1: 2017/05/10(水) 23:22:24.438 ID:sdAijpa00.net
……

『悪魔の皆さん、こんばんは!本日も魔界通販の時間がやってまいりました!』

『本日紹介する商品はこちら!透明になる薬!』

『なんと、この薬を飲むと、全ての生き物から認識されなくなるという優れもの!』

『証拠一つ残さない完璧な悪魔的行為を行える、まさに最高の一品となっております!』



サターニャ「おぉ……」キラキラ

サターニャ(これさえあればガヴリールやラフィエルの奴をギャフンと言わせられる!!)

サターニャ(透明になった私が見えないところからイタズラをする……これにはあの天使共も恐怖するに違いないわ……!)


サターニャ「ふふふ、そうとなれば早速注文ね……!!」ダッ




『なお、薬の効果で認識されなくなると相手に声が聞こえることも無くなります、別途で解除薬を買っておかないと大変なことに……』
ガヴリールドロップアウト(14) (電撃コミックスNEXT)

3: 2017/05/10(水) 23:24:05.380 ID:sdAijpa00.net
……

ガヴリール「おはようヴィーネ……」グッタリ

ヴィーネ「おはようガヴ……って」

ヴィーネ「いつも以上に元気がないわね、何かあったの?」

ガヴリール「……最近私の天使力がかなり衰えていてな、このままじゃ本当に堕天してしまうってことで、連休を全て捧げてゼルエル姉さんに教育されてたんだよ……」

ガヴリール「お陰でこの有り様だ、まったく、私の貴重な休日が……」

ヴィーネ「完全に自業自得ね」

ガヴリール「と、いうわけで、学校には顔を出したからな」

ガヴリール「保健室で寝てくる」スッ

ヴィーネ「ちょ、ちょっとガヴ!授業始まっちゃうわよ!?」

ガヴリール「後で起こしに来てくれ」

5: 2017/05/10(水) 23:26:31.235 ID:sdAijpa00.net
……

ヴィーネ「まったく、ガヴったら……このままいけば確実に留年ね」

ラフィエル「まぁまぁ、今日のところはゆっくりさせてあげてもいいじゃないですか」

ラフィエル「あのゼルエルさんの教育を受けたんです、しばらく体力は戻らないでしょう」

ヴィーネ「ガヴも言っていたけど、その教育っていうのは具体的に何をするの?」

ラフィエル「主に肉体を鍛え直し、失った天使力を高める事を目的としてます」

ラフィエル「天界スクワットに天界腕立て伏せ、天界上体起こしなども行いますね」

ヴィーネ「……天使って以外と体育会系なのね」

ラフィエル「ですが、このトレーニングはとても効果的なんですよ?」

ラフィエル「天使力が高まれば、己の姿を消すことができたり、逆に、姿を消している者を認識することができたり……」

ヴィーネ「何それすごい」




サターニャ(くくく、どうやら本当に私の存在に気づいていないようね?ラフィエル)

サターニャ(今日は見えないところからあんたを攻撃してやるわ!覚悟しなさい!)

8: 2017/05/10(水) 23:33:08.347 ID:sdAijpa00.net
サターニャ(ふふふ、まずは髪の毛を軽く触ってやるわ、見えないところから触られる、さぞ恐ろしいでしょうねぇ!)




ヴィーネ「はぁ、それにしても本当に保健室に行っちゃったわよ、先生になんて説明しようかしら……」

ラフィエル「病欠、ということにしてもらうのはどうですか?」

ヴィーネ「そんなのだめよ、ガヴリールの仮病の片棒を担ぐことなんて私にはできないわ」

ラフィエル「ふふ、ヴィーネさんらしいですね」


サワッ


ラフィエル「……っ」ピクッ

ヴィーネ「……?」

ラフィエル「な、何だか今誰かに触られたような……」キョロキョロ


ガシッ


ラフィエル「ひゃあああっ!?」ビクッ

ヴィーネ「ちょ、ちょっとラフィ!?どうしたの!?」

ラフィエル「わ、私にもわかりませんよぅ……」ビクビク



サターニャ(ぷぷぷ、随分と間抜けな声を出すわねぇ、ラフィエル……)

サターニャ(でも、まだまだこれからよ、透明悪魔的行為(インビジブルデビルズアクション)は始まったばかりなんだから!!)

