1: 2010/10/05(火) 13:33:34.45 ID:PkFAniPz0

プロローグ
大荒れだった夜が明けてからの出来事

海岸沿いの道路を歩いていた女子中学生達が、砂浜に誰が打ち上げられているのを発見した

当時、倒れていたその女性は意識を失っており、手にはしっかりと封筒が握られていた

封筒に中身は入っておらず、差出人も不明で、ただ宛先に「平沢唯」と記されているだけである

彼女の正体を知る者は誰もいなかった
けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
3: 2010/10/05(火) 13:39:30.77 ID:PkFAniPz0
第一話

半年後……
私立桜が丘高校、軽音部の部室にて

澪「他に適任はいるんじゃないんですか?私には出来ないですよ!」

律「……」

氷川「僕も秋山さんと同じ考えです。しかも彼女はまだ高校生じゃないですか」

小沢「――でも私の集めたデータの諸々から導き出した結論としては、現時点であなたしか考えられないのよ、秋山さん」

ガチャ
唯「あ、澪ちゃんりっちゃん、先に来てたんだあ」

紬「あら?そちらの方は?」

澪「ああ、この人達は警視庁の未確認生命体対策班(S.A.U.L)の……」

小沢「小沢澄子よ、こっちは氷川誠くん」

氷川「突然お邪魔してすみません」

紬「いえお構いなく。私は琴吹紬と言います。そしてこちらは平沢唯ちゃん。

澪ちゃん、りっちゃんと同じく、ここの軽音部部員です。あ、今お茶淹れますね」

6: 2010/10/05(火) 13:44:51.58 ID:PkFAniPz0
唯「でも警視庁の人が何で澪ちゃんに?――ハッ!?まさか殺人を――」アワワワ

律「そうなんだよ。普段の血を見たがらなさの反動が、ああまさかあんな形で――」オヨヨ

澪「ひいっ……って!勝手に人を犯罪者にするな!」
ガツン

律「グエッ☆」

小沢「あははっ、面白いわねえ貴方達!もちろん違うわよ。実は秋山さんには、ある頼みがあってね」
スッ

唯「?……おおっカッコいい!小沢さん、この写真に写っているロボットみたいのは何なんですか!」

氷川「これは小沢さんが開発した、

対未確認生命体用・特殊強化装甲服、通称『G3-X』です。

皆さんは『未確認生命体』はご存知ですよね?」

紬「ええ新聞やテレビのニュースだけでしたら、数年前に何度か。人を襲う怪物ですよね」

7: 2010/10/05(火) 13:50:31.22 ID:PkFAniPz0
小沢「そうよ。まあ、事件は既に、未確認生命体第4号によって、全て解決しているんだけどね。

で、このG3-Xは、その4号の戦闘データを基に作ったパワードスーツなの」

紬「(あ、だからちょっと4号っぽい顔立ちなのね)」

小沢「だけどね、最近になってまた未確認によると思しき事件が増えてきたの」

律「そういえば今朝も怪氏事件のニュースが……」

氷川「そこで奴等に対抗する為に作られたのがG3-Xで、本来ならば、これの旧式にあたるG3の装着員の僕が着る予定だったのですが……」

小沢「この子、思いのほか不器用なのよ。かといってこれまで、他のどの候補者とも適合しなくってね……

そこで、G3-Xに合う性質の人間の情報を手当たり次第漁っていたら、丁度あなたに行き着いたのよ」

8: 2010/10/05(火) 13:58:08.25 ID:PkFAniPz0
澪「(どこでそんな情報を……)でもやっぱり戦うんですよね、それを着て。

何度も言いましたけど、私は喧嘩とか暴力とか……苦手ですよ、怖いじゃないですか、しかも得体の知れない化物を相手に!」

小沢「だから!それよ、その恐怖心!その恐怖心がG3-XのAI機能と非常に相性が良いのよ。

あなたの恐怖心のその裏にある、異常なまでの生存本能が、G3-Xの力を最大限に引き出せるってわけ」

唯「???何だか難しい事を言っているみたいだけど……要するに澪ちゃんがその服を着て、悪い化物と戦うって話なんだね?」

澪「~なあ律からも何か言ってやってくれよ?私がこういうの嫌いなのは一番知っているだろ?」

律「ええ?なーに、面白そうだしいいんじゃない?生身でやるわけじゃないし、もしかしたら戦う事で何か新しい歌詞が思いつくかも知れんぞ?」

澪「律ぅ……」

小沢「大丈夫よ。まずは訓練から始めるし。実戦の際はG3である氷川君にも援護をしてもらうつもりだから。

それに今回は特例中の特例だし、装着者としての保障は色々とつくし。いいわね?」

氷川「……すみません。小沢さん、一度スイッチが入ると梃子でも動かない方なんで」

澪「……はあ」

9: 2010/10/05(火) 14:07:34.93 ID:PkFAniPz0
…数十分後

律「澪~、話が続いているとこ悪いが、私達帰るぞ?夕飯の支度しないといけないし」

唯「うん、また聡君にどやされちゃうもんねぇ」

紬「でも作るのは、やっぱり唯ちゃんだけなんでしょ?」

律「あははは、唯さまお願いしますぅーなんちて」

氷川「?」

唯「じゃーねー」

律「また明日ー」
バタン

氷川「――つかぬことをお聞きしますが、平沢さんと田井中さんって同居されているんですか?」

紬「ええ。実は唯ちゃん、記憶喪失なんです。」

10: 2010/10/05(火) 14:17:19.85 ID:PkFAniPz0
氷川「!記憶喪失……ですか」

澪「はい。何でも半年前、浜で倒れていたところを、地元の学生に助けられたんだそうで。

『平沢唯』って名前も、その時唯が持っていた封筒に書かれていた名前から、そう呼んでいるだけであって……」

紬「担当していた医者の知り合いである、心理学者の田井中教授が唯ちゃんを預かる事になったんです。

学校もりっちゃんと同じとこに行けるよう、りっちゃんのお父さんが手配してくれて……」

氷川「そんな事があったんですか……」

澪「その割にはあいつ、のんびりしていて自分の状況を悲観していなくって。でも唯は明るくって前向きで、いい奴なんです」

小沢「ふふ、良い仲間を持ったものね、貴方達も平沢さんも」

12: 2010/10/05(火) 14:22:57.50 ID:PkFAniPz0
>>11放映当時はギルスが一番好きでしたが、DCDではオリジナルのスーツが…

