72: 2011/12/03(土) 07:25:48.14 ID:NOOLkeZo0
配達少女「お届け物でーす」
配達少女「お届け物でーす!お爺さん、お元気ですか?」
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「あ、おはよう。早いねユウ君。受験勉強?」
少女「ふーんすごいなあ、こんな朝早くから」
少女「わたし? わたしはお仕事だからね」
少女「え、なに? 志望高校に受かったら?」
少女「ははーん、さては私に何かせがむつもりでしょ?」
少女「いいよ、もし受かったらなんでもかなえてあげる!」
少女「大丈夫、嘘はつかないよ!」
73: 2011/12/03(土) 07:26:34.37 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「ああユイちゃんおはよう! 勉強頑張ってる?」
少女「徹夜? あはは、疲れたって顔してる」
少女「ふーん、レベル高いとこ狙ってるんだねえ」
少女「ん? そこってもしかしてお隣のユウ君と同じとこ?」
少女「別にあいつは関係ない?」
少女「顔真っ赤だよ?」
74: 2011/12/03(土) 07:27:24.51 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー、夕刊でーす」
少女「あ、お母さん、こんばんは」
少女「ユウ君頑張ってますか」
少女「ああ、呼ばなくてもいいですよ! 今勉強中でしょう?」
少女「あの子も喜ぶ? はあ」
少女「あ、こんばんはユウ君!」
少女「……もしかして寝てた? ほっぺによだれ跡が」
少女「違う? 心の汗? それ違くない?」
75: 2011/12/03(土) 07:28:07.21 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー、夕刊でーす!」
少女「あ、ユイちゃん、こんばんは!」
少女「ん、どうかした?」
少女「あ、もしかして文通のお手紙? ユウ君との?」
少女「お隣なのにマメだよねえ」
少女「手紙じゃないと素直に話せない?」
少女「ああ、ああ、顔真っ赤」
76: 2011/12/03(土) 07:28:50.15 ID:NOOLkeZo0
少女「すみませーん、再び失礼しまーす、お手紙でーす」
少女「ユウ君、また会ったね」
少女「あなたにお手紙だよ」
少女「はい、隣のユイちゃんから!」
少女「なんだよー、女の子からのお手紙だよ? もっと嬉しそうにしなよー」
少女「あはは、わたしからの手紙だったら嬉しい? ユウ君お上手!」
少女「あ、あれ? ごめん、なんか変なこと言った?」
77: 2011/12/03(土) 07:29:40.62 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「ユウ君、おはよー!」
少女「今日も早いね。え? 徹夜?」
少女「そっか、隣のユイちゃんと同じだ」
少女「ん、ユイちゃんも頑張ってるらしいよ」
少女「○○高校だって、ユウ君と同じだね」
少女「そんな嫌そうな顔しないの。幼馴染でしょー」
少女「うっとうしいだけ? そのわりに文通のお手紙はちゃんと書いてるみたいだけど?」
少女「あはは、分かった分かった。お手紙預かったからね」
78: 2011/12/03(土) 07:30:22.17 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「わ! ユ、ユイちゃんおはよう」
少女「あ、お手紙? 預かってきたよ。はい」
少女「そんなに焦らなくてもお手紙は逃げないって」
少女(ああ、お手紙読んでるユイちゃんは幸せそうだなあ)
少女「ふふ、この後はユウ君と一緒に登校?」
少女「あれ、違うの?」
少女「そんなの恥ずかしい? なるほど、そっか―」
少女「いやいや、笑ってないよ。ふふ」
79: 2011/12/03(土) 07:31:04.14 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー、夕刊でーす」
少女「ユウ君、こんばんは」
少女「ん? 心なしか嬉しそうだね。何かあった?」
少女「え、これは? 模試の結果? 見ていいの?」
少女「どれどれ」
少女「おお! ○○高校の判定が五段階評価で四だ!」
少女「これなら大丈夫そうだね!」
少女「約束? 大丈夫、忘れてないよ!」
80: 2011/12/03(土) 07:32:00.92 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー、夕刊でーす」
