1: 2023/09/16(土) 18:00:48.08 ID:ILVvrLek.net
璃奈「四季さん、この薬はすごいと思う。今すぐ世界中の飲料水に混ぜるべき」ウンウン

四季「璃奈ちゃんが作ったスイッチも素晴らしいよ。すぐに全人類に配布しないと」オー

璃奈「やっぱり楽しいな。こういう話は、四季さんとするのが一番だよ」

四季「お互い理解者には苦労するよね。ニジガクには話が分かる人はいないの?」

璃奈「愛さんなら科学的な話はできるし、私の発明のことも褒めてくれて嬉しいんだけど……」

璃奈「愛さん、基本的に善人だからなあ。こういう類の話は、あんまり共感してくれないかも」

璃奈「前に人体実験の話をしたときドン引きされたもん。璃奈ちゃんボード『(´・ω・`)ショボーン』」

四季「科学的な話ができるだけ羨ましいよ。結ヶ丘じゃ、ちょっと難しいからさ」

四季「可可先輩は工作技術はすごいけど化学には明るくないし、純粋だから汚すのは気が引けるし……」

四季「ゲスい話に付き合ってくれる夏美ちゃんは、マネーになるかが大事で科学には興味ないみたいだしね」

四季「私も璃奈ちゃんとの時間はとても大切に思ってるよ」

璃奈「四季さん、優しい。四季さん、すき……」

四季「me too」

3: 2023/09/16(土) 18:04:34.92 ID:ILVvrLek.net
璃奈「ところで四季さんって、実験をするときに誰かに手伝ってもらったりしてる?」

璃奈「私は、よくかすみちゃんを適当に丸め込んで協力してもらってるんだけど……」

四季「私はメイに手を借りることが多いかな」

璃奈「メイさんは、人体実験とかに抵抗がない人なの?」

四季「残念ながらそうじゃないんだ。『おい! 何やってんだ!?』とかよく言われる」

璃奈「そっか。まあ、仕方ないよね」

四季「でも、知らないうちにそういう実験に協力してたって気づいたときのメイも好きでさ」フフッ

四季「いつもは強気なのに、泣きそうな顔でオロオロしちゃってすごく可愛いんだ」

璃奈「かすみちゃんも私を信用してくれてるから、気づいたときには手遅れなことが多いんだ」

璃奈「『さっきかすみちゃんがスイッチを押した結果だよ』って言ったら、真っ青な顔になっちゃって」

四季「なんていうか、その、下品なんだけど、ふふ、興奮しちゃうよね」

璃奈「とてもよく分かる。璃奈ちゃんボード『jΣミイ˶º ᴗº˶リ 愉悦』」

四季「途中でやめちゃダメだよ、メイ。壊してしまわないと、どれだけやれば壊れるか分からないでしょ」

璃奈「かすみちゃん、心配する必要はないよ。あれらは人間としての運用はしていないから。見てみる?」

しきりな「wwwwwwwwwwwwwwww」

5: 2023/09/16(土) 18:08:14.44 ID:ILVvrLek.net
璃奈「でも、最近はさすがに用心してるみたいで協力してくれないんだ」シューン

四季「私の方もだよ。それに、Liella!のみんなに薬を盛るのも難しくなっちゃってさ」

四季「私が渡したドリンクなんて絶対に飲んでくれないし、部室に置いておいても無視されるんだ」ズーン

璃奈「私のスイッチも、最近は誰も押さないの。前は放置してれば、勝手に誰か押してくれたのに……」

璃奈「部室の電灯のスイッチに偽装するのも今じゃ警戒されてるし、実験が進まないなあ」ハァー

四季「もういっそのこと、学校の貯水槽に薬をぶち込もうかな。量を作るのが面倒だけど……」ンー

璃奈「あ、そうだ! いいこと思いついた!」💡 ピコン!

璃奈「ねえ、四季さん。お互いの実験対象を交換してみない?」

四季「なるほど! ニジガクの人たちなら、私のドリンクを無警戒に飲んでくれるはず!」

璃奈「うん! 結ヶ丘のみんなだったら、私のスイッチを不用心に押しちゃうはずだよ!」

四季「善は急げだね。さっそく始めよう! アイデアを出してくれた璃奈ちゃんからでいいよ」

璃奈「ありがとう。じゃあ、結ヶ丘に突撃だね!」

しきりな「「科学の発展に犠牲はつきものデース!」」キャッキャッ

6: 2023/09/16(土) 18:11:59.87 ID:ILVvrLek.net
結ヶ丘女子高等学校

璃奈「言われた通り、部室の机の上にスイッチを置いた」ワクワク

四季「じゃあ、こっちに隠れてよう」オイデオイデ

璃奈「うん、分かった」トテトテ

四季「それで、これを飲んで。この薬を飲めば、人の五感では察知できない存在になれるんだ」つ🧪

四季「薬を飲んだ人同士でなら問題なく知覚できるから、スパイ活動に最適な薬だよ」ヘヘーン

璃奈「おー、飲む石ころ帽子って感じだね」ゴクゴク

四季「ただ隠れてるだけだと、千砂都先輩あたりに気づかれそうだからさ」ゴクゴク

璃奈「たまにすごく勘がいい人っているよね。千砂都さんのことも調べてみたいな」

8: 2023/09/16(土) 18:16:06.72 ID:ILVvrLek.net
璃奈「でも、置いてるだけで押してくれるかな? それも、今回のターゲットを狙い撃ちにできるの?」

四季「大丈夫だよ。『押すな』って書いた紙を添えたから、心配はいらない」

璃奈「そうなの?」

四季「今日は2年生と1年生は遅れる予定だから、最初に部室に来るのは3年生の先輩たち」

四季「押すなって言われれば、素直な恋先輩と可可先輩はきっと押さないと思う」

四季「逆に千砂都先輩とすみれ先輩は不審に思うはずだから、やっぱり押さないはず」

四季「でも」

ドア「ガチャ!」

かのん「お疲れー! って、私が一番なの?」キョロキョロ

四季「かのん先輩は確実に押すタイプの人間」

9: 2023/09/16(土) 18:19:36.01 ID:ILVvrLek.net
かのん「あれ? これ何だろ?」ン?

すみれ「かのん、何やってるのよ?」

かのん「あ、すみれちゃん! ほら、これ見て」

すみれ「ん? 何よそれ?」

かのん「スイッチだよ!」

すみれ「それは分かってるわ。何のスイッチかって聞いてんのよ」

かのん「分かんないけど、机の上に置いてあったんだ。誰かの忘れ物かな?」

すみれ「そんなもん部室に忘れることある? 早押しクイズぐらいでしか見たことないけど……」

かのん「押してみよっか?」ネエネエ

すみれ「え? 何のスイッチか分からないのに押すの?」

かのん「うん! 面白そうじゃん!」ワクワク

すみれ「やめときなさい。電気が流れでもしたらイヤでしょ?」

かのん「えー、確かにそういうイタズラは聞いたことあるけどさあ」

11: 2023/09/16(土) 18:23:32.71 ID:ILVvrLek.net
可可「何やってるデスか、すみれ? かのんに意地悪してはいけませんよ」

すみれ「別に意地悪はしてないわよ」

かのん「あっ、可可ちゃんも来たんだね」

可可「はい! 千砂都とレンレンも一緒デスよ!」

千砂都「ういっすー! 遅れちゃったかな? ちょっと2人と話をしてたんだ」

恋「かのんさんとすみれさんは、何をしていたんですか?」

かのん「なんかスイッチがあったから押してみたいのに、すみれちゃんがダメだって言うんだ」ブーブー

すみれ「何のスイッチかも分からないのに、勝手に押すのはよくないでしょ?」

可可「まったく、すみれは口煩いデスねえ」ヤレヤレ

可可「って、かのん! これはククも押してはダメだと思いマス」

可可「だって、ほら! 押すなって書いた紙がありマスよ!」ホラ!

