1: 2023/09/07(木) 18:59:07.02 ID:fTTR4X5j.net
慣れない制服に身を包んだ私は、
目の前にある特徴的な形の校舎を前にして一人つぶやく。

その特徴的な学校こそが「虹ヶ咲学園」。

周りを見ると、私と同じ新入生であろう人たちの姿があった。
友達と一緒にはしゃいで写真を撮る人。
手元の案内を見ながら緊張気味に歩く人。
それぞれ胸に抱えた期待と不安が見て取れる。


実はあたし、昔は結構病弱病院に入院してた期間も長かったし、
退院してからも家族が過保護だったからあんまり外に出られなかった反動から
どうしても高校は都会の学校に行きたくて両親を苦心の末説得し、最近有名で寮があり設備も充実していることから
ここ虹ヶ咲学園に入学することになったのです

ここは夢のショッピングモールも近くにあるしね

2: 2023/09/07(木) 18:59:42.46 ID:fTTR4X5j.net
入学式が終わり、私を含めて新入生は自分のクラスの席につく。
普通科1年。
ここがこれからお世話になるあたしの教室。
虹ヶ咲学園は「自由な校風・専攻の多様さ」を売りにしていて
普通科以外にも多くの学科が存在するけど、特にとりえのないあたしは無難に普通科を選んだ。

注意事項や今後の予定などが先生から説明されたあと自己紹介の時間になった
次々とクラスメイトが自己紹介していく中、ひときわ目立った自己紹介が。

「みなさんこんにちは!中須かすみでぇーっす!
 気軽に『かすみん』って呼んでね!」

かすみ「かすみんは好きなものは、かわいいものと、スクールアイドルです!
    部活もスクールアイドル部に入るつもりだから、
    興味ある人は話しかけてくださいっ!」

ノリの良い自己紹介にひときわ大きな拍手。
このショートカットの女の子、中須かすみちゃんはどうやら
人を惹きつける魅力がある娘みたい。

でもスクールアイドル、か。
なんだろう、それ?

それでは次、日野下さん
花帆「あ、はい! 日野下花帆です長野県からきました。
趣味はカラオケと読書、特技は食べ物の好き嫌いが無いことです」
パチパチとそこそこの拍手。
なんとか無難にこなせたかな?

3: 2023/09/07(木) 19:00:10.14 ID:fTTR4X5j.net
その日の夜
学生寮であたしは迷っていた
「もう、食堂ってどこにあるの~ここ広すぎるよ~」

「あら?新入生の子?」
へ?

後ろから声をかけられて振り向くと背が高いまるでテレビで見る芸能人のような人が立っていた

花帆「あ、はい実は夕食を食べに行こうとしていたんですけど食堂がわからなくて」

果林「あら、私もそうなのよ一緒に行きましょうか」

花帆「ほんとですかありがとうございます」

あ~こんなところにいた~ 果林ちゃ~ん

「あらエマどうしたの?」

そんなことを話していると、果林さん?を呼ぶ外国人の胸の大きな人がこちらに駆け寄ってきた

エマ「どうしたの?じゃないよ食堂に行くって言ってたのに全然来ないから探してたんだよ

果林「そ、そうだったのごめんなさいね」

エマ「もう、ところでそっちの子は?1年生の子かな?」

花帆「はい、1年の日野下花帆と言います」

エマ「わたしは3年のエマヴェルデだよ スイスからの留学生だよよろしくね」

果林「自己紹介がまだだったわね、わたしは朝霞果林3年よ よろしくね」

そして、エマ先輩の案内で無事?食堂にたどり着き夕食になったんだけど、さすが東京おしゃれな食事ばかりだったよ

夜自室に戻り、窓の外を見るとすごい夜景が広がっていて、あたし本当に東京に来たんだと改めて実感したよ

ベッドに入ると明日からの生活に思いを馳せ直ぐに眠りに付いた

8: 2023/09/07(木) 19:22:07.82 ID:fTTR4X5j.net
入学からしばらく経ち
クラスのみんなともだいぶ打ち解けてきた頃。

あたしの高校生活はというと、可もなく不可もなく。
勉強もそこそこ、友達もそこそこ。
部活動に入ることもなく、していることと言えば
放課後は友達と夢だった東京の街に繰り出し遊び歩くくらいです

思ったよりも私はのん気な性格だったようで、
入学して数日後には少しホームシックになったりもしたけど
今はだいぶ環境に馴染んできて、楽しく過ごせています。


この日の放課後は友達は部活や用事があるとのことで一人でお台場の街を歩いていた。
地元は田舎だったし、あたし自信あまり外に出られなかったから、この街をこうして歩いていることはまるで夢みたいだ。
行ったことのない店も、食べたことのない食べ物もいっぱい。


しばらく歩いているとショッピングセンター?の野外スペースにと人が集まっているのが見えた。

なんだろう?
気になり、設置されていた看板を見てみると
今からここでスクールアイドルのライブが開催されるみたい。

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 1stライブ会場」

スクールアイドルといえば、クラスメイトで最近友達になったかすみちゃんが言ってたやつかな?

