551: ◆f1paZe0QfUJl  2015/11/29(日) 05:57:05.18 ID:w1wOJp36o




前回はこちら


 南方海域《サーモン海域北方》中央ルート


潜水艦《伊168》

イムヤ「ハァ……ハ……ッ」

進撃中の深海棲艦に先制攻撃を仕掛けてから一時間。
集中力はそろそろ限界を迎えようとしていた。

駆逐棲姫「ソロソロ…トドメヲ」

駆逐イ級「爆雷ヨーイ」

軽巡「魚雷装填…完了」

雷巡「トッテオキダ、持ッテイケ……!」

追走する深海棲艦のばらまいた爆雷が、伊168の船体を叩く。
ズズンとお腹に響く衝撃。たまらず膝をついたところに、悲鳴みたいな妖精さんの報告が飛んでくる。

艦妖精A「右舷から魚雷3! 直撃コースですー!?」

イムヤ「こっ……のぉぉおお!!」

一息つく暇すらない。
こっちは、追いつけそうな速度を維持しつつ、追跡を振り切ろうと必氏な航行をしないといけないのに!
顎まで伝った汗を雑に拭い、気合を入れ直した私の周りに浮かぶ光の帯(妖精さんいわく、演算速度や艦娘のテンションを視覚化するために出してる)が回転速度を上げて、伊168の機関も唸り声を上げる。

イムヤ「(ゴメンね、鎮守府に戻ったら、提督にお願いして元に戻してあげるからね!)」

船体のいろんな場所を軋ませながら、それでも私の期待に応えて伊168は艦首を海底へ向けた。

イムヤ「最大戦速……! これを乗りきれば、私たちの役目は終わりだから、思いっきりいっくよぉーーーー!!」

艦妖精B「おわっ、こ、こんな潜航の仕方、船体がもたないですよー!」

イムヤ「この程度で沈めるほど柔な鍛え方してないんだからね!!」

主に八雲教官とか八雲教官とか八雲教官のお陰で……。

艦妖精C「ぎょ、魚雷通過! 衝撃、来ます!!」

伊168の後部4メートルの位置を走り抜けた魚雷は、それから三秒と待たず爆発。
遠慮のない水圧が伊168の船体を満遍なく叩く。

艦妖精A「《伊168》小破! 居住区画に浸水ありです!」

イムヤ「げっ、ヤバ!? 艦妖精さんたち、現場に急行! 水漏れの修理をお願い!」

艦妖精D「修理は任せろー」

艦妖精E「暮ら~し安心その日暮ら~し」

艦妖精F「ぜんぜん安心ではないです、それ」

艦妖精G「宵越しの金は持たない主義」

工具箱片手に、ダバダバと駆けていく艦妖精さんたち。
どこにそんな数がいたのかは気にしない。「艦の中でしたら我々、結構限度なしに湧けますしおすし」らしいし。

イムヤ「(よく考えなくても不思議な生き物よね、妖精さんって)」

まあ、妖精さんたちがいるからこそ、艦娘はたった一人で巨大な艦艇を動かせるんだから、しっかりと感謝だけしておこう。

イムヤ「お陰で……ゴールも見えたしね」

手元に出したホロ海図。そこに表示された伊168の予定航路上で、艦艇の存在を報せる船マークが点滅していた。



※このお話は、個性的な艦娘たちと提督の鎮守府での日常をたんたんと描くだけのものです。
過度な期待はしないでください。

鎮守府での四方山話シリーズ



552: 2015/11/29(日) 05:57:34.88 ID:w1wOJp36o


『第1艦隊、砲戦用意……てぇっ!!』


耳を塞ぎたくなるような大音声が、艦内のスピーカーから響き渡る。
普段のビクビクした様子からは想像もできない、しっかりとした力強い声。


駆逐棲姫「エ?」

軽巡ツ級「砲撃…ドコカラ!」

雷巡チ級「カ、回避……ウワアァァァッ!?」


戦艦の砲弾フルコースの歓迎に、深海棲艦たちの嬉しい悲鳴さえ聞こえそうね。
お腹いっぱいになって、呻き声も出せなくなるまでほんの数分。
完全に戦闘が終了したことを確認。浮上させた伊168のハッチを押し上げる。
胸いっぱいに吸い込んだ冷たい潮風は、極限のストレス下にいた私の脳に痺れそうな解放感を与えてくれた。

