凛ママ「ホッケください」

ﾊｲﾖｰ

凛「えー」

凛ママ「ホッケ食えないと社会人としてまずいぞ」

凛ママ「マジで。こういう場じゃよく頼むからな」

凛「骨……」

凛ママ「ホッケに大した骨なんかないっての」

凛「うん……」

凛ママ「……ったく、二十歳だってのに、高校生から、大して変わってないな」

凛「そうかな……？」

凛ママ「ああ。凛は凛のまんまだ」

凛ママ「……」

凛「ん？どうしたの、お母さん」

凛ママ「……いや、ちょっと昔の事思い出して……」

凛「昔の事？」

凛ママ「凛を産んだ時の事とかだよ」

凛ママ「泣いたんだからな、『痛くて』」

凛「お母さんが泣くって想像できないなぁ……」

凛ママ「あれは仕方ない」

凛ママ「……凛もいつかわかるよ」

凛「うーん……」

凛「まだわからないかな」

凛ママ「そうだな。未だに彼氏の一人も連れてこねぇ」

凛ママ「なんなの？レOかなにかなの？」

凛「違うよっ！」

凛ママ「わかってるわかってる」

凛ママ「……ところで、凛」

凛「ん？」

凛ママ「……本当に、一人暮らし、始めるのか？」

凛ママ「別に、まだ家に居てもいいんだぞ？」

凛「……もうアパート、契約してるの知ってるのに、おそいよ」

凛ママ「……」

凛「やりたい事とか、出来たから」

凛ママ「男？」

凛「は、出来てません……」ｼｭﾝｯ

凛「じゃなくてさ……やっぱり、もう迷惑かけたくないから……」

凛ママ「……ありがちだけどよ」

凛ママ「迷惑かけてるとか、考えるな……子供は親に迷惑かけるもんだろ。遠慮されるのが一番つらい」



凛「もう大人だよ」

凛ママ「……」

凛「もう、子供って言えない歳なんだ……自分で出来る事は自分でやる……責任も」

凛ママ「…………ふっ」

凛ママ「……いっちょ前に、言いやがって。…ちょっと前まで、ガキだったのに……」

凛ママ(……スカート履きだしたあたりから…少しずつ変わっていった)

凛「大丈夫だよ、お母さん」

凛ママ「……ふんっ、そのうち何か揉め事に巻き込まれたって」

凛「お母さんの子供だもん」

凛ママ「……」

凛「大丈夫だよ」

凛ママ「……そうか」

凛ママ「……いつから、なんだ？」

凛「明後日」

凛ママ「明後日！？もうそんなすぐなのか！」

凛「うん」

凛ママ「……」

凛ママ(……凛と飯食ったりすんの、少なくなるんだろうなぁ)

凛ママ「……そうか」

凛ママ「……」

凛「……うん」

凛ママ「…………寂しく、なるな」

凛「…！！」

凛「お母さん……？」

凛ママ「ったく、ちいせえころから、うるさい奴だったのに、いなくなるって考えたら」

凛ママ「案外そんな気持ちになるんだな」

凛ママ「……はっ、バカみてー」

凛「……お母さん」

凛ママ「……！」ｺﾞｸｯｺﾞｸｯｺﾞｸｯｺﾞｸｯ

凛ママ「ぶはぁっ……すみませーん、ビールください！」

ﾊｲﾖｰ

凛ママ(……ったく)

