739: ◆f1paZe0QfUJl  2016/01/02(土) 19:44:09.41 ID:zX0UFfYSo




前回はこちら


 明けましておめでとうございます
新年初書きということでいただいたお酒を舐めつつ、小ネタを1つ2つ投下予定

……家でお酒を入れると缶1本で落ちる時があるので気長にお待ちいただけるとです

740: 2016/01/02(土) 20:24:51.67 ID:zX0UFfYSo
【年が明けました】

《鎮守府》執務室


漣「ご主人様~、年賀状です!」(ドサー!

提督「お、多いな」

漣「そりゃあ、立場柄、出した数が数ですからねー。同じかそれ以上届きますて」

提督「それもそうだな。し、仕方ない、どこから来たか確認するか」

漣「ほいさっさー。それじゃ、漣はこっちの束を選り分けるので、ご主人様はそっちをお願いね!」

提督「う、うむ」


(提督&漣、年賀状確認中・・・)


提督「(これは他所提督、メガネ提督とオネエのもあるな)」

提督「(これは先生……元帥からか、相変わらず達筆でいらっしゃる)」

提督「(あとは挨拶したことのある将校たちに、工廠関係者……)」

提督「む?」

漣「どしたのー、ご主人様? 不幸のハガキでもありました?」

提督「い、いや、実家からの年賀状も混ざっていただけだ……」

漣「ほほう、どれどれ~?」

提督「な、なにも面白いことは書いていないぞ」

漣「ぬふふ、それは漣が決めることなのですよー♪」

『明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。


追伸
今年こそ良いお知らせが欲しいです 母より
できたから婚でも気にしないぞ、私たちも作ってから結婚したし 父より』


漣「……」

提督「すまない……デリカシーに欠ける父母で本当にすまない……」

漣「姫初め、か」(ボソッ

提督「!?」



※このお話は、個性的な艦娘たちと提督の鎮守府での日常をたんたんと描くだけのものです。
過度な期待はしないでください。

鎮守府での四方山話シリーズ



744: 2016/01/02(土) 23:12:37.25 ID:zX0UFfYSo
【謹賀新年】

《鎮守府》食堂

漣「あけおめ、ことよろー!!」

神通「漣さん、あけましておめでとうございます」

漣「あれ? ご主人様は?」

神通「フフ、外でお餅を焼かれています」


(外)

七輪<もっと…熱くなれよォォォォォッ!!

