496: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/07/07(日) 01:46:47.68 ID:g+Df2CSTo



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




 ユズ「ん~平和っていいなぁ♪」

死神ユズは幸せを噛みしめながら、一人夜の空で次なる獲物を探し求めていた。
神崎昼子ことブリュンヒルデはお留守番。
何故なら学校の宿題があるからだ。

ユズ「けど、お家で宿題が出来るっていうのは平和の証拠だよね♪」

先日までユズはルシファーの姦計による『偽物の自分』のせいで人間界では犯罪者扱い。
けれど無事ルシファーを討伐し晴れて無罪放免。
これでもう何も気にせず動き回れる。

ユズ「後ろめたいことが無いのって気持ちいいねー♪」

ユズ「まぁ、もともと悪いことしてないんだけどさ♪」

ご機嫌。
ストレスから解放された反動か、つい独り言が多くなってしまう。

ユズ「さてさて、これで残りは『嫉妬』と『色欲』と『強欲』だよね!」

ユズ「『暴食』を狩る手間が省けたのは良いんだけどさ…」

ただユズは決して無意味に独り言を放っていたわけでは無い。
むしろその独り言を聞かせていたのだ。
では、一体誰に?

ユズ「―――貴女ももしかして狩られる側?」

「…!」

「ふぅん……気づかれていた?」

ユズの問いかけに反応し、そして言葉が返ってくる。
その言葉の主は黒き翼を持つ少女だった。







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




497: 2013/07/07(日) 01:48:00.68 ID:g+Df2CSTo
ユズ「そんな魔力をビンビンに発してて気づかないわけじゃん!」

ユズ「その黒い翼……『堕天使』だね?」

ユズ「アタシを追跡して何か用?」

ユズは黒き翼を持つ少女に問いかける。
ユズの言う通り、その少女の正体は『悪魔』であり『堕天使』だった。

「別に、貴女のことを好き好んで追跡してるわけじゃないんだけど?」

「自意識過剰なのよ」

「……堕天使だってわかってるんだ」

少女はクールに吐き捨てる。
が、どうも語尾は独り言のようにしか聞こえないがユズはあえて気にしなかった。

ユズ「自意識過剰も何も追跡してるのは事実じゃないのさっ!」

ユズ「なに?サタン様の命?」

「……けど、この翼を見れば一目瞭然?」

少女は答えない。
むしろ無視して独り言を続けている。
その様子には流石のユズもカチンとくる。

498: 2013/07/07(日) 01:49:11.88 ID:g+Df2CSTo
ユズ「……って、『堕天使』からの監視なんてアタシでさえ聞いてないしねー」

ユズ「貴女も勝手に地上に降りてきたってやつ?」

『魔族』は契約・魔王からの許可無しでの人間界での活動は法の改訂により御法度だ。
目の前の少女がその罪を犯した存在ならば魔王に仕える身として見逃すわけにもいかない。

ユズ「貴女の目的はわからないし、法の改訂についても知らなかったのかもしれないけどさっ…」

ユズはバッジを手に取り、それを鎌へと変形させる。

「……この翼、どうしよう…どうしよう…」

ユズ「アタシの前に出てきたのが運の尽き♪ってねーっ!」

そして未だ独り言を呟いている少女の魂を目がけて躊躇いもなく振りかざした。

「……ハッ!」

しかし、少女はユズの斬撃に咄嗟に反応し、すんでのところでそれを回避した。

ユズ「!?…思ったより反射神経良いんだね?」

罪を犯した者に容赦は無用。
そう思って不意打ちを仕掛けたのにも関わらず、その少女の回避速度には思わずユズも驚きを隠せなかった。

499: 2013/07/07(日) 01:50:00.92 ID:g+Df2CSTo
「ふぅん。不意打ちね」

「けど、外れたわね。残念でした」

少女は余裕綽々と言った表情でユズのことを見下している。
本来楽観的な性格のユズだが、どうも目の前の少女の澄まし顔は鼻が付く。

―――何故なら、その少女の態度に自分を罠に陥れた『傲慢』の感情を感じたからだ

『努力』を否定するベルフェゴールも決して許すことの出来ない存在だったが、自分の姿で好き勝手やってくれたルシファーには討伐したと言えども少なからず私怨を抱いている。
目の前の少女は性格こそルシファーとは違いお堅い印象を感じるが、それでもまるでルシファーが変化して自分の前に再び現れたような錯覚に落ちた。