いきなり花帆子なんて呼ばれたときはびっくりしたよ

出演者を見ると
センターには黒髪の美少女。
その他4人の女の子が映っていて、
その中の二人はお友達のかすみちゃんと寮の先輩のエマ先輩だ。

10: 2023/09/07(木) 19:35:54.53 ID:fTTR4X5j.net
ライブを見るのは自由みたい
ここで待っていれば、かすみちゃんとエマ先輩のライブが見られるということかな。
かすみちゃんとエマ先輩も喜んでくれるかもだし、せっかくだから見ていこう。

待っていると黒髪美少女が一人で登場する。

周りのお客さんから歓声があがっても
黒髪の美少女それに応えることもなく、うつむきがちのままだった。
なにかあったのかな?他の4人も出てこないし
かすみちゃん達はどうしたんだろう?


「走り出した! 思いは強くするよ
 悩んだら君の手を握ろう―――」

戸惑うあたしの前で、黒髪の美少女が歌い始めた
その瞬間、あたしの意識はステージ上の彼女に釘付けになりまばたきも忘れて見入ってしまった。


「……ありがとうございました」

結局ライブはその1曲で終わり、静かにお礼を言うと去ってしまった。

かすみちゃんたちが居なかったことは気になるけど、
それよりもあたしは、あまりの凄さに圧倒されて心臓バクバクいってるしその場に立ち尽くしちゃったよ

花帆「スクールアイドルってすごいな……」

12: 2023/09/07(木) 19:52:26.26 ID:fTTR4X5j.net
その日の夜。寮の自室であたしはスクールアイドルについてスマホで調べてみた。

虹ケ咲学園スクールアイドル同好会に所属している黒髪の美少女は
「優木せつ菜」といってどうやら有名なスクールアイドルらしい。

今日のライブは同好会の活動として初のお披露目ライブだったみたいで、
その感想で賑わっていた。

その中で目に付いたのはやはりというか
「同好会5人のお披露目ライブだったはずなのに、
何故優木せつ菜が1曲だけ歌って終わりだったのか」
というコメントだった

それはあたしも気になるところ。

だけどあたしにはそれを知る方法がある。
最近親しくなった、出演予定だったかすみちゃんかエマ先輩に直接聞けばいいのだ。

翌日の朝
食堂でさっそくエマ先輩と果林先輩を見かけたので声をかけた

エマ「もう果林ちゃん寝ぼけてないでしゃきっとして」
果林「わかってるわよぉ」

花帆「おはようございます、エマ先輩果林先輩」

エマ「おはよう花帆ちゃん」
果林「おはよう」
わ、さっきまでぼんやりさんだった果林先輩が一瞬でしゃきっとなった

花帆「エマ先輩、実は聞きたいことがあるんですけど」
エマ「ん?なにかな?」

花帆「昨日ショッピングセンターのところで同好会のお披露目ライブを見たんですけど」
エマ「え?」
その瞬間エマ先輩の顔が一瞬で暗いものになりあたしは驚いた
それは果林先輩も同じだったようで
果林「エマ?どうしたの?」
エマ「ごめん2人とも先に行くね」

そういって去ってしまいました

う~ん何なんだろ?後で教室でかすみちゃんに聞いてみよう

14: 2023/09/07(木) 20:06:24.51 ID:fTTR4X5j.net
花帆「おはよう、かすみちゃん」

かすみ「あ、おはよー!かほ子~!」

う~んまだこの呼ばれ方になれないなぁ
まぁそれはともかく本題に入ろう

花帆「あのね、スクールアイドル同好会の事なんだけど」

かすみ「スクールアイドルに興味あるの!!!!」

うわっ、距離感が!距離感が近い! 
あたしも人のことは言えないけどここまでじゃないよ

かすみ「も~知らなかったよ、かほ子がスクールアイドルに興味あるなんて~!
    かすみんが何でも教えてあげるから、なんでも聞いてね!
    あっ、ていうか同好会入っちゃう?今なら絶賛募集中なんだけどぉ」