12: 2023/09/16(土) 18:27:39.79 ID:ILVvrLek.net
恋「確かにそうですね。わたくしもすみれさんと可可さんの意見に賛成です」

恋「他人の物を勝手に触るのはよくないですし、ましてや押すなと書かれているならなおさらですよ」

かのん「えー、そうかな?」

千砂都「っていうか、押すなって書いた紙と一緒に置いてあるなんて明らかに怪しいと思うよ」

すみれ「そうね。恐らくイタズラでしょうね。夏美がLTubeの動画でも撮影してるんじゃない?」

かのん「でも、芸人さんの『絶対に押すなよ!』は『いいタイミングで押せ』って意味でしょ?」

すみれ「あんたは芸人じゃないし、ここはテレビの現場じゃないのよ」

かのん「スクールアイドルだって同じエンターテイナーだし、見てる人たちを楽しませなきゃ!」

かのん「そんなこと書かれちゃったら、こちらも押さねば無作法というものだよね!」ポチットナ

恋「ああ、押しちゃいました」

千砂都「かのんちゃん、ただ押したいだけでしょ」



四季「さすがはかのん先輩ってとこだね。痺れもしないし憧れもしないけど」

璃奈「さあ、どうなる? 押した人の感度が3000倍になるスイッチ」

13: 2023/09/16(土) 18:31:23.74 ID:ILVvrLek.net
かのん「ひゃん!」ビクッ!

可可「か、かのん!?」

すみれ「やっぱり電気が流れてビリッとするやつだったんでしょ」

千砂都「かのんちゃん、大丈夫?」

かのん「いや、えっと、電気は流れなかったけど……。これは大丈夫なやつなの?」プルプル

恋「いえ、わたくしたちに聞かれましても……」

すみれ「どうしたのよ?」

かのん「なんか全身がくすぐったいっていうか、服の感触だけで声が出そうっていうか……」ブルブル

かのん「あ、待って。ちょっと待って。待って、待って、待って!」ビクッ! ビクッ!

可可「だ、大丈夫デスか!?」

恋「ど、どうしました!? 理由も分からずに叫ばれると怖いですよ?」

かのん「なんか風が吹くから! 窓が開いてるからあ!」ビクビクッ!

14: 2023/09/16(土) 18:34:51.59 ID:ILVvrLek.net
すみれ「風が吹いたぐらいでそんなになるとかどんだけよ……」

すみれ「ほら、こっちに来なさい。椅子に座ってゆっくりすれば――」グイッ

かのん「ああぁん! あっ、あんっ!」ビクンッ! ビクビクビクッ!

すみれ「あ、あんたっ! なんて声を出してんのよ!」

かのん「だって、すみれちゃんが触るから! 触るからあ!」ワーン!

可可「今のは、すみれが毎晩ベッドの中で出してる声と同じ……」ゴクッ

すみれ「可可っ! あんたはあんたで、何を言っちゃってくれてるったらくれてるの!?」ギャラクシー!?

恋「すみれさんはベッドの中であんな声を出すんですか? あっ、発声練習とかですかね?」キョトン?

千砂都「そうだね。恋ちゃんは知らなくていいことだから、気にしないでおこうね」

16: 2023/09/16(土) 18:39:18.31 ID:ILVvrLek.net
可可「でも、どうするデスか? ちょっと触っただけであんなになるだなんて、何が起こってるんデス?」

すみれ「まずは原因が分からないと話にならないわね。あのスイッチのせいだとは思うんだけど……」ウーン

すみれ「って、千砂都!? 何をやってるのよ!?」

千砂都「すみれちゃんの言う通り、このスイッチがどういうものかを知るのが重要だと私も思うよ」

千砂都「だったら、これが最も手っ取り早いよね」ポチットナ

恋「……ち、千砂都さん?」

千砂都「なるほど、やっぱりこれが原因だね。全身の感覚が極めて敏感になるスイッチってとこかな」

千砂都「それに、あらゆる感覚を快感に変える作用もあるみたいだね。……趣味が悪いなあ」フー

すみれ「それで、千砂都は大丈夫なの?」オソルオソル

千砂都「大丈夫だよ。動かないまま全身の筋肉を一気に駆動させることで、感覚を分散させてるから」

千砂都「生理現象だって結局は筋肉が動いてるんだから、筋肉さえ制御できれば掌握できるんだよ」



四季「さすが千砂都先輩! インテリなゴリラみたいな解決策だね。やはり筋肉、筋肉はすべてを解決する」

璃奈「そんな対処法が可能だなんて、範馬勇次郎かな。ああいうタイプの人は身近にいないから興味深いな」

17: 2023/09/16(土) 18:42:43.65 ID:ILVvrLek.net
千砂都「可可ちゃん、このスイッチを分解してみて」

千砂都「それで私が言ったような働きをしてる部品を特定できれば、なんとかなるんじゃないかな?」

可可「は、はい! とりあえずバラしてみマス!」カチャカチャ

かのん「ちぃちゃぁん」メソメソ

千砂都「かのんちゃん、もう少しだけ待っててね。すぐに元に戻してあげるから」

かのん「……しっ……いきたい……」ボソボソ

千砂都「え?」

かのん「おしOこ行きたい」ウルウル

恋「えぇ……」

すみれ「あんたねえ」

かのん「仕方ないじゃん! 仕方ないじゃんかあ! すみれちゃんはおしOこしたことないの!?」ウワーン!

