140: 2011/12/03(土) 08:14:42.73 ID:NOOLkeZo0

配達少女「お届け物でーす」
配達少女「お届け物でーす!お爺さん、お元気ですか?」
配達少女「おはようございまーす、新聞でーす」
青年「お届け物ーっス」



少女「それ」ファイアー!

少女「よっと」アイスストーム!

少女「もういっちょ」ダイアキュート!


 ドスーン!


少女「どうです、見ましたか!」


 <バヨエ~ン!


少女「へ?」


 <バヨエ~ン! バヨエ~ン! バy……


少女「ひ、ひええ!」


 ばたんきゅ~
江戸前エルフ(8) (少年マガジンエッジコミックス)

141: 2011/12/03(土) 08:15:35.04 ID:NOOLkeZo0

少女「相変わらずでたらめに強いですね……」

少女「お前が弱いだけ? そんなことないですよ!」

少女「もう何回やりましたっけ? 二十三回戦? どうりで目がしぱしぱするわけです」

少女「ちょっと散歩行きませんか?」

少女「面倒くさい? そんなこと言ってると今に身体にカビが生えちゃいますって!」

142: 2011/12/03(土) 08:16:17.87 ID:NOOLkeZo0

少女「~♪」

少女「風が気持ちいいねえポッチャ」

少女「――どうです、日射しを浴びて歩くってのも悪くないでしょ?」

少女「川のせせらぎも聞こえていい気分です」

少女「こんなにいい散歩コースがあるなんて、恵まれてますよね」

少女「――あ、ちょうちょ」


 ヒラヒラ……

143: 2011/12/03(土) 08:17:01.77 ID:NOOLkeZo0

少女「二つ折りの恋文が、花の番地を探してる。ですね」

少女「え、知らないんですか?」

少女「二つ折りの恋文ってのはちょうちょの暗喩です。
   ほら、まるで二つに折ったお手紙がどこかのお家を探してるみたいでしょ?」


 ヒラヒラ……ピト


少女「あ、わたしの服に止まりましたよ」

少女「誰からのお手紙でしょうね」

144: 2011/12/03(土) 08:18:19.20 ID:NOOLkeZo0

 フワ……ヒラヒラ


少女「ちょうちょさん、ばいばーい」

少女「……」

少女「もしあのちょうちょさんがラブレターだったら」

少女「二郎さんからがいいなーなんて」チラ

少女「いたっ」

少女「叩かないでくださいってば」

少女「全くかわいくないんですから」プイ

145: 2011/12/03(土) 08:19:24.85 ID:NOOLkeZo0

少女「さて、どこまで歩きましょうか?」

少女「もう帰る?」

少女「まだ歩き始めたばかりじゃないですか」

少女「もうちょっと付き合ってください。いいでしょ?」ススス ギュ

少女「駄目です。後五分だけ」

少女「じゃあ、行きましょうか。ふふ」


「ある日」 おわり



147: 2011/12/03(土) 08:21:04.09 ID:NOOLkeZo0

少女「うっ……わぁ。おっきいお屋敷」

少女「この町にこんなお家があったんですねえ」

少女「……」

少女「きっと中では貴族的な人々が、それはもう貴族的に貴族貴族してるんでしょうねえ……」

少女「……素敵」ウットリ

少女「――と。いけないいけない、ちゃんとお仕事やらなくちゃ」ピンポーン!

少女「お届け物でーす!」

148: 2011/12/03(土) 08:21:58.75 ID:NOOLkeZo0

少女(チャイムを押して出てきたのはお人形さんのような女の子でした)

少女(綺麗な子だなあ)

少女「あ、すみません見とれてました。いえ、こちらのことです」

少女「え、そちらも? はあ、そうですか?」

少女「よくわかりませんがこちらがお届け物です、どうぞ」

149: 2011/12/03(土) 08:22:52.05 ID:NOOLkeZo0

少女(配達物を手渡したその時、その瞬間でした)

少女(その娘とわたしの手が触れ合いました)

少女(彼女の手はひんやりと冷たかったです)

少女(時が止まったように感じました)

少女(わたしと彼女は少しの間見つめ合い――)

少女「……」ゾワワ

少女(わたしは悪寒を背筋に感じました……)

