1: 2015/10/11(日) 21:33:30.36 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(海未ちゃんの名前呼ぶ時、たまに滑舌とか発音おかしいって言われちゃうんだよね)

ことり(でも海未ちゃんはちゃんと反応してくれるもん!)

ことり(今日だって……)



ことり「ンミチャハァン!」

海未「呼びましたかことり」



ことり(問題ないじゃん!)

ことり(…………問題、ないよね?)

ことり(『ンミチャン』でも『ンミチュン』でもちゃんと伝わってれば、少しくらい呼び方がおかしくったって……)

ことり(あれ、じゃあむしろ、どこまで変な言い方しても反応してくれるんだろ……試してみようかな?)

2: 2015/10/11(日) 21:35:00.69 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「って思うんだけどどうかな」

穂乃果「前から思ってたけどことりちゃんってたまーに変な事思いつくよね?」

ことり「そうかなぁ……あ、早速海未ちゃんだ。ようし、今日から実験だっ!」

穂乃果「あっことりちゃ……行っちゃった。凄い行動力」



ことり(まずは普通に……)

ことり「海未ちゃん!」

海未「ことり、どうかしましたか?」

ことり「えっとねぇ~」

ことり(ちゃんと意識すれば普通に呼べるもん!)

ことり(海未ちゃんといるといつも楽しくなっちゃって、気分が弾んじゃって、発声も弾んじゃうだけだもん!)

ことり(結果的に変な呼び方になっちゃっても全然おかしくないよねっ!)

3: 2015/10/11(日) 21:36:29.42 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「ンミチャンッ!」

海未「なんでしょう?」

ことり(大丈夫! 伝わる伝わる!)



ことり「ンミチュンッ!」

海未「はい」

ことり「ンミチョワァン!」

海未「どうしました?」

ことり「ンィタァン!」

海未「今日はよく名を呼ばれますね」



穂乃果「流石にどうなのって呼び方しても全部伝わってるね……」

ことり「私でもこれはちょっとって思い始めてきちゃった……」

4: 2015/10/11(日) 21:37:38.25 ID:Wl0kpDNq.net
穂乃果「私もたまに『ウェミチャン!』って変な呼び方しちゃうけど、海未ちゃん全部返事してくれるよ」

ことり「呼ばれ方自体はあまり気にしてないのかも」

穂乃果「発声が変なことに気付いてないか、それともこれが普通って思ってるとか?」

ことり「昔からずぅっとこんな感じの呼び方してるからかなぁ」

穂乃果「十何年分の歴史ある『ウェミチャン!』だよっ!」

ことり「だけど他のみんなからは変な呼び方してるって言われちゃうもんねぇ」

穂乃果「そりゃ、ちょっとくらい変だなって自覚はあるけど……」

ことり「でも今更治らないし……海未ちゃんが反応してくれるなら、それでいいよね?」

穂乃果「どうなんだろ……」

6: 2015/10/11(日) 21:38:39.56 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(あれから色々試してるけど、海未ちゃん全部返事してくれる)

ことり(どこまで崩した言い方でいけるのかなって、なんだか楽しくなってきちゃった!)



ことり「それでねンミチェァ~」

ことり(今完全にチェアーって言っちゃった……椅子じゃん……)

海未「なるほど、それはおかしいですね」

ことり(普通に会話続いてる……違和感持たれてない……)

ことり「でもねンミュチュワフゥン」

ことり(あ、思ってたより酷い言い方になっちゃった)

海未「そういうこともありますよ」

ことり(これでもイケルんだ……凄い……! 海未ちゃん器大きい!)

ことり(……単に、疎いだけかも?)

