花陽ママ「……いやいやいやいや」

凛ママ「仕方ない、出来ちゃったものは」

花陽ママ「軽すぎないっ？ねえ軽すぎないっ？」

花陽ママ「母親になるんだよ？」

凛ママ「……母親、か」

花陽ママ「そうだよ。……もう、もうすぐ卒業でよかったよ……」

凛ママ「……どんくらいで産まれるのかな」

花陽ママ「十月十日っていうし……大体10ヶ月だね」

凛「11月くらいか」

※凛ママ「11月くらいか」※

凛ママ「うーん……もう今年には産まれるのか……」

花陽ママ「どんな気分？」

凛ママ「正直よくわからん」

花陽ママ「だろうね」

凛ママ「……」

花陽ママ「……星空君は、なんて？」

凛ママ「……『大丈夫、しっかり働いて、お金を稼いで、なんとかする』ってさ」

花陽ママ「……よかったね」

凛ママ「……ん」

花陽ママ「……子供ができると、責任を取らずに逃げ出しちゃう人もいる世の中だからね……そういう意味でも、星空君で、よかったね」

凛ママ「ああ……」

凛ママ「……出来るとは思ってなかったけど」

花陽ママ「とりあえず、今日から規則正しい生活を送ってね？」

凛ママ「わーってるよ」

花陽ママ「本当に、ね」

～～～三月

凛ママ「後少しで卒業だなぁ……」

花陽ママ「だね…」

凛ママ「……あいつがさ、言ってきたんだ」

凛ママ「同棲しないかって……」

花陽ママ「……！」

凛ママ「ゆっくり、産まれるまで、安静にしててって」

花陽ママ「……良かったね」

凛ママ「ああ……迷惑かけちまうけどな」

花陽ママ「……どこかのアパートで？」

凛ママ「ああ。高１のころから、アルバイトで溜りに溜まった貯金を崩しながら、らしい。そんで、あいつ自信も、もう就職決まってるんだとさ」

花陽ママ「へえ」

凛ママ「……なんか、本当に、いろいろ変わっていくんだな」

花陽ママ「そうだね…頑張ってね」

凛ママ「ん」

花陽ママ「赤ちゃん出来ちゃった事、お互いの親御さんに伝えた時は大変だったね」

凛ママ「まあ、苦虫噛み潰すような顔してても、最後は許してくれたけど」

花陽ママ「……優しい人たちで、良かったね」

凛ママ「……甘いって言うんじゃねぇの？」

花陽ママ「それでも、いいと思うよ」

凛ママ「……そうか」

花陽ママ「うん……本当に……」

花陽ママ「星空くんと、会えて、良かったね」

凛ママ「……ああ」

花陽ママ「ふふ……あ、ちょっとトイレ行ってくるね」

凛ママ「ん、ああ」

～～～
ﾀｯﾀｯﾀｯﾀ……ﾊﾞﾀﾝｯ､ｶﾞﾁﾘｯ!

花陽ママ「う、うぉえ……」

花陽ママ(…………)ﾊｱ､ﾊｱ…

花陽ママ「…………」

～～～

……

花陽ママ「……赤線」

花陽ママ「……ど、どうしよう……」

花陽ママ(妊娠してるっ……！？)

～～～

凛ママ「今のおめーにはもうなんの説得力もないな」

花陽ママ「はい……」ｼｭﾝ

凛ママ「……とりあえず、小泉には……？」

花陽ママ「話した……驚いていたけど、『産んでくれ』って」

凛ママ「そうか」

花陽ママ「はあ、まさか自分がこうなるとは……」

凛ママ「不注意だったな、お互い」

花陽ママ(うう、欲に任せて後先の事を考えてなかったなんて……)