すみれ「いや、さすがにそうは言わないけどさあ」

恋「かのんさん、だいぶ幼児退行してる感じですね」

18: 2023/09/16(土) 18:46:37.19 ID:ILVvrLek.net
可可「あっ、なんとなく分かりました! これが電源だから、こっちがあれで、つまりこの部品は……」フムフム

可可「ここの配線を繋ぎ変えてスイッチを押せば、すべての効果を解除できるはずデス!」カチャカチャ

千砂都「さすが可可ちゃん! 悪いけど急いでくれるかな? かのんちゃんがヤバそうだし」

かのん「可可ちゃぁん、ありがとうねぇ」プルプル

可可「任せてください! 40秒で終わらせマス!」カチャカチャ

すみれ「へえ、すごいじゃない。あんた、こういうのホント得意ね」

可可「機械いじりと手先の器用さはククの自慢デスからね。コロナウイルスだって箸で摘めマスよ!」フフーン

千砂都「でも、さすがに今回のこれは看過できないかな。さすがにね」

千砂都「ねえ、恋ちゃん。さっき部室に来る前にしてた話だけど、私が対処するよ」

恋「四季さんのイタズラの件ですか?」

千砂都「うん、私がきっちりと釘を刺しておくから」

すみれ「まあ、これは確かにイタズラの範疇を超えてるわよねえ」

21: 2023/09/16(土) 18:50:50.75 ID:ILVvrLek.net
可可「いえ、このスイッチを作ったのはシッキーではないとククは思いマス」カチャカチャ

すみれ「え? こんな超科学的な物を作るなんて、あの子しかなくない?」

可可「このスイッチ、かなりすごいデス。ちょっとククには作れそうにありません」カチャカチャ

可可「千砂都から聞いた情報がなければ、構造の分析だけでも何時間か必要だったはずデス」カチャカチャ

可可「これをシッキーが作れるとは思えません。シッキーの専門は化学や薬学デスし」カチャカチャ

恋「まあ、そう言われると四季さんが今までに作ったものとは毛色が違いますね」

千砂都「四季ちゃんじゃないの? だったら、誰が……」



璃奈「可可さん、分析力もすごいけど、作業の手際がよすぎる。ちょっと話をしてみたいな」

四季「……危なかった。璃奈ちゃんと実験対象を交換してよかった。いや、本当によかった」

22: 2023/09/16(土) 18:54:37.62 ID:ILVvrLek.net
可可「よし、終わりました! スイッチの効果を解除――」

ドア「バァン!」

夏美「にゃははは! 鬼さんこちらですの~」バタバタ

メイ「おい、待て! 夏美、さっきの動画を消せ!」バタバタ

夏美「イヤですの~! LTubeにアップして、メイの可愛いところをみなさんにも知ってもらいますの!」

メイ「やめろ! 本気で怒るぞ!」

夏美「とか言って、メイはもう怒ってますの~。かのん先輩、可愛い後輩を助けてくださいの~!」ギュッ!

かのん「あ゛ぁ゛!」ビビクンッ!

夏美「か、かのん先輩?」

冬毬「姉者、急に抱きついたりしたら驚くでしょ。かのん先輩、姉者がすみません」

24: 2023/09/16(土) 18:58:46.15 ID:ILVvrLek.net
かのん「あっ、ああっ! あうっ、はあぁ……。あっ、ああっ!」ビクンッ! ビクンッ!
かのん「……………………」ビクッ! ビクッ!

きな子「か、かのん先輩?」オソルオソル

マルガレーテ「な、何が起こってるの?」オロオロ

可可「えっと、その、作業が完了しました。スイッチの効果を解除しマス」ポチットナ

かのん「……………………」

千砂都「か、かのんちゃん?」

かのん「あ゛ん゛ま゛り゛な゛ん゛じ゛ゃ゛な゛い゛!?」

かのん「か゛の゛ち゛ゃ゛ん゛、お゛う゛ち゛に゛か゛え゛る゛!」ビエーン!

25: 2023/09/16(土) 19:02:24.63 ID:ILVvrLek.net
1週間後 虹ヶ咲学園

四季「かのん先輩が自室に引きこもってしまった」

璃奈「嫌な事件だったね」

四季「リアクションが面白そうというだけの理由で、かのん先輩を対象に選んだのを申し訳なく思っている」

四季「それと、千砂都先輩が怖い。可可先輩のおかげで、犯人だとは思われていないみたいだけど……」

四季「何らかの関与を疑われている気がする。まあ、実際にもろに関与してるんだけどさ」

四季「というわけで、本日はニジガクで実験だよ」ドヤァ

璃奈「素晴らしい『というわけで』の使い方だね。ドヤ顔も素敵だと思う」パチパチ

璃奈「失敗しても諦めずに前進を続ける姿勢こそが、科学者に最も求められる資質だからね」

璃奈「それで、今日は何の実験をするの?」

四季「本日は基本に立ち返ってみたいと思う」ゴソゴソ

璃奈「基本?」

四季「そう、怪しい薬といえばこれ。惚れ薬だよ」ジャジャーン!

璃奈「おー!」パチパチ

26: 2023/09/16(土) 19:05:50.72 ID:ILVvrLek.net
璃奈「でも、惚れ薬の実験なんて今さらする意味があるの?」

四季「確かに何度もやったことがあるけど、これは実用性を重視した改良版なんだ」

四季「璃奈ちゃんは惚れ薬っていうと、どんなものをイメージする?」

璃奈「えっと、飲むと惚れっぽくなって、目があった人を好きになっちゃうとか?」

四季「そうだね。それが一番よくあるタイプの惚れ薬だね」ウンウン

四季「でも、それってちょっと使いづらいと思わない?」

璃奈「まあ、確かに薬を飲んだ人が誰と目を合わせるかを完璧にコントロールするのは難しいよね」

四季「そうなんだよ。その弱点を改良したのが、この惚れ薬なんだ」

璃奈「どういう改良がされてるの?」ワクワク

四季「それはね。この薬を飲んだ人は――」

ドア「ガチャ」

侑「こんにちはー! もう来てる人いる?」

四季「この薬の効用は、実際に投薬を行ってから説明しようか」

27: 2023/09/16(土) 19:09:19.87 ID:ILVvrLek.net
侑「あれ? 璃奈ちゃんと、そっちは誰? あっ! 新しく同好会に入りたい人とか?」ペカー

四季「こんにちは。璃奈ちゃんの友人の若菜四季といいます」ペコッ

四季「私は他校の生徒なので、残念ながら同好会に入りたいというわけではないんですよ」

侑「あ、そうなんだぁ。……あれ? 若菜四季っていうと、もしかしてLiella!の?」

侑「うわぁ! ラブライブで優勝したLiella!のメンバーに会えるなんてびっくりだよ!」

侑「それに、敬語じゃなくてタメ口で話して欲しいな。四季ちゃんって、確か私と同じ2年生だよね?」

四季「じゃあ、そうさせてもらうよ。私も仲良くしたいしね」

侑「今日は璃奈ちゃんに会いに来たの? よかったら同好会の活動を見学していかない?」ウキウキ

四季「だったら、お言葉に甘えようかな。他の学校のスクールアイドルの練習にも興味があるし」

四季「それと、今日は璃奈ちゃんにこれを見せに来たんだ」つ🍷

侑「これは何? 真っ赤なドリンク? イチゴ味とか?」

29: 2023/09/16(土) 19:12:51.38 ID:ILVvrLek.net
四季「イチゴ味じゃないけど、私が作ったドリンクなんだ。こういうの作るの好きでさ」

侑「へー、いいね! 彼方さんとか歩夢も料理が得意だけど、四季ちゃんもそうなんだね」

四季「よかったら飲んでみてよ。感想を聞きたいな」

侑「え! いいの?」

四季「もちろんだよ。はい、どうぞ」つ🍷ハイ

侑「ありがとう! いただきまーす!」ゴクゴク

侑「おっ! すっごく美味しいよ! イチゴ味じゃないけど、なんか複雑で深い味がする」ゴクゴク

侑「私の好きな味だな。かなり気に入ったかも」

四季「それはよかった。今回のやつは味にも拘ってみたからね」

侑「味の他にも何か拘ることがあるの? 栄養とか?」ゴクゴク

四季「まあ、色々とね」フフッ

30: 2023/09/16(土) 19:16:26.17 ID:ILVvrLek.net
侑「ごちそうさまでした! お礼になるか分かんないけど、みんなの練習を見ていってよ」

侑「なんでこういう内容の練習をしてるのかとかも、知りたいなら詳しく説明するからさ」

四季「うん、ありがとう」

璃奈「侑さん、ドリンクはどんなだった?」

侑「すごく美味しかったよ! 今までに飲んだことない味だけど、とにかく美味しかった!」

璃奈「何か変な感じとかはしない?」

侑「え? 別にしないけど?」ン?

