鬱息子の母「もうBJ先生しか頼れないんです！助けて下さい！」

ピノコ「カワイソ…ちぇんちぇい、なんとかしてあげてほしいのよさ」

BJ「いいでしょう。特別に治療させてもらいますよ」ﾊﾟｲﾌﾟﾌｶｰ

鬱息子の母「ほ、本当ですか！？」

BJ「ええ、鬱の治療ノウハウは持っているのでね」

鬱息子の母「あ、あのう…ちなみに治療費の方は…」

BJ「それは病状を見てからでないと何とも言えませんな」

BJ「息子が真人間になるためだ。どんな金額でも出す覚悟はあるんでしょう？」

鬱息子の母「…ええ！あの子がまともになってくれるならいくらでも！」

BJ「それが聞きたかった。ではご自宅へいきましょうか」



ｺﾝｺﾝ

鬱息子の母「新しい先生を連れてきたわよ。入るわね…」ｶﾞﾁｬ

鬱息子「・・・」

鬱息子の母「あのBJ先生が治療して下さるのよ。きっとあなたの鬱も治るわ」

鬱息子「…ﾎﾝﾄ ｳﾂｦﾜｶｯﾃﾈｴﾅ ｸｿﾊﾞﾊﾞｱ…」

鬱息子「ｱｧｼﾆﾀｲ ｳﾏﾚﾃｺﾅｶｯﾀﾗﾖｶｯﾀﾜ ｼﾆﾃｰ…」

BJ「ふむ、こいつぁ重症ですな」

鬱息子の母「先生、治せるでしょうか？」

BJ「ええ、ピノコ。カバンを持ってきてくれ」

ピノコ「んちょ、んちょ…レディにこんなおもたいものはこばせゆなんて！」ﾄﾞｽﾝ

BJ「この治療道具があればたちまち鬱も治りますぜ」

鬱息子の母「い、いったいどんな道具なのかしら…」

BJ「おい」

鬱息子「ﾅﾝﾀﾞﾖ…ｱｧｼﾆﾀｲ…ﾅﾆﾓｶﾓﾒﾝﾄﾞｸｾｪ…」

ｶﾊﾞﾝｶﾞﾊﾟｯ

BJ「ここに一億入ってる。全部君にやろう」

鬱息子「・・・」

鬱息子の母「な、何をなさってるんですか？先生！？」ﾋｮｳﾀﾝﾂｷﾞ

BJ「見てわかりませんかな？これが私の鬱の治療法だ」

鬱息子の母「バカにしないでください！こんなことでこの子の鬱が治るわけが――！」

鬱息子「…ｺﾚ…ｾﾞﾝﾌﾞｵﾚﾉ…？」

BJ「ああそうだ、全部君の金だ」

鬱息子「…ﾎﾋｭｯ」

鬱息子の母「！？　今、笑った？まさかこの子が！？」

鬱息子「ﾎｯ…ﾎﾎｯ…ほほほほっ！！」

鬱息子「いええええええい！！一億いえええええええい！！！！！」

鬱息子「やりやりやりーーぃ！！もう氏ぬまで働かないで済むぅーーー！遊び放題ぃーー！！」

鬱息子「あ！あのアニメDVDの新作予約しちゃおっと！」ﾃﾞﾝﾜﾋﾟｯﾎﾟｯﾊﾟｯ

鬱息子「あっ！アニメイトさんっすか？DVDの予約お願いしたいですけど！！」

鬱息子「はい！はい！じゃあ入荷日にそちらに伺わせてもらいやーっす！！」

鬱息子の母「あ、ああ…そんな信じられない…」

BJ「鬱に一番有効なのは一億円を渡す事なのですよ」

鬱息子「お母さん？なんて暗い顔してんだよぉーー！これで涙拭きなっ」ﾏﾝｻﾂｻｯ

鬱息子の母「こんな俺☆覚醒した息子を見られるなんて…」

鬱息子の母「BJ先生！やはりあなたは最高の名医です！ありがとうございます！」

BJ「礼などいりませんよ。私が欲しいのは金だ」

鬱息子の母「わかっていますとも！治療費はおいくらですか！？」

BJ「一億です」

鬱息子の母「い、い、一億円！？そんな無茶な！！！」