氷川「それでは僕たちはこれでお邪魔します。秋山さん、先程も言いましたが、次の土曜日より一週間ほどの研修に入りますので、よろしくお願いしますね」

澪「あ、はい」
ガチャン

紬「大変な事になっちゃったね、澪ちゃん」

澪「ああ。でも、本当にそんな化物なんているとは思えないし、ましてや私が戦えるなんて……」ガクガク

紬「みんなも私も応援する。大丈夫、澪ちゃんなら出来るわ!」

13: 2010/10/05(火) 14:29:49.65 ID:PkFAniPz0
田井中家

聡「おかえり姉ちゃん、唯姉ぇ!なあ俺、腹減ったよォ~」

唯「ただいまあー聡君!ごめんねえ。ちょっと待ってて、その前に庭の野菜のチェックをしないとっ!」
タタタ…ガラガラ

聡「――唯姉が来てからウチの庭がすっかり家庭菜園になっちまったなぁ、姉ちゃん」

唯「~♪」

律「まあいいじゃん、料理も掃除も洗濯も、家事全般は全~部唯がやってくれるし。

まあ、時折出される創作料理のアイディアがかな~りアレだが……本当、あいつ何者なんだろーな?」

唯「うひひ、トマト、そろそろ食べごろですねぇ」ジュペロッ

14: 2010/10/05(火) 14:37:49.97 ID:PkFAniPz0
その頃、桜が丘とは別の高校にて

梓「――どうです?先生」ジャカジャン♪

顧問「うん。大分感覚が戻ってきたんじゃない?よくまあ、あの事故からここまで復帰できたものだ。

お前さんは音楽の神様かなんかに愛されているのかもな」

梓「……えへへ」

顧問「演奏会の本番は一週間後だが、あまり無理はするなよ?」

梓「はーい」

15: 2010/10/05(火) 14:44:13.90 ID:PkFAniPz0
それから一週間後、警視庁の管理する実験施設にて

小沢「では秋山さん、G3-Xのテストオペレーション、開始します。まずは一通り動いてみて」

澪「こうですか?」
ウィーン、ガション、ウィーンガション、ガシャガシャ

小沢「――よろしい。次は射撃よ。GM-01(自動小銃)、解除。ターゲット射出!構えなさい!」

澪「ひっ、何か飛んできた!」サッ
ドキュンドキュンドキュン、ガァンガァンガァン!!

小沢「うん。全弾命中。おまけに反応速度も悪くない。これなら今すぐにでも未確認、いや、アンノウンとも戦えるわね」

16: 2010/10/05(火) 14:50:43.42 ID:PkFAniPz0
澪「そのアンノウンって……未確認とはどう違うんですか」

氷川「ええ、奴等は見た目こそは未確認に近しいものですが、未確認は殺人をゲームの一種のように捉えていたのに対し……

アンノウンは一般に『超能力者』と思われる人間を狙って犯行に及ぶのです」

澪「超能力者……ですか」

小沢「これは氷川君の推測でね、私も最初は信じがたかったけど。

彼らの狙う対象は、生前何か不思議な力を発揮したり、身の回りで異常な現象が発生している人が多いのよ。

しかも、その力は血縁関係者全員が持っている可能性があってね……」

18: 2010/10/05(火) 14:55:44.63 ID:PkFAniPz0
澪「まあ、怪物という時点で常識の範疇を超えていましたし、今更ですけどね……」

氷川「彼らが何故、超能力者とその親族を標的とするのか、それは僕らにもわかってはいません。

しかしこれ以上、奴等の為に人々が傷つくのを見過ごすわけにも行きません。

そのための力が僕たちG3ユニットなんです。秋山さん、これからもよろしくお願いしますね」

澪「はあ……」

ピーッ!
『警視庁より各班へ、アンノウン出現の報告―』
澪「!!」

小沢「氷川君、秋山さん、Gトレーラーに乗って!これよりG3及びG3-X出動よ!」

氷川「はい!」ダダッ
澪「え、いきなり!?!」
ガションガション……

19: 2010/10/05(火) 15:04:24.07 ID:PkFAniPz0
その頃、梓の学校にて

梓「本日は本当にありがとうございました。では最後に、天国の父と母に送る―うっ……!?」
―ギャアアーン!!!―

ガクッ、バタリ

「中野さん?」「梓!」

顧問「おい、どうした梓ー!」

観客「きゃああああっ!!」「救急車を!」「……!」

―ギャアアーン!!!―
梓(何これ……頭が……締め付けられるような感覚……!!)

20: 2010/10/05(火) 15:11:14.45 ID:PkFAniPz0
街中の廃工場
ジャガーロード「グルゥアアア!」

ダン!ダーン!!
警官「応援はまだか!?」
ジャガーロード「ギャギャ!!」
スバッ!ドカッ!
警官「ぎゃああ!!」
ドサドサリ!

ウィーンウィーン、キキーッ!
(G3-X)澪「わ!!あ、あれが!?」

G3氷川「そう、あれがアンノウンです。そして、あの姿……またあの個体か!」
澪「あの個体?」

G3「実は以前にもあれと同じアンノウンが出現しましてね……それと同じであれば、

奴は狙った人間を高い木の洞などに無理矢理ねじ込むことでそのまま……」

澪「ひっ!あまり詳しくそういうの説明しないでくださいよ!!」

G3「すみません。とにかく銃を構えて!こっちに気付きました!!」

ジャガー「ギャオッ!!」
ダダダダッ

澪「わー、ちょっとタイム!!」アセアセ……

21: 2010/10/05(火) 15:18:37.31 ID:PkFAniPz0
G3「秋山さん落ち着いて!」
サッ、ドキュンドキュン

ビシッ、ビシッ!
ジャガーA「――!?ギャギャッ!」

澪「ああっ氷川さん、後ろ!!」

ジャガーB「ギャオーッ!!」
ガバッ!バシッ!

G3「ぐあっ!!仲間がいたのかっ!!」

澪「氷川さんっ!!」

小沢『氷川君、ガードチェイサー(バイク)まで退避、GS-03デストロイヤー(チェーンソー)の使用を許可するわ!

秋山さんはその距離からGM-01で氷川君を援護!』

澪「はっ、はい!」
サッ、ドキュンドキュン!!ビシッ!ビシッ!

ジャガーA&B「ギャギャアッ!」
タジタジ……

23: 2010/10/05(火) 15:23:52.59 ID:PkFAniPz0
G3「助かります!そして、これでよしと……」
ガチャン!

G3「GS-03起動!!」
チュイイイイ…!

G3「くらええっ!!」
チュイイイイン!!!

ジャガーAB「ハッ!」
ササッ!!
ザン!!

ジャガーA「ギャハハッ!!」
サササッ

G3「惜しい!外したか」

澪「うわわ……なんて威力!鉄の柱が真っ二つだ……」

24: 2010/10/05(火) 15:30:36.29 ID:PkFAniPz0
ジャガーB「ギャウ!!」
バキッ!!

G3「くそっ!!」

澪「こっちだ、化物ぉ!」
ドキュンドキュン、ビッ!ビシリ!!