13: 2017/05/10(水) 23:38:50.695 ID:sdAijpa00.net
ラフィエル「や、やっぱり誰かが私の髪を引っ張ってます……」

ヴィーネ「落ち着いてラフィ、後ろには誰もいないわよ」

ラフィエル「で、でも……」


モニュン


ラフィエル「ひゃんっ!?」ピクッ

ヴィーネ「!?」

ラフィエル「だ、誰かが私の胸を……」

ヴィーネ「き、気のせいよ、誰もラフィエルに触ってなんか……」


ガタガタッ‼ガタッ‼


ヴィーネ「……っ!?」ビクッ

ラフィエル「つ、机が勝手に揺れています……」ビクビク

ヴィーネ「うぅ、まさか本当に……」



キーンコーンカーンコーン……




サターニャ(ふふ、そろそろグラサンが教室に入ってくる時間ね)

サターニャ(早いところネタをバラして、授業を受けなくちゃ……)

15: 2017/05/10(水) 23:45:42.056 ID:sdAijpa00.net
ヴィーネ「ほら、チャイムが鳴ったわよ、そろそろラフィも教室に戻らないと」

ラフィエル「……この話の続きは、また休み時間にでも」

ヴィーネ「えぇ、必ず原因を見つけましょう」



サターニャ「ふふふ、ラフィエル、ヴィネット、随分と困惑しているようね?」

サターニャ「まぁ、怖がるのも無理はないわ、今のあなた達にはきっと、何もないところから声がするように聞こえているはずだから」

サターニャ「さっきのラフィエルの髪の毛を引っ張ったのも、胸を揉んだのも、机を揺らしたのも、全部この私……」

サターニャ「胡桃沢=サタニキア=マクドウェルの仕業よ!!」ドンッ

サターニャ「んなーっはっはっは!!恐怖で声もでないようねぇ!?でも、まだまだこんなもんじゃ……」


ガラッ

グラサン「ホームルームの時間だ、席につけ」

ヴィーネ「それじゃあラフィ、また後で」

ラフィエル「ええ」スッ


サターニャ「……って!!何で無視するのよ!!」

16: 2017/05/10(水) 23:50:26.194 ID:sdAijpa00.net
……

グラサン「出席を取る」

グラサン「委員長、上野、うかみ、それから……」


サターニャ(不味い不味い不味い!早く元にもどらないと欠席になっちゃう!)

サターニャ(それにしてもこれ、どうやって元に戻るのかしら……?)


グラサン「近藤、田中、月乃瀬、天真……」


グラサン「……天真はまた遅刻か?」

ヴィーネ「く、詳しくは知りませんが、今保健室にいるみたいで……」

グラサン「そうか、次は……」



サターニャ「……あれ?」

サターニャ「今私呼ばれたっけ……?」

18: 2017/05/11(木) 00:02:08.336 ID:ipFu988O0.net
……

サターニャ「まったく、どうなってるのよ、透明になるだけの薬じゃなかったの?」

サターニャ「……えっと、説明書説明書……っと」ペラッ




*本日は魔界通販特性、透明になる薬をご購入頂きありがとうございます

*ご使用の際に、必ずこの説明書の注意事項に目を通し、適量を使ってください

*本商品を使用すると、周囲の生物からの認識を阻害する事ができます

*厳密に言うと姿が透明になっているわけではなく、周囲の生物の視界に入る、または、声を発することによって、その生物の脳神経を麻痺させる、特殊な術が肉体に作用しています。

*よって、本商品の使用者は、一時的にこの世界から完全に消滅したことになります

*薬の効果を解除するには、別途で解除薬を購入する必要があり、他の手段では肉体に作用した術式を取り消すことができませんので、ご注意を。




サターニャ「……えっ」ゾッ

20: 2017/05/11(木) 00:07:23.984 ID:ipFu988O0.net
サターニャ「な、何よ、じゃあ本当は私は透明になっているわけじゃなくて、私の姿を見た者、声を聞いたものが私の存在を忘れてしまっているってわけ……?」

