1: 2011/10/22(土) 18:36:45.39 ID:MEf+Tm1u0
会長「…………」

西垣「あー、えっとスレ立てるのもSS書くのも初めてだからミスったらごめんなさいって松本は言ってるぞ」

会長「…………」

西垣「キャラが定まってなくて文脈もくそだが勘弁しろと松本がいってる」

会長「…………」

西垣「そんじゃ始めるぞ、ってまt」

2: 2011/10/22(土) 18:37:53.42 ID:MEf+Tm1u0
何百回と繰り返される時の中で
私たちは出会いや別れを繰り返す
これはそんな『あったかもしれない』物語



8月31日 生徒会室

綾乃「よいしょっと」

ゴトッ

綾乃「ん?」

千歳「どうしたん?綾乃ちゃん」

綾乃「いや、今何か落ちたような」

千歳「落ちた?何かの資料ちゃう?まあこれだけの量やからな」

綾乃「それならそうでちゃんと拾って揃えないと罰金バッキンガムだわ」

4: 2011/10/22(土) 18:39:28.74 ID:MEf+Tm1u0
千歳「そういや綾乃ちゃんの持ってきたその箱ってずいぶん前のやつやろ?箱もボロボロやし」

綾乃「そうよ、なんか今度の文化祭で歴史展的なものをするらしいからその資料を集めてるの」

千歳「ずいぶんごちゃごちゃしてるな~ほこりっぽいわ」

綾乃「でもそこまで古いものでもないのよ、この箱は大体7年前ぐらいのかしらね」

千歳「7年前いうたら私たちがまだ小学生になったばかりの頃やな~」

綾乃「そう言われるとずいぶん昔のような感じがするわね……っと、落ちたのはこれで全部かしら」

千歳「そうやね……?なんか、まだひらひらしたもんが落ちてるで」

綾乃「ひらひらしたもの?」

5: 2011/10/22(土) 18:41:06.35 ID:MEf+Tm1u0
千歳「そうこれこれ、ハンカチかな?」

綾乃「ハン……カチ?」

千歳「なんや可愛い絵柄やの~生地はもうボロボロやけど」

綾乃「あ……」

千歳「どうしたん綾乃ちゃん?校長先生の銅像みたいになっとるで」

綾乃「ぁぁぁああああああ!!!」

千歳「び、びくっりした~!どうしたん急に」

綾乃「こ、これっ!私のハンカチ」

千歳「でもなんで綾乃ちゃんのハンカチがここに?」

綾乃「すっかり忘れてた、そうかここに置いてっちゃったんだ」

千歳「忘れ物ってこと?でもそれにしては古すぎるような」

綾乃「そう、忘れ物……実はわたし小学生の頃ここに来たことがあるんだ」

6: 2011/10/22(土) 18:42:39.02 ID:MEf+Tm1u0
千歳「へ~どうしてまた?」

綾乃「それがね、私も忍び込む気は無かったんだけど校門のとこである女の子に会って……」

千歳「会って……?」

綾乃「会って……」

千歳「?」

綾乃「うっ、わあああああああああああ!!」

綾乃「かっ……!、んぜんに思い出したわ完全によ!」

千歳「大丈夫?頭抱え込んでるけど」

綾乃「うわああ~なんで今までずっと忘れてたんだろう、うぅ~」

7: 2011/10/22(土) 18:43:48.68 ID:MEf+Tm1u0
千歳「えぇ~なんかすごい気になるわ」

綾乃「い、いやそんな大したことじゃないってば」

千歳「そんなこと言わずに、な?」

綾乃「まあ千歳なら大丈夫か、あ!でも」

千歳「わかってるってば、他言は無用やろ?」

綾乃「特に」

千歳「歳納さんには秘密に」

綾乃「うん、どうせ話したって思い出さないだろうけど」

千歳「えっ?」

綾乃「ああ、いや別になんでもないわよ!」

千歳「うん?綾乃ちゃんがそういうならいいけど」

綾乃「それじゃあまずはどこから話そうかしら」

8: 2011/10/22(土) 18:45:07.63 ID:MEf+Tm1u0


あの日も今日と同じ暑い夏の日だった
夏休み最後の日
私は図書館に行った帰りにいつもとは違う道を歩いていた
なんとなく家に帰りたくなかった
何か小学生なりに夏の名残を感じていたのかもしれない
そんなおり私は彼女と出会ったのだ

9: 2011/10/22(土) 18:46:46.14 ID:MEf+Tm1u0


7年前 8月31日

いつまでたってもお姫さまは泣き止みませんでした
それを見た王子さまはほとほと困り果ててしまいました
王子さまは泣きむしのお姫さまの好物がアイスだということを思い出しました
王子さまは不思議な商人からアイスを買いお姫様のところへ戻りました
しかし好物のアイスを 食べてもまだ泣き止みません
その時王子さまはどこかで聞いた魔法を思い出しました
その魔法を使うとお姫さまはたちまち泣き止みました
王子さまの使ったその魔法とは

綾乃「あいじょうのこもったキスなのでした」

綾乃「……なんじゃそりゃ」

10: 2011/10/22(土) 18:48:31.33 ID:MEf+Tm1u0
さっき読んだ本のオチを思い出しつつ夕暮れの道を歩く
割りと綾乃は夢見がちな子供だったが
最近はおとぎ話のような王子さまやお姫さまはいないことなんてわかっていた
サンタさんについては……ノーコメントだ

綾乃「そうそう、げんじつにこんなかわいいお姫さまなんているわけ……」

??「グスッ……」

綾乃「ない……」

??「え……?」

夕陽に照らされた長い髪が金色の光を纏ってなびく
涙で潤んだ瞳は寂しそうな視線を虚空に向けていて
小さく縮こまった体は不安からか震えていた

11: 2011/10/22(土) 18:49:52.35 ID:MEf+Tm1u0
一瞬、確かに一瞬だったが確かに綾乃はその姿に見惚れていた

綾乃「えっと、あんたここで何してるの?」

??「ひっ!!」

綾乃「いや、その……恐がらなくていいから」

??「う……ん」

綾乃「そう名前!あんた名前はなんていうの?」

??「な、まえ?」

綾乃「わたしはすぎうらあやの!あんたは?」

??「きょう、こ」

京子「としのう、きょうこ」

綾乃「うっ、笑うと少しかわいいじゃない」

京子「?」

綾乃「な、なんでもないわっ!それよりあんた、なんでこんなとこにいるの?」


綾乃が記憶する限りここは中学校で今いる場所はその校門だ
もうすぐ陽も暮れるこの時間帯に
こんな今にもさらわれそうな華奢な女の子が居るのが綾乃には不思議でたまらなかった

12: 2011/10/22(土) 18:51:01.27 ID:MEf+Tm1u0


千歳「へ~、それが歳納さんとの出会いだったんか~」

綾乃「そうね、まあ私も歳納京子もすっかり忘れてたみたいだけど」

千歳「それでそれで、その後は?」

綾乃「うん、まずはあいつの事情を聞くことにしたんだけど……」

14: 2011/10/22(土) 18:52:22.34 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「つまり、話をせいりすると」