イムヤ「プハー……!!」

提督『イムヤ君、すまなかったな』

イムヤ「あ、提督! 見ててくれた? 伊号潜水艦の力!」

タイミングを見計らった通信。
タブレットサイズのホロ通信画面に表示されたしかめっ面の提督にVサイン。
返ってきた反応は、なんというか、いつも通りだった。

提督『あ、ああ、うむ。たった一隻で姫級率いる艦隊を釣らせるという危険な任務を命じてしまい、ど、どう謝罪すればいいのか……』

イムヤ「ウン、別ニイイヨ」

そこはなんか、こう……普通に褒めてくれればよかったんだけど。

提督『で、では、周囲警戒。報告は密に、小破の伊168は艦隊から少し距離をとって航行を……それで構わないかね』

『はい!!』

提督『わ、わかった……連合艦隊、進撃!』

またスイッチの切り換わった提督の号令で進撃が再開する。
空母、大戦艦、超弩級戦艦擁する連合艦隊は、仲間ながらに圧倒された。

イムヤ「(普段のオドオドと指示出してる時の変わりっぷり……やっぱり思い出すなあ、八雲教官のこと)」

伊168を最後尾につけながら、瞼の裏に蘇った恩師のゆるふわ笑顔に背筋を伸ばす。
――――ここからが本番の本番。
四方山鎮守府の一員として全力でいかないとね!

553: 2015/11/29(日) 05:58:19.01 ID:w1wOJp36o
超航空戦艦《北方棲姫》


中間棲姫『駆逐棲姫ガ沈ンダヨウダ』

離島棲鬼「アラ、ソウナノ……早イワネエ」

中間棲姫『姫型トハイエ、成リ立テニハ荷ガ勝チスギテイタノヨ』

離島棲鬼「マア、ソウナルワヨネ」(クスクス

中間棲姫『……』

離島棲鬼「ヤダ、怒ラナイデヨ」

北方棲姫「ホプ……中間、怒ッテル?」(ヨジヨジ

北方棲姫「ライドオーン!」(肩車

離島棲鬼「重イワ、北方棲姫」

北方棲姫「モヤシ! 離島棲鬼ハ引キコモッテルカラモヤシッテ中間言ッテタ!」

離島棲鬼「……」

中間棲姫『オ、怒ルナヨ?』

離島棲鬼「フ、フフ、怒ッテナイワ」

離島棲鬼「北方棲姫、中間棲姫ハネ、駆逐棲姫タチガ先ニ寝チャッテ寂シクテ拗ネテルダケナノヨ」

北方棲姫「ホクホォ、中間寂シンボサン? オ歌、ウタオウカ?」

中間棲姫『北方棲姫ニ下ラン事ヲ吹キ込ムナヨ、オイ』

離島棲鬼「イイジャナイ、歌ッテモラエバ。上手ナノヨ? ネエ、北方棲姫」

北方棲姫「雪ノ進軍氷ヲ踏ンデ~、ドレガ河ヤラ道サエシレO~♪」(ズンチャカズンポコ

中間棲姫『北方棲姫ニ何ヲ教エテルンダ、オ前!?』

離島棲鬼「アハハハ! 港湾モ貴女モ好キネエ、北方ノ事」

北方棲姫「中間、北方ノコト好キ? ホフゥ♪」(テレテレ

中間棲姫『(クッソ、可愛イナ、クソ!)』

北方棲姫「エット、北方モネ、中間嫌イジャナイヨ……?」(上目遣い

中間棲姫『ッ……ト、トニカク、提督ノ艦隊トノ会敵ハ近イ。警戒ヲ怠ルナヨ、イイナ!?』

北方棲姫「」

離島棲鬼「ハイハイ、ッテ、コッチノ返事ノ前ニ通信切ッチャッタ」

北方棲姫「……中間、ヤッパリホントハ北方ノコト嫌イダッタ?」(ズゥゥン

離島棲鬼「照レテルダケヨ。今頃、艦内デ悶エ転ゲテルカラ」

離島棲鬼「……アトモウチョットネ」

北方棲姫「ナニガ?」

離島棲鬼「フフ、内緒」(ナデナデ

北方棲姫「ン~?」

離島棲鬼「チョット席ヲ外スカラ、大人シク良イ子デ待ッテルノヨ」

北方棲姫「ハーイ」





《北方棲姫》機関部

レ級「――――」

離島棲鬼「……ハローハロー、マイクノテスト中」

離島棲鬼「出撃オ疲レ様。今、時間大丈夫カシラ、提督?」


離島棲鬼「――――実ハ貴方ニ見セタイモノガアルノ」

566: 2015/12/02(水) 01:01:20.29 ID:+6lzwyQLo
小ネタ
《西方海域戦線》ステビア海


潜水棲姫「キタノ…ネェ……? エモノフゼイ…ガァ……ナメル…ナアッ…!」

駆逐艦《漣》

漣「舐めてなんかいませんよー。漣はいつだって本気ですよ、っと!」

漣「爆雷全部いっちゃってー!」


ぽぽいぽいぽいぽーい!