花帆「待って待って、そーじゃなくってぇ~!!」

花帆「あのね、昨日お台場のショッピングセンターの階段のところで優木せつ菜さんのライブを見たの」

かすみ「……へ?」

花帆「スクールアイドル同好会のお披露目ライブって書いてあったんだけど・・・
 あっ、ライブはすごくよかったよ
 でも、かすみちゃんたちはなんでいなかったのかなーって……」

かすみ「……かすみん、そんなの知らない」

かすみ「ライブは中止って言ってたから。そんなの聞いてない!」

あたしは普段にこにこ笑顔のかすみちゃんしか知らなかったから
あの、かすみちゃがこんな怖い顔と声を出すのかとあっけにとられた

花帆「あの、えっと……」

かすみ「……ごめん、かほ子。ちょっと用事できちゃった」

花帆「あっかすみちゃん」

かすみちゃんは教室から走り去ってしまった。
エマ先輩に続いて同じ反応 どうなってるんだろ?

気になるけど結局その日、かすみちゃんとは話をすることができなかった。

15: 2023/09/07(木) 20:17:03.96 ID:fTTR4X5j.net
その日の放課後、
あたしは部活に入ってるクラスメイトに場所を聞いて部室棟へ向かった。

虹ヶ咲学園は部活動にも力を入れているとのことで
部活と同好会の数はとても多い。
それに比例して部室の数も。
廊下にはドア、ドア、ドア、どれだけあるの~
その中でやっと見つけたスクールアイドル同好会の部室は
かなり端っこのひっそりとした所にあった。

花帆「……ここで合ってる、よね?」

プレートがかかっているので間違いない。
でも中から人の気配はせず、鍵もかかっているようだった。


??「あの!もしかしてスクールアイドル同好会の人ですか!?」

そのとき突然声をかけられた。
声をかけてきたのは、黒髪で毛先だけ緑のツインテールで目をキラキラさせた人だ。

??「もう、侑ちゃん!いきなり大きな声出したら驚かせちゃうでしょ!
 ……ごめんね、びっくりさせちゃったよね?」

隣からもう1人。
赤みがかったふわふわの髪をお団子にしてる、優しそうな雰囲気のかわいい人。
とってもかわいい人でびっくりしちゃった。やっぱり東京ってすごいなこんな人が普通に学校にいるんだから

16: 2023/09/07(木) 20:25:56.56 ID:fTTR4X5j.net
侑「ね、ね!あなたもスクールアイドルなの!?
 昨日のライブの出演者にはいなかったみたいだけど……
 あ!そのリボン、1年生だね!もしかして期待の新星!みたいな!?」

花帆「え、あの、その…」

い、勢いがすごくて圧倒されちゃうよ。

??「その方は同好会の部員ではありませんよ」

話しかけてきた2人の向こうから、別の人があらわれる。
メガネをかけていて、長い黒髪を三つ編みにした人。
……どこかで会ったような?

??「そちらは普通科1年の日野下花帆さん。
 部活動には所属していらっしゃいません」

え!?あたしのこと、知ってるの!?なんで?こわい!

??「それで、この部室に何か御用ですか?日野下花帆さん、普通科2年の高咲侑さん、同じく上原歩夢さん」

侑「え!?私たちのこと、知ってるの!?」

??「生徒会長たる者、生徒全ての顔と名前を覚えているのは当然のことです」キリッ

入学式のおぼろげな記憶を辿ってみる。
そっか、見覚えがあったのは入学式の挨拶で見ていたからだ。
……生徒会長って全員の顔と名前覚えてるものなの?