ユズ「理不尽な恨みって言われたらそれまでなんだけどさぁ…」

ユズ「ちょっと本気で気に入らないんだよねー!」

感情に任せて、ユズは再び少女の魂を目がけて斬りかかりにいく。
スピードは十分。
相手の虚もついているはず。
しかしあろうことか、今度は完全に余裕を持って回避される。

ユズ「…!?」

「また同じ軌道?バカの一つ覚えってやつね」

500: 2013/07/07(日) 01:51:02.03 ID:g+Df2CSTo
ユズ「…もしかして甘く見すぎたカナ?」

魔術を使用していない分、余力は十分に残っている。
しかし、先ほどの斬撃のスピードは以前相見えたベルフェゴールの身体能力を上回るほどの速さだ。

「ふぅん。全力では無いって?強がりは立派ね」

相変わらず澄まし顔をした『堕天使』の少女。
その少女の余裕を崩してやろうとユズがもう一つのバッジに手をかけ杖に変えようとする際、目の前の少女から思わぬ言葉が零れた。

「……この子にルシファーが負けた?冗談でしょう?」

ユズ「…!!」

「……」

少女の口から出た言葉はルシファーの名。
しかし少女本人はその名を口に出したことに気づいていない様子。
どうも無意識に独り言を呟く癖があるようだ。
しかし、これで合点がいった。

少女の鼻につく態度。
自分が少女に感じた嫌悪感。
少女が自分を追跡する理由。
黒き翼を持つ堕天使。

実際に魔界で相見えたことは無いが、その名は聞いたことがある。
大罪の悪魔であり、天界を堕天したルシファー。
そしてルシファーと共に堕天した、天使の存在。

ユズ「―――貴女、堕天使『アザエル』だね?」

「…ハッ」

501: 2013/07/07(日) 01:51:37.74 ID:g+Df2CSTo
「いけない…また考えてること喋っちゃってたのね…」

ユズ「ルシファーの名前だけだけどね」

「はぁ…私、独り言多いな…」


―――堕天使『アザエル』


その名は『神により強くされた者』を意味する。

ユズ「…アザエル本人は自分自身に自信が持てなかった」

ユズ「けれどルシファーに唆されて、その心に『傲慢』の感情を生み出し、共に堕天した…」

ユズ「こんな感じだったカナ?」

「…ふぅん」

「賢いのね……見た目より」

ユズ「…最後のは余計だよ」

502: 2013/07/07(日) 01:52:12.77 ID:g+Df2CSTo
ユズ「まぁ、ルシファーと共に堕天したっていうことは、アレだ」

ユズ「ルシファーの敵討ちに来たってわけでしょ?」

「そんな気も起きないわ……拍子抜けだもの…」

二度の斬撃を躱したことで完全に見下しているのか。
『アザエル』はユズに興味を無くしてしまった様子だ。

ユズ「じゃあ、何しに来たんだって話になるけど…」

ユズ「ここまでコケにされて、アタシが「じゃあサヨナラ」なんて言うと思う?」

ユズ「そして、その身体は人間のモノだね?」

ユズ「契約していない人間に憑依するのは罪だって知ってるカナ?」

ユズの言う通り、黒き翼が生えていえども、その少女の肉体は人間そのものだった。

千鶴「ええ。知ってるけど?」

『松尾千鶴』こと『アザエル』は、さも当然とでも言いたげに口を開く。

ユズ「だったら、手加減は無用だね」

ユズ「ここで狩らせてもらうよっ!」

千鶴「そう」

千鶴「―――まぁ、いいけど」

503: 2013/07/07(日) 01:52:42.69 ID:g+Df2CSTo
ユズが杖を手に取り『アザエル』の魔力を吹き飛ばそうとした刹那だった。

ユズ「…!?」

ユズ「(…魔力が込められない!?)」

ユズ「(な、なんで…!?)」

魔術が使えない。
それどころか、自身の身体から魔力さえ感じなくなっている。

千鶴「どうしたの?早くしてよね?」

『アザエル』はユズに催促する。
しかし『アザエル』が何か先に仕掛けたのは明白。
でなければ、急に魔術が使えなくなるだなんてことはあり得ない。

ユズ「(ていうか、まだ微かに魔力が残っているから良いけど…)」

ユズ「(完全に魔力を失ったら、アタシ地面に叩き付けられちゃうよ…)」

ユズ「(それに『アザエル』がアタシに何をしたのかも、わからない…)」

『魔族』は自身の魔力によって空を飛行することが出来る。
しかし、その魔力が尽きてしまえば、それは不可能となり空から叩き付けられるだけ。
『魔族』とはいえ、この高さから叩き付けられるのは洒落にならない。