潜水棲姫「イタイッ! ヤメテヨォォ…!?」


漣「やめろと言われてやめる奴がどこにいるってんですか。ねー、ご主人様?」

提督「……胃が痛い」

漣「あー、もう、すぐ情に絆される~」

漣「この辺の深海棲艦の基地を落とさなきゃなんですから、割り切ってくださいよ」

提督「わ、わかっているさ」

提督「潮君、爆雷投射。3秒ずらして」


潮『は、はい!! え~い!』


潜水棲姫『ウッフフッ、マタ モグルノカ…アノミナゾコニ……エッ? フジョウ、シテイル? アノ、水面に……?』



艦妖精A「敵艦撃破、反応ありません」

提督「ど、どうにか終わったか……」

提督「では、第1艦隊は残存戦力の警戒にあたってくれたまえ。第2艦隊は私とともに上陸し、秘匿基地を押さえるぞ」


『了解!!』

567: 2015/12/02(水) 01:02:07.46 ID:+6lzwyQLo
《秘匿基地》独房区画


提督「……深海棲艦もこうした施設を利用するのだな」(カツカツ

漣「ご主人様が捕まってたとこに比べると、だいぶ上等といいますかー……拘るようになってる?」

提督「し、深海棲艦も日々進化しているということだな」

漣「ですねー。ここ部屋多いですし、手分けして探りましょうか」

提督「あ、ああ、そうだな」

漣「案外、深海棲艦に捕まってる艦娘とかいたりして♪」

提督「そ、そんな縁起でもない」

提督「前回の作戦時、大本営に送り返したローマ君だって、元帥にウチで預かるよう執拗に催促されているのだからな……」

漣「え~、いいじゃないですかー、そろそろ新しい人に着任してもらいましょうよ、ね?」

提督「……こ、この施設に艦娘がいれば前向きに検討しよう」

漣「ほいほーい、言質取りましたよー。さあ、艦娘さんいらっしゃーい!」(ガチャー

提督「(こ、こんなところに艦娘が捕らえられている確率なんて、どれだけ多く見積もっても2~3%)」

提督「そう、いる方がおかしいのだよ、いる方が……」(ガコン



グラーフ・ツェッペリン「?」(体育座り

提督「」

グラーフ・ツェッペリン「……あの」


バタン・・

<あの、もし、貴方は提督だろうか? 助けに来てくれたのか、感謝する……扉を開けてもらえないだろうか、Admiral……Admiral?

提督「――――」(顔押さえ

漣「んー、こっちには誰もいないっぽいですね……って、あや? どしたの、ご主人様?」

提督「……ナンデモナイヨ」



【この後、ちゃんと保護して丁重に大本営へお送りした】

583: 2015/12/04(金) 22:19:32.24 ID:bfpwc8/Mo
軽巡洋艦《神通》


『……ハローハロー、マイクノテスト中』

神通「な、なに?」

突然の通信。艦隊の誰でもない声にビックリしちゃいました。

提督「……神通君、モニターを」

神通「は、はい…………!」

目を丸くしている私と違い、提督は冷静に回線を開くよう指示されます。
艤装を使って表示させた艦内のモニター。そこに映し出された人物に、知らず体が強張りました。

離島棲鬼『出撃オ疲レ様。今、時間大丈夫カシラ、提督?』

離島棲鬼……鎮守府に現れた鬼号深海棲艦。
漣さんに重傷を負わし……そして、二度も提督を辛い目にあわせた敵。
ドクン、と強い鼓動が一つ。全身の血液が熱を失ったみたいに、頭が、心が冷たくなる。
そして、それと反比例するように《神通》の機関部は熱く、激しく駆動を始めて……

提督「神通君」

神通「あ……」

提督の声に、ハッと我に返る。
横目に窺った私の視線に、提督が向けてくれていた視線がぶつかる。途端、さっき冷えた分の倍は体が熱くなりました。
恥じ入る私に小さく頷いて、提督がモニターへ向き直る。