花陽ママ「はあ……」

凛ママ「まあもう仕方ないだろ」

花陽ママ「……私は不安だよ。ちゃんとした親になれるのか」

凛ママ「……」

凛ママ「盛すぎだろ」

花陽ママ「なぁっ……！？も、もっと他に言い方があるでしょ？！」

凛ママ「発情しすぎだろ」

花陽ママ「それもヤダー！！」

凛ママ「えOちしすぎだろ」

花陽ママ「……………………………………」

凛ママ「……」┐(´д｀)┌

花陽ママ「はあ……」

～四月～

凛ママ「……卒業したな」

花陽ママ「……うん」

凛ママ「……何考えてる？」

花陽ママ「つわりが辛い……食欲がわかない……」

凛ママ「わかる……」

凛ママ「……つわりって、３ヶ月がピークらしいけど……これすっげ辛いんだけど……」

凛ママ「食欲も……湧かないし……」

花陽ママ「……こんな、辛いとは」

凛ママ「式の時もまるで集中出来なかった……」

花陽ママ「クラスメイトに心配されたけど、言えるわけもないよね……」

凛ママ「……でも、明日からは」

花陽ママ「私大学行くんだけど……」

凛ママ「すまんな先に楽させてもらう……」

花陽ママ「ずるい……」

～五月～

凛ママ「ふう……」

凛パパ「……」ﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞ?

凛ママ「ん……もう、なんとか。食欲も出てきてるしな」

凛パパ「……」ｿﾚｼﾞｬ､ｲｯﾃｷﾏｽ

凛ママ「ああ、気をつけてな……」

～～～

凛ママ「…掃除しよ。……掃除機～」

凛ママ「……」ｷｭｵｵｵｵｵﾝ

凛ママ「……なんか、新婚みてぇだな」

凛ママ「……」

凛ママ「……」ｶｱｧｯ

～～～

花陽ママ「……ふう」

モブ女「あ、すみませ～ん、今日ー、新人だけの飲み会があるんですけど～……」

花陽ママ「あ、すみません、私、いまお酒は……」

モブ男「大丈夫だよ、19も20も変わんないって」

花陽ママ「いえ、そうじゃなくて」

花陽ママ「…………えーと」

花陽ママ「……お腹に赤ちゃんいるので…」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

モブ女「……！」

花陽ママ「……すみません」

モブ女「…………ううん、こっちこそ、ごめんなさい」ﾎﾞｿﾎﾞｿ

モブ男「ねえーいいじゃない、いこ……」

モブ女「はいはい、もう戻りましょーね」

モブ男「ええ？なんでだよ～……」

花陽ママ(……ありがとう)

～～～

花陽パパ「……」

花陽ママ「あ、小泉さん」

花陽ママ「どうしたんです、わざわざ……」

花陽パパ「……」

花陽ママ「……迎えに？……ありがとう」

花陽パパ「……」

花陽ママ「じゃあ、買い物して行きましょう。今晩はなにが食べたいですか？」

花陽パパ「……」

花陽ママ「毎日、体力を使うお仕事してるんですから、しっかり栄養をとらなきゃですからね」

花陽ママ「……それは今の私もですけどね」

花陽パパ「……」ｺｸｯ

花陽ママ「……帰りましょう」

～～～

花陽ママ「……♪」ｺﾄｺﾄ

花陽パパ「……」

花陽ママ(……こうしていると、なんだか、新婚さんみたい)

花陽ママ(……あ、でも……私たちって……結婚……するのかな)

花陽ママ(……いわゆる出来ちゃった結婚になるのかな……でも、私は……もともと……)

花陽パパ「……」

花陽ママ(……あの人は、どう思ってるんだろう)

花陽ママ(私と、結婚するって、思ってるのかな……？)

花陽ママ「……あの、小泉さん」

花陽パパ「……？」

花陽ママ「ちょっと、訊いてもいいですか？」

花陽ママ「小泉さんは、私に赤ちゃんができちゃったこと、どう思ってますか？」

花陽パパ「……」

花陽ママ「……」

花陽パパ『純粋に嬉しい』

花陽ママ「……！……そうですか」

花陽ママ「……なら、小泉さん」

花陽ママ「できてしまったから、仕方なく、と思われてしまうのも嫌なので……言いますね」


花陽ママ「……私と、結婚してください」

花陽パパ「……」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

花陽パパ「……」ｺｯﾁｷﾃ

花陽ママ「……？」

『本当なら、先に言おうと思ってたけど』

『緊張して、出来なかった……』

『そして、これも……渡そうと思った』

～～～

花陽ママ「……これ、は」

花陽パパ「……」ﾃﾚﾘｺ

花陽ママ「……指輪」

花陽パパ「……」ｳｹﾄｯﾃｸﾚﾙ?

花陽ママ「……はい」

花陽パパ「……」ﾄﾞｳｶﾅ?