綾乃「あんたの友達のあかりちゃんって子のお姉ちゃんがこの学校にかよっている」

京子「うん……」

綾乃「そしてあかりちゃんは今日ほしゅうのあったお姉ちゃんにお弁当をとどけにきた」

綾乃「そしてその後あんたの家に集まって夏休みの宿題をみんなでやってたと」

京子「でも、あかりちゃんはあたまいいから、ほとんどわたしが教えてもらってた、けど」

綾乃「それで帰ろうってことになった時にあかりちゃんの宿題が一つないことに気づいた」

綾乃「家を出るときにはたしかにあった、でもあんたの家にはいくらさがしてもなかった」

京子「ち、ちゃんとさがしたんだけど」

綾乃「そこで心当たりのある場所でここにあるかもって思ったわけね」

16: 2011/10/22(土) 18:53:41.26 ID:MEf+Tm1u0
京子「あ、あかりちゃんかお弁当出すときに何か落ちたかしれないって」

綾乃「でもそれならお姉ちゃんが気づくんじゃ」

京子「で、でも」

綾乃「それはいいとして、誰も止めなかったの?もう外は暗いのに」

京子「ゆいには止められた、ゆいはリーダーだから言うこと聞かないとだめだけど……あかりちゃんも明日でいいよって言ってくれたけど」

京子「で、でもっ……今日集まろうっていったのはわたしだしっ……ないとあかりちゃん怒られちゃうしっ、ひくっ」

綾乃「はいはいいちいち泣かないの、まったくなんでこんなことしても無駄だってわからないのかしら」

綾乃(気持ちはわからなくも無いけど)

京子「でも、あやの優しい」

綾乃「なにがよ」

京子「だって、いっしょについてきてくれてるもん」

綾乃「うっ……」

17: 2011/10/22(土) 18:54:36.48 ID:MEf+Tm1u0


千歳「ええ!結局話聞くまえに一緒に入っちゃったの?」

綾乃「だって歳納京子のやついくら止めても聞かないし、うるうるっとした目でこっち見てくるし」

千歳「へ~」

綾乃「い、いやっそれは関係ないけど」

綾乃「とにかく、言うこと聞かないから一緒にいくことにしただけ!それだけよ!」

千歳「はいはい」

綾乃「まあそれよりもここからが大変だったわけで」

18: 2011/10/22(土) 18:55:50.92 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「それでなんとか校門をのりこえて乗降口まできたのはいいけど」

ガチャガチャ

綾乃「当然、開いてないわよね、何かさくは……」

京子「うぅ」

綾乃「……ないわよね」

綾乃「とりあえず開いてるところないか回ってみましょうか」

京子「う、うん」

19: 2011/10/22(土) 18:57:12.42 ID:MEf+Tm1u0


千歳「しょっぱなから無策やね~」

綾乃「あの頃から歳納京子は何か考えてそうで何も考えてないやつだったわ」

千歳「歳納さんらしいな~」

綾乃「まったく、ほんとよね」

綾乃「でも結局最後に何か思い付くのは……」

20: 2011/10/22(土) 18:58:27.24 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「としのうきょうこ!」

京子「うひっ!」

綾乃「なにびっくりしてるの?名前呼んだだけなのに」

京子「い、いや、いままでそんなふうに呼ばれたことなかったから」

綾乃「ん?別に普通だと思うけど」

綾乃「そんで、一周して開いてるとこなかったわけなんだけど」

京子「あっ、たよ」

綾乃「ほんとに?」

京子「うん」

パタパタパタパタ
とてとてとてとて

京子「ここ」

綾乃「ああ、教室の上の窓か 、あんたキョロキョロしてたもんね」

綾乃「でもなんでさっき言わなかったの?」

21: 2011/10/22(土) 19:00:33.02 ID:MEf+Tm1u0
京子「い、いやだってあやのはバンバン進んでいっちゃうしらら、なにか言ったらじゃましちゃうかなって……」

綾乃「あのねぇ、言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」

京子「ごめんなさっ」

綾乃「じゃないと、なにしたらいいかわからないでしょ?わたしはあんたの力になりたいのに」

京子「ふぇ?」

綾乃「とりあえず自分の意見はちゃんと言うこと!もしまた何かあったら罰金ばっ……ばっ?」

京子「ば、バッキンガム!」

綾乃「そうそれよ!罰金バッキンガムよ!」

22: 2011/10/22(土) 19:01:51.17 ID:MEf+Tm1u0
京子「ええと、じゃ、じゃあ言っていい?」

綾乃「ええ、あんたの頼みならなんだって」

京子「その……あんたってのいや……かも」

綾乃「えっ」

京子「あやのも、きょうこ……って呼んでほしい」

綾乃「う、うん」

京子「じゃあいこ、あやのっ」

綾乃「ちょ、ちょっとひとりでいくと危ないわよ!きょ、きょうこ!」

23: 2011/10/22(土) 19:02:40.06 ID:MEf+Tm1u0


千歳「ふ~ん」

綾乃「なによっ!そのにやついた目は」

千歳「ああでも、どうやって上ったん?上の窓って結構高い気が」

綾乃「近くにちょうどいい木があったからそれに登っていったわ」

千歳「そりゃあまたちょうどいい所にあったなあ」

綾乃「他にも上窓があいてたところはいくつかあったけど木があったのはあそこだけだしね」

千歳「なるほど、それを見越して歳納さんは選んだわけやな、それにしても」

綾乃「ん?」

千歳「綾乃ちゃんと歳納さん木のぼりできたんやな」

綾乃「まあ当時から結構アクティブなほうだったからね」

綾乃「そしてなんとかして教室には入れたんだけど」

24: 2011/10/22(土) 19:04:08.80 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「とりあえず入ってきた窓はあけっぱにしとくわよ」

京子「う、うん」

綾乃「そのほうがぱっとみ分かりやすいしね」

綾乃「それで、あかりちゃんのお姉ちゃんの教室ってわかるの?」

京子「えっ、し、しらない」

綾乃「さすがに教室をしらみつぶしに探すのはむずかしいわよ」

京子「あっ!でもたしかお姉ちゃんは生徒会のようじがあるからそっちにお弁当を届けにいったって」

綾乃「あかりちゃんがいってたのね」

京子「う、うん」

綾乃「じゃあ目指すは生徒会室か」

京子「お、おう」

テクテクテク
トコトコトコ

26: 2011/10/22(土) 19:05:43.38 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「えっと、この地図によると生徒会室は三階か」

京子「あんないようの地図、みつけられてよかったね」

綾乃「まったくだわ、結局しらみつぶしになるとこだったのよ」

京子「それじゃ、いく?」

綾乃「うん、あ~そういえば」

京子「なに?」

綾乃「わたしね、生徒会長になるのが夢なの」

テクテクテクテク
カンカンカンカン

京子「せいと、かいちょう?」

綾乃「そう生徒会長!だってなんかかっこいいじゃん」

京子「生徒会長かぁ」

綾乃「きょうこは何かないの?」

京子「わたしは別に……」

28: 2011/10/22(土) 19:07:48.76 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「ふ~ん、つまんないわね~」