提督「(餅を焼く時は心穏やかに……しかし注意を逸らさず、絶妙のタイミングを計らねばならない)」

提督「(砂糖醤油か、きな粉か、はたまたおろしか納豆か……悩ましい。小豆も捨てがたいが、焼いた餅に絡めるとなると話が変わるのだ)」(ムムム

文月「司令官~、あけましておめでとうございます。今年もよろしく♪」

弥生「司令官、新年あけましておめでとう…です。今年もよろしくお願い…です」

提督「あ、ああ、あけましておめでとう」

文月「なにしてるのぉ~?」

弥生「おモチ、焼いてるんですか?」

提督「あ、ああ……君たちも食べるかね?」

文月「食べる~!」

提督「た、たくさん用意してあるので、好きな味つけで食べたまえ」

提督「――――と、忘れていた。これを」


ポチ袋<みんな、仲良うせんとあかんよ。


文月「コレってお年玉~? ほわぁ、ありがとぉ!」

弥生「ありがとう…ございます」

提督「駆逐艦の子たち全員に渡すので、あ、あまり多くはないが。好きな本や服……間宮君の店で甘いものなど食べるといい」(ニコリ

文月「うん~!」

弥生「その時は…司令官も一緒に行きましょうね」

提督「……や、休みの時にな」

弥生「はい…♪」

文月「わぁ!? お餅焦げてるぅ……」

提督「ぬお!? し、しまった」


<す、少し焦げたくらいだから大丈夫だろう。私は砂糖醤油にしよう
<き~な~粉~♪
<おろしのにが甘さが…おモチの味を際立たせてくれます

745: 2016/01/02(土) 23:14:01.60 ID:zX0UFfYSo



漣「あの一件以来、前にも増してベッタリですねー」

神通「それは……仕方ないですよ」

漣「ま、漣たちだって3~5割増しでコミュニケーション取ってますしねー♪」

神通「まさか、提督があんな風に思ってくださっていたなんて思いませんでしたからね……♪」(テレテレ

漣「だからといって毎夜、フートンに潜り込んだ駄級さんはアウトです」(真顔

神通「そうですね」(真顔





大和「解せません」

金剛「自分の胸に手を当ててよっく考えてみるネー」

蒼龍「(文月ちゃんと弥生ちゃん、最近は提督のとこばっかり。ちょっと寂しいなあ……)」

761: 2016/01/11(月) 21:37:52.41 ID:/rzGEgzso
【デュエリストおみくじ】

某所《電気街》


瑞鳳「ん~! やっぱりココに来るとワクワクするね!」

提督「こ、個人的にはやや気まずいよ」

夕張「あー、えOちぃ女の子の看板とかたくさんありますもんね」

提督「…………」

瑞鳳「そこでだんまりされると、逆にこっちが恥ずかしいよぉ」

提督「す、すまない」

夕張「まーまー、このぐらいで引くほど私たちも潔癖ではないですし」

夕張「そんなことより、目的を果たしましょう!」

提督「あ、ああ、そうだな」

瑞鳳「新年一発目のパック購入……ここで一年の運気が決まると言っても過言じゃないよね」

夕張「お店は駅前のとこでいいですよね」

提督「う、うむ」

夕張「開封は……路地裏に美味しいカレー屋さんがあるから、そこに入ってから!」

瑞鳳「よぉし、それじゃあ出陣~!」


<何パック買おっか?
<使っているデッキに組めるカードも少ないし、10パックでどうだろうか
<えー? それじゃ当たり枠ゲットできなさそー……


(提督&瑞鳳夕張、パック購入中・・・)

762: 2016/01/11(月) 21:39:48.03 ID:/rzGEgzso
《カレー屋》


夕張「――――というわけで! 注文も終わったからパック開封いっちゃいましょー♪」

瑞鳳「いっつもこの瞬間はワクワクを思い出しちゃうよねぇ♪」

提督「ああ!」

夕張「それじゃいくわよー? ドロドロドロドロ……」

瑞鳳「夕張、それ別ゲー」

夕張「アハハ。それにしても、昔に比べてカードゲーム増えたよねえ。アニメもいろいろやってるし」

提督「ふ、文月君と見たカードゲームのアニメで、いかにもな敵幹部と忍者がデュエルしていたな」

提督「忍者の少年のトラップが発動して敵幹部が追いつめられた時、『ああ、これは敵幹部が「なんてね」と高笑いするな』と確信したのだが……」

提督「そ、そのまま勝負が決まってしまって、少し、その……文月君と一緒に呆気に取られてしまったよ」

夕張「蘭丸ェ……」

瑞鳳「あー、私もそれ見た。慣れすぎちゃってるよね、たぶん」

提督「う、うむ」

夕張「と、とりあえず開封は済んだし、発表といきましょうか!」

夕張「一番手は……提督さんお願い♪」

提督「わ、私か」

瑞鳳「一番偉いもんね♪」

提督「で、では――――」


(提督、開封中・・・)


提督「……ふむ」

瑞鳳「な~にかな、な~にかな♪」

夕張「な~にかな、な~にかな♪」

提督「ど、どうやら今年の運気は抑え目らしいな」

・クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン
・RR-アルティメット・ファルコン
・EMオッドアイズ・ライトフェニックス
・浮幽さくら
・青き眼の賢士
・虚竜魔王アモルファクターP
・波紋のバリア-ウェーブ・フォース
・サイコロプス
(以下略)


