1: 2015/10/04(日) 19:31:58.26 ID:4KBlG/fQ.net
ザザーン 
     
     ザザーン…




絵里「……」

絵里「綺麗な海ね…」

絵里「でも、砂浜にはゴミがいっぱい。これじゃあ汚れてしまうわ」

絵里「今日もゴミ拾い、頑張りましょう」 カチャ

絵里「空き缶、レジ袋、ペットボトル、パンツまで……分別する身にもなって欲しいわね」



カヨ‐

   カヨ‐




絵里「…?」

絵里「今、何か聴こえた?」

絵里「気のせいかしら……だってここには生き物なんて」




モゾモゾ




絵里「……!」

絵里「あのレジ袋……動いてる!?」

5: 2015/10/04(日) 19:38:20.35 ID:4KBlG/fQ.net
タッタッタッタ…



no title





絵里「……」

絵里「これって……くらげ?」

絵里「可哀想……ゴミに絡まってここまで流されてきたのね」


カヨ‐


絵里「……くらげってこんな鳴き声しているのね」

絵里「それに珍しい。人の顔みたいな身体してるわ」



カヨォ

   カヨ



絵里「かよ、かよ…」

絵里「…よし、あなたの名前はかよくらげね。エリチカ覚えたわ」




かよー

7: 2015/10/04(日) 19:40:52.05 ID:4KBlG/fQ.net
砂浜に打ち上げられて小さなかよくらげ……
スマイリーな顔とは逆に置かれている状況は最悪だった。



絵里「早く助けてあげないと……」

真姫「ダメよエリー。かよくらげはとても危険な毒を持ってるの」

絵里「マミィ……?」

真姫「下手に触るとお股のお豆が腫れちゃうわよ」

絵里「でも、あのままじゃあのクラゲは……」

真姫「……群れを離れてしまったかよくらげに生きる希望はないわ」

真姫「例え助けたとしても、数日生きてられるかどうか……」

絵里「そんな……」



かよー 

     かよー



絵里(私はかよくらげを助けたい……だって、可哀想だもの)

絵里(でも、マミィは触っちゃ駄目だって言ってるし……)

絵里(どうすればいいの……神様)













にこ「何悲しそうな顔してるのよ、エリー」

絵里「パピィ……!」

12: 2015/10/04(日) 19:49:56.19 ID:4KBlG/fQ.net
真姫「Darling、今沖から戻ったのね」

にこ「うん。もう本っ当に頭にくるわ」

にこ「どこもかしこも温暖化と台風で海がシケてて何もいやしない」

にこ「これじゃ仕事にならないじゃない」

真姫「そ、じゃあ今日の晩御飯もまたワカメね」

にこ「そうねぇ……所でエリー」

絵里「?」

にこ「そこに打ち上げられてるのって、かよくらげじゃない」

絵里「うん……ゴミと一緒に流されて、群れからはぐれちゃったみたいなの」

にこ「そう……で、どうするの?そのままじゃご飯食べられなくて干物になっちゃうわよ?」

絵里「そんな……パピィ。どうすればいいの?」

にこ「うーん、そうねぇ……」







にこ「…確か家に、水流付きの水槽があった筈よね」

14: 2015/10/04(日) 19:57:40.22 ID:4KBlG/fQ.net
絵里「!」

真姫「ちょっと本気?かよくらげの飼育はどんぶり金魚並の難易度よ」

にこ「いいじゃない、この子が助けたいって思ってるんでしょう?」

にこ「丁度エリーに生き物を飼う大変さを教えるチャンスじゃない」

真姫「ふぅ……で、どうするのよ、エリー」

絵里「私は……」



 かよー








絵里「……飼う、ちゃんと育ててみせるわ」

絵里「そして、元気になったら海に放してあげるの!」

真姫「……だって、どうするDarling!!」

にこ「しょうがないわねぇ~」

にこ「ちゃんとお世話するのよ?エリー!」

絵里「うんっ…!」






……こうして、私とかよくらげの生活が始まった。

18: 2015/10/04(日) 20:04:01.82 ID:4KBlG/fQ.net
‐数日後‐



絵里「ただいまー」 ガチャ




     かよかよー

かよー

     かよー



 
絵里「……ふふ、もう三匹に増殖しちゃってる」

絵里「身体に水分もたっぷり溜まってるわね。元気になって良かったわ」



ぽちゃん…



絵里「…え?」




フワフワ…

      フワァ…

かよー

     かよー








絵里「え?えっ?嘘……かよくらげが、浮かんでっ」

絵里「ぱ、パピィー!マミィー!」 ダッダッダッダッダ…!

20: 2015/10/04(日) 20:13:21.00 ID:4KBlG/fQ.net
・・・・・・・・・・・・(・8・)


真姫「もう、そんなに慌てる事じゃないわよ」

絵里「だ、だってっ…!ちゅ、宙に浮かんでっ…!」

にこ「エリー、かよくらげはある程度育つと宙を舞うの」

にこ「お腹の部分が水色になっているでしょう?水と米を貯蓄して浮遊エネルギーに変えてるの」

絵里「そっか、だからマミィが用意してくれた餌はいつもお粥だったのね」

真姫「そういう事。これでも漁師の妻なんだから」

にこ「いっつも感謝してるにこー♪」



ふわふわ…


ピタッ


絵里「えっ?わわっ…!」

真姫「あら、ふふ。エリーったら懐かれちゃったみたい」

にこ「感謝しなさいよ?パピィがこーんなに立派な水槽持ってなかったらかよくらげなんて飼えなかったんだから」

絵里「うんっ…パピィ、マミィ、ありがとう…!」



かよー

    かよー



絵里「ほら、かよくらげもありがとうって言ってるわ!」

真姫「そうね、ふふっ…」    

24: 2015/10/04(日) 20:25:34.41 ID:4KBlG/fQ.net
‐そのまた数日後‐



ビュォォォ・・・・




真姫「……今日は、風が騒がしいわね」



ガチャ



にこ「ただいまー」

真姫「Darling!!。お帰りなさい。早かったわね」

にこ「うん、どうせ沖に行っても何もとれやしないからねぇー」

真姫「それでも今日はいつもより早いじゃない。どうしたのよ」





にこ「……にこの予想だと、この天候。嵐が来るわ」

真姫「えっ?」

にこ「それもとてつもない大きな奴よ。252521年に一度来るか来ないかの凶悪な……」

真姫「それは一大事ね…」

にこ「だから今日は早めに引き上げて、家が吹き飛ばない様に補強に勤しもうと思って…」

にこ「所でエリーは?」

真姫「エリー?もうそろそろ学校から帰ってくる筈だけど……」



かよー


  かよかよー


       かよ…




真姫「かよくらげ達、エリーはまだ帰って来てないわ……っ!?」


ぽわっ

27: 2015/10/04(日) 20:33:21.52 ID:4KBlG/fQ.net
真姫「Darling!!!!見てっ!かよくらげの身体っ!」

にこ「えっ?……っ!?」

にこ「ちょ、ちょっと!?何でアンタたち光ってるのよ!?ここに天敵は居ないわよ!?」




かよー

    かよー…




真姫「……かよくらげは危険を察知すると、身体を光らせて獲物を誘導させる習慣を持ってるわ」

真姫「でも、それはかよくらげにとって危険だと判断した時だけ……なのにどうして」




にこ「……もしかして」

にこ「飼い主の危険を察知して、かよくらげが信号を発してるの…?」

真姫「嘘っ…!?だとしたらっ……!」

にこ「マッキー!エリーはもう帰って来る筈よね!?」

真姫「う、うん!でも……もうこの時間には家に着いてる筈…」

にこ「っ!」

にこ「行くわよ!エリーを迎えに!何かあってからじゃ遅いわ!」

28: 2015/10/04(日) 20:33:51.70 ID:4KBlG/fQ.net
×習慣
○習性

31: 2015/10/04(日) 20:40:47.58 ID:4KBlG/fQ.net
 ビュォォォ…




絵里「うっ……風が強くなってきたわ」

絵里「早く帰らないと……あれ?」



モゾモゾ…



絵里「あ、またかよくらげが砂浜に打ち上げられてるわ」

絵里「家に持ち帰って、他のかよくらげ達と一緒にしてあげないと……」




びゅおおおおおおっ!!



絵里「きゃあ!?」

絵里「きゅ、急に風が強くなって……え?」 




バサバサッ




絵里「あ、あれ……かよくらげじゃなくて、スーパーのレジ袋……」




ゴゴゴゴゴゴ……





――ドバァン!

36: 2015/10/04(日) 20:45:25.99 ID:4KBlG/fQ.net
絵里「がっ…ごぼっ…」

絵里(嘘……私、波に飲まれてっ……!)




ゴボゴボ…

      ゴポッ… 




絵里(だ、駄目っ…!このままじゃ沖に流されて溺れちゃうっ…!)

絵里(泳いで戻らないとっ……)



ゴボボボ…


      グォッ…!



絵里「がっ……ぼっ……ぉ」

絵里(嘘……波が強すぎて……海岸に行けない……)

絵里(嫌……助けて……マミィ……パピィ……)

絵里(……)











ぽわっ

38: 2015/10/04(日) 20:56:44.53 ID:4KBlG/fQ.net
絵里(……えっ)




私を飲み込んだ波は、水の中で荒れ狂い、私を海中に引きずり込んだ。


呼吸も出来なくて、どんどん海底に引きずり込まれていくのを感じて、もう駄目だって思った。



絵里(どうして……)




でも、私を引きずり込む力は、突然無くなった。

それと同時に、何かが私の背中をぐいぐいと押しているのを感じた。




絵里(ここに……いるの?)




……そして、私は見てしまった。

私の目の前で、必氏に光を放ち、波を押さえてくれている。





d9811462-s






絵里(――かよくらげっ!)





――沢山の、かよくらげ達を。

42: 2015/10/04(日) 21:03:20.35 ID:4KBlG/fQ.net
・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・




エリー

   エリー!





絵里「……ぅ」

にこ「エリー!」

絵里「パ ピィ……?」

真姫「エリー!良かったっ……目を開けてくれたっ…!」

絵里「マミィ……ここは」

真姫「私達の家よ……エリー。貴女って子はっ…!もうっ…!」

にこ「大丈夫?どこも怪我してない?変な所があったら何でも言いなさい?」

絵里「うん、大丈夫――」












絵里「……ねぇ、パピィ、マミィ。かよくらげ達は?」

44: 2015/10/04(日) 21:09:28.88 ID:4KBlG/fQ.net
真姫「……」

にこ「……」

絵里「えっ…嘘…嘘でしょう…?」

絵里「私、今すぐ海にっ…!」

にこ「エリー。……窓を見て」

絵里「えっ……」




ぽわっ


     ぽわ…







絵里「あ……あっ……光が……どんどん消えて」





 ・・・・

     ・・・・






絵里「…無くなっちゃった」

45: 2015/10/04(日) 21:20:11.09 ID:4KBlG/fQ.net
絵里「……っ」 

絵里「うっ……ひぐっ……ぇ…!」 ポロポロ

にこ「エリー。かよくらげ達はアンタの身に危険が訪れる事を本能で私達に教えてくれたの」

にこ「その後、海岸まで浮かんで行ったあの子達は、一斉に海に」

絵里「あっ・・・ああ゛っ……えぐっ……!」 

絵里「かよくらげぇ……ひっく、かよくらげぇ……!」

真姫「……エリー。かよくらげ達にありがとうって言いましょう」

真姫「きっと、あの子達もそれを希んでいる筈よ……そう、きっと」









絵里「……」 グスッ

希「きっと、かよくらげは自分達の命に変えても、絵里ちを助けたかったんよ。助けてくれたご主人様を、今度は自分達が助けるために」

絵里「……かよくらげ」















『……ありがとう。さようなら』

51: 2015/10/04(日) 21:25:39.81 ID:4KBlG/fQ.net
・・・・・・・・・・・・・・・(・8・)


ガチャ




絵里「パピィ!マミィ!行ってきまーす!」

真姫「行ってらっしゃーい」

にこ「気を付けなさいよー」





にこ「あの子、あれから随分と明るくなったわね」

真姫「今日、学校の友達と一緒にゴミ拾いのボランティア活動をするって言ってたわ」

にこ「まーたかよくらげを持って来ないといいけど」

真姫「……まぁ、いいんじゃない?水槽も綺麗に洗ってるし」

にこ「……ふふっ、そうね」











かよー




~おしまい~

52: 2015/10/04(日) 21:27:48.87 ID:uaOedATS.net

引用元: 絵里「かよくらげ」