8: 2013/06/24(月) 03:42:41.31 ID:ciqQFws2o



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




 「・・・人探し、ですか。ご家族の方ですか?」

ある日の安斎探偵事務所。翠と由愛に、捜索願いのあった猫を送り届けに向かってもらい、事務所で報告書をまとめていた都の元に、依頼人がやってきた。

「いや、友人だ。どこ探してもまるで尻尾掴めなくてよ」

「で、ここならきっと見つけてくれる、って話を聞いて。それで、こうして依頼に」

二人の名は、向井拓海と原田美世。小さな少女一人しかいない事務所に怪訝そうな顔をした二人だが、都の落ち着いた立ち振る舞いに、とりあえず信用して話を切り出してくれた。

「なるほど。その方のお名前は?」

「木村夏樹。・・・・・・二年くらいまえに、氏んだはずのヤツだ」

「・・・氏んだ、『はず』、ですか」

苦々しげに呟いた拓海の言葉に、眉をひそめる都。氏んだ人間を探し出して欲しいとは、一体どういうことだろうか?

「・・・交通事故にあった、って、そう聞いてたんだけどね。どこの病院にも、運び込まれた形跡がなかったんだって」

「警察にも聞いてみたんだが、まるでわけがわからん、って突っぱねられてよ・・・クソッ」

苛立たしげに、拳をもう片方の掌に打ちつける拓海。

「・・・『人探し』として依頼に来られた、ということは、何か、夏樹さんがまだ生きている、という確証がある、ということでよろしいんですね?」

二年も前に事故にあった人間、それも病院へ搬送された記録がないともなると、普通ならばもう氏んでしまったと考えるだろう。

それをあえて『今どこにいるのかを探して欲しい』と依頼してくるということは、それなりに理由があるはずだ。
7: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/24(月) 03:41:51.78 ID:ciqQFws2o

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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    





9: 2013/06/24(月) 03:43:19.23 ID:ciqQFws2o
「・・・拓海がね。見かけたらしいんだ、夏樹ちゃんのこと」

「雰囲気はちょっと変わっちまってたし、そん時はすぐに逃げられちまったが、間違いねぇ・・・アイツは夏樹だ」

「・・・ふむ。見かけられたのは、どの辺りで?」

「街の外れのほうだ。バイク走らせてたとき、休憩してたらたまたま。・・・こんな不確かなことしかわかんねぇが、引き受けてくれねえか・・・頼む、この通りだ」

「あたしからも、お願いします。・・・せめて、もう一度会って、話がしたいの」

そういって、頭を下げる二人。そのもどかしげな表情は、都が一番嫌うものだった。

(・・・だからこそ、真実を探し出して、その表情を笑顔に変えるのが、探偵たる私の仕事。そうですよね、おじいちゃん)