瑞鳳「……」(爆氏

夕張「……」(爆氏

提督「さすがにこのパック数ではエクストラを網羅できないようだ。ノーレアも1枚だけだし…………む?」

瑞鳳「ココ、提督の奢りにケッテー♪」

夕張「サンセー♪」

提督「!?」

771: 2016/01/16(土) 02:04:56.29 ID:11xTet1Go
【深海棲艦は静かな海の夢を見るのか】


漣「ぬはははははははははッ!! 初期艦参上ォ!!」

目一杯にオープンした画面。その全部ににドヤ顔ダブルピース。

漣「イエーイ、見てますかみなさ~ん? 最新最高の初期艦、遅ればせながら推参いたしましたよー!!」

みんなが呆気にとられたり、喜んだり、驚いたりしているのがよく見える。

曙『さ……漣ぃーーーー!!』

中でも曙の反応は格別だった。
まず目を丸くして、頭が処理しきれなくなってうろたえ、状況を理解して息を呑み、そのあと涙ぐんで……それを誤魔化すために怒鳴ってきた。
復活冥利に尽きますねー、そこまで喜んでもらえると。

朧『もう大丈夫なの?』

潮『漣ちゃ~ん……よかったよぉ……』

陽炎『ゼェ……ゼェ……! こ、これでウチのエース揃い踏みね……』

不知火『漣さん、助太刀、感謝です』

熊野『助かりましたけど……その艦、なんか前と違いませんこと?』

青葉『なんですかー、なんですか、その艦!? 《漣》であって《漣》じゃないスーパーな感じですが!?』

蒼龍『思ったより元気そう、さすがだね!』

大鳳『漣さん、目を覚まされたんですね! よかったぁ……!』

漣「にゃはは、妖精さんの粋な餞別という奴です。まあ、それに当たって先代が解体の憂き目に遭ったりしたわけですがー……」

提督『え……』

提督の絶望トーンな声が聞こえたけど、今回は無視しておこう。
悪いの妖精さん、漣は悪くない。おk?

漣「それにしても、はー……お二人がいながら、ずいぶんとこっぴどくやられたもんですね」

金剛『面目ないネー』

大和『――――』

漣の言葉に、金剛さんは顔をウヒーって感じの顔で謝って、大和さんはハイライトを消してこっちを睨め上げるてくる。
主砲の先端がこっち向いたのは気のせいですかねー。復帰早々、フレンドリーファイヤで轟沈なんて笑えませんて。
モニター越しに人を呪い殺せそうな視線を飛ばしてくる大和さんから目を逸らし、モニターの一つを拡大する。

772: 2016/01/16(土) 02:05:52.38 ID:11xTet1Go

漣「どーも深海棲艦さん、漣です」

離島棲鬼『……ドーモ』

北方棲姫『ホポォ、北方棲姫デス!』

挨拶は実際大事。
両手を合わせてお辞儀してやると、離島棲鬼も面白くなさそうに挨拶を返してくる。
画面の右下からちびっこいのがピョンピョコ映り込んでくるけど無視しておきましょう。

漣「いやぁ、漣がいない間にみなさんがお世話になったようで」

北方棲姫『ホ……北方棲姫、デス!』

無視無視。

離島棲鬼『元気ソウネ。潰シ足リナカッタノカシラ? クスクス、マルデ黒クテスバシッコイ「アレ」ミタイネ』

漣「うぇっへっへ、黒さはそちらに負けますがー。まさか、あの程度で漣を倒した……な~んて思っちゃってました?」

北方棲姫『ホプゥ……北方棲姫ダヨ……。ホッポッテ呼ンデモイイヨ……?』

無視……。

離島棲鬼『北方棲姫、今アノ艦娘トオ話シテルカラ、チョット静カニシテテ』

北方棲姫『……ウン』

いい加減、無視するのも堪えてきたところで、離島棲鬼がちびっこいのにストップをかけた。
この世全てに絶望したよーな顔で頷いて、トボトボと離れていく姿は、ウチの一番偉い人を連想させる。
あ、ギリ画面の端っこに三角座りしてこっち見てる。

