1: ◆.FkqD6/oh. 2013/10/27(日) 23:45:44.00 ID:f62w+LDW0

3: 2013/10/27(日) 23:48:19.45 ID:f62w+LDW0

――撮影スタジオ前



P「ふぅ、やっと終わったか」



P「打ち合わせも無事に終わったし、一安心だな」



P「しかし、公用車が使えないってのも不便だなぁ……」



P「まあ、いいか。それほどの距離でもないし、帰りも歩こう」






ポツポツ……



P「……ん?」



サァァァァァ……



P「やばっ、雨か……!?」



ザァァァァァ……!!



P「かなり強いな……」



P「タクシーは……こんな時に限ってか、仕方ない……!!」


4: 2013/10/27(日) 23:49:38.00 ID:f62w+LDW0

――事務所



サァァァァァ……



池袋晶葉「む……雨か」



晶葉「……そうか」



晶葉「……」カチャカチャカチャ……






ザァァァァァ……!!



晶葉「……」キリキリキリ……



晶葉「雨脚が強いな……」



晶葉「大丈夫、だよな……」


5: 2013/10/27(日) 23:51:05.34 ID:f62w+LDW0

ザァァァァァ……



晶葉「……」カチャカチャカチャ……



晶葉「ふむ……」カチャカチャ……



晶葉「……」ピタッ



晶葉「本当に、大丈夫だよな……?」






晶葉「……」ドクンドクン……



晶葉「……まさか、な」




晶葉「むぅ……」スッ





prrrr prrrr……


6: 2013/10/27(日) 23:53:53.28 ID:f62w+LDW0

――事務所、入り口




P「はぁ……はぁ……まるでスコールだ」



P「タクシーもいなかったとはな……はぁ、全身ずぶ濡れだ」



P「鞄……大丈夫、だよな?」



P「書類は……あー、かなり酷いな……」






ガチャッ



P「只今帰りまし……」



晶葉「P……」ギュッ



P「……ただいま、晶葉」


7: 2013/10/27(日) 23:55:14.92 ID:f62w+LDW0

P「携帯……雨で駄目になってたのか」



晶葉「……心配したんだぞ」



P「はいはい。悪かったよ」



晶葉「全く……人のことは、心配するくせに」



P「そうだな」



晶葉「……タクシーくらい、呼べばいくらでも来ただろう」



P「……確かに」



晶葉「君は……本当に、馬鹿だな」



P「そうか。光栄だよ」


8: 2013/10/27(日) 23:56:25.71 ID:f62w+LDW0

晶葉「いつもそうだ、私達のことは散々心配するくせに……」



P「それだけ、大切だからな」



晶葉「だったら、もう少し自分自身に気を使いたまえ。風邪でも引いたらどうするんだ」



P「その時はその時さ」



晶葉「……君の事が、心配なんだぞ」



P「……」



晶葉「あまり、心配させないでくれ……」グスッ



P「……そうだな。悪かったよ」





P「……晶葉、そろそろ離れてくれないか」



晶葉「……駄目だ」ギュッ



P「流石に、濡れたままじゃ本当に風邪を引く」



晶葉「……っ!す、すまない……」


9: 2013/10/27(日) 23:58:33.83 ID:f62w+LDW0

晶葉「……」



P「……どうした、晶葉」



晶葉「いや……なんでもない。大丈夫だったか」



P「ああ。シャツまで濡れちまってたけどな。着替えくらい常備してる」






P「……机、半分返せよ」



晶葉「……あ」



P「俺の椅子は、使っていいから」



晶葉「……すまない、P」


10: 2013/10/27(日) 23:59:48.89 ID:f62w+LDW0

ザァァァァァ……



P「雨、止まないな」



晶葉「……そうだな」






カタカタカタ……



カチャカチャカチャ……



P「……」



晶葉「……」





ザァァァァァ……



11: 2013/10/28(月) 00:01:40.91 ID:vJF/c8Dr0

カランッ



晶葉「……あっ」




ササッ



P「あっ……」スッ



晶葉「む……」スッ



晶葉「……君が拾ってくれないか」



P「なんで俺が」



晶葉「……いや、なんでもない」


12: 2013/10/28(月) 00:02:58.81 ID:vJF/c8Dr0

P「ふむ……」



ヒョイッ



P「ほら」



