1: 2015/11/29(日) 20:43:30.28 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
ガタガタ…


真姫「」ブルッ

海未「寒いですか?」

真姫「うん、少し……ピアノに座ってるとどうしても隙間風に当たっちゃうの」

海未「暖房を点けたいのですが、生憎音楽室の暖房器具が壊れていますからね……」

真姫「……移動する?」

海未「真姫はどうしたいですか?」

真姫「……そうね」

真姫「冷え込むようだったら、部室に戻りましょう。今はまだ、大丈夫」

海未「分かりました」















真姫「……落ち着くの、やっぱりここが一番だから」

海未「……」

2: 2015/11/29(日) 20:48:11.55 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「はぁ……」

海未「どうかしましたか?」

真姫「別に。……ただ、今から何をしようかなって」

海未「……」

真姫「おかしいわよね。作曲をするわけでもなく、ピアノを弾く訳でも無いのに」

真姫「ここに海未と一緒に座っているだなんて」

海未「……そうでしょうか?」

真姫「だって、ずっとそうだったじゃない」

真姫「貴女と一緒にいる時は、いつも何かを作ってた」

真姫「私がピアノを弾いて、海未がフレーズを呟く、ぴったりなものを見つけたら、二人で喜んでた」
















真姫「……でも、今は何もしてない。ただ二人でこの場に居るだけ」

海未「……」

4: 2015/11/29(日) 20:51:20.30 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「……真姫」

真姫「海未、気が変わったらいつでも出て行っていいから」

真姫「私に付き合ってくれるのは嬉しいけど、海未の時間を割いてまでここにいる必要は、ないわ」

海未「そんな事、言わないで下さい」

海未「私は自分が好き好んでこの場に居るのです……同情で付き合っているのではありません」

海未「ですが……真姫が出て行けと言うのなら、私は出ていきます」

海未「私は真姫の気持ちを、一番に尊重するべきだと思っていますので」



ガタッ












真姫「……」 

海未「……その手は、私がここに居てもいいと言う事ですか?」

真姫「……」コクン

海未「……」

海未「ありがとうございます。真姫」

7: 2015/11/29(日) 20:58:07.07 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「……」

海未「真姫、そろそろ教えて頂けないでしょうか」

海未「どうして、練習が終わった後、家に帰らず音楽室に居るのか」

海未「凛や花陽から聞きました。……最近の真姫は、ずっと俯いている。と」

海未「穂乃果やことりも心配しています。……もちろん、私も」

真姫「……」

海未「言いにくい、事ですか……?」

真姫「……」フルフル

海未「……はぁ」



――ガチャ











真姫「……!どこ行くの?」

海未「すぐ帰ってきます。少し待っていてください」

真姫「……うん」

11: 2015/11/29(日) 21:06:19.67 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
・・・・・・・・・・・・・・・・・・



真姫「……遅い」

真姫「……もう、帰っちゃったのかな」

真姫「……」







真姫「はは……そうよね」

真姫「こんな面倒な人、一緒にいても辛いだけよね」

真姫「一番分かってるのは、私の筈なのに……」

真姫「……やっぱり、パパの言うとおり」




ガチャ













海未「パパの言う通り、何ですか?」

真姫「あっ」

海未「申し訳ありません。扉を開ける時、聞こえてしまいまして」

真姫「……おかえり」

海未「はい、ただいまです」

12: 2015/11/29(日) 21:11:58.77 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「どうぞ」

真姫「ありが……何これ」

海未「見れば分かるでしょう?ミカンジュースです」

真姫「……私、みかん嫌いなんだけど」

海未「はい、知っています」

真姫「意味分かんない。嫌がらせ?」

海未「いえ、そうではありません」

真姫「はぁ……じゃあ何でなのよ」

海未「これを見て下さい」

真姫「……?」












真姫「……!海未、貴女それ」

海未「はい、サイダーです」

13: 2015/11/29(日) 21:18:54.12 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「ちょっと、貴女炭酸飲めないんじゃ……」