離島棲鬼『……』

漣「えっと、続けます?」

離島棲鬼『……今度は念を入れて沈めてあげるわ』

気遣って尋ねたのが悪かったのか、さらに機嫌を悪くしたご様子で、離島棲鬼が宣戦布告してきた。
そこから数秒で《北方棲姫》から耳のついた饅頭が飛び立ち、複雑な軌道を描きながら《漣》へと殺到する。
うーむ、アレってどういう原理で飛んでるんですかねー。

漣「(ま、合流する前に近くを浮いてたの、いくつか撃ち落として回収しておきましたし。この戦い終わったら、ご主人様と妖精さんたちにプレゼントしますかねー)」

あちらこちらのモニターから回避や迎撃の指示が飛んでくる。
当然。沈ませてやる気なんて、漣にはこれっぽっちもありません。

漣「お願いします、ウサさん!」

ウサギ『……コォォォッ』

呼びかけに応えるように、ウサさんがズンッと腰を落として構える。
ウサさん正面に拡大したレーダーには、《漣》に接近する光点が数十。

漣「ステンバーイ……ステンバーイ……」

有効射程距離まであと五……四……
ギリギリまで引きつけたところで叫ぶ。世界でも(たぶん)指折り有名な軍師の名言を。

漣「――――今です!」

ウサギ『!!』

漣が合図した瞬間、レーダーの光点に向かってウサさんが怒濤のラッシュを放つ。
ワン、ツー、ストレート。華麗にステップを踏みながらジャブジャブ、アッパー。そして決めるぜ、ダッキングかーらーのーデンプシー!
パンチに連動するのは《漣》の高角砲。徐々に奇妙になる物語ばりのドラララパンチが光点に触れる度、砲口が火を噴き、接近する白饅頭を撃ち落としていく。
レーダー上から光点が一つ、また一つと消え、全部が消えるまで、そうたいした時間はかからなかった。

773: 2016/01/16(土) 02:06:28.45 ID:11xTet1Go

離島棲鬼『……ヘェ?』

モニターの向こうで、離島棲鬼が感心したように片眉を上げた。
それに対して、漣は思いっきりドヤァしてやる。

漣「ドヤァ」

離島棲鬼『北方棲姫、アレヲ狙イナサイ』

北方棲姫『ワ、ワカッタ』

離島棲鬼に命令されたちびっ子の周囲に、漣たちと同じ光の帯が発生。回転に合わせるみたいに、《北方棲姫》の主砲が《漣》に狙いを定める。
ウチの超駄級戦艦さんを超える超々弩級の戦艦主砲。傍を掠めただけで艦が半壊、あるいは転覆してしまう威力なのは間違いない。
でーすーがー、当たりませんし、当てさせません。今日の漣は一味違うこと、教えてあげましょう。

漣「なんたって、リミッター解除ですから!!」

硬質の音を響かせて回転する光帯。燃え上がる機関、一瞬で出力・戦速は最大に。

艦妖精A「初弾回避!」

艦妖精B「二発目、来ます!」

艦妖精C「このまま進んだら直撃ですー!」

艦妖精さんたちの警告。
モニターを見ると、《北方棲姫》の主砲がこちらの進行方向……のちょっと先に向けられているのが確認できた。

漣「(あのちびっ子、《漣》の進路と速度をきっちり計算して撃ってきてる)」

さっきの艦の動かし方といい、艦娘みたいな深海棲艦です。
離島棲鬼の言葉を真に受けるなら、あの子はご主人様の――――

漣「その辺もキリキリ吐かせてやりますよー……いっぺんぶっ飛ばしてから!!」

艦妖精D「そんなことより、砲撃来ますー!」

漣「左舷錨を下ろします! 妖精さんたち、しっかり掴まっててくださいよっ!」

漣の叫びに応えた《漣》の錨が、ジャラジャラと鎖の音を響かせて海中に沈んでいく。

艦妖精A「なにする気ですかー!?」

艦妖精B「むぅ……これは……」

艦妖精C「知っているのか、妖精B!?」

艦妖精D「ぬわーーっっ!!」

艦妖精さんたちの寸劇。次の瞬間、《漣》の床が急激に傾いて、反応の遅れた艦妖精さんがコロコロと転がっていく。
下手すれば船体に亀裂が入りかねない方法。けど、算数のお得意なちびっ子には予測しようがないでしょう!