晶葉「……ありがとう、P」



P「自分で拾っても、良かったのにな」



晶葉「いや……何故だか、君に拾ってもらいたかったんだ」



晶葉「どうしてかは……私自身、上手く説明ができないのだが」



P「……いいんじゃないか?」



P「たまには理屈に合わなくたって、それでいいだろ」



晶葉「……確かにな」


13: 2013/10/28(月) 00:05:52.41 ID:vJF/c8Dr0

ザァァァァァ……



晶葉「……」



P「……」



晶葉「……なあ、P」



P「どうした?」



晶葉「ネジ、締めてくれ」



P「……ああ」





キュッ……キュッ……



P「……ところで、こいつは?」



晶葉「……ウサちゃんロボのプロトタイプさ」



P「プロトタイプ?」


14: 2013/10/28(月) 00:11:43.00 ID:vJF/c8Dr0

P「そういや、どうしてプロトタイプを?」



晶葉「この子は、思い入れのあるロボだからだよ」



P「思い入れ?」



晶葉「ああ……ウサちゃんロボは、初めて誰かと作ったロボだからな」



P「そうだったのか」



晶葉「ああ。ウサミンのオーダーで作ったものだし、この子以降のウサちゃんロボは全てウサミンのデザインだ」



晶葉「……それに、この子は」



P「ん?」



晶葉「今こうして、君の手で生まれ変わったからな」



P「……そうだな」





キュッ……キュッ……



キュッ



15: 2013/10/28(月) 00:12:36.38 ID:vJF/c8Dr0

晶葉「そんな風に、思い入れのある子だからな……」



晶葉「時々、こうやって手入れをしているんだ」



P「そうだったのか」



晶葉「……本当は、こんな念入りな手入れなんていらないんだがな」



晶葉「この子には……自律起動するプログラムを入れていないんだ」



P「……つまり、どういうことだ?」



晶葉「今のウサちゃんロボ達みたいに、自ら動くことはない、ってことさ」



晶葉「……いつかは、動かしてあげたいんだがな」



P「プログラム、入れないのか」



晶葉「ああ」


16: 2013/10/28(月) 00:14:53.68 ID:vJF/c8Dr0

晶葉「……もっと、ちゃんとしたプログラムを持たせてあげたいんだ」



P「現時点で、ウサちゃんロボのプログラムは凄いと思うんだがな」



晶葉「まあ、な。ただ、あれはまだまだ未完成な部分が多いんだ」



晶葉「確かに、数台はおかしな挙動を見せるが……本来なら、命令を受け取ってそれに答えているだけなんだ」



晶葉「つまり、指示待ちということさ。自ら動くとは言ったが、自分で考えて動いている訳ではないんだよ」



P「じゃあ、月見の時のウサちゃんロボとかは」



晶葉「……私にもさっぱりだ。偶然ああなった、としか私には言えないよ」



P「そうだったのか……」



晶葉「本当に、偶然の産物さ。下手にいじるのも気が引けるから、あのままにしているんだ」


17: 2013/10/28(月) 00:18:21.81 ID:vJF/c8Dr0

晶葉「プログラムについては、私は完璧じゃないからな」



晶葉「その辺は泉に頼めば作ってもらえるのかもしれないが……」



P「自分の手で作りたい、か」



晶葉「ああ。みんなで作るのもいい事だが、やはり自分でプログラムを打ってこそだからな」



晶葉「だから……誰かと作ったロボなのにおかしな話だが、この子は私の手で完成させたいんだ」



晶葉「言わば、私のアイドルとしての原点となるロボ、だからな」



P「なるほどな」



晶葉「この子は……私が一人じゃないと、教えてくれたんだ」






P「本当に、いいお母さんだな」ナデナデ



晶葉「わわっ、い、いきなり何をする!」



P「褒めてるだけさ」



晶葉「ふ、ふんっ……」フイッ



18: 2013/10/28(月) 00:19:32.26 ID:vJF/c8Dr0

P「まあ、少し位いいだろ」



晶葉「……いつものことだからな」



P「それだけ、俺も信頼されてるってことか」



晶葉「ふん……好きに言っていたまえ」



P「ははは、ありがとな」



晶葉「全く、君は不思議な人だな」






晶葉「……本当に、不思議な人だよ」



晶葉「やはり、君以外に助手はつとまらない」



P「よしてくれ、いつ聞いてもむず痒い」



晶葉「君が私の頭を撫でるのと同じことさ。ふふん」


19: 2013/10/28(月) 00:21:31.22 ID:vJF/c8Dr0


