848: 2016/07/19(火) 03:30:59 ID:/2m9rMTA





前話はこちら





美希「春香ー」ヒョイ

崖から身を乗り出して、その下を覗き込む。

美希「はーるーかー」

そこらの茂みの中に呼びかけてみる。

P「美希…」

美希「?」

P「そんなところに、春香はいないと思うぞ…」

ザザ-ン…

洞窟を出た美希達は、海岸沿いの崖に立っていた。

響「春香を探すって言ったものの…」

響「あーっ! どこにいるかなんてわかんないぞ!」

美希「響、匂いでわからない?」

響「自分、犬じゃないから…そんな遠くまでわからないさー」

美希「いぬ美でも連れて来ればよかったのに」



※このSSは「THE IDOLM@STER」のキャラクターの名前と「ジョジョの奇妙な冒険」の設定を使った何かです。過度な期待はしないでください。


春香「弓と矢」シリーズ

849: 2016/07/19(火) 03:33:49 ID:/2m9rMTA
順二朗「携帯は、繋がらないのかね?」

P「かけてはみたんですが…誰にも繋がらないんです。この『霧』のせいか…?」

美希「その『弓と矢』から変な電波でも出てボーガイされてるんじゃない?」

響「ないだろ。仮に繋がったとしても、バラバラになった時にみんなの携帯は取り上げられてると思うぞ」

グゥゥゥゥゥ…

ふと、誰かの腹の虫が鳴った。

美希「…響?」

響「え!? 違う、自分じゃないぞ!」

P「まぁ、無理もない。島に来てから、食事する暇もなかったもんな」

響「だから、自分じゃないってー!」

順二朗「…すまない、今のは私だ」

P「え、社長?」

美希「キンチョー感ないの」

響「捕まってた時、食事は出なかったの?」

順二朗「閉じ込められていてはどうにも食欲がなくてな、あまり手をつけなかったんだ。だが、外に出たら急に空腹を感じてきたよ」

850: 2016/07/19(火) 03:35:28 ID:/2m9rMTA
美希「ねぇ、この戦いが終わったらさ。みんなでなんか美味しいものでも食べに行かない?」

P「お、そうだな。みんな頑張ってるし…終わったらパーっとやるか」

順二朗「いいなぁ。長らく海外にいたから、食べたい店がたくさんあってねぇ。うーむ、楽しみだ」

響「よし! そのためにも、会長を止める! 『弓と矢』を、春香に渡さなきゃ!」

順二朗「これを、天海君にか…順一ちゃんを直接、というわけにはいかないのかね?」

美希「そっちでもいいんだけどね。でも、『ジ・アイドルマスター』を使うのが一番手っ取り早いって思うな」

順二朗「そうか…」

P「でも、春香はどこにいるんだろう」

響「やっぱり、この『霧』がジャマだね。これさえなければ、律子のスタンドで全部わかるんだけど」

美希「でっかい扇風機でゴーって飛ばすとかできたらいいのに」

響「そうだな、できたらいいな」

ゴォォォォォ…

話していると、辺りに風を切るような音が響く。

美希「あれ、この音…」

響「え!? 嘘でしょ、まさか本当に…?」

851: 2016/07/19(火) 03:36:28 ID:/2m9rMTA
順二朗「どうかしたのかね?」

響「え? ほら、ゴーって聞こえない?」

P「俺には何も聞こえないが…」

美希「! プロデューサー達に聞こえないってコトは…」

響「スタンド攻撃だ!」

ヒュルルルルル…

美希「!」バッ

響「!」バッ

二人は一斉に空を見上げた。

P「な、なんだ…?」

美希「『霧』の中で影になって、よく見えないケド…」

響「上だ! 落ちてくるぞォォーッ!!」

カッ

落ちてきた球体のなにかが、発光した。

852: 2016/07/19(火) 03:37:50 ID:/2m9rMTA
響「プロ…」バッ

響がスタンド使いでないプロデューサーと順二朗を見るが…

P「………」スッ

・ ・ ・ ・

プロデューサーは、美希の方を指差している。

響「美希っ!」ダムッ

美希「んっ」グイッ

美希を引っ張りながら、響は発光したものから跳んで離れる。

チュドォォォォォン!!

響「ッ!?」

バァァァァァン!!

発光体が弾け、空から破片の雨が降り注ぐ。

響「うおおおおおおおおおおおおおおお」バリバリ

離れていた響達にも襲いかかってきたが、かする程度で済んだ。

853: 2016/07/19(火) 03:40:38 ID:/2m9rMTA
シュゥゥゥゥゥゥ…

今の衝撃で辺りの土が舞い上げられ、砂埃が『霧』と混じる。

響「プロデューサー! 社長!」

P「俺は大丈夫だ! …社長!」

順二朗「ぐっ…足が…」

順二朗が地面に座り込んでいる。足からは、血が流れていた。

響「野郎ッ!」

響の視線は、先ほど爆発した球体に向かう。

ガシャン

響「!」

球体から、水晶体の頭部が飛び出す。

ガキン ガシャン

ジャキン

続けて二本の足、そして腹部から一本の砲筒が伸びた。

854: 2016/07/19(火) 03:42:23 ID:/2m9rMTA
コォォォォ…

響「あの頭、レンズになってるのか? 光を集めてる…」

パキパキパキ

光が集まるにつれ、爆発によって剥がれた装甲も再生していく。

美希「なるほど、貴音の『フラワーガール』と同じで外からエネルギーを補うタイプだね。光を『チャージ』するスタンド…それで、本体もいないのにあんなパワーが出たんだ」

響「あの爆弾スタンドは『遠隔操作』か…? 本体はどこだ?」

美希「探さなくても、あのスタンドをブチのめせば本体にダメージは行くの」タッ

響「美希!?」

美希はためらいもせず飛び込んでいく。

響「危ないぞ! また爆発するかも…」

コォォォォォ…

美希「いや…あんな攻撃をするなら、それだけエネルギーが必要なの。爆発したばっかりなら…」ドォン

『リレイションズ』を出し…

美希「まだ『チャージ』は少ない、大した攻撃はできないはず! なのっ!」ヒュン

まっすぐ殴りかかった。

855: 2016/07/19(火) 03:44:20 ID:/2m9rMTA
ドガァ!!

拳がぶつかる感覚が美希の手に伝わってくる。

響「ん!?」

美希「これは…」

ゴゴゴゴゴゴ

爆弾スタンドの周囲に、白い壁が浮かんでいる。

響「『雪』…!? そいつの能力か!?」

美希「いや、違う…」

チャキッ

爆弾スタンドの銃口が美希に向けられる。

ブワッ

そして、盾になっていた『雪』が広がり、美希の逃げ場を遮るように取り囲む。

美希「別々の能力…敵は二人いるッ!」

ドン ドン ドン

美希を狙う筒口から、何発ものエネルギーの弾丸が放たれた。

856: 2016/07/19(火) 03:46:56 ID:/2m9rMTA
フワフワ

「さぁ、もう逃げらんないよ~。これでミキミキは終わりだね」

「んっふっふ~、レオレオを倒したっていうからどんなもんかと思ったけど…ラクショーだね」

上空に浮かぶ『雪』の船。その上から、二つの影が美希達の様子を眺めている。

美希「………」

キュイン

『リレイションズ』の目が光る。

バババッ

最小限の動きで、弾丸を回避した。

「!? なに、今の動きは…」

美希「『リレイションズ』の目ならこれくらいの距離でもハッキリ見える」

美希「そんでもって、今『雪』につけた『ロック』は一緒になって広がってる」

美希「それを使えば狭くっても割と自由に動ける。避けるのもカンタンなの」

857: 2016/07/19(火) 03:48:12 ID:/2m9rMTA
「ちょっと、スタンド引っ込めてよ! あれのせいで当たんないじゃん!」

「はぁー!? なかったら余計当てられないっしょ! そっちこそ引っ込めなよ、エネルギーのムダ使いだよ!」

響「亜美と真美の『複製』か」

マミ「!?」

響が、空に浮かぶ『雪』の船の縁にぶら下がっている。

アミ「なんでアミ達が空にいるって…」

響「あの爆弾スタンドは上から落ちてきたんだ、そこしかないだろ!」

マミ「『マイルド・スノー』、ひびきんを落とせ!」ブワ

マミは響の掴んでいる部分を崩して落とそうとするが…

パッ

マミ「へ?」

そうするまでもなく、響は自分から手を離すと…

響「ドラァ!!」ガァン!!

アミ「うわ!」グラッ

空中で『雪』の船に蹴りを叩き込み、大きく揺らした。

858: 2016/07/19(火) 03:50:00 ID:/2m9rMTA
ヒュルルル…

アミ「ぎゃ!」ドサァ!!

マミ「ぐわ!」グシャ

アミとマミは『雪』の上から落とされ、二人まとめて地上に落ちる。

響「っと」スタッ

遅れて、響も地面に着地した。

マミ「たた…」

美希「上からコソコソ見てたんだね」

アミ「!」

響「でも、落とした。さて、おしおきだな」

マミ「ちょ、アミ! ヤバいっぽいよ、『デイブレイク・スターライン』の第二射の準備を…」

コォォォォ…

傍らで、爆弾スタンドがレンズから光を『チャージ』している。

アミ「やってるよ! でも、『霧』があるから光が集まんないんだよ! そんな早く撃てないって!」

マミ「あー!! もう、だからムダ使いすんなって言ったじゃん!」

859: 2016/07/19(火) 03:51:26 ID:/2m9rMTA
ダダダダダダダ

光を『チャージ』するスタンドに、響が向かう。

マミ「お、アミの『デイブレイク・スターライン』を狙うつもり…?」

ヒュルルル

爆弾スタンドの周囲に、『雪』が渦巻くように集まっていく。

マミ「フン、でも問題ないね。マミの最強の盾、『マイルド・スノー』で守…」

響「ふっ!」ダッ!!

マミ「へ?」

響はスタンドの手前で踏み切り、方向を変えると…

アミ「うっ!?」ガシッ

スタンドではなく、本体であるアミの体を掴み…

響「ドラァ!!」グワッ

アミ「ぬわあああああああっ!!?」

バヒューン

海の方角へと、思いっきり投げ飛ばした。

860: 2016/07/19(火) 03:56:16 ID:/2m9rMTA
ザザーン…

マミ「………」

アミは崖の下に落ちて見えなくなった。

フッ

マミ「………」

そして、『デイブレイク・スターライン』の姿も消える。

美希「なのっ!」ヒュォ

マミ「はっ!?」

ガッ!!

呆けているマミに美希が攻撃するが、『雪』の盾に防がれる。

<LOCK!

しかし、『ロック』をつけた。

美希「なのなのなの」ヒュヒュン

マミ「ぬぬぬ…」バババ

これ以上『ロック』をつけられるのを避けるために追撃から離れるが、崖まで追い詰められていく。

861: 2016/07/19(火) 04:02:01 ID:/2m9rMTA
マミ「くぅっ、『マイルド…」

キュイイン

美希「なのっ!」グィン

マミ「ぐわっ!」バキィ!!