花陽ママ「……もう。強くて、優しくて、頼もしくて、でもその分純粋で……そんなあなたがくれた指輪が」

花陽ママ「うれしくない、わけないじゃないですかぁ……」ｸﾞｽｯ

花陽パパ「……！」

花陽ママ「……えへへ、ちょっと、私の指には少しだけ大きいですね……でも、本当に……嬉しいです」

花陽パパ「……！……！」

花陽ママ「これからも、ずっーと、ずっと……一緒ですよ……」

花陽パパ「……！」ﾅﾍﾞ…

花陽ママ「ふぇ？」

ﾅﾍﾞﾌｯﾄｰﾎﾞｼｬｰﾝ

花陽ママ「ぎゃー！？」

花陽ママ「失敗しちゃいました……」

花陽パパ「……」ﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞ

花陽ママ「……あ、それ、変な味になっちゃってますよ……？」

花陽パパ「……」ｳﾏｲｶﾗﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞ

花陽ママ「……」

花陽ママ「……へへ」

～～♥

凛ママ「くかー……」

凛ママ「うーん、ﾑﾆｬﾑﾆｬ……ん？」ﾊﾟﾁｯ

凛パパ「……」ﾋｻﾞﾏｸﾗｰ

凛ママ「……あれ、お帰り……」

凛ママ「寝ちゃってたか……ごめん、飯の用意してなかった……」

凛パパ「……」ﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞ

凛ママ「え……あれ、いい匂い」

～～✩

凛ママ「いや、ほんとごめんな、疲れてるだろうに……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

凛ママ「うめぇ……」

凛パパ「……」ﾆｺﾆｺ

凛ママ「な、なにわらってんだよ」

凛パパ「……」ｶﾜｲｲﾅｧｯﾃ

凛ママ「な゛っ……！」

凛ママ「私なんか、別に可愛かねーだろ……」

凛ママ「愛想も悪いしよ……」

凛パパ「……」ｶﾜｲｲﾖ

凛ママ「かわいくねーっていってんだろ！？」

凛パパ「……」ﾆｺﾆｺ

凛ママ「ニコニコすんじゃねぇ！」

凛パパ「……」ｶﾜｲｲﾖ

凛ママ「あうっ……」

凛ママ「……だ、黙って食え！！ばーか！」

～五月～

凛ママ「……うーん」

凛パパ「…」ﾄﾞｼﾀﾉ

凛ママ「いや……ここ、私の拳２個分くらいには膨らみ始めてるなって……」

凛パパ「……」ﾎﾝﾄﾀﾞ

凛ママ「……どっちだろうな」

凛パパ「……」

凛ママ「……ふふふ」

凛ママ「……名前とか、もう決めておく？」

凛パパ「……」

凛ママ「……私は、女の子がいいなぁ……」

凛ママ「なんとなくだけどさ」

凛ママ「……」

凛ママ「いまになって、思ったけど、不思議な気分だな……」

凛ママ「だって、大体11月くらいにはもう産まれてるんだぜ？」

凛パパ「……」

凛ママ「怖いような、楽しみなような……わかんねぇや」

凛ママ「……なあ、お前はどう思う？」

凛ママ「父親になるんだぞ、お前」

凛パパ「……」

凛ママ「……私との子供だけどさ」

凛ママ「……お前は、わたしとで、良かったのか？」

凛ママ「……っていうかさ」

凛ママ「……お前、わたしと、結婚。するのか？」

凛パパ『当然』

凛ママ「……そうか」

凛ママ「……ありがとな」

凛パパ「……」

凛ママ「……じゃあちゃんと言ってくれよ」

凛ママ「結婚しよう、ってさ」

『結婚しよう』

～～～

凛ママ「…」

凛パパ「……」

凛ママ「ちょっと、こっちこい」

凛パパ「……」

凛ママ「……触ってみ」

凛パパ「……」

凛ママ「暖かいか」



凛ママ「そうだろう、なんせ……お前と、私の……夫婦の子供なんだから」

～六月～

花陽ママ「ようやくつわりも治まったね……」

花陽パパ「……」

花陽ママ「うん、そうだね……これからもいろいろ、体に影響があるよね……」

花陽ママ「妊娠６ヶ月くらいだと、便秘や下痢、こむら返りしちゃったり、足がつったり、あとは尿漏れ……」

花陽ママ「……ちょうど、あの子が６ヶ月かぁ……大変だろうね」

花陽パパ「……」

花陽ママ「うん、私も気をつけるよ」