8: 2015/10/11(日) 21:41:34.91 ID:Wl0kpDNq.net
真姫「最近ことりったら、やたらと海未にちょっかいかけてるわね」

にこ「っていうか海未のこと変な呼び方しすぎじゃない?」

ことり「やっぱり変ってわかる?」

真姫「流石にわかるでしょ」

ことり「だけど海未ちゃんは全然気にしてないみたいなの」

にこ「海未ってそこまで鈍いのかしら……」

真姫「変な呼び方されることに慣れてるだけじゃない?」

ことり「自分で言ってもおかしいなってくらい崩れてても、平気な顔して返事してくれるんだよ」

にこ「でもアンタそれ実は楽しんでるでしょ」

ことり「えへへぇ」

真姫「変な遊びに巻き込まれて海未も災難ね」

にこ「本人が気にしてないなら別にいいでしょ」

真姫「それもそう……そうかしら?」

9: 2015/10/11(日) 21:42:27.33 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「ちょっとアプローチを変えてみようかな」

穂乃果「どんな風に?」

ことり「例えば……海未ちゃんに近い、別の子の名前で呼んでみるとか」

穂乃果「それってもう別人だよ……」

ことり「わからないよ? 試してみるねっ」



ことり「ねぇねぇフミちゃん!」

海未「ああ、ことりですか」

ことり(通じる……!)

フミコ(呼ばれた気がしたけど気のせいだった)

ヒデコ「どしたの?」

ミカ「なにかあった?」

フミコ「別に」

11: 2015/10/11(日) 21:43:53.65 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(似てる人の名前でイケルなら、もしかして人の名前じゃなくても……)



ことり「おーい、ウニちゃーん」

花陽(ウニ……! 美味しそう……!)

海未「なんでしょうことり」

花陽(海未ちゃん実はウニ説……! さすがは海産物といったところでしょうか!)

ことり「えっとねぇ弓ちゃん」

凛(いくら弓道やってるからって安直な発想な気がするにゃ)

海未「それは本当ですか」

凛(何も違和感覚えない海未ちゃんもどうかと思うにゃ)

12: 2015/10/11(日) 21:45:26.81 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(凄い凄い! 何でも通じちゃう!)

ことり(なんだか海未ちゃんを呼んでること、言葉だけじゃなくて心で通じてるみたい! 嬉しい!)

ことり(…………別に、私に対して無頓着ってわけじゃ、ないよね?)

ことり(うーん……ちょっとだけ不安になってきちゃった)

ことり(海未ちゃん、実は適当に返事してるのかな……)

ことり(……あ、弓道場に海未ちゃんいる)

ことり(弓道してる海未ちゃん、ホント、素敵……)



海未「……おや」

ことり「」ボーッ

海未「ことりではありませんか。何か用ですか?」

ことり「えっと、偶然通りかかって……」

海未「そうですか。もうすぐ終わるので、よろしければ少し待っていてください」

13: 2015/10/11(日) 21:47:12.08 ID:Wl0kpDNq.net
海未「……」ギリリッ

ことり(海未ちゃんが弓ちゃん引いてる……なんて、うふふっ。何考えてるんだろ私)

ことり(……格好良いなぁ)

海未「……」シュパッ

ことり(わ、あの弓、的にど真ん中。すごぉい)

ことり「弓ちゃん真ん中に刺さっちゃったね」

海未「……」

ことり(……あれ?)

ことり「弓ちゃぁん、じゃなかった、ええと、」

海未「あ、呼びました?」

ことり「あれれ? ……あ、うん、大丈夫」

ことり(今、一回、反応がなかったような……集中してただけかな?)

14: 2015/10/11(日) 21:50:26.46 ID:Wl0kpDNq.net
希「最近ことりちゃん面白そうなことしとるんやて?」

絵里「海未の呼び方をどこまで工夫できるか試してるって聞いたけれど」

ことり「海未ちゃんね、どんな呼び方しても反応してくれるんだよー」

希「変な呼ばれ方される当の海未ちゃんはどんな気持ちで返事しとるんやろか……」

絵里「どんな呼び方でも通じるのは、ことりに対する信頼の形って捉えていいんじゃない?」

ことり「だよねっ」

希「海未ちゃんの鈍さの成せる業っていう考え方はどうなん?」

ことり「そんな理由じゃつまらないもん!」

絵里「そうよ、もっと浪漫のある解釈をしましょうよ」

希「こういうところはえりちも夢追い人やんなあ」

ことり「海未ちゃんにはことりがどんな風に呼んでも、全部通じちゃうんだぁ……うふふっ」

15: 2015/10/11(日) 21:52:37.36 ID:Wl0kpDNq.net
海未「……」

ことり「……」

ことり(二人で一緒にいるけど……バラバラなことしてる感じになっちゃった)

