1: 2015/10/21(水) 22:15:27 ID:JWaYKttg
【小学生編】
今日僕は、とてつもない冒険をする。
これはパパやママにはモチロン、となりんちのミカちゃんにもばれちゃあいけない。
ミカちゃんはすぐに周りに言いふらしちゃうから。
先生は、ココには学校の帰りにはよっちゃダメだって言ってたけど、もう我慢ができないのだ。
お腹がすいてしようがない。ペコペコだ。
ゴクリと生唾を飲み込んで、僕はそこへと歩き出す。
緑と白のしま模様、入り口前には赤いポスト。
そう、コンビニへと。
今日僕は、とてつもない冒険をする。
これはパパやママにはモチロン、となりんちのミカちゃんにもばれちゃあいけない。
ミカちゃんはすぐに周りに言いふらしちゃうから。
先生は、ココには学校の帰りにはよっちゃダメだって言ってたけど、もう我慢ができないのだ。
お腹がすいてしようがない。ペコペコだ。
ゴクリと生唾を飲み込んで、僕はそこへと歩き出す。
緑と白のしま模様、入り口前には赤いポスト。
そう、コンビニへと。
2: 2015/10/21(水) 22:16:35 ID:JWaYKttg
今まで、一人で来たことはなかった。だからだろうか、自動ドアが開いたときの、流れる音が、普段とは全く違うように聞こえる。
店の中は、暖かい。外とは大違いだ。
とりあえず、お店の中に入るまでは、知っている人には会わなかった。
その事に、僕はほっとしながら、きょろきょろと店内を見回す。
僕の知り合いは誰もいないみたいだ。良かった。
じゃあもうやる事は決まっている。
僕はすぐさま、店員さんのいるカウンターへと向かう。
手の中には、お店に入る前から握っていた120円。
カウンターの前に立ち、一言。
店の中は、暖かい。外とは大違いだ。
とりあえず、お店の中に入るまでは、知っている人には会わなかった。
その事に、僕はほっとしながら、きょろきょろと店内を見回す。
僕の知り合いは誰もいないみたいだ。良かった。
じゃあもうやる事は決まっている。
僕はすぐさま、店員さんのいるカウンターへと向かう。
手の中には、お店に入る前から握っていた120円。
カウンターの前に立ち、一言。
3: 2015/10/21(水) 22:17:25 ID:JWaYKttg
「あの!に、肉まんください!」
想像よりも、大きな声になってしまった。
店員さんのお姉ちゃんが、それにびっくりしちゃったみたいで、目をぱちくりとさせた。
僕はあわててぺこりと頭を下げる。悪い事をしたら謝らないといけないのだ。
頭をあげると、お姉ちゃんは、にっこりと笑った。
「肉まん1つで宜しいですか?」
「はい」
さっきの反省をいかして、今度は普通の声の大きさで、返事ができた。
「それでは、121円になります」
僕はての中にあるお金を、カルトンへと置く。ここにお金を置くのが正しい、とテレビでやっていた。
だけど、お姉ちゃんがそれを見て、少し困った顔をする。一体どうしたのだろうか。
想像よりも、大きな声になってしまった。
店員さんのお姉ちゃんが、それにびっくりしちゃったみたいで、目をぱちくりとさせた。
僕はあわててぺこりと頭を下げる。悪い事をしたら謝らないといけないのだ。
頭をあげると、お姉ちゃんは、にっこりと笑った。
「肉まん1つで宜しいですか?」
「はい」
さっきの反省をいかして、今度は普通の声の大きさで、返事ができた。
「それでは、121円になります」
僕はての中にあるお金を、カルトンへと置く。ここにお金を置くのが正しい、とテレビでやっていた。
だけど、お姉ちゃんがそれを見て、少し困った顔をする。一体どうしたのだろうか。
4: 2015/10/21(水) 22:18:00 ID:JWaYKttg
「ごめんね、僕。1円たりないんだけど、もってないかな?」
「うぇえ」
ショックのあまり思わず変な声が漏れた。ここまで危ないことをやったのに、目的の物がかえないとは。
1円に笑う者は1円に泣くぞ、とよく先生が言っていたが、僕は1円をわらったことはない。なのに何故1円に泣かなくてはならないのか。先生の嘘つき。