侑「あの、私たち優木せつ菜さんと話がしたくて…」

会長「……優木せつ菜さんはスクールアイドルをやめたそうです」

侑「え?」

会長「そしてこのスクールアイドル同好会は……本日をもって廃部となります」

花帆・侑「「えええーーーー!?」」

17: 2023/09/07(木) 20:41:23.14 ID:fTTR4X5j.net
歩夢「そうなんだ…。じゃあ花帆ちゃんも昨日のライブを見て……」

歩夢先輩が肩を落としながら話す。

花帆「はい。それでちょっと、スクールアイドル同好会のことが気になって」

侑「だよねだよね!!昨日のライブすごかったもんね!!
 最っっ高にトキメいちゃったよね!!」

花帆「え?、は、はぃ」

侑先輩は歩夢先輩とは対照的にテンション高めに手を握ってくる。
こ、この人も距離感近いよぉ……。
いや、あたしも人のこと言えないけど

侑「私も歩夢も、昨日のライブですっかりスクールアイドルにハマっちゃってさ!
 今日はせつ菜ちゃんと会って話がしたいって思って来たんだけどさ」

歩夢「わ、私はまだハマったってほどじゃ……」

侑「私さ、今まで自分が本当にやりたい事、みたいなのなくてね。
 何かを全力でやってみたいーとは思うんだけど、
 なかなか何がしたいか見つからなくて」

侑「でも昨日のライブを見た時、ビビッと来た感じがしたんだ。
 それで夢を追いかける人を全力で応援できたら、
 って思ったんだけどな……」

侑先輩はスクールアイドルをやりたいわけではなく、
それを近くで応援する事がしたい、ということらしい。

侑「花帆ちゃんはどうなの?スクールアイドル、やりたいって思ってたり?」

花帆「あたしはそんな大それたことできないですよ~」

歩夢「侑ちゃん、大変!もうこんな時間!」

侑「あっ、ホントだ!いつの間にか真っ暗! ごめん、花帆ちゃん!今日はここで!話せて楽しかったよ!」

思ったより話し込んでしまっていた。もうそろそろ5月だけど、夜の風はまだ少し冷たい。

18: 2023/09/07(木) 20:51:28.60 ID:fTTR4X5j.net
かすみ「かほ子!ちょっと来てっ!」

花帆「へ?、かすみちゃん!?……うわぁぁあっ!?」

後ろから声をかけてきたかすみちゃんにひきずられて、どこかへ連れていかれる。
なになになに!?

連れていかれたのはは中庭の一角にあるスペース。
そこには何故か侑先輩と歩夢先輩もいた。

ベンチに置かれた鞄の上には、ちょこんとプレートが乗っておりよく見ると「スクールアイドル同好会」とかわいい文字で書かれている。
みんな何やらにこにこしている。い、いったい何だろう。

「花帆ちゃんスクールアイドル同好会へようこそ!」


…………え?
状況がまったく把握できないよ~。

かすみ「かすみんたち、新しくスクールアイドル同好会を立ち上げることにしたんだ!
 前の同好会はせつ菜先輩が抜けちゃって、悪の生徒会長によって部室まで没収されちゃったからね。
 部長はかすみんだよ!」

かすみ「で、メンバーを探してたら侑先輩と歩夢先輩に会って、
 同好会に入ってくれることになったんだ!」

花帆「えっ、先輩たちもスクールアイドルされるんですか!?」

侑「うん。歩夢がね、一緒にやろうって言ってくれたんだ!
 あ、ちなみに私はステージに立つんじゃなくて裏方担当だけどね」

花帆「歩夢先輩がスクールアイドル……」

歩夢先輩はとっても可愛いから向いてるとは思うけど

かすみ「それで話していたら、先輩方もかほ子と知り合いだって言うじゃないですか!」

かすみ「この前話した時もスクールアイドルについて興味があるって言ってたし、一緒にやれればいいなって!」

花帆「えぇ……で、でも無理だよぉ……」

かすみ「そうだ!同好会を始めるには部活の申請を出さなきゃだった!行きましょう、侑先輩!」

侑「うん!」

花帆「えっ、あたしほんとに無理ですよ~」

19: 2023/09/07(木) 20:59:05.64 ID:fTTR4X5j.net
返事を待つ暇もなく、校舎の方へ走り去る侑先輩とかすみちゃん。
歩夢先輩と2人で、残されることになったんだけど、歩夢先輩が話しかけてくれた