漣「命、燃やすぜ!!」

ウサギ『――――!!』

漣とウサさん、二人がかり全力全開の姿勢制御。
《北方棲姫》の主砲は海上ドリフトを決めた《漣》から遠く離れた場所に着弾し、ぶっとい水柱を作った。

774: 2016/01/16(土) 02:08:59.85 ID:11xTet1Go

北方棲姫『!?』

モニターの奥でちびっ子が目を白黒させている。

漣「どんなもんですか、これが年季の差ってもんです……よ!!」

《漣》の主砲が《北方棲姫》に狙いを定める。この距離、そしてそのデカイ図体、外しようがありません。
全主砲一斉射。轟音と衝撃に艦が震える。
空気を引き裂いて進む砲弾は、狙い違わず《北方棲姫》の横っ腹に突き刺さり――――――――ゴィィンッ、と鈍い音を残して波間に消えた。

北方棲姫『……アレ?』

漣「……」

ウサギ『……』

艦妖精A「……」

艦妖精B「……」

艦妖精C「……」

キョトンとするちびっ子と、遠い目になる漣たち。
気まずい沈黙が両艦に流れる。

北方棲姫『カエレ!!』

漣「はにゃあぁぁぁっ!? 撤退ッ、戦略的撤退ーッ!!」

艦妖精A「あいさー!」

ビックリさせたお返しに降り注ぐ砲弾。
慌てて《漣》を反転させて、ご主人様の連合艦隊に合流する。

漣「フヒー……きょ、今日はこのぐらいで勘弁してやりますよ!」

大和『……なにしにきたんですか、アンタ』

漣「=(;゜;Д;゜;;)⇒グサッ!!」

提督『ま、まあ、駆逐艦の主砲で戦艦の装甲を抜くのは難しいからな』

漣「ですよねー」

傷ついた漣の心にご主人様のフォローが染みるわー。

提督『しかし……ほ、本当に漣君なのかね?』

漣「お? なんですか、しばらく話さない間に漣のぷりちーな顔、忘れちゃいましたか、んん~?」

提督『や、やめたまえ……』

よく見えるよう、モニターにお顔を近づける。
ほんの一週間そこらぶりなのに、嫌なことをされたワンコみたいな反応が懐かしかった。

漣「おおかた、復活したてで戦場に出てきていいのかー、とか、あんな目にあったのにどうして……とか言いたいのでしょうがー」

提督『う、うぬ……』

図星を突かれて、口を「~」な形にしているご主人様に、トン、と親指で自分の胸元を突いて断言してやる。



漣「みんながご主人様と一緒に戦うって決めたんです――――そこに初期艦の漣がいないなんてありえないっしょ!」

788: 2016/01/21(木) 18:38:02.21 ID:mdl+HucUo
【大事の前の小事は大事】

《鎮守府》執務室

提督「…………ふむ」

・白い冬の壁紙
・ラクガキ床
・大将の机
・睦月の窓
・試作艦戦ポスター
・書斎本棚


提督「オネエがデザインした窓ガラス、素晴らしいな。やはり彼のこうしたセンスは信頼できる、依頼した甲斐があったというものだ」(ご満悦

提督「これは……なかなか良い感じにまとまったのではないか?」

金剛『訳:な~にが「良い感じにまとまったのではないか?」、よ』(ホッペ抓り

提督「ヒイィッ!?」

金剛『訳:悲鳴あげないでよ、耳痛いじゃない』

金剛『訳:朝から仕事もせずに、執務室の中でゴソゴソやってると思ったら……』