『リレイションズ』の眼が『雪』のガードの隙間を捉え、『ロック』により加速した拳で射抜いた。

マミ「つ…強い…」

ガッ

崖から落ちそうになるが、ギリギリのところで『雪』で止めて支える。

響「『遠隔操作』のスタンド二つ、この距離で負けるわけないだろ。自分達はそんなのよりよっぽど強い『スタンド使い』と戦ってきたんだ」

美希「たった二人で来るなんて、ナメられたもんなの」

「違うよ。ナメていないし二人でもない」

・ ・ ・ ・

美希「『リレイションズ』!」バッ

美希は振り返りながら、背後から声をかけてきた者に殴りかかる。

862: 2016/07/19(火) 04:03:42 ID:/2m9rMTA
ゴゴゴゴゴゴゴゴ

響「え…?」

そこにいたのは、破れたリボンを頭につけた少女だった。

順二朗「…天海君?」

P「違う、こいつは…!」

ハルカ「『アイ・リスタート』」

スゥ…

『リレイションズ』の腕は、スタンドの体をすり抜け…

ズガァ

美希「うぐっ」

美希の方だけが、一方的に攻撃を叩きつけられる。

ハルカ「無駄無駄無駄無駄」ババババ

美希「っ…!」バッ

ゴロゴロ

崖から落とされないよう、横に跳び込むようにラッシュを躱し、そのまま地面の上を転がった。

863: 2016/07/19(火) 04:07:54 ID:/2m9rMTA
美希「なんなの…」ムクッ

ハルカから充分な距離を取ったのを確認し、体を起こした。

ブゥゥゥーン…

アミ「うぅ…」ゴォォォ

『デイブレイク・スターライン』が上にアミを乗せ、腹部の銃口からエネルギーを噴射して崖の下から飛んでくる。

マミ「あー、そっちもまだ生きてたんだ」

ハルカ「お疲れ様、アミ。よかった、あのまま落ちてたらもう使えなくなってたところだったよ」

P「なんで…」

ハルカ「ん?」

P「春香の『複製』はあの時、本物の春香に倒されたはずだ! なんでお前がここにいるッ!」

ハルカ「『地獄から蘇ってきた』」

P「は…?」

ハルカ「なんてね。ま、ちょっと考えればわかることでしょう?」

???「そう。実に、単純なことだ」スッ

ハルカの背後に何者かが立っている。

864: 2016/07/19(火) 04:10:43 ID:/2m9rMTA
美希「さっきから一緒にいたみたいだね」

響「まだ、誰かいるのか…!?」

P「いや、待て…」

ゴゴゴゴゴ

P「この人は…」

ゴゴゴ

順一朗「作り直したのだよ。私が、この『アイ・ディー・オー・エル』の能力でね」ス…

そこにいたのは、ケミカルライトのような棒状のスタンドを持つ、初老の男性だった。

ゴゴゴゴゴゴゴ

響「高木…順一朗…!」

P「会…長…」

順二朗「順一ちゃん…」

美希「向こうから来やがったの」

ゴゴゴゴ

順一朗「さぁ、返してもらおうか。その『弓と矢』を」

865: 2016/07/19(火) 04:14:10 ID:/2m9rMTA
スタンド名:「デイブレイク・スターライン」
本体:フタミ アミ
タイプ:遠隔操作型・標準
破壊力:A スピード:A 射程距離:B(20m) 能力射程:B~A(20~100m程度)
持続力:E 精密動作性:E 成長性:C
能力:亜美の『複製』の持つ爆弾スタンド。頭部のレンズから光を『チャージ』し、エネルギーを蓄えて攻撃に転換する。
腹部の銃口からエネルギーの弾を発射して攻撃したり、ガスのように噴射して移動に使うこともできる。
『チャージ』で溜めたエネルギーを全て使って爆発することもできる。爆発自体にそれほどの殺傷力はないが、装甲の破片が飛び散る勢いは恐ろしい威力となる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

書き忘れましたが本日分はこれでおわりです。続きは次の土曜に投下します。
本日7月19日はジョジョリオン13巻の発売日なので、それを読んでお待ち下さい。

868: 2016/07/24(日) 00:06:33 ID:p1FdRw2Q
P(高木順一朗、会長…)

ゴゴゴゴゴ

P(『複製』を生み出し、アイドル達と成り替わらせようとしている全ての元凶…みんなが戦っているのも、会長を止めるためだ)

P「会長が、なんでこんなところで出てくるんだッ!?」

順一朗「私が来たことに驚いているようだが、それはお互い様というものだ。私の方も、とても驚いている」

P「…何故ですか?」

順一朗「君達がその『弓と矢』を持っているからだ」

P「『弓と矢』…」

美希「それって、ミキ達がレオンを倒したからってこと?」

順一朗「ああ、その通り…彼女は本当に強かった。私の作った『複製』の中で、彼女ほど戦いに対して貪欲な者はいなかった。だから彼女にあそこを任せた」

順一朗「しかし、『弓と矢』は今君達の手にある。まさか、君達がそれほどまでに強いとは予想していなかった。いや、本当に驚いている」

響「………」

順一朗「だから私が来た。『最強の三人』である彼女でも倒せないとなると、他の二人を行かせるか、あるいは…」

ゴゴゴゴ

順一朗「私自身が出るしかあるまい」

869: 2016/07/24(日) 00:09:55 ID:p1FdRw2Q
順二朗「順一ちゃん…」

順一朗「なんだ、順二ちゃん? お前がわかってくれないからだろう、あそこに閉じ込めたのは」

順二朗「私のことはどうだっていい、やはり考え直してはくれないのだな」

順一朗「もう、後戻りなどできんよ。あとは765だけだ…私の理想が、もうじき叶うのだ」

順二朗「何が理想だ! お前が目指したものというのは、こんなものなのか!? アイドル達を傷つけてまでやるべきことなのか!?」

順一朗「ならば、彼女達の終わりを見届け続けろと言うのか!?」

順二朗「むぅ…」

順一朗「アイドル達が輝ける時間はあまりにも短い。日高舞のように歴史に名を残すようなアイドルは一握り…」

順一朗「いや、それすらもだ! 歴史に名を残そうと、それはもはや記憶でしかない! 記憶は時が経てばただの記録となり、人々は彼女達の輝きなど忘れてしまう! 私はそれが耐えられないのだ!」

順一朗「君達は考えたことはないのか? 自分の手がけたアイドルが…自分が応援するアイドルが、永遠に夢を与え続けてはくれないか…と」

P「それは…」

順二朗「君の言うことはわからないでもない…だが、これは…」

美希「プロデューサー、社長。こんな言葉聞く必要ないよ」

順一朗「美希君…」

美希「なんか色々言ってるけど、それって全部、会長の都合でしょ? ミキ達にはカンケーないの」

870: 2016/07/24(日) 00:17:24 ID:p1FdRw2Q
順一朗「関係ないということはないだろう。君達はまだ若いから、私の言うことが実感できないのだ」

美希「なんだかんだ言っても、つまりは『複製』の代わりにこの島にいろってコトでしょ?」

順一朗「いつまでも、閉じ込めておくつもりはない。『複製』はいずれ『完全なアイドル』という別個な存在として、世の中に認知させるつもりだ。そうなれば君達も元の人物として、今まで通りの生活もできる」

美希「でも、アイドルをやるのは『完全なアイドル』なんでしょ? そんなの、ミキにしてみれば引退してるのと何にも変わんないって思うな」

順一朗「アイドル『星井美希』は永遠に世界に残る。ビデオ映像と同じだ。名声も利益も元となった君達のものになる」

美希「ふーん、それはラクそうなの」

順一朗「そ、そこか…美希君らしいと言えばらしいが」

美希「でも…ミキは、ミキに向けられるファンのみんなの笑顔も、ステージからのキラキラした景色も、何も見られない」

順一朗「む…」

美希「ミキはもっとアイドルの世界を見ていたい。それを邪魔するなら、許さないの」

ゴゴゴゴゴ

P「美希」

順一朗「………」

871: 2016/07/24(日) 00:21:26 ID:p1FdRw2Q
響「自分は美希とは思ってることは違うけど…やっぱり、『複製』に自分の代わりなんてさせたくないぞ」

順一朗「我那覇君…」

響「自分、トップアイドルを目指してる。他の事務所のアイドルにも、765プロの仲間にも…誰にも負けないつもりだ」

響「そして、それは自分だからできるって信じてるんだ。『複製』なんかに任せられない!」

P「響…」

順一朗「考えを改めては…くれなさそうだな」

響「改めるのはそっちだッ!」タッ

叫ぶと同時、響は順一朗に飛びかかった。

順一朗「………」

響「ドラァ!」ヒュ

ガガッ

順一朗に蹴りを放つが、『雪』の盾に阻まれる。

響「!」ズザザザ

蹴った勢いで飛び退き、間合いを取った。

872: 2016/07/24(日) 00:27:13 ID:p1FdRw2Q
マミ「んっふっふ~、そーカンタンにはやらせないよ~ん」ヒュルルル

『雪』が、順一朗の周囲を守るように取り囲んでいる。

アミ「高木さんをやりたかったら、まずはアミ達を倒してからにするのだー!」

ハルカ「入れ替わるのが嫌って言ってるけど…」

ハルカ「私たちはやるしかないんだよね。だって、そのために生まれてきたんだから」

ゴゴゴゴゴゴ

美希「響、一気に片付けるの」

響「ああ!」ズッ

響の体から『トライアル・ダンス』が抜け出し、美希の方に飛んでいく。

アミ「そういうのは、させないよ」

響「うぶ…!?」ドゴォ

しかし、その隙に後ろ向きの『デイブレイク・スターライン』が飛んできて響の腹に叩き込まれた。

ゴォォォォォ

響「こ、こいつ…!」

腹からロケットのようにエネルギーを噴射し、どんどん響を押し出していく。

873: 2016/07/24(日) 00:33:22 ID:p1FdRw2Q
美希「響、『トライアル・ダンス』を戻すの!」

響「ん!」ギュン

自分の体にスタンドを戻すと…

響「ドラァ!」ゲシィア

アミ「んがっ」

強化した脚力で『デイブレイク・スターライン』を蹴り飛ばす。

響「く…美希と離れちゃったぞ」スタッ

そのまま、着地すると…

ハルカ「やっほ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

目の前にハルカが立っていた。

響「おまえ、自分の相手をするつもりなのか?」

ハルカ「そうなるかな」

響「忘れたの? 事務所で、自分のスピードについていけなくてやられたのを」

ハルカ「だからだよ。つけられた傷はほんのちょっぴりだけど…そのままにしてちゃあ気が済まないからね」

874: 2016/07/24(日) 00:39:01 ID:p1FdRw2Q
美希「で、ミキの相手は二人がかりってワケ」

マミ「悪く思わないでよ。ミキミキだって、二人がかりでレオレオ倒したんだからさ」

アミ「ひびきんのところには行かせないよ~ん」

美希「………」チラッ

足を怪我した社長と、その傍のプロデューサーを横目で見る。

マミ「そっちが気になる? 安心していいよ。マミ達、ミキミキとひびきん以外は狙わないから」

美希「そんな言葉、信じられないの」

マミ「だってさ、考えてもみてよ? マミがそこの兄ちゃん達を人質にして勝ったとするじゃない? そしたらさ、ミキミキは『あの場に足を引っ張るプロデューサーがいなければ』とか思っちゃうでしょ?」

P「く…」

マミ「そういうのって、マミ達が求めてる勝利とはちょっと違うんだよねぇ。希望の芽を残しちゃう」

アミ「大体、そういうヒキョーな手を使うような精神力は弱いからね。人を身代わりにしたりね? ねぇ、マミ?」

マミ「なんか言った?」

美希「なるほどね。合理的なの」

マミ「でしょ?」

美希「そうしないでミキ達に勝てるなら、だけど」

875: 2016/07/24(日) 00:45:40 ID:p1FdRw2Q
響「うおおっ!」ダッ!