提督「相変わらず器用な真似をするな」

離島棲鬼『ウフフ、戦闘ヨリモコッチノ方ガ得意ナノ』

提督「……ぬう」

《神通》の通信回線に干渉する。提督の趣味と実益を兼ねて四方山鎮守府の技術の粋を集めた《神通》に対して、それを行うのがいかに難しい行為なのか。
それは、提督の呻きから察することができました。
それにしても、戦闘よりも得意?
漣さんを倒しておきながら、戦うのは苦手だと嘯く深海棲艦に、ほんの少しだけ怖気が走ります。
深海棲艦の底知れなさに、弱気な私が後退りしたから。

離島棲鬼『怖ガラナクテイイノヨ?』

神通「だ、誰が……!」

見透かされている。
モニターの向こうで、愉快そうに口許を歪める深海棲艦に、カッと頬が紅潮する。

提督「わざわざ、私の部下をからかうために通信してきたのかね?」

離島棲鬼『ウフフ、ソンナツモリジャナカッタンダケド。ソノ子ノ反応ガ可愛イカラ、ツイ』

提督「用件を言いたまえ。手短にな」

提督に促された深海棲艦……離島棲鬼はニコリと微笑みました。

離島棲鬼『――――実ハ貴方ニ見セタイモノガアルノ』

神通「――――!!」

提督「……レ級」

584: 2015/12/04(金) 22:20:16.97 ID:bfpwc8/Mo

動揺する私の隣で、提督がレ級……かつて、私の目の前で提督を拐った深海棲艦の名を呟きました。
モニターの中央。消えた離島棲鬼の代わりに映る円柱形の分厚い水槽の中にレ級はいました。
目を瞑って、波間をたゆたうように浮かぶレ級の体には傷一つなく、ただ眠っているようにも見えます。

神通「そんな……レ級は、彼女は艦と一緒に沈んだはずじゃ……」

【霧の艦隊】……深海棲艦さえ凌駕する、別次元からの脅威。
その撃退に手を貸してくれた【蒼き鋼】所属《イ401》のメンタルモデル・イオナさんが元の世界へ帰還する時、餞別として分けてくれた浸食魚雷の直撃を受けて轟沈したと、ちゃんと報告書に書いてあったのに。
脱出していたの? でも、その時のダメージが大きくて、ああして治療を受けて――――

離島棲息鬼『ソンナニ顔シチャッテ。ソンナニコノ子ニ会イタカッタ?』

モニターの画面右下から、ニュッと離島棲鬼が顔を生やしてきました。
こちらをからかっていると嫌でも理解できてしまう行動に、ほんの少しムッとしちゃいます。
けれど、提督の反応は違いました。