金剛『訳:それで、なに? どうしてアナタ、いきなり執務室の模様替えなんて始めたの?』

提督「…………」

金剛『訳:どーうーしーてーでーすーかー♪』(両ホッペ抓り

提督『訳:そ、その……今日中に……あ、新しい艦娘の着任に関する書類にサインをしないといけなくて』

金剛『訳:……いけなくて?』(ニッコリ

提督「と、唐突に執務室の雰囲気を変えたくなったのだ」(ニコ…

金剛『訳:テスト前に部屋の掃除を始める学生ですか、アナタは!?』

提督「だ、だって仕方がないだろう!? サインなんてしたくないのだから!」

金剛『訳:胸張って言うことなの、それ!?』

金剛『訳:ほらっ、椅子に座る! ペン持って!!』

提督「や、やめたまえ……やめたまえっ、無理やりサインを書かせようとするのはやめたまえ……!」

金剛『訳:キャッ!? コノ~、暴れるんじゃないわよ……!』(ギュムッ

提督『訳:の、圧しかかるな、胸…………お、重いからどきたまえ!』

金剛『訳:お、重いですって!? 失礼ねっ、この……誰が重いのよ!』(ムギュムニュ

提督「」



青葉「(新しく着任する……かもしれない艦娘について聞きに来たらこの有様)」

青葉「(……『衝撃!昼の執務室で辱められる提督!!』みたいなタイトルにしましょうか、次の鎮守府通信)」

797: 2016/01/23(土) 03:31:44.82 ID:XlTQ1FRso
【深海棲艦は静かな海の夢を見るのか】海上の夢見草


漣『みんながご主人様と一緒に戦うって決めたんです――――そこに初期艦の漣がいないなんてありえないっしょ!』

モニターの中、高らかに宣言する漣君の姿は、屈しかけた心を十二分に奮わせてくれた。
昏睡状態にあったことを微塵も感じさせない、普段の八割増しぐらいの高いテンションに、説明のしにくいものが腹の底からせり上がってくる。
堪らず顔を伏せ、口を押さえた。

提督「……っ、ふ……!」

神通「提督!?」

いち早く気づいて、肩を支えようと駆け寄る神通君に空いた方の手を上げ、制止する。

提督「だ、大丈夫だよ。少し、吹き出しただけだから」

神通「は、はい……?」

突然の如何わしい行動。神通君が戸惑うのも仕方がない。
精神衛生上よろしくないので、心配そうにこちらを見つめる彼女を意識から切り離し、モニターの漣君との会話に戻る。

提督「……君は変わらないな」

漣『ご主人様は変わりましたよね。初期メンバーなら今日から個別ルート入れるぐらいに』

提督「(変わった……か)」

時々、なにを言っているのか理解できなくて戸惑うことも多々あるが。鎮守府で苦楽を共にしてきた彼女が言うのだ、たしかに少しは変われたのだろう。
気づくと、口が笑みの形をしていた。
存外、私の腹も据わってきたらしい。

漣『勝ちましょう、ご主人様!』

提督「……ああ、そうだな」



離島棲鬼『――――駆逐艦ガ一隻、援軍ニ来タ程度デ戦況ガ覆ルトデモ?』



不愉快そうな離島棲鬼の声。
つい先ほどまで心を折られていたのに、漣君の登場で私が立ち直ったことが気に入らないのか。
たしかに、駆逐艦一隻に劣勢をはねのける程の力はない。
しかし――――