駆け出した。

ギュン!

ハルカ「………」チラッ

ギュギュン

ハルカ「速いね、相変わらず」クルッ

物凄い勢いで、ハルカの横を通り過ぎていく。ハルカはその姿を全く追えていない。

響(こいつのスタンドは正面からじゃ倒せない…だから!)

ザザザザザザ

ハルカの周りを、渦を巻くように高速で動いていく。

響「どうだッ! 自分の動きに着いてこれるかッ!」

ハルカ「………」

ハルカはその場から身動ぎ一つせず、棒立ちになっている。

876: 2016/07/24(日) 00:49:01 ID:p1FdRw2Q
バッ

響「ドラァ!」ビュオ

前触れも見せず、響は突如進路を変えて、蹴りかかった。

ハルカ「『アイ・リスタート』」ズッ

ドゴォ

響「うぐ…!?」ドサッ

しかし、『アイ・リスタート』に正確に姿を捉えられ、叩き落される。

ハルカ「無駄無駄無駄」ズド ド ズド

響「うおおっおおお」ゴロゴロゴロ

追撃が来るが、転がって躱した。

響「これじゃダメか、だったら…」ギュン

今度は、正面からハルカへと突っ込んでいく。

ハルカ「どういうつもり? 『アイ・リスタート』がどういうスタンドか、忘れたわけじゃあないでしょ」

響「………」ダダダ

そう言われても、響はスピードを緩めない。

877: 2016/07/24(日) 00:59:12 ID:p1FdRw2Q
ハルカ「無駄ァ!」ヒュン

攻撃が届く距離に入ると、『アイ・リスタート』が拳を放つ。

響「ふっ」タッ

ブワァァアアアアァ

響はそれを、跳んで躱した。

響「ドラァ!」グオン

そしてそのまま蹴りを放つ。響の脚が、ハルカの後頭部に迫る。

ガシィ!!

響「何!?」

しかし、蹴りが入る前に『アイ・リスタート』に脚を掴まれてしまう。

ハルカ「無駄、無駄」

ズドン!!

響「うぐぇ」

そのまま、思い切り脚を引っ張られて地面に叩きつけられた。

878: 2016/07/24(日) 01:12:16 ID:p1FdRw2Q
ハルカ「フンッ」グイッ

脚を掴まれたまま、響は逆さまになって持ち上げられる。

響「な、なんで…」

ハルカ「?」

響「なんでだ…? あの時は、まるで着いてこれてなかったのに…」

ハルカ「なんで? わからないの? 本当に?」

響「なに…?」

ハルカ「響ちゃんのスタンドは速いよ。本当に。私の『アイ・リスタート』ではとても敵わないくらいね」

ハルカ「でも、それだけ。速いだけなんだよ。だから、ちょっとくらい動きが遅れても捕まえられる」

響「速い、だけ…?」

ハルカ「覚えてる? あの時、私達がどこにいたのか」

響「事務所の、廊下…」

ハルカ「そう、狭い廊下の中。あそこでの響ちゃんは速いだけじゃあなかった。壁を縦横無尽に駆け巡り、どこから襲ってくるのかわからない奇襲性があった。私じゃあどうしようもなかった」

響「………」

ハルカ「ここでの響ちゃんはどう? 蹴られるような壁はない。速すぎるスピードを制御する必要もある。動きも素直。室内とか森の中ならともかく、こんな拓けた場所で負けるわけないでしょう?」

879: 2016/07/24(日) 01:18:32 ID:p1FdRw2Q
美希「響…!」

アミ「ほらほら、余所見してるヒマあんのミキミキ!?」

ドシュゥゥゥゥウウ

アミが、『チャージ』したエネルギーを弾丸にして発射してくる。

美希「ち…」バッ

横に動いて避けようとするが…

ドンッ

美希「んっ」

『雪』の壁に進路を阻まれた。

シュォォォォォオ

エネルギー弾が迫る。

美希「おおおおっ!」ガリガリガリ

バシュッ!

ドォォォーン

『リレイションズ』の指先で『マイルド・スノー』を引っ掻いて飛ばし、エネルギー弾にぶつけて相頃した。

880: 2016/07/24(日) 01:30:36 ID:p1FdRw2Q
マミ「おおぅ、やるねぇ。でも…」

美希「う…」ポタッ

『マイルド・スノー』を引っ掻いた指先から、血が出ている。

マミ「マミの最強の盾を削ろうなんて、あんまムチャしない方がいいっぽいよ?」

アミ「ま、あのままアミの攻撃を受けてたよりはマシっぽいけど」

美希「………」

アミ「ねぇねぇ、なんで今までミキミキ達が『複製』達に勝ててたのか教えてあげよっか?」

美希「なに?」

アミ「それは、『複製』達がみんな一人ずつで戦ってたからだよ。そっちは常に二人以上、そりゃ勝てるって」

マミ「二人で行ったのにあっさりやられちゃったのは誰だったっけ」

アミ「うるっさいなぁ、あれはあっちも二人だったじゃん。過ぎたことをネチネチと…」

美希「………」

ズズズズ

美希(『ロック』の数はどんどん増えてる。このまま行けば、この二人は倒せるハズ)

美希(でも、その前に響が…)

881: 2016/07/24(日) 01:46:08 ID:p1FdRw2Q
順一朗「ふむ、私が来なくても三人だけで充分だったかね? だとしたら拍子抜けだが」

響「くそっ…『オーバーマスター』が使えれば…」

ハルカ「それをさせないようにやってきたんだよ、私たちは。できないことを言ってもしょうがないんじゃないかなぁ」

響「ぐ…」

ハルカ「まぁ、今となったらそれでもいいんだけどね。それって、そうしないと私には勝てないって響ちゃんが認めるってことでしょ?」

響「くっ…! うおおっ」ジタバタ

響が掴まれた脚を放そうと暴れるが、『アイ・リスタート』はビクともしない。

ハルカ「まぁ…行かせないけど」

響(こいつ、いくら動いても手を放さない…)

響(いや、動いてもムダなんだ…自分が何をしても、『アイ・リスタート』には届かない…)

ハルカ「さて…」

ボグォ

響「うぶ…!」

『アイ・リスタート』が響の腹を殴りつける。

882: 2016/07/24(日) 01:51:37 ID:p1FdRw2Q
響「げほ、げほっ」

ハルカ「本当は自分でやりたいんだけどね。近づいて蹴られたりしたら逃げるチャンスを与えちゃうからさ」

順二朗「く…私にはスタンドは見えないが…我那覇君が痛めつけられているのか…」

順二朗「順一朗、やめさせるのだ! 彼女達を傷つけるな!」

順一朗「ハルカ、彼女達に必要以上に手を出すな」

ハルカ「いえ高木さん、これは必要なことですよ。765プロのみんなは、一度徹底的に叩き潰さないと」グイッ

両手で脚を掴み…

ハルカ「二度と逆らう気が起きないように…ねッ!」ドシャァ

響「うぎゃあああああああ…!」

もう一度、地面に叩きつけた。

順二朗「順一朗、お前の理想はわかった…だが、こんなことが…こんな、アイドルを傷つけるようなことが、正しいわけがあるかッ!」

順一朗「お前にもアイドルにも、いくらでも恨まれよう。だが、それでも私は…」

・ ・ ・ ・

順一朗「『弓と矢』はどうしたのだ? 順二…お前が持っていたはずだが…」

順一朗「それに…彼は、一体どこに…ハッ!」

883: 2016/07/24(日) 01:54:36 ID:p1FdRw2Q
響「あ…あぁ…!」

ハルカ「ああ、いいよ響ちゃん。その悲鳴…自信ってものがどんどん湧いてくる…今の私なら、天海春香にだって…」

ザクッ…

ハルカ「…はい?」クルッ

ハルカは背中に妙な感触を味わい、首を後ろに向ける。

P「………」

ハルカ「あれ、プロデューサーさん。一体何しに…」チラ…

プロデューサーが手に何かを持っていることに気づき、目線を下に向ける。

ゴゴゴゴゴ

ハルカ「………」

『矢』だった。プロデューサーが持つ『矢』が、ハルカの背中に突き刺さっていた。

ハルカ「…何、やってるんですか?」

P「半年前、事務所にいた社長…いや、社長だと思っていた奴は会長の『複製』だった」

ハルカ「は…」

P「その『複製』は…氏んだ。動かなくなったんだ、『矢』が腕に刺さってな…」

884: 2016/07/24(日) 02:02:04 ID:p1FdRw2Q
ハルカ「うっ!?」ビクン

ハルカの体が大きく震える。

ハルカ「う、うおお…! ああ…!?」ガタガタガタ

そのまま、震えはどんどん大きくなり…

バタン!

