2: 2013/11/04(月) 19:50:40 ID:zxl04jYw
連作短編18
泰葉「宇宙船泰葉号」

夜空に輝く星を眺めて

私は一人、その場で立ちすくむ

その数に、その光に圧倒されて

それでも光り輝きたいと願うのは
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)

このSSはアイドルマスターシンデレラガールズの世界観を元にしたお話です。
複数のPが存在し、かつオリジナルの設定がいくつか入っています。
連作短編の形をとっており、
前のスレを読まないと話が分からない事もあるかと思います。

検索タグ:ありす「心に咲く花」

その為、最初に投下するお話は事前情報なしでも理解できる構成としました。
こんな雰囲気が好きだなと少しでも感じて頂けた方は前スレも目を通して頂ければ 嬉しく思います。
それでは、投下を開始します。
3: 2013/11/04(月) 19:51:25 ID:zxl04jYw
P「スペースワールド?」

泰葉「ああ、あの遊園地」

先P「おう、お前らに仕事」

P「その遊園地、どこにあるんですか?」

泰葉「福岡です」

P「福岡? 九州?」

先P「岡崎は知ってたか、そうそのスペースワールドだ」

P「行った事あるのか?」

泰葉「ええ、小さい頃に。お仕事で」

P「そんな古くからあるのか?」

泰葉「私が小さい頃からありますから」

P「へえ、知らなかった」

4: 2013/11/04(月) 19:51:57 ID:zxl04jYw
先P「開業は20年以上前だ」

P「へー、だから九州生まれの泰葉に目が付けられたと」

先P「そういう事だ」

泰葉「でしたら福岡生まれのアイドルの方がいいのでは?」

先P「前に来てくれた子の方が勝手がいいとさ」

P「その頃からいるスタッフもいるのかな」

先P「ちょっとしたイベントだが、まあそれなりに頑張ってこい」

5: 2013/11/04(月) 19:52:30 ID:zxl04jYw
P「久しぶりの九州か?」

泰葉「はい、あんまり住んでた頃の記憶はないんですけど」

P「東京から1時間半か、そっから市内まで出て……スペースワールド駅なんてあるのか」

泰葉「そうですよ、着いたら目の前がスペースワールドです」

P「楽しみだな」

泰葉「遊びではありません」

P「分かってるって、ただこういう仕事してなかったら行くことも無かったろうなって思ってさ」

泰葉「……そうですね、今回も宜しくお願いします」

P「ああ、しっかりやろう」

6: 2013/11/04(月) 19:53:13 ID:zxl04jYw
CA「お飲み物は何になさいますか?」

P「コーヒーで、泰葉は?」

泰葉「温かいお茶を」

P「しかしこんな早いと人も少ないな」

泰葉「まだ星が見えますね」

P「夜明け前だからな、今から宇宙に行くんだからこれ位の方が雰囲気も出るか」

泰葉「雲を抜けて、星の下で」

P「俺達より星に近くいるのは本当の宇宙飛行士位だろうな」

泰葉「どんな気持ちなんでしょうね」

P「誰も知らない世界だからなあ、俺達がいるのは精々高度10キロメートル程度。宇宙に行こうと思ったらその10倍は必要だろ」

泰葉「想像もつかないですね」

P「全くだ、俺にできるのは黙ってここから眺めてるだけだな」

7: 2013/11/04(月) 19:54:20 ID:zxl04jYw
泰葉「行きたいとは、思いませんか?」

P「連れて行ってくれるのか?」

泰葉「プロデューサーなんですから道しるべ位にはなって下さい」

P「宇宙船泰葉号」

泰葉「ネーミングセンスの欠片もないです」

P「何か堕ちそう」

泰葉「機内でなんて事を言うんですか!?」

P「今月のオーディオプログラム、シンデレラガールズ特集だ」

泰葉「本当ですね、今は……肇さん」

P「聞いてたら寝そうだな、相変わらずの優しい声だ」

泰葉「……」

P「後は……十時さんにまゆに楓さん。人気所を並べてるなあ」

泰葉「どうせ私はいません」

8: 2013/11/04(月) 19:55:25 ID:zxl04jYw
P「精々13、4曲が限界なんだから大半のアイドルはいないだろ」

泰葉「これでも聞いてればいいんです」

P「何だよ、これなら持ってきてる」

泰葉「はい?」

P「その日、一緒に仕事するアイドルの曲は持ち歩いてる。当たり前だろ?」

泰葉「そう、ですか」

P「堕ちたな泰葉号」

泰葉「落ちてません!」

P「やっと降下か」

泰葉「少し驚くかもしれませんね」

P「驚く? 何の話だ?」

泰葉「見てれば分かりますよ」

P「なら楽しみに……どんどん街中に近づいていくんだが」

9: 2013/11/04(月) 19:56:28 ID:zxl04jYw
泰葉「そうですね」

P「下の人とか見えるんだが」

泰葉「そうですね」

P「……空港が町のど真ん中にあるんだが」

泰葉「そうですね」

P「テレホンショッキングか!」

泰葉「着陸ですよ」

P「こんなど真ん中にあるのかよ、市内まで5分!?」

泰葉「市内ってここも福岡市ですよ」

P「よくこんな所に作ったな、いや利用するだけなら凄く便利だけど」

泰葉「路線図も単純ですね」

10: 2013/11/04(月) 19:58:05 ID:zxl04jYw
P「博多まで一本、そっから鹿児島本線に乗るだけ。宿泊施設も園内にあるっていうし、至れり尽くせりだな」