提督「その子は……生きているのか?」

神通「(提督?)」

絞り出すような提督の声。
期待と不安が複雑に入り混じったそんな声、私は、初めて聞きました。
強く拳を握りしめて、そうであることを願うように投げかけた問いかけ。

離島棲鬼『――――ソンナ訳ナイジャナイ』

返されたのは、花も綻ぶような笑みと、提督の希望を断ち切る否定でした。

離島棲鬼『アノ日、アノ場所デコノ子ハ沈ンダワ。他デモナイ、貴方ノ手デ』

提督「…………」

離島棲鬼『タダネ、一応引キ揚ゲテミタラ嬉シイ誤算。人格トカハ壊レチャッテタケド、核ハ無事ダッタノヨ』

そっと、高価な美術品を愛でるように水槽の表面を撫でて、離島棲鬼が続ける。

離島棲鬼『姫級ニ匹敵スルエネルギーヲ生成シテクレテルカラ、再利用シテアゲタノ……《北方棲姫》ノ動力トシテ』

あの時、艦隊のみんなを傷つけて、私の目の前で提督を拐ったレ級を許すことはできません。
けれども、沈んだ後にこんな仕打ちはかわいそう。

神通「……酷い」

私……たちと同じように、提督を大切な人として慕っていたレ級への同情からか、そんな言葉が口を衝いて出ていました。

離島棲鬼『ホント、便利ナ子デ助カルワ』

提督「――――ッッ」

神通「…………」

歯軋りの音。
提督……本気で怒っています。
それが伝わるのと同時に、どうしてか、ギュッ、と締めつけられるように胸が苦しくなりました。

585: 2015/12/04(金) 22:20:55.67 ID:bfpwc8/Mo

艦妖精A「偵察機より入電! 敵主力と思われる艦隊発見せり!」

艦妖精B「《蒼龍》、《大鳳》の両艦から艦載機発艦の許可求むと催促が来ています!」

艦妖精C「提督さん、ご指示をー」

にわかに《神通》の艦内が騒がしくなる。
戦いが始まります。きっと、これまで潜り抜けてきたどの戦いよりも辛く、激しい戦いが。

離島棲鬼『フフ、忙シクナリソウダシ、オ喋リハココマデ』

小さく手を振って、離島棲鬼がモニター奥へ歩いていく。

離島棲鬼『……今カラデモ遅クナインダケド?』

提督「…………」

通信を切る直前、肩越しに振り返った彼女の言葉に、提督の瞳が一瞬、揺れたことに私は気づきました。

提督「じ、神通君、戦闘準備を。厳しい戦いになるぞ」

神通「……はい」

『No image』の文字が浮かぶモニターを消して、提督が指示をくれます。

神通「(レ級……離島棲鬼……そして、北方棲姫)」

彼女たちが、提督にとってどういう存在なのかわからなくて、とても嫌な気持ちです。
ズブズブと、逃れようのない泥に沈んでいくような感触。
これは嫉妬……? それとも、羨望なのでしょうか。
心のざわつきに耐える私の耳に、幽かな声が届きました。


『イイノヨ……貴女モ提督ト一緒ニ……』


ソレが、離島棲鬼と、暗くて深い海色に染まった『自分に似た誰か』のどちらが発した甘い囁きだったのか……私には、はっきりと答えることができませんでした。

600: 2015/12/05(土) 22:41:35.07 ID:KuGXBA50o
小ネタ
【そうか、そうか、つまり(以下略】


駆逐艦《漣》

提督「……」

グラーフ・ツェッペリン「……この艦隊はどこへ向かっているのだ?」

提督「ッ」(ビクッ

漣「大本営ですよー。深海棲艦にとっ捕まってたわけですし? 一名様ご案内と鎮守府に迎え入れるわけにはいかないのですよ」

グラーフ・ツェッペリン「なるほど、道理だ」

グラーフ・ツェッペリン「大本営にて深海棲艦になにか仕組まれていないか、妙な感染症のキャリアとなっていないか等の検査は必要だな」

グラーフ・ツェッペリン「それが終わって、私の艦……《Graf Zeppelin》が再建造されたら、改めて提督の鎮守府に所属となるのだな」

提督「え」

グラーフ・ツェッペリン「え?」

提督「い、いや、君の処遇に関しては大本営に任せようと考えているのだが……」

グラーフ・ツェッペリン「艦娘の保護に関する条約にしっかりと記載されている。(a)提督は保護した艦娘を戦力として保有すること (b)大本営及び艦娘の意思を尊重し、鎮守府の戦力を充足させること――――」

提督「あ、あくまでそれは大本営の方針であって、保護した艦娘に関しては提督の判断に委ねられて……」

グラーフ・ツェッペリン「……なるほど? では、Admiralの鎮守府では深海棲艦に鹵獲されるような艦娘は戦力として相応しくないので、大本営に預けて適当な任務を消化させておけばいいと、そういう考えなのだな?」