「・・・『夏樹さんがいなくなった具体的な日付』、それと、何でもかまいません、『事故に関する情報』。それだけあれば、きっと、お役に立てるかと」

「・・・引き受けて、くれるのか?」

「もちろん。可能な限り、力をお貸ししますよ」

「・・・ありがとう。事故があったのは、ほぼまるまる二年前。あと、事故に関する情報、だっけ・・・」

「・・・そうだ、確かもう一人、夏樹と一緒に事故に巻き込まれたヤツがいたよな!?」

「うん・・・えっと、確か、『多田りいな』ちゃん、だったっけ?ゴメン、名前の漢字はハッキリ憶えてないや・・・」

「いえ、特徴的な名前ですし、それで充分でしょう。では、少し待っていて下さい。すぐに『調べて』みます」

そう言って、応接用のテーブルから立ちあがった都は、デスクに置いてあった本を手にとる。

目を閉じ、深呼吸をひとつ。そして、『そのまま』手にした本を開き、ページを次々めくっていく。

「おい、アンタ一体何やって・・・!?」

その行動の意図が見えず、ソファから立ち上がり都の持つ本を覗き込んだ拓海は、そこに信じられないものを見た。

装丁の繊細さに反して、その本には『何も書かれていなかった』のだ。都がいくらページを捲れど、延々と白紙のページが続いている。

10: 2013/06/24(月) 03:44:37.84 ID:ciqQFws2o
「都さん、ただいま戻りました・・・あら、お客様ですか?」

「あ、あの、こんにちは・・・あ、都さん、『検索中』みたいですね、翠さん」

ちょうどそのタイミングで、猫を送ってきた由愛と翠が戻って来た。

「・・・オイ、コイツ一体何やってんだ?さっきから何も書いてねぇ本ペラペラ捲って・・・」

「ちょっと拓海、まず挨拶しなよ。あたしは原田美世、こっちは向井拓海。探して欲しい人がいて、それで依頼に」

「美世さんと拓海さん、ですか。私は水野翠、この事務所で助手を務めています」

「な、成宮由愛です。えっと、都さんは今、たぶんその人の『情報』を探してるんです」

「探す?こんな本で、しかも目ぇ閉じたまんまでどうやって・・・」

「・・・『木村夏樹』・・・『多田リイナ』・・・『二年前の交通事故』・・・『見かけた場所は・・・』・・・」

訝しむ拓海をよそに、都は検索の為の『キーワード』を呟き、ページを捲る手が加速する。

そうして間もなく、ぱたん、と都が本を閉じ、目を開く。

「・・・あ、翠さん、由愛さん、お帰りなさい。翠さん、帰ってきて早速で申し訳ないんですが、『例の依頼人』に連絡を取ってもらえますか?」

「例の・・・あぁ、『管理局』の方ですね?わかりました、ちょっと待っていてください」

電話を翠に任せて、都は拓海と美世の方へ向き直る。何が起きたのか把握しきれない拓海は、未だに納得のいかない表情のままだ。

11: 2013/06/24(月) 03:45:10.44 ID:ciqQFws2o
「連絡、って・・・今ので、何か解ったってのか?」

「えぇ。夏樹さんは今、『ネバーディスペア』というチームで、カースや悪人と戦っているそうです」

「っ、『ネバーディスペア』って、あの!?そんな、夏樹ちゃんがなんで・・・」

「その辺りは、本人から聞いた方がいいでしょう」

「本人から、って・・・」

「・・・えぇ、はい。わかりました。少々お待ちください・・・都さん、あちらが電話を代わってほしいと」

「わかりました。・・・もしもし、お電話代わりました、安斎です。・・・えぇ・・・えぇ」

「・・・どうなってんだ、アイツ」

翠に呼ばれ、電話に出る都から視線を外さず、拓海が呟いた。それを聞いた由愛が、彼女の『能力』を説明する。

「えっと、都さん、『見通す者の目(サードアイ)』っていう能力が使えるんです。いくつかの『キーワード』があれば、いろんなものの『隠された真実』がわかる、っていう」

「白紙の本は、意識を集中させるための道具だそうですよ。何も書かれていないほうが、かえってやりやすいそうで」

「・・・では、そのように。・・・そこはわかってますよ、プロですから。えぇ、ではまた後ほど連絡します」

翠がそう付け加えると、丁度そのタイミングで都が電話を終えたようだった。

「お待たせしました、拓海さん、美世さん。とりあえず、面会の約束は取り付けました」

「本当か!?」

「えぇ、これからお時間があるようでしたらすぐにでも。どうされますか?」

・・・どうやら、コイツは『本物』だったみたいだ。

ようやく納得のいった拓海は、自分でも気づかないうちに、安堵した微笑みを浮かべていた。

12: 2013/06/24(月) 03:45:58.03 ID:ciqQFws2o
しばらくの後、気を遣った都らが席を外した安斎探偵事務所に、もう一人の来客があった。

「・・・・・・二人とも、久し振り」

木村夏樹。拓海と美世の友人であり、すでに氏んだものと思われていた少女であり、人体改造を施された改造人間であり、人知れず怪物と戦う『ネバーディスペア』のメンバーの一人。