歩夢「ご、ごめんね、今ちょっと侑ちゃん、興奮状態で……」

花帆「そ、そうみたいですね……あの、歩夢先輩は、どうしてスクールアイドルになろうと思ったんですか?」

歩夢「やっぱりあの子に……侑ちゃんに私を見てほしかったからかな?」

歩夢「侑ちゃんはね、私の幼馴染で、とっても大切なお友達なんだ」

歩夢「侑ちゃんは昔から楽しい事、面白い事を見つけてはたくさん私に見せてくれた」

歩夢「そんな侑ちゃんが見つけた新しいトキメキが、せつ菜さんのライブで、スクールアイドルなの」

歩夢「でも結局せつ菜さんはスクールアイドルをやめちゃってて、同好会も廃部になって……」

歩夢「せっかく見つけたトキメキは、侑ちゃんがやりたいと思った事は叶わなくなっちゃった」

歩夢「だから、今回は私が侑ちゃんにとってのトキメキになれたらいいなって」

歩夢「私がスクールアイドルとして活動する事で、それが叶うならやってみようって思ったんだ」

花帆「歩夢先輩は侑さんのためにスクールアイドルをされるんですか?」

歩夢「う、うん。あ、もちろん私もせつ菜さんのライブを見てやってみたいって思ったんだけどね?」

歩夢「ちょっと、動機が不純かな……?」

花帆「そ、そんなことは」

歩夢「ふふっ、ありがとう」

歩夢「花帆ちゃんもさ、本当に無理っていうなら断ってもいいと思う」

歩夢「でも、ちょっとでもやりたいって気持ちがあるのなら、考えてみてほしいな」

花帆「……はい」

20: 2023/09/07(木) 21:11:45.33 ID:fTTR4X5j.net
翌日の朝
かすみちゃんや先輩たちにあたしの意思を伝えた。

花帆「あたしは、侑先輩と同じでマネージャーとしてなら入れますよ」

かすみ「かほ子は才能あると思うんですけどねぇ、かすみんほどじゃないですけど可愛いですし」

かすみちゃんと侑先輩は、あたしは当然スクールアイドルをやるものと思われていたらしく微妙な反応をされたけど歩夢さんは優しく微笑んでくれた。


昨日生徒会室に突撃してきた侑さんたちの話によれば、新しく部を立ち上げるには部員が5人必要との事。
今4人いるので、あと1人いないとならないのだけど。

かすみ「にひひ~、それは問題ありませんよ。ちゃぁんと確保していますから」

かすみちゃんによると既に人数は足りているらしい。

その日の放課後、部室がまだ無い同好会は中庭に集合。

先輩2人は既にいて、あたしの後に少し遅れてかすみちゃんがやってきた。
その後ろには、見覚えのある女の子3人がいる。

「皆さん、初めまして。桜坂しずくです」

同じ1年生のようですね。

「ふわぁ~……」
「いいねぇ、この中庭。陽当たりもよくって、お昼寝にはちょうどよさそう~」

3年生の先輩みたい。

「も~、彼方ちゃん。ここで寝ちゃダメだよ~」
「あ、こんにちは。花帆ちゃんとは朝以来だね。わたしはエマです。で、こっちが彼方ちゃん」


かすみ「どうですか!これで人数は一気に7人!生徒会長に文句は言わせませんよ!」

歩夢「なんだかみんな良い人そうだね」

侑「うんうん!それにみんなすっごく可愛い!!トキメいちゃうなぁー!」

侑「これからがますます楽しみになってきたよ!」

21: 2023/09/07(木) 21:18:06.06 ID:fTTR4X5j.net
この日は、歩夢さんのPR動画を撮るということで、
撮影係に侑さん・監督にかすみちゃんを据えて、歩夢さんと3人で校内で撮影スポットを探しに行ってしまった。

残されたあたしと、今日加わった3人の同好会メンバーは
一緒にストレッチなどをして体を動かした後、
スクールアイドルのいろはを知る為の座学。
……という名のおしゃべり会を学校近くの喫茶店で行うこととなった。