璃奈「そうなんだ。だったらいいんだ」

璃奈「ところで頼まれてた動画のエフェクトの合成が終わったから、部室のパソコンに保存しておいたね」

侑「あ、そうだった。動画の編集がしたいから、早めに部室に来たんだった」

侑「璃奈ちゃん、ありがとね。四季ちゃん、ちょっと悪いんだけど、作業があるからまた後でね」

四季「大丈夫だよ。璃奈ちゃんに相手をしてもらっておくから」

侑「うん、ごめんね」パタパタ

31: 2023/09/16(土) 19:19:45.20 ID:ILVvrLek.net
璃奈「侑さん、惚れ薬が効いてるって感じはしなかったな。どうなってるの?」

四季「侑ちゃんが飲むだけじゃ、まだ効果は発揮されないんだ。もう一手が必要なの」

璃奈「侑さんが飲むだけじゃってことは、もしかして他の――」

ドア「バアアァァンッッ!!!」

せつ菜「お疲れ様です!」ペカー!

四季「璃奈ちゃんが予想している通りだと思うよ。まあ、見ててよ」

四季「お疲れ様です。走ってきたんですか? 汗をかいていますし、ドリンクをどうぞ」つ🍷ハイ

せつ菜「ありがとうございます!」ゴクッ! ゴクッ!

四季「私が差し出したドリンクをあっさり飲んでくれるなんて、ニジガクの人は実に素晴らしいな」ボソッ

せつ菜「はい?」

四季「いえいえ、何でもありません。それより、ドリンクはお口に合いましたか?」

せつ菜「はい、とっても美味しいです! 初めて飲む味ですが、大好きな味です!」ペカー!

32: 2023/09/16(土) 19:23:05.77 ID:ILVvrLek.net
せつ菜「ところで、あなたはどちら様ですか?」ウーン?

せつ菜「あっ、もしかしてLiella!の若菜四季さんですか!? その制服も結ヶ丘のものですよね?」

四季「私のことをご存じだったんですか? あの優木せつ菜さんに知られているとは光栄ですね」

せつ菜「人の顔と名前を覚えるのは得意なんです!」ペカー!

せつ菜「それに、昨年のラブライブの優勝メンバーのことを知らないわけがないじゃないですか!」フンスッ!

せつ菜「ですが、どうして四季さんが虹ヶ咲にいらっしゃるんですか?」

璃奈「私が呼んだの。お友達なんだ」

せつ菜「へえ、璃奈さんのご友人なんですか。意外なところで繋がりがありますね!」

璃奈「うん、趣味が合うんだ」

33: 2023/09/16(土) 19:26:26.88 ID:ILVvrLek.net
侑「声が聞こえたけど、せつ菜ちゃんが来たの? よかったら動画のことでちょっと相談が――」トゥンク

せつ菜「次のMVの動画ですか? お任せしてしまってすみません。もちろん私も協力したい――」ドキッ!

ゆうせつ「「…………」」

侑「せつ菜ちゃん、ちょっと来てくれる? 一緒に動画の編集しよ?」ネ?

せつ菜「はい、喜んで! 私も侑さんと一緒に作業がしたいです!」ペカー!

侑「せつ菜ちゃんのMVを編集してたんだけど、いいシーンが多すぎてどうしても時間が足りないの」

侑「あのせつ菜ちゃんもこのせつ菜ちゃんもみんな可愛くて、時間に収まるだけなんて選べないよーって」

せつ菜「そんなに侑さんに褒めていただけるだなんて、とっても嬉しいです!」エヘヘ

せつ菜「侑さんが真剣に考えてくださったMVなら、絶対に最高のものになりますよ! 私は信じています!」

侑「MVが最高なのは、せつ菜ちゃんがすっごく可愛いからだよ。どこを編集しても最高に可愛いもん」フフッ

侑「あれ? でも実物の方が可愛いな。もっとくっついてもいい?」イチャイチャ

せつ菜「もちろんです! 私からお願いします! それに、侑さんだって可愛いですよ!」

せつ菜「侑さんはスクールアイドルじゃないから、私だけのアイドルにしちゃいます!」イチャイチャ

侑「えへへ、やったー! 嬉しい! せつ菜ちゃぁん、もっとギュッとして?」イチャイチャイチャイチャ

せつ菜「ほら、ギューッですよ! 侑さん、大好きです! 誰にも渡しません!」イチャイチャイチャイチャ

34: 2023/09/16(土) 19:29:56.20 ID:ILVvrLek.net
璃奈「なるほど、やっぱりそういうことか。薬を飲んだ人同士が惚れ合う仕様なんだね」

四季「この薬を飲むと、特殊なフェロモンが全身から分泌されるようになるんだけどさ」

四季「そのフェロモンは、薬を飲んだ人にしか効かないんだ。飲んでない人には何の効果もないよ」

四季「それに薬も何種類かあって、それぞれ分泌されるフェロモンと惚れるフェロモンが異なるの」

四季「だから、『A→B→C→A』とか『A⇔BかつC⇔D』とか『A⇔B←C』とか自由自在だよ」ドヤァ

璃奈「へえ、それはすごいね! とっても便利だと思う。文句のつけようのない実用性だよ」ヘー

璃奈「それに、なんか美味しいみたいだよね。ちょっと気になるかも」

四季「ああ、実は何の味もついてないんだけどね」

璃奈「ん? どういうこと?」

四季「この惚れ薬は恋愛感情を司るA10神経に作用するんだけど、飲んだときもA10神経を興奮させるんだ」

四季「だから味の好みと無関係に、自分の好きな味だと感じるんだよ。実際は無味無臭なのにね」

璃奈「そういう仕組みなんだ。だから、2人とも味の感想が具体的じゃなくてふわっとしてたんだね」

璃奈「まあ実際は味が存在しないとしても、脳が感じてるんならそれが現実だよね」

四季「恋愛感情も脳の錯覚だとかいうけど、私たちは脳が感じている世界の中でしか生きられないものね」

35: 2023/09/16(土) 19:33:34.84 ID:ILVvrLek.net
ドア「カチャ」

歩夢「お疲れ様です。って、侑ちゃんは何をしてるの!?」ガーン!