泰葉「本当に久しぶりに来ましたから、私も何が何だか」

P「でも福岡市なのに博多駅なんだな、東京だったら千代田駅みたいなもんだろ。面白いな」

泰葉「こんなデパート出来てたんだ」

P「九州新幹線がらみで色々と作ったのか、さくらだっけ」

泰葉「ニューウェーブでも連れてきますか?」

P「一日駅長とか?」

泰葉「新幹線発車しまぁす」

P「さて、電車はどこから出るのかな?」

泰葉「……聞き流してくれてありがとうございます」

11: 2013/11/04(月) 20:04:13 ID:zxl04jYw
P「ちょっと出るとやっぱり地方って感じだな、えっと……千早駅?」

泰葉「青い鳥でもいるんでしょうか」

P「幸せの青い鳥ねえ、ここでコンサートしたら盛り上がるかな」

泰葉「私の場合は岡崎駅ですね」

P「その調子で色んなアイドルに行ってもらうか、渋谷さんとかなら凄い盛り上がりになるんだろうな」

泰葉「と思ったら古賀駅です」

P「イグアナの聖地だったりして」

泰葉「これだけいるとどこにもでありそうですね」

P「まあでも流石にもう……」

泰葉「東郷駅!?」

P「あいさん!?」

12: 2013/11/04(月) 20:05:16 ID:zxl04jYw
泰葉「まあ、駅自体は普通ですけど」

P「名前だけで凄くかっこよく見える、さっきの千鳥も名前はかっこよかったけど」

泰葉「出てきたら驚きですね」

P「何かいいな、知らない街ってだけで楽しくなる」

泰葉「最近は東京近辺が多かったですから」

P「さて、そろそろだな。スペースワールド駅、本当に目の前だ」

泰葉「宇宙の旅の始まりですね」

P「あのスペースシャトルがディスカバリー号か」

泰葉「もう引退してるんですね」

P「引退してからもああやって子供達から歓声が上がるって凄いよな」

泰葉「それだけの実績があるから、ですね」

13: 2013/11/04(月) 20:07:31 ID:zxl04jYw
P「さて、スタッフと合流しよう。スケジュールの最終確認もしないと」

泰葉「プラネタリウムですか」

P「3Dだってさ、そこがライブ会場にもなるんだと」

泰葉「イベント自体は30分位、短いですね」

P「プラネタリウムの上映もあるし、他のイベント会場にはまた別の催しがある」

泰葉「星空のメロディー」

P「多分、その曲があるから泰葉だったんだろうな」

泰葉「星ですか、機内で話の続きみたいです」

P「少し、周り歩いてみるか? 乗る時間は流石になさそうだけど」

泰葉「案内してくれるんですか?」

P「泰葉の方が詳しいだろ」

14: 2013/11/04(月) 20:10:01 ID:zxl04jYw
泰葉「もう色々と変わってますから、それに」

P「ん?」

泰葉「あの頃、あんまり覚えてないんです」

P「ザターンにタイタンにミューズにマーズ、星関係の名前ばかり」

泰葉「でもジュピターはないんですね」

P「そういえばないな、泰葉以上にぴったりかもって」

泰葉「いますね」

P「まあ名前だけならぴったりだもんなあ、北斗七星なんてのもあるし」

泰葉「ちなみにPさん、話したことは?」

P「あるよ、けど共演じゃない。あくまでプロデューサーとしての話」

泰葉「……」

P「もう今は離れた世界だから、今はプロデュースに忙しくてそれ以外に目を向ける余裕もないし」

15: 2013/11/04(月) 20:12:05 ID:zxl04jYw
泰葉「立ちたいと思いますか?」

P「立ちたいって」

泰葉「彼らと同じように、ステージに」

P「……未練がないことも無い、実際に復帰しようとはした」

泰葉「それなら!」

P「動かないんだ、もう」

泰葉「動かないって」

P「あんな風には踊れないってこと、そういう事だ」

泰葉「あの」

P「少し時間あるな。入ってみようか、ここ」

16: 2013/11/04(月) 20:16:04 ID:zxl04jYw