ことり(私の用は済んじゃったけど、海未ちゃんまだ本読んでる)

ことり「……んーみちゃぁ」

ことり(どうしよっかなぁ……いつもみたいに変な風に名前呼んで遊ぼうかなぁ)

ことり「んっみちゃっ、んっみちゃっ、んっみんっみうー」

ことり(……あ、そんなこと考えてたら、無意識のうちに海未ちゃんのこと呼んじゃってた)

海未「…………」

ことり(……反応、無い?)

ことり「……海未ちゃん?」

海未「どうしました? ああ、用が済んだのですね。何かしましょうか」

ことり「え、あ、そうだね……」

ことり(……私、気も漫ろだったけど、海未ちゃんのこと変な呼び方してたよね、今)

ことり(でも反応無かった……)

ことり(今度も集中してたから? それとも…………)

16: 2015/10/11(日) 21:53:57.92 ID:Wl0kpDNq.net
海未「……」

ことり「……」

ことり(えっと……海未ちゃん以外のこと考えながら……)

ことり「……あ、この雑誌に載ってる海鮮丼のウニちゃん、美味しそう」

海未「……」

ことり「でもウニちゃんって、味付けしてないと無味ちゃんなんだよねぇ」

海未「……」

ことり(やっぱり反応がない……)

ことり(じゃあ、ちゃんと海未ちゃんを呼ぶつもりで……)

ことり「ね、ねえ、ウニちゃん」

海未「ことり、なんですか?」

ことり「あ……えっと、無味ちゃん……」

海未「はい。何か面白い記事でも? ああ、料理本ですか。美味しそうな海鮮丼です」

ことり「うん……だよね……」

17: 2015/10/11(日) 21:55:30.78 ID:Wl0kpDNq.net
穂乃果「……ちゃんと海未ちゃんのこと呼ぶつもりで呼べば反応する?」

ことり「えっとね、例えば私が何かいい香りを嗅いで」

ことり「『あ、なんだか仄かにいい匂い』」

穂乃果「」ピクッ

ことり「って言ったら、同じ『ほのか』の響きで穂乃果ちゃん反応するでしょ?」

穂乃果「うん、今しちゃった」

ことり「でも実際には穂乃果ちゃんのこと考えて口にしたわけじゃないよね?」

穂乃果「それが、ちゃんと名前を呼ぶつもりで呼んだかそうじゃないか、ってこと?」

ことり「そうみたい。海未ちゃんが反応するかどうか、その差みたいなの」

穂乃果「変な発見だねー」

ことり「でしょ?」

18: 2015/10/11(日) 21:58:23.11 ID:Wl0kpDNq.net
真姫「海未はことりの発声じゃなくて、意思伝達の方に過敏になったのかもね」

ことり「意思伝達の方って?」

にこ「どんなに海未を呼ぶ発声が怪しくても、ちゃんと海未のことを呼んでることが伝われば反応するってことでしょ」

花陽「ことりちゃんが小さな頃って、今よりもっと崩れた呼び方してたんだよね?」

ことり「うん、私、小さな頃はもっと滑舌悪くて、本当に『海未ちゃん』って言える方が珍しいくらいで……」

凛「小さな頃ってそうだよね。凛も昔自分のこと『リン』じゃなくて『イン』って呼んでたよっ」

ことり「インちゃん! それも可愛いねっ!」

希「ずっとそういう呼ばれ方されとったから、崩れた呼び方自体には慣れ切っちゃってるのかもしれへんね」

絵里「けれど、ちゃんとことりの意図は汲むことができるから、自分を呼ぶ声には反応できる」

ことり「そっか……」

穂乃果「つまり本当にことりちゃんの気持ちが伝わってるってことなんだ! 凄い!」

ことり「うんっ!」

ことり(そっか……そうだったら、嬉しいな……!)