しかし、いくら先生を責めたところで、1円は出てこない。ここで立っていても、肉まんが貰えるわけでもない。しょうがないので、今日は諦めることにした。
「うぇえ」
ショックのあまり思わず変な声が漏れた。ここまで危ないことをやったのに、目的の物がかえないとは。
1円に笑う者は1円に泣くぞ、とよく先生が言っていたが、僕は1円をわらったことはない。なのに何故1円に泣かなくてはならないのか。先生の嘘つき。
しかし、いくら先生を責めたところで、1円は出てこない。ここで立っていても、肉まんが貰えるわけでもない。しょうがないので、今日は諦めることにした。
5: 2015/10/21(水) 22:18:34 ID:JWaYKttg
僕が、お姉ちゃんに、やっぱりいいです、と言おうとした時に、いきなり後ろから大きな手が、にゅっと伸びてきた。
それはカルトンへと伸びたかとおもうと、1円玉をそこに落とした。
誰かが1円を恵んでくれたんだ、と、そう考えに至るまで、すこし時間がかかった。
突然すぎたんだ。
だけどこれで肉まんが買える。僕はさっきのがっかりした気分が嘘みたいに、喜ばしい気持ちになった。
そして、1円をくれた、後ろの人にお礼を言うために、振り向こうとした。しかし、頭を抑えられてしまう。
僕はすこしムッとした。1円をくれたとはいえ、いきなり頭を抑える事は無いんじゃないか、と思ったからだ。
お礼を言おうか、それとも文句か、と悩んでいた時に、いきなり後ろの人が言った。
それはカルトンへと伸びたかとおもうと、1円玉をそこに落とした。
誰かが1円を恵んでくれたんだ、と、そう考えに至るまで、すこし時間がかかった。
突然すぎたんだ。
だけどこれで肉まんが買える。僕はさっきのがっかりした気分が嘘みたいに、喜ばしい気持ちになった。
そして、1円をくれた、後ろの人にお礼を言うために、振り向こうとした。しかし、頭を抑えられてしまう。
僕はすこしムッとした。1円をくれたとはいえ、いきなり頭を抑える事は無いんじゃないか、と思ったからだ。
お礼を言おうか、それとも文句か、と悩んでいた時に、いきなり後ろの人が言った。
6: 2015/10/21(水) 22:19:37 ID:JWaYKttg
「振り向くなよ、たかし。この後待ってるのは説教だ」
体温が、すっと、下がったような気がする。
無理もない。
なにせ聞こえた声は、先生のものだったから。
僕の気分は一気に最悪になった。
やっぱり悪い事はするものじゃないのかもしれない。
僕は恐る恐る、肉まんを受け取ってから、改めて後ろを振り向くと、やはりそこには先生がいた。
「俺も買うものあっから、先に外にでとけ。赤い車の前にいろ」
7: 2015/10/21(水) 22:20:21 ID:JWaYKttg
店外へと出て、どんな説教が待っているのだろうか、と震える。
先生が、少し遅れて、自動ドアから出てくる。
そのまま、僕の方へと歩いてくると、頭をぺしりと軽く叩いた。
これですめばいいけど、そんな事は無い。
次に、どんな言葉が降ってくるかと、駐車場のアスファルトを睨む。先生の方は、怖くて見れない。
「今回だけ見逃してやる、さっさと帰れ」
しかし、先生は、予想外の事を言った。
そして、さっさと車に乗り込むと、僕が何か言う前に、それは走り去っていった。
許してもらった安心だとか、色んなものがグチャグチャに入り乱れる中で、一言、言葉が出た。
「……かっけー」
そして、僕は肉まんにかぶりつきながら、家へと急いだ。
先生が、少し遅れて、自動ドアから出てくる。
そのまま、僕の方へと歩いてくると、頭をぺしりと軽く叩いた。
これですめばいいけど、そんな事は無い。
次に、どんな言葉が降ってくるかと、駐車場のアスファルトを睨む。先生の方は、怖くて見れない。
「今回だけ見逃してやる、さっさと帰れ」
しかし、先生は、予想外の事を言った。
そして、さっさと車に乗り込むと、僕が何か言う前に、それは走り去っていった。
許してもらった安心だとか、色んなものがグチャグチャに入り乱れる中で、一言、言葉が出た。