泰葉「宇宙博物館?」

P「当時の人は興奮したんだろうな、人間が月に行くなんて凄い事だよ」

泰葉「夢だったんでしょうね、人類の」

P「今は役目を終えて、その事実をここでしっかりと伝えてる」

泰葉「Pさんも同じだと?」

P「俺は違うよ、夢を与える前に終わっちゃったから」

泰葉「動かないんですか?」

P「俺も役目を終えたんだよ、プロデューサーになってからはっきりと分かった事だ」

泰葉「辛くないんですか? 自分が諦めた道を皆が進んでいくのを……目の前で」

P「自分の夢を押し付けてるんじゃないかって不安になる時がある、アイドルだった頃にこう考えてたからってそれが
  アイドル達にとってもそうだとは限らない。俺が進みたい道を代わりに進ませてるだけなんじゃないかと」

泰葉「そんな事ありません!」

P「だから見届けたいのかな。アイドル達が、泰葉が進む道が俺にとって思いもしなかった新しい世界なら」

泰葉「Pさん……」

P「俺は初めて、この世界に残って良かったって思えるのかもしれない」

17: 2013/11/04(月) 20:16:43 ID:zxl04jYw
泰葉「プラネタリウムって、意外と大きいんですね」

P「初めてか?」

泰葉「ええ、前に来た時はありませんでしたし」

P「一面に映し出されるみたいだな、試しに見せてもらえるらしい。今回のイベントの為だけに作られた特別なプログラムだって」

泰葉「今回の為だけに?」

P「先Pさんが色々と考えてたみたいだ、これだけやったなら自分が来ればよかったのに」

泰葉「静かですね」

P「誰もいないからな、本番はもう少し人が入るんだろうけど」

宇宙の誕生から137億年 幾億もの星が生まれてきました

泰葉「本当に途方もない時間」

人は夜空を見上げその星から様々な物語を作り上げました

泰葉「綺麗……」

18: 2013/11/04(月) 20:18:02 ID:zxl04jYw
「泰葉! ここはこうだ! 何度言ったら分かる!!」

「泰葉、もう少しゆっくりと声を出しなさい」

「そこはこうじゃない、ほら姿勢はこう」

泰葉「Pさん」

P「何だ?」

泰葉「あの頃のことあんまり覚えてないってさっき言いましたよね」

P「ああ」

泰葉「何で覚えてないんだろうって思って考えてみたんです」

P「単純に小さい頃の事だからじゃないのか?」

泰葉「いえ、あの頃は大人の言う事を聞いてばかりでしたから」

P「今も大体はそうだろ」

泰葉「もしそうなら、雛祭りのあれはありませんでしたよ」

19: 2013/11/04(月) 20:20:00 ID:zxl04jYw
P「確かにそうだけど、あんな暴走は俺だって滅多にしない」

泰葉「今は自分で噛みしめながら進んでいますから、それだけ記憶に残るんだと思います」

P「……そうか」

貴方が私を思いもしない所にまで連れて来てくれましたから

今度は私が貴方を連れいていきます、宇宙船泰葉号で

絶対に落ちませんから、貴方がいてくれる限りずっと飛び続けますから

P「おい、おい」

泰葉「はっ」

P「いくら朝早いって言ってもな」

泰葉「ち、違いますっ! 昔を思い出してだけですから」

20: 2013/11/04(月) 20:21:43 ID:zxl04jYw
P「にしては何かにやついてたが」

泰葉「にやついてなんかいません」

P「ならプログラムは覚えたな、本番まで繰り返し見なくても大丈夫って事か」

泰葉「……もう一回」

P「え? 何だって? 岡崎泰葉さん声が小さいぞ」

泰葉「もう一回見ましょう!」

P「はいはい、すみませんお願いします!」

泰葉「……だから最後まで、一緒にいて下さいね」

終わり 次回は10日後くらいを目安に

21: 2013/11/04(月) 23:05:55 ID:Vh6Y6FSc
やっと来たか。
次回も楽しみだ。

引用元: ありす「心に咲いた花」