19: 2015/10/11(日) 21:59:53.76 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(海未ちゃんと心が通じてるのかもしれない……だからどんな呼び方しても、返事してくれる……)

ことり「うふふっ」

海未「ことり、なんだか嬉しそうですね」

ことり「うんっ!」

海未「良い事でもありましたか?」

ことり「えへへぇ、ヒミツ♪」

海未「おや。ですが、ええ、幸せそうなので何よりです」

ことり「新発見しちゃったかなーって! 海未ちゃんのお陰だよっ」

海未「私のお陰ですか?」

ことり「あ、今普通に名前呼んじゃった」

海未「?」

ことり「……まいっか! うふふ、海未ちゃぁん!」

海未「今日のことりは本当に嬉しそうですね。私まで嬉しくなってきました」

ことり(まぁたそんな喜ばせるようなこと言ってぇ……うふふふっ)

20: 2015/10/11(日) 22:01:11.26 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「ンミチャンッ♪」

ことり(最近一人でいても海未ちゃんの名前呼ぶのが楽しくなってきちゃった)

ことり「ンーミチューン♪」

ことり(ずっと海未ちゃんのこと気にしてて、ずっと海未ちゃんの名前呼んでたもんね)

ことり「ュミチョワーン♪」

ことり(こんなに海未ちゃんと一緒にいたの初めてだし、こんなに海未ちゃんのこと考えたのも初めてだよ)

ことり「ウッミウッミチャァン♪」

ことり(うふふっ……ちょっとくらい私の言い方がおかしくても、海未ちゃんは全部受け取ってくれるんだ)

ことり「ウミチャァン……ウーミーチャァァァン……♪」

ことり(早く明日にならないかな。また色んな呼び方で、海未ちゃんって呼びたいなぁ)

21: 2015/10/11(日) 22:03:10.35 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「~~~♪ 雨の日でも~♪ 気分は~♪ 晴れてるの~♪ ~~~~~♪」

ことり「……あれっ」

幼女「キャッキャ」

ことり(あんなちっちゃな子が一人で遊んでる……しかも階段で、雨の日に)

ことり(ちょっと、危ないかも……!)

ことり「っ…………こんばんはぁ。一人で遊んでるの? お母さんは居る?」

幼女「アッチー」

ことり「あっち? あの人? 一人で階段にいるのは危ないから、お母さんのところに戻ろっか」

幼女「ワカッター」テッテッテッ

ことり(ふぅ……よかった。万が一が起きたらいけないし、これでいいよね)

ことり(……私も一人で階段にいるのは危ないから、海未ちゃんの所に行かないとね♪)


ツルンッ


ことり「あっ?」

ことり(…………イヤ……)