ユズ「…くっ!」

504: 2013/07/07(日) 01:53:25.88 ID:g+Df2CSTo
魔力を完全に練り上げるのも時間がかかる。
その間に仕掛けられたら一巻の終わりだ。

新たな標的を目の前にして不服ではあるが、やられてしまっては元も子も無い。
ここは『アザエル』が自分への興味を無くしていることを甘んじて受け入れ、この場を引くしかない。

ユズ「…くっそぉ…!!」

ユズ「覚えてろー!!」

ユズは泣く泣くなけなしの魔力でその場から全力で逃亡した。
当の『アザエル』はユズを追いかけるわけでも無く、ただその様子を無表情に見てる。

千鶴「まぁ、別に倒してしまっても良かったのだけれど」

千鶴「興味無くしちゃったしね」

千鶴「それよりも、彼女がルシファーを倒したというのは何かの間違いね」

千鶴「きっと、他にいるはず…」

一通り独り言を呟いたあと『アザエル』は黒い翼をはためかせて、夜の空へと消えていった。

505: 2013/07/07(日) 01:54:01.32 ID:g+Df2CSTo
―――魔界更生施設

ベルフェゴール「もう無理ゲー…」

ユズに敗北し、キヨラに裁かれ、無力な少女の肉体のまま罪の重さの分だけ強制労働することになったベルフェゴール。
僅かな休息時間があるものの『怠惰』を司る者としての精神は既に限界寸前だった。

ベルフェゴール「これなら処刑されてデータ破損の方がマシだって…」

ルシファー「貴女には生き地獄よねぇ」

そんなベルフェゴールに語りかけるは、同じくキヨラによって裁かれた醜き悪魔ルシファー。
その罪はベルフェゴールよりも重く、数十世紀の強制労働は約束されている。

ベルフェゴール「…こんなとこでも随分余裕じゃん」

ベルフェゴール「『傲慢』にとって他の者の『下』で働くなんてプライドが許さないんじゃないの…?」

ベルフェゴールの言うことはもっともである。
自分に絶対的自身を持つ『傲慢』の感情を持つ者が『下』に見られるという屈辱に耐えられるはずがない。

ルシファー「まぁねぇ」

ルシファー「けど、それも後少しの辛抱よぉ?」

ベルフェゴール「…どういうこと?」

ルシファー「うふ…」


―――『神により強くされた者』を敵に回しちゃったのはミステイクってこと♪

―――人間界が悪魔の手に落ち、そして彼女がいずれ魔界を統べるほどの力をつければ

―――私たちも自由ってことね♪

506: 2013/07/07(日) 01:55:22.71 ID:g+Df2CSTo
松尾千鶴(アザエル)(松尾千鶴の肉体は15歳)



職業:堕天使
属性:神により強くされた者
能力:詳細不明

本来は自分に自信の持てない天使だったが『傲慢』のルシファーに唆され、共に天界から堕天。
『神により強くされた者』の異名を持ち、ルシファーにはその力を見出された。
『神によって与えられた力を、神に反抗する為に使う』とまで言われているが、その能力は現在のところ不明。

ルシファーと共に堕天したのだが『アザエル』自体の社交性は低く、不愛想。
考えていることを口に出してしまう癖がある為、出来れば一人で行動したいらしい。

自分の力を見出してくれたルシファーの為か否か、ルシファーを討伐した者を追いかけている。
が、ユズには興味を無くしてしまったようだ。

憑依した人間の少女の名は『松尾千鶴』
七三分けで太眉がチャーミングな15歳である。

507: 2013/07/07(日) 01:56:14.62 ID:g+Df2CSTo
おわりです。
四大天使出し切る前に新しい堕天使出して、またフラグだけ立てちゃった…

508: 2013/07/07(日) 01:59:25.70 ID:/1d/gz7Y0
乙ー

けど悪魔の名前って継承されないとアレだから、アザエルの名前も継承されたのか

ルシファーも継承された名前だし……一体天界では何人堕天しては名前を継承されてるんだろうか…




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3