海未「はい、飲めませんよ。嫌いです」

真姫「じゃあ何で買ってきたのよ……」

海未「嫌いだからです」

真姫「……ちょっと待って。海未の考えてる事が何一つ分からないんだけど」

海未「真姫、今から簡単な勝負をしましょう」

真姫「えっ?」

海未「私と真姫の手には今、お互いの嫌いな飲み物があります」

海未「それを相手より早く飲み干す事が出来たら勝ちです。勝った人は、相手に何でも一つ命令が出来ます」





真姫「……へぇ」

海未「どうですか?私の勝負、受けて貰えますか?」

海未「真姫が受けないと言うのなら、この勝負は成立しません。そのジュースは私が処分します」

海未「まぁ、真姫の事ですから、勝てない勝負を受けるだなんて事はしないと思いますが」











真姫「……言ってくれるじゃない、海未のくせに」

真姫「いいわ。その勝負、受けて立つわよ」

海未「ふふ、そうこなくては」

15: 2015/11/29(日) 21:22:11.34 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「……10秒後にタイマーをセットしました」

真姫「……」

海未「プルタブを開けて下さい。アラームが鳴った時が、勝負開始の合図です」




真姫「……」 カシュ

海未「……」 カシュ

海未「行きますよ……軽い気持ちで勝負に乗った事を後悔して下さい」

真姫「……その言葉、そっくりそのまま返すわ」

海未「……では」





ピピピピ ピピピピ






海未「――スタートっ!」 グイッ

真姫「――っ!」 グイッ

16: 2015/11/29(日) 21:33:16.52 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「……っぐふっ!」 

真姫(ヴェェェ……まずい……)


海未「ごふっ!?」


真姫(でもっ……飲まなきゃっ……!)


海未「ごっふぉ!?げほっ!?ヴぉえっ!?んぐほぉ!?」


真姫(負けたく……ないっ!)グイッ


海未「ごぼぼぼぼぼっ!?げぇぇぇっぷ!おごごごっ……ごっ…!」


――ゴクッ








真姫「――っぷはっ!はぁ、はぁ、はぁ……!」

真姫「の、飲みっ切った……!」

海未「ほぶぉっ!?ごぼっ…がっ…!ぐふぅっ!?」 ブシャア!

真姫「ちょ、ちょっと海未!?大丈夫っ!?」

海未「ヒィー……ヒィー……」 ビクンビクン

真姫「いいから!もう私全部飲み干したから!私の勝ち!もう飲まなくていいの!」

海未「」 

19: 2015/11/29(日) 21:53:52.41 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
・・・・・・・・・・・・・・・・



海未「……氏ぬかと思いました」 グスン

真姫「半分氏んでたわよ。全く……」

海未「すみません……」

真姫「はぁ……どう考えても炭酸と普通のジュースじゃ勝ち目ないの分かるじゃないの?」

海未「ううっ……だって……」

真姫「でもまぁ、勝負は勝負よ。私の言う事何でも聞いてくれるのよね?」

海未「は、はい……」

海未「はぁ……私が勝ったら事情を教えて頂こうと思っていたのに……」

真姫「……」










真姫「……」 スッ

海未「……真姫?」

真姫「何よ。何でも聞いてくれるのでしょう?」

海未「それは、そうですけど……これは一体」

真姫「いいから、そのまましてて。真姫ちゃんが倒れちゃうじゃない」

海未「は、はぁ……」

22: 2015/11/29(日) 22:10:51.64 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「……」

真姫「……」

海未「……あの、真姫」

真姫「何よ」

海未「えっと……あまりその、肩に頭を乗せられると……その」

真姫「重い?」

海未「い、いえ!そうではありません……で、ですが……」

海未「その……ちょっと、恥ずかしいというか……あの」

真姫「……くす」

海未「な、何ですか……」

真姫「ううん、海未って可愛いなって」

海未「や、やめて下さい……!」

真姫「あ、横向かないで。海未の顔見れなくなるじゃない」

海未「……うぅ」














真姫「……ありがとう」

海未「えっ?」

真姫「私の事、励ましてくれて」

23: 2015/11/29(日) 22:30:23.13 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「……真姫」