ドサッ

22: 2015/10/11(日) 22:04:53.71 ID:Wl0kpDNq.net
海未「ことりっ!」

理事長「……あら、ことりのお見舞いに来てくれたの?」

海未「理事長……! あの、ことりが意識を失って病院に運ばれたと……それで、ことりは、」

理事長「幸い利き手を傷めた程度で済んで、他に大きな怪我は無かったみたい。意識も戻ってるわ」

ことり「……」

海未「ああ、元気そうです……良かった……」

理事長「ただ、少しね……」

海未「? ……あの、ことり、頭に包帯が……大丈夫なのですか?」

ことり「……」

海未「……ことり?」

理事長「怪我は無かったけど、ちょっとした症状が出てしまったみたいなの」

海未「症状……とは……」

ことり「……」

23: 2015/10/11(日) 22:06:47.55 ID:Wl0kpDNq.net
穂乃果「声が出なくなった!?」

ことり「……」コクリ

海未「頭を打った影響なのか、一時的にですが失声症に似た状態に陥ったそうです」

真姫「失声症って、心因性のものだと思ってたけど」

海未「事故のショックが引き起こした瞬間的な症状のようで、遅くとも数日待てば治る程度だと聞きました」

花陽「そうなんだ、よかった……」

凛「何でこんなことになっちゃったんだろ?」

絵里「心因性っていうのなら、階段から落ちる瞬間の恐怖が原因とかも考えられそうね」

希「ウチらが考えても仕方ないやん。お医者さんはすぐに治る言うてたんやろ?」

にこ「頭打ったんだから、今はとにかく安静にするのが大事でしょ。ことりが無事なら何だっていいわよ」

穂乃果「そうだね。ことりちゃん、しばらく大変だと思うけど、私たちがついてるからね!」

ことり「……」ニッコリ

24: 2015/10/11(日) 22:09:45.26 ID:Wl0kpDNq.net
凛「話せないなら文字書いて意思疎通すればいいよ!」

にこ「でも利き手怪我したんでしょ? しかもそんなペラペラな紙にちゃんと書けるの?」

希「頭打ったんやし、書く時もことりちゃん頭起こしたらあかんよ?」

ことり「……」カキカキ

絵里「…………オ…………ナ、カ……? これ、ス? 利き手じゃないからかしら、読み取るのが結構難しいわ……」

海未「『オナカスイタ』ですか?」

ことり「……」コクコク

花陽「それはいけません! 空腹は大敵です!」

真姫「病院食出るんだからそれまで待てば?」

穂乃果「駄目だよ! ことりちゃん病人なんだから親切にしないと! 何食べたい?」

ことり「……」カキカキ

穂乃果「……えっと…………うん? 最初の文字が干からびてるみたいで……」

海未「『チーズケーキ』でしょう。倒れてもことりは変わりませんね」

ことり「……」コクコク

穂乃果「でも入院中にケーキは流石に難しいよねー。代わりにリンゴ剥いてあげるよ!」

25: 2015/10/11(日) 22:12:27.91 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「……」

ことり(……………………声……出なくなっちゃったんだ…………)

 ワイワイ ガヤガヤ

ことり(凄い不安だけど、でもみんなが居てくれるから、ちょっとだけ安心できる……優しいなぁ、みんな)

ことり(……一緒にお話できないのは、残念だけど……)

 コトリハー? ドレガイイ?

ことり「! …………! ………………! ……」

 ダメヨー ハナソウトシナイノ カイテカイテ

ことり「……」カキカキ

 …ナンテ? 『ツ』?『シ』? 『リ』?『ソ』? ムズカシイ……

海未「『リラックマ』では?」

ことり「……」コクコク

 オオー! サスガヤ! リラックマ!

ことり(意思伝達って、こんなに難しいんだ……)

ことり(喋れないだけでこんなに不便だなんて、知らなかった)

ことり(……私の声……すぐ治るって言われたけど……いつ、治るんだろ……)

ことり(実際に声が出ないと、凄く、不安……怖い……)

ことり(もし、このままずっと、声が出せなかったら……そんな風に考えちゃう……)

ことり「…………」

27: 2015/10/11(日) 22:13:41.01 ID:Wl0kpDNq.net
絵里「そろそろ時間かしら」

ことり(あ……もう……)

凛「ええーもっと居たいよー」

真姫「長居し続けるのもことりに迷惑でしょ」

花陽「ことりちゃん、またお見舞いにくるからね」

ことり(うん…………また、来てね……)

希「次はちゃんとお土産準備せな」

穂乃果「フルーツもまた持ってくるよ!」

にこ「アンタは自分でリンゴ剥けるように練習するのが先でしょ」

ことり(……みんな……帰っちゃう……)

ことり(当たり前のことだけど…………でも……)

ことり(私…………今は、一人には…………)

28: 2015/10/11(日) 22:15:39.13 ID:Wl0kpDNq.net
海未「では私はもう少し残りますね」

ことり(え?)

