679: ◆3Y/5nAqmZM 2013/07/08(月) 18:17:37.32 ID:ujSw71iWo



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




 京都、小早川邸。紗枝が退治屋の会合へ出席するため不在と聞いた周子は、縁側で珠美と談笑していた。

「・・・鬼の作った刀、ですか?」

「そ。知り合いがどっかのお偉いさんに頼まれて作ったんだけど、そっちで使う前に色々あったらしくてさー。今はお孫さんに使い手を探させてるんだって」

あいつが選ぶ相手なら間違いは無い、なんて孫バカだよねー、とかんらかんらと笑いながら周子は振り返り、

「・・・あれ、何かあんまり興味ない感じ?」

きょとん、とした顔のままの珠美を見て以外そうな声をあげた。

「興味がない、と言えば嘘になりますが・・・珠美には、西蓮が居りますので。今は、他の刀を持つ気はありません」

『ま、珠美とマトモにつきあえる刀なんざ、オレ様以外にゃそうそう無ェだろうよ。並の刀じゃァこいつのバカ力ですぐひん曲がっちまう』

「・・・一応、フツーの刀のはずだよね、西蓮って」

人の身で鬼と恐れられた武人の魂を宿し妖気を纏うとはいえ、西蓮は本来妖怪退治に使う為に作られた専用の刀ではない。

欠けず、曲がらず、折れず、という性質を得たことで結果的に妖怪にも通じる刃を手に入れただけで、紗枝のとっておきのような『そのための刀』とは別物なのだ。

それを軽々扱い、妖怪どもを斬り伏せる珠美ともども末恐ろしいもんだ、と胸中でつぶやいた周子は、『その気配』を感じて溜息をひとつ。

「ありゃー、紗枝ちゃんがお出かけしてる時にこれかー。珠ちゃん、一人で大丈夫?」

「ご心配には及びませんよ、周子殿。これでも珠美は、紗枝殿から直々に留守を任されたのですから。行きますよ、西蓮!」

『オゥ、ちゃちゃっと終わらせてやろうじゃねェか』

そう言って、呼び出した鳥型の式神の背に飛び乗り、気配の方へと向かう珠美。

「・・・なーんか、変なカンジするんだよねぇ・・・ついてった方がいいかなー」

その背を見ながら、普段よりも幾分真面目な面持ちで、周子はぽつりと呟いた。







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




680: 2013/07/08(月) 18:18:38.36 ID:ujSw71iWo
シュゥゥゥ、と耳障りな音を掻き鳴らし身をくねらせる、10メートルはあろうかという大蛇を前に、珠美は苦戦を強いられていた。

「っ、はぁっ!!」

跳びかかって来た大蛇を最小限の動きで躱し、すれ違いざまに一閃。胴の中ほどから真っ二つにされた大蛇は、のたうちまわりながら周囲にあった木に噛みついた。

『・・・チッ、どうなってやがんだ、アイツぁよォ!?』

そしてそのまま、大木をバリバリと『喰らう』と、斬り落とされたはずの身体が、断面から見る見るうちに『新しく生えてくる』。

『周りのモン喰って回復するだァ?ヘビ野郎にそんな力があるなんざ見た事も聞いた事もねェぞ・・・!』

「斬っても斬ってもキリがありませんね・・・どうしたものか」

幾度となく胴を両断し、首を落とし、尾を斬り裂き、そしてその度に周りの何かしらを食うことで元通り。

短時間ですでに何度繰り返したか、流石の珠美も息が上がり始めていた。

「・・・頭から、縦に斬り込みます。物を飲み込めない身体にしてしまえば、あの回復能力も封じられるはず・・・!」

『はッ、下手打ちゃぁそのままパックリ丸呑みだな。だが、それしか無ェか・・・!』

西蓮を大上段に構え、大蛇を誘い込まんとする珠美。果たして大蛇は隙だらけの珠美を呑みこまんと顎を開き跳びかかる。

「今、っぐぁっ!!?」

『ッ、珠美ッ!!』

681: 2013/07/08(月) 18:19:27.86 ID:ujSw71iWo
好機、と斬りかかった珠美は、不意に横あいから襲いかかった衝撃に吹き飛ばされる。歪む視界の端に、叩きつけられた大蛇の尻尾がちらついた。

(頭は、陽動でしたか・・・不覚ッ・・・)

ぐらつく頭を抑え、痛みに顔を顰めながら立ち上がった珠美は、取り落とし地面に転がった西蓮を回収しようとする。しかし、振り回される大蛇の尾が邪魔をして西蓮の元へとたどり着くことができない。

「くっ、こいつ、何故こんなに執拗に、っあぅっ!!」

背中を強かに鞭打たれ、珠美は再び吹き飛ばされ宙を舞う。

「か、はっ・・・ぁ・・・」

服の下に仕込んだ護符を以てしても、あまりの衝撃に呼吸もままならない。朦朧とする意識で、それでも大蛇に向きなおった珠美は、そこに信じられない物を見た。


「・・・・・・ぇ」

『なッ・・・』


大蛇が、西蓮の柄を咥え、持ちあげる。そしてそのまま、


「・・・・・・さい、れん・・・?」


するり、と、呑みこんでしまったのだ。


シュゥゥ、と満足げに一つ息をついた大蛇は、巨体を引きずりその場から去っていく。

目の前で起きた事へのショックか、それとも全身にこびり付いた鈍い痛みのせいか。

立ち上がることすらできずに、珠美は霞む視界に、悠々と逃げおおせる大蛇の姿を、黙って見送ることしか出来なかった。

682: 2013/07/08(月) 18:20:04.10 ID:ujSw71iWo
「・・・ちょっと厄介だね。あの妖怪、どうにも『カースの核』を取り込んだみたい」

幾らなんでも遅すぎる、と様子を見に来た周子に手当を受けながら、珠美はあの大蛇についての情報を聞かされた。

何らかの方法で『暴食』の核をその身に取り込んだことで、失った身体を周囲の物を『喰らう』ことで修復する能力を得たのだという。

「しかも、厄介なのはそこじゃなくてね。妖気だったり魔力だったり、そういう物を取り込むことで、自身を強化することもできる」

執拗に西蓮と珠美を引き離そうとしたのはそのためだ。妖刀である西蓮を喰らうことで、その力を取り込むのが目的だったのだ。

「正直、今のままじゃ厳しい。紗枝ちゃんにすぐ戻ってもらうように連絡はしたから、一旦体制を立て直すよ」

「・・・・・・取り込まれたものは、その後、どうなるのですか」

ぼそり、と力なく問いかける珠美に、周子は一切を隠すことなく告げる。


「・・・・・・恐らく、もう完全に一体化してしまった。西蓮を取り戻すのは、正直言って諦めた方が良いかもしれない」

683: 2013/07/08(月) 18:21:00.86 ID:ujSw71iWo
「・・・周子はんでも、どうにもなりませんか」

「あたし、これでも妖怪だからね。下手にあいつを刺激すると、余計に凶暴化するかもしんないし」

人間に友好的とはいえ、妖怪である周子は本来の性質はカースらに近い。現在この場において、あの大蛇に対峙しうるのは紗枝と珠美しか居なかった。

「・・・ぐ、ぁっ・・・!」

「・・・やっぱり、あきまへんか」

その珠美も、西蓮が無くては戦いようが無い。小早川の持つ妖刀を使おうにも、今の傷だらけの珠美ではその妖気を抑えられない。

「はぁっ、はぁっ・・・っ、ぐ、ぅぅ・・・っ」

幾度も刀を取り落とし、それでもまた拾っては構えようとする珠美の手を、周子が掴んで引き留める。

「珠ちゃん、ストップ。今の状態でそれ以上やったら、球ちゃんが壊れるよ」

「っ、はなし、て、ください、周子どの・・・珠美、は」

「・・・最終手段、ないこともない。今、紗枝ちゃんに式神飛ばして呼んでもらってる。だから、もうちょっと我慢して」

「・・・ちょうど、来はりましたえ」

周子の言葉に、珠美が俯いていた顔を上げる。それと同時に、紗枝の飛ばした式神が、来訪者を連れてきた。

「お久し振りです、周子さん。そちらのお二人は、はじめまして。刀匠、藤原一心の孫、藤原肇と申します」

684: 2013/07/08(月) 18:22:26.68 ID:ujSw71iWo
「これです。日本一、大食らいな刀『餓王丸』。目には目を、歯には歯を、暴食には暴食を、です」

そういって、肇は珠美に一振りの刀を、周子曰く『最終手段』を差し出した。

西蓮に勝るとも劣らない大刀で、本来鍔のあるべき場所には深い藍色をしたカースの核が設えられている。

「この子なら、あるいは西蓮さんを取り戻せる可能性もあります。確実に、とは言い切れませんが・・・」

鞘から引き抜けば、獣の牙を思わせる荒々しい刃文を持った刀身が姿を現す。野性味と美しさを兼ね備えたその姿に、珠美は思わず溜息を漏らした。

「・・・いい、刀ですね」

「ふふっ、ありがとうございます。おじいちゃ・・・祖父も、それを聞けば喜ぶと思います。この子の能力ですが・・・」

説明を受けた珠美の目に、幽かな希望と、強い決意の光が宿る。

「・・・それなら、確かに西蓮を取り戻せるかもしれません」

「ですが、扱いの難しい子です。決して、無理はなさらないで下さいね」

685: 2013/07/08(月) 18:23:03.24 ID:ujSw71iWo
再び大蛇と対峙する珠美。その後方には、紗枝と周子が控える。

対する大蛇も、天狗や鬼、その他様々な妖怪を引き連れ、さらに大きくなった巨体でとぐろを巻いて悠然と構える。

「周りの木っ端はうちらが引き受けます。珠美はんは、大蛇に斬りかかることだけを考えて」

「ヤバいと思ったらすぐに引っ張り戻すからそのつもりでね。あとは紗枝ちゃんにやってもらう」

「了解です。・・・では、行きますッ!」

だん、と強く一歩を踏みしめ、珠美はわき目も振らずに大蛇へと突進する。

立ちふさがろうとする妖怪どもは、紗枝の式神や周子の狐火が振り落とし、一直線に道を作る。

(肇殿が言うには、大きな相手を斬る際に最も適した場所は頭)

大蛇が動きだすより早く、とぐろを階段のように駆け上り、一気に距離を詰める。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

一閃、餓王丸の刃は、大蛇の片目をすぱん、と斬り裂く。それと同時に珠美は、どくん、と刀身が脈打つのを感じ、


「・・・っ、あ、うぅぅッ!!?」


次の瞬間、何かが身体に流れ込んでくる感覚に短い悲鳴を上げた。

686: 2013/07/08(月) 18:23:42.30 ID:ujSw71iWo
(何ですか、これはっ・・・気持ち、悪いっ・・・!?)

何とか着地には成功するも、どろり、と泥のように粘りつく不快感に顔をしかめる。

(これが、餓王丸が『相手を喰う』感触ですか・・・!?)

『暴食』の刃、餓王丸。その能力は、斬りつけた相手の性質を刀が『喰らい』、それを刀身や使用者に『反映』させること。

今の感覚は、この大蛇の『食らうことで回復する』性質が珠美の体に流れ込んだ感触なのだろう。現に、身体に残っていた鈍い痛みが引いて行くのがわかる。

だが、これは。

(まずい・・・まともに、立っていられない・・・ッ)