花陽パパ「……」ｷﾞｭｯ

花陽ママ「えっ、どうしたの……？」

花陽ママ「……不安？大丈夫だよ」

花陽ママ「あなたがいるなら、私は辛くても平気だよ」

凛ママ「ぐおおおお？！足つったぁぁあ！」

凛パパ「……」ｵﾛｵﾛ

凛パパ「……」ｸﾞｯ､ｸﾞｯ

凛ママ「あてて……ありがとう、いてて」

～～～
トイレ

凛ママ『……』

凛ママ「……でねぇ」

～～～

凛ママ「うう、おっかしいな、下痢ばっかりだなぁ、いててて……」

凛パパ「……」ｵﾛｵﾛ

凛ママ「んー、大丈夫だ、心配はするな」

～～～

凛ママ「……あ、洗濯わすれて」

ｼﾞｮﾊﾞﾊﾞｯ

凛ママ「は？」

凛ママ「…………」

凛ママ「え、なんで、尿意とかぜんぜんなかったのに……」

ググッた

凛ママ「……そういうことか」

凛ママ「これからもこれが続くのね……はあ」

凛ママ「……まあ仕方ねぇ」

凛ママ「……」

凛ママ(……母さんも、こんな思いしてたのか)

～七月～

凛ママ「……そろそろ、女の子か、男の子か
わかる頃だな」

凛パパ「……」

凛ママ「ていうか、今日わかるんだけどな」

～～～

『……見えますか、これが……』

凛ママ「……どっちですか？」

『……女の子です』

凛ママ「……」

凛ママ(……女の子、か)

花陽ママ「…」

花陽ママ(……体重が、増えてき出した)

花陽ママ「脂肪がつきやすくなってるから、仕方ないけど……」

花陽ママ「……」ｻｽｯ

花陽ママ「……少しずつ、膨らんできたなぁ……」

花陽ママ「……」

花陽ママ「名前、どうしようかな」

凛ママ「……女の子だったよ」

凛パパ「……！」

凛ママ「どうする、名前」

凛ママ「女の子ってわかったけど」

凛パパ「……」ｳｰﾝ

凛ママ「……ってかよ」

凛ママ「実は、もう考えてるンだけどさ」

凛パパ「……！」

凛ママ「へへ、正直、悩みに悩んで、これでいいもんかも、それも悩んだけど」

凛ママ「でも、決めたよ」

凛パパ「……」ｵｼｴﾃ

凛ママ「ああ、えっとな…………」

…………

～８月～

花陽ママ「……下痢がすごい」

凛ママ「だろうな。私もすごい」

花陽ママ「はは……それにしても、もうほとんど、いかにも妊婦ってお腹になってるね」

凛ママ「ああ……出歩くのが少し辛くなってきた」

凛ママ「ってーか、不思議なのがさ、いままで美味いと思ってた食べ物がさ、急に美味く感じなくなってる」

花陽ママ「……そうなの？」

凛ママ「うん。こりゃ妊婦あるあるに違いない。母さんに聞いたら『あったあった』って言ってた」

花陽ママ「酸っぱいものって、食べたくなる？」

凛ママ「割と」

※なぜ凛ママはこの時代にググる事が出来たのでしょうか。忘れてください※

凛ママ「ふう……」

花陽ママ「……私もさ、赤ちゃんの性別、わかったんだ」

凛ママ「お、どっち？」

花陽ママ「女の子」

凛ママ「おー……どっちもか」

花陽ママ「どんな子になるんだろうね……」

凛ママ「……そりゃ、私達次第だな」

花陽ママ「……私は」

花陽ママ「何かに、ひたむきに一生懸命になれる、そんな子になってくれたら……嬉しいかなって」

凛ママ「ふーん……」

花陽ママ「あなたは？」

凛ママ「……とりあえず」

凛ママ「私と違って、多少地味でもいいから、真面目な子に、な」

凛ママ「わたしと違って、凛とした、子になってほしいな」

花陽ママ「……凛とした、か」

花陽ママ「確かなあなたは凛とはしてないね」

凛ママ「あ？」

花陽ママ「ほら」

凛ママ「……はあ」

凛ママ「…」ｻｽｯ

凛ママ「あと、３ヶ月、くらい、か……」

花陽ママ「怖い？」

凛ママ「ああ怖い」

花陽ママ「素直だね」

凛ママ「……ちゃんと育てられるのかね」

花陽ママ「……こればっかりは、大丈夫だよ、なんて軽くは言えないけど」

花陽ママ「育ててあげなきゃ」

凛ママ「……ああ」

～９月～

凛ママ「……おえぇ」

凛パパ「……」ﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞ?