京子「えっと、3階だからもう一個上だね」

綾乃「そうね」

京子「あ、でも……あやのが生徒会長だったらわたしは部長とかやりたいかも」

綾乃「きょうこが部長の部活か、そうぞうできないなー」

京子「ひ、ひどいよぉ~」

綾乃「で、ここが3階なわけね」

京子「確かこの廊下の一番奥の部屋だよね、いこうあやの」

綾乃「なんかずいぶん積極的になってきたわね……」

29: 2011/10/22(土) 19:09:15.18 ID:MEf+Tm1u0


千歳「それでこの生徒会室に来たんやね」

綾乃「そうね、千歳そこの資料取って」

千歳「ええ、もう再開するん?話しの続きは?」

綾乃「いつまでも喋ってたら終わらないから、作業しながら話すわよ」

千歳「はいはい、これとこれと……ん?」

綾乃「どうしたの?」

千歳「そういえばこのハンカチはその時落としたんよね?」

綾乃「ああ、そのハンカチは確か途中で歳納京子がトイレに行きたいとか言いだして」

30: 2011/10/22(土) 19:10:57.59 ID:MEf+Tm1u0
ジャーーー

綾乃「まったく……トイレぐらいひとりでいきなさいよねっ」

京子「だってこわかったんだもん」

綾乃「もう……」

京子「あ!」

綾乃「どっ、どうしたの?」

京子「ハンカチない……」

綾乃「しょうがないわね、ほら、大事に使いなさい」

京子「えっと、ありがとう」

綾乃「ぶるっ……でも、きょうこじゃないけど何か出そうな雰囲気ではあるわね」

31: 2011/10/22(土) 19:12:30.53 ID:MEf+Tm1u0
京子「そういえばこの学校七不思議あるんだって」

綾乃「えっ、いやそんなものあるわけないって」

京子「あかりちゃんが言ってた」

綾乃「お姉ちゃんから聞いたって?」

京子「うん、増える階段とかしゃべる骸骨とか血だまりの女の子とか」

綾乃「く、くだらないこと言ってないでさっさと行くわよ!」

京子「あぁ~待ってよー」

33: 2011/10/22(土) 19:13:59.37 ID:MEf+Tm1u0


千歳「七不思議、そういえば聞いたことあったな~」

綾乃「まあ今考えるとくだらないけどね、当時は割と怖かったのよ」

千歳「そういえば、この生徒会室も七不思議のひとつだった気が」

綾乃「そうそう、確か呪いの生徒会室だっけ?」

千歳「なんか怨念がいて夜中に入った人を閉じ込めて食べちゃうとか」

綾乃「そうそれ、それを直前になって歳納京子のやつが思い出すから……」

34: 2011/10/22(土) 19:15:19.57 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「お、おんねんっ!?」

京子「う、うん」

綾乃「そっ、そんなものいるはずないわ!めいしんよ!」

京子「でもいるって……」

綾乃「ふっ、見てなさいきょうこ……わたしが今そんなものはいないと証明してみせるわっ!」

ガラッ!!

京子「ひっ!」

ガラーン……

綾乃「ほ、ほらっ誰もいないじゃない、おんねんなんて」

京子「おんねん?」

綾乃「……さすがにそれはさむいわね、却下だわ」

京子「だね……」

35: 2011/10/22(土) 19:17:52.83 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「じゃあプリントだっけ?さがしましょうか」

京子「う、うん」

綾乃「とりあえず鍵は一応しめとくわよ、誰か来てもこまるし」

ガサゴソガサゴソ
ガサゴソガサゴソ

サーーーーーーーーーーッ

綾乃「あれ?雨?」

京子「そ、そうだね」

綾乃「小雨っぽいから帰るまでに上がるといいね」

京子「う、うん」

ガサゴガサゴソ

綾乃「そういえばさ、その怨念に見つかるとどうなるの?あ、そっちの下とか見てみて」

京子「うーんとね、たしかー、あ、こっちにはないよ」

綾乃「暗くて探しづらいわね、電気……つけるわけにはいかないか」

京子「あ!思いだした!」

37: 2011/10/22(土) 19:19:41.35 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「なによ!びっくりするじゃない!」

京子「えっとね、怨念にみつかると確か」

綾乃「……うん」

京子「ここに閉じ込められて食べられちゃうんだっt」

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

京子「……って」

綾乃「…っ」

京綾「ひやあああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

38: 2011/10/22(土) 19:21:03.64 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「ちょっとちょっとなんなのよこれ!」

京子「え、えっと……ひゃ」

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

京綾「ふぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

京子「ちょ、ちょっとこれ…あ、あ」

ダッ ダッ ガサッ

京子「え?あれ?」

綾乃「ど、どうしたの?きょうこ」

京子「み、みつけた!あかりちゃんのプリント」

綾乃「へっ!?じゃ、じゃあさっさと逃げましょう」

京子「逃げる?どうやって……」

39: 2011/10/22(土) 19:23:17.93 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「ふふふふふふふふ」

京子「へ?あやのちゃん?」

綾乃「ふふふふふふふふ」

京子「……ど、どうしたの?」

綾乃「こうなったら正面突破よ!」

京子「ええええええええええええ」

綾乃「だってこうしてたってしょうがないでしょ?」

京子「いやだよぅ……うう」

綾乃(わたしだってそんなのいやよ、でもこのままじゃ)

京子「だって、わたしのせいでここに来たのにっ、わたしのせいであやのを危険なめに」

綾乃「泣いてんじゃないわよ!いいからついてきなさい!」

京子「無理だってぇ、わがままだよあやのちゃん」

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

綾乃(うう、足が震える……でも)

綾乃(でも、きょうこを守らないとっ)

41: 2011/10/22(土) 19:25:23.16 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「いいきょうこ?時にはね、我がままにならなきゃいけない時だってあるの!」

京子「わが……まま?」

バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

綾乃「そうよ!それにあんたは普段から控えめすぎ!もっと自分の意見を言っていいの!」

綾乃「もっと周りを信用しなさい!もっと周りに頼って甘えてわがままになっていいのよ!」

綾乃「わたしだってあなたの役に立ちたいのよ!だからここまで付いて来たの!」

綾乃「つぎわたしに迷惑かけるとか言ったら、罰金バッキンガムなんだからあああああ!」

京子(もっと、頼っていい……)

綾乃「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

京子(もっと、甘えてもいいんだ……)

綾乃「観念しなさいおんねええええん!うおりゃああああああああ」

ガラッ!!

綾乃「ど、どう……なの?」

42: 2011/10/22(土) 19:26:44.70 ID:MEf+Tm1u0
シーーーーーーーーーン

綾乃「あれ?だれも……」

京子「……いない?」

綾乃「ふふふふふふふふふふふふ」

綾乃「はっーーーーはっは!わたしにおそれをなして逃げ出したかおんねん!!」

京子「す、すごいねあやの」

綾乃「そ、それほどでもないわよ」

京子「で、でもすごいよあやのは」

綾乃「こ、こほん、じゃあ帰りましょうかっ」

43: 2011/10/22(土) 19:28:10.38 ID:MEf+Tm1u0


千歳「ほ、ほんまにっ七不思議にあったの?」

綾乃「子供のころだから確証はないけど、何かあったのは事実かしらね」

千歳「ふ~ん、不思議なこともあるんやね」

綾乃「それで、終わればよかったんだけど」

千歳「えっまだ何かあったの?」

綾乃「さあ、さっさと残りの資料かたしちゃいましょう」

45: 2011/10/22(土) 19:29:48.88 ID:MEf+Tm1u0


京子「あ……どうしよう」

綾乃「な、なにかあった?きょうこ」

京子「落としてきちゃった」

綾乃「え?」

京子「あやののハンカチない……落としちゃったかも」

綾乃「なーんだそんなことか、別にいいわよハンカチぐらい」

京子「で、でもあやのに貸してもらったものだし」

綾乃「戻るとまたこわいおもいするかもよ?」

京子「こわい、おもい……ごくっ」

綾乃「いやでしょ?だったら」

京子「でも行こうよ!」

46: 2011/10/22(土) 19:31:43.44 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「へっ?」