ハルカ「………」シン…

糸が切れたように倒れると、そのまま動かなくなった。

P「やったか…あまり気分のいいもんじゃないな…」

「ええ、ほんと。最悪の気分ですよ」ヌッ

P「え?」クルッ

背後から声がして、振り返ろうとすると…

「無駄ァッ」グシャァッ

P「ぐお…!?」グラッ

足を思い切り蹴りつけられ、膝をついた。

885: 2016/07/24(日) 02:10:46 ID:p1FdRw2Q
P「お、おまえ…」プルプル

ハルカ「ふぅーっ」

ゴゴゴゴゴ

プロデューサーが顔を上げると、無傷のハルカがそこに立っていた。

順二朗「な、なに…!? 彼女は今倒れたのに…いや、今も倒れている彼女がそこにいるのに!」

順一朗「『アイ・ディー・オー・エル』」シュゥゥゥゥ

順二朗「!」

順一朗の持つ光る棒の先端が、ハルカのいる方に向けられている。

順一朗「私のスタンドには戦闘能力は全くない。彼女達のスタンドに比べれば、風に吹かれただけで飛んでしまうタンポポの綿毛のような存在だ」

順一朗「だがな…私自身が戦う必要などないのだよ。『複製』を作り出す能力! 私がいる限り、『複製』は何度でも蘇る!」

P「………」カラン

プロデューサーの手から『矢』が落ちる。

順一朗「なるほど、『矢』を使うか…確かに、『スタンド使い』でない者への攻撃ができない『アイ・リスタート』に対しては有効な手段だ。大したものだな」

順一朗「だが、それは所詮一時しのぎにしかならない。本当の意味で彼女達に勝つのは、『敗北』を認めさせるのは、『スタンド使い』でなければできない」

886: 2016/07/24(日) 02:18:02 ID:p1FdRw2Q
順一朗「尤も、『敗北』を認めさせても同じことだが。例え一人や二人『敗北』しようが、私はいくらでも、君達に勝てる『スタンド使い』生み出せるのだ」

順二朗「何度でも…それは、つまり…」

順一朗「そう! 君達がいくら『複製』を倒そうと、無駄だということだ!」

順二朗「そんな…バカな…」

P「『複製』を倒したところで無駄、か…わかってますよ、そんなこと」

順一朗「む?」

P「だって、わざわざあなたが出てくる理由なんて、それしかないでしょう」

順一朗「そこまでわかっているのなら、何故あんな行動に出たのだ? 守られるばかりの自分に耐えられなかったのかね?」

P「俺はただ、隙と時間を作りたかっただけです。美希と響が合流できるように」

・ ・ ・ ・

P「あなた達が何よりも警戒してる、あれを使わせるために」

ドドドドド ドドド

響「はぁ…はぁ…」

美希「………」ズズズ

美希が、響に肩を貸している。その傍らには『オーバーマスター』が立っていた。

887: 2016/07/24(日) 02:20:21 ID:p1FdRw2Q
ハルカ「やられた手前あんま強く言えないんだけどさ…何やってたの、アミ、マミ?」

マミ「い、いや、だって、ひびきんが急に飛んできたから…」

アミ「ミキミキも、ひびきんの方なんて見ないでまるで示し合わせたみたいに…」

ハルカ「はぁ…」

ゲシィッ!!

P「うぐっ!」ビクン

八つ当たりのように、ハルカはプロデューサーに蹴りを入れた。

ハルカ「響ちゃん、認めるんだ? 私には勝てないって」

響「ああ…認める。自分一人じゃあ、その『アイ・リスタート』には勝てない」

ハルカ「へぇ、いいのそれで?」

響「うん、どうだっていい」

ハルカ「………」

響「今、一番大事なことは会長を止めること! だったら、自分のプライドなんていらないだろ! 喜んで敗北するぞ!」

美希「今からって時に敗北されちゃあ困るんだケド」

ハルカ「ふーん、そう…」

888: 2016/07/24(日) 02:21:55 ID:p1FdRw2Q
美希「あ、そうだ会長」

順一朗「む?」

美希「ミキ達が『複製』を倒しても無駄とか言ってたけど、そうでもないよ」

順一朗「何故そう思うのかね?」

美希「だって、ミキ達がレオンを倒したから、会長はわざわざ出てきたんでしょ? そして…」

順一朗「………」

ドドドドドド

美希「ここで会長をブッ倒せばそれでゼンブ終わる。そうでしょ?」

894: 2016/07/30(土) 20:36:20 ID:2g3clTO6
順一朗「私を倒す…そう言ったのかね?」

美希「そだよ。春香に『弓と矢』を渡すつもりだったけど、ここで終わらせればその必要もないの」

順一朗「まぁ、落ち着きたまえ。ここにいる『複製』は、今は三人だけだ。しかし、私は十人でも、百人でも…何人でも呼び出せるのだぞ」

順一朗「それをたった二人で…たった一つのスタンドで? 正気とは思えんな」

響「こんな狭いところに百人も呼べるのなら、やればいいぞ。呼んだところで、なんくるないけどね」

順一朗「…私は君達を軽く見ているわけじゃあない。レオンを倒したということは重く受け止めている」

美希「別に、これで勝ったワケじゃあないけどね。あいつ、バケモノみたいな強さだったの」

順一朗「だったら、尚更だ。君達こそ、我々を軽く見ているのではないかね?」

響「話してないで、さっさと来ればいいぞ。でないなら、こっちから…」

順一朗「いや。露骨に動けばそれが合図となる…もう既にいくつか手は打たせてもらっている」

響「………」

ピカアアァァァァァ

美希「!」クルッ

美希達の背後で、爆弾スタンドが光を放っている。

895: 2016/07/30(土) 20:37:24 ID:2g3clTO6
アミ「ハッハ、行っけー!」

順二朗「彼女が攻撃しているのか…だとしたら、私の足をやったあれが来るのか…!?」

美希「また、社長やプロデューサーを巻き込むつもり?」

アミ「しょーがないっしょ、そこにいるのが悪いんだから!」

美希「………」

アミ「さぁ、弾けろ『デイブレイク・スターライン』!!」

カッ!!

爆弾スタンドが、激しく発光する。

美希「『オーバーマスター』」

シュルッ

・ ・ ・ ・

『オーバーマスター』が手を動かすと、光が収まった。外殻は飛び散ることなく、その場に留まっている。

アミ「あれ…? 爆発…しない?」

アミ「んっ!?」メキョア

アミの腕が、内側にひしゃげられた。

896: 2016/07/30(土) 20:38:43 ID:2g3clTO6
アミ「ああああああああああああ!?」メキッメキッメキメキ

全身が、グシャグシャに押しつぶされていく。

マミ「な、なに!? 何が起こってんの!?」

美希「このスタンド、爆発して体の外側を弾き飛ばすでしょ? それをさせないように、爆発の瞬間、外側の殻を押さえつけたの」

マミ「は…? 『デイブレイク・スターライン』の全開パワーだよ…? それも、爆発の瞬間の一番強いヤツ…」

ハルカ「いや、それより…そんなことしたら、爆発のエネルギーは内側に全部…」

アミ「あああああああああああああああああああ」グググ

パァン!!

サラサラ

アミの体は、砂となって弾け飛んだ。

美希「まず一人」

コォォォォォ

美希「!」

マミ「『マイルド・スノー』」

そうしている間に、『雪』が美希達を取り囲んでいる。

897: 2016/07/30(土) 20:40:02 ID:2g3clTO6
順一朗「なるほど、確かに言うだけの実力はあるようだ」ジジジジ…

順一朗は、『アイ・ディー・オーエル』を使い新たな『複製』を生み出している。

順一朗「だが、手を休めるつもりはないぞ。絶対的な数の力…君達は耐えられるかね?」

ズモッ!!

『雪』はかまくらのようなドーム状に積もり、美希達を閉じ込めてしまう。

ハルカ「ドームだね、マミ。『アイ・リスタート』ならこの壁を越えて攻撃できる」タッ

ハルカはスタンドを展開して『雪』のドームに近づいていく。

マミ「今度は隙間なんてないよ! さぁ、どうする!?」

ハルカ「無…」ドオ

ドームごと貫こうと、拳を突き出すが…

<LOCK!

ハルカ「…!」ピタ…

『雪』の壁に『ロック』が一つ浮かび上がり、ハルカはその手前で攻撃を止めた。

898: 2016/07/30(土) 20:40:38 ID:2g3clTO6
マミ「ちょ、ハルルン! なんで攻撃やめちゃうの!?」

ハルカ「いや…」

<LOCK! LOCK! LOCK!

マミ「ん!」

LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!
LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!
LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!
LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!

マミ「は…」

白い『雪』の壁が、どんどんフレッシュグリーンの『ロック』に塗りつぶされていく。

ハルカ「これは、ヤバい…!」バッ

ハルカは一足早く、そこから離れると…

「ドラァ…ッ!!」

バッリィィィィイン

マミ「な、何ィィィッ!?」

次の瞬間、『雪』のドームが粉々に砕け散った。

899: 2016/07/30(土) 20:41:56 ID:2g3clTO6
マミ「ウソっしょ…マミのさいきょーの盾がコナゴナに…」

響「壊れるなら、別に最強でもなんでもないんじゃないのか?」

美希「ふーっ、狭いところは勘弁してほしいの」

バリバリバリバリ

ドームの中から出てきた二人に、横から『電撃』が襲いかかる。

美希「んっ」ヒュ

パァン!

『オーバーマスター』の腕で叩き落とすが…

バチィッ!!

美希「きゃっ!?」ビリビリ

響「ぎゃっ!」ビリビリ

腕に流れた『電流』は腕で拡散し、二人は同じようにダメージを受けた。

ユキホ「腕の振りが速いなぁ…『コスモス・コスモス』がほとんど霧散しちゃった」バチバチ

攻撃が放たれた方向には、雪歩の『複製』がいた。

ユキホ「ちゃんと入ってれば一発で片付いてたのに」

900: 2016/07/30(土) 20:43:09 ID:2g3clTO6
マミ「ユキぴょん!」コォォォォォ

ユキホ「うん、わかった。『コスモス・コスモス』」バチィッ

ブワァァァッ

『電流』を乗せた『マイルド・スノー』が、広がりながら二人に襲いかかる。

美希「………」

キュィィン

『リレイションズ』の眼が光り…

美希「ドラララララララ」ズバババババ

降り注ぐ『雪』に向かって、拳を振るった。

シン…

パァン! グッパァン!

マミ「なっ!? 『雪』が勝手に爆発した!?」

ユキホ「『電流』の流れてないやつだけを狙って、流れてるやつにぶつけたんだ…!」

響「………」ドドド

二人は足並みをピッタリ揃えながら、ユキホの方へと向かっていく。

901: 2016/07/30(土) 20:44:12 ID:2g3clTO6
ハルカ「ユキホ、逃げて! 近づかれたらヤバい!」

ハルカが呼びかけるが…

ユキホ「ううん。向かってくるなら、好都合だよ…一緒に片付ける」スッ

ユキホは逃げずに、地面に腕を向ける。

響「………」

ユキホ「『コスモス・コスモス』ッ!」

バンバンバンバンバン

地面に向けて、ありったけの『電撃』を放つ。

バチチチィッ

『電撃』が草や土の上を走って、二人に襲いかかる。

ユキホ「さぁて、響ちゃんに肩を貸してて、どうやって躱すのかな?」

美希「ドララララララ」シュバッ

バオン!!

ユキホ「な…」

『オーバーマスター』は地面を掘り起こして、土ごと『電撃』をひっぺがした。

902: 2016/07/30(土) 20:45:32 ID:2g3clTO6
ブワァァァア

ユキホ「うぶっ!?」バリバリバリ

ユキホに『電撃』の混じった土がかかる。

ユキホ「けほ…」

だが、砂まみれになっただけで『電撃』によるダメージは一切ない。

ユキホ「ふんっ…『返す』能力ならともかく、私の『コスモス・コスモス』を直接返したところで…」

響「ドラァッ!!」ゴォッ

ユキホ「意味なんて…」

気づいた時には、『オーバーマスター』の拳はもう目の前に迫っていた。

ユキホ「なっ」パァン

ユキホは一瞬で砂になり、空中にばら撒かれる。

ブゥン…

響「え?」

ズモモモモッ

すると、ばら撒かれた砂が、『オーバーマスター』に吸い寄せられるようにまとわりついた。

903: 2016/07/30(土) 20:46:51 ID:2g3clTO6
響「なんだ、これ…」

キュゥゥン!