ジャガーB「グエッ!!」
ヨロヨロ……

小沢『ナイスショットよ秋山さん。さあ!奴が怯んでいる隙に、あなたのガードチェイサーまで走って!

後部に積んだ例の秘密兵器、GX-05ケルベロス(バルカン砲)を今こそ使うのよ!』

澪「はい……」
ガシャン!

澪「ええと…コード1,2,3…(電子音)『コードガチガイマス』ああ間違えた!!えっとぉ、『1,3、2』!これだ!」
ガシャーン!!ジャキーン!!

澪「で、でかい!!研修では使用法の解説だけで一切使わなかったけど……ってムギじゃあるまいし、こんなの私が持てるの?!」

25: 2010/10/05(火) 15:36:21.35 ID:PkFAniPz0
澪「おっ、軽々と……さすがG3-Xってとこか」
小沢『感心してないでさっさと使うっ!!』

ジャガーB「ギャオ!」シュッ!!バキーン!!カララン……
G3「(GS-03が)折れたァ!?」

澪「こうかな……よっし!ひっ氷川さん、早く離れてくださいっ!!」
ジャッキーン!!!

澪「い、いっけえええ!!」
ウィーン、ドガガガガガガガガガッ!!!!
ビシシシシシ!!

ジャガーB「ギャアアア!!」
キュウウウウウ……ズドォオオオン!!

澪「ひっ!!爆発したっ!?氷川さん、これって倒した事に――」

ジャガーA「ギャアーン!!」
ガバッ!!ガシッ!!

澪「わああーっ!!」
G3「秋山さん!」

27: 2010/10/05(火) 15:41:13.99 ID:PkFAniPz0
ギリギリ……メキメキ……ミシミシ
澪「苦しい……ううう、こ、殺される!」

G3「くっ!!彼女をはなせっ!!こいつっ!!」
ガシッ!バキッ!ドカ!!

ジャガーA「ギャギャッ!!」
ガン!

G3「ぐふっ……」
ズザザザーッ

キュウーン……警告、警告、G3システム、バッテリー大幅低下……
ジャガーA「フン」
パッ

澪「わっ!」ドサッ!!

クルリ、ザッ、ザッ……
ジャガーA「ギャギャ」

小沢『氷川君!?氷川君、応答して!今すぐシステムを離脱なさい!!』
G3「……」

澪「このままじゃ氷川さんが……でも私じゃ何も……誰か!」

28: 2010/10/05(火) 15:48:07.32 ID:PkFAniPz0
ザッ、ザッ……(別の足音)
ジャガーA「!?」
ピタッ!!キョロキョロ……

澪「!?」

ザッ、ザッ……
???「……」

澪「あいつ……新手のアンノウンか?――あ、あ、もうおしまいだ……」

ジャガー「!!!……『アギト』ォ……!?」

29: 2010/10/05(火) 15:53:27.78 ID:PkFAniPz0
♪動きだしてーるー未来を止められなーい…
アギト「ハッ!!」
ガシッ、バキッ!ドカッ!!

ジャガー「ギャギャ!?」

澪「えっ……?」

G3「う~ん、僕は……何を」ムクッ

澪「氷川さん!良かったあ……でもアイツは何者?アンノウンみたいだけど、よく見ると……あいつとは違う感じだ。

そしてアンノウン相手に互角の戦い、いやそれ以上に……!!」

♪…熱くなーるーからだーこころー

ビシッ!!ドカッ!!
ジャガー「グオオオオ!!」
ズザアアア

アギト「ハアアアアアア!!!」
ギュウウウウウン!!!
トンッ!!

30: 2010/10/05(火) 15:58:41.81 ID:PkFAniPz0
♪…BelieveYourself、明日へーぇえええええええ"え"え"え"え"ッ!!

アギト「トオオオオッ!!」
バシッ!

ジャガー「ギャアアアアアッ」
キュウウウウウ……ズドォオオオン!!

G3「誰なんだあいつ一体……アンノウンを蹴りの一撃で倒すとは!!」

アギト「……」
タタタッ!!

澪「あっ危ない氷川さん」

G3「ぐわっ!!何をするっ!!」

バキッ!!ドカッ!!
アギト「ハッ!!トリャッ!!」

澪「そんな……やめてくれーっ!!!」

つづく

31: 2010/10/05(火) 16:06:34.37 ID:PkFAniPz0
第二話

これまでのあらすじ

私立桜が丘高校の女子高校生秋山澪はその恐怖心を買われ
警視庁未確認生命体対策班S.A.U.LのG3ユニットに半ば強制的に加入させられる
彼女は特殊強化装甲服『G3-X』を身に纏い、人間の命を脅かす謎の敵『アンノウン』と戦うのだ

そして今回アンノウンが二体出現。一体は倒したものの、残り一体によって危機に陥る氷川誠と秋山澪
そのアンノウンをどこからともなく現れ撃破した謎の存在、アンノウンは『アギト』と呼んだが……

しかしアギトは突如として手負いのG3(氷川)に襲い掛かってきた

G3「ぐわっ!!」

アギト「ハッ!タァ!」
バキッ!!ドカッ!!

澪「やめてくれーっ!!!」

アギト「……!(小声で)澪ちゃん?!」
ピタリ…

32: 2010/10/05(火) 16:11:50.55 ID:PkFAniPz0
G3「いまだっ…」
バキッ!

アギト「くっ……」ササッ!
G3「まてっ……逃がしたか」

澪「一体何が……」

小沢『二人とも大丈夫?トレーラーが近くまで来てるから、そこで待ってなさい……』

澪「……」

34: 2010/10/05(火) 16:16:40.07 ID:PkFAniPz0
田井中家の近くにて

律「唯どこに行ったんだろうなー」

聡「あ、あれ唯姉じゃねぇか?」

律「あー本当だ!おい唯ー!」

唯「?ああ、りっちゃんに、聡君」

聡「おめーどこに行ってたんだよ?買出し行ってたんじゃねーの?」

唯「買出し?ああ、買出しね!?これから実は……」

律「ほれ財布。いきなり飛びだすんだから、忘れるんだよ」

唯「あっ、そうだった……ね?!あはは~ごめ~んわたしってば焦ってぇ」

聡「しゃーねーな。なあ今日も親父は大学泊り込みだし、せっかくだから、皆で久々にファミレス行こーぜ?」

唯「そーだね、そーしよ」

梓「……家族か……」

唯「?」

律「どーした唯?」

唯(今すれ違った子は?……見覚えは無いけど、何かが…)

35: 2010/10/05(火) 16:22:03.44 ID:PkFAniPz0
十数分前

顧問『梓!お前どこにいるんだ?家なのか?それとも……』

梓「公衆電話からですよ。携帯電話も処分しました。家にももう戻りません」

顧問『!?一体何を考えている!皆も心配してるんだぞ?それを――』

梓「ジャズ研も辞めます。伝えて置いてください、部長にも、皆にも……」
ガチャン、ツー、ツー

梓「……父の遺したメモ。ここに書かれている名前の人達なら、きっと何か知っているはず」

36: 2010/10/05(火) 16:27:49.71 ID:PkFAniPz0
その日の夕方
Gトレーラー内にて

小沢「アギト?」

澪「はい。奴等は……アンノウンはその存在を『アギト』と呼んでいました」

氷川「僕も秋山さんも外部カメラを損傷して映像を記録できてないので、その姿の詳細については何とも言えませんけど」

小沢「そう。でもアンノウンを倒したのはいいけど、氷川君にまで襲い掛かるなんて。アギトは何が目的なのかしら?」

澪「……」

小沢「ああ、秋山さん。あなたはよくやってくれたわ。連中のうち一体はあなたのお手柄よ。

初陣にしては上出来――ま、中の上といったとこかしら。さすが私が見込んだ子ね、今夜は皆で焼肉にでも行きましょうか?」

澪「……」

37: 2010/10/05(火) 16:33:04.33 ID:PkFAniPz0
氷川「怖かったですか?今回の件もそうですが、僕としてもこれ以上、一般人であるあなたを巻き込むのは……」

澪「はい……やっぱりこの役割、私には辛いです。でも、それ以上にあのアギトって存在が気になって。

ああいう形になったとは言え、一度は助けられた事ですし

(それに初めて見たのに、あの声といい雰囲気といい、どこかで会った様な気もするし……)」

氷川「そうですか……」

小沢「なら話は早いわ。恐らく今後もアギトは現れる可能性はある。

私達の味方か否かは、未だ判断しかねる現状だけどね。

でも、納得の行くまでやりなさい。それまで私達も全力でバックアップするわ」

澪「はい……お願いします(って言っちゃったけど、やっぱり化物との戦いは……)!」

39: 2010/10/05(火) 16:39:37.92 ID:PkFAniPz0
数日後

澪「ふあああ~」
唯「ありゃ、これはすごい欠伸。澪ちゃん相当眠そうだねえ。実は私も昨日は夜遅かったから寝不足で」

澪「?ああ、私も夜中に、アンノウンが現れたって連絡を受けて出動したんだ。

まあ、駆けつけた時には既に逃げた後みたいだったし、

けが人は出たけど、軽症だったそうだし、結局誰も氏ななかったから良かったけどね」

唯「ふふ、そっか。にしてもムギちゃん遅いねぇ」
澪「そうだな、どうしたんだろう」

ガチャリ
澪「あ、律か。それがムギはまだ――」
律「ムギが……連れてかれた!!」

澪「」
唯「どゆこと?!」

律「さっき警察の人が来て……」

40: 2010/10/05(火) 16:44:08.51 ID:PkFAniPz0
取調室

紬「えーと、本当に何も知らないんですけど」

北條「しかし当時、現場にあなたがいたという目撃情報が……」

紬「――確かにあの日の夜、彼女と会う約束はしていました。

彼女は私の友人である、平沢唯ちゃんについて話したい事があると私に言ってきたので。

そこで約束の場所に、彼女の指定した時間通りに行ったのですけど、結局その時は彼女に会えず仕舞いで……

あ、ずっと喋っているのもなんですし、お茶も頂いてますし、一休みしてお菓子食べません?

本当は今日の部活動で出そうと思っていたのですけど……ほら、ロールケーキです!美味しそうでしょ?」

北條「!!!(巻…物…だと?!)……いえ遠慮しておきます」

41: 2010/10/05(火) 16:49:39.58 ID:PkFAniPz0
取調室の外にて、中の様子を覗きながら
氷川「(珍しいな。あのエリートの北條さんが、ちょっと怯えた様子だ……何があったんだろうか?)
被害者は同じ高校に通う二年生の瀧エリさん。遺体は今朝発見されたそうで、首には縄によると思しき絞め跡が……」

澪「何かの間違いだよ!ムギに限ってそんな」
唯「そうだよ!ムギちゃんが殺人なんてするわけない!」

律「そうだ!澪が戦っているって言うアンノウンの仕業じゃ」
氷川「アンノウンは大抵人知を超えたやり方で犯行に出ます。しかし今回は明らかに人の手によるもので……」

律「そんなぁ……刑事さん!!!」

氷川「勿論、今のところは現場の近くで彼女を見た、というぐらいの情報しかありませんので。

そしてさっき聞いた話では、ほぼ同じ時刻に琴吹さんの他にもう一人、
特徴的な髪の色の女性が目撃されたそうで、警察ではその人物も追っているところです。

加えて被害者の母親も昨日、アンノウンの襲撃を受けていますから、
田井中さんのご指摘するように、この事件が奴等と関係無いとも言い切れません。
悪いようにはしません、今はこらえてください……」

澪「……ムギ……」

42: 2010/10/05(火) 16:54:24.97 ID:PkFAniPz0
瀧家の前にて、葬儀の準備の最中のようである
エリの母親「ごめんなさい。そういうことで今日はもう、お引取り願えないかしら。

私の口からあの子について話せるものは、もう何もないので……」

梓「いいえ。大変な時に、申し訳ございませんでした」

梓(これでこのメモに書かれている名前のうち、

半分近くの人がこの半年のうちに氏んでいる事になる。しかも原因不明。

ただ、この子の場合は同じ学校の同級生によって殺されたのだと聞いたけど……)

エリの母親「ああ、ただ……」

梓「?」

43: 2010/10/05(火) 16:59:39.45 ID:PkFAniPz0
エリ母「あの子、半年前を境に夜中、時々うなされる様に『船が……船が』とだけ言っていたかしら……」

梓「船……?」

エリ母「ええ。思えば半年前、あの子は学校の友達と一緒に旅行に出てね、

出掛け先で乗ったフェリーが海難事故にあったんだけど……それがトラウマになったのかしら。

結局その事については、ほとんど教えてくれなかったから、私もわからない……」

警官「奥さん、そろそろ中へ……危険ですので」

梓「え、何かあったのですか?」

警官「彼女は昨日晩に、アンノウンと呼ばれる怪物から襲撃を受けていてね……

その時はかすり傷程度だったし、G3ユニットが駆けつける前に退散したから、良かったのだけど。

また襲われないとも限らないからね」

梓「アン……ノウン……」

45: 2010/10/05(火) 17:05:47.98 ID:PkFAniPz0
警察からの帰り道
律「ムギさあ、例えばお父さんの力で何とかならないのか?」

澪「……さすがにそれは」

唯「でも大丈夫かな……」

―ギャアアーン!!!―
唯「!?」

澪「唯?」
律「どうした?固まっちゃって……」

唯「ごめ~ん、りっちゃん、澪ちゃん、私、用事思い出しちゃった!先に帰っていて!!」
タタタ!

律「お、おいおい唯!?晩飯はどうするんだよ」

♪タ・ト・バ♪タトバ タットッバ♪
澪「あ、電話……はい、秋山で――」
小沢『秋山さん、氷川君、聞こえる?アンノウン出現!G3、及びG3-X出撃!』

澪「わっ、と、突然すぎるよ!!」タタッ

律「澪まで……とにかく私は唯を追うか。あいつ最近放浪癖があるみたいだし~」

46: 2010/10/05(火) 17:16:53.89 ID:PkFAniPz0
瀧家に近いところ、噴水のある広場
ズタズタに引き裂かれた警官達が所々に横たわっている

エリ母「ああああ……来ないで、来ないで!!」

スコーピオンロード「シシシ」

ズキッズキッ
エリ母「……!?」
エリ母「……ぐふっ(こっちにまだ何も触っ…ていな…いのに?!!)」ドサリ……
スコーピオンロード「ギシャシャシャ!!!」

タタタッ……ザッ!!
唯「……!」
スコーピオン「ギ?」

律「あ、あんなとこに……おい!ゆ…い?」

キイイイン!!
律「何だ……あのベルトみたいなものは……!?」
ヴーンヴーンヴーン…

唯「ハアア~ッ――変身ッ!!!」
ヴォヴォヴォヴォーン!!!
カキーン!

アギト「ハッ」
スコーピオン「ア…ギトォ!」

律(木陰より)「(唯が……金色の変なのに変わった!?)」

48: 2010/10/05(火) 17:21:36.71 ID:PkFAniPz0
♪動きー出してーるー未来を止められなーい…

アギト「たっ!!トウ!!」

♪その先のPossibility、おっれたぁちだーけのぉ…

律「唯が化物と戦っている……もう訳わかんないよ……」

スコーピオン「ギャアアッ!!」

アギト「タッ!!ハアア!!」
カチ!ギュイーン!!
シュウウウウーン!
カキーン!!

律「今度は唯?の色が変わった!!」

アギトS(ストーム)「フン!ハアッ!!」

49: 2010/10/05(火) 17:26:58.36 ID:PkFAniPz0
♪…熱くなーるーからだーこころー
シュッ!ビシッ!!シュバッ!!
スコーピオン「グエッ!!」

アギト「フウッ」
カチ!ギュイーン!!
シュルルルルルー!
カキーン!

アギトF(フレイム)「ターッ!!」

スコーピオン「グエッ!!」
ドカッ…ドゴン!!ズザザザ……

律「今度は赤色だ」

アギトF「フッ!」
カチ!ギュイーン!

律「また金色になった!!」

アギト「ハアアアアア~」
ギュウウウウウン!!!

アギト「トウッ」
タンッ!!

律「跳んだ!!」
アギト「タアアアアーッ!!」

50: 2010/10/05(火) 17:32:03.43 ID:PkFAniPz0
♪…BelieveYourself、明日ェ――……
スコーピオン「ギシャシャ!」
カキーン!!!?
アギト「!?」

律「防がれた!!あの盾みたいなのは……!?」
スコーピオン「ギュバババ!!」
ガンッ

アギト「うわっ……」
ボコッ
スコーピオン「ギャ!」
シュ!!

ブスリ!!!
アギト「!!!!ぐあああ~ッ!!!」

律「ゆ、唯ィ―!!」

キュウウンッ
唯「え?……そこにいるのは……り、りっちゃ……」
ドサリ

律「おい!唯ッ!!」
タタッ!!

51: 2010/10/05(火) 17:37:15.47 ID:PkFAniPz0
キキーッ!!
スコーピオン「……ギャギャ!?」

G3「この人は……今朝の被害者の母親!?それじゃ、あいつは……昨日出たという奴か?」
澪「また出たあ~!しかも今度は蠍……かな!気持ち悪い……」

小沢『目の前の敵に集中して、二人とも!GM-01解除!』

G3「ハッ!」
澪「くっ、くらええ!!」
ドキュンドキュンドキューン!!
カカカ!!

スコーピオン「?ケケッ」

G3「なんだ……まるで効いていない!」

澪「(GM-01が効いている印象が今まであんまりない気がするけどな……)
……ってあそこにいるのは唯……それに律まで!?

律「唯!唯!起きてくれよ!なあ!氏ぬな!おいい!!」ユサユサ

唯「……」ユサユサ

52: 2010/10/05(火) 17:42:05.31 ID:PkFAniPz0
澪「そんな、唯まで……!!~~~ッッッ!!許さない!こいつぅッ!!」
ドキュンドキュンドキューン!!
カカカ!!

G3「秋山さん、落ち着いて下さい!!」

澪「でも、あいつはっ、あいつは唯を!!!」
スコーピオン「ギャハハーッ!!」
ドガバキッ!!ガスッ!!ベキベキ!!

G3、澪「ぐあああっ!!つ、強い」
バチバチ……ジジジ
小沢『二人とも、シ…テムに強いダメージ…!こ…はそ…二人をつれて一…逃げて…ザザ…』

澪「こんな事……私が強ければ……唯や律を守れたのに……私は……」ガクガク……

スタスタ……
???「あなたね。アンノウンって化物は――」

澪「?」

スコーピオン「ギグ!?」
クルッ

54: 2010/10/05(火) 17:46:26.40 ID:PkFAniPz0
スタ…ヒタ…
梓「……」

澪「!?――何やっているのあなた!早く逃げて!でないと……!」
スッ!

梓「……フウウウッ……変身!」
ギュウアア……メキョメキョ……

ギルス「ヴルアアアア~~~ッ!!!」

G3「秋山さん、あの緑色の怪物は……もしやあれもアギト……?」

澪「いや、アギトではありません!アギトと違って禍々しい姿ですよ……それこそ、まるでアンノウンみたいな!
(何なんだあの子?今の女の子が……変わったというのか!?)」

57: 2010/10/05(火) 17:51:30.20 ID:PkFAniPz0
ギルス「ガウ!!ガァアアア!!!」
ザン!シュン!!グシャリ!!

スコーピオン「ギャギャ!!グルウウ!!」
ザン!ザン!ザシュ!!!

G3「凄い……あんなに強かったアンノウンと互角以上に渡り合っている!」

澪「……でもあいつの戦い方はアギトとは違いますよ……見ていられないくらい荒々しくって暴力的。怖い……」ガタガタ

ギルス「ガアアアアアッ!」
シャキーン

ギルス「ヴルアアアア!!」
タッ!ザクリ!!!

ギルス「!」

澪「避けた!なんて反応速度なんだ!」

スコーピオン「ギギッ!!」
サササ…

ギルス「ちっ……」
メキョメキョ……

……メキョッ!
梓「……逃がしたか」

58: 2010/10/05(火) 17:56:32.37 ID:PkFAniPz0

G3「ま、待ってくれ!!君は一体」

梓「?……フン」
タタッ!

G3「ちょ、ちょっと!!!」

澪「氷川さん!それより唯が!!顔が真っ青で!!」

律「澪か!唯を助けてよ、ねえ!」

G3「!平沢さん!?とにかく救急車を!」

唯「…う……ううっ……」ガクガクブルブル……

つづく

59: 2010/10/05(火) 18:01:19.05 ID:PkFAniPz0
第三話
これまでのあらすじ
軽音部の琴吹紬が同級生頃しの容疑で身柄を確保される

殺された同級生の母親はアンノウンの襲撃を受け絶命、誰よりも早く現場に駆けつけた唯がアギトに変身する姿を律は目撃してしまう
多彩なフォームチェンジでアンノウンと戦うも、その強固な盾に必殺技を封じられた上、敵の毒針を喰らってしまった唯

遅れて到着した氷川と澪も参戦するが、やはりアンノウン相手には手も足も出ない
その絶体絶命のピンチに現れたのは、殺害された瀧エリに会おうとしていた中野梓であった

病院

医者「今の所は何ともありませんねぇ。顔色も搬送直後よりも大分良くなっていますし」

律「良かったぁ~良かったなあ唯!唯!唯゛ぃ゛い゛い゛」ギュウウ

唯「り゛っぢゃん゛ぐる゛じい゛よ゛ォ」ウグググ……サアア~

61: 2010/10/05(火) 18:06:09.45 ID:PkFAniPz0
医者「――ただ一方、殺された女性に関してですが、
氏因がその時のものではなく、前日の襲撃の際に受けた傷だったと判明しました」

氷川「……どういう事です?」

医者「見てください。先程の解剖で被害者の心臓から取り出したものです」コト

氷川「こんな目に見て分かるほどの大きさの針が体内……、それも心臓の中に?」

医者「昨日の襲撃後の検査では、うっかり見落とすほど小さく
……恐らく二度目の出現までに体内で成長するようなものなのでしょう」

氷川「はあ。しかし、これが平沢さんと何の関係が」

井坂「……これと同じものが今、彼女の内にも入っているんですよねえ」

氷川「何だって?!」
律「嘘でしょ……」

62: 2010/10/05(火) 18:11:02.95 ID:PkFAniPz0
医者「怪物の使う針ですから、下手に摘出するのは危険です。
そして、1回目の出現から二回目の出現の期間を考えると
……はっきり言って、お嬢さんの命は明日まで持つか持たぬか」

唯「はは、そっかぁ」
律「」
氷川「平沢さん!?」

唯「大丈夫だよたぶん!
そのアンノウンって化物によるものなら……そいつを倒せば何とかなるってことでしょ?」

氷川「……え、ええ……(普通、そんな根拠は無いと思うのですけどね……)」

律「刑事さん!ムギの事も心配だけど、唯が氏ぬのだって嫌だよ!お願いだ!!頼むからさあ!!」

氷川「……分かりました。
被害者の親族はあと一人……殺された女性には妹がいて、現在護衛をつけさせていますが……
恐らく奴はまた現れるでしょう。その時がやつを叩くチャンスです」

63: 2010/10/05(火) 18:16:07.43 ID:PkFAniPz0
唯「……ところで澪ちゃんは?」
氷川「ああ……そちらの部屋で寝ています。激しい戦いに加え、お二人のことを相当気にされていたようですし……」

律「そっかぁ……澪……」シュン……
唯「ご、ごめんねえ。皆、心配かけさせちゃって……」ウルッ

氷川「平沢さんが気に病むことはありません。
正直に言うと……あのアギトのような力が僕にあればと思うほど、今の自分は無力で……」

律「……」
唯「え、ええと、お邪魔しましたぁ」
ガララ

氷川「秋山さん、二人とも行きましたけど」
澪「すみません……私の為に」

氷川「謝るのはこっちのほうです。あなただけでなく、お友達まで巻き込んでしまったのは――」

澪「いいえ。力が無かったのは私の方です。
アンノウンと戦う事はやはり嫌いですけど……友達すら守れない今の自分のままでいるのはもっと嫌です!
氷川さん、今度こそあのアンノウンを倒しましょう!サポートお願いします!」

氷川「はい(この子も随分と逞しくなったもんだ。さすが小沢さんが選んだ人だけあるなぁ)……」

64: 2010/10/05(火) 18:21:17.45 ID:PkFAniPz0
廃工場
梓「いやあッ?!……何これ何なの……私の手が……ボロボロにッ……?!
それだけじゃあない……あの苦しみが以前に増して強くなっている……あの力を使ったからっていうの?
ああっ、このままじゃ何の手掛りもつかめずに……」

梓「うっ」
ドサリ……

……スタスタ
ピンクの髪の少女「珍しいわね、『ギルス』だなんて。『アギト化』促進の光を浴びていないはずの人間でも、自然発生的にギルスになるのね……」

ズルズル……ドサリ
少女「今はここに隠れて傷を癒しなさい。あなたは特別よ。生かしておいたほうが今後の判断の際、参考になるし」

少女「そして……このサイレン音は…予想より早く来てくれたのね」

警察「警察です。そこのお嬢さん、ちょっと署まで来て頂きましょうか」

少女「……」

警察「そう、良い子だ……連れて行け!!」

67: 2010/10/05(火) 18:26:12.95 ID:PkFAniPz0
田井中家の菜園にて
唯「―No turn No change 士の前に立つ限り~♪」ジャジャア~(庭の水遣り)
聡「…」
律「…」
唯「―No変身、仮面ライダークウキ~♪」ススッ(カブの葉のチェック)

律「な、なあ唯ぃ……その……」
唯「なあにりっちゃん?」
聡「ゆっ唯姉、今日さ、俺が飯作るけどどう?」オロオロ

唯「いや別にいいよ~もう今晩の献立は頭の中。

その名も唯製スペシャルホウレン草のフルコース!
ホウレン草のサラダでしょホウレン草のスープ、そしてデザートには
なんとホウレン草フレーバーのアイス……」ペラペラ

律「……その前に唯、買い物行こうか」
唯「?……うん、いいよりっちゃん」

68: 2010/10/05(火) 18:31:25.17 ID:PkFAniPz0
警察署

氷川「見つかった?真犯人がですか?では琴吹さんはもう……」
北條「ええ。先程御家の方に。しかし彼女には申し訳ない事を……うぷっ」ガクガク

氷川「北條さん?」
北條「いえ、ちょっとロールケーキを食べ過ぎて……いえ何でも……

ただ問題は、彼女、自ら名乗った以外は特に何も身元を示すものが無く、
しかも犯行の自供と凶器の提出を除けば、誰とも殆ど喋らない状態で……」

氷川「――精神鑑定が必要ってことで既に警察の病院に収容されているのですか……
でもまあ、田井中さん達にいい報告が出来そうで何よりです。

あとは今日中にまた例のアンノウンが見つかれば……」

警察病院にて

短いポニテの女性「面会をしに…」
受付「はあ…ではこちらにお名前と電話番号を―」

女性「……」
サラサラ……『平沢 唯』
女性「!」
女性「……」
クシャクシャポイッ、サラサラ…『平沢 憂』

受付「はい、ではこちらへ……」
カツカツ……

69: 2010/10/05(火) 18:36:14.88 ID:PkFAniPz0
病室『315 三浦 茜』
ピンクの髪の少女「こんにちわ、お久しぶりねえ」ニコニコ

憂「どうして、あなたがこんな所に……自ら望んで?」
茜「――耐えられなかったのよ。自分で頃す事に」

憂「だからといって、その代わりにまた自分の使徒に殺させるの?」
茜「それは単に、この手で直接わが子を頃すのが忍びないだけなの。かといって、このまま彼らの中にある『アギト』の力を放っておくわけにもいかない」

憂「その貴方の使徒が先程手にかけた者の一人、あの子は今の所まだ生きているけど……」

茜「――平沢……唯だっけ?言っておくけど、あれもアギトよ。
しかも彼女の場合はもう完全にアギトとして覚醒している。危険だわ。
現にこれまで、あの子のせいで『アギト予備軍』の殲滅が滞るばかりか、私の使徒まで失われているのよ」

71: 2010/10/05(火) 18:40:49.18 ID:PkFAniPz0
買い物の帰り道
唯「うう……重いなぁ」
律「ギー太まで持ってくるからだよ?なんで買い物にわざわざ……」

唯「最近皆色々あったし、一人でいる時も、ほとんど弾いてなかったからね。
だからその分、今はなるべく一緒にいたいなあって」

律「唯お前……」ピタリ
唯「や、やだなありっちゃん!
化物は氷川さんと澪ちゃんが今日中に何とかしてくれるってば!だから心配な――」

律「――そうじゃないよ唯。知っているだろ?私昨日見たんだぞ。
唯が怪物や澪から『アギト』って呼ばれている奴に変身して戦ってたのを。

……お前がアギトだったなんて。今まで、たまに家から居なくなっていたのは、
ああいう事をやっていたからなのか?」
唯「……」

73: 2010/10/05(火) 18:45:19.60 ID:PkFAniPz0
律「あの後、訳わかんない事が沢山あったから、
この事はまだ刑事さんや澪にも、聡にだって言ってないけど……私はどうしたらいいか分かんなくて!」

唯「――今まで黙っていて御免ね。りっちゃんの家に来てからこの数ヶ月、時どき、頭に変な痛みが走るの。

それは、とても不快な気分で。そして、その時だけ、どこかで悪い奴が動いてる気がして。

気付いたらあの時と同じようにどこかに行って、悪い奴と戦っていたの!あれがアンノウンだとは知らなかったけどね」

律「……唯はアンノウンが怖くないのか?」

唯「うん、それほどね。それに強いて言うなら、一番怖いのはこの力そのものが何なのか、分からないこと。

きっと私が記憶を失う前に何かあったんだと思うけど、この力のために、もっと怖い出来事があったんじゃって……」

律「……そっか。唯、じゃあ最後にひとつ聞くよ。やっぱりこれからも戦うんだな?」

唯「うん。でないとエリちゃんやエリちゃんのおばさんみたいに、悲しむ人が増えてくから……そうならないよう私、戦いたい」

律「……」

74: 2010/10/05(火) 18:50:16.28 ID:PkFAniPz0
―ギャアアーン!!!―
唯「あっ!」
律「唯?」

唯「りっちゃんごめん買い物袋全部お願い!」
ドカドカズシズシッ
律「うえええっ!?って…行くのか?」

唯「晩御飯までには絶対戻る!絶対ね!約束する!」

律「そーか、よし行って来い!」

唯「ありがとねーっ!」タタ!!

律「無理すんなよー!って、どうしようこの荷物」

ピリリリ
律「あ、電話って……ムギ!?どうしたんだ……うんうん…そうかァ!」

75: 2010/10/05(火) 18:55:04.40 ID:PkFAniPz0
コンテナが沢山ある埠頭

ダン、ダアン!!

スコーピオンロード「グギャギャ!!」

キキーッ!!
警官「!!G3,G3-X現場到着、総員退避せよ!」

G3「秋山さん、行きましょう!」チャキッ

澪「はいっ!あいつを倒せばきっと唯は助かる!!」
スチャッ!

スコーピオン「ギギギ!!」

77: 2010/10/05(火) 19:00:04.47 ID:PkFAniPz0
その頃、病院
茜「今日に至るまで人は変わったのね。貧弱とはいえ、
ああいう風に、我が使徒に歯向かおうとする力と心を得つつある。
――でも、それもアギトであると、そうでないと違いの前では、全く大差の無い事だわ。

人はね、人のままでいればいいのよ……」

憂「このまま彼女を見頃しにする気なの?今すぐ止めさせてよ!!」

茜「ダメよ。あなたが彼女を救いたいのは、単に彼女があなたにとって特別な人だからでしょ」

憂「~~ッ!……そ、そんなんじゃない、あの子はアギトになる前から人を惹きつける力があった!
だから彼女はあなたがアギトを考えるにあたっての、貴重なサンプルになるわ!」

茜「本気で言っているの?姉妹にしてはドライな言い方するのね」クスクス

憂「……」ムッ
茜「……まあいいわ。そのために、我が使徒をまた一人犠牲としなければならないのは、苦しいのだけど。
――かく言う私も一人、情けと興味本位で見逃しているからね……ここはひとつ、助け舟でもだしましょうか」
スッ……ギュウウウン!!

78: 2010/10/05(火) 19:05:23.33 ID:PkFAniPz0
アンノウンのいる現場より数キロ離れたところ
唯「えへぁ~!ギー太背負っているのもあるけど、あそこまで走るのは疲れる……!

この距離だと、きっと自転車使ったって相当掛かるだろうし……
今後の為にも、やっぱりバイクの免許取ったほうがいいかなあ~」

ギュウウウン!!!

唯「えっ!?何?どしたのギー太!?」
ガシャガシャガシャーン!!!ヴォーーーン!!

唯「ギー太が変身しちゃった?!」

ギー太トルネイダー(スライダーモード)「ギュオオオ!!」

唯「う~んと、これに乗れって事かな……よし!」
シュタン!

ギュオオオオ!!
唯「うわッすごいスピードォ~!!」

79: 2010/10/05(火) 19:10:03.26 ID:PkFAniPz0
♪動きー出してーるー未来を止められなーい…

澪「氷川さん!そっちです!」

G3「ええ!!」
ドキュキュッ!!
カカ!!