真姫「私ね、この前パパに言っちゃったの」

真姫「μ’sが終わっても、アイドル活動は続けていくって事」

海未「……!」

真姫「そしたらパパね、凄く心配した顔で言ったの」

真姫「『この前終わりだと言っていたじゃないか、これからずっとアイドルを続けていくつもりなのか』……って」





海未「……それは」

真姫「ううん、分かってる。パパの勘違いだって」

真姫「パパはきっと、μ’sのラストライブを見て、私がこれから部活を辞めて勉強に専念するって思ってたみたいなの」

真姫「でも、まだ私がアイドル活動を続けるって言った事に対して、ずっと先の事まで飛躍して考えちゃったみたいで」

真姫「余計な心配かけちゃった……あの後ちゃんと訳を話しても、生返事ばかりで信じて貰えない」

真姫「……ちゃんと、説明しておけば、こんな事にはならなかったのに」











海未「……それで、ここ数日落ち込んでいたのですか?」

真姫「……うん」

24: 2015/11/29(日) 22:55:15.28 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「一度信用を失ったら、それを取り戻すのって大変な事なのね」

海未「……」

真姫「はぁ……どうしたら信じて貰えるのかしら」

真姫「勉強してる姿を見せても、当てつけの様に見えちゃうかもしれないし……」




海未「……普通に、していればいいと思います」

真姫「えっ?」

海未「私は、叔父様が真姫に対して信用を失ったとは思えません」

海未「それだけ真姫の事を心配してくれているのは、親心だからこそ、ではないでしょうか」

真姫「……」

海未「本当に信用を失ったのだとすれば、今この場に真姫が居る事すら許されないと思います」

海未「自分の事は、自分で考えて行動する……それが出来るからこそ、叔父様は何も言わないのではないでしょうか?」

25: 2015/11/29(日) 23:17:22.97 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
真姫「……そう、なのかしら?」

海未「はい、きっとそうですよ」

海未「もし心配なら、これからの行動や結果で示せばいいんですよ」

真姫「結果?」

海未「勉強や練習、他にも色々としなければいけない事は沢山ありますが……」

海未「一番大切なのは、真姫が何をしている時でも生き生きとした表情になっている事だと思います」

真姫「……」

海未「真姫がそんな暗い顔をしていたら、みんなが心配をします」

海未「無理に笑顔になれ、だなんて事は言いません。でも、もし辛い事があったのなら」

海未「私達に、相談してほしいです。……真姫の悩みは、私達の悩みでもあるのですから」














真姫「海未」

海未「はい、なんでしょう」

真姫「……ありがとう」

海未「どういたしまして」

26: 2015/11/29(日) 23:24:21.21 ID:KCcFh4fj0NIKU.net
海未「……さて、そろそろ帰らないと」

真姫「えっ?」

海未「えっ?」

真姫「もう帰るの?」

海未「はい。もう7時を回ろうとしていますので……」

真姫「私、帰っていいだなんて言ってないけど」

海未「はい?」

真姫「私の言う事、聞いてくれるのでしょう?まだ終わってないわよ」

海未「ま、まだ終わっていなかったのですか!?」

真姫「私が終わりって言ったら終わり。はい座る」

海未「そ、そんなぁ……」

真姫「ふふっ、ちょっと後悔してるでしょう?」

海未「はい…あ、いえ…そんな事は」

真姫「いいのよ。自分でも面倒な人だって思ってるから」

海未「……全く、真姫には敵いません」

真姫「そう」











真姫「……海未」

海未「はい」

真姫「こんな面倒くさい相方だけど……これかもよろしくね」

海未「……」

海未「こちらこそ、よろしくお願いします」

真姫「…くすっ」

海未「ふふふっ…」




~おしまい~

27: 2015/11/29(日) 23:26:04.51 ID:KbGY1Xsz0NIKU.net

素晴らしい

28: 2015/11/29(日) 23:26:49.72 ID:kq52/msu0NIKU.net
いいうみまきを見た

31: 2015/11/29(日) 23:54:26.71 ID:TxRJUo/C0NIKU.net
おつ

引用元: 真姫「……寒くなってきたわね」海未「そうですね」