響「!」

砂の上から、今度は『雪』が『オーバーマスター』の体を覆う。

マミ「『マイルド・スノー』…」

アズサ「うふふ…『ゾーン・オブ・フォーチュン』」

マミの隣に、あずさの『複製』が立っている。

アズサ「ユキホちゃんに『罠』を仕掛けたわ。砂になっちゃっても効力はあったみたいね~」

響「仲間を『罠』にするなんて…」

シュルルルル

響「うぐ!」

さらに、『雪』の上に『糸』が巻きつけられた。

ミキ「『マリオネット・ハート』」

美希「あ、ミキの『複製』なの」

ミキ「あはっ。もう逃げられないって思うな」

904: 2016/07/30(土) 20:47:27 ID:2g3clTO6
響「うぎっ! 『雪』が膨らんで締め付けられる…!」グググ…

三重に抑え込まれ、『オーバーマスター』は身動きが取れない。

順一朗「ふむ。ここまでか」

マミ「流石にこれはもう動けないっしょー」

ミキ「さ、ハルカ。マコトくん。やっちゃってなの」

マコト「ああ。今やる」ヌッ

キュイイィィン

真の『複製』が、二人から少し離れた場所にいた。両腕についた車輪が『回転』している。

ハルカ「待って、マコト」

マコト「?」

ハルカ「イオリ。念のため、両手両足も封じておいて」

イオリ「あら? 何よハルカ、ビビってんの?」

ハルカの傍には、伊織の『複製』もいる。

ハルカ「…念のためね」

イオリ「はいはい、わかったわよ。『リゾラ』で体グニャグニャにしてやるわ、にひひっ♪」

905: 2016/07/30(土) 20:51:15 ID:2g3clTO6
ググググ…

ミキ「でこちゃん急いでなの、もしかしたらあんまり保たないカモ」

イオリ「はっ、言われなくてもさっさとやるわよ」

タタタ…

響「ドラァ…!」ググ

プチン!!

イオリが近くまで来る前に、『糸』を引きちぎった。砂と『雪』が飛び散る。

ミキ「あっ!?」

マミ「うぇ!?」

アズサ「あら…」

ハルカ「ミキ! 『マリオネット・ハート』の能力で『マイルド・スノー』が脆くなったんじゃ…」

ミキ「いや、そんなはずはないの…確かに『大きく』するほど脆くはなる…」

ミキ「でも、今のは内側だけに『大きく』してた…押しのけなきゃいけない質量は変わんないし、むしろ締め付けられて力入んないはずなの!」

906: 2016/07/30(土) 20:52:22 ID:2g3clTO6
イオリ「うおおっ『リゾラ』っ」ヴォン

ガシィ!

拘束から解放されると同時に、イオリのスタンドに腕を触られてしまう。

響「!」プランッ

すると、神経が途切れてしまったかのように、腕が『緩んで』落ちてしまった。

イオリ「安心しなさいアンタ達! このイオリちゃんが腕を封じてやった…」

響「ドラァ!」ヒュガッ

イオリ「ごはっ!?」ブワァ

『オーバーマスター』が脚で『リゾラ』を思い切り蹴り上げた。イオリも宙に浮く。

響「ドララララララララララララララ」ズガガガガガガガガガ

イオリ「うぶぇ」ヒュパンッ

そのまま空中に放った蹴りのラッシュで、あっという間にイオリを砂に変えてしまった。

907: 2016/07/30(土) 20:53:12 ID:2g3clTO6
グッ パッ

手のひらを閉じ、開く。

美希「よし、治ったの」

マコト「オラァッ」キュイイン

美希「!」ギュン

ギィン!

息をつく暇もなく、『回転』する車輪が襲いかかってきて、受け止める。

美希「わっ」グラッ

受け止めた拳は『回転』に引っ張られ、軌道が逸れていく。

<LOCK!

美希「ドラァ」ヒュッ

だが、『ロック』はついた。そこに向かってもう一発攻撃を撃ち込むが…

キィン!

美希「わわわ」フラッ

それも弾かれてしまう。

908: 2016/07/30(土) 20:54:28 ID:2g3clTO6
マコト「そのスタンド、力は凄いみたいだけど…ボクの『ザ・バイシクル』は力じゃ倒せないよ」

美希「………」

マコト「オラァ!!」ゴォッッ

『オーバーマスター』に向かって車輪を振り下ろす。

キュイ…

クル クル

『リレイションズ』の眼で、『回転』の動きを捉えると…

美希「ドラァッ」ヒュ

ピキッ

マコト「え?」

バッガァァァァァン

マコト「うわああああああああああ!?」

拳で、車輪を粉砕した。

909: 2016/07/30(土) 20:55:32 ID:2g3clTO6
マコト「な、なんっ…何をしたんだ!?」

美希「そのスタンドの腕、すっごく『回転』してるケド…腕をその『回転』と同じように動かしながら攻撃すれば、回ってないのと同じなの」

マコト「何を言って…」

美希「ドララララ」ヒュン

バキィッ!!

マコト「くあああっ、ダメだ…!」サラサラ

バファッ!

もう片方の車輪も破壊すると、マコトは霧散した。

ヒュルルル

直後、美希達の後方から『糸』が飛んでくる。

美希「そこ」パシィ!

ミキ「うえっ!?」

しかし、『オーバーマスター』にあっさり掴まれた。

美希「ミキ達に不意打ちなんて通用しないよ。ミキと響と『リレイションズ』、目は3つあるから」

響「いや、目は6つでしょ」

910: 2016/07/30(土) 20:57:23 ID:2g3clTO6
美希「ドラァッ」グイッ

ミキ「ぎゃっ!」ギュン

美希は『マリオネット・ハート』の『糸』を思い切り引っ張り、ミキを振り回すと…

バキィッ!!

マミ「ぐぇっ」

アズサ「きゃ!」

マミとアズサに叩きつけた。

美希「そこの人に、ミキは任せらんないの」パッ

『糸』を放し、そのまま腕を下ろそうとするが…

ガッ

美希「ん!」

途中で引っかかって動かなくなった。

ヤヨイ「『ゴー・マイ・ウェイ』! 空間を『めくり』ました!」

美希「………」

やよいの『複製』が、左手で空間の切れ端を掴んでいる。『オーバーマスター』の右腕があった場所が、黒い空間に塗りつぶされていた。

911: 2016/07/30(土) 20:58:09 ID:2g3clTO6
美希「これは、千早さんが言ってた…」

順一朗「ここまでやるとは、正直言って予想以上だったが…しかし、こればかりは君達にもどうにもなるまい」

ヤヨイ「はいっ! 空間の中に閉じ込めちゃいましたから! いくら速くて、いくら強くたって、もうダメです!」

響「とか言ってるけど美希、どうする?」

美希「うーん、そうだね…」

ヤヨイ「よーし、もう片方の腕も『めくって』…」

美希「えい」ピンッ

ヒュ

ヤヨイ「?」パシッ

『オーバーマスター』が左手から何かを弾き飛ばす。ヤヨイはあっさりとそれを掴み取った。

ヤヨイ「おはじき?」

<LOCK!

ヤヨイ「あっ!」

ヤヨイの右手に『ロック』が浮かぶ。

912: 2016/07/30(土) 20:59:11 ID:2g3clTO6
美希「ドラァ!」ギュン

ヤヨイ「うごがっ」メキョア!!

ヤヨイが掴んでいる切れ端の中から、『ロック』の途中にあるヤヨイの顔に拳が叩きつけられた。

美希「『めくられ』た空間は二次元…そのままだと、動かそうとしてもどうにもならない」

美希「でも、三次元に向かっていく方向を決められれば…ミキの『ロック』なら、飛び越えていける。逆に、近づく手間が省けたの」

ヤヨイ「うぅ、空間を元に戻…」

美希「ドララララララララララララララ」ズゴボガガガギギ

ヤヨイ「うっ、ううううっ」メギャン

サラサラ

戻す暇もなく、ラッシュを顔面に受けて砂となってしまう。

美希「ふぅ」グッ

ピシャン

空間が元に戻る。位置を調整し、腕は1ミリも巻き込まれることはなかった。

913: 2016/07/30(土) 21:01:47 ID:2g3clTO6
ザッザッザッ

二人はゆっくりと順一朗に向かってくる。

ハルカ「順一朗さん!」バッ

その前に、ハルカが立ちはだかった。

ハルカ「いくら強くても…速くても…『アイ・リスタート』には…!」

ズ…

・ ・ ・ ・

『オーバーマスター』は既に、ハルカの真横にいた。

ハルカ「う…」

響「借りは、返すぞ」

ハルカ「うわあああああああああああああああああああああああああ」

パァン!!

ドサァ!

サラサラ

撃ち上げられたハルカは、すぐ傍に転がっている自分の抜け殻の上に落ち、砂に戻った。

914: 2016/07/30(土) 21:03:06 ID:2g3clTO6
順一朗(なんだ、これは…)

サラサラ…

順一朗「はっ!」

残った三人の『複製』が、砂に戻りつつある。

マミ「つよすぎる…」

ミキ「いくらやっても、無理なの…」

アズサ「こんなの『最強の三人』以外、いくら束になっても…」サラサラサラ

ザンッ

消えた。

順一朗「………」

美希「で?」

順一朗「バ…」

美希「いくらでも作れるんだよね、次は誰?」

順一朗「バカな…」

915: 2016/07/30(土) 21:03:54 ID:2g3clTO6
P「追いつめている…」

P「美希が! 響が! 会長を! 追いつめているぞッ!」

順一朗(『オーバーマスター』…確かに、こんなものは『最強の三人』でなければどうにもならない…)

順一朗(だが、レオンは彼女達に敗北している。一度敗北を認めた『複製』は二度とその相手に勝てない、呼び出したところで無意味だ)

順一朗(残りの二人だが…同じ人物は二人以上同時に『複製』できない。彼女達はまだ砂になっても精神を失ってもいない、『アイ・ディー・オー・エル』で再び生み出すことはできない)

順一朗(だが…)

美希「もう終わり?」

順一朗「はぁ、はぁ、はぁ」

響「降参するんだ。そうすれば、自分達も会長を傷つけないで済む」

順一朗「降参など…」

順一朗「するものか…私の理想があと一歩のところまで来ているのだ…もう、自分では止められないのだ…」

美希「そう…」

グッ

『オーバーマスター』が拳を握りしめた。

美希「だったら、ミキ達が止めてあげる」

916: 2016/07/30(土) 21:04:50 ID:2g3clTO6
美希「『リレイションズ…」

響「オーバーマスター!』

シュバァ!!