侑「せつ菜ちゃんとイチャイチャしてるよ!」ドヤァ

せつ菜「侑さんと大好きを伝え合っています!」ペカー!

歩夢「いやいや、何をいい笑顔で言ってるの!? え? 2人とも、そういう関係じゃなかったよね!?」

侑「ついさっき、私は真実の愛に目覚めたんだ。誰よりも可愛いせつ菜ちゃんのおかげでね!」

せつ菜「侑さんこそが私の大好きを捧げるべき相手だと気づいたんです! これは運命ですよ!」

侑「こんなに可愛い恋人ができるなんて、間違いなく私は世界で一番の幸せ者だね!」ペカー

歩夢「こ、恋人? えっ? 恋人!? え? え?」エ?

せつ菜「世界で一番の幸せ者は私ですよ! いくら侑さんでも、これは譲れません!」

侑「もー、せつ菜ちゃんったらあ。大好きだよ」イチャイチャ

せつ菜「私も大好きです! えへへ、侑さぁん」イチャイチャ

37: 2023/09/16(土) 19:38:21.82 ID:ILVvrLek.net
歩夢「いきなりこれはおかしいでしょ。え? 夢でも見てる? なんて悪夢なの?」クラッ

歩夢「……あっ! 璃奈ちゃんのせいだね! ねえ、覚悟はいい?」

璃奈「違う。私のせいじゃない」

歩夢「どうせ2人が恋人になるスイッチでも作ったんでしょ! 絶対に許されないよ!」バンッ!

璃奈「そんなものは作ってない。璃奈ちゃんボード『冤罪』」

歩夢「だったら、この状況をどう説明するつもり――」

侑「歩夢、何もおかしくなんかないよ。せつ菜ちゃんの最高の可愛さに恋に落ちたってだけだからさ」ガシッ!

せつ菜「そうですよ! こんな可愛い侑さんと一緒にいて、恋人にならない方がおかしいんです!」ガシッ!

侑「私がどれだけせつ菜ちゃんを愛してるか教えてあげるよ。幼馴染の歩夢には応援して欲しいしね」

せつ菜「幼馴染の歩夢さんを相手に僭越ですが、どれだけ侑さんが素敵で私が大好きかを教えますね!」

歩夢「あ゛ー! どぼじで、どぼじでごんなごどにー」ビエーン!

38: 2023/09/16(土) 19:42:10.94 ID:ILVvrLek.net
さらに1週間後 璃奈ちゃんハウス

璃奈「あのときはハラハラしたよね。歩夢さん、すごい顔してたし」

四季「お互いをどれだけ好きかをずっと説明してる2人の前で、能面みたいな顔してたよね」

璃奈「うん、怖かった。無表情なのに迫力がすごかったもん」

璃奈「あの2人は今日も部室でイチャイチャしてたし、歩夢さんの受難は続きそうだね」

四季「へえ、そうなんだ。薬の効果は3日で切れるはずだけど、本物の恋愛感情が生まれたのかな」

璃奈「そうだと思う。元から仲はよかったし、3日もイチャついてればそうもなるよ」

四季「そっか、愛し合う恋人たちを生み出しちゃったかあ。ふふっ、いいことをすると気分がいい」

璃奈「私もそう思う。私たちは現世に舞い降りたキューピッドだね」

39: 2023/09/16(土) 19:45:58.95 ID:ILVvrLek.net
四季「ところで、本日の実験はどうする予定なの?」

璃奈「今日は歩夢さんをターゲットにしようと思うんだ。最近、色々と辛そうだし」

四季「ふーん、何かあったのかな? 心配」

璃奈「何があったのかはまったく知らないけど、優しい私は心を痛めてるんだ」

璃奈「大切な先輩の歩夢さんには、ぜひとも幸せになって欲しいからね」

四季「そういうことか。だったら、あの薬なんていいかも」ウーン?

璃奈「そういえば、かのんさんはどうなったの?」

璃奈「あれは不幸な事故だったから誰にも責任はないけど、できれば力になりたいな」

四季「なんとか学校には来れるようになったんだけど、人の視線が怖いみたいで……」

四季「まだ、ライブなんかは無理そう。本当に心配してる」

璃奈「じゃあ、歩夢さんの次は、またかのんさんがターゲットかな」

璃奈「ちょうど人が野菜に見えるようになるスイッチを作ったんだ」

四季「私も尊敬するかのん先輩には元気になって欲しいし、それがいいと思う」

41: 2023/09/16(土) 19:49:57.53 ID:ILVvrLek.net
璃奈「とりあえず、歩夢さんの映像をモニタに出すね」カタカタ

璃奈「誰かと話をしてるみたいだけど……。あれ? これは四季さんのところの……」

四季「千砂都先輩だ。どうしてニジガクにいるんだろ?」

四季「まあ、ちょうどいいや。本日の実験はこの2人を対象にしようか」

璃奈「そうだね。千砂都さんがターゲットなら、どのスイッチがいいかなあ」ウーン?

四季「でも、2人は何をしてるんだろう? いったい何の話を――」ビクッ!

モニタ「あゆちさ『『…………』』ジー」

璃奈「四季さん、どうしたの?」

四季「いや、気のせいだとは思うんだけど、2人がこっちを見ているような……」

璃奈「まさか、そんなことあるわけ――」エ?

モニタ「あゆちさ『『…………』』☝」

四季「……ねえ、璃奈ちゃん。今、2人と目が合わなかった?」

璃奈「いや、そんなわけが……」

四季「でも、千砂都先輩がこっちを指差してる気が……」

44: 2023/09/16(土) 19:53:55.89 ID:ILVvrLek.net
璃奈「ありえないよ! だって、これは米軍の偵察衛星をハッキングして得てる映像だよ!?」

璃奈「上空500kmからのカメラ越しの視線に気づく人間が存在するわけ――」ビクッ!

モニタ「あゆちさ『『…………』』👋」

四季「歩夢ちゃんが、明らかにこっちを向いて手を振ってる」ヒエッ

璃奈「そんなバカな……」

四季「あれ? 千砂都先輩、何か話しかけてきてる? えっと、声は聞こえないけど口の動きで……」エーット

璃奈「四季さん、待って。前に作った読唇術のアプリがある」カタカタ

璃奈「モニタの映像をアプリに回して、千砂都さんの人工音声でしゃべらせると……。できた!」ターン!

アプリ千砂都『今から2人のところに行くね』

四季「ひっ!」ビクッ!