～～～

凛ママ「うぃ……」ﾌﾗﾌﾗ

凛「もう、飲みすぎだよお母さん……」

凛ママ「ごめんごめん……」

凛「……」

凛ママ「なぁ、凛…………本当に一人暮らしするのか……？」

凛「……うん」

凛ママ「ぅぇえええ……やっだよぉ、行くなよぉ…」ﾌﾗﾌﾗ

凛「……お母さん、酔っ払ってるねえ」

凛ママ「酔ってないよ……」

凛ママ「あはははは凛ちゃーん……」ﾀﾞｷｯ

凛「わぷっ……ってお酒臭っ！？」

凛ママ「凛はいい匂いだぁねぇ～……」

凛「お母さん、ちゃんと立ってよ……」

凛「というか離して……」

凛ママ「やだっー！！だって離したら凛がどっか行っちゃう！！」

凛ママ「ああもう、どこもいくなよ～ずっと家に居ろよ～……」

凛ママ「さみしいだろうがぁ……」

凛「お母さん……」

凛ママ「お前が可愛くて仕方ないんだよ……わかってくれよ……」

凛ママ「凛……」

凛ママ「お前どう思ってる……」

凛「……」

凛ママ「私なんかが母親で、幸せか……？」

凛「……幸せに決まってるじゃん」

凛「お母さんの元で産まれて、良かったっていつだって思ってる」

凛ママ「……そっかぁ」

凛「……たまには帰ってくるから……そんな、とんでもなく遠くへ行くわけじゃないんだから」

凛ママ「ああ……」

凛「その時はご飯、作ってね」

凛ママ「……ああ。いくらでも食わせてやる」

凛ママ(………………)

凛「……ねえ、お母さん。こんな時に言うのもなんだけどさ…」

凛ママ「……ん？」


凛「誕生日、おめでとう」

凛ママ「………………あ」

凛「なにがいいか、わかんなかったけど、これ……」

凛ママ「……指輪」

凛「安物だけどね。でも、きっとお母さんによくにあ……」

凛ママ「……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

凛「にゃっ！？お母さん！？」

凛ママ「……なんだよ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

凛ママ「……女がもらって嬉しいものは」

凛ママ「大好きな奴からの指輪ってのは、言い得て妙だな……」

凛「……お母さん」

凛ママ「へんっ、なんだよ、今までこんな事したことなかったろ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

凛「……ありがとうの、気持ちだよ」

凛ママ「……ばか」

凛ママ「こんなんで、20年育ててやった礼になると思うなよ」

凛ママ「これからも健康に、んで顔を見せろ。私と、あいつが氏ぬまで」

凛ママ「それが礼だ」

凛ママ「……」

凛「うん」

凛ママ「元気でな」

凛「うん」

凛ママ「風邪引くなよ」

凛「うん」

凛ママ「社会は辛いぞ。甘い事は通用しないからな」

凛「……うん」

凛ママ「……それと」


凛ママ「いつでも、帰ってこい。……あそこは、凛、お前の帰るところだから…」

凛「……うんっ！」

凛ママ「……大好きだぞ、凛」

～～～

凛「……」

凛ママ「……zzz」

凛パパ「……zzz」

凛「……だからって、三人で雑魚寝する必要はなかったんじゃ……」

凛ママ「……ﾑﾆｬﾑﾆｬ」

凛「…………」

凛ママ「……もう行くのか？」

凛「うん、バスの時間あるからさ」

凛ママ「そうか……」

凛「……行ってきます」

凛ママ「……！」

凛ママ「……ああ。いってらっしゃい」

～～～

凛ママ「……」※抱きついてる

凛パパ「……」

凛ママ「……とりあえず、あと30分くらいこうさせてろ」

凛パパ「……」

凛ママ「……はあ」

凛パパ「……」ﾖｼﾖｼ

凛ママ「……」

凛ママ「お前にも迷惑かけたな……」

凛パパ「……」ｳｳﾝ

凛ママ「……きょうで結婚20年目か」

凛ママ「……お前と出会えて、凛を産めて……」

凛ママ「こんなに幸せでよかったのかな……」

凛パパ『よかったんだよ』

凛ママ「……」

凛ママ「そっか」

凛ママ「……んっ」ﾁｭｯ

凛パパ「……！」

凛ママ「氏ぬまで一緒だ」

凛ママ「……あいし」

凛パパ『愛してる』

凛ママ「……ッ！」

凛ママ「……ばっ、……ふんっ！」

凛ママ「……私の方が、愛してるからな！」


星空家は、今日も今日とて、賑やかです。


おわり

※凛ママシリーズ的なものが終わりました。
親には感謝しよう(真顔)。そんじゃﾉｼ

おつ
よかった

乙。

最高だった