『オーバーマスター』の攻撃が、順一朗へと迫る。

P「見えないが、きっとこれが最後の攻撃…これで、全部終わ…」

スッ

P「…え?」

その人物は、ふらりと現れた。プロデューサーの横を通り抜け、美希達の方へ向かう。

スタスタ

クルリ

歩きながら、美希達を…『オーバーマスター』をも追い抜き、その前に立って、振り向く。

ピタ…

完全に動きが静止した『オーバーマスター』を…

「んあっ!」ボギャア

金色のスタンドが、殴り飛ばした。

917: 2016/07/30(土) 21:06:07 ID:2g3clTO6
美希「う…!?」ググ

響「は…!?」ググググ

殴られた二人は、ゆっくりと動き出し…

グォォォォォォォオ

美希「きゃあああああああああ!?」

響「うおおおおおおおおおおおおおおお!?」

P「美希! 響ッ!」

ズガガガガ!!

思い切り吹き飛ばされ、地面を転がった。

美希「な、何が…」

響「起こったんだ…?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

順一朗「間に合ったか…ユウ」

ユウ「………」

少年が、順一朗の前に立っていた。

921: 2016/08/07(日) 23:25:50 ID:VlDyRc5k
ユウ「どうやら、間一髪…と言ったところみたいですね」

ゴゴゴゴゴゴ

順二朗「彼女…? いや彼…か? あれは、いったい…」

P「こいつは、会長の家に行った時の…」

美希「千早さんの弟の『複製』…」

ユウ「………」

響「スタンドが『ブルー・バード』じゃあない…? いったい…」

ユウ「あんな不完全なスタンドとは違いますよ。これが、僕の本来のスタンド。『ブルー・バード・アルカディア』です」

順一朗「ユウ、助かった。君が来なかったら全て終わっていたかもしれない」

ユウ「たまたま近くにいて助かりました。『霧』が伝達手段として機能してませんから」

順一朗「ああ…天海君の『アイ・ウォント』の影響だろうな」

響「どうして、ここで戦ってることがわかったんだ…? 何か連絡取ってたようには見えなかったのに…」

ユウ「僕も『複製』ですから。『アイ・ディー・オー・エル』の発動も、順一朗さんの場所もわかりますよ」

響「初めて聞いたぞそんなこと…」

ユウ「まぁ、そうでなくとも駆けつけていたでしょうけど。あそこまで派手な音を出していれば…ね」

922: 2016/08/07(日) 23:27:52 ID:VlDyRc5k
ユウ「しかし…」

シュゥゥゥゥゥ…

サラサラ

辺りには砂の山がいくつも積み上げられている。

ユウ「順一朗さんがあれだけ『複製』を作り出していたのに、誰も残っていないなんて…」

順一朗「ああ…レオンを倒したのだ、一筋縄ではいかないとは思っていたが…まさかここまでやるとは私も思わなかった」

ユウ「………」スッ

少年が、『矢』を刺されて抜け殻になってしまったハルカの傍で座り込む。

ユウ「危険視すべきは春香さんの『ジ・アイドルマスター』だけだと思っていましたが」ヒョイ

そして、近くに転がっている『矢』を拾い上げると…

ユウ「………」

ゴゴゴ

ユウ「高木さん、これを」スッ

順一朗「うむ」パシッ

少しの間それを見つめた後、順一朗に手渡した。

923: 2016/08/07(日) 23:28:43 ID:VlDyRc5k
順一朗「やはり、自分で持っているのが一番安全だな」

ユウ「さて…あとは貴女達だ」ギロリ

少年は、美希達を睨みつける。

美希「その目…あの時、春香に向けてた目と同じだね」

ユウ「………」

美希「怒ってるの? 仲間がやられたから」

ユウ「………」

美希「そんなの、ミキだって同じだよ。みんなバラバラにされて傷つけられて、とっくにプッツン来てるの」

ユウ「………」

ゴゴゴゴゴゴゴ

美希「『リレイションズ…」

・ ・ ・ ・

美希「あれ?」

『オーバーマスター』が元の『リレイションズ』に戻っている。

924: 2016/08/07(日) 23:30:40 ID:VlDyRc5k
美希「響?」

響「美希…」ザザッ

響は少年から離れていた。

ユウ「我那覇さんの方が冷静のようですね。意外と…なんて言ったら失礼でしょうが」

響「あいつ…と言うかあのスタンド、なんかヤバいぞ…」

美希「………」

P「俺にはスタンドは見えない…スタンドが違うと言われても、そもそも変わるものなのか? としか思えないが…」

ゴゴゴゴ

P「だが、あの子は…あの子から漂う雰囲気は前見た時と全然違う! それは俺の目でもはっきりとわかる!」

順二朗「それだけじゃあない…彼も見ていただろうが、その子は今決着をつけんとしていた君達の後ろから現れ、平然と回りこんでいったんだ! 君達の動きを止めてッ!」

ユウ「ええ。社長の言う通りですよ美希さん。隠す意味もないので言ってしまいますが、僕の『アルカディア』は近づくものすべての『時間』を『奪う』」

美希「………」

ユウ「『オーバーマスター』の事は僕も聞いています。けれど…貴女達が何をしようと僕には届かない。届かなければどんなに強い力を持とうと、どんなに速く動こうと、届かなければ意味はない」

美希「………」

ユウ「貴女ほどの『スタンド使い』なら先程の一撃だけでも理解できたでしょう? 貴女達では僕には勝てない」

925: 2016/08/07(日) 23:32:25 ID:VlDyRc5k
美希「だから?」

ユウ「だから、って…」

美希「ボスが目の前にいるのに、ここで退くわけにはいかないの」

順一朗「ふむ」

響「でも、美希…」

美希「それに響」

響「なに?」

美希「近づくほど『時間』を『奪う』…そんな能力なら、どっちみちもうミキ達は逃げられないんじゃない?」

響「う、それは…」

美希「逃す気もないみたいだし…ね」

ユウ「そうですね。我々にとっての最大の不安要素は『ジ・アイドルマスター』でしたが、こうして『矢』を確保した以上…」

ユウ「貴女達はたった二人であれだけの『複製』を全滅させられる『スタンド使い』…危険すぎる」

ゴゴゴゴゴ

響「…腹、括るしかないか」

926: 2016/08/07(日) 23:33:36 ID:VlDyRc5k
ザッ

美希と響が、少年の前に立ち並ぶ。

P「美希、響…」

美希「プロデューサー達は逃げて。誰かにこのスタンドのことを教えてほしいの」

P「逃げて、だって…? 俺達にお前らを見捨てて、逃げろって言うのか…」

順二朗「そうだ星井君、今の順一ちゃんに捕まったら何をされるか…」

美希「じゃあ、二人はなんかできるの? ケガしてるんじゃ尚更でしょ」

P「う…」

響「自分達が今負けたとしても…765プロは負けない。そのためにも…頼むぞ」

順二朗「美希君、我那覇君…」

P「………」

順二朗「…わかった。行こう、彼女達の気持ちを無駄にしてはいけない」

P「…はい」

ザッザッザ…

プロデューサーは足を怪我している順一朗に肩を貸して、去って行った。

927: 2016/08/07(日) 23:38:25 ID:VlDyRc5k
ユウ「無駄ですよ。貴女達が足止めしてまで彼らを行かせたとしても全部無駄」

ユウ「教えるも何も、僕は元々隠す気もない。知られたところで、何も困りませんから。僕の『アルカディア』を倒せるスタンドは765プロにはいない」

順一朗「方便だろう。彼らを逃がすための…」

順一朗「しかし、残念だが…私にもすべきことがある。彼らは見逃してもいいが、君達を逃がすわけにはいかないな」

美希「逃げる気なんて…最初からないのッ!」

バッ!

そう言うと、美希は駆け出した。

ユウ「とりあえず向かっていけばなんとかなると…?」

美希「む…」フラ…

一歩も動いていない少年に近づくたびに、どんどん動きが遅くなる。

響「うおおおっ」ズザザザザ

順一朗「お!」

一方、響は美希の反対側に回り込み、少年の後ろにいる順一朗に襲いかかる。

ユウ「『オーバーマスター』ではなく別々に来るのですか。確かに、『アルカディア』に対してはそっちの方がいいでしょうね」

928: 2016/08/07(日) 23:39:50 ID:VlDyRc5k
ユウ「まぁ…結果は同じですけれど」スッ

少年は美希に自分から近づいていくと…

ユウ「はっ!」ヒュッ

美希「んぐっ…!」グボァ

殴り飛ばす。

ユウ「何をするかと思えば。この程度ですか」

響「ドラ…」ググッ

順一朗「む、はや…い…」ノロ…

ユウ「高木さんが遅くなっているんですけどね」クルッ

スタスタ

そして、今度は響の傍まで歩いていき…

ユウ「ふっ!」ドォ

響「んがっ」ドンッ

その体を押した。

929: 2016/08/07(日) 23:40:45 ID:VlDyRc5k
ユウ「無駄ですよ。自分でも逃げられないとわかっていたのでしょう? これくらいの距離なら、僕はいつでも追いつける」

美希「きゃっ!」ゴロゴロゴロゴロ

美希は『アルカディア』が離れたために『時間』が戻り、殴られた勢いを受けて転がった。

美希「!」

ユウ「見えますか、美希さん」

グググ…

響の体が崖の方へ少しずつ押し出されている。

順一朗「ユウ、これは…」

ユウ「大丈夫ですよ。彼女はそんなにヤワじゃあないでしょう」

美希「くっ!」タッ

美希はすぐに響のもとへ駆けつけようとするが…

ユウ「………」

美希「う…!」グググ

少年の周りにいるだけで、体の動きが遅くなってしまう。

930: 2016/08/07(日) 23:42:32 ID:VlDyRc5k
ゴォォォォォォォ

ユウ「………」

美希(周りの時間の進み方が早くなってる…! こいつは何もしてないのに…)

響「うっ…ぐっ」グググ

響の体の動きも、少しずつ速くなっていき…

美希(間に合わない…!)

響「ぎゃっ…!」ブワッ

宙に放り出された。

美希「ああああああああああああああああああ」

ユウ「さぁ…どうします?」

美希「く…」グッ

『アルカディア』の射程から抜けた美希は、地面に触れると…

ギャァァァン!!

響を追うように、崖から飛び出した。

931: 2016/08/07(日) 23:44:44 ID:VlDyRc5k
響「美希…!?」

美希「響、捕まって!」バッ

ガシッ

言われるがままに、響は美希の手を掴む。

ゴォォォォォオ

手を繋いだまま、二人は海へと落ちていく。

響「で、どうするんだ!? 岩場にはちょっと遠いぞ!」

美希「大丈夫」

<LOCK!

美希が飛び出す前に触れた地面に『ロック』が浮かび上がった。

美希「なのなのなのっ」ヒュババババ

『ロック』に向かって『リレイションズ』の拳を突き出す。飛べはしないが、『ロック』に引っ張られて崖の岩肌に近づいていき…

ガシッ

崖を掴んだ。

932: 2016/08/07(日) 23:48:10 ID:VlDyRc5k
ユウ「着水の音がしませんね」

順一朗「ああ、では…」

グワッ!!