提督「離島棲鬼、お前の言う通り、駆逐艦一隻で戦況が有利になるなら、私でも鎮守府に駆逐艦の艦娘を迎え入れるよ」

神通「え!?」

漣『ホントですかねー』

金剛『たぶん土壇場でむーりぃーって言いだしマス』

漣『ですよねー』

提督「……」

三方向から神通君のビックリした声や、漣君と金剛の失礼な予想が聞こえる。
胃薬の瓶に手を伸ばしたくなるのを堪えながら、離島棲鬼に言葉を続ける。

提督「漣君は……来てくれたのだ。この敗色濃厚の戦場で、皆とともに戦うために」

言い方は悪いが、このような分の悪い賭けに乗る必要などなかったのだ。漣君も、他の艦娘たちも。

798: 2016/01/23(土) 03:32:18.74 ID:XlTQ1FRso

提督「(無茶な作戦だと反対して支援に回ってくれれば……付き合っていられないと、私に見切りをつけて、鎮守府を離れてくれれば……)」

本当は今でもその方がよかったと思っている。
この子たちが沈むことに比べれば、見捨てられる方がよほど気が楽なのだから。
だが、付いてきてくれた。勝機の見えない戦いに、水臭いことは言うなと笑って。
なら……ならば、私は提督としてその想いに応えなくてはいけない。
あの時、私が何か言う前に、共に歩むと言ってくれたみんなに言えなかった言葉で。

提督「く……ぁ……」

言葉を発しようとするのに、もし、また拒絶されたら。裏切られたら。そんな考えが頭に浮かんで、喉を絞められたように声が出てこない。
息が荒くなり、体が震え出す。
それではいけないと頭では理解しているのに、肝心なところで行動に移れない自分に、足元が崩れ落ちていくのを感じる。

神通「……大丈夫ですよ、提督」

提督「は……?」

転落していく意識を繋ぎ止めてくれた手の温かさに、我に返る。
情けなく汗を垂らしながら目をやった先で、困った風に神通君が微笑んでいた。

金剛『ここまで来てなに躊躇ってるんデスカ?』

金剛も、モニターの向こうで笑っている。

漣『そうですよ。みんな、ここまでついて来た物好きです。怖がらず、正直な気持ちを吐き出してくださいな。今更、失言の一つや二つ、笑って流してあげますよー』

安心させるように、漣君が立てた親指を突き出して見せる。
今更……そう、今更だ。
私が人として情けなく、頼りなく、支えてもらえねばとっくに倒れている提督であることは、みんな十分に知っていることだ。
深く息を吸い、長く吐き出す。
体の震えは止まっていた。

提督「じ、神通君、ここ以外の海域にいる艦娘たちにも通信は可能か」

神通「少し待ってください……通信機能、回復しています!」

漣『あー、この辺で通信妨害してた白饅頭なら、行きがけの駄賃で漣が全部落としておきましたよ?』

提督「漣君、でかした!」

思わぬ漣君のファインプレーに声が大きくなる。
できれば撃墜した深海棲艦の艦載機を回収しておいてほしいところだが、あまり多くを求めてはいけない。

提督「で、では神通君、全ての艦に通信を繋げてくれ」

神通「はい!」

神通君の周りで薄い光のリングが回転を始めた。
私の周囲にいくつもモニターが浮かび、他海域で戦闘を行っている艦娘たちの顔が現れる。


赤城『て、提督!? よかった、通信、復活したんですね!』

伊勢『よっ、とと……! て、提督じゃん! なに、どうかしたの!?』

大井『ちょっとっ、本気で忙しいのになんのつもり!?』

文月『ほわぁ、司令官~! どうしたのぉ~?』


劣勢であることに間違いはないが、どうやら、まだ一人も轟沈せずに済んでいるらしい。
険しい表情ながらも安堵したり喜んでくれる艦娘に胸を撫で下ろし、不快感を露わにする大井君に胃を摩る。