「……かっけー」
そして、僕は肉まんにかぶりつきながら、家へと急いだ。
8: 2015/10/21(水) 22:21:36 ID:JWaYKttg
【中学生編】
まさに、今の俺は失意のどん底であった。
意気揚々と、第一志望の高校の合格発表へと向かったはいいものの、まっていたのは不合格。あれだけ自信があったのも相まって、相当に悔しい。
いや、本当は悔しいなんていうものではないのだが、悲しい哉、俺の語彙力ではこれ以上適切な言葉は見当たらない。
そんなんだから、高校受験に失敗するんだ、と何度目かの自責を行っていると、ふとコンビニが目に入る。
赤いポストに緑と白のボーダー。幾度となくみた、駅前のコンビニだ。
ああくそ、こうなったらやけ食いでもしてやるか。
そう考えて、コンビニへと歩を進める。
まさに、今の俺は失意のどん底であった。
意気揚々と、第一志望の高校の合格発表へと向かったはいいものの、まっていたのは不合格。あれだけ自信があったのも相まって、相当に悔しい。
いや、本当は悔しいなんていうものではないのだが、悲しい哉、俺の語彙力ではこれ以上適切な言葉は見当たらない。
そんなんだから、高校受験に失敗するんだ、と何度目かの自責を行っていると、ふとコンビニが目に入る。
赤いポストに緑と白のボーダー。幾度となくみた、駅前のコンビニだ。
ああくそ、こうなったらやけ食いでもしてやるか。
そう考えて、コンビニへと歩を進める。
9: 2015/10/21(水) 22:22:29 ID:JWaYKttg
なにをしてやろうか。アイスを10本でもかってやろうか。どうせならハーゲンダッツがいい。
自動ドアを潜り抜け、独特のメロディーの電子音にお迎えされながら、店内を物色する。
店内BGMの、受験生応援ソングがいやに耳につく。くそが、なんでこうも全てが俺の神経を逆なでする。心をささくれ立たせる。
さっきまでは何でも買ってやるつもりだったが、なんだかこの店の売り上げに貢献するのも癪だ。
しかし、何かをバカみたいに食ってやりたいという気持ちは変わらない。
結局俺は、肉まん3つという、嫌に現実的なやけ食いを決行する事にした。
「肉まん、3つ」
レジ前に行って、言う。自分でもびっくりするくらいに、声が擦れていた。
自動ドアを潜り抜け、独特のメロディーの電子音にお迎えされながら、店内を物色する。
店内BGMの、受験生応援ソングがいやに耳につく。くそが、なんでこうも全てが俺の神経を逆なでする。心をささくれ立たせる。
さっきまでは何でも買ってやるつもりだったが、なんだかこの店の売り上げに貢献するのも癪だ。
しかし、何かをバカみたいに食ってやりたいという気持ちは変わらない。
結局俺は、肉まん3つという、嫌に現実的なやけ食いを決行する事にした。
「肉まん、3つ」
レジ前に行って、言う。自分でもびっくりするくらいに、声が擦れていた。
10: 2015/10/21(水) 22:23:16 ID:JWaYKttg
「はい、肉まん3つで宜しいですね」
バイトであろう、変にチャラついた男が、注文の確認をとる。見た目のわりに、しっかりとした敬語は、普段なら好ましい筈であるのに、妙に鼻についた。
支払いを済ませて、肉まんが入った紙袋を、店員から引っ手繰る。驚いた顔をしている。はは、ざまあみろ。
店外へとでる。紙袋の中をガサガサと漁りながら、走って帰路につく。
細い路地にはいると、途端に人がいなくなる。
肉まんを1個とって、走りながらかぶりつく。熱いじゃねえか畜生。ほら、熱すぎて涙出てきた。生理現象。
「あ〝あ〝ぐぞ!ぜってー受かった奴よりいい大学はいっでやる!ぜっでーだ!ぐそが!」
そう叫びながら、アスファルトに唾だか肉汁だか、涙だか、よくわからない物をポタポタと垂らす。はたからみたら、気が違っているように見えるかもしれないが、言葉も涙も、堰を切って止まらない。
人よりは何倍も勉強したつもりだし、結果も、今まではついてきてた。模試でもS判定だった。
県内最難関とは言っても、努力すれば入れるんじゃねえのかよ!