150: 2011/12/03(土) 08:23:52.05 ID:NOOLkeZo0

少女「ええと……」

少女「じゃ、じゃあ、わたしはこれで」

少女「え、わたしの勤務先ですか?」

少女「○○郵便局ですけれど……聞いてどうするんです?」

少女「別に? はあ……?」



少女「――ということがあったんですよ二郎さん」

少女「二郎さん?」

少女「聞いてました? ……ならいいんですけど」

少女「なんだったんでしょうねあれは」

少女「何だか嫌ぁな予感がします……」

少女「二郎さん?」

少女「……やっぱり聞いてなかったでしょ」

151: 2011/12/03(土) 08:24:50.87 ID:NOOLkeZo0

<翌朝>


少女「おはようございまー……す?」

少女「……あれ?」

少女「あなたは昨日のお屋敷の……やっぱりそうですよね? なんでここに?」

少女「……」

少女「はい? 今日からここに勤めることになった?」

少女「ちょっと局長、どういうことです? 局長。局長ってば!」

少女「なんで無視するんですかー!」

152: 2011/12/03(土) 08:25:37.03 ID:NOOLkeZo0

少女「なんだか分かりませんが、わたしが先輩として仕事を教えることになってしまいました……」

少女「局長には逆らえません。年功序列社会の癌です、縦型システムの膿です」

少女「……ああ、いえ。ただの独り言ですー」

少女「しっかり掴まっててくださいねー、バイクは危険ですからー」

少女「え、いや、そんなにひっつかなくとも……」

少女「耳に息吹きかけなくともー!」ゾワワ

153: 2011/12/03(土) 08:26:41.97 ID:NOOLkeZo0

少女「……ハァ」グッタリ

少女「なんだか今日は疲れました……」

少女「あ、二郎さん。聞いてくださいよ」

少女「いえ、今日から同僚になったあの娘のことなんですけどね」

少女「違います。仕事ののみこみはいいですよ。優秀です。ですが……」

少女「なんだかやたらとわたしに絡んで、いや絡みついてくるんです」

少女「はい、それはもうぐねぐねと」

154: 2011/12/03(土) 08:27:28.66 ID:NOOLkeZo0

少女「バイクの二人乗りでくっついてくるのはまあ分かります」

少女「しっかり掴まってないと落ちちゃいますしね」

少女「でもおりてからもずっとくっついてくるんですよ」

少女「あててんのよ」

少女「みたいな」

少女「……あててんのよ、といえば最近の子は発育がいいんですね」

少女「はい、おっきくてやわっこかったです……」ショボン

少女「……」ペタペタ

少女「……ハァ」

155: 2011/12/03(土) 08:28:34.91 ID:NOOLkeZo0

少女「お前はそれくらいがお似合い? それ慰めてませんよね?」

少女「……まあいいです」

少女「ともかくあの娘はちょっと変です。何考えてるのか分かりません」

少女「なんなんでしょうか」

少女「そういえば局長もなんか変です。裏金でも受け取ったんでしょうかねえ」

少女「はい、まあ、これからどうなるかにもよりますね。いよいよ変ならそのとき対処すればいいです」

少女「じゃあわたしはこれで失礼しますね。お疲れ様ですー」

156: 2011/12/03(土) 08:29:16.43 ID:NOOLkeZo0

<数日後>


少女「ひ~んそんなにくっつかないでー!」

少女「ちゃんと荷物持ってくださいよう……」

少女「わ、わたしは荷物じゃありません!」

少女「持ち上げないで! 胸に手ぇ当たってますー!」

少女「わ~ん放してくださいよう!」

157: 2011/12/03(土) 08:30:30.99 ID:NOOLkeZo0

少女「今日もお疲れさまでした……」

少女「ええ、ええ、本当疲れましたとも……毎日こんなノリじゃすり減ります……ハァ」

少女「……ところで」

少女「ねえねえ二郎さん」

少女「なんだ、じゃないですよ……ちょっともう、忘れちゃったんですか?」

少女「ほら、今日は一緒に食事に行く約束してたじゃないですか!」

少女「しまった、みたいな顔しないでくださいよ!」

少女「約束は約束ですからちゃんと守ってもらいますよ」

少女「だからほら、出発出発!」

158: 2011/12/03(土) 08:31:13.00 ID:NOOLkeZo0