凛ママ「……結構つらい」

凛ママ「後期つわりって言うんだって……やっぱきっついわこれ……」

凛ママ「食欲もなくなってくるし……」

凛ママ「胃もたれはするし……」

凛パパ「……」ｻｽｻｽｯ

凛ママ「……あんがと」

凛ママ「う、おえっ……」

～～～

花陽ママ「決めたよ、名前」

花陽パパ「……！」

花陽ママ「……花陽」

花陽ママ「小泉花陽……どう思う？」

花陽パパ「……」ｸﾞｯ

花陽ママ「ありがとう……意味？」

花陽ママ「……そうだね、あなたも、言ってくれたけど、太陽みたいに明るい子、って言ってたじゃない？」

花陽ママ「……私は、陽を浴びる花のように」

花陽ママ「明るく、のびのびと……育って欲しいから」

花陽ママ「花陽、って考えたの」

～10月～

凛ママ「……ふっ、ふっ」ﾃｸﾃｸ

凛パパ「……」ﾃｸﾃｸ

凛ママ「もうすぐ産まれる……臨月に入ったら適度に運動しておくと、安産のためになるんだと」

凛ママ「ちょっとつらいけどな」

凛パパ「……」ｷﾞｭｯ

凛ママ「ん……」ｷﾞｭｯ

凛ママ「……」ｻｽｻｽｯ

凛ママ「……ふう」

～10月9日～

花陽ママ「もう、すぐだね……予定日だと、11月の上旬でしょ？」

凛ママ「ああ……」

凛ママ「……無性に緊張してきた」

花陽ママ「人生で、一番緊張する瞬間だと思うよ」

花陽ママ「あと痛い瞬間」

凛ママ「ああ……やっぱり痛いのかな……」

花陽ママ「冗談抜きで氏ぬほど痛いらしいよ」

凛ママ「やだなぁ……」

花陽ママ「私だって怖いよ」

花陽ママ「でも仕方ない事だよ、これは」

凛ママ「わかってるけどよぉ……」

花陽ママ「……」

凛祖母「……痛いのなんて、一瞬だよ」

凛ママ「……母さん」

凛祖母「……確かに気がおかしくなりそうなほどの痛みだけど……その後に、そんなものは」

凛祖母「自然と、なくなってるから、安心しなさい」

～10月19日～

凛ママ「ふう……」

凛パパ「……」

凛ママ「本当に、いつ、産まれてもおかしくない時期だよな……」

凛ママ「今から陣痛とか始まり出しても、おかしくないんだよな……」

凛ママ「……なあ、お前」

凛パパ「……」

凛ママ「……絶対、傍にいてくれよ。じゃないと、心細い」

ー11月1日ー
深夜

凛ママ「……」zzz

凛パパ「……」zzz

凛ママ「…………ん、んん……」

ｽﾞｷｯ…

凛ママ「ん……ん？」

ｽﾞｷｯ

凛ママ「いたっ……！？」

ｽﾞｷｯ

凛ママ「……！……！？」ﾊｱﾊｱ……

凛ママ「……おい、おき、起きてくれ……」

凛パパ「……？」

凛ママ「……、ﾊｱ、……うっ」



凛ママ「陣痛……！」

凛パパ「……！！」ｶﾞﾊﾞｯ

凛ママ「ああ、車、頼む……早く、行こう……」ｽﾞｷｯ

凛ママ「あぐっ……」

～～～

凛ママ「はっ、あっ、……」ﾊｱﾊｱﾊｱﾊｱ……

凛パパ「……！」ﾌﾞｫｫｵﾝ

凛ママ「……たしかに、こりゃ痛い……」

凛ママ「お腹壊してる時に、ずっと腹パンくらってるみたいな感覚だな……」

～～～

『はい、大丈夫ですからね、ゆっくり移動しましょう』

凛ママ「ハア、ハア、ハア……ああ、うう……」ﾊｱﾊｱ……

凛パパ「……」

凛ママ「ああああううぅつ……！」

『イキまないで！赤ちゃんに影響がでるよ！』

凛ママ「ううっ、はい……」

『少し落ち着いてきたでしょ？』

凛ママ「す、少し……」

『じゃあ陣痛室はいるよ』

～～～

『浣腸と、剃毛をしますよ』