ザァァァァァ……



カタカタカタ……



P「ん……また、ミスか」



晶葉「……」ジーッ



晶葉「……ふむ」





カタカタカタ……



コトッ



P「ん?」



晶葉「コーヒーでも、どうだ」



P「ああ、ありがとう」


20: 2013/10/28(月) 00:24:03.94 ID:vJF/c8Dr0

P「コーヒー、淹れられるんだな」



晶葉「君は失礼なやつだな」



P「素直に生きているだけさ」



晶葉「嘘をつけ……と言いたいが、嘘じゃないんだろうな」



P「アイドルに嘘をつく必要なんて、ないだろ?」



晶葉「……そうだな」






晶葉「次は、ウサちゃんロボに嘘発見器でも搭載するか」



P「何のためにだよ……」



晶葉「いや、何かと使えるかもしれんぞ?君が嘘をついているかどうかとか、イタズラの犯人とか……」



P「イタズラの時点で、もう決まってるようなものだろ」



晶葉「う……たしかにそれは、否定出来ないな」


22: 2013/10/28(月) 00:25:42.35 ID:vJF/c8Dr0

晶葉「……コーヒーの淹れ方は、ちひろに教えてもらったよ」



P「へぇ、ちひろさんが」



晶葉「ああ。おかげで笑われたが」



P「なるほど……」ゴクッ



P「……うん、練習したんだな」



晶葉「もっと、素直に褒めてくれてもいいと思うぞ」



P「予想してた以上に、良いと思う。流石だな」



晶葉「ふふん、この天才に不可能はないのだよ」



P「ちなみに、ラボの冷蔵庫は」



晶葉「い、いや待て。今は散らかっていて入れないぞ」



P「……よく頑張ったな」ナデナデ



晶葉「ふん。私にだって、不得手なものくらいあるさ……」


23: 2013/10/28(月) 00:27:12.96 ID:vJF/c8Dr0


ザァァァァァ……



カタカタカタ……



P「よし、これで終わりだな」



晶葉「お疲れ、P」



P「ありがとな……ふぁぁぁ……」



晶葉「……大丈夫か?疲れて見えるぞ」



P「いや……大丈夫、じゃないな……視界が霞む」



晶葉「仮眠室にでも行くがいい。どうせこの雨では、私は帰れないしな」



P「……タクシー、呼べるだろう?」



晶葉「……馬鹿と天才は、紙一重さ」



P「……そうか」


24: 2013/10/28(月) 00:29:34.17 ID:vJF/c8Dr0

P「あー……駄目だ、ソファでいいや」ゴロンッ



晶葉「ま、待てP。仮眠室の方が……」





P「ん……」スゥ……



晶葉「む、寝てしまった……ようだな」



晶葉「全く……」






晶葉「仮眠室……いや、前に頼子から聞いたな。この引き出しに……あった」



バサッ



晶葉「自分の机に毛布など用意して……仕事以外では、君は一体何をしているんだ」



晶葉「だが……私が研究に没頭するのと同じように、君も仕事に没頭しているのかな」



晶葉「……馬鹿なやつだよ、全く」


25: 2013/10/28(月) 00:31:24.35 ID:vJF/c8Dr0

ザァァァァァ……



晶葉「む……」ジーッ



晶葉「P……半分ほど飲んでも、眠気には勝てなかったのか」



晶葉「……ふむ」






晶葉「……なあ、P?」



晶葉「……うん。寝てるな」



スッ



ゴクッ



晶葉「……苦いな」



晶葉「さて、砂糖とミルクでも入れるか……」


26: 2013/10/28(月) 00:33:20.90 ID:vJF/c8Dr0


ザァァァァァ……



晶葉「しかし……こんな雨の日でも」



晶葉「時には、いいものだな。ふふん」



晶葉「なあ、P」






晶葉「ふふっ、まるで子供みたい顔だな」



晶葉「……しかし、君ってやつは本当に、わかっていないな」





晶葉「君がソファに横になっていては、その……」



晶葉「私の寝る場所が、ないじゃないか」





晶葉「……Pの、ばか」




ザァァァァァ……




27: 2013/10/28(月) 00:34:04.99 ID:vJF/c8Dr0
以上で、終わりです。

ありがとうございました。

29: 2013/10/28(月) 01:41:38.84 ID:PV9wbyT70
しっとりとした雰囲気がとても良かった
乙です

30: 2013/10/28(月) 07:07:28.23 ID:76rULyXZo

晶葉かわいい

引用元: モバP「雨の日の天才」