穂乃果「え?」

真姫「病院の面会時間にも制限はあるわよ?」

花陽「外も暗いし、一人で帰るの怖くない?」

海未「少しだけですから。私のことは気にしないで大丈夫です」

にこ「そう言うならいいけど……」

希「海未ちゃんが残る言うんやから、ウチらは帰ろか」

凛「ことりちゃんお大事にね!」

絵里「海未も帰りは気を付けるのよ」

穂乃果「私も残りたいけど今日はお店があぁぁぁ」

海未「家に迷惑をかけてはいけませんよ。また明日一緒にお見舞いに来ましょう」

穂乃果「そうだよねえ。じゃあまた来るから! バイバイことりちゃん、海未ちゃん!」

海未「ええ、また明日」

ことり「……」フリフリ

29: 2015/10/11(日) 22:17:45.63 ID:Wl0kpDNq.net
海未「…………」

ことり「…………」

ことり(海未ちゃん……わざわざ残ってくれたの、何かお話でもあるのかなって思ったけど)

ことり(少しだけ会話してから、ずっと静か……宿題とか、明日の準備とか、普通のことしてる)

ことり(どうして帰ってから家でやらなかったんだろ……?)

海未「…………」

ことり(……でも……居てくれて、よかった)

ことり(急にこんなことになって、凄い不安だったから……)

ことり(一人じゃなくて……海未ちゃんが居てくれて、よかった)

海未「…………」

ことり(せっかく海未ちゃんといるんだから、また色んな変な呼び方したかったな、なんて……)

ことり(……伝わるかなぁ)

ことり(海未ちゃん…………うみちゃぁん…………ンミチャン!)

海未「…………」

ことり(やっぱり、無理だよね……バカだなぁ、なにやってるんだろ……)

30: 2015/10/11(日) 22:19:24.18 ID:Wl0kpDNq.net
海未「……流石に、面会時間も終わりですかね」

ことり(え……)

海未「ちょっと、長居し過ぎましたか。今日はそろそろ失礼します」

ことり(海未ちゃん……帰っちゃう……!)

海未「ほら、頭を起こしては駄目ですよ。ちゃんと安静にしないと」

ことり(うん……でも……)

海未「大変なことにはなりましたが、大丈夫です、きっとすぐに声は戻りますから」

ことり(……あ、どうしよ。最近、ずっと、変な呼び方する為に海未ちゃんと一緒にいたから)

ことり(離れるのが……なんだか、急に……痛いくらいに……辛い)

ことり(今はもう、名前も呼べなくなっちゃって……声、いつ治るかわからなくて……不安で……)

ことり(まだ、一緒に、居て欲しい……)

ことり「……」パクパク

海未「そんなに何か言おうと焦らなくていいんですよ。また明日来ますから」

ことり(ヤダ……待って……! 待って…………っ!)

31: 2015/10/11(日) 22:21:40.60 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(行っちゃう……海未ちゃん……)

海未「それではお大事に。ことり、また明日」

ことり「………………!」

ことり(寂しい……もうちょっとだけ……一緒にいたいよ…………っ!)

ことり(ンミチャン! ンミチャンッ! ンミチャァァァン!)

キィ パタン

ことり(……あぁ……海未ちゃん……行っちゃった……………………)

ことり(ヤダ……一人……怖いよ……不安だよ…………)

ことり「………………っ!」

ことり(……海未ちゃんっ!)

ことり「………………………………ぅ……ぃ…………ぁ…………」

ことり(……う…………うぅ…………)



海未「呼びましたか?」ガチャ

ことり(…………え?)

32: 2015/10/11(日) 22:23:20.61 ID:Wl0kpDNq.net
海未「今、私のこと呼びましたよね。いけませんよ、声が出ない時に無理に声を出そうとしては」

ことり(…………聞こ、えた?)

ことり(だって……全然、声、出てなかったのに……ドア、閉めちゃったのに……)

海未「ん、なんですか? 不思議そうな顔して。バレてないと思ったんですか?」

海未「駄目ですよ、ちゃんとわかるんですからね? 今は喉を大事にしてください」

ことり(……わかるの?)

ことり(海未ちゃんのこと呼んだの……ちゃんと、わかるの?)