璃奈「嘘でしょ? ホントにこっちを認識してるの?」

46: 2023/09/16(土) 19:57:44.91 ID:ILVvrLek.net
四季「璃奈ちゃん、すぐに逃げないと! ここはニジガクから近いし、真っ先に探されるはず!」

璃奈「う、うん……。でも、どこに逃げるの?」

四季「……前に千砂都先輩が、地球は丸いから隅から隅まで私の円の範囲内だって言ってた」

璃奈「……前に歩夢さんが、火星は第2の故郷だし私の庭みたいなもんだって言ってたよ」

しきりな「「…………」」

四季「よし、月にしよう。そこそこ近いから、逆に盲点になるかもしれない」

四季「気休めかもしれないけど、人の五感では察知できなくなる薬を飲んで隠れよう」

璃奈「うん、分かった。あっちの奥の部屋に、空間跳躍ができるポータルがある」

璃奈「距離に応じてエネルギーを溜める時間が必要だけど、月なら10分もあれば――」

インターホン「ピンポーン」

しきりな「「……………………」」

48: 2023/09/16(土) 20:01:31.51 ID:ILVvrLek.net
璃奈「い、居留守を使えば……」

四季「そ、それがいい。10分後には本当にいなくなるんだし――」

ドア「ガチャン キィー」

歩夢「璃奈ちゃーん、なかなか開けてくれないから勝手に入っちゃったよー」フフッ

千砂都「四季ちゃん、インターホンを鳴らしてるんだから、早く開けて欲しかったな」ネ?

璃奈「どうやって、ドアの鍵を……。チェーンロックだって、ちゃんとかけてたのに……」

四季「というか、このマンションってオートロックですよね? なんで、いきなりドアの前に……」

千砂都「ふふっ、そんなことが気になるの? 思ったより余裕あるみたいだね」

璃奈「よ、余裕? いや、まったく余裕なんてないけど……」

歩夢「うーん、2人ともよく分かってないみたいだから、言い方を変えてあげるね」

歩夢「これから氏ぬってときに、そんなことを気にしててもいいの? 今際の際だよ?」

50: 2023/09/16(土) 20:05:34.27 ID:ILVvrLek.net
四季「璃奈ちゃん、今すぐ跳ぼう! どこでもいいから、エネルギーが許す限り遠くへ!」

璃奈「う、うん!」タタタッ

千砂都「おっと、こっちには行かせないよ」シュバッ

璃奈「ううっ」

四季「いつの間にそっちに!? 璃奈ちゃん、私が千砂都先輩を食い止めるから早く行って!」

璃奈「でも、それだと四季さんが……」

四季「後から必ず追いつくから、璃奈ちゃんは先に――」

歩夢「もー、私のこと忘れちゃダメだよ? 四季ちゃん、今は私との時間だよ❤」ガシッ!

四季「あ、歩夢ちゃん!? は、放して!」ジタバタ

歩夢「ふふっ、何を言ってるの? 放すわけないでしょ」ギューッ!

52: 2023/09/16(土) 20:08:53.99 ID:ILVvrLek.net
千砂都「こっちに何があるの? 玄関とは逆の方向だよね?」

璃奈「……」

千砂都「へえ、遠くに一瞬で行ける機械があるんだ。すごいね!」

千砂都「どこに逃げるつもりだったの? え、月? なかなかいいとこ選ぶじゃない。丸いもんね」フフッ

璃奈「…………え?」

千砂都「じゃあ、ここは通さないようにしないといけないなあ。月に行かれちゃうと面倒だし」

千砂都「あ、今すぐは行けないの? そっか、10分もかかるんだ。さすがにそれは間に合わないでしょ」

璃奈(これは、まずい。どうすれば……)

千砂都「何がまずいの? 言ってみてよ」

53: 2023/09/16(土) 20:12:23.64 ID:ILVvrLek.net
璃奈「……千砂都さんは、人の心を読む力があるんだね。よかったら研究させて欲しいな」フフッ

千砂都「別に心を読んでるわけじゃないよ。そんな不思議な力は使えないもの」

璃奈「いや、でも、明らかに私の心の声と会話を……」

千砂都「違うよ。ただ、璃奈ちゃんを見れば考えてることが分かるってだけ」

璃奈「見れば分かるって、そんなわけが……」

千砂都「呼吸のペースが普段より2.3倍も速いし、口呼吸になってる。心拍数は2.1倍だよ」

千砂都「体温が0.6度、血圧が45mmHg、発汗が62%も上昇してる。ふふっ、焦ってるんだね」

千砂都「視線の泳ぎ方、瞬きの頻度、つばを飲み込むタイミング、ちょっとした手の動き、立ち方……」

千砂都「ちゃぁんと隅から隅まで見て考えれば、心の中で思ってることぐらい手に取るように分かる」

千砂都「璃奈ちゃん、これはオカルト的な能力なんかじゃない。ただの技術だよ」

璃奈「…………」

千砂都「あっ、瞳孔が大きくなってるよ。典型的な恐怖のサインだね」

千砂都「表情を出すのが得意じゃないって話だったけど、璃奈ちゃんってば分かりやすいんじゃない?」フフッ

54: 2023/09/16(土) 20:15:49.70 ID:ILVvrLek.net
千砂都「じゃあ、始めようか。あんなことした悪い子には、きっちりと釘を刺してあげるね」

璃奈(どうする? 四季さんに聞いた情報から考えると、千砂都さんの身体能力は明らかに私より高い)

璃奈(手持ちのスイッチで隙を作って、なんとかして奥の部屋に……)

千砂都「はい、隙だらけだよ」ガシッ!

千砂都「それで、こう!」ドサッ

璃奈「……え?」

千砂都「完璧にマウントを取ったから、もう逃げられないよ。さあ、覚悟してね」

璃奈「……そんな、いつの間に? なんで私は床に倒れてるの?」

千砂都「だって、璃奈ちゃんったら目をつぶっちゃうんだもん。敵の前でそんなことしちゃダメだよ?」

璃奈「目をつぶったりなんかしてない! 最大限に警戒してたはず!」

千砂都「え? 璃奈ちゃん、瞬きしちゃったでしょ?」キョトン?

璃奈「瞬き!?」ガーン!

55: 2023/09/16(土) 20:19:11.61 ID:ILVvrLek.net
璃奈「瞬きしないなんて無理でしょ! 私の上からどいて!」ジタバタ

璃奈「え? ……おかしい。さすがに力が強すぎる。壁を押した方が、まだ手応えがある」ジタバタ

千砂都「気は済んだ?」

璃奈「千砂都さんは小柄だし、私だって鍛えてる。力で勝てるとは言わないけど、これはさすがに……」

千砂都「別に私の力が強いってわけじゃないよ。これも技術的な話だね」

千砂都「力のかけ方とか、かける場所とか、相手の力の逃がし方とか……。色々とコツがあるんだ」

千砂都「さっき私に引き倒されたときも、別に痛くはなかったでしょ?」

璃奈「確かに、気づいたら馬乗りにされてたけど……」

千砂都「この状態で私から逃げるのは不可能だよ。それこそ鋼鉄製のレバーを引きちぎる筋力でもないとね」

千砂都「そんなことより、璃奈ちゃんに釘を刺してあげる。もう二度とあんなことをしないように」

千砂都「ここを、こうすると」エイッ!