<ファミレス>


少女「わたしはハンバーグでいきます」

少女「子供っぽい?」

少女「なんと言われても揺るぎません。ここは断固ハンバーグ定食です」

少女「大体そういう二郎さんは何にするんですか?」

少女「鮭のムニエル?」

少女「二郎さんには上品すぎますね」

少女「おっと。当たりませんて」

少女「……むやみやたらと叩く癖は直した方がいいですよ?」

159: 2011/12/03(土) 08:31:56.96 ID:NOOLkeZo0

少女「あ、ハンバーグ定食はわたしですー」

少女「で、ムニエルはそっち」

少女「ミートソーススパゲティは……スパゲティ?」

少女「……?」

少女「すみません、オーダー間違えてませんか?」

少女「あってる? 間違いなくここ?」

少女「おかしいですね」

少女「――ってわああああああ!?」

少女「あ、あなたいつの間にテーブルの下に!?」

少女「そこで何やってるんですか!?」

少女「白? 何のことですか?」

少女「と、とにかく早くそこから出てくださいよ!」

160: 2011/12/03(土) 08:32:40.51 ID:NOOLkeZo0

少女「すみません、この娘はウチの同僚です。もう粗相はさせませんので。ごめんなさい」

少女「あ、スパゲティは彼女のですか。どうも」

少女「――ふう」

少女「あなたは本当に何のつもりですか……」

少女「ご飯が冷める? まあ、食べますけども」

少女「いただきまーす」

少女「……」モグモグ

少女「で? なんであなたがここに?」

少女「わたしが二郎さんと一緒に出てくのが見えたからつけてきた?」

少女「何でですか……」

少女「取られると思った? 言ってる意味が良く分かりませんけれど」

161: 2011/12/03(土) 08:33:24.04 ID:NOOLkeZo0

少女「それにしても」

少女「せっかく二人きりになれる貴重な時間だったのに……」ホゥ……

少女「いえ、なんでもないです」

少女「まあ、同僚の食事会と思えばなんてことありませんね」

少女「あ、二郎さんトイレですか? わかりました」

少女「……」

少女「気のせいでしょうか。二郎さんがいなくなる前と後とであなたとの物理的距離が変わったような」

少女「近付き過ぎです」

少女「ひいてはくっつきすぎです」

162: 2011/12/03(土) 08:34:07.93 ID:NOOLkeZo0

少女(うう、暑い。ちょっと離れてもらえないかなあ……)

少女「……」

少女「そういえば二郎さん遅いですねえ」

少女「え、帰った? 二郎さんが?」

少女「携帯に連絡があった?」

少女「わたしの方には何もないのに?」

少女「え、ちょっと。おかしいですって。だって食事だってまだ残ってますよ?」

少女「あ、メール……」


『ごめんね、俺ちょっと先に帰るよ。お休みー(^∀^)ノシ』


少女(誰ッ!?)

163: 2011/12/03(土) 08:35:14.00 ID:NOOLkeZo0

少女「いやいやいやいや。おかしいですって」

少女「二郎さんはもっとぶっきらぼうで顔文字なんて使いませんもん」

少女「コレジャナイ感が半端ないです」

少女「た、確かに二郎さんの携帯からで間違いないですけれど……」

少女「うーん?」

少女「……」グー

少女「まあ、今はいない二郎さんより目の前のハンバーグですよね」

少女「はいそうです。明日訊けばいいですもんね」ハグハグ

164: 2011/12/03(土) 08:36:28.22 ID:NOOLkeZo0

<翌日>


少女「え? 二郎さんが休み?」

少女「しかも一週間ぐらいの休暇?」

少女「……わたしになにも言わずに?」

少女「おかしいですよ局長。二郎さんはかなり適当に生きてますが、仕事には熱心ですし」

少女「間違いないです。何かの陰謀です」

少女「ふ、ふざけてないです! きっと宇宙人が二郎さんを!」

少女「え? 時間がまずい?」

少女「あ! 行ってきまーす!」

165: 2011/12/03(土) 08:37:10.13 ID:NOOLkeZo0

 ブロロロ……


少女「相変わらず背中に天然のクッションを感じます」

少女「うらやましくなんてありませんよ決して」

少女「でも分けてくれるなら引き受けてあげてもいい感じです」

少女「……言っててむなしくなりました」


 キキッ――!