京子「じゃなくて……わたしは行きたい」

京子「戻って、あやののハンカチ取ってきたい」

京子「そう、したいの」

綾乃「きょうこ……」

京子「いいよ、ひ、ひとりでもとってくるから」

綾乃「ふっ……」

京子「え?」

綾乃「しょうがないからわたしもついてってあげる」

綾乃「なんたって貴重なきょうこのわがままだからね」

京子「あやの……ありがとう~!」ガシッ

綾乃「は、離れなさいよっ、きょうこ」

京子「あは、ごめんごめん」

京子「それじゃあいこうっ、あやの」

48: 2011/10/22(土) 19:34:37.00 ID:MEf+Tm1u0


カンカンカンカン

京子「3かいにとうちゃくっと、ん?」

綾乃「光?なんだろ?」

京子「あやの、あれ見て」

綾乃「ライトの光?誰だろう」

京子「きっとけいびいんさんだよ」

綾乃「け、警備員さんっ?」

京子「全然部屋の前から動かない、どうしよう……」

綾乃「普通に話せばいれてもらえるんじゃない?」

京子「だ、だめだよ!」

綾乃「なんで?」

京子「けいびいんさんに見つかると放り出されちゃうんだよ!」

綾乃「……って言ってたの?」

京子「うん、ゆいが」

50: 2011/10/22(土) 19:36:25.60 ID:MEf+Tm1u0
京子(それに、普通じゃ面白くないしね……ってあれ?なんか今わたしワクワクしてる)

綾乃「きょうこ、なんか顔がにやついてるけど変なこと考えてないわよね」

京子(けいびいんさんをどかせる……方法……夜の学校……学校?……七不思議……)

京子(近くには美術室……空き教室……揺れてる?……カーテン……!)

京子「ねえねえあやの!」

綾乃「な、なによっ!」ビクッ

京子「いいこと思い付いちゃったかも」


そういって京子は廊下の奥、光の方向を見つめた
その目は、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように爛々と輝いていたような気がする

思えば、この時からだったのかもしれない

七森中、歳納京子最初の騒動

共犯が自分だとは、思いもしなかったけどしなかったけど

51: 2011/10/22(土) 19:38:31.47 ID:MEf+Tm1u0
会長(やば……ミスった、さっきの最後は「思いもしなかったけど」です)

52: 2011/10/22(土) 19:40:10.67 ID:MEf+Tm1u0


警備員「ああ、やっぱり開いてたか」ガチャガチャ

警備員「さっきなんか気配がしたから来てみたけど、まあ閉め忘れに気づけたからよしとしよう」

警備員「それにしても……やっぱ夜の学校って怖いよな、最近この職についたばかりだしまだ慣れないっつーの」

ガタガタッ

警備員「うおっ!なんだ窓か、この学校今どき七不思議なんて噂があるから無駄にびびるぜ」

警備員「今の時代、そんなのただの迷信……」

トン……

警備員「へ……?」

トン……トン……

トン……トン……

警備員(誰かが壁を叩いている?いたずらか?)

警備員(た、確かめてやろうじゃねぇか!ら、ライトは消しておいて……)ソローリ

警備員「だ、誰かいるのか!」

53: 2011/10/22(土) 19:41:48.03 ID:MEf+Tm1u0
警備員「なんだ、いねぇじゃねぇか……ん?」

ツーー、ピチョン

警備員「なんだ?この壁妙に濡れて……」

ヒュー、ヒュー

警備員(向こうの窓が、開いてる?雨がふきこんでるのか?)

警備員(まったく……いったい誰が開けたんだか)

ピチャッ……

警備員(なんだ?足元に、水溜まり?いや……雨がふきこんだだけにしては量が)

ピチャッ……

警備員(そうだ!ら、ライトをつければっ)

パッ

55: 2011/10/22(土) 19:44:22.34 ID:MEf+Tm1u0
警備員「ひっ!……あ」

ライトが床を照らし出す

赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

一面の 赤

警備員「うひぃあああ……」

警備員(なんなんだよこの赤い水溜まりは!血?いやそんなわけ……あれ?確かこんな七不思議があったような……)

ピチャッ……

警備員(確か、赤い血だまりとその後……)

ウヒヒッ

警備員(女の子の……幽霊)

ヒヒッ

あれは、なんだ
警備員はいままでにない焦燥に囚われていた
廊下の向こう白い布を纏ってる少女のようなもの
あれはいったい……まさか

56: 2011/10/22(土) 19:46:17.15 ID:MEf+Tm1u0
ヒヒッ

少女がジリジリと近づく

ウヒヒッ

警備員「く、くるなぁ……」

ヒヒッ

そして少女は

笑った

警備員「っ……!」

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

少女の笑い声が廊下を満たす

もう、何も考えられなかった

警備員「うわあああああああああああああ!!!」

逃げる、逃げる、逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる
ライトを落としたが気にしない
とにかく下へ!下へ!下へ!下へ!出口へ!
早く早く早く早く早く早く早く早く早く!

57: 2011/10/22(土) 19:48:15.08 ID:MEf+Tm1u0
ダンッ!

やっと一階……
さすがにここまでは追ってこれないだろう
はぁはぁ、はぁはぁ
さっさと帰っ

ピチャ……

え?

なんでここにも水溜まり
いや水じゃない、だってこれは……


「ねえ」


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

そんなはずは……だって全速力で走って来て、ここは1階なの、に


「どうして逃げるの?」


意識が保てたのは、そこまでだった

58: 2011/10/22(土) 19:50:07.36 ID:MEf+Tm1u0


カンカンカンカン

京子「あ~やの~」

綾乃「あ、きょうこ!」

京子「どしたの?なんか倒れる音したけど」

綾乃「なんか気絶しちゃったみたい」

京子「いがいと根性ないんだな~一応しかけはまだのこってるのに」

綾乃「いやいや、きょうこの笑い声こわすぎだって、まあとりあえず成功したのはいいけど」

京子「へっへーん、どう?名演技だったでしょ」

59: 2011/10/22(土) 19:51:26.06 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「まったくこのカーテンを体に巻くのといいよく思いつくわね」

京子「かっぎは~どこかな~」ゴソゴソ

綾乃「あの赤色は絵の具でも使ったの?」

京子「ん~?絵の具だけじゃものたりなかったから美術室にある赤いやつを適当にどばっと、くらやみだとけっこうびっくりするんだよ」

綾乃「ほんとうにただの学校あらしね、はやくじこうになることをねがってるわ」

京子「じこう?あ!かぎはっけーん!」

綾乃「まとめてあるタイプか、戻ってそうあたりするしかないわね」

京子「よっしゃいくぞ~」

綾乃「はいはい」

62: 2011/10/22(土) 19:54:51.43 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「ふー、かいだんのぼりすぎて疲れて来たわ、足きっつー」

綾乃「あ、雨も上がったみたいだね、よかった」

ガチャガチャ、ガチャガチャ

京子「これじゃなくて、えっとこれでもなくて」

綾乃「…………」

京子「こ、こっちか?うおりゃ~」

綾乃「ねえ、としのうきょうこ」

京子「なあに?あやの」

綾乃「あんたもうおんねんとかこわくないの?」

京子「べっつに~あ!開いた!」

綾乃「ふ~ん」

京子「だって……あやのがまもってくれるんでしょ?」

綾乃「ぬわぁっは!ななななな」

63: 2011/10/22(土) 19:55:59.54 ID:MEf+Tm1u0
京子「どうしたの?」

綾乃「きょ、きょう……と、としのうきょうこ!」

京子「またそのよびかたしてる」

綾乃「べっ、べつにどんな呼び方しようとわたしのかってでしょ?ちゃんと名前は呼んでるんだから……」

京子「まーわたしはどっちでもいいけど~、それに」

綾乃「それになによ」

京子「あたふたしてるあやの、かわいいし」

綾乃「ぬんふぁっがはっ!!」

京子「じゃあ入ろうか~」

綾乃「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ~」

京子「さあ!おーーーーぷ

64: 2011/10/22(土) 19:59:19.38 ID:MEf+Tm1u0


ダンッ!!

