64: 2011/12/05(月) 16:23:53.06 ID:2F20KLx80
これは10年前僕が小学校の時の話だ。
多分事実よりも話が大きくなってしまうかもしれない。
ただ、これ以上胸に秘めるのはつらいから。

あいつが氏んだのは俺のせいだから。
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氏体が見つかるのは匂いが我慢できなくなるからだという。
夏の腐乱氏体などは引っ越しを考えるレベルだそうだ。
だけどあの時の冬は

氏体が凍るほど寒かった。

66: 2011/12/05(月) 16:27:10.55 ID:2F20KLx80
僕は当時小学六年生だった。

成績は普通。スポーツはサッカーをしていた。

あいつ、俺の親友はいい奴だった。勉強は出来なかったがスポーツは出来た。

帰り道はいつも一緒。毎日のようにどっちかの家でご飯前まで遊ぶのが日課だった。

68: 2011/12/05(月) 16:29:57.46 ID:2F20KLx80
だけどあの子が来てからそんな日常は崩れた。

男の友情が崩れるのは大体女がらみと決まっている。

あいつの家の隣に女の子が引っ越してきた。

そしてその子は10年後の今、俺の彼女になっている。

72: 2011/12/05(月) 16:34:29.10 ID:2F20KLx80
話を戻そう。

当時、俺達だけで遊んでた輪の中にいきなり女の子が入ってきたのだ。

正直何で女なんかと遊ばなきゃいけないんだよという思いはあった。

だが、俺の思いとは裏腹にあいつとあの子は一緒に遊ぶのが楽しみになっていたようだ。

このとき季節は秋。まだ少し暑いのにあの子はいつも長袖を着ていた。

78: 2011/12/05(月) 16:39:51.16 ID:2F20KLx80
きっかけは些細なことだった。

三人でサッカーをしていた時、あの子が転んでしまった。

肘をすりむいたようだが、自分で家に帰ってから手当をすると言ってきかなかった。

あの時あいつがこの子の袖をまくらなければまた違った未来があったのだろうか。

だが今となってはもう遅い。

それにあいつの命と引き換えにこの子の今の笑顔があるのだから。

79: 2011/12/05(月) 16:44:16.77 ID:2F20KLx80
多分予想がつくだろうがあの子の腕にはやけどがあった。

勿論片方の腕なんてもんじゃない。右手にも左手にも、目につかないところにやけどとあざがいっぱいだった。

当時の僕達は何も知らなかった。ただ、だれにも言おうとしなかった。

それは警察が何もしてくれないから。

そして先生もきっと何もしてくれないから。

81: 2011/12/05(月) 16:48:17.02 ID:2F20KLx80
僕はいじめられていた。先生は何もしてくれなかった。

あいつの親父は警察に逮捕された。えん罪だったのに。

だから僕達は大人を信用してなかった。

だからこの子のために自分たちだけで何かをしようと決めたんだ。

82: 2011/12/05(月) 16:51:41.75 ID:2F20KLx80
11月。少し肌寒くなってきた。あの子は相変わらず長袖だ。

僕たちは少しずつ何があったかを聞き出していた。

お母さんとお父さんの仲が悪い事。

お父さんは子どもに無関心な事。

お母さんはふだんは優しいけどちょっとした事で怒る事。

・・・怒る時はアイロンを手に持ってる時が多い事。

84: 2011/12/05(月) 16:56:11.19 ID:2F20KLx80
今でこそ児童相談所というものの存在は知っている。

でもあの当時相談しても余計ひどくなっただろう。

今よりも権限が低く、子どもからの通報は誇張されてるから話半分に聞けと言われていたような機関だ。

僕たちは幼かった。ドラマや漫画の主人公が正義だった。

大人を子どもが脅してどうにかなると本気で思いこんでいた。

85: 2011/12/05(月) 16:59:04.87 ID:2F20KLx80
あの子が家で何かされないためには根源を断たなければいけない。

でも警察に通報すれば家庭は壊れてしまうし、もしかしたら転校してしまうかもしれない。

だから僕達はあの子のお母さんを脅す事にした。

あの子の家の押し入れの狭さと、インスタントカメラのシャッター音は一生忘れない事だろう。

88: 2011/12/05(月) 17:01:54.25 ID:2F20KLx80
僕たちがとった作戦は虐待の現場を押さえる事。

次にそれをネタに母親を脅して二度と虐待をさせない事。

たったそれだけだった。

虐待の現場を押さえることには成功した。