バイトであろう、変にチャラついた男が、注文の確認をとる。見た目のわりに、しっかりとした敬語は、普段なら好ましい筈であるのに、妙に鼻についた。
支払いを済ませて、肉まんが入った紙袋を、店員から引っ手繰る。驚いた顔をしている。はは、ざまあみろ。
店外へとでる。紙袋の中をガサガサと漁りながら、走って帰路につく。
細い路地にはいると、途端に人がいなくなる。
肉まんを1個とって、走りながらかぶりつく。熱いじゃねえか畜生。ほら、熱すぎて涙出てきた。生理現象。
「あ〝あ〝ぐぞ!ぜってー受かった奴よりいい大学はいっでやる!ぜっでーだ!ぐそが!」
そう叫びながら、アスファルトに唾だか肉汁だか、涙だか、よくわからない物をポタポタと垂らす。はたからみたら、気が違っているように見えるかもしれないが、言葉も涙も、堰を切って止まらない。
人よりは何倍も勉強したつもりだし、結果も、今まではついてきてた。模試でもS判定だった。
県内最難関とは言っても、努力すれば入れるんじゃねえのかよ!
11: 2015/10/21(水) 22:23:52 ID:JWaYKttg
「ぜっでーみかえすからな!みでろ!」
そう言って、立ち止まって肉まん2個目を取り出す。
俺はそれをもそもそと食いながら、時折鼻を啜り、後は走ることもなく、ゆっくりと歩いて帰った。
そう言って、立ち止まって肉まん2個目を取り出す。
俺はそれをもそもそと食いながら、時折鼻を啜り、後は走ることもなく、ゆっくりと歩いて帰った。
12: 2015/10/21(水) 22:25:45 ID:JWaYKttg
【高校生編】
「たかしもさぁ、大概馬鹿だよね」
「は?」
ミカはそう言うと、寒そうに肩を抱き、マフラーを整えた。
「わりーけどオメーより成績はいいよ。大体にして、試験前にお前に勉強教えてんだろうが」
「いや、そう言うことじゃなくてさ」
じゃあどういうことだよ、という言葉は押し留める。こいつは、話に茶々を入れられるのが嫌いだからだ。わざわざ不機嫌にさせたくはない。続きを目で促す。
「いやさ、頼まれたことは断れないっていうかさぁ、ね」
こほんと一息。
「生粋のお人好しか、臆病者」
「んなこたぁねぇよ」
食い気味に否定してしまった。いや、やましいところがあるわけではないのだ。
ただ、なんというか、自信満々なミカが若干、いやかなり癪なもんだから、さっさと否定してしまいたかった。
「たかしもさぁ、大概馬鹿だよね」
「は?」
ミカはそう言うと、寒そうに肩を抱き、マフラーを整えた。
「わりーけどオメーより成績はいいよ。大体にして、試験前にお前に勉強教えてんだろうが」
「いや、そう言うことじゃなくてさ」
じゃあどういうことだよ、という言葉は押し留める。こいつは、話に茶々を入れられるのが嫌いだからだ。わざわざ不機嫌にさせたくはない。続きを目で促す。
「いやさ、頼まれたことは断れないっていうかさぁ、ね」
こほんと一息。
「生粋のお人好しか、臆病者」
「んなこたぁねぇよ」
食い気味に否定してしまった。いや、やましいところがあるわけではないのだ。
ただ、なんというか、自信満々なミカが若干、いやかなり癪なもんだから、さっさと否定してしまいたかった。
13: 2015/10/21(水) 22:26:33 ID:JWaYKttg
「ほら、食い気味!それが証拠」
「まだいうか」
ぺしりとデコピンを決めてやる。
あう、と声をあげてデコを押さえるミカを見ながら言う。
「ばっかじゃねぇの」
「けっこうムカチーン!」
まだ痛そうに額を押さえながら、ミカは声を張り上げる。というか、結構怒ってるなこれ。口調はギャグみたいだが、これは謝らないと臍を曲げるな。
「わーった悪かった、ゴメン」
「じゃあさ!悪いと思ってんなら、誠意をみせてよ!」
そう言いながら、ミカはようやくデコから手を外し、左手で横を指差す。
それに誘われるように、左を向くと、赤いポスト。緑と白のボーダー。