綾乃「な、なに?」

??「はぁ、はぁ、おーまーえーらー!、そこでなにしてる」

綾乃「うげっ!」

京子「ち、血まみれ警備員!」

綾乃「血まみれにしたのはあんたでしょ」

警備員「そこを動くなよ……つかまえてやる!」

綾乃「に、逃げるわよとしのうきょうこ!」

京子「えっ!でもあやののハンカチが」

綾乃「いまは逃げ切ること優先よっ!」

京子「う、うん!」

ダダダダダダダダダダ!!

警備員「まてこらああああああああ!!」

65: 2011/10/22(土) 20:00:18.92 ID:MEf+Tm1u0
警備員「こ、このやろっ!……って、うああ!」

ズルッ!

警備員「なっ!」

ダーン!

京子「あはは、こけてやんのー」

綾乃「す、少しは楽になるといいけど」

京子「いちおう2階にも水溜まり作っておいて正解だったね」

綾乃「たいへんだったけどね……」

67: 2011/10/22(土) 20:02:01.65 ID:MEf+Tm1u0


タッタッタッタ、トンッ!

綾乃「よし!1階!」

京子「あやの、入ってきた教室から出よう!」

綾乃「そうね、正面はあいつが回り込むかもしれない」

京子「教室の場所、おぼえてる?」

綾乃「確か、もう少し先……こ、ここ!」

京子「よし、つ、つくえにいすのっけて」

綾乃「支えてるから先にいきなさい!」

京子「わ、わかった!」

京子(お、落ち着いて木に……)

京子「よ、よいしょ!」タンッ!

綾乃「なんとかわたれたわね?」

京子「う、うん!はやくあやのも!」

69: 2011/10/22(土) 20:04:39.43 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「いまいくわ!」

ガチャガチャ、ガチャガチャ

綾乃(よし、あとは飛びうつるだけ……)

京子「あやのっ!つかまって!」

綾乃(このきょうこの手をにぎればっ)

ズルッ

京子「えっ……!」

綾乃「あっ……!」

綾乃(開けっ放しにしておいた窓のサッシ、風で雨がふきこんで……!)

京子「あやのーー!」

ドンッ!








おしまい

70: 2011/10/22(土) 20:05:42.51 ID:MEf+Tm1u0


千歳「ええええええええええええええええええ」

綾乃「うるさい」

千歳「終わりなわけないやろ!綾乃ちゃんは?歳納さんは?そのあとどうなったんたんたんねんなの?!!」

綾乃「興奮しすぎて日本語おかしくなってるわよ千歳」

千歳「だ、だってえなあ!いくらなんでも……」

綾乃「ほんとに何も無かったの、わたしは怪我もしなかったしその後は普通に帰っただけよ」

千歳「ほ、ほんまに?普通でもいいから聞きたいんやけど……」

綾乃「それに最後のほうはよく覚えてないから、そう、夢みたいな感じで」

千歳「夢ねえ……」

綾乃「さあ、さっさと片付けちゃいましょう、午後からは1年生組もくるんだしね」

千歳「わかった、綾乃ちゃんがそういうなら、ちゃちゃっとやってまおうか」

綾乃「今日中に終わらなかったら罰金バッキンガムよ!」

71: 2011/10/22(土) 20:07:59.09 ID:MEf+Tm1u0


~夕方

櫻子「ふ~ああ、もうこんな時間か」

向日葵「もう夕方ですわね」

綾乃「じゃあ今日はここまでにしましょうか」

千歳「みんな頑張ったからあらかた片付いたな~」

綾乃「そうねみんなお疲れ様」

櫻子「じゃ、じゃあ用事があるんでお先に失礼します!向日葵はやく~」

向日葵「ま、待ちなさい櫻子!すいませんお先します!」

千歳「気にせんといて~」

綾乃「千歳、あなたもお疲れ様」

千歳「綾乃ちゃんこそ、あれ?綾乃ちゃんは帰らへんの?」

綾乃「うん、わたしはもうちょっと残っていくわ」

千歳「じゃあわたしも……」

72: 2011/10/22(土) 20:08:52.35 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「いいわよ、今日は1日付き合ってもらったんだし、それに待ってるんでしょ?千鶴」

千歳「夕飯ぐらい先に食べててもいいのにな、それじゃお先に上がるわ、綾乃ちゃんも気いつけてな」

綾乃「お疲れ様~」

綾乃「会長も午前からお疲れ様でした」

会長「…………」コクッ

テテテテテテテ

73: 2011/10/22(土) 20:10:57.30 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「…………」

綾乃「静かになったわね」

綾乃「う、う~ん」

たった一人の無音の世界
差し込んだ夕陽が部屋を赤く染めていた

綾乃(そういえばあいつに会ったのもこんな時間帯だったな)

いつの間にか手に握っていたハンカチをテーブルに置く

綾乃(夢……か、千歳にはあんなふうに言ったけど、あの後のことは本当にあいまいで)

綾乃(ほんとに、ただの夢だったのかも……)

綾乃(あいつとの、思い出も)

綾乃「うう……なんか色々考えてたら眠くなってきた」

綾乃「誰もいないし、少し眠ってもいいよね……」

綾乃(もしかしたら……夢の中でまたあいつに)

綾乃(会いたいよ、京子……)

76: 2011/10/22(土) 20:12:42.23 ID:MEf+Tm1u0


帰り道、いつまでもいつまでも京子は泣いていた

わたしのほうはいたって無事、なんてことないピンピンしてる
でもこいつはきっと自分のせいだって背負いこんでる

そういうやつなんだ

だけど、いったいいつになったら泣きやんでくれるんだろう


――いつまでたってもお姫さまは泣き止みませんでした――

――それを見た王子さまはほとほと困り果ててしまいました――

77: 2011/10/22(土) 20:13:52.47 ID:MEf+Tm1u0


京子「うひっ、ひっ、うぇぇええええん」

綾乃「いい加減泣きやみなさいよとしのうきょうこ」

京子「だって、うぅ……あやのが、あやのが」

綾乃「大丈夫だって、ほらたいしたケガじゃないから!歩けるから!」

京子「だってぇえ……ふぇええええええん」

綾乃「もう……泣き虫はそつぎょうしたと思ったんだけど、そう簡単にはいかないか」

78: 2011/10/22(土) 20:15:15.71 ID:MEf+Tm1u0


通りかかる道のそば、駄菓子屋らしき店の光が怪しく光っていた
コンビニでもあるまいし、今の時間やってる店なんてないはずなのに
よくある、冷凍庫に入っているアイスの群れが目に入った

――王子さまは泣きむしのお姫さまの好物がアイスだということを思い出しました―

80: 2011/10/22(土) 20:16:13.53 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「あ!そういえばアイス好き?」

京子「う、うん」

綾乃「アイス食べるわよね!ちょっと買ってくるわ、そこで待ってなさいよ!」

テテテテテテテテテ

綾乃「あの~、すいませ~ん」

綾乃(誰もいないのかな?明かりはついてるんだけど)

綾乃「すいませ~ん、アイス欲しいんですけど~」

??「あ~はいはい今いくよ」

綾乃「ああえっと、夜分にすみません」

??「いいよいいよ、うちはそういうところだからね」

82: 2011/10/22(土) 20:17:45.09 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「えっと……?(綺麗な女の人……てっきりおばあさんが出てくるかと思ったのに)