グラーフ・ツェッペリン「そうか、そうか、つまりそれが貴艦隊の流儀というわけだ」

提督「い、いや、別にそういうわけでは……」

グラーフ・ツェッペリン「違うのか? では、どうして私が大本営預かりなのか説明を願おう」(戦艦クラスの眼光

提督「」

漣「(ご主人様を言いくるめるとか……この人、できる!!)」(戦慄

615: 2015/12/07(月) 22:21:18.68 ID:sv91QE+0o
【テートク&パンツァー 戦車整備始めます!】

《大本営》元帥の執務室

提督「り、陸軍に出向でありますか」

元帥「深海棲艦のことで、いろいろ世話になっているからな。あちらさんの手が足りないということで、海軍から人材を貸し出すことになったのだよ」

提督「な、なるほど……。あの、なぜ私が選ばれたのでしょうか?」

元帥「向こうの希望というのもあるが、まあ、一番の理由は君が適任だから……だな」

提督「私が適任……?」

元帥「ここから先の説明は彼女にお願いしよう」


<knock…knock…


元帥「入りたまえ」

あきつ丸「ハッ! 失礼するのであります!」

提督「(彼女はたしか憲兵団の……)」

あきつ丸「突然の出向の要請、申し訳ありません。既に元帥殿から聞いておられるかと思いますが、提督殿のお力を貸していただきたいのであります」

提督「わ、私になにができるというのだね?」

霧島「(あなた、その気になったら艤装使う以外だいたいできるじゃないですか)」

元帥「(その気になるのが、崖に片手でぶら下がってからなのが本当に惜しい)」

あきつ丸「提督殿にお願いしたいのは……戦車の整備であります」

提督「やります」(即答

あきつ丸「わかります、提督の立場にあらせられる方に、このような肉体労働をお願いするのは当方としても心苦しい…………はい?」

提督「やります。やりたいです。やらせていただきたいっ」(キリッ

あきつ丸「あ、はい」

霧島「(その気になりましたね、あっさりと)」

元帥「(こいつなー……本当になー……)」(ピキピキ

霧島「(落ち着いてください、元帥。先日新刊が出たよつばちゃんみたいな顔になってますよ)」

あきつ丸「で、では、こちらの書類にサインをいただけると」

提督「う、うむ、了解した……これでいいかね?」

あきつ丸「……はい、問題なしであります!」

提督「そ、それで、戦車の整備と言っていたが、整備は陸軍に配備されているものでいいのだね?」

あきつ丸「いいえ、いろいろであります」

提督「い、いろいろ?」

あきつ丸「はい、いろいろ」(ニッコリ

提督「??」

616: 2015/12/07(月) 22:22:48.49 ID:sv91QE+0o

元帥「……時に、君は最近の女子の流行りを知っているかね」

提督「は、流行りでありますか」

提督「も、申し訳ありません、そうしたものには疎く」

元帥「そうか、そうか」

あきつ丸「提督殿は『戦車道』というものをご存じでしょうか? 陸軍も大きく関係しているのでありますが」

提督「た、たしか……数十年以上前、深海棲艦に陸を攻められた際、負傷した戦車兵に代わって通りがかりの馬上なぎなた部の女生徒が戦車を用い、これを撃退したのが発端の武芸……だったか?」

あきつ丸「艦娘の登場によって深海棲艦に陸を攻められることもなくなり、現在では女学生の礼儀作法、いわゆる『乙女の嗜み』となっていますが」

あきつ丸「各国学園艦の戦車道部女子による熱い戦いは提督殿にもきっとご満足いただけると――――」

提督「ま、待ちたまえ、そ、その口振りからすると、戦車の整備というのは……!」

あきつ丸「近く発足されるプ口リーグ……そこに所属するプロチームを認定する大会が、陸軍協力のもと行われることになりまして」

あきつ丸「やれることをすべてやっておきたいと、各校から本職の技術を学ばせてほしいとオファーが」

あきつ丸「有名どころが集まっているのであります」

あきつ丸「大洗女子、黒森峰、聖グ口リアーナ、アンツィオ、プラウダ、サンダース大付属、継続、知波単、大学選抜他」

あきつ丸「さあ、提督殿、どこから行くでありますか?」

提督「――――!!」(ダッ!!


<提督殿!? どこへ行くのでありますか!?

<逃がすな! 追えっ! 追えー!!

617: 2015/12/07(月) 22:25:20.90 ID:sv91QE+0o
(1ヶ月後)


大和「……提督、大丈夫でしょうか。若いだけが取り柄の女に誘惑されたりしてるんじゃ」

漣「い、いくらご主人様でも、さすがにそれは」

大和「でも、愛読書の『婦人口論』には、女房と畳は新しいほうがいいと……」

漣「誰が女房なのかは置いておくとして、たしかに心配ではありますねー」

神通「提督……お会いできなくて寂しいです……」(グスッ

金剛「神通……。だ、大丈夫ね、戦車の整備が終わったら、提督はすぐに鎮守府に戻ってきてくれマース!」

蒼龍「でも、機械の整備って数少ない提督が大好きって自己主張するものですよね……。可愛い女の子に『ずっと私たちの戦車を整備してください』なんてお願いされたら、提督って優しいから」

蒼龍「さらには、よくわかんない流派の跡継ぎ問題に巻き込まれて、流れに流されて……なんてことも!!?」

「「「……………………」」」(ハイライトOFF

大和「――――ちょっと様子を見に行きますか」

神通「あ、じゃ、じゃあ、私も」

漣「しょ、しょうがないですねー、お目付け役として漣も同行しますか」

金剛「提督も私の紅茶、恋しくなってる頃でしょうし、これも部下としての気遣いデース!」

蒼龍「文月ちゃんと弥生ちゃんも連れて行ってあげないとね!」


【後日、学園艦を本気編成の連合艦隊が取り囲む模様】




(なお、現実)