799: 2016/01/23(土) 03:33:32.29 ID:XlTQ1FRso

提督「あ、あまり余裕のない状況であることは理解している。だが、ど、どうしても……君たちに伝えたい言葉が、あ、あることを知ってほしくて通信している」

モニター越しに届く砲弾の着水音や艦の震動。長々と時間をかけている暇はない。
躊躇をつばとともに飲み下し、覚悟を決めて口を開く。

提督「――――私は、人が……嫌いだ」

『――――!』

何人かがショックを受けたように目を見開き、何人かは知っていたと答える代わりにソッと目を伏せた。

提督「本当なら、このような状況ですべきではない告白だろう。しかし、その上で、これから伝える私の本当の気持ちを聞いてもらいたい」

緊張を紛らわせるように、手に滲んだ汗をズボンで拭いながら続ける。

提督「私は人が嫌いだ……かつて、裏切られ、辱められ、貶められた……それをいまだに忘れられずにいるから」

提督「しかし……だからこそ、君たちに伝えなくてはいけないと思う。私は……君たちのことを好いている、と」

神通「――――!!」

金剛『――――』

漣『』

そこかしこで息を呑む音が聞こえた。
突然このようなことを言われて戸惑っているのだろう。同じことをされたら、私も間違いなく困惑する。
だが、もう止まらない、止められない。

800: 2016/01/23(土) 03:34:06.03 ID:XlTQ1FRso

提督「全ての人がそうではないと知っているのに、たまらなく怖い。誰かがそばにいる……考えただけで胃が痛くなる。それでも、それなのに、私は君たちと一緒にいることを望んでいる」

勝手に震え出した体と膝に鞭打ちながら、自分の感情を勢いに任せて吐露していく。

提督「矛盾したことを言っているのはわかる。だが、鎮守府で過ごす君たちの笑顔が、つらい過去を乗り越えて前に進む姿が……なんでもない日々を過ごす様子が愛しい」

提督「人が嫌いであることも……大切な仲間である君たちと過ごす日々を望むのも、どちらも嘘偽りない私の思いなのだ。だから、お願いだ――――」

そうだ、深海棲艦などに……あんな『沈みたがり』にこの子たちを奪われたくない、奪わせたくない。
そんな思いを込めて、力の限り叫ぶ。

提督「みんな……乗り越えるぞ……踏み越えるぞ! 最後の最後まで諦めることなく、目の前の絶望を打ち破るのだ!! 誰一人、欠けることなく勝って……帰るぞ、私たちの鎮守府に!!」

皆を鼓舞し、艦娘が最高の戦いをできるよう激励する。それが提督である自分の役割だから。

『――――――――』

艦娘全員が沈黙している。
無責任なことを言うなと怒られるのだろうか。それとも、勝手な期待を押しつけるなと拒絶されるのだろうか。
緊張に身を強張らせる私に、《神通》の艦妖精君たちが笑いかけた。

艦妖精A「心配ご無用です、提督さん」

艦妖精B「むしろ、やっとかと言いたいぐらいです」

艦妖精C「提督の心からの願い、叶わぬ道理はありません」

提督「妖精君たち、一体なにを…………?」

妖精君たちの言葉の意味を問おうとした時、視界の端をなにかが横切った。

提督「(なんだ……桜の花びら?)」

花弁に似た淡い桜色の光は、反射的に伸ばした手に触れた瞬間、細かな粒子となって空に消える。

提督「これは……っ!? じ、神通君!?」

神通「て、提督……私、私……」

光る花弁が流れてくる方向へ目をやり、驚かされる。
神通君が桜色の光の発生源であったからだ。いや、神通君だけではなかった。

漣『ktkr……ご主人様のデレktkrェェェェェッ……!!』

金剛『フ、フフ、ウッフッフッフッフッ!』

大和『提督……ああ、提督が、大和のことそんなに愛してくださっていたなんて……!』

蒼龍『うわ、顔熱い……けど、なんかヤッター!』

画面の向こうで桜色が吹雪いている。

提督「な、なにが起きているのだ?」

艦妖精A「よっしょ、と……たいしたことではないです」

呆然と呟く。
私の肩によじ登った艦妖精君が、満足そうな笑みを浮かべて言った。



艦妖精A「――――我々に成し遂げられなかった奇跡が、もう一度、起きようとしているのです」


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引用元: 【艦これ】提督と艦むすの鎮守府での四方山話9