璃奈「痛いっ! 痛い、痛い、痛いっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

56: 2023/09/16(土) 20:22:30.55 ID:ILVvrLek.net
千砂都「璃奈ちゃん、大丈夫? 今は痛くないでしょ?」

璃奈「……え? あれ? なんで? どこも痛くない……」

千砂都「でしょ?」

璃奈「おかしいよ! あんなに痛かったのに! 本当に五寸釘でも刺されたかと思ったのに……」

千砂都「ちょっと特殊なツボを押したんだ。軽くだから、傷がつくどころか肌が赤くもなってないよ」

千砂都「体の中の丸い流れを乱すことで、純度100%の混じりっ気のない純粋な痛みを与えられるんだ」

千砂都「体には何も傷はつかないから、今のを何度でも何度でも味わえるんだよ」ニコッ

璃奈「ひぃ!」ジタバタ

璃奈「ごっ、ごめんなさい、私が悪かったです。もう二度とあんなことはしないから許してください」ブルブル

千砂都「口では何とでも言えるよね? そんなものに意味はないよ」

千砂都「これは私の持論なんだけど、躾に一番よく効くのは痛みだと思うんだ」

千砂都「今の璃奈ちゃんに最も必要なのは、言葉による教育じゃなくて、心に刻む教訓だよ」

千砂都「璃奈ちゃんの心に、二度と消えない傷痕を刻んであげる。刺青みたいなものだね」

千砂都「刺青っていうのは、永遠に消えることのない罪人の証なんだよ」👇スッ

璃奈「あ、あ、あっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛っ゛!!!!!!!!」

57: 2023/09/16(土) 20:25:59.00 ID:ILVvrLek.net
歩夢「あ、璃奈ちゃんが捕まっちゃった。千砂都さんの動き、無駄がなさすぎてエグいね」

四季「璃奈ちゃんっ! 歩夢ちゃん、放して!」ジタバタ

歩夢「んっ、四季ちゃんってば、思ったより力が強いんだね。これ以上は厳しいかも……」ンンッ

歩夢「まあ、もう押さえておく必要はないけどね。いいよ、放してあげる」パッ

@四季「千砂都先輩っ! 璃奈ちゃんから離れてっ!」ダダダッ

歩夢「四季ちゃん、『動かないで』」

@四季「――――」ビタッ!

歩夢「『こっちに来て、私の前に立って。それ以外は何もしないで』」

@四季「――――」スタスタ

歩夢「じゃあ、どうしようかな? ……あれ? 顔が赤いよ? 苦しいの?」

歩夢「ああ、呼吸の許可を出してないから息ができないんだね。何もしないでって言ったから」

歩夢「ふふっ、ちょっと待っててね。今から四季ちゃんへの罰を考えるから」ンート

@四季「――――」

59: 2023/09/16(土) 20:29:48.76 ID:ILVvrLek.net
歩夢「四季ちゃん、『息をしていいよ。しゃべっても構わない』」

@四季「ゴホッ、ガハッ! はぁーっ、はーっ、はー……。何が、どうなって……」

歩夢「ほら、この鏡を見てみて」

@四季「……これは、歩夢ちゃんと同じ髪型になってる? いや、お団子の色まで歩夢ちゃんと同じ……」エ?

歩夢「その子、ぽむ玉っていうんだ。さっき、四季ちゃんの頭に付けさせてもらったの」

@四季「ぽむ玉?」

歩夢「ぽむ玉を付けられると、私の言うことに逆らえなくなっちゃうの。それが、どんなことでもね」

歩夢「私が三日三晩ずっと苦しみ抜いて氏ねって言えば、本当にそうなっちゃうんだ」

歩夢「分かるでしょ? 四季ちゃんは、もう詰んでるんだよ」

@四季「……」ハーハー

歩夢「息が荒いけど、どうしたの? 心臓でも悪いのかな? 痛い? 生きてる証拠だよ」

60: 2023/09/16(土) 20:33:06.13 ID:ILVvrLek.net
歩夢「四季ちゃん、これから質問するけど『決して嘘をつかずに答えてね』」

歩夢「四季ちゃんは興味本位で侑ちゃんに惚れ薬を飲ませて、その心を軽い気持ちで捻じ曲げたんだよね?」

@四季「……薬を飲んでもらったことは確かだけど、興味本位ってだけじゃない。科学の発展にとって――」

歩夢「四季ちゃんって、あんな薬が作れるぐらい頭がいいけど、バカなんだね」

@四季「え?」

歩夢「嘘をつかずに都合のいいことを言おうとしてるみたいだけど、それで私を怒らせるとは考えないの?」

歩夢「何回でも質問できるし、都合のいい答えを禁止してもいいし、何も聞かずに罰を与えてもいいんだよ」

@四季「あ、いや、それは……」オドオド

歩夢「今のは特別に許してあげるけど、ここから先は慎重に言葉を選んでね。2回目はないから」

歩夢「侑ちゃんに許可を取らずに薬を飲ませて、その心を変えちゃったんだよね?」

@四季「……はい、その通りです」

62: 2023/09/16(土) 20:36:23.79 ID:ILVvrLek.net
歩夢「ふーん、そんなことしちゃったんだあ」ニコニコ

歩夢「そっか、そっかぁ、そうなんだあ」フフフ

@四季「えっと、その、歩夢ちゃんが侑ちゃんと恋人になりたいなら、いくらでも惚れ薬を提供するから――」

歩夢「誰がそんなこと頼んだのっ! 侑ちゃんの心を自分勝手に変えていいわけがないでしょ!」バンッ!

歩夢「四季ちゃん、次にまた侑ちゃんに何かしてみてよ。こんなもんじゃ絶対に済まさないから」

歩夢「痛覚を持って生まれてきたことを、魂の底から後悔させてあげる」ギロッ!

@四季「で、でも、だったら私はどうすればいいの? もう薬の効果は切れてるんだし……」

歩夢「え? 効果が切れてる?」

@四季「そう、そうなんだ! きっかけが何であれ、今は真実の愛なんだから見守らないと!」True Love!

歩夢「……」

63: 2023/09/16(土) 20:40:04.46 ID:ILVvrLek.net
歩夢「……侑ちゃんは、幼馴染の私と付き合うはずだったんだ」

@四季「え?」

歩夢「小さい頃から愛を育んで、侑ちゃんがドラマティックな告白をしてくれて、結ばれる運命だったの」

歩夢「ずっと一緒の幼馴染なんだから当然だよね。それ以外の脚本を書くのなら、神だって頃しちゃうよ」

歩夢「なのに、侑ちゃんの恋人としての初めては、何もかもすべてがせつ菜ちゃんのものになっちゃった」

歩夢「もう手遅れなの。タイムマシンでも、侑ちゃんがせつ菜ちゃんと付き合ったという事実は消せない」

歩夢「でも、せつ菜ちゃんは悪くないよ。侑ちゃんと恋人になることを嫌がる人なんているはずないもん」

歩夢「じゃあ、悪いのは誰かな?」ネエ?

@四季「……幼馴染という立場にあぐらをかかずに自分から告白してれば、こんなBSSみたいな惨めな――」

歩夢「あ゛あ゛っ゛!?」バンッ!

@四季「悪いのは私です」

歩夢「だよねっ!」バンッ! バンッ! バンッ!