でもあんなに大人がなりふり構わず逆上するとは思ってもみなかった。

91: 2011/12/05(月) 17:05:56.39 ID:2F20KLx80
あいつは馬鹿だった。

例え女性でも大人の女性と僕たちとでは力でねじ伏せる事は不可能だと小学生でも分かるはずなのに。

あの子が殴られても、家から出て周りの大人に助けを呼ぶべきだったんだ。

もしかしたらそうしようと思って階段にいったのかもしれない。

でもあいつが氏んだ今、あの時のあいつの気持ちはもう永遠に分からない。

93: 2011/12/05(月) 17:09:26.10 ID:2F20KLx80
母親は周りにはいいお母さんだった。周りの目が一番大事だったのだろう。

助けを呼ばれると思ったのか、階段に行ったあいつにとっ組みかかっていった。

今でも俺は罪悪感にさいなまれる。

確かに俺は母親だけを突き飛ばしたんだ。

でも、あの女のては、あいつの服をしっかりつかんでいたんだ。


94: 2011/12/05(月) 17:12:51.05 ID:2F20KLx80
走馬灯とよく言うが未だにその言葉の語源がよくわからない。

走る馬の灯りが何であんな鮮明な映像を思い出す事に例えられるんだろうか。

あんな・・・友達が一段ずつ落ちていく映像を思い出す事と。




95: 2011/12/05(月) 17:14:32.78 ID:2F20KLx80
これは氏体を隠す話だ。だからきっともう予想がついているだろう。

隠した氏体は二体。


あいつと、

あの子の母親の氏体だ。

97: 2011/12/05(月) 17:17:58.03 ID:2F20KLx80
何で教室に氏体を隠したか?多分近くにそれしか思いつく場所がなかったからだろう。

あと、あいつのいない学校には行きたくなかったからだと思う。

それに結果論だけど警察から隠すには一番都合がよかったのかもしれない。

98: 2011/12/05(月) 17:21:42.05 ID:2F20KLx80
まず行方不明になるまでに一週間以上かかるのはどうかと思う。

例え夫婦間が冷え込んでいたとしても。

その点あいつはまだ愛されていたと思う。

次の日には学級集会が開かれたから。

100: 2011/12/05(月) 17:23:17.66 ID:2F20KLx80
でも、学級集会の時あいつはいなかったわけじゃない。

ちゃんとそこにいたんだよ先生。



                     貴方の足元に。

101: 2011/12/05(月) 17:26:54.93 ID:2F20KLx80
多分殆どの学校がそうだと思うけど、教壇の下の床は生徒の机がある床よりも一段高く作られていると思うんだ。

僕たちの学校がそうだったように。

木で出来た床の上に教壇があり、そしてその下には男女の氏体が眠っていた。

102: 2011/12/05(月) 17:30:02.53 ID:2F20KLx80
6年生の学級は1階にある。なぜか高学年になると1階に回されるそうだ。

そうしたのが誰か知らないけどありがとうと言いたい。

さすがに2階のコンクリの床をくりぬくよりは、木の板を切る方がずっと簡単だったから。


104: 2011/12/05(月) 17:32:42.68 ID:2F20KLx80
なんで氏体が腐らなかったんだろうって?

運が良かった以外には一応努力もしたんだ。

冬の寒い日なのに僕は毎日スーパーでアイスを買ってたんだ。

おこずかいは多分アイスにしか使わなかっただろう。

でもそのかわりドライアイスを毎日手に入れる事は出来た。

105: 2011/12/05(月) 17:36:06.45 ID:2F20KLx80
インターネットはいい情報も悪い情報もある。

ウソを見抜けない人にはインターネットを使うことは難しい。

けど僕にはそんな能力もなかったし、氏体 腐敗 で検索する以外の事はたぶん今でも出来ない。

ただ、あの時の情報は僕にとって学校の授業よりとても役に立ったんだ。

106: 2011/12/05(月) 17:39:50.81 ID:2F20KLx80
温度が低いと遺体は腐敗せずミイラ化するらしい。

そんな情報をうのみにした僕はドライアイスで冷やす事がベストだと考えた。

氷では溶けて水になってしまい湿度が上がり腐敗してしまう。

だからドライアイス。

あの子と一緒に毎日アイスを食べたのは未だに覚えている。

107: 2011/12/05(月) 17:43:10.20 ID:2F20KLx80
本当に警察は信用できないと思ったのはこんな生活が3カ月に達しようとしたときだった。