「ねえ、聞いた? あの噂」

「聞きました。夜な夜な、戦車の整備を行う青白い顔をした整備兵の亡霊ですよね」

「オ、オバケとかいるわけない」

「でも、ウチだけじゃなくて他の学園艦でも目撃例が! 翌朝には、完璧に整備された戦車が残っているでありますよ!」

「戦車整備の妖精さんなのかな?」





元帥「学園艦の七不思議に加わってどうする!?」

提督「わ、私に落ち度でも?」


【テートク&パンツァー 戦車整備始めます! 来年11月31日より放送開始しますん】

636: 2015/12/09(水) 21:14:37.09 ID:2UNT1tvoo
《大本営》母港


不知火「お疲れ様です、司令」

提督「ああ、し、不知火君もお疲れ様」

<ご主人様~! 漣、艦隊の補給手続きとかやっちゃうんでー! グラさん連れてってあげてくださ~い!!

提督「……」

不知火「(グラさん……深海棲艦の基地で発見した捕虜の方……)」(チラッ

グラーフ・ツェッペリン「ふむ、ここが大本営」(キョロキョロ

グラーフ・ツェッペリン「む? Admiral、この少女もあなたの部下か」

提督「あ、ああ、そうだ」

グラーフ・ツェッペリン「では挨拶が必要だな。航空母艦の艦娘グラーフ・ツェッペリンだ、よろしく」(戦艦クラスの眼光

不知火「!!」(ビクッ

グラーフ・ツェッペリン「どうした? 私の顔になにかついているか」(ギラッ!


すすす・・・

不知火「……不知火です、ご指導ご鞭撻よろしくです」д・´))

提督「し、不知火君っ、わ、私を間に挟んで話すのはやめてもらえないだろうか?」

不知火「ぬ、ぬい……」(ヒシッ

提督「背中から離れてもらえないだろうか……!」

グラーフ・ツェッペリン「(怖がらせてしまったか)」(目尻サスサス


駆逐艦《陽炎》甲板手すり

陽炎「……あー、そういえば不知火、たまに寝起きで鏡見てビクッてするぐらい怖がりだったわねー」(グテー

637: 2015/12/09(水) 21:15:20.03 ID:2UNT1tvoo
《大本営》元帥の執務室


元帥「そうか、ロストしていたグラーフ・ツェッペリンの艦娘が深海に……」

提督「げ、現在、医療班に感染症などがないか調べてもらっているところです」

元帥「それで問題なければ、艦を再建造して鎮守府に着任だな」

元帥「彼女は空母でありながら夜戦にも参加できる稀少な能力を持っている。きっと役に立ってくれるぞ、うむ」

提督「……」(マジ目逸らし

元帥「 お い こ っ ち 見 ろ 」

提督「わ、私の鎮守府はすでに保有限界に達しており、新たな艦娘の着任は、む、難しいかと」

霧島「提督の鎮守府、母港の限度を半分にしてもまだ空きがあるのですが?」(資料ペラリ

元帥「で、本音はなんだね?」

提督「――――し、新人とどうコミュニケーションを取ればいいのか、わ、忘れました」

元帥「……もう長いこと、新規の着任がないからなー」

霧島「(まるで所属している艦娘とはコミュニケーション取れているような口振りですね)」

元帥「リハビリも兼ねてローマ君たちも追加してやろうか」(ボソッ

提督「!!?」




《大本営》海外艦娘の溜まり場


ローマ「……いま、ものすごく適当な扱いを受けた気がするわ」(カチャカチャ

イタリア「私は存在を忘れられてる気がするけど……」(カチャカチャ

リベッチオ「そ、そんなことより助けて~!?」

リベッチオ「お尻はやめてって言ってるのに~! もうやだやだ!」(ガチャガチャ

ローマ「待ってなさい、龍撃砲の威力、目にもの見せてやるわ」

イタリア「はい、スタン取りましたよ~。やっぱりハンマーって素敵」

リベッチオ「わーい! イタリア、ありがと~♪」

ローマ「」

U-511「コタツ、いい気持ち」

ビスマルク「フフ、これはいいものね」




プリンツオイゲン「(日本って怖い……)」


【なお、数日後にプリンツオイゲンも日本のファンになった模様】

640: 2015/12/09(水) 21:47:41.28 ID:2UNT1tvoo
【艦娘たちとXmasコミュニケーション】文月編

《鎮守府》執務室


<ガチャー!