「そこのコンビニであたしにあんまんを奢れ!」
「まだいうか」
ぺしりとデコピンを決めてやる。
あう、と声をあげてデコを押さえるミカを見ながら言う。
「ばっかじゃねぇの」
「けっこうムカチーン!」
まだ痛そうに額を押さえながら、ミカは声を張り上げる。というか、結構怒ってるなこれ。口調はギャグみたいだが、これは謝らないと臍を曲げるな。
「わーった悪かった、ゴメン」
「じゃあさ!悪いと思ってんなら、誠意をみせてよ!」
そう言いながら、ミカはようやくデコから手を外し、左手で横を指差す。
それに誘われるように、左を向くと、赤いポスト。緑と白のボーダー。
「そこのコンビニであたしにあんまんを奢れ!」
14: 2015/10/21(水) 22:27:10 ID:JWaYKttg
渋々とミカの要求を呑んで、コンビニへと向かう。いや、正直いうと、ここで要求を呑まないと、機嫌を直してもらうのにさらに費用がかかる。つまりここで了承するのが最適なのだ。
「よっしゃ、あんまんだ」
ミカはというと、そんな俺の計算などいざ知らず、体の前で小さくガッツポーズを作っていた。
「すいません、あんまんとにくまん1個ずつ」
レジ前に立ち、店員に言う。頭皮が見え隠れしている男はなんというか、頼りなさげであった。いや、コンビニ店員に頼り甲斐を求める方がおかしいか。
店員の確認をうけ、会計を済ます。
紙袋を受け取って、店外へとでると、紙袋へとミカが手を突っ込む。いや、はやいよ、がっつきすぎ。
「よっしゃ、あんまんだ」
ミカはというと、そんな俺の計算などいざ知らず、体の前で小さくガッツポーズを作っていた。
「すいません、あんまんとにくまん1個ずつ」
レジ前に立ち、店員に言う。頭皮が見え隠れしている男はなんというか、頼りなさげであった。いや、コンビニ店員に頼り甲斐を求める方がおかしいか。
店員の確認をうけ、会計を済ます。
紙袋を受け取って、店外へとでると、紙袋へとミカが手を突っ込む。いや、はやいよ、がっつきすぎ。
15: 2015/10/21(水) 22:28:01 ID:JWaYKttg
「これだ!きたきたー」
そう言って、あんまんを引っ張り出すと、かぶりつく。
いやしかし、速攻で迷いなく食べたな。重さとかであんまんか肉まんかわかんのかね。
「うわ、これ肉まんじゃん」
わからなかったようだ。馬鹿かよ。確認しろよ。下についてる紙みたいなのよく見ろ。
「あんまんはこっちな、ほら肉まん寄越せ。残りは俺が食う」
「うぇ!い、いいよ!肉まんで!」
「いや俺が良くない」
「いーからー!あたしがいいんだからいーの!」
とんでもなく、胸の前で手をわちゃわちゃとさせて、ミカが言う。見ていて肉まんを落とさないか不安だ。
結局、そのままミカに押し切られる形で、あんまんを食う羽目となった。
まあミカが肉まんをさっさと食ってしまっただけなのだが。
どうせなら食わないともったいないと、一口。
「うわ、あんまんクッソ甘」
「なにおー、それがいーんでしょうが!」
いらないなら寄越せと言わんばかりの勢いに、思わず言う。
そう言って、あんまんを引っ張り出すと、かぶりつく。
いやしかし、速攻で迷いなく食べたな。重さとかであんまんか肉まんかわかんのかね。
「うわ、これ肉まんじゃん」
わからなかったようだ。馬鹿かよ。確認しろよ。下についてる紙みたいなのよく見ろ。
「あんまんはこっちな、ほら肉まん寄越せ。残りは俺が食う」
「うぇ!い、いいよ!肉まんで!」
「いや俺が良くない」
「いーからー!あたしがいいんだからいーの!」
とんでもなく、胸の前で手をわちゃわちゃとさせて、ミカが言う。見ていて肉まんを落とさないか不安だ。
結局、そのままミカに押し切られる形で、あんまんを食う羽目となった。
まあミカが肉まんをさっさと食ってしまっただけなのだが。
どうせなら食わないともったいないと、一口。
「うわ、あんまんクッソ甘」
「なにおー、それがいーんでしょうが!」
いらないなら寄越せと言わんばかりの勢いに、思わず言う。