少女「ユイちゃん、こんばんは」
少女「あれ? そこはかとなく暗ーいけど……何かあった?」
少女「模試の結果? 見るよ?」
少女「あ」
少女「○○高校の判定、五段階中、二か……」
少女「うーん、これは……ちょっと厳しそうだね」
少女「ああ! そんな、泣かないで!」
81: 2011/12/03(土) 07:32:42.73 ID:NOOLkeZo0
少女「うーん、困ったね……」
少女「何か打開策は、と」
少女「ありきたりだけど、塾に行くとか家庭教師とか?」
少女「そんなお金はない、か……」
少女(ユイちゃんちはそんなに裕福じゃないんだよね……むしろ……)
少女「お金のかからない家庭教師がいればなあ。でもそんなの」
少女「あ」
少女「そういえば一人だけ、心当たりがあるよ!」
少女「うん、わたしに任せて!」
82: 2011/12/03(土) 07:33:24.81 ID:NOOLkeZo0
少女「というわけなんですが」
少女「俺になんの関係が、って二郎さんも分かってるくせにー」
少女「そう、ずばり二郎さんに家庭教師をやってもらいたいんです!」
少女「浪人生時代に培った知識を、今こそ世の中のために生かすべきです!」
少女「二郎さんになんのメリットがあるか?」
少女「特にありません!」
少女「あいた! また叩きましたね!」
83: 2011/12/03(土) 07:34:11.87 ID:NOOLkeZo0
少女「なだめすかして、ようやく二郎さんを説得しました」
少女「まさか恥を忍んでこの身体を交渉に持ち出しても応じてもらえないとは……」
少女「まあ、これから毎日の夕食をおごることで手を打ってもらったんですけどね」
少女「食事>わたしの身体」
少女「へこみます」
84: 2011/12/03(土) 07:35:08.90 ID:NOOLkeZo0
少女「まあ、とにかく今日の配達へ出発です! おー!」
ガチャ! ……シーン
少女「あれ?」
ガチャガチャ シーン
少女「あれれ?」
85: 2011/12/03(土) 07:35:58.72 ID:NOOLkeZo0
少女「まさかバイクが故障するとは」
少女「まあ、長い間使ってましたから想定外というわけではありませんが」
少女「むしろ想定外といえば今の状況です」
少女「いい方向への裏切りですが」
少女「ねー、二郎さん」
少女「ちょっと! いきなり粗い運転にならないでくださいよ! わたしを後ろに乗せてるんだからもっと安全にお願いします!」
少女「乗せてるからこそ? このー!」
少女「いた! その体勢から叩き返してくるとは!」
86: 2011/12/03(土) 07:36:47.33 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「ユウ君のお母さん、どうもおはようございます」
少女「え? 隣の男の人は誰かって?」
少女「わたしの彼氏です」
少女「わっとと! 冗談ですよう」
少女「あ、ユウ君おはよう」
少女「え? なんで不機嫌?」
87: 2011/12/03(土) 07:37:29.92 ID:NOOLkeZo0
少女「そうなんですよ、バイクが故障しちゃって」
少女「そのせいで二人の初めての共同作業に」
少女「新婚さんみたい? えへへ」
少女「っと。そろそろ二郎さんのそれも見切ってきました」
少女「生意気? 愛ゆえでーす」
少女「ああ!? 何故かユウ君がさらに不機嫌に!」
88: 2011/12/03(土) 07:38:16.77 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございまーす、新聞でーす」
少女「ユイちゃんおはよう!」
少女「今日は例の助っ人を連れてきたよ!」
少女「じゃーん! 二郎さんでーす!」
少女「こう見えても医学部を目指してたから頭はいいんだよー」
少女「こう見えても、は余計? これは失礼」
少女「ともかく、ユイちゃんはこれで安泰。大船に乗って揺られまくった心地でいてよ!」
少女「船酔い? そんなの関係ねえ!」
少女「今日の夜から特訓開始だよ!」
少女「ふつつか者ですがよろしくお願いします? そ、それじゃあ結婚みたいだよユイちゃん」
90: 2011/12/03(土) 07:38:58.73 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー」
少女「はい、家庭教師業に参りました」
少女「ユイちゃんは二階ですか? あ、分かりましたおじゃまします」