響「うおおおおおおっ」

スタッ!!

崖の下から、美希を背負った響が上がってきた。

順一朗「戻ってきたか…」

美希「あれくらいで、戻れないと思った?」

ユウ「いいえ。戻ってくることはできたでしょうね…」

ユウ「でも、そうする必要はない。戻ってきても、やるだけ無駄だとわかっていますよね?」

響「そうだな…」

ユウ「なら、何故貴女達は立ち向かおうとするのですか? 抵抗しなければ、僕も危害は加えなくて済むのに…」

響「諦めてないから」

ユウ「諦めていない…? 勝てないと理解しているのに?」

933: 2016/08/07(日) 23:55:17 ID:VlDyRc5k
美希「確かに、ミキ達はキミには勝てないって思う」

ユウ「………」

美希「ミキはね…アイドルやっててイヤなコトとかメンドーなコトとかも、いっぱいあるの」

ユウ「…?」

美希「でも…楽しいからちょっとくらい我慢できる。ミキはアイドルが好き」

順一朗「……!」

美希「アイドルをやって、キラキラできるジブンが好き」

響「自分も。みんなと一緒に頑張ったり、ぶつかり合えるアイドルが大好きだ」

順一朗「く…」

美希「ミキは、それを諦めたくない! だから、戦うの!」

響「何もしないで失うくらいなら、無駄でもなんでも…最後まであがき続けるぞ!」

ユウ「う…」

順一朗「ううううう…!」

ユウ「た、高木さん…?」

順一朗「はぁ、はぁ…いや…大丈夫だ…」

934: 2016/08/07(日) 23:57:29 ID:VlDyRc5k
ユウ「…貴女達に譲れないものがあることはわかりました。でも…」チラッ

倒れて動かないハルカの人形を見る。

ゴゴゴゴゴゴ

ユウ「僕達にだって、譲れないものはある。貴女達には、ここで終わってもらう」ゴゴゴゴ

美希「………」タラ…

響「ふぅ…っ」

ザッ

ユウ「!」クルッ

順一朗「む…?」

足音が聞こえ、少年は向き直った。

ザッザッザッ

ユウ「『霧』の奥から誰か来る…」

P「………」ザッ

響「え?」

順一朗「なんだ、君か…何しに戻ってきた?」

935: 2016/08/07(日) 23:59:48 ID:VlDyRc5k
美希「プロデューサー、なんで…」

P「やっぱり、お前達を見捨てるなんて出来ないからな…まぁ、偉そうなこと言って俺にはやっぱり助けることなんて出来ないが…」

美希「!」

ザッザッザッ

P「でも、道案内くらいはできる」

プロデューサーの後ろを何者かが着いて歩いている。その姿は『霧』でぼやけて見えない。

P「あいつの能力は…」

「言わなくていい。知ってるから」

ユウ「…誰でもいい。僕が片付けます」

順一朗「まぁ、待て。君が行くまでもない」スッ

順一朗は『アイ・ディー・オー・エル』を取り出すと…

ジジジジ

ミキ「あふぅ」

イオリ「にひひっ」

二人の『複製』を作り出した。

936: 2016/08/08(月) 00:01:40 ID:30xp1WfM
ミキ「『マリオネット・ハート』!」シュルッ

「!」グルグルグル

P「あ…!」

『霧』の中の人物はあっという間に『糸』を巻き付けられ…

イオリ「あとは…」タタタ

そこへイオリが向かっていく。

イオリ「さぁ、アンタのスタンドを出しなさいよォーッ」

「………」

イオリ「出さないの? まぁ、出したとしても『リゾラ』でフニャフニャにしてあげるけどーッ」ヒュッ

『リゾラ』の手が迫る。

「気づかない? さっきからずっと出してんのに」

イオリ「ん…!?」ピタ…

『リゾラ』と一緒に、イオリの動きが空中で止まった。

937: 2016/08/08(月) 00:02:39 ID:30xp1WfM
イオリ「な、なによこれ…? 近付けない…」

シュゥゥゥゥゥ…

ユウ(『霧』が濃くなっていく…いや、あれは『霧』じゃあない)

「『スモーキー・スリル』」

ユウ(『煙』だ!)

ドグシャア!!

イオリ「かは…!」

空気に押し潰されたかのように、イオリは地面に叩きつけられた。

「やっぱ『偽物』は『偽物』よね」

スパッ

ミキ「え!?」

巻き付いていた『糸』が、突然切れてしまう。

「にひひっ」

スゥ…

『煙』が薄れて、中にいた人物が姿を表す。

938: 2016/08/08(月) 00:03:10 ID:30xp1WfM
ドドドド

響「あれは…! あのスタンドは…!」

ドドドドドド

響「真っ先にいなくなって、『偽物』と入れ替わっちゃった…」

「余計なこと言わなくていいわ、響」

ドドドド

美希「デコちゃん…!」

「デコちゃん…」

ドド

伊織「言うなっての、美希ッ!」バァーン

水瀬伊織が、そこにいた。

939: 2016/08/08(月) 00:03:45 ID:30xp1WfM
続きは明日

942: 2016/08/08(月) 23:46:11 ID:30xp1WfM
ドドドドドドド

伊織「随分と、好き勝手やってくれたわね。アンタが元凶なんでしょ?」

順一朗「水瀬君か。君のことだ、とっくに私がやっているということは知っていると思うが…」

伊織「…? アンタ…誰よ」

順一朗「ム…? おいおい水瀬君、忘れてしまうとは流石に酷くないかね。確かに、長らく会ってはいなかったが…」

伊織「違うわ。私の知ってる高木順一朗はどこか抜けてて、厳しいところもあって、でも誰よりもアイドルのことを考えてる憎めないオッサンだったけど…」

伊織「アンタはそうじゃあない、表面はテカテカなのに内側はドロドロに腐ったタマネギのような奴よッ!!」

順一朗「…私のことなど、どうでもいいだろう」

伊織「チ…」

順一朗「それより、君はこの島に来て以来ずっと暴れていたので、牢獄に閉じ込めていたはずだが」

ユウ「申し訳ありません、高木さん。脱獄を許しました。交戦の後だったので、捕らえることもできず…僕の失態です」

順一朗「いや、謝る必要はない。君は今私の助けに来ているのだ。あそこに君がいないのなら、どの道、彼女は逃げていたことだろう」

ユウ「………」

943: 2016/08/08(月) 23:51:32 ID:30xp1WfM
ユウ「しかし…わざわざこうして僕の前に現れるとは」

伊織「ま、ね…正~直言ってアンタとは顔も合わせたくもなかったけど」

P「すまん、伊織…」

伊織「だけど、コイツが美希と響がピンチだって言うじゃない」

美希「デコちゃん…」

伊織「だったら、このスーパーアイドル伊織ちゃんがなんとかするしかないでしょ?」

イオリ「なにが、スーパーアイドル伊織ちゃんよ」スクッ

倒れていたイオリが立ち上がってくる。

伊織「あら、まだ全然ピンピンしてるわね。『複製』ってヤツは無駄に頑丈でやんなるわ」

ユウ「水瀬さん、貴女はハルカさんに敗れて捕まっていたのでしょう?」

伊織「ええ、忌々しいことにね」

ユウ「助けに入る以前に、僕の前に辿り着けるのですか?」

伊織「やれやれだわ。ナメられたものね」

イオリ「ナメる? 事実じゃあないの、アンタなんて『最強の三体』が相手するまでもないわ!」ズッ

『リゾラ』を出して襲いかかる。

944: 2016/08/09(火) 00:00:12 ID:MgnXdCD2
伊織「はぁ…」シュゥゥゥゥ

伊織の前に、『煙』が集まっていく。

イオリ「そんなもの、払ってやるわ!」バババ

ブワッ!!

『リゾラ』が腕を大きく振るい、『煙』を吹き飛ばすが…

・ ・ ・ ・

イオリ「え…」

キラ…

その中から漆黒の鎧が現れ、鈍く光った。

伊織「あのねぇ、いくらこの伊織ちゃんが強くて賢くてビューティフルでこの物語の主人公だったとしても…」

ゴゴゴゴ

伊織「一人でどうにかなると思ってるほど自惚れちゃいないわよ」

ミキ「ミキの『マリオネット・ハート』が切られた…流石に『スモーキー・スリル』にやられるほどヤワじゃあないの」

ゴゴ

ミキ「デコちゃん一人じゃない! 他にもいるッ!」

945: 2016/08/09(火) 00:02:43 ID:MgnXdCD2
イオリ「うっ…」

ゴゴゴゴゴ

真「やぁ、久しぶり」ギギギ

黒い鎧が、真の片腕に集まっていく。

イオリ「ま…真…」

真「オラオラオラ」ドゴドガドゴ

イオリ「うばァーッ!!」

パァン!!

真に殴られると、イオリは溶けるように砂になっていった。

946: 2016/08/09(火) 00:05:26 ID:MgnXdCD2
ミキ「こ、こんなあっさり…」

順一朗「菊地君は、一度彼女を破っている…これでは勝てないか」スッ

『アイ・ディー・オー・エル』で次の『複製』を作り出そうとするが…

響「ドラァ!」ヒュオッ

響がそこを狙って蹴りを放ってくる。

ユウ「順一朗さんには指一本触れさせ…」バッ

その前に、少年が立つが…

響「………」ピタ

順一朗「………」ピタッ

響と一緒に、順一朗の動きも止まってしまう。

美希「その、『アルカディア』…確かに強いケド、仲間もカンケーなく巻き込んじゃうね」

ユウ「………」

美希「一人だけの最強…『ジ・アイドルマスター』と同じ。孤独な能力なの」

ユウ「それが…なんだって言うんですか」

美希「なんか、かわいそうだなって」

947: 2016/08/09(火) 00:08:17 ID:MgnXdCD2
グググ…

ミキ「『糸』が…『煙』に引っ張られて思うように動かない…!」

伊織「完全に止めるのは無理だけど、アンタのスタンドみたいなのにはよく効くでしょ? そんでもって…」

真「行くぞ」ヌッ

ミキ「ひっ」

ミキの目の前に真が近づいてきて…

真「オラオラオラオラオラオラ」

ガシャァァァァン

ユウ「!」

ミキの体は粉々に砕け散った。

真「………」

伊織「何を苦虫噛み潰したような顔してんのよ。やんなきゃいけないこと、わかってるでしょ」

真「ああ、わかってる…行こう」

948: 2016/08/09(火) 00:11:02 ID:MgnXdCD2
ユウ「この二人も侮れないか…」ドガッ

動きの止まった響を殴り飛ばす。

響「うわ…!」ブワッ

美希「っとぉ!」ガシッ

ズザザザザザ

美希は加速する前に響を受け止め、崖スレスレで止まる。

スッ

ユウは順一朗が動ける程度まで距離を取った。

ユウ「順一朗さん、『複製』は作らなくていいです。と言うより、この距離では恐らく誰を出したところで無駄でしょう」

順一朗「む…そうか」パッ

『複製』が中断され、『アイ・ディー・オー・エル』が順一朗の手から消える。

伊織「あら、自分からやめちゃうわけ? ま、賢明な判断よね。アンタも仲間がやられるのは見たくないでしょ」

ユウ「で?」

伊織「………」

949: 2016/08/09(火) 00:16:59 ID:MgnXdCD2
ユウ「何人来ようと同じことですよ。『ジ・アイドルマスター』のような規格外ならともかく、雑輩のスタンドが何体集まろうと僕の敵じゃあない」

伊織「アンタの敵じゃない? 何を偉そうに。強いのはアンタのスタンドでしょうが」

ユウ「…ええ、そうですね。ですが、現実誰も僕の『アルカディア』には敵わないでしょう」

伊織「………」

ユウ「水瀬さんは、能力は知っていますよね。誰も僕に近づくことは出来ないし…貴女の脱走も何度も止めたこともある」

伊織「そうね。どうあがいても逃げられなかったし、あれには参ったわね」

ユウ「それがわかっていて、どうしてここに来たのですか!? 彼女達を助けようだなんて、そんな考えは無駄だ!」

伊織「はぁ。無駄なんて言葉はね…」

ユウ「?」

伊織「とっくに聞き飽きてんのよ私はッ! 近づけないなら…真!」

真「オラァッ!」グオッ

ドスゥ!!