女店主「あんたはアイスを欲しがってここに来たんだろ?ここはそういう場所ってことさ」

綾乃「その、よく意味が……(綺麗な赤い髪、それにスタイルもいいな)」

女店主「今はわからなくてもいいのさ、買っていくんだろ?」

綾乃「あ、はい!(ええと何にしよう……って)」

綾乃「その、全部ラムレーズンしかないんですけど」

女店主「ならそれはきっとそうなんだよ、あんたはここでラムレーズンを買う運命なのさ」

綾乃「うん、めい?」

女店主「今はまだわからないだろうね」

綾乃「ええと、とっ、とりあえずこれ買います(これ以上待たせられないし……)

女店主「まいどあり」

綾乃「あ、ありがとうございました」

テッテッテッテッテッテッテ

女店主「とりあえず、頑張りなさいよ」

83: 2011/10/22(土) 20:18:39.48 ID:MEf+Tm1u0


京子の所にたどり着いてふと後ろを振り返ると店の明かりは消えていた
まるでわたしを待ってたかのように、その役目を終えたかのように
初めから店なんてなかったかのような、暗い路地だけがそこにあった

――王子さまは不思議な商人からアイスを買いお姫さまのところへ戻りました――

84: 2011/10/22(土) 20:19:27.40 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「ほら、買って来たわよとしのうきょうこ」

京子「ふぇ、ぐすっ……うっ」

綾乃「ラムレーズンしか無かったけど食べれるでしょ?」

京子「う、うん…ふ、ふぇえ…うぐ」

綾乃「ほ、ほら食べなさいよ」

京子「あぐっ、えぐっ」

86: 2011/10/22(土) 20:20:43.71 ID:MEf+Tm1u0


大粒の涙を流しつつアイスをほおばる京子
美味しい美味しい言いながらぼろぼろと泣いて
まったく……

――しかし好物のアイスを 食べてもまだ泣き止みません――

87: 2011/10/22(土) 20:21:38.48 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「美味しい?」

京子「へぐっ、ふぐっ、お……おいしい」

綾乃「泣きやんだ?」

京子「ぶふっ、ふわああああええええん」

綾乃「はあ」



どうやったら泣きやむんだろう
そういえばさっきから何か頭の隅に引っ掛かってるような
ああ、似てるんだ今日読んだあの本に

――その時王子さまはどこかで聞いた魔法を思い出しました――

88: 2011/10/22(土) 20:22:35.71 ID:MEf+Tm1u0
泣いてるから全然食べれてないじゃない
さっきからぼとぼとこぼしてさ

くちの周りにだってアイスのかけらがこんなに
まったくこんなに美味しそうに

――その魔法を使うとお姫さまはたちまち泣き止みました――

   ――王子さまの使ったその魔法とは――

90: 2011/10/22(土) 20:24:16.52 ID:MEf+Tm1u0


ドクン、ドクン

綾乃「としのうきょうこ」

京子「ふへっ、ぐすっ」


その時の自分がどんな顔をしていたかはわからない
でも、すごく時間がゆっくり流れてて空気が甘かったのは覚えてる


綾乃「その……目を閉じて」

京子「め……?」

綾乃「いまから、魔法をかけてあげる」

京子「まほう……?」

綾乃「そう、魔法」

91: 2011/10/22(土) 20:25:29.21 ID:MEf+Tm1u0
ふうっ

息を吸い込む、京子からのラムレーズンの匂い
いや、京子の甘い匂い
可愛すぎて食べちゃいたいぐらいだ
どくんと心臓がなるのが自分でもわかる

甘ったるい匂いの中心
そこに優しく口づけをした

はじめてのキスは涙とラムレーズンの味がした

綾乃「ちゅっ」

京子「んうっ、はっくちゅ」

綾乃「はぁ……はぁ……」

京子「ふぅ……はぁ」

93: 2011/10/22(土) 20:27:23.72 ID:MEf+Tm1u0
顔は見れなかった
どんな顔で、どんな目で自分を見てるか
すごくこわかった

綾乃「えっと……」

京子「…………」

京子「あっ、もう遅いね」

綾乃「そう、だね」

京子「えっと、その、わたしかえるね」

綾乃「う、うん」

京子「じゃ、じゃあね」

タッタッタッタッタッ

綾乃「あ……」

行かないで、待って、もう少しだけ一緒に
頭の中がぐわんぐわんしたけど、何も繋ぎとめるための言葉は出てこなかった
ただ、京子の去っていった道をいつまでも見ていた

いつのまにか頬を涙が伝っていた

あの涙の味は、どっちのものだったんだろう

94: 2011/10/22(土) 20:28:56.54 ID:MEf+Tm1u0


綾乃「う、ううん……はっ!」

綾乃(ずいぶん寝た気がしたけど……まだ暗くはなってないみたいね)

綾乃「きれいな夕焼け、さっきと全然変わってないみたい」

綾乃「いや……そんなことより、急いで帰らないと…って」


??「……起きた?」


綾乃「……なんでここに?」

??「な~に泣いてんだ?綾乃」

綾乃「とっ、歳納京子!」


あわてて涙を拭う、よりによってこいつに見られるなんて


綾乃「そ、それよりどうしたのよ?学校は明日からよ」

京子「いやだなーいくらなんでもそれぐらいわかってるってば」

綾乃「じゃあどうして……」

108: 2011/10/22(土) 21:00:10.46 ID:MEf+Tm1u0
これで大丈夫かな?解除方法教えてくれた人ありがとうございます

110: 2011/10/22(土) 21:06:19.47 ID:MEf+Tm1u0
京子「ちょっとね……綾乃に来てほしいところがあるんだ」

綾乃「えっ?」

京子「それじゃいっくぞー!」

綾乃「ま、待ちなさいよ!」

歳納京子は私の手を取って強引に歩き出す
なんかあの時は逆で変な感じがする

嬉しいような、そうじゃないような

綾乃「ど、どこいくのよ~」

京子「ついてくればわかるって~」

綾乃(なんなんだろうこの気持ちは……)

114: 2011/10/22(土) 21:13:06.78 ID:MEf+Tm1u0


手をひかれながら自分の気持ちを整える、きっともう答えは出てるんだ

そういえばここ最近はずっと歳納京子を見ていた気がする
ちょっと危なっかしくて、でもそれでいて……
この気持ちはきっと……わたしは京子のことが

京子「ここだよん」

綾乃「ここって……いつもの部室じゃないの」

京子「そうそう、さあ入って」ガチャリ

綾乃「また勝手に鍵取って来て……」

京子「いいからいいからーほれほれ」

綾乃「…………」

京子「入らないの?」

綾乃(ここから先に進むと何かが変わる気がする)

綾乃(もう仲のよかったみんなでの日常に戻れない、そんな予感が……)

綾乃(歳納京子にはいつも迷惑をかけられて困ってるはず……でも)

京子「さっきから顔が変だよ、どうかした?」

115: 2011/10/22(土) 21:16:19.43 ID:MEf+Tm1u0
京子「やっぱり、無理やりつれてきちゃだめだよね、ごめんわたし、またわがまま言っちゃったね」

綾乃(これを逃したらもうこんな歳納京子の顔なんて……)

綾乃(わたしは……)