少女「ユイちゃんこんばんはー」
少女「うわー片付いたきれいな部屋だね。わたしのとは大違い」
少女「こら二郎さん、こっそり嗅がないでください!」
91: 2011/12/03(土) 07:39:56.04 ID:NOOLkeZo0
少女「さて、勉強の間わたしは手持無沙汰です」
少女「かといって二郎さんに夕食をおごるので先に帰るわけにもいきません」
少女「それに二郎さんを女子中学生と二人きりにするとなにをするかわかりませんし!」
少女「あう!」
少女「いたた。――え? でも確かにお前よりは魅力があるかもな? どういう意味ですかそれ!」
92: 2011/12/03(土) 07:40:56.51 ID:NOOLkeZo0
少女「あはは、やっぱり動物のお医者さんは面白いなあ」
少女「え、うるさい? ……ごめんなさーい」
少女「……」
少女「ぷ、くく」
少女「ちょっと! 辞書投げるなんてどういうつもりですか!」
少女「愛情表現?」
少女「重すぎます!」
93: 2011/12/03(土) 07:41:47.58 ID:NOOLkeZo0
少女「勉強の調子はいかがですかー?」
少女「ユイちゃんは筋がいい? このまま行ければ何とかなりそう?」
少女「やったねユイちゃん!」
少女「ところで今は何やってるんですか?」
少女「英語ですか」
少女「もともと勉強は苦手ですが、英語は特に苦手で」
少女「今使える英語は一つだけです」
少女「あいらびゅー」
少女「み、みーとぅー? 本当ですか二郎さん! 嘘? こんちくしょー!」
94: 2011/12/03(土) 07:42:35.71 ID:NOOLkeZo0
少女「そんなこんなで、入学試験も終り、合格発表の日が近付いているわけですが」
少女「ちょっと、二郎さん落ち着きましょうよ」
少女「俺は落ち着いてる? じゃあ、歩きまわってないで座りましょ?」
少女「自分の生徒の合否が気になるのも分かりますけどね。少しは冷静さを――」
少女「は、はい、わたしです! 電話口でそれじゃあ誰だか分からない? で、でも伝わるでしょ!?」
少女「そ、そんなことはどうでもいいんです! ユイちゃんは!?」
少女「え!?」
少女「そ、それ本当ですか!?」
少女「じじじ二郎さん!」
少女「残念ながら、ユイちゃんは……!」
少女「そんなに気を落とさないでください二郎さん!」
少女「トップではありませんでしたが合格です!」
少女「いったぁぁぁぁい! 本気で叩いた! なんで!?」
96: 2011/12/03(土) 07:43:30.90 ID:NOOLkeZo0
少女「こんばんはー! そしておめでとうございまーす! お届け物でーす!」
少女「ユイちゃん、おめでとう! これ、わたしたちからの合格祝い!」
少女「よく頑張ったね、えらいえらい」
少女「これでもう安心だね」
少女「ん?」
少女「泣いてるの? ユイちゃん」
少女「……そっか、頑張ったもんね。緊張の糸が切れたんだね。よしよし」
少女「ほら、二郎さんもよしよしって」
少女「ちょっと、二郎さんも泣いてるんですか!?」
97: 2011/12/03(土) 07:44:22.26 ID:NOOLkeZo0
少女「そして、もう一人、こんばんはおめでとうございまーす!」
少女「ユウ君はなんとトップ合格!」
少女「それをここに祝して、合格祝いを贈呈しまーす! わーぱちぱち!」
少女「すごいよねーユウユイで一番二番独占だもの」
少女「学校の先生方も鼻が高いでしょうて」
少女「ん、約束のこと? もっちろん覚えてるよ!」
少女「さては新しいゲーム機が欲しいんだね? 違う?」
少女「じゃあ、パソコンが欲しい? 違うか」
少女「もしかしてお姉さんのキスが欲しいとか! 違うよね、あはは」
少女「……え?」
少女「……」
少女「えええ!? わたしが好き!? 付き合ってほしい!?」
98: 2011/12/03(土) 07:45:28.54 ID:NOOLkeZo0
少女「……えーと」
少女(何この沈黙……)
少女「あ、あはは、どうしましょうね二郎さん」
少女「俺に振るな? だって……」
少女「……」
少女「えーとね、ユウ君」
少女「まずは、わたしを好きって言ってくれてありがとう」
少女「前からずっと思っててくれたんだよね。受験勉強の支えにするくらいだもん」
少女「本当にありがとう」
少女「でも……ごめん」
少女「ユウ君の気持ちはとてもうれしい。でも付き合えない」
少女「っ……それは。その……」
少女「わたし、好きな人がいるんだ」
99: 2011/12/03(土) 07:46:20.30 ID:NOOLkeZo0