文月(@サンタ帽子)「司令官~、なにしてるの~? 文月とお話しよぉ」

提督「ふ、文月君、その帽子は?」

文月「えへへ、間宮さんでケーキ頼んだら、オマケでくれたの~」

文月「メリ~クリスマ~ス、司令官♪ 帽子、可愛いでしょー……プレゼント、ちょ~だい♪」(ニパー

提督「……ク、クリスマスのプレゼントはサンタさんにお願いしたまえ」

文月「えぇ~」(プクー

提督「――――ち、ちなみに、文月君はどのようなプレゼントが欲しいのだね? よ、よければ、わ、私からサンタの方へ希望を伝えておくが……」

文月「ほわぁ、ホント~!? じゃあね、じゃあね~!」(キラキラ

提督「(カードか、デッキか、バイクか、それとも新たな兵装か……)」

文月「えっとねぇ、文月、妹がほしいなぁ~」(上目遣い

提督「」(吐血

文月「間宮さんに聞いたらね~、司令官にお願いしたら叶いますよって~!」

提督「(間宮君……)」

文月「あとね~、あとね~、どうしても無理だったらね、私が責任取りますって間宮さん言ってたよ~?」

提督「(間宮君!?)」

文月「間宮さんね~、お顔真~~~~っ赤でね、お目めグルグルしてたんだぁ。風邪かなぁ? 文月、ちょっと心配~」

642: 2015/12/09(水) 22:25:22.20 ID:2UNT1tvoo
【艦娘たちとXmasコミュニケーション】金剛編

《鎮守府》執務室


金剛「HEY、提督ぅー! Merry Xmasだヨーーーー! さあ、私へのプレゼントを早く差し出すのデース!」

提督「き、君はなにを言っているのだ……ク、クリスマスはまだ先だろう……」

金剛「ヒック……関係ないネー! さあ……さァ!」

提督『訳:こ、金剛……君、酔っているな!?』

金剛『訳:ハア? 酔ってないわよォ……。ちょっと比叡が持ってきたワインを一本空けただけ~……』(ダキー!

提督『訳:そ、それで飲んでいないと主張するのか……! だ、抱き着くのはやめたまえ!』

金剛『訳:ン~、やー! こうやって捕まえておかないと、アナタどこかに行っちゃいそうだし』(ギュギュー!

提督「ぬぐ……」

金剛「ンフフ~、観念しましたカー?」

金剛『訳:……ハア。でも、こうやってるとやっぱり落ち着く。だって……アナタを感じられるから』(傾鎮守府の微笑み

提督「こ、金ご――――!!」(引き剥がし

金剛「キャッ!?」

提督「あ、いや、す、すまない、驚かせるつもりでは……」

提督「そ、そうだっ、み、水を持ってくる! ソファーで休んでいたまえ!」(ダッ!

金剛「アッ、逃げたデース!? 待てェーーーー!!」(ダダッ!


提督「ば、馬鹿! そんな状態で走ったら……!?」

金剛『訳:うぷっ……! き、気持ち……悪い……』

提督「ぬ、ぬう……。昔から羽目を外すと失敗するな、君は」

金剛『う、うるさい、こんなのアナタがいる時ぐらいよバカァ~!』(ポカポカ

提督『訳:あ、ああ、もう、私が悪かったことでいいから……』

金剛「ヴゥ~! もう歩けない~、ベッドまで運んでヨ~!」

提督「す、少しは警戒心というものをだな……」(ボソッ

金剛「なんですカー? 聞こえまセーン!!」

提督「あ、暴れるな……!」




(廊下の陰)

比叡「……飲ませる量を間違えましたね」(痛恨

644: 2015/12/09(水) 22:30:52.41 ID:2UNT1tvoo
漣朧のクリスマスグラや文月金剛のクリスマスボイス、いいものですね
ネタでイベントの無念も発散したので次からしばらく本編の投下に戻ります
ラストまで決まっているのに書き進められないのは何故なのでしょう……

651: 2015/12/11(金) 06:32:26.08 ID:iWd7G32z0
乙でございます


次回はこちら



引用元: 【艦これ】提督と艦むすの鎮守府での四方山話9