綾乃「大丈夫だよ」

京子「えっ?」

綾乃「いいよ、私京子のだったらわがままだってなんだっていい」

綾乃「京子と一緒ならどんなとこだっていけるよ」

京子「綾乃……」

綾乃「部室に入るんでしょ、いこう?」

京子「う、うんっ!」

118: 2011/10/22(土) 21:21:44.55 ID:MEf+Tm1u0
ガラッ


綾乃「で、なんなの?その用事って」

京子「まー座りなよ、ほれほれ」

綾乃「え、ええ」


京子「その……これっ!」


綾乃「なに、このビニール袋?」

京子「いいから開けてみて!はやくはやく」

綾乃「そんな急かさなくても開けるわよ」


コトッ


綾乃「なんだ、いつものラムレーズンじゃない、それに1つしかないし……」

綾乃(……あれ?このアイスどこかで見たような、この蓋といい模様といい……)

綾乃(……もしかして、これって)

121: 2011/10/22(土) 21:27:16.71 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「歳納京子、どうしてこれっ」


京子「だって記念日でしょ」


綾乃「えっ…」


京子「わたしと綾乃が初めて会った日」

綾乃「うそ……覚えてたの?」

京子「わたしも今日まで忘れてたんだけど、今日あかりたちと宿題やってたら、そういえば前にもこんなことあったなーって」

綾乃「私も……今日思い出したんだ、あのハンカチを生徒会室で見つけて」

京子「なつかしいな~、結局返せないままだったんだっけ、それにしてもよく去年顔合わせた時に気付かなかったもんだ、うんうん」

綾乃「ほんとに、そうね」

京子「あれれ~綾乃また泣いてるぞ~」

綾乃「いや、べ、別に嬉しくて泣いてるんじゃないんだからねっ!」

京子「泣きながら言っても全然説得力ないぞーうりゃりゃ~」ムニムニ

綾乃「ほっ、ほっへひっはんはいでよ~、なみはがほまらないんだからひかたないじゃない……」

122: 2011/10/22(土) 21:32:31.38 ID:MEf+Tm1u0
京子「はいっ、そんなときのためのラムレーズン!」

京子「いや~大変だったんだよ、思い出した時もう夕方だったし、でもあそこ開いてて良かったよ、アイスは1つしかなかったけど」

綾乃(あそこ、まだやってたんだ……)

京子「というわけで、はい綾乃、あ~ん」

綾乃「ふええ!?」

京子「泣いてるほうが先に食べるのがルールなの、ほら、溶けちゃうよ?」

綾乃「る、ルールなら仕方ないわね……ルールなら」

綾乃「あ、あ~~ん」パクッ

京子「おいしい?」

綾乃「お、おいひい」

京子「そういえばさ~あれも思い出したんだよね」


京子「綾乃のちゅ~~」

綾乃「ごふらっ!げほげほ」

123: 2011/10/22(土) 21:36:18.23 ID:MEf+Tm1u0
綾乃「い、いやあれはその……ほんの出来心でなんていうかその、ほんとにごめんっ」ゴンッ!!

綾乃「あいったあ!」

京子「畳にしてはすごい音したね」

京子「それでね綾乃、わたしは」

綾乃「だ、だからほんとにごめ、むぐっ、あ、あいふ?」

まるでこれ以上しゃべるなとでも言うように京子はアイスを突っ込んできた

京子「あのね綾乃、わたしは……」


ごくっ、生唾と共にアイスを飲み込む
火照った体に冷たいアイスがすーっと染み込んだ


京子「すごく、嬉しかったよ」

綾乃「えっ……」


今、京子はなんて


京子「だから、わたしはあの時の綾乃の気持ちがすごく嬉しかった」

125: 2011/10/22(土) 21:41:01.33 ID:MEf+Tm1u0
涙がぼろぼろとこぼれた
自分の中でアイスと一緒に何かが溶けていくのがわかった
もうわけわかんなくて、頭の中ぐちゃぐちゃで

それで、それで

京子「まーた泣いてこの子はもう、なでなでー」

綾乃「ぐっ、ぐすっ」

京子「あ!そういえばこんな時に使う魔法があったんだっけ」

綾乃「……え?ちょ、ちょっと京子」


京子が座っている私に覆い被さるようにせまってくる
動こうにも腰が抜けてうまく立てない


綾乃「そ、そのっ、こういうのはなんていうか」


ジリジリと近づく京子に合わせてこちらも後ろへとずり下がる

127: 2011/10/22(土) 21:43:35.71 ID:MEf+Tm1u0
トンッ

綾乃「へっ?」

京子「もう壁だよ、綾乃」


京子の顔が近すぎてもう火を吹くどころの騒ぎじゃない
もうなんで泣いてるのかすらわからない


綾乃「ちょ、ちょっとタンマ!待って京子!そ、その心の準備ってやつができてないっていうかあのもう少しまっ」

京子「うるさい」

綾乃「んぐっ!うむっ」

冷たいラムレーズンの味が乾いた口っぱいにひろがる

そして……

130: 2011/10/22(土) 21:48:13.29 ID:MEf+Tm1u0
チュッ

綾乃「んん、あああ……」

京子「くちゅ、はっ、んん……」

綾乃「ぷはっ、う、むぅぅ……」

京子「はぁ……やっちゃった」

綾乃「もう……」


また、京子とキスしちゃったんだ
私は自分の唇に触れながら鼓動が高鳴るのを感じる
あの時と同じ甘いアイスと京子の匂い


2回目のキスは涙とラムレーズンと

しあわせの味がした

133: 2011/10/22(土) 21:50:32.14 ID:MEf+Tm1u0
京子「あ、ねえ綾乃」

綾乃「う、んあ?」

京子「口から白いの溢れてる」

綾乃「ふぇぇ!あ、あう」

京子「動かないで、なめてあげる」


京子のかわいい舌が頬を這う、まるで別の生き物みたいに動いてはうぅ


綾乃「く、くすぐったい……」

京子「きれいになったね、綾乃、アイス食べる?」

綾乃「ま、また?別に食べてもいいけど」

京子「はい、あ~ん、今度はこぼしちゃだめだよ」

綾乃「あむっ、こぼさないわよ、京子は食べないの?」

137: 2011/10/22(土) 21:53:58.23 ID:MEf+Tm1u0
京子「わたしも食べるよ、でも……」

綾乃「でも?むぐむぐ」


京子「綾乃の唇のほうが美味しそうだから」


綾乃「んんっ!?」


京子「いただきます」


綾乃「ん~ん~…………あ、あぅ」


3回目のキスは、もうどうにでもなれ


京子「うんっ……じゅる」

綾乃「んあっ……ひゃうっ」

138: 2011/10/22(土) 21:56:42.56 ID:MEf+Tm1u0
冷たいアイスと火照った京子の唇の温度が不思議な感覚をわたしの中に生み出す

激しく音を出しながら私の中のアイスを京子が私ごと吸っていく
ラムレーズンの味と京子の味が混じりあい頭が熱を帯び、ぼーっとして、回らなくなってくる
だがその緩慢も次のキスの瞬間にはじけて白へと変わる