「・・・ったく、生きてたんなら連絡の一つくらい寄越せってんだよ・・・・・・」

「ホントだよ・・・どれだけ心配したと思ってるのさ・・・・・・でもよかった、またこうして会えて・・・」

四肢の全てを義体化され、ふよふよと浮かぶ球体が眼の代わりで、空間に穴を開けて現れた彼女を見て、それでも二人の友人は、かつてと全く変わらない視線を彼女に向けていた。

「・・・何も、言わないのかよ」

夏樹には、それが不思議だった。

「こんな、手も足も機械になっちまってさ。妙ちきりんな球でモノを見てさ。何もない所から現れたり、物を取り出したり」

いくらかつての非常識が日常になった世界であっても、それでも自分の存在はとびきり異端なもののひとつだ。それなのに。

「・・・こんな、バケモノみたいになっちまったのに。何でアンタら、そんな昔みたいに――――」

ぱしん、と乾いた音とともに、夏樹は頬に熱い痛みを感じた。視界が動かなかったからか、自分が美世に頬をはたかれたのだと気付くには、少し時間がかかった。

13: 2013/06/24(月) 03:47:04.82 ID:ciqQFws2o
「・・・・・・ふざけないで」

俯いて、絞り出すような震えた声で、美世がぼそりと呟く。

「手足が機械になったのが何?ちょっと物の見え方が変わってるからって何さ?・・・夏樹ちゃんは、夏樹ちゃんでしょ?自分で自分のこと、バケモノだなんて言わないでよ・・・ッ」

こらえきれず、美世の頬を涙が伝う。その肩を抱きながら、拓海が口を開く。

「夏樹。オマエ今、『ネバーディスペア』っつーチームに居るんだったな・・・『カミカゼ』って名前に聞き覚えはあるか?」

「・・・バイクから変形させたアーマー使って戦う、っていうヒーローか?知ってるけど、何で今その名前が・・・」

「アレ、アタシだ」

「っ!?」

確かに、拓海は腕っ節の強い方ではあったし、やんちゃな連中に絡まれることも少なくなかったが、それでもカースと渡り合えるほどの力があるとは思えない。

夏樹の中の拓海のイメージでは、そう判断するしかできなかったが。

「オマエがいなくなってからさ。色々あって、アタシも能力に目覚めたんだよ。それで、美世がいじったバイク使って、正義の味方なんて始めてさ」

ぽつぽつと言葉を探しながら、言いたいことを纏めるように、拓海はゆっくりと夏樹に声をかける。

「だから、その、何だ。少々のことなら、もう慣れっこっつーか。今さら、見た目がどうのとか、能力がどうのとかさ。・・・アタシらの仲で、気にするほどのもんじゃねーだろ、その位はさ」

「・・・なんか。変わっちまったと思ってたのって、案外アタシだけだったのかな」

「っ、ぐすっ、そうっ、だよっ。夏樹ちゃんは、ひっく、夏樹ちゃんでしょっ。何もっ、変わってなんかっ、っ」

「だーもう、いい加減泣きやめっての・・・ったく」

そうだ。美世は三人の中で一番年上なのに、一番泣き虫で、よく拓海と二人して苦笑いしながらなだめていた。

何も。何一つ、変わってなどいないのだ。姿かたちや能力くらいでは、紡いだ絆は崩れはしない。

「・・・またそのうち、美世さんのガレージ、寄らせてもらうよ。そんときは、だりーも連れていく。・・・あー、ちょっとビビるかもしんないけど。お互い」

「お互い、ってなんだよ。・・・おう、いつでも来いよ。待っててやるからさ」

「ぐすっ、それあたしのセリフだと思うんだけど・・・まぁ、最近拓海ずっと入り浸ってるけどさ」

そんな軽口を叩きあうと、誰からともなく笑い声が上がる。

「・・・一件落着、ですかね」

少し離れた場所からも聞こえるその笑い声に、都はひとつ満足げに頷いた。

14: 2013/06/24(月) 03:48:08.18 ID:ciqQFws2o
以上です
がっつり他の方のキャラ使うの初めてで緊張がヤバい(冷や汗

16: 2013/06/24(月) 06:55:50.03 ID:eXeLsawt0
乙でしたー!
良い話だった…掛け値なしに




【次回に続く・・・】



引用元: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part2