海未「どうしましょう……面会時間はもう終わりですから、これ以上残るのなら泊まりになりますし」

ことり(え……)

海未「こういうの、家族以外でも大丈夫なのでしょうか。看護師の方に聞きましょう」

ことり「……っ」カキカキカキカキカキカキカキカキ

海未「……」ポン

ことり「っ」ビクッ

海未「大丈夫ですよ。急がなくていいですから、ゆっくり、書いてください」

ことり「……」コクリ

33: 2015/10/11(日) 22:24:42.98 ID:Wl0kpDNq.net
ことり『ワタシガ ウミチャンノコト ヨンダノ キコエテタノ?』

海未「聞こえ……んん……正確には、ことりに呼ばれている気がした、ですね」

ことり『ドウシテ ミンナガ カエッテモ ノコッテ クレタノ?』

海未「それもまあ、ことりが何となく、一人になりたく無さそうな気がしたので……」

ことり『キョウ ホントニ オトマリ シテクレルノ?』

海未「可能ならば、ですけれど」

ことり『イイノ?』

海未「……ことりは、私に泊まっていって欲しいですか?」

ことり「!」コクコクコクコク

海未「激しい首肯ですね。ええ、そんな風に思ってくれている気がしたんです」

海未「では少しだけ待っていてください、今確認を取ってきますから」

ことり「……」

35: 2015/10/11(日) 22:27:03.67 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(どうして……伝わったんだろ……)

海未「許可も下りましたし、二人でお泊りなんて随分久しぶりです」

ことり「……」カキカキ カキカキ カキカキ カキカキ

ことり『シバラク ミンナデ オトマリスルノ オオカッタネ』

海未「本当、ことりと二人というのはいつぶりになるのでしょう」

ことり『デモ サイキン ズット ウミチャン ト イッショ』

海未「そうですね。何かとことりと一緒に居て、何かと名前を呼ばれていた気がします」

ことり(……海未ちゃんの名前、どこまで崩して呼んでも反応してくれるか試してたって、言った方がいいかな……)

ことり(怒らない、かな……海未ちゃんで遊んでいたみたいで……なんだか……)

36: 2015/10/11(日) 22:28:21.54 ID:Wl0kpDNq.net
海未「……不思議ですね」

ことり「?」

海未「ここしばらくの間、ずっとことりと一緒にいて、ずっとことりに呼ばれていたからでしょうか」

海未「今日は私もことりと離れたくなかったんですよ」

ことり(え?)

海未「ことりの為に泊まったようなことを言いましたけど……本当は、私が帰りたくなかったんです」

海未「それを恩着せがましく言ってしまって、ふふっ、すみませんでした」

ことり(そう、だったんだ……)

ことり(海未ちゃんも、私と同じ、だったんだ……)

38: 2015/10/11(日) 22:31:07.45 ID:Wl0kpDNq.net
海未「声、治ると良いですね」

ことり(うん……)

海未「治ったら、また私の名前、呼んでくださいね」

海未「ことりの綺麗な声で名前を呼んでくれるの、私、大好きなんです」

海未「ですから最近、ことりが沢山名前を呼んでくれて、嬉しかったんですよ」

ことり(海未ちゃん……)

海未「今は声が出なくて不安だと思います」

海未「その気持ちは共有できませんから、安易に慰めは口にすべきではないのかもしれません」

海未「ですが、ことりの事はちゃんとわかりますから。気持ちは伝わってきますから」

海未「なので急がずに、ゆっくりと、治していきましょう」

ことり(……うん…………)

42: 2015/10/11(日) 22:33:46.50 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(伝わってたんだね……ずっと、海未ちゃんの名前を呼んでたこと)

ことり(どんなに変な呼び方でも、どんなにふざけてても)

ことり(ちゃんと、海未ちゃんのことを呼んでた時は、全部返事してくれたもんね)

ことり(今までも……さっきも……ずーっと……)

海未「さあ、病人は休む時間です。体を労わって、明日に備えてくださいね」

ことり(わかった……)

ことり(不思議……一人じゃないって思ったら、安心して……眠くなってきちゃった……)

海未「きっと声は戻ります。心配しないで、眠ってください」

海未「今夜は私も一緒ですから」

ことり(うん……そうするね……)

ことり(おやすみ…………海未ちゃん…………)

