂を払い落とすように首を振ると、ゆっくり目を開いた。

真「………」

ドドドドドドド

その視線の先に、真が立っていた。

マコト「はっ…」

ズボッ

『ザ・バイシクル』が、木を削っていた腕を引き抜く。

ドドドドド

マコト「やる気か? ボクに敵わないのは身を以て知っただろ」

真「あいにく、物覚えがいい方じゃあなくてね」ギギッ

真は、感覚を確かめるようにゆっくりと左手を開く。

780: 2016/04/18(月) 00:06:54 ID:bMJxSBC6
雪歩「真ちゃ…」

マコト「おっと」グイ

雪歩「うっ!」ドガッ

マコトが雪歩を木に押しつける。

マコト「ごめんね。彼女がどうしても先に相手をして欲しいって言うから…さぁ」ズ…

『ザ・バイシクル』が、ゆらりと真の前に立ちはだかった。

ウィィィィィィィン…

右腕の円盤が『回転』をはじめ…

マコト「オラァ!」

ギロチンのように、振り下ろされた。

真「………」ス…

ガシッ!

真はその場から動くことなく、左手だけで円盤を受け止めた。

キュルルルルルルルルル

『チアリングレター』が、『回転』によってどんどん削られていく。

781: 2016/04/18(月) 00:08:57 ID:bMJxSBC6
マコト「どうだ! 『回転』の力は無敵だッ! 指がなくなるぞッ!」

ピシ!

マコト「え…」

『回転』中の円盤に、ヒビが入った。

ピシピシピシ

マコト「な、なに…?」

『チアリングレター』の指がそこを通る度に、亀裂は大きくなり…

グシャッ

穴が空いた。

真「うおおおおおおおおおおおお」

バキバキバキバキバキバキ

真「オラァッ!!」

ブチィッ!!

その穴の中に指を突っ込むと、円盤は真っ二つに引き裂かれた。

782: 2016/04/18(月) 00:10:24 ID:bMJxSBC6
マコト「うわっ、ああああ…!?」ポロポロ

マコトの右手の指もそれに連動してひび割れて、落ちていく。

雪歩「っ!」グイッ

マコト「あっ!」バッ

捕まっていた雪歩が、掴んでいる腕を振り払って逃げ出す。

真「キミの言う通り、指がなくなったようだね」

マコト「なんで…どうしてだ…『回転』の力は、無敵のハズなのに…」

真「『回転』の力は無敵でも、キミのスタンドが無敵なワケじゃあないだろ?」

マコト「…!」

真「その腕が驚異的な力を発揮できたのは、完全な円盤だったからだ。一点でも綻びがあれば…」

真「そこから返って来るッ! その、無敵の『回転』の力が!」

マコト「さっき、『穴』から出てきた『チアリングレター』にこの腕を掴まれた時…」

マコト「あの時にこの腕に僅かにダメージが入っていたのか…」

783: 2016/04/18(月) 00:13:37 ID:bMJxSBC6
真「これで、片方の円盤はなくなった」

雪歩「真ちゃん…ありがとう」

FS「ヨクヤッタ菊地真、礼ヲ言ウ」

真「雪歩も自由になった。勝負は決まったようなものだと思うけど」

マコト「よくも…」

真「?」

マコト「よくも『ザ・バイシクル』を…ボクの指を…!」

真「………」

ギッ ガシャ ギギギッ ガシャン

マコト「許さない…」

『ザ・バイシクル』が、一輪だけの『自転車』へと形を変える。

マコト「菊地真、おまえだけは絶対に…!」バッ

ギュルルルル…

その上に乗り込むと、前輪となった円盤が『回転』を始めた。

784: 2016/04/18(月) 00:15:35 ID:bMJxSBC6
FS「アレデ ブツカッテクル気カ…? 破レカブレダナ」

雪歩「真ちゃん、走り出す前に叩こう」

真「いや」

雪歩「え?」

ギュルルルルルルルル

真「真ん中なら『回転』は少ないとか、一緒に『回転』すれば無回転だとか…」

真「そんなのは全部無駄だ、そんなことを考えて戦ってちゃダメだったんだ」

雪歩「ダメ…?」

ギュルルルルルルルルルルルルルルル

真「スタンドは精神力のエネルギー、心の底から負けを認めさせなければ…」

グッ

真が拳を握り締める。

真「真っ向から打ち破らなきゃ、こいつに勝ったことにはならないんだ!」

785: 2016/04/18(月) 00:16:31 ID:bMJxSBC6
雪歩「真ちゃん…」

真「心配そうな顔しなくても大丈夫だよ雪歩。ボクは負けない」

ギギギギギギ

改めて、『チアリングレター』の右手を固く固く握り締めた。

真「そうだ…」

真「ぶつかり合いなら、ボクの『ストレイング・マインド・チアリングレター』は最強のスタンドだ! 誰にも負けるワケがないッ!!」

マコト「轢き頃してやる…!」

真「来いよ、『偽物』」クイッ

左手で、マコトに向けた人差し指を自分の方に引いた。

ギュン!!

マコトを乗せた『ザ・バイシクル』が、弾丸のような速度で突っ込んでくる。

真「オラァッ」グォォ

ドグォォォォオン

『チアリングレター』の右腕と、『ザ・バイシクル』の前輪がぶつかり合った。

786: 2016/04/18(月) 00:18:02 ID:bMJxSBC6
ギギギギギギギギ

『チアリングレター』と『ザ・バイシクル』どちらのものか、悲鳴が上がっている。

ギャルルルルルルルルルル

『回転』する円盤が、真の腕を削る。

真「ぐ…」

マコト「バカが…! 格好つけてるつもりか!? おまえも認めていただろう、『回転』の力は無敵だと!」

マコト「片方の車輪は壊されたが、もう片方は万全だ! 『ザ・バイシクル』に勝てると思うな…!」

真「ぐぅっ…」ズリ…

真は押されていた。少しずつ、砂浜へ向かって体が押し出されていく。

ガッ

真「ん!?」

真の背中が、壁にぶつかって止まる。

FS「シッカリシロ、菊地真…!」ググッ

雪歩「一人で戦おうとしないでよ、真ちゃん…!」ググググ

いや、壁ではなかった。雪歩と『ファースト・ステップ』が、彼女の背中を支えていた。

787: 2016/04/18(月) 00:19:31 ID:bMJxSBC6
真「雪歩…」

雪歩「私、ダメダメだから…こんなことしか、できないけど…」

雪歩「一緒に…力を、合わせようよ…!」

マコト「はっ、それがどうした」

ギャルルルルルルル

雪歩「んんん…!」ズズッ

健闘虚しく、三人の体はどんどん押されていく。

FS「ク…ドウイウ ぱわーシテヤガル、コノ野郎…」

マコト「力を合わせるだって!? そんなカスみたいな力を合わせたところでどうにもならないだろ!」

真(合わせる…)ス…

『チアリングレター』の左手で…

ガシッ

右腕を掴んだ。

788: 2016/04/18(月) 00:20:36 ID:bMJxSBC6
真「うおお…」ギ

マコト「この音、『チアリングレター』が限界を迎え…」

ギギギギ

真「おおおおおおおおお」

マコト「うっ…!? ち、違う…」

真のスタンドが変化しているのが、『ザ・バイシクル』を通してマコトに伝わる。

ギギギギギギギ

左腕の鎧が、右腕へと吸い込まれていく。

真「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

ギギギギギギギギギギギギギ

真「おっ!」キッ

『チアリングレター』が、真の右腕の拳だけに全て集まった。

ピシ!

マコト「な…」

『ザ・バイシクル』の前輪に、『回転』の力に、ヒビが入った。

789: 2016/04/18(月) 00:22:07 ID:bMJxSBC6
マコト「バカな…」ピキピキ

マコト「ボクの…ボクの『ザ・バイシクル』が…」ピキピキピキピキ

FS「行ケ…!」

雪歩「行って…!」

マコト「うお…」

真「オラァッ!!」グッ

ギュルン

正拳突きのごとく、拳に捻りを加える。

バックアァァァァア

マコト「うわああああああああああ」

一点に集中された『チアリングレター』が、『ザ・バイシクル』を貫いた。

マコト「ああああああああああああああああああああ」ギュォォォ

チュドォォォン!!

そのパワーでマコトの体はブッ飛ばされ、後ろの木にまで衝突する。

790: 2016/04/18(月) 00:23:29 ID:bMJxSBC6
バタン!

マコトはぶつかった反動で、仰向けになって地面に落ちた。

雪歩「真ちゃんが…勝った」

真「はぁ、はぁ、はぁ」ギギギ

真は肩で息をしていた。『チアリングレター』が、元の両腕に戻る。

マコト「う…がほっ!」

マコトは四つん這いになって咳き込んだ。口からは何も出てこない。

マコト「なんで…なんでだ…ボクの『ザ・バイシクル』が、真っ向から…こんな…」

ミシ…

雪歩「…!」

真「!」

グラ…

削られていた木が、衝突の衝撃で折れてしまったのか、傾いている。

マコト「うぅ、なんで…」サラ…

マコトの体は既に砂に変わりつつある。倒れてくる木には気づいていない。

791: 2016/04/18(月) 00:25:02 ID:bMJxSBC6
雪歩「真ちゃん…!」

真「ああ!」

マコト「あ…?」

雪歩「『ファースト・ステップ』!」

FS「了解」ズッ

ツーッ

『ファースト・ステップ』が入った『穴』が、木の根元へと滑っていく。

真「オラァ!」

ガッシィィン

真は雪歩が作った『穴』に腕を突っ込む。すると、もう片方の『穴』から『チアリングレター』の腕が伸び、倒れてきた木を受け止めた。

マコト「…!?」

真「っとぉ!」

ズズゥン…

投げ飛ばすと、木はマコトから逸れて倒れた。

792: 2016/04/18(月) 00:26:45 ID:bMJxSBC6
雪歩「ふぅ…」

マコト「なんだ…何をしている…?」

真「何って…」

マコト「何のつもりだよ…どうせ、ボクはこのまま消えるだけなのに…」

真「…そうだよね。『複製』は『負け』を認めたら消えてしまう」

マコト「そうとわかって、なんで助けたんだ…!?」

真「知らないよ、そんなこと…仕方ないだろ、そうせずにはいられなかったんだ。ボクも、雪歩も」

マコト「………」

サラサラ…

マコト「やっぱり…」

マコト「かっこいいなぁ…本物は…」サラ…

真「あ…」

マコトの体は砂へと変わり、潮風に運ばれ砂浜へ溶けていった。

793: 2016/04/18(月) 00:27:58 ID:bMJxSBC6
真「…ねぇ、雪歩」

雪歩「なに?」

真「なんなんだろう、『複製』って。何のために生まれて、何のために消えていくんだ」

雪歩「…わからないよ。でも…」

真「でも?」

雪歩「『複製』さんを使って、私たちを閉じ込めて、何かをしようとしてる人がいる。だから…」

雪歩「765プロのみんなが揃って、その人を止めることが一番いいと思う。私たちにとっても、『複製』さん達にとっても」

FS「ソウダゾ菊地真。感傷ニ浸ル暇ナド ナイ」

真「お前はなんなんだよ『ファースト・ステップ』…でも、そうか。そうだよね」

真「だったら、また牢獄を目指さないとね。どこにあるんだろう…?」

雪歩「たぶん、あっちの方じゃないかな」

真「え、なんで?」

雪歩「真ちゃんの『複製』さんが来たのが、あっちからでしょう? 牢獄じゃなくても、何かあると思うよ」

真「…抜け目ないなぁ」

To Be Continued...

794: 2016/04/18(月) 00:32:12 ID:bMJxSBC6
スタンド名:「ザ・バイシクル」
本体:キクチ マコト
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:B 射程距離:E(2m) 能力射程:E(2m)
持続力:C 精密動作性:E 成長性:C
能力:真の「複製」のスタンドだ!両腕に車輪がついており、超高速で「回転」させることができる!
スタンドモードでは、この「回転」する車輪を武器として敵と戦う!
「回転」の力は無限大!その力を両手に宿す「ザ・バイシクル」は強力無比だ!
さらにこのスタンドは、なんとライドモードに変形が可能だ!
両腕の車輪は二輪となり、その名の通り「自転車」のように乗って移動することができるぞ!
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

795: 2016/04/18(月) 02:07:47 ID:6OoLm1/Y

796: 2016/04/18(月) 02:21:47 ID:dn/LgKqw

パワーだけなら最強のスタンドだな



To Be Continued...




引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2