真が、『チアリングレター』の拳を地面に撃ち込んだ。

ビキビキビキビキ

崖にヒビが入り、どんどん広がっていく。

950: 2016/08/09(火) 00:21:38 ID:MgnXdCD2
P「そうか、近づけなくても足場を崩してやれば…! だが…」

ビキビキビキ

美希「ちょっ、真クン…」

P「美希達がまだそっちに残ってるぞ!?」

響「が、崖が崩れる…逃げるぞ、美希!」ガシッ

響は美希の体を掴んで、安全な場所まで逃げようとするが…

ユウ「逃げる必要、ないですよ」

ピタ…

P「なに…」

ユウ「こんなことをしても、無駄ですから」

崖は崩れることなく、その場に留まっていた。

P「あの子に近づくものは、全て止まる…」

P「足場を崩そうとしても、崖の方が止まってしまうのか…!!」

951: 2016/08/09(火) 00:24:14 ID:MgnXdCD2
伊織「ま、こうなるわよね」

ユウ「?」

ブワァァァ

ユウ「!」

『スモーキー・スリル』が、繭のように少年を包んだ。

伊織「近づくほど止まるって言っても、ある程度は近づけるわ」

ユウ「『煙』が僕の周りに…」

モクモクモク…

少年の視界を、『煙』が覆い尽くす。

伊織「どう? 何も見えないでしょ」

ユウ「………」

ユウ「それが…一体なんです? 僕の視界を奪ったところで、それで何か変わるんですか?」

タタタ…

ユウ「これで、美希さん達を逃がすつもりですか? しかし、僕は『複製』だ…足音もその振動も人一倍伝わっている」タッ

少年は、逃げようと動く美希達を止めに向かう。

952: 2016/08/09(火) 00:28:11 ID:MgnXdCD2
ユウ「無駄ですよ、全部無駄! 貴女達のやっていることには、何の意味もないッ!」

伊織(………)

順一朗「ユウ、落ち着きたまえ。彼女達はまだ何か考えている」

ツーッ

ゴゴゴゴ

『穴』が、背後から順一朗に迫っていた。

順一朗「………」

伊織(よし、スキだらけよ…行け、雪歩ッ!)

順一朗「と、ここらで萩原君が来るのかね?」クルッ

伊織「!」

順一朗は突如振り向いて、近づいてくる『穴』を見据えた。

ユウ「そちらは…大丈夫ですね高木さん。他の人は僕がどうにかします」

順一朗「菊地君がいるということは、萩原君もいるはず…『ファースト・ステップ』だったか? 全部知っているさ。姿を現さない以上、こうして私を狙ってくるであろうこともな」

953: 2016/08/09(火) 00:34:43 ID:MgnXdCD2
真「駄目だ雪歩! 全部バレてる、逃げろッ!」

ズズッ

真の呼びかけにも反応せず、『穴』はそのまま順一朗に向かっていく。

順一朗「出てくるところに『アイ・リスタート』をぶつけるか…それとも『ゴー・マイ・ウェイ』で穴ごとめくってしまうか…」

ズズズ

順一朗「何にしても、この距離はいい。逃げるには近すぎるし、攻撃をするには遠すぎる」

伊織「雪歩!」

順一朗「萩原君が私に何かするよりも、『アイ・ディー・オー・エル』で『複製』を生み出す方が早いッ!」

ヒュパッ!!

順一朗「何!?」

その時、『穴』の中から赤い液体が飛び出してきた。

順一朗「なんだこれは…? だが、こんなもの簡単に避け…」スッ

ククッ

順一朗「うっ!?」スパァ!

赤い液体は、順一朗を追いかけるように軌道を変え、頬を切った。

954: 2016/08/09(火) 00:45:07 ID:MgnXdCD2
伊織「よしッ!」

真「成功だ!」

ユウ「え…? 何が起きたんですか、高木さん!? くっ、見えない…」

ツーッ…

伊織「あら。頼んだわ真」

順一朗の頬を切った赤い液体は、そのまま伊織に向かって真っ直ぐ進んでくる。

真「よっと」グシャ…

それを押し潰すと、地面に染み込んで止まった。

順一朗「なんだ、今のは…私に向かって飛んできたが…」

伊織「『リビング・デッド』よ、私の血から作った。アンタじゃなくて私を追いかけてきたのよ。私がアンタに合わせて動いて、誘導したの」

順一朗「『リビング・デッド』…? なんだそれは、スタンドの名前か…?」ツーッ

伊織「ま、アンタは島に連れてきたヤツのスタンドなんて、いちいち全員分覚えてないでしょうね。使えないヤツがほとんどだもの」

伊織「さて…本人がいないんで言わせてもらうわ、『リビング・デッド』。今度は正真正銘アンタのものよ」

ポタッ

順一朗の頬から流れた血が、地面に落ちた。

955: 2016/08/09(火) 00:55:10 ID:MgnXdCD2
スパッ!

順一朗「うぐ!?」ブシュ

自身の『血』が順一朗の足を切り裂いた。

ユウ「高木さん! 一体何が…」

順一朗「わ、私の『血』が…私に襲いかかる…!」

ポタッ

ズズズズ

順一朗「ぐああ…!」ブシュ

『血』が傷を作り、そこからまた新たな『血』を生み出していく。

ユウ「何に襲われているんだ…? なんでもいい、『アルカディア』で止めなきゃ…」バッ

少年は順一朗の方へ向かおうとするが…

響「伊織!」タタタ

ユウ「はっ!」

その間に、響達は伊織達のいる場所まで合流した。

956: 2016/08/09(火) 01:06:13 ID:MgnXdCD2
ピタ…

少年が順一朗の近くまで行くと、順一朗ごと『血』の攻撃は止まった。

ユウ「数が多すぎる、なんだこれは…?」

スゥ…

ユウ「この『煙』が邪魔だ…!」シュバァ

腕を振るって吹き飛ばそうとするが…

グググ

『煙』は『アルカディア』の能力のせいで時間差で動いている。

ユウ「すぐに…飛んでいかない…!」

ブワァ

モクモクモク

『煙』は吹き飛ばされる前に、次々とまとわりついてくる。

957: 2016/08/09(火) 01:14:25 ID:MgnXdCD2
ユウ「どうするつもりですか…」

伊織「逃げるわ。アンタ自身はどうにもならないことには変わりないもの」

ユウ「待て、逃さない…! 僕の『アルカディア』から、逃げようだなんて、そんなこと…」

美希「追ってきていいの? キミが離れたら会長はまた『リビング・デッド』に襲われるって思うな」

響「それだけじゃあないぞ。崖だって崩れる…」

ユウ「くっ…」

伊織「アンタの『アルカディア』は強い。どうしようもない、倒す手段なんて何も思いつかないくらい」

伊織「でも、どんなに強いスタンドを持っていたって、アンタは所詮一人よ。一人で出来ることには限界があるわ」

真「…行こう、みんな」

ザッザッ

ユウ「ま、待て…! 待って…」

ザッザッ…

足音が、少年から離れていく。

スゥ…

やがて『煙』も消え去った頃、少年と順一朗以外、誰もそこには残っていなかった。

958: 2016/08/09(火) 01:22:20 ID:MgnXdCD2
………

順二朗「おお、君達! 無事だったか!」

伊織達が逃げてくると、森の中に両手に木の枝を持った順二朗がいた。

P「社長、何をやってるんですか?」

美希「仮装?」

順二朗「いや、足手まといにならぬようここにいたのだが…誰かに見つかるかと思ったら気が気でなくてな。どうかね? 上手く擬態できているだろうか?」

P「は、はぁ…」

響「それにしても…ほんと助かったぞ、伊織! 真! 雪歩! ありがとう!」

雪歩「はぁ…っ…うん、どういたしまして」

真「お疲れ、雪歩」

伊織「お手柄だったわよ、雪歩!」

響「でも…みんながあんなに頑張ったのに、逃げることしかできなかった…」

美希「そうだね。あと一歩のところだったのに、結局、会長を逃しちゃったの…」

伊織「あら? アンタ達まさか、私達がアンタ達を逃がすためだけにあんなことやったと思ってんの?」

美希「?」

959: 2016/08/09(火) 01:28:25 ID:MgnXdCD2
伊織「雪歩、ちゃんと取れたわよね?」

雪歩「うん、バッチリだよ」スッ

雪歩がプラスチックのケースを伊織に手渡す。

伊織「これ、何かわかる?」

ズルッ…ズズズズ

響「うげ!? これって…『血』? 動いてる…」

伊織「会長の血から出来た『リビング・デッド』よ。ケースの中に閉じ込めておいたわ」

真「閉じ込めたのは雪歩だけどね」

伊織「とにかく…会長の方に向かって動くコンパスみたいなものよ」

美希「あ、それって律子…さんが言ってた!」

P「じゃあ、これがあれば…!」

順二朗「順一ちゃんがどこにいようと見つけられるというわけか!」

真「はい。あのユウってヤツだって、四六時中一緒にいるわけじゃないし…他のみんなも集まれば、何かいい方法が見つかるかもしれない」

伊織「そしたらどこへ逃げようが…果ての果てまで、追いかけてあげるわ。にひひっ♪」

To Be Continued…

960: 2016/08/09(火) 02:36:39 ID:2TdTGZe6

965: 2016/08/17(水) 10:30:25 ID:XLxXI82.
いよいよ終わりが近づいてきたのか?
どちらにしろ楽しみだ



To Be Continued...




引用元: 千早「『弓と矢』、再び」その2