少女「じゃあ早速仕事を始めますか」

少女「……いやあの放してくださいよ。下りられません」

166: 2011/12/03(土) 08:37:52.37 ID:NOOLkeZo0

 ピンポーン!


少女「お届け物でーす」

少女「はいおはようございます」

少女「ではこちらにサインお願いしまーす」

少女「――え? こっちの娘は誰かって?」

少女「違いますよ、姉妹じゃありません。わたしの後輩です」

少女「なんですか?」

少女「わたしが年下に見えた? どういう意味ですかー!」

167: 2011/12/03(土) 08:38:59.00 ID:NOOLkeZo0

少女「今日もお疲れさまでしたー」

少女「二郎さん……はいないんでしたね」

少女「……ハァ」

少女「!」

少女「い、いつの間に後ろにまわってたんですか」

少女「あまり胸を押しつけないでくださいよ。悲しくなりますから」

少女「あ、ちょっと! どこ触ってるんですか!」

少女「んっ、揉まないでください!」

少女「ちょっ、あっ……こらー!」

168: 2011/12/03(土) 08:39:54.50 ID:NOOLkeZo0

少女「あの日は追い払えましたが」

少女「なんだか日ごとにセクハラがエスカレートしています」

少女「いや、女の子同士ですからセクハラかどうか怪しいですが」

少女「なんだかあの娘の意図が分かってきました」

少女「……」

少女「わたしこのまま食べられちゃうんでしょうか……」

少女「うう、二郎さん……」

169: 2011/12/03(土) 08:40:37.11 ID:NOOLkeZo0

少女「――ひゃん!」

少女「せ、背筋を撫でないでくださいよう!」

少女「耳を舐めるのも無しです!」

少女「き、キスも駄目……」

少女「ちょ、あ……」

少女「わ~ん!」


     ・
     ・
     ・


少女「うう、もみくちゃです」

少女「一線は越えてません。越えてませんが危ういです正直」

少女「じ、二郎さん早く帰ってきてー!」

170: 2011/12/03(土) 08:41:20.80 ID:NOOLkeZo0

<一週間後>


少女(うん、まずい)

少女(非常に、まずいです)

少女(壁際に追い込まれて、しかもこの娘目が据わってます)

少女「あ、の……?」

少女(何も言ってくれません……これはもうチェックメイトなんでしょうか)

少女「さらばわたしの純潔……」

少女(目をぎゅっとつぶって――)

171: 2011/12/03(土) 08:42:04.78 ID:NOOLkeZo0

少女(次に目を開けた時には)

少女「あれ?」

少女(誰もいない?)

少女「あのー……?」

少女「……」

少女「あれ?」

172: 2011/12/03(土) 08:42:47.08 ID:NOOLkeZo0

     ・
     ・
     ・


少女「わたしのデスクの上にお手紙があったよポッチャ」

少女「あの娘、わたしのこと……まあつまりそういうことだったみたい」

少女「どうしてもそういう関係になりたいから、局長に頼みこんだんだってさ」

少女「ちなみに裏金とかはなかったみたい」

少女「局長もそういうことは言ってくれれば良かったのに」

少女「あの娘は今はアメリカにいるらしいよ。両親に言われて、留学しなきゃならなかったとか」

少女「だから、出発までの一週間だけ一緒にいたかったんだって」

少女「ちょっと邪険にしちゃったかな……」

少女「帰ってきたらまた会ってくれますか、って」

少女「もちろんだよねーポッチャ。でも、もうセクハラは勘弁かな」

少女「友達としてならまた一緒にお仕事したいね」

173: 2011/12/03(土) 08:43:29.42 ID:NOOLkeZo0

少女「あ、お久しぶりです二郎さん」

少女「旅行だったんですってね」

少女「黒服の人にチケットもらって。ちょっと強引だったそうですけれど」

少女「さすがお屋敷といったところでしょうか」

少女「お母さんは元気でした?」

少女「そうですか」

少女「また今日から頑張りましょうね」

少女「あの娘が帰ってくるまでさぼれませんもん」

少女「それじゃまた仕事上がりに!」


百合娘編 おわり

引用元: 配達少女「お届け物でーす」