しずく「花帆さんはかすみさんと同じクラスなんだね。大丈夫?かすみさん、授業ちゃんと聞いてる?」

花帆「あはは……いや~、そのぉ……」

しずく「……聞いてないんだね。もう、テストの時泣きついてきても知らないんだから」

その後、3人は同好会であった事を話してくれた。

花帆「それって、かすみちゃんとせつ菜さんの対立が原因だったって事ですか…?」

彼方「うーん、ちょっとそれは違うかな」

彼方「最初に口に出したのはかすみちゃんだったけど、多分彼方ちゃん含めてみんな思ってた事だから」

彼方「そしてせつ菜ちゃんのやり方が悪かったわけでもなくて、単純にそれぞれのやりたい方向性が違っていたのかなって」

しずく「そうですね。かすみさんは私たちよりも明確な自分のスクールアイドル像を持っていました」

しずく「だから最初に行動しただけで、遅かれ早かれ私たちも同じ事を思うようになっていたかもしれません」

エマ「わたし、せつ菜ちゃんより先輩なのに何もできなかったよ……」

しずく「エマさん。この一件に先輩も後輩もありません。みんなの問題だったんですよ」

22: 2023/09/07(木) 21:25:30.61 ID:fTTR4X5j.net
後日
侑「実はさ、かすみちゃんから聞いたんだよね。前の同好会の事」

前の同好会の事とは、恐らくあたしがしずくちゃんたちから聞いた経緯の事かな。

侑「かすみちゃん、歩夢のPR動画の撮影の後に言ってたんだ」

侑「『歩夢先輩に自分のやり方を強要しちゃった。せつ菜先輩と同じことをしちゃった』って」

侑「それでどういうことか詳しく聞いたら、教えてくれてさ」

侑「その時は既に動画はあげた後だったんだけど、
  かすみちゃんもそれを見て同じ事を思ったんだろうね」

歩夢「だから今度改めてPR動画を撮りなおそうって、その時は私が思うような動画を撮ろうってことになったんだよね」

侑「それでずっと考えてたんだ。どうするのがニジガクの為になるのかなって」

侑「でも今日、答えが固まったよ」

花帆「それがソロアイドル、ということですか?」

侑「うん。みんながみんな、違う色を持っているのがニジガクの良い所だよ」

侑「歩夢は歩夢の、みんなにはみんなの、ね」

花帆「じゃあ、明日からニジガクはソロ路線で進めるんですね」

侑「うーん、そうしようと思うんだけど、問題はこの事をあの子にどう伝えるかなんだよなぁ」

「あの子?」

侑「せつ菜ちゃんだよ」

侑「せっかくグループじゃない新しい路線で行くことにしたんだから、せつ菜ちゃんが一人脱退する理由もなくなったわけでしょ?」

侑「だったらせつ菜ちゃんも一緒じゃなきゃ!」

25: 2023/09/07(木) 22:36:00.61 ID:fTTR4X5j.net
すみません、ここからの長い展開を書き続けるのは難しいので、残りはカットして最後だけ書かせていただきます
同好会メンバーが揃い、スクールアイドルフェスティバルが開催となり、蓮ノ空が招待されます。

梢と綴がスクールアイドルとしての最後の舞台と決意して2人で参加します。
フェスティバル中スタッフとして梢の手伝いをした花帆に運命を感じた梢から、花帆は蓮ノ空にスカウトされます。
梢「日野下花帆さんあなたを蓮ノ空女学院にスカウトさせてください、私達とラブライブ!優勝を目指しませんか」
同好会活動を通じて自身もスクールアイドルとして活動する事を考え初めていた時の誘いで心が揺れます。
この時は保留し、そして

スクールアイドルフェスティバル終了後
打ち上げの場で

花帆「同好会の皆さんにお話があります」

かすみ「改まってどうしたのかほ子?」

花帆「侑先輩には相談してたんだけど、あたし2学期から蓮ノ空女学院に転校することにしました」

みんな「えーーー」

花帆「前からみんなを見ていてこのままではダメだとは思ってたんだけど、侑先輩も音楽科に転科する決断をされましたし、あたしも行動しようと思って」

しずく「でも、ご実家はよく許可されましたね」

花帆「実家に転校の話しをしたら蓮ノ空はお母さんの母校らしくて、そこなら転校してもいいよとすんなり了承してもらえたんだ」

璃奈「花帆ちゃんが決めたならわたしたちは応援するだけ」

歩夢「寂しくなるね」

せつ菜「ラブライブ!を目指すんですよね、虹ヶ咲とは方針違いますからその選択もありだとは思います」

愛「ラブライブ!にでたら絶対みんなで応援に行くからね」

エマ「活動の配信も見るよ」
彼方「弱音を吐きたい時はいつでも連絡しておいで」
果林「あなたならきっと凄いスクールアイドルになれるわ」

花帆「皆さんありがとうございます、あたしきっとラブライブ!本戦に出て東京に戻ってきますから!」

侑「うん楽しみにしてるよ、私も頑張るから、また必ず合おうね」

花帆「はい、日野下花帆行って来ます」

8月末
金沢
花帆「ここが金沢か~東京よりも暑いかも」
花帆「えっとここからバスに乗るんだよね」

花帆「なんかどんどん山の方に行くなぁ、虹ヶ咲は海のほうだったからなんか不思議な感じだよ。」

花帆「ついたー、ここが蓮ノ空の校門か。うわー本当にすごい山奥だよ。でもここからあたしのスクールアイドルとしての新しい日々が始まるんだ。」

花帆「いっくぞー」


28: 2023/09/08(金) 07:20:20.23 ID:BIOJCdtS.net

引用元: 花帆「今日から夢の大都会東京で高校生活が始まるんだ」