スコーピオン「ギギギ!!」

♪その先のPossibility、おっれたーちだーけのぉ…
ドキュキュッ!!
カカカ!!
澪「くっ、……普通に直撃しても、あまり効かないなんて」

小沢『なら氷川君、GS-03は?もう既にロックを解除しているはずなのに』

G3「さっき折られました」

80: 2010/10/05(火) 19:15:43.27 ID:PkFAniPz0
♪だーれのたーめでーなぁーくぅー
ギュオオオオ!!
澪「この音は?」

スコーピオン「ギャア!?」

―ギュオオオオ!!―

♪挑むことーおっそぉれなぁ~いー

キイイイン!
ヴーンヴーンヴーン……
唯「ハアアア~ッ――変身ッ!!」

ヴォヴォヴォヴォーン!!!
カキーン!
アギト「ハッ!!!」

ギュオオオオ!!

澪「あっ!アギトだ!!」

G3「小沢さん、アギト出現!何かボードのような浮遊体に乗って現れました!」

82: 2010/10/05(火) 19:20:45.25 ID:PkFAniPz0
♪…熱ーくぅ、なぁーるぅ、からだーこころー

アギト「フン!!」
シュタッ!!
シュバ!!ドカッ!!

スコーピオン「グエエ!グゲエエ!!」

♪それにたーだ、従う本能……

澪「やっぱり、アギトはすごい……!」

G3「しかしどれも決定打となる一撃には繋がっていない……どうする気だ?」

アギト「……!」
ぴょん!スタッ!!
ギュオオオオ!!

アギト「ハアア~ッ!!」
ギュウウウウン!!

澪「突っ込んでくるボードの上であの姿勢……必殺技だ、多分」

83: 2010/10/05(火) 19:26:12.53 ID:PkFAniPz0
♪強ーく なーる おもーい 願ーい
G3「なら秋山さんこれを!」
ガシャン

澪「GX-05?」

小沢『あなたのGM-01と接続しなさい。そう、GXランチャーよ。これでアンノウンの動きを一瞬だけでも止めるの!』

澪「はい!」
ガシャ、ガシ~ン!!

♪それに たーだ…ひ・と・り 動くぅ!

澪「やああっ!!」
ギリリ…バシュウッ!

ズドン!!
スコーピオン「ギャオオ!??」フラッ

澪「今だっ!!行けェ!!!アギトオオオオ!!!」

84: 2010/10/05(火) 19:30:30.80 ID:PkFAniPz0
♪…BelieveYourself、あーしぃたぁあぁへーぇえええええええ"え"え"~~~~え"え"~~~~~ッ!!

アギト「タアアアアアアッ!!!!」
ビシ、メキメキメキィ、ベゴン!!!

スコーピオン「ギャアアアアア!!」
キュイイイイイ……ズドオオオオオオン!!!

澪「!……やったあ!!……唯!私、やったよっ!!」

G3「小沢さん、アギトの攻撃によりアンノウン沈黙しました。しかし当のアギトは爆炎に乗じて姿をくらました模様……」

85: 2010/10/05(火) 19:36:06.05 ID:PkFAniPz0
病室にて
茜「――ねっ?これで満足したかしら?」

憂「……」

茜「まあ、あのアギトが人間にとって毒となるか薬となるか……すぐに結論は出るわ」


廃工場
梓「……ふうっ(手も元に戻っているし、痛みも大分引いたみたいね)」ヨロヨロ
梓「次に訪ねるとするなら……この人かなぁ。

この人達は半年前からまとまって転居を繰り返しているらしいけど。
聞いた話では、今はたぶん――」ピラッ
『真― 和』『鈴木 ―』
『立―――』

87: 2010/10/05(火) 19:41:02.59 ID:PkFAniPz0
Gトレーラー内
小沢「氷川君今日はどうもお疲れ様。はい、コレ」スッ

氷川「ありがとうございます、あちっ……」ズズ…

小沢「アギト……今回は私達を助けてくれたみたいだけど、毎度すぐ消えるし、本当何者なのかしら?」

氷川「前に会ったアギトのような怪物……あれは人間の女の子が姿を変えたって報告しましたよね?」

小沢「じゃあ、アギトも人間が変化した可能性があるわけ、か……だったらどんな人なのか、尚更気になるわ」

氷川「はい!きっと素晴らしい人間だと思いますよ!それはもう真面目で、知的で……あちち」ズズ…

小沢「(妙に期待に目を輝かせているわね)ところで秋山さんは?」

氷川「ああ、彼女は早めに帰りましたよ。何といっても今日は――」

89: 2010/10/05(火) 19:46:34.42 ID:PkFAniPz0
田井中家
澪「律!聡!ど~してお前ら何も手伝ってないんだっ!
唯とムギが無事に帰ってきたから、お祝いしようって話だったのに!」

律「だって~唯が全部自分で作りたいってモゴモゴ……
ん~、んまいッ!ああ、やっぱり唯は料理の天才だよなぁ」

唯「えへへ……でしょ~?
奥様、あたくし今日はいつもより腕によりをかけていますのよぉ」オホホ

聡「あ、澪姉お茶取って」
澪「お前らなぁ」つ茶<スッ

紬「いーのよ澪ちゃん。私は刑事さんとお茶していたようなものだから。でもまさか、唯ちゃんがさっきまで氏に掛けてただなんて、嘘のようねー」

唯「酷いなあ、結構大変だったんだよお?でもムギちゃんも無実で何より!私は信じてたけどね!」

紬「ふふふっ」

91: 2010/10/05(火) 20:02:39.36 ID:PkFAniPz0
唯「あ、そうだ!久々に一曲弾こうかな!
なんと今日!我が愛しのギー太もついに変身したのです!そのお祝いに!」フンス

紬「?」
澪「何言っているのさ?」
律「ははっ、それなら一つ、明るいのを頼むよ」
唯「OKっ!じゃ、これなんてどうかな……」
ジャカジャカ……

♪EDテーマ
―ウルフルズ『事件だッ!』―

澪「私は絶対こんなの着ないからなっ!!」

――おしまい
>>58あたりで言っていたよう、ここで終わらせます(さるさんって何だ……)
つづきはアギト本編で!ぶん投げてしまった複線の大体は回収されます……すみません。
そして、ここまで反応や支援して下さった方(特にID:P/dArcTXOさんの支援量が凄い)ありがとうございました

92: 2010/10/05(火) 20:14:07.65 ID:P/dArcTXO

さるさんってのは連続して投稿するとたまになる
支援とかあれば回避出来るんだけど俺遅かったな……

いつか続き読みたい

93: 2010/10/05(火) 20:21:17.57 ID:KV1yUXRi0
アギトって前半~中盤はすごい面白かったよね

引用元: 澪「私は絶対こんなの着ないからなっ!!」