繰り返すたびに体がビクッと弛緩する
指をからめ手をギュッと握り体を重ねた


京子「んはっ……あ、綾乃」

綾乃「はぁはぁ、なに?」


京子「気持ちいい?」


綾乃「んんっ!…………う、うん」

京子「にひっ…………私も、ちゅー」

綾乃「って京子またやるの!?、ううんんんー!」

143: 2011/10/22(土) 22:04:31.07 ID:MEf+Tm1u0
私の全身はもう京子を望んでいた
望んで仕方が無かった

京子「ふぅ……はぁはぁ」

綾乃「ねぇ京子……」

京子「なに?」

綾乃「あ、あのね……」

ガグガク震えて動かないの膝のかわりに手で這ってアイスのところまでいく
自らためらいなくアイスを加え口を突き出す

綾乃「も、もうひっかい……」

京子「……うん」

そしてまた、甘い匂いへと堕ちていく

144: 2011/10/22(土) 22:07:45.86 ID:MEf+Tm1u0
ふと、京子が何かを思い出したように口を開いた


京子「あ、そういえばこんなことした後で言うのもなんだけど」

綾乃「うん?」


京子「好きだよ、綾乃」


綾乃「…………っ!」プルプル

京子「あれ?どうしたの?」


綾乃「あ……ほ、ほんとね、言うのがおそいっつーの!、ばか京子」


涙が出て止まらない、でも、せいいっぱいの笑顔でわたしも答えよう


綾乃「私も……好きだよ、京子」

148: 2011/10/22(土) 22:16:32.51 ID:MEf+Tm1u0
長く長い白い時間
お互い何回重ね合わせたかはわからない
月明かりだけが照らし出す部室の中
わたしたちは幸福を感じあった


朝……わたしたちは部室で目を覚ました
目を開けるとそこには、大好きな人の顔があったのだ
思わずぎゅっと抱きしめた
寝ぼけてけられた いたい
しょうがないからキスで許してやる、ありがたく思うんだぞ、ばか京子


そしてそんなことをしてたら危なく新学期初日から遅刻するところだったり、あんなハプニングが起きたり
今回割愛した諸々の話は





また、別の機会にでも

149: 2011/10/22(土) 22:19:57.90 ID:MEf+Tm1u0



――そして季節は流れ、あれだけ青々しく茂っていた樹木はもうすぐ秋色に染まろうとしていた


向日葵「もうすっかり秋ですわね」

櫻子「そうだね~なんだかお腹が空いてきたよ」

千歳「やっぱり食欲の秋やな~」

会長「…………」

櫻子「ねえ向日葵~なんか食べていこうよ~もう帰る時間だし」

向日葵「少し落ち着きなさい櫻子」



カキカキカキカキカキ……

綾乃(やっぱりあの時のことを思い出すとさすがに恥ずかしくてしにそう…うう)

綾乃(ふぅ…とりあえず、今日はここらへんまででいいか、後は別の機会ってことにしよう)

綾乃(見直しは…いいか、こんな恥ずかしいレポートなんて見返したくないし……)

151: 2011/10/22(土) 22:21:34.47 ID:MEf+Tm1u0
ちなつ「なに書いてるんですか?」

綾乃「うわぁあああ!よ、吉川さん?」

ちなつ「えっと、京子先輩が呼んでましたよ、それよりも何ですかこれ?ずいぶん熱心にやってましたけど」

綾乃「えっとこれは京子が」

ちなつ「京子先輩が?」

綾乃「い、いやなんでもないわよ!あはは」


綾乃(京子に書かせられてるなんて言えないわよね、それにしても罰ゲームだかなんだか知らないけど最初の日のことをレポートで書いて提出なんて恥ずかしすぎるわ)

綾乃(ああ、最初にいかせられたほうがなんでも罰ゲーム受けるなんてやらなきゃよかった)

152: 2011/10/22(土) 22:23:28.80 ID:MEf+Tm1u0
ちなつ「う~む、なんかやたら最近仲がいいですよね京子先輩と」

綾乃「きょ、京子と?全然そんなことないわよ」

ちなつ「ほら、普通に京子って呼ぶようになりましたし」

綾乃「やばっ」

ちなつ「やっぱり怪しいですね、ふふふ、さあ観念してそれを見せてくださ」


あかり「ち な つ ち ゃ ん !」ガシッ


ちなつ「え?あかりちゃん?」

あかり「ほら、用事伝えたら早く帰ろう?」

ちなつ「ええ?でもあかりちゃんは気にならないの?」

あかり「人は誰でも突っ込まれたくない事情のひとつやふたつあるんだよ、ちなつちゃんだって知られたくないことあるでしょ?」

ちなつ「まあ、あかりちゃんがいうなら仕方ないか、えっと、すいませんでした」

綾乃「い、いえわかってもらえればいいのよ」

あかり「ほらほら結衣ちゃんも呼んでたしいくよ」

ちなつ「ええ?結衣先輩が!ちょっと速効でいってくる」ズドドトドドド

156: 2011/10/22(土) 22:25:39.35 ID:MEf+Tm1u0
あかり「あははは……」

綾乃「赤座さんありがとうね、毎回」

あかり「いえいえ、わたしは……応援してますから」

あかり「あ、早く行ってあげたほういいですよ、京子ちゃん昇降口のとこで待ってますから」

綾乃「あ、うん」

綾乃(とりあえずこれはまた書くから、ここの一番下に伏せておけば大丈夫かな)

綾乃「じゃあ行ってくるわ、ありがとうね赤座さん」タタタタタ

あかり「そろそろあかりも行こうかな、ってうわあ!」


ガシャガシャドーン!!

157: 2011/10/22(土) 22:26:56.89 ID:MEf+Tm1u0
櫻子「あかりちゃん大丈夫?」

あかり「うわ!机の上の荷物崩しちゃったよ~」

向日葵「わたしたちも手伝いますわよ」


ガサゴソガサゴソ


あかり「とりあえず荷物は元の場所に戻したけど、プリントの順番はあってるか自信がないなあ」

向日葵「最近プリント類のほう整理しようとすると色々言ってきますから、本人に任せた方がよろしいかと」

あかり「そうなの?う~ん」

あかり「まあ大丈夫だよね!さあみんなのとこに急ごっと」

櫻子「あっ、もうこんな時間!そろそろ帰らないと」

千歳「じゃあ私たちもお先します」

櫻子「します~」

向日葵「お疲れ様でした」

会長「…………」コクッ

159: 2011/10/22(土) 22:29:10.90 ID:MEf+Tm1u0
会長(そういえば窓があけっぱなし……閉めないと)

会長(うわっ、風が強くなってきた)

ヒュウ、バサササ

会長(綾乃ちゃんのプリントが……片づけないと)

パサ

会長(なんだろこれ、日記?とは違う……)


会長「ぶっ!…………」


会長(これは……まあひどいというか、微笑ましいというか)

会長(でも綾乃ちゃんの好きって気持ちはすごく伝わってくる)


ビュウ

会長(うっ……そういえば窓閉めるんだった、あれ?)

窓の外から昇降口のほうを見下ろすと、顔を赤らめそわそわして何かを待っている影
今か今かと何度も振り返って……
あんな風になるほど大切な人を待っているのがすぐわかる

会長(頑張ってね、綾乃ちゃん……)

161: 2011/10/22(土) 22:32:19.16 ID:MEf+Tm1u0


はぁはぁ……
階段を二段飛ばしで降りて昇降口へ向かう

彼女と出会ってから色々なことがあった
きっとこれからも波乱万丈な未来が待っているだろう

なんたって、私が好きになったのはあの歳納京子なのだ
ハプニングが起きないわけがない

でも二人ならきっと大丈夫
あの日、そう誓ったんだから

「京子!」

見慣れたいつもの笑顔が振り向く
やっぱり、歳納京子はかわいい

さあ手を取って歩きだそう、二人の未来へ
そこには私と彼女以外何もいらない





でもやっぱりラムレーズンは欲しいかも


―――END――

162: 2011/10/22(土) 22:34:21.97 ID:+JrUulF70
おつうう!!

引用元: 綾乃「はじめての××は涙とラムレーズンの味がした」