※BSS:僕が先に好きだったのに

64: 2023/09/16(土) 20:44:00.09 ID:ILVvrLek.net
歩夢「罪人には罰を与えなくちゃいけない。罪の重さに応じた罰を」

歩夢「ねえ、四季ちゃん? あなたの罪は、この世すべての命を合わせたより重いよ」

歩夢「そもそもさあ、許してくださいとかそういう言葉はないのかな?」

@四季「えっ? 許してもらえ――」

歩夢「許してもらえるわけがなぁい!」クワッ

@四季「ひぃ!」ビクッ!

歩夢「泣きながら命乞いする相手に、自分は絶対に氏ぬんだって思い知らせてこその罰でしょ」

歩夢「はぁ、もういいよ。サスケ、出ておいで!」

サスケ「シャー」ニョロニョロ

歩夢「四季ちゃんには、この子のエサになってもらうね」

@四季「エサ!?」ガーン!

65: 2023/09/16(土) 20:47:19.85 ID:ILVvrLek.net
@四季「歩夢ちゃん、これは冗談になってない! これは確実に氏ぬ!」

歩夢「えっと、何か問題があるの?」キョトン?

@四季「いや、だって、こんなの問題しか……」

歩夢「私は初めから冗談なんて何も言ってないし、四季ちゃんが氏んでも何も困らないよ」

@四季「ま、待って! もう少し話を――」

歩夢「サスケ、食べちゃっていいよ」

サスケ「シャー!」クパァ

@四季「や、やめて。……こんな氏に方したくない」

歩夢「どうして四季ちゃんは、まだ自分が何かを選べると思ってるのかな?」ンー?

歩夢「四季ちゃんの意見は聞いてない。せめて散り様で私を興じさせてよ」

歩夢「まあ、氏にたくないならそれでもいいよ。『氏んでもすぐに生き返って。何度でも蘇生して』」

@四季「そ、そんなことまで可能だっていうの!?」

歩夢「下から出てきたら適当に治してまた食べさせるから、早く慣れた方がいいと思うよ」

サスケ「シャー♪」パクッ!

@四季「あっ、あっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛っ゛!!!!!!!!」

66: 2023/09/16(土) 20:50:46.23 ID:ILVvrLek.net
お仕置き開始から3日後 璃奈ちゃんハウス

四季「……璃奈ちゃん、生きてる?」

璃奈「……氏んでる」

四季「そっか、私と一緒だ」フフッ

璃奈「四季さんとお揃いで嬉しい」ヘヘッ

四季「me too」

璃奈「……歩夢さんと千砂都さんは帰ったよね?」

四季「多分、そのはず。これでドアの陰から出てきでもしたら、私は気絶する」

璃奈「me too」

67: 2023/09/16(土) 20:54:07.98 ID:ILVvrLek.net
璃奈「体には何のダメージもないはずだけど、ちょっと動くのは難しいかな」

四季「私も最後に体を治してもらったけど、もう少し寝転がっていたい。床は硬くて冷たいけどさ」

璃奈「でも、千砂都さんはすごかったなあ」ハー

璃奈「人の能力の臨界を極めて極地に至った結果として、もはや人ではなくなってしまったというか……」

璃奈「私の監視に気づいたのも、見られてる気がして上を見たらカメラがあったからとか言うんだよ?」

璃奈「そんな当たり前みたいに言わないで欲しい。璃奈ちゃんボード『ちぃこわ』」

四季「それを言うなら、歩夢ちゃんもすごかった」ウンウン

四季「あれは完全に人じゃない。単に人のかたちをしてるってだけのものだ。いや、ぽむ玉が本体でしょ」

四季「ぽむ玉の力で、氏者の蘇生だけじゃなくて平行世界の移動も永遠の命も時間旅行も可能なんだって」

四季「もはや全知全能ってレベル。幼馴染に告白するのは無理だったみたいだけどさ」

璃奈「でも、あれだね」

四季「うん、そうだね」

しきりな「「どういう仕組みなのか調べたいなあ。実験したい!!」」キラキラ

69: 2023/09/16(土) 20:57:31.97 ID:ILVvrLek.net
璃奈「科学者だけでなく技術者でもある身としては、千砂都さんの技術への興味は尽きないよ」

璃奈「あの絶技を観測して分析して理解できれば、きっと私の作るスイッチもひとつ上の水準へと至れる」

璃奈「これ以上ない最高の実験対象だよ!」

四季「私は生物も専門だから、あのヘビのことも調べてみたい。ぽむ玉だけじゃなくて」

四季「この3日間で、私を呑んで出してを7回もやったんだ」

四季「消化に半日もかからないのは明らかに異常。サスケは鍛えてるからとか歩夢ちゃんは言ってたけどさ」

璃奈「確かに千砂都さんのことを考えるだけで、体が勝手に震えちゃうよ」カタカタ

璃奈「でも、これは武者震いってやつだね」カタカタ

璃奈「あれを解き明かすためなら、私の命なんてまるで惜しくない! 璃奈ちゃんボード『(`・ω・´)キリッ』」

四季「うん、その通りだ。科学が発展する意義に比べれば、人の命の価値など羽のように軽い」

四季「たとえ、それが自分の命であったとしても」

四季「恐怖は氏から遠ざかるために生物が獲得した本能だけど、今は無視すべきだ」フフッ

四季「まあ、すっごく怖いんだけど」カタカタ

71: 2023/09/16(土) 21:01:12.96 ID:ILVvrLek.net
四季「璃奈ちゃん、千砂都先輩に『もう二度とあんなことはしないから許して』って言ってなかった?」

璃奈「口では何とでも言えるよね。そんなものに意味はないよ」

璃奈「四季さんこそ、もうあんな氏に方はしたくないんじゃない?」

四季「そりゃあ、あんな魅力的な研究対象が目の前にいるのに、何も分からないまま氏ぬなんてごめんだね」

四季「でも、この世の真理に到達するための代償であるのなら、ヘビの腹の中で溶けて氏ぬのも本望」

璃奈「確かに。あの2人を調べ尽くせば、神ならぬ身にて天上の意思に辿り着けるかもしれない」

四季「あの2人の能力をコントロールして支配できれば、私たちは神の知らないことだって知れる」

四季「まあ、今すぐやろうとしても返り討ちに遭うのが関の山だから、一歩一歩コツコツと実験しよう」

璃奈「疲れてるし今日はこのまま一緒に寝て、明日の早朝から実験しようね。早起きは三文の徳だしさ」

四季「かのん先輩に手を出さなければ一期生でも大丈夫な気はするけど、念のため二期生を提供する」

璃奈「こっちは、かすみちゃんが無難かな。相方のしずくちゃんもなんだかんだ言ってクソ雑魚だしね」

四季「ああ、やっぱり楽しみだなあ。じゃあ、明日は……」

璃奈「うん、このために生きてる。起きたら、一緒に……」

しきりな「「さあ、また実験を始めよう!!」」

72: 2023/09/16(土) 21:01:37.14 ID:ILVvrLek.net
終わりです

73: 2023/09/16(土) 21:04:08.66 ID:O9A65/6r.net

74: 2023/09/16(土) 21:05:26.72 ID:H6Doaq+C.net

いつか悪魔の科学者とか言われそう

: 璃奈「我らラブライブ科学部」四季「本日の実験を開始する」