少女「ちょっと乱暴で、雑で、偉そうな人なんだけど」
少女「でも、自然に人を助けたり、身近な人のためにがんばれるいい人なんだ」
少女「それなら僕も同じ?」
少女「……」
少女「わたしは……その人じゃなきゃだめなんだ」
少女「あ! ユウ君どこ行くの!」
少女「待って!」
100: 2011/12/03(土) 07:47:03.86 ID:NOOLkeZo0
少女「あ……ユイちゃん」
少女「もしかして、今の見てた?」
少女「……」
少女「あ、ユイちゃん! 待ってぇ!」
101: 2011/12/03(土) 07:47:45.85 ID:NOOLkeZo0
少女「どどどどうしよう、ユウ君が出ていっちゃった!」
少女「おまけにユイちゃんがわたしのこと、嫌いって……」
少女「ああ、ごめんなさい二郎さん」
少女「そ、そうですね、まずはユウ君を探さないと!」
少女「ん? 何か落ちてる?」
少女「これは……」
102: 2011/12/03(土) 07:48:28.70 ID:NOOLkeZo0
少女「ユウ君、どこ!?」
少女「ユウ君!」
少女「ユウく―ん!」
・
・
・
少女「はあ、はあ……」
少女「あ、携帯……」
少女「二郎さんですか? え!? ユウ君が見つかった!? すぐ行きます!」
103: 2011/12/03(土) 07:49:12.87 ID:NOOLkeZo0
少女「――こんなところにいたんだユウ君……」
少女「……」
少女「みんなも心配してるし、帰ろ?」
少女「……」
少女「困ったなあ……」
104: 2011/12/03(土) 07:49:57.29 ID:NOOLkeZo0
少女「じゃあさ、これ読んでみてよ」
少女「そんなこと言わずにさ、ね? ユイちゃんからの手紙だから」
少女「内容はわたしも知らない」
少女「でも、さっきユイちゃんが自分で渡しに来てたんだ」
少女「あの恥ずかしがりやのユイちゃんがだよ?」
少女「大事なお話だと思うな」
・
・
・
105: 2011/12/03(土) 07:50:38.54 ID:NOOLkeZo0
少女「あれから五日がたったよ」
少女「あの後ユウ君は、ちゃんと家に帰ってくれたんだ」
少女「手紙にはなにが書いてあったって? それは分からないよポッチャ」
少女「でもね、大体予想はつくな」
少女「でも秘密。えへへー」
少女「あ、二郎さんの準備ができたみたい。行ってくるねポッチャ」
107: 2011/12/03(土) 07:51:33.38 ID:NOOLkeZo0
少女「おはようございます、新聞です」
少女「あ……ひ、久しぶりだねユウ君」
少女「あれから元気にしてた……?」
少女「あの、その、ごめん」
少女「え? もういい?」
少女「……何かあった?」
109: 2011/12/03(土) 07:52:14.44 ID:NOOLkeZo0
ユウ君は『男がユイの勉強を見てると聞いた時、嫌な思いがした』と言った。
そして、仏頂面で、『だからもういい』とも
それを聞いて、わたしは少しだけ安心したのだ。
そして、数カ月後――
110: 2011/12/03(土) 07:53:18.24 ID:NOOLkeZo0
少女「あ、二郎さん、ちょっととめて」
少女「あそこを歩いてるの、ユウ君とユイちゃんじゃないですかね?」
少女「あ、やっぱりそうだ」
少女「一緒に登校してるんですね」
少女「ふふ、お似合いのカップルです」
少女「……これからいろいろあると思うけど、お幸せに」
少女「もういいですよ、二郎さん。出してください」
少女「いいですねえ、ああいうの。こころがほっこりします」
少女「わたしたちもああいうカップルになれたらなー」
少女「小突かないでくださーい」
111: 2011/12/03(土) 07:54:26.64 ID:NOOLkeZo0
少女「え? なんでまだわたしと二人乗りしなけりゃならないんだって?」
少女「だって、今度は二郎さんのバイクが故障じゃないですか」
少女「歩いていく? そんなの疲れますよ」
少女「それにわたしとくっついていられるチャンスなんてそうそうないですよ?」
少女「チャンスはしっかり生かさないといけません」
少女「そんなチャンスはドブに捨てる? バチが当たりますよ!」
少女「まあ、今当たってるのは、わたしの胸ですけどね」
少女「ふふー、当ててんのよーっと」
少女「わ、ちょっとバランス崩さないでくださーい」
少女「よしゴーゴー!」
受験生編 おわり
引用元: 配達少女「お届け物でーす」
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