サターニャ「そ、そんな……じゃあ、皆私がいない事に気づいてすらいないってことに……」


サターニャ「あ、あぁ…………っ」グスッ






委員長「天真さん、どうしちゃったのかしら……」ヒソヒソ

ヴィーネ「ガヴのことだから、どうせ仮病よ」ヒソヒソ

委員長「この授業が終わったら様子を見に行って見ようかしら……」

21: 2017/05/11(木) 00:13:29.128 ID:ipFu988O0.net
……

プルルルル、プルルルル…………


ガチャッ


『御電話ありがとうございます、こちら魔界通販お客様電話窓口担当、芦屋と申します』

サターニャ「あ、あの、一昨日荷物を注文した胡桃沢と言いますけど!」

『……』

サターニャ「以前購入した透明になる薬の解除薬を注文したいんですが……」

『……』

サターニャ「……」

『……もしもし?』

サターニャ「……あーもう!ちゃんと聞きなさいよ!解除薬が欲しいっていってるでしょうが!!」

『大変申し訳ございません、20秒以上応答が無い場合、通話を終了するよう決まっておりますので』

サターニャ「んなっ……」

『ご用件がある場合は、お手数ですが、再度窓口にご連絡下さい』


ガチャッ……



サターニャ「……」

23: 2017/05/11(木) 00:20:47.082 ID:ipFu988O0.net
……


サターニャ「誰かー!!誰か私の声が聞こえるー!?」

サターニャ「誰でもいいの返事をして!!!」




シーン……



サターニャ「……う、嘘よね?」

サターニャ「き、きっと、数時間経ったら薬の効果が切れて、元通りになるに決まってるわ……」

サターニャ「……そしたら、またいつも通り、ガヴリールと勝負をして、皆と一緒にお昼ご飯を食べて、帰りには駅前のコンビニに寄り道して……っ……」グスッ

サターニャ「放課後はガヴリールのバイト先に押し掛けて……ラフィエルと一緒に茶化しながらあいつの悔しがる顔を拝んで……うぅ……っ」




サターニャ「う"え"ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!誰かぁぁぁぁぁぁ!!!誰かいませんかぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!」ポロポロ

24: 2017/05/11(木) 00:28:48.761 ID:ipFu988O0.net
……

ダッ


サターニャ「はぁっ、はぁっ……」


サターニャ(1年も2年も、3年のクラスも全滅だわ)

サターニャ(まさか本当に皆、私の事を……)

サターニャ「……っ」グスッ

サターニャ「そんなわけないわ、きっと誰か、誰かが私の存在に気づいてくれるはず!!」

サターニャ「……でも、もし、世界中の皆が私の存在に気づかなかったら……」


サターニャ「うぅ、やだよぉ……」ポロポロ



……

ガラッ


サターニャ「……少し休憩しましょう、ずっと走っていたら疲れたわ」

サターニャ「ふふ、それにしても私、随分と独り事が増えたわね、まぁ誰にも聞こえないだろうしいいんだけど」

サターニャ「……はぁ、何で私、あんな薬買っちゃったんだろ……」グスッ


ガヴリール「何一人でブツブツ言ってんだよ、気持ち悪い」

サターニャ「本当ね、私ったら気持ち悪……」


サターニャ「……えっ?」

26: 2017/05/11(木) 00:35:50.275 ID:ipFu988O0.net
サターニャ「ガヴリール……あんた私が見えるの……?」

ガヴリール「……はぁ」

ガヴリール「お前、いい加減にそういうの卒業しろよ、もう高校生なんだからさぁ」

ガヴリール「何だっけ、下界でいうところの厨二病ってやつ?そういうのは早い内に卒業しとかないと、後々恥をかくのはお前だからな?」

サターニャ「ガヴリール……っ」グスッ

ガヴリール「……お、おいおい、何も泣くこと無いだろ」アセアセ

サターニャ「うっ……うぅ……っ!!」


ムギュッ


ガヴリール「!?」


サターニャ「うわあああああああん!!ガヴリールぅ"ぅ"ぅ"!!!」ポロポロ


ガヴリール「お、おい!ちょっと落ち着けって……!」

28: 2017/05/11(木) 00:45:11.950 ID:ipFu988O0.net
……

ガヴリール「なるほど、つまり、お前が買ったくだらない商品のせいで、誰にも認識されなくなってしまったと……」

サターニャ「……うん」

ガヴリール「はぁ、なんで説明書も読まずにそんなヤバそうな薬飲むんだよ……」

サターニャ「……あんた達天使をぎゃふんと言わせたかったのよ」

ガヴリール「まぁ、真正面から戦ってもお前じゃ勝ち目はないもんな?」ニヤニヤ

サターニャ「う、うるさいわね!」

サターニャ「大体なんであんたには私の姿が見えるのよ!理由を聞かせなさい!」

ガヴリール「まぁあれだ、薬のせいでお前の肉体に術が作用しているんだろ?よくわかんないけど」

ガヴリール「私くらいの天使力になると、そんな小細工は通用しないってわけだよ」

ガヴリール(……ゼルエル姉さんの修行のおかげだけど)

サターニャ「うぅ、流石は私のライバルね、中々やるじゃない……」

ガヴリール「ふふん、でもそうか、ラフィエルには術を見破れなかったか……」

ガヴリール「まぁあいつも、下界での生活のせいでたるんでるって事なんだろうな」ドヤァッ

サターニャ「何で得意気なのよ……」

34: 2017/05/11(木) 00:57:44.560 ID:ipFu988O0.net
……

ピッピッピッ……


ガヴリール「よしっと」

ガヴリール「お前の代わりに魔界通販で注文しといてやったぞ、感謝しろよ?」

サターニャ「あ、ありがと……」

ガヴリール「それにしても、今時ネット販売もやってない通販会社があったなんてな、やっぱり魔界も昭和か……」

サターニャ「……」

ガヴリール「……何だよ、いきなり黙って」


サターニャ「……あのね」

サターニャ「……私、もう二度と誰にも会えないと思ってたの、このままずっと一人で氏んでいくんだ……って」

サターニャ「でもガヴリール、あんたが私を見つけてくれて、心の底からホッとしたわ」

サターニャ「……本当にありがとう」

ガヴリール「……」


ガヴリール「誰に会っても認識されなくて、誰に話しかけても言葉を交わせない」

ガヴリール「もし、私がお前の立場でも、氏ぬほど心細い思いをしていただろうな」

ガヴリール「……だからまぁ、解除薬が届くまでは一緒にいてやる、汚い部屋でも良いなら私の家に泊まれよ」

サターニャ「ガヴリール……」

39: 2017/05/11(木) 01:09:23.802 ID:ipFu988O0.net
グゥゥゥゥ……


ガヴリール「……」

サターニャ「……」

サターニャ「安心したら、何だかお腹が減ってきちゃった……」

ガヴリール「私もお腹減った」


ガヴリール「よっし、今日は学校サボって、美味しい物でも食べるか」

サターニャ「さ、サボるって、あんたそれ大丈夫なの……?」

ガヴリール「いいよ、本当なら今日は学校に行くつもりじゃなかったし」

サターニャ「それもそれで問題ね……」

ガヴリール「……あ、良いこと思い付いた」

ガヴリール「今のお前の能力を活かして、スーパーにある高級食材をバッグに詰めまくるっていうのは……?」

サターニャ「そんなSSS級悪魔的行為、魔界追放レベルよ」

ガヴリール「ちぇー、お前ら本当に悪魔なのかよ……」

サターニャ「あんたにだけは言われたくないわ」

40: 2017/05/11(木) 01:17:02.165 ID:ipFu988O0.net
……

ガヴリール「はー、サターニャが認識されないから外食できないじゃんすっかり忘れてたわ」ズルズル

サターニャ「わ、悪かったわね、私だって本当はこんなつもりじゃなかったんだから……」ズルズル

サターニャ「……あ、このカップ麺美味しい」ボソッ

ガヴリール「だろ、そいつは私のイチオシだからな」

ガヴリール「値段のわりに味がしっかりしてるんだ、ラーメン屋に行くよりもお得だぞ」ニコッ

サターニャ「……」


サターニャ「何か、今日のあんたやけに優しいわね」

ガヴリール「……そうか?私はいつもこんな感じだと思うけど……」

サターニャ「いや、それだけは絶対にないわ」

ガヴリール「何だよ、失礼なやつだなぁ、これでも一応天使なんだから優しいに決まってるだろうが……」スッ

ガヴリール「……あ、サターニャ、お茶飲む?」

サターニャ「ええ、頂くわ」

ガヴリール「ほれ、注いでやるからコップ貸せ」

サターニャ「……」

44: 2017/05/11(木) 01:27:28.518 ID:ipFu988O0.net
……

サターニャ(それからというもの、ガヴリールは私の望む事をを何でもやってくれた)

サターニャ(最初は私の言うことを聞くガヴリールが面白くて、わがままばかり言っていたけど、文句一つ言わずに笑顔で行動してくれるガヴリールに、私の心は揺らいだ)

サターニャ(思えばガヴリールは私の恩人だ、孤独に押し潰され、時が経てば自ら命を捨てていたかもしれない私を救ってくれた恩人)

サターニャ(そんな彼女と暮らしていく内に、私はガヴリールに心を開き、家族と呼べる程親密な関係になっていった)






サターニャ「ガヴリール、お風呂入れといたわよー」

ガヴリール「んー、後で入るから先に入っといてくれ」カチカチ

サターニャ「もう!そうやってあんたはいつも入らないじゃない!」

サターニャ「今日という今日はかならずあんたをお風呂に叩き込んでやるわ!!」グイッ

ガヴリール「ああ、もうちょっとだけ、もうちょっとだけだからぁ!!」ググッ

47: 2017/05/11(木) 01:35:44.951 ID:ipFu988O0.net
カポーン



ガヴリール「はぁ、何も一緒に入ること無いだろ……」

サターニャ「あんたのことだから、どーせ体を洗わずにあがってくるんでしょ?私にはお見通しなんだから」

ガヴリール「はいはい、じゃあ精々頑張って私の体を綺麗に洗ってくれよ」

サターニャ「言われなくてもそうするつもりよ」



ガヴリール「……それと、サターニャ」

サターニャ「なによ」

ガヴリール「明日、解除薬が届く事になっている」

サターニャ「ふぅ、やっとこの忌々しい術から解放されるのね……」

ガヴリール「……」


ガヴリール「サターニャ」

サターニャ「……?」

ガヴリール「これからどんな事になっても、私だけはお前の味方だからな」

ガヴリール「例え皆がお前の事を忘れても、私はお前の事を絶対に忘れたりなんかしないから」

サターニャ「……ええ、わかったわ」

48: 2017/05/11(木) 01:45:07.528 ID:ipFu988O0.net
……


ガヴリール「どうだ?何か変化は感じるか?」

サターニャ「薬は飲んだわ、これで私は皆に認識されるはず……」

ガヴリール「まぁ、私相手じゃわかんないだろうし、ちょっと散歩でもしてこいよ」



……


サターニャ「こんにちは!!!」

「こんにちは、最近の若い子は元気がいいねぇ……」


サターニャ「こんにちは!!」

「こんにちは、いい天気ですねー……」





サターニャ「こんにちは!!!!!!」



ヴィーネ「こんにちは」ニコッ

サターニャ「……ふふふ、良かった、やっと戻ったんだ……」グスッ

ヴィーネ「ど、どうしたんですか?いきなり泣き出して、何か辛いことでも……」

サターニャ「何でもないわヴィネット、心配させちゃってごめん」

ヴィーネ「そうですか、ところで、どこかでお会いしましたっけ?何で私の名前を……」

サターニャ「……なるほど、ガヴリールが言っていたのはこういうことだったのね……」

ヴィーネ「ガヴリール……もしかして、ガヴの知り合いですか?」

サターニャ「ええそうよ、私の名前は胡桃沢=サタニキア=マクドウェル、あなたと同じ魔界出身の悪魔よ」

サターニャ「これからよろしくね」スッ

56: 2017/05/11(木) 02:01:15.804 ID:ipFu988O0.net
……

サターニャ「ただいま」

ガヴリール「戻ったか、サターニャ」

サターニャ「……さっき、そこでヴィネットに会ったわ」

ガヴリール「……っ」

サターニャ「最初からわかっていたわ、あんたが私に凄く優しいから、きっと何かあるに違いないって……」

サターニャ「昨日のお風呂場での話、こういうことだったのね」

ガヴリール「……なぜ認識を阻害されただけでお前の存在がなかった事になるのか、ずっと疑問に思ってたんだ」

ガヴリール「記憶の改変、お前の姿を見た奴からは、お前の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっているらしい」