さすがにお年玉までアイス代につぎ込むのも、スーパーのおばちゃんに顔を覚えられアイスをおごってもらうようになったらうんざりしてくる。

そんな生活が終わるのは2月14日。

雪の降るバレンタインデーだった。

108: 2011/12/05(月) 17:46:55.21 ID:2F20KLx80
あの子はきっとあいつが好きだったんだろう。

いつもは僕の役目の、ドライアイスを氏体にかけに行く作業を自分でやりたいと言った時気付くべきだったんだ。

それに僕もうっかりしていた。

警備員の巡回時間を彼女に伝えなきゃならなかったのに。

109: 2011/12/05(月) 17:50:16.29 ID:2F20KLx80
氏体が見つかった、というよりもあの子が見つかった時。

あいつのそばにはチョコレートが置いてあったそうだ。

あの子は責任を感じたんだろう。

自分のせいで二人が氏んだ事、自分だけでここまで氏体を運んで隠したと言ったそうだ。

110: 2011/12/05(月) 17:52:26.18 ID:2F20KLx80
氏体が見つかった次の日学級集会が開かれた。

あいつの氏体が見つかった事、あの子が事件にかかわっていた事。

僕の名前は出される事がなかった。

学級集会が終わり、僕は迷わず警察へと駆け込んだ。

111: 2011/12/05(月) 17:57:43.99 ID:2F20KLx80
話は聞いてもらえなかった。

子どもの云う事が信用できないのはよく考えたら当たり前だが。

結局のところ彼女は氏体遺棄だけ罪に問われたらしい。

状況証拠しかなく、彼女には母親を頃す理由はあってもあいつを頃す理由はないことから、あいつと母親が階段から一緒に落ちて氏んだという事で落ち着いたらしい。

112: 2011/12/05(月) 18:01:51.25 ID:2F20KLx80
あの子に再び会えたのは僕が大学に入った時。

同じ法学部に入ったのは皮肉だと思った。

あれだけの事があったのだから現役で入ったのは並大抵の努力ではないだろう。

              再会した晩、僕は彼女に謝り続けた。

113: 2011/12/05(月) 18:06:45.20 ID:2F20KLx80
今僕は22歳。就職も決まり、後は残り少ない大学生活に別れを惜しむだけだ。

就職先は学校の先生。社会の先生としてなんとか私立の学校に拾ってもらえることになった。

あの子と付き合うことになってから2年。いろんな罪悪感にさいなまれる事もあった。

そして僕が出した結論は学校の先生になる事。

理由は僕たちみたいな子どもがもう出ないようにするためだ。

115: 2011/12/05(月) 18:10:42.86 ID:2F20KLx80
こんな事で僕の罪が許されるとは思っていない。

けど子どもたちが虐待に有ってても見て見ぬふりをする先生は未だにいっぱいいる。

そりゃモンペなんて言葉が流行る現代だ。下手に家庭に首を突っ込みたがる教師なんていないだろう。

でもだからこそ、僕がそんな子たちを救えるなら救うべきなんじゃないかと思い始めた。

116: 2011/12/05(月) 18:15:33.05 ID:2F20KLx80
全部の子供を救うなんてばかみたいな事を言うつもりはない。

ただあの時先生があの子の虐待に気づいていたらと思ったら、先生になろうと思っただけだ。

僕みたいに親友を失う子供が出ないように。

そして虐待されている子どもを救えるように。

これからどうなるかは分からないが、自分の心が持つ限り、先生を続けようと思う。

毎日床下に氏体がないか確かめながら。




117: 2011/12/05(月) 18:19:12.20 ID:GxpV4r9R0
ほう

118: 2011/12/05(月) 18:19:48.20 ID:ueyLZbHY0
きれいにしめたな

124: 2011/12/05(月) 18:31:49.09 ID:HJ1IzmhP0
乙かれさま

128: 2011/12/05(月) 18:38:17.96 ID:2F20KLx80
見直したら色々突っ込みどころが多かったですね。すみません。

他の人はどういう展開を考えるのかも見たいんで誰か書いてくれると嬉しいです。

見てくれた皆さんありがとうございました。

: 教室に死体を隠して3ヶ月間、誰も気付かなかった話をしようと思う