BJ「わたしゃあ普段鬱病患者など診ないんでね。特別報酬ってやつです」

鬱息子の母「だからって高すぎます！そんな大金ウチにあるわけないじゃないですか！」

BJ「いいや、ここにありますぜ」ｶﾊﾞﾝﾋｮｲｯ

鬱息子「えっ！？」

BJ「払えないのならこの一億で払ってもらうまでだ」

BJ「文句はありませんな！？」

鬱息子の母「…は、はい…」

鬱息子「え、俺の一億…俺の…ｵﾚﾉ…ｶﾈ…」

鬱息子「…ｱｧｼﾆﾃ－…ｳﾏﾚﾃｺﾅｷｬﾖｶｯﾀ…」

BJ「では失礼しますぜ」

鬱息子の母「…先生、あなたは残酷な人ね！」

BJ「どういうことですかな」

鬱息子の母「始めからこうやって私たちを弄ぶつもりだったんでしょう！？」

鬱息子の母「ああ、一億円渡せば鬱が治るとして、どうやってそんな大金用意したら…」

BJ「アンタはここまでやってもまだわからないのかっ！！」

BJ「一億ポンと渡された途端に治って、取り上げられたらまた引きこもる」

BJ「こんな都合のいい病気などあると思いますか！？」

BJ「鬱などハナからその程度のもんだということだ！！」

鬱息子の母「・・・」

BJ「今あなたに必要なのは一億ではなく、息子と向き合う覚悟だっ」

BJ「親として何をすべきか、もう一度よく考えるんですな」

ﾊﾞﾀﾝ

鬱息子の母「・・・」

ﾁｭﾝﾁｭﾝ…

鬱息子「ｱｧ、ｱｻｶ…ﾀﾞﾘｰ…ﾆﾁｬﾝﾃﾞﾓﾐﾃﾀﾞﾗﾀﾞﾗｼﾖ…」

ﾀﾞﾝﾀﾞﾝﾀﾞﾝ　ｶﾞﾁｬ！

鬱息子「ﾅ ﾅﾝﾀﾞﾖ、ﾉｯｸｸﾗｲｼﾛﾖ…」

鬱息子の母「…今すぐ着替えて、ハロワに行きなさい」

鬱息子「ﾊﾞｶｼﾞｬﾈｰﾉ…ｳﾂﾉｵﾚﾆｿﾝﾅｺﾄﾃﾞｷﾙﾜｹ…」

鬱息子の母「甘えるな！！！さっさと着替えろ！」ﾊﾞｼｯ！

鬱息子「ｲｯ！ﾅﾆｽﾝﾀﾞ…ｼﾞｻﾂｼﾃﾔﾙｿﾞ…」

鬱息子の母「どうせ氏ねもしないくせに何言ってんだ！！」ﾄﾞｶｯ！

鬱息子「ｲﾀﾞｯ！」

鬱息子の母「もうあんたを甘やかしたりしない！」ﾊﾞｼｯ！

鬱息子「ﾋｲｯ！」

鬱息子の母「働かないならご飯も出さないし、ネットも使わせない！」ﾊﾞｼﾝ！

鬱息子「ｲ、ｲﾔﾀﾞｯ…」

鬱息子の母「それが嫌なら働け！！世の中から、社会から逃げるな！！」ﾊﾞｼｯ！

鬱息子「ﾋｯ…ﾋｲｯ…わ、わかったよ…ハロワに行くから…！」

BJ「どおりでどんな名医でも治せないわけだよ」

BJ「健康な人間を治すことは、どんな医者にだってできない」

ピノコ「おとなになっちぇも、とんだあまえんぼさんがいるのね」

ピノコ「ろうしてあそこまでなっちゃったのかしら？」

BJ「人間、誰だって甘やかされれば腐っていくものさ」

BJ「それを病気に仕立てて、医者を頼るなんて愚かなことだ」

ピノコ「さっすがちぇんちぇい、はじめからこういうつもりだったのね」

BJ「いや、そうじゃない」

ピノコ「じゃあなんなのよさ？」

BJ「あの親子を弄んで、暇つぶししたかったのさ。フフフ…」



―――少年チャンピオン1489号 「名医泣かせ」 より収録

ちぇんちぇーなんだかんだいっておひとよち

ハロワに行ったとしても職にありつけるとは限らないんだよなぁ