16: 2015/10/21(水) 22:29:23 ID:JWaYKttg
「じゃあ、お前半分食えよ」
二つにあんまんを裂き、ミカへと渡す。
「うぇ、うう、ほしい、けど、うああ」
謎の躊躇をミカが繰り返す。正直意味がわからんが、まあ、こいつはそういうのがちょくちょくあるからな。やがて、覚悟を決めたのか、一口であんまんを全て頬張る。
「…う、うまい!」
「大丈夫かよお前」
リアクションが過度すぎる。
ふと、空を見ると夕陽が雲から顔を覗かせていた。その斜めに刺す陽の光が、やけにまぶしくて、腕を翳す。『斜陽』だ。内容は知らないが。
ふと横を見ると、ミカの顔は、夕陽に染まって真っ赤になっていた。
「おら、暗くなる前に帰るぞ」
「たかしはあたしの親か何か?」
「うっせ」
軽くミカの頭を叩くと、俺は残ったあんまんを口の中に放り込む。やっぱりクソ甘い。
「やっぱたかしは馬鹿だ!」
いきなり、隣にいたミカが言い、走り出した。
なんだかわからないが、馬鹿にされてるのはわかる。
デコピンはしないとしても、髪のセットをぐしゃっとしてしまうくらいは構わないだろう。
そう考えて、俺もミカを追いかけるべく走り出した。
二つにあんまんを裂き、ミカへと渡す。
「うぇ、うう、ほしい、けど、うああ」
謎の躊躇をミカが繰り返す。正直意味がわからんが、まあ、こいつはそういうのがちょくちょくあるからな。やがて、覚悟を決めたのか、一口であんまんを全て頬張る。
「…う、うまい!」
「大丈夫かよお前」
リアクションが過度すぎる。
ふと、空を見ると夕陽が雲から顔を覗かせていた。その斜めに刺す陽の光が、やけにまぶしくて、腕を翳す。『斜陽』だ。内容は知らないが。
ふと横を見ると、ミカの顔は、夕陽に染まって真っ赤になっていた。
「おら、暗くなる前に帰るぞ」
「たかしはあたしの親か何か?」
「うっせ」
軽くミカの頭を叩くと、俺は残ったあんまんを口の中に放り込む。やっぱりクソ甘い。
「やっぱたかしは馬鹿だ!」
いきなり、隣にいたミカが言い、走り出した。
なんだかわからないが、馬鹿にされてるのはわかる。
デコピンはしないとしても、髪のセットをぐしゃっとしてしまうくらいは構わないだろう。
そう考えて、俺もミカを追いかけるべく走り出した。
17: 2015/10/21(水) 22:30:34 ID:JWaYKttg
【社会人編】
高校以来である。
大学時代はなんとなくで帰省はせずに、社会人となり、久々に帰省した。
なんだか無性に肉まんが食いたくなって、実家に帰る前に、コンビニに立ち寄った。
「おー、かわってねー」
相変わらずの赤いポスト。少し色が落ちただろうか。
自動ドアをくぐると、独特の電子音が迎える。
早速レジ前に行き、肉まんを頼もうとしたのだが。
「ごめんね、僕。1円たりないんだけど、もってないかな?」
「うぇえ」
見れば、隣のレジで、ランドセルを背負った、小学4年生くらいの男の子が、わたわたとしていた。
おしまい
高校以来である。
大学時代はなんとなくで帰省はせずに、社会人となり、久々に帰省した。
なんだか無性に肉まんが食いたくなって、実家に帰る前に、コンビニに立ち寄った。
「おー、かわってねー」
相変わらずの赤いポスト。少し色が落ちただろうか。
自動ドアをくぐると、独特の電子音が迎える。
早速レジ前に行き、肉まんを頼もうとしたのだが。
「ごめんね、僕。1円たりないんだけど、もってないかな?」
「うぇえ」
見れば、隣のレジで、ランドセルを背負った、小学4年生くらいの男の子が、わたわたとしていた。
おしまい
18: 2015/10/21(水) 23:04:13 ID:dchKMaRE
乙
この時期にぴったりのホッコリ加減
この時期にぴったりのホッコリ加減
引用元: たかし「肉まん食べたい」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります