1: 2012/12/31(月) 14:00:40.78 ID:ar5+m5y+0
千早「ぷふっwwww」

響「ちょ、貴音! 何で独り占めなんかするのさ!」ガバッ

貴音「な、だ、ダメです! 離れなさい!」ジタバタ

響「いいからよこすんだ! ほら、しっかり均等になるように切るから!」

貴音「や、ちょ、響! 言っているでしょう! この柚子は絶対に譲れないと!」

千早「んぶふっwwwwwww」

響「み、みんなで分け合おうよ! その方がきっと美味しいってば!」

貴音「そういうことではないのです! 絶対に譲れないと、あ、そこは駄目です! やっ!」

響「ぐぬぬ~!」

美希「まず響は取っ組み合うなら包丁置くの」
ぷちます!(14) (電撃コミックスEX)
5: 2012/12/31(月) 14:05:07.32 ID:ar5+m5y+0
貴音「はぁっはぁっはぁ……」

響「ふぅ……ふぅ……もー、貴音! ちょっと食い意地はりすぎだぞ!」

貴音「うるさいですよ響! この柚子は絶対に!」

千早「っ……」グッ

貴音「絶対にっ………………だから駄目なのです」

千早「……」フッ

響「だから何でダメなんだ? 理由を聞くまで自分は諦めないぞ!」バッ

美希「だから暴れるなら包丁置いてほしいな」

貴音「理由……? 絶対に譲れないからと、さっきからそう言っているでしょう!」

響「それは理由になってないんだよー!」ギランッ

美希「隣にいるだけのほぼ無関係なミキに切っ先を向けないでもらえるかな」

12: 2012/12/31(月) 14:10:08.23 ID:ar5+m5y+0
響「あのな貴音、自分たちが聞きたいのはな」

美希「たち?」

千早「……美希?」

美希「……ううん、なんでもないの」

響「邪魔しないでほしいぞ美希」シラァン…

美希「ごめんなさいなの。だから包丁こっちに向けないでほしいな」

響「……だからな貴音」クルッ

響「……おい貴音、聞いてるのか? 何寝たふりしてるんだ?」

貴音「この柚子は絶対に譲れない……絶対にっ……!」ブツブツ

千早「んぷふっ! ……くくく……wwwwww」

響「た、貴音……」ポロッ ストン

美希「いきなり包丁落とさないで欲しいな。見てほら、ミキのちょうど足の親指と人差し指の間にストンって。あわや大惨事」

響「うるさいぞ美希っ!」

美希「ごめんなさいなの」

18: 2012/12/31(月) 14:14:41.85 ID:ar5+m5y+0
響「よっこいしょ」ズボッ

美希「一言言ってから行動してくれない? さっきからミキ恐怖で過呼吸気味なんだよ?」

千早「大丈夫よ美希。私がついてるから」

美希「……」

響「貴音、まずは聞いてくれるか」

貴音「絶対に~……この柚子は~……絶対に譲れない~……♪」

千早「なはっwwwwwwwwwwww」

響「た、たかね……!」

貴音「……なぜそうまでして……私からこの……絶対に譲れない柚子を奪おうとするのですか……?」

響「……そ、そんなの決まってるぞ! みんなで食べた方が、心があったかくなっておいしくなるからだ!」

美希「ミキ別にいらないって感じ。そもそも柚子ってそのまま食べる果物だった?」

千早「ジュクジュクに熟したものでも酸味がとても強いから、もっぱら調味料や香辛料にするみたいね」

響「みんなで食べよう! その柚子を!」

美希「引っ込みがつかな「うるさいぞ美希っ!」ごめんなさいなの」

19: 2012/12/31(月) 14:17:30.09 ID:ar5+m5y+0
響「逆に聞くぞ貴音! なんで貴音は、その柚子を独り占めしようとするんだ?」

貴音「絶対に譲れない柚子です」

千早「フフーフwwwwwwwwww」

響「……その絶対に譲れない柚子を、貴音は何で独り占めに……」

貴音「言わずもがな、この柚子が絶対に譲れない柚子だからです」

響「だーかーらー! うわーん! なんなの、もー!」

美希「……こういう時の響かわいいのにな」

響「ありがと美希!」ビュンッ!

美希「本当に怖いから包丁振り回すのやめてほしいなって!!」

千早「四条さん、それじゃあどうしてその柚子は、その、絶対に譲れな……んんwwwwwww」

響「そうだよ! 貴音、答えてもらうぞ!」

貴音「そ、それは……!」

22: 2012/12/31(月) 14:21:22.54 ID:ar5+m5y+0
貴音「分かりました……すべて話しましょう。あれは……今から20分前のことです……」

美希「昔話っぽく始まったけどついさっきのことなんだね」

千早「20分前というと……たしかプロデューサーが出て行く少し前のことだったかしら」

―――20分前、給湯室

貴音「あなた様……これは?」

P「ん? あぁ、これはな、柚子っていうんだ。知ってるだろ?」

貴音「柚子……名前だけは。ずいぶんと酸味が強そうな……クンクン……匂いですね、この果物は」

P「それはな、雪歩がこの前柚子茶を作ろうっていう番組の企画で収穫した、意外と上等な柚子なんだ」

貴音「ほう、柚子茶、ですか」

P「あぁ、おいしかったぞ。で、これはその余り。いくつかあるし、自由にしていいぞ。持って帰っても問題ない。食えるかは、柚子だから微妙だけどな」

貴音「なるほど……」

P「じゃあ俺はそろそろ出るから。あ、良かったらみんなにも伝えといてくれよ。それじゃ、行ってきます」

貴音「はい、お気をつけて」ペコリ

―――…

貴音「…………………………以上です」

23: 2012/12/31(月) 14:27:19.82 ID:ar5+m5y+0
貴音「そしてこの絶対に譲れない柚子は、その最後のひとつ」

千早「バブーフwwwww」

美希「…………」

響「…………」

千早「げほっげほっww……んっん! ふぅ……そんなことがあったのね」

美希「いくつかあったって言ったよね……最後の一つってことは?」

貴音「……こう、むしゃっと」

美希「…………」

貴音「どれも思いの外食べやすく、美味でして……気がついたら最後の一つ。一つぐらい、雪歩がしたという柚子茶にしよう、と……」

千早「だから……はっ……その柚子は絶対に譲れなっ……くふっ……ん!」

美希「もう千早さん、しゃべらなくていいよ」

貴音「ええ……響、納得いただけましたか……?」

響「…………」

27: 2012/12/31(月) 14:31:35.79 ID:ar5+m5y+0
響「……やっぱりダメだぞ……貴音。自分は納得なんかできっこない」

貴音「なんとっ」

響「だってそれ! その独占赦しちゃったら、貴音が全部食べたことになっちゃうだろ!」

美希「?」

響「他にも食べたいと思った人がいるかもしれない! それなのに貴音は……!」

千早「我那覇さん……」

響「……もしそんな、持って帰ってもいい果物がいくつかあったのに、それを誰にも言わずに貴音が全部食べちゃったって……」

響「そんなことがあったって、もしやよいに知られたら!」

千早「!!」

響「もちろんやよいは、表面上では『えへへ、全然大丈夫ですよ!』って言う! 言うよな、千早!」

千早「……え、ええ」

響「でもやっぱり心のどこかじゃ……兄弟のために……『ひとつぐらい、持って帰ることができたらなぁ』って……!」ポロポロ ストンッ

美希「……ひ、久しぶりに包丁きたの。見て見て、鳥肌」

32: 2012/12/31(月) 14:35:52.40 ID:ar5+m5y+0
響「自分はどちらかというと、どこかで貴音が悪者になっちゃうかもしれないってことが許せないんだ……」

貴音「響……!」

響「だから自分は提案するぞ。『ここにいる4人で食べて、貴音だけが悪者になるのを防ごう』って……!」

千早「我那覇さんっ……!」ウルウル

美希「これってけっこうな茶番だよね」

響「よっこいしょ」ズボッ

美希「ごめんなさいなの!」

貴音「響……あなたの覚悟は伝わりました……」

響「貴音……じゃあ……渡してくれるか?」

貴音「………………はい」スッ


千早「ついに柚子が……譲られビュッフェwwwwwwwwwwww」

36: 2012/12/31(月) 14:40:03.22 ID:ar5+m5y+0
響「じゃあ……いいな? 切るぞ?」

貴音「ええ……お願いします」

美希「やっと包丁があるべき使い方をされたの」

響「えっと、4人だから……4等分だな」

千早「え?」

響「半分、でまた半分に……」スッ

千早「え、ちょっと待って、我那覇さん!」ガシッ

響「うわあ!? ち、千早! 包丁持つ手を急につかんだら危ないだろ!?」

美希「は、今さらにもほどがあるの」


千早「待つのよ我那覇さん、冷静になって……! 今……『何て言った』……?」

ドドドドドドドドドドドドドドドド…

響「え……千早? ……何が……?」ゾクリ…

千早「……我那覇さん、今……『いくつ』に『切る』って言った……?」

ドドドドドドドド…

43: 2012/12/31(月) 14:44:55.60 ID:ar5+m5y+0
千早「…………」ギュウウウッ

響「いた! 痛いっ、ちょっと千早!? 手首をそんなに!」

貴音「千早! どうしたというのですっ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

千早「我那覇さん……あなた今、『4つ』に切り分けるとか……言わなかった……?」

響「ひぃっ!? い、言ったよ! 言ったけど何さ!?」

千早「ふんっ!」グイイィ

響「うわあ!」ドテテッ

貴音「響!」

千早「プロデューサーが言っていたわ……妙にしっくりときた……真実よ」

千早「いい、我那覇さん! 『4』はダメなのよ!」

響「いっつつつ……な、なんなのなの」

美希「ちょ、それミキの」

千早「『4』は『氏』を連想させる縁起の悪い数字なのよ! だから4は絶対にいけない!」

千早「『5』からひとつ選んだり、または『3』から選んだりはいい! けど『4』だけはダメなのよ! 分かった、我那覇さん!?」

51: 2012/12/31(月) 14:49:16.49 ID:ar5+m5y+0
響「じゃ、じゃあどうすればいいのさ! ここには4人いるんだぞ! しかもたとえば5つに切ったとしても、二人目は4つから取ることになるでしょ!」

千早「そうなのよ。だからこういう時は3つに切るのよ、それで解決」

美希「してないよね」

響「それじゃあ一人我慢しなくちゃならないだろ!」

千早「そう……かしら?」

美希「あ、ミキいらないから。響と千早さんと貴音で分け合って食べてていいよ」

響「誰かが我慢しなきゃいけないなんて……!」

美希「あれ? ミキ……あれ?」

千早「……四条さん」

貴音「!? ま、まさか」

千早「……もう十分、食べましたよね……?」

貴音「ち、千早!」

美希「いや、ミキいらないってば。ミキが食べないから3人で分けていいよ?」

55: 2012/12/31(月) 14:53:59.45 ID:ar5+m5y+0
響「千早、それはちょっと待つさ」

千早「どうして? 柚子はいくつかあって、それは四条さんがこれを残して全部食べてしまったんでしょう? すでに」

響「そうだけど……そうじゃない」

千早「はぁ……我那覇さん、あなた……」

響「プロジェクト・フェアリー!」

千早「―――!!」ドクンッ

響「……自分たちのユニットさ。美希、自分、貴音の3人。3人だぞ、千早……!」

千早「ま、まさか……!」

響「どうせならさ、千早……『ひとりに我慢させる』じゃなくって、『食べられる3人を選ぶ』って方向で考えないか……?」

千早「ぐっ……!」

貴音「響……!」

美希「あふぅ……おやすみなさいなの」コテン

貴音「え、あ、美希……」

響「起きるんだ、美希」シュッ サクーン

美希「……まつ毛が……まつ毛が舞ってるのが見えるの……」

60: 2012/12/31(月) 14:58:03.99 ID:ar5+m5y+0
貴音「……いえ、もう争うのはやめてください、二人とも」

千早「四条さん……」

響「貴音……」

貴音「もとはと言えば、私が伝えていなかったから……私が欲を出そうとしたために起きた、いわば人災……」

貴音「責任をとらせて下さい……私はもう、その柚子を食べません……!」

響「貴音……うん、貴音がそう言うなら……分かったよ」

千早「四条さん……ごめんなさい。私、あなたを悪く言ってしまったかもしれません」

貴音「良いのです、二人とも。さぁ……譲られた柚子を」

千早「んほおwwwwww」

貴音「……3つに切り分けてください」

響「貴音……うん、分かった……切るぞ!」

美希「え……ミキ食べなきゃだめ?」

62: 2012/12/31(月) 15:02:59.69 ID:ar5+m5y+0
―――そして切り終わり…

響「これが……柚子……!」

千早「すごいにおいね……これをミカン感覚で皮をプシューってやると洒落にならなそうだわ」

美希「……貴音、食べて?」

貴音「これは私への罰でもあるのです……どうぞ、気にせず食べてください、美希」

美希「……」


響「じゃあ、一気に行こう!」

千早「ふふ、いいわよ。我那覇さん、号令お願い」

響「ふふん、任せてよ! 美希も準備はいい?」

美希「……うん、いいよ……もうなんでも」

響「それじゃあ、行くよ! いただきまーす!」

ガブリ ガブ カプ

63: 2012/12/31(月) 15:03:47.72 ID:ar5+m5y+0
.

響・千早・美希「すっぱ」


柚子は生で食べるものじゃないそうです。


―――終わり―――

66: 2012/12/31(月) 15:05:43.76 ID:ar5+m5y+0
スレタイの元ネタはさまぁ~ずです
読んでくれてありがとう

68: 2012/12/31(月) 15:12:03.24 ID:Q04u0K8+0
おつ
ぉつ

: 貴音「この柚子は絶対に譲れません! ……絶対にっ……!」