海未「はい。おやすみなさい、ことり」

44: 2015/10/11(日) 22:36:47.12 ID:Wl0kpDNq.net
穂乃果「おはよう海未ちゃん!」

海未「おはようございます」

穂乃果「今日の朝は二人だね。ことりちゃん早く元気にならないかなー」

海未「ふふふ……そのことについて、穂乃果に報告があります」

穂乃果「え? なになに?」

海未「実は昨夜、あのままことりの病室にお泊りして、一晩中看病しました!」

穂乃果「泊まった!? 海未ちゃんだけズルイ! 楽しそう! 私も泊まりたかった!」

海未「私だけ泊まったことについては謝罪します。ですがもう一つ報告が」

穂乃果「まだあるの?」

海未「……今朝、ことりの声が治りましたよ」

穂乃果「えっ!? ホント!? やったぁ!」

海未「検査は残っていますが、何も無ければ本日退院だそうです」

穂乃果「じゃあ今日みんなでお迎えに行こう! 早く放課後にならないかなー!」

45: 2015/10/11(日) 22:38:35.14 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「そんなわけで無事声が治りました!」

凛「おかえりことりちゃんの声!」

希「ああ~甘トロピュアボイスに癒されるわあ~」

にこ「溶けすぎてキャラ変わってるわよ」

真姫「ホント、症状が長引かないで良かったわ」

絵里「せっかくだから、退院祝いに何かしてもいいわね」

花陽「チーズケーキパーティです!」

穂乃果「よかったねことりちゃん! 声戻って!」

ことり「うんっ! これでまたみんなとお喋りできるよ!」

穂乃果「それに、また海未ちゃんのこと色んな呼び方できるね! 最近ずーっと海未ちゃんにべったりだったもんね!」

ことり「えっ、あっ、それは……」

穂乃果「あれ? なあんで今更照れちゃってるのー? もっと呼んじゃいなよーう」

ことり「うぅ……」

海未「お待たせしました。……ことり? 静かですね、まだ声が本調子ではありませんか?」

ことり「なっ何でもないのっ! 早く行こっ!」

46: 2015/10/11(日) 22:39:54.44 ID:Wl0kpDNq.net
ことり(結局、どんな呼び方していても、海未ちゃんには伝わってたんだ)

ことり(私がちゃんと海未ちゃんのことを思っていれば、どんな呼び方でも……)

海未「どうかしましたか?」

ことり「ううん、なんでもっ」

海未「気のせいでしたか。どことなく嬉しそうに見えたものですから」

ことり(……そうだよ)

ことり(海未ちゃんと、ちゃんと気持ちが通じてるから、嬉しいの)

ことり(私の気持ち、言葉にしなくても、受け取ってくれる海未ちゃん……)

ことり(…………大好きっ!)

海未「? 今、」

ことり「なんでもないですっ!」

47: 2015/10/11(日) 22:42:40.36 ID:Wl0kpDNq.net
ことり「ね、海未ちゃん」

海未「なんでしょう」

ことり「呼んだだけでぇす」

海未「もう、子供みたいなことしないでくださいよ」

ことり「だって一日だけだけど海未ちゃんのこと呼べなかったんだもーん」

海未「……ええ、そうでしたね」

海未「ことりにはちゃんと、私の名前を呼んでもらいませんと」

ことり(声に出せなくても、ちゃんと伝わるから、大丈夫だけどね。うふふっ)

ことり(…………でも)

ことり(心で通じ合うことができても……やっぱり海未ちゃんの名前、呼びたいなっ!)

ことり「ンミチャンッ!」

海未「はい、ことり」

ことり「ンーミチュンッ! ュミチェァン! ンミュチャハァーンッ!」

海未「そう何度も呼ばれると照れてしまいます///」

ことり「えへへっ……これからもずーっと、何回も何回も、海未ちゃんのこと呼んじゃうからねっ!」



おわり

48: 2015/10/11(日) 22:43:40.56 ID:Wl0kpDNq.net
終了です
呼んでくれた皆さんありがとうございました

49: 2015/10/11(日) 22:44:27.69 ID:SHpKfbcP.net
おつ
いいことうみだった

引用元: ことり「どこまで『海未ちゃん』を崩して呼んでも反応してくれるかテストします」