凛ママ「……」

凛ママ「…………」

～～～
分娩室

凛ママ「あ、つっ……！」

『はいっ、ヒッヒッフー！』

凛ママ「あひっ……っ！……ひ、……」ﾋｯﾋｯﾌｰ

『お父さん、これ、お尻に抑えててあげて』

凛パパ「……？」テニスボール

『それで力を入れやすくするの』

凛ママ「…………！」ﾒﾘｯ

凛ママ「……あぁああ！！い、いっ、たあ、い、ぁあ！！」

凛ママ「やだぁ！しぬ、しぬぅ！！」

『こんな程度で氏にそうなんていうんじゃないよ！！』

『母親になるってのはそういうことなんですからね！！』

凛ママ「う、うう……あ、あ゛！？ ぁい……！」

凛パパ「…………！」ｷﾞｭｯ

凛ママ「……あ、ぁぁあぁあ……！」ﾊｱﾊｱ……！

凛パパ『……頑張れ！』

凛ママ「……！」

凛ママ「……うっ、んんん……く、あ……！」ﾊｱﾊｱ……

『！ 頭出てきましたよ！あと少し、頑張って！！』

凛ママ「あ、あ、ああ……」ﾒﾘｯ

凛ママ「～～～～～ッ！！！」

『頑張って！！後一息！！』

凛ママ「あ、あ、がっ、く……」ﾊｱﾊｱ……



凛ママ「あああああぁあああああ！！！！」

～～～～～～～～
～～～～～
～～～

ｵｷﾞｬｰ……ﾌｷﾞｬｰ

凛ママ(……痛みが……なくなった)

凛ママ(……この、鳴き声……)

凛パパ「……！……！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

凛ママ「……あ」

『……おめでとうございます』

『……元気な、女の子です！』






凛(0)『ｵｷﾞｬｰ!ｱｱｰﾝ！ｵｷﾞｬｰ!』

凛ママ「はあ、はあ……」

『……ほら、見てあげてください』

『あなたの、赤ちゃんです』

凛ママ「……ははっ」

凛ママ「……猿みてーな、顔……みんな最初はそうか」

凛ママ「……能天気そうな顔して……可愛げないじゃん……」

凛『ｵｷﾞｬｰ!ｵｷﾞｬｰ!』

凛ママ「ったく、こちとら、氏ぬほど痛い思いして、お前を産んだって言うのに……」

凛ママ「……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ




凛ママ「ありがとぉ……無事に、産まれて、くれて……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

凛ママ(……凛)

～～～

凛ママ『……凛、だ』

凛パパ『……』ﾘﾝ

凛ママ『ああ……』

凛ママ『……私と違って、誰かに憧れられる、凛とした、子に、育って欲しいからな』

凛ママ『……わたし達の子は、星空凛だ』

～～～

凛ママ「……なあ」

凛パパ「……」

凛ママ「私はさ……」

凛ママ「母親に、なれたのかな……」

凛パパ「……」

凛パパ『これからだよ』

凛ママ「……ははっ」

凛ママ「そうだな……」

凛ママ「本当に、そうだな……」

凛ママ「……私さ。頑張るよ」

凛ママ「凛のために、これから」

凛ママ「凛の、母親として、頑張るよ」

凛ママ「……お前も、父親として、頑張れ」




凛ママ「だから、これからも……ずっと、私と、氏ぬまで、一緒にいてくれよな」

凛パパ「……」

凛ママ「……なんだよ、その顔は」

凛パパ「……」

凛ママ「それに、こういう時、いう事なんざ、一つだけだろーが」

凛ママ「こっちこい……耳かせ」

凛パパ「……！」








凛ママ「……愛してる」


おわり。