身体中を這いずりまわる強烈な不快感に、珠美は思わず膝をついてしまう。そして、その隙を逃がす大蛇ではない。

大口を開け、珠美の真上からその顎を叩きつけるようにして、丸呑みにせんと踊りかかる。

「っ、球ちゃん、っと!?くっ、邪魔、すんなっ!!」

その様子を見た周子が珠美を引き戻すために術を放とうとするが、周囲の天狗たちに斬りかかられ邪魔をされる。



どすん、という地響きと共に、珠美の身体は大蛇の口の中へと消える。

687: 2013/07/08(月) 18:24:28.34 ID:ujSw71iWo





『・・・ったく、ボサっとしてんじゃねェよ』



くぐもった声が、大蛇の口の中から響いた。





688: 2013/07/08(月) 18:25:24.12 ID:ujSw71iWo
ずぱん、と音をたて、大蛇の頭が横一線に引き裂かれる。


『やっぱ半人前だなァ、珠美?オレ様が付いてねェと何にも出来ねェでやんの』

「・・・一人では、動くこともできないあなたに言われたくありません」


その中から現れたのは、刀を振りぬいた姿勢の珠美。


『・・・ま、理屈はよくわかんねェけどよ。戻って来てやったぜ』

「珠美が連れ戻してあげたんですよ。・・・おかえりなさい、西蓮」


そして、同化した大蛇を餓王丸が『喰らった』ことで、その刀身に魂を移した、西蓮であった。

689: 2013/07/08(月) 18:26:21.27 ID:ujSw71iWo
「――――――――!!!」

声にならない悲鳴とともに、のたうちまわる大蛇。周辺にいた天狗が数匹、その体内に飛び込み、自ら『食われる』。

そうして大蛇の身体が再生すると、それに留まらず、その身から翼が生み出され、大蛇が天へと舞い上がる。

「うっわ、あんなのアリ!?」

「くっ、周りの妖怪が邪魔でっ!」

そのまま逃げ去ろうとする大蛇を追おうにも、紗枝と周子は未だに妖怪どもの猛攻にさらされ身動きが取れない。

『珠美!』「承知ッ!」

ならば、それを追えるのは珠美と西蓮のみ。

『よォ天狗の兄ちゃん。ちょいと、その翼頂くぜ・・・ッ!!』

阻止せんと飛びかかって来た天狗を斬りはらい、西蓮が、餓王丸が『喰らう』。すると、珠美の背に、鳶色の翼が現れた。

「今度こそ、逃がしはしません・・・これでッ!終わりですッ!!」

飛び去ろうとする大蛇の眼前に、猛スピードで羽撃いた珠美が躍り出る。大蛇がそれに気づいた時には、もう自身の身体を止めるには遅すぎる。



「『 せ い や あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! !」』



気迫の雄叫びと共に斬りかかる刃は、大蛇自身のスピードすらも利用して、その身を両断する。断末魔さえ上げることも敵わず、大蛇は妖気の塵となって消滅した。

690: 2013/07/08(月) 18:27:03.48 ID:ujSw71iWo
『良いのかよ?一応、借りただけだったんだろ?』

「こうなった以上、珠美さんに持っていてもらうのが一番ですから。『餓王丸』もそう言っていると思いますよ?」

『・・・そうだな。んなら、遠慮なくこのまま珠美に使われてやるとするかね』

「えぇ。それにしても、珠美さん、大丈夫でしょうか?降りて来るなり気絶してしまうなんて・・・」

「・・・むにゃ・・さいれん・・・おかえりなさい・・・・・・」

『・・・寝言まで吐けるんなら、大した事ァ無ぇんじゃねえか?』

「・・・西蓮さん、もしかして照れてます?」

『なッ、んなワケあるか!大体、何で今のでオレ様が照れる必要があるよ!?』

「ふふっ、ではそういうことにしておきましょう。目を覚ましたら、珠美さんによろしくお伝えくださいね」

『あ、オイ何所行く気だテメェ、おい、待てって、この状態で珠美と二人きりにすんじゃねェ、おい聞いてんのか!!?』

「・・・えへへ、さいれん・・・・・・♪」

691: 2013/07/08(月) 18:27:43.36 ID:ujSw71iWo
鬼神の七振り『暴食』 日本一大食らいな刀『餓王丸』
鬼匠・藤原一心の鍛えた『鬼神の七振り』の一つ。獣の牙のような刃文を持つ『暴食』の刀。
斬りつけた物の性質を『喰らい』刀身に貯め込み、それを刀身や使用者に反映させることができる。一度に貯め込める量には限界があり、大体三つ位まで。
斬った相手が強大であるほど反映される性質も強力になるが、、それに比例して多大な精神力を要するため乱用はできない。
(例)鳥や天狗などの妖怪を斬ると使用者に翼を生やして飛ぶことができるようになる、ろくろ首などを斬ると刀身を曲げ伸ばしできるようになる、等
暴食のカースの核と同化し、西蓮を取り込んだ妖怪を斬ったことで西蓮の魂が乗り移ることとなった。餓王丸自身の意思のようなものも西蓮には感じられるらしい。

現在の性質:使用者に翼を生やす(天狗)、性質を『喰らう』と回復(大蛇)

692: 2013/07/08(月) 18:28:46.28 ID:ujSw71iWo
以上です
相手を喰って強くなるってロマンですよね!

693: 2013/07/08(月) 18:32:42.47 ID:C27M88pyO
>>693

乙ー

たまちゃんかわいい!

695: 2013/07/08(月) 18:35:28.46 ID:aDfWK28b0
乙です
妖怪も結構強いな…
暴食の強さを再認識
翼が生えたたまちゃんかわいい




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3