ガヴリール「薄々感づいてはいたけど、お前に告げるのは酷だと思って黙っていた、ごめん」

サターニャ「……ガヴリールは何も悪くないわよ」

サターニャ「最初から最後まで、私の事を覚えてくれていたのはあなただけだもの、本当に感謝しているわ」

サターニャ「それに、記憶をなくしてしまったのなら、また友達になればいいだけの話よ、同じ天使と悪魔なんだからきっとまた仲良くなれるわよ!」

ガヴリール「サターニャ……」


ガヴリール「……そうだな、また、仲良くなればいいだけだ」



ガヴリール「今年の夏は皆で海に行こう、去年より大きい海水浴場でな、そのあとはバーベキューからの花火大会だ、きっと楽しい思い出になるぞ」

ガヴリール「秋になったら焼き芋なんてのもいいな、場所は通学路にある河川敷の下でさ、本来火遊び禁止だし、ちょっと悪魔的でいいんじゃないか?」

ガヴリール「冬には皆で鍋パーティだ、去年は結局できなかったからな、今年はタプリスも呼んで大勢でやろう、年越しはヴィーネの家に行きたいな、あいつならきっと気合いの入った年越しそばを……っ」グスッ


ガヴリール「……なぁサターニャ、大丈夫だから、絶対にまた、楽しい思い出を作るから……っ!!」ポロポロ

サターニャ「……たく、何であんたが泣いてんのよ」

59: 2017/05/11(木) 02:13:21.377 ID:ipFu988O0.net
……


ガヴリール「と、いうわけで、今日はサターニャの歓迎パーティだ」

ガヴリール「ちょっと変わった悪魔ではあるが、私の大切な親友だ、仲良くしてやってくれよ?」

ヴィーネ「な、何か最近のガヴって妙にアグレッシブよね……」

ラフィエル「どうも、ガヴちゃんの友人、ラフィエルです」

ラフィエル「こうみえても、ガヴちゃんとは天界時代からの付き合いなんですよー」ニコニコ

サターニャ「よろしくね、ラフィエル」

ヴィーネ「私とは以前もあったわね、改めて、よろしくお願いします」

サターニャ「よろしく、ヴィネット」

ヴィーネ「ガヴみたいに、ヴィーネって呼んでくれてもいいのよ?」

サターニャ「……ヴィネットは昔からヴィネットなのよ」ボソッ



タプリス「天真先輩からお話は聞きました、災難でしたね、胡桃沢先輩」

サターニャ「……そっか、あんたは薬を飲んだ後の私に会っていなかったから影響がないのね」

タプリス「はい、短いお付き合いですが、胡桃沢先輩の事はしっかりと覚えています」

タプリス「悪魔ではありますが、胡桃沢先輩にはお世話に……お世話に……むむむ……」

ガヴリール「タプリス、無理しなくていいぞ、お前とサターニャの間には一つもいい思い出なんてなかっただろ?」

サターニャ「どういう意味よ!!」

61: 2017/05/11(木) 02:24:08.421 ID:ipFu988O0.net
ガヴリール「……それでは各自持ち寄った食べ物を机の上に出してくれ」


ヴィーネ「私からはこれよ、じゃーん!」

ヴィーネ「かぼちゃのサラダにぶり大根、茄子の揚げ浸しになめこのお吸い物……」

ガヴリール「なんかあれだな、もうちょっとパーティ向けのチョイスはできなかったのか……」

ラフィエル「私からはこちらです」スッ

ラフィエル「チョコレートにマシュマロ、ケーキにシュークリーム……」

ガヴリール「デザートで攻めてきたか、なるほど、悪くないな」

ラフィエル「あ、シュークリームの内の1つは激辛わさび入りです」ニコッ

ガヴリール「うん、知ってた」

タプリス「わ、私はスーパーで買ったお惣菜です、つまらないものですみません……」

ガヴリール「いいよいいよ、別に面白さで競ってる訳じゃないから」


ガヴリール「さて、最後はサターニャだが……」

サターニャ「ふっふっふ、やっぱり、私と言えばこれしかないと思うのよね……」スッ



サターニャ「私の持ってきた物は、メロンパンよ!!」シュバッ


サターニャ「って、あれ?」

犬「わんっ!!わんわんっ!!」モグモグ

サターニャ「ってあああああ!!私のメロンパンがぁぁぁぁ!!!」



ラフィエル(どこがで見たような光景ですね……)

ヴィーネ(どこがで見たような光景ね……)

63: 2017/05/11(木) 02:33:11.299 ID:ipFu988O0.net
……

サターニャ「うぅ、メロンパン取られちゃった……」

ガヴリール「任せろサターニャ、今すぐ私が買いにいってやる」

サターニャ「いいわよ、そこまでしなくても……」

ガヴリール「お前のそんな顔は見たくないんだよ、買ってきてやるから笑え、な?」

サターニャ「うん……えへへ……」



ヴィーネ「ガヴったら、随分とサターニャに甘くなったわね」

ラフィエル「本当に、以前のガヴちゃんからは想像できません」ニコニコ

ガヴリール「……私とサターニャは元からこんなんだっての」

ヴィーネ「何言ってんのよ、あんたとサターニャはいつもくだらない勝負ばかりやってて、事あるごとにサターニャと喧嘩してたじゃない」

ガヴリール「……お前、何でそんなこと覚えて……」

ヴィーネ「さっき、サターニャがメロンパンを取られているところを見てね、何だか思い出しちゃった」

ヴィーネ「逆に、何で今まで忘れていたのが不思議なくらいよ」

サターニャ「ヴィネット……」

ラフィエル「私もヴィーネさんと同じです、犬と戯れるサターニャさんを見て、何だか懐かしい感じかしちゃいました」クスッ

サターニャ「ラフィエル……」グスッ


ガヴリール「……よかったな、サターニャ」

65: 2017/05/11(木) 02:46:36.002 ID:ipFu988O0.net
……

ヴィーネ「と、いうわけで、サターニャ歓迎パーティ改めて、サターニャおかえりパーティの始まりよ!」

ラフィエル「いえーい!」

サターニャ「いえーーーい!!」

タプリス「い、いえーい!」



ヴィーネ「うう、ごめんなさいサターニャ、今まであなたの存在をすっかり忘れていたわ」

ラフィエル「私もです、本当にごめんなさい……」

サターニャ「ふふっ、気にすることないわ、あれは元々私のせいだし……」

サターニャ「ていうかガヴリールー?メロンパンまだー?」

ガヴリール「うっせぇ、今ネトゲで忙しいんだよ」カタカタ

サターニャ「ええっ!?ちょ、ちょっと!!メロンパン買ってきてくれるんじゃなかったの!?」

ガヴリール「知らん、覚えてない」カタカタ

サターニャ「むきーー!!ガヴリールのやつ、皆の記憶が戻った瞬間にコロッと態度を変えるなんて……」



ガヴリール「……」カタカタ

タプリス「天真先輩天真先輩……」ツンツン

ガヴリール「ん?なに?」

タプリス「本当は恥ずかしかったんですよね?記憶が戻った皆さんに、胡桃沢先輩と仲良くしているところが見られるのが……」

ガヴリール「ばかっ、そんなんじゃないっての」

タプリス「ふふ、素直になったらいいじゃないですか、きっと胡桃沢先輩も喜びますよ?」

ガヴリール「……」

タプリス「それに、天真先輩のパソコンの画面、本当はゲームなんかじゃなくて……」スッ

ガヴリール「ちょっ、勝手に見るなって……!!」


『皆の記憶が戻って本当に良かった、これからは以前みたいに、サターニャの笑顔が見られるといいな。』


タプリス「日記なんて付けてたんですね、天真先輩にも可愛らしい一面があるんですね」

ガヴリール「……まぁ、今日でこの日記も終わりだけどな」





66: 2017/05/11(木) 02:49:25.349 ID:ksmYgJQO0.net
かわいい

67: 2017/05/11(木) 02:49:57.437 ID:FB0AmocO0.net
乙!大儀であったぞ

69: 2017/05/11(木) 02:55:10.034 ID:/EiekjWX0.net

ハッピーエンドで安心

引用元: サターニャ「透明になってガヴリール達にイタズラするわ!」