1: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/21(月) 23:12:59.27 ID:m5fhn4Ulo
※アイドルマスターシンデレラガールズのSSです

※注意※

若干の百合要素あり
苦手な方はご注意ください

純情Midnight伝説 (M@STER VERSION)

2: 2013/10/21(月) 23:14:37.43 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――事務所


P「うちはアイドル事務所。それぞれ仲がいいのがモットーだ」

P「この事自体になんら問題はない」

P「だけど、特定の人間だけ仲がいいのは、すこし勿体無い気がする」

P「たまには違うアイドル同士で仲が良くなる必要があるよな」

P「どうしたものか……」



P「よし……ここらで仕掛けてみるか」

3: 2013/10/21(月) 23:16:14.79 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――昼、テレビ局控室


スタッフ「和久井さん、今日もありがとうございました」

留美「いえいえ、こちらこそ」

和久井留美(26)

スタッフ「来週は報道特番ですので、早めにスタジオ入りお願いしますね」

留美「わかりました。必要な資料等は事務所にFAXお願い致します」

スタッフ「了解しました。それでは……」


ばたん


留美「ふううぅ……疲れた」

留美「これで生放送は終わり……っと」

留美「あとはいつものように、向井さんに送ってもらって帰るだけね……」

5: 2013/10/21(月) 23:18:32.98 ID:m5fhn4Ulo
こんこん


留美「来たわね……どうぞ」

夏樹「ど、ども~」


木村夏樹(18)

留美「あら、木村さん? どうしたの? あなたも収録?」

夏樹「いやあ、Pさんから和久井さんを迎えに行けって言われまして……」

留美「そうだったの? 向井さんは?」

夏樹「拓海のや……む、向井はちょっと別件の仕事が入って」

留美「そう……」

夏樹「すいません……」

留美「別に謝る必要無いわ。私がお願いしてたんですもの。バイクで来たの?」

夏樹「はぁ……一応。向井のとは違って、乗り心地がいいかわかんないすけど」

留美「迎えに来てもらえただけでも感謝だわ。ありがとう」

夏樹「い、いえ、そんな……」

留美「今すぐ支度するわ。少し待っててくださる?」

夏樹「は、はい」



夏樹(アイドルなのに報道番組のキャスターか……すげーな、この人)

6: 2013/10/21(月) 23:19:24.82 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――交差点、信号待ち


留美「ねえ、木村さん?」

夏樹「はい、なんですか?」

留美「この後の予定は?」

夏樹「んー、特にないっすね」

留美「じゃあ、そこのカフェで一息入れましょう」

夏樹「え? でも……」

留美「わざわざ来てくれたんですもの。奢らせてちょうだい」

夏樹「は、はい」

7: 2013/10/21(月) 23:20:37.18 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――カフェ


店員「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」

留美「木村さんは何にするの?」

夏樹「え、えっと……」

夏樹(見たことねーもんばっかりだ……)

夏樹「じゃ、じゃあ……アメリカンのホットで」

店員「かしこまりました」

留美「私はいつものハーブティーで」

店員「かしこまりました」


夏樹(オープンカフェってのか? こういうところあんまこねーからな)

8: 2013/10/21(月) 23:21:17.03 ID:m5fhn4Ulo

男「なあ、あれって……」

女「あっ、和久井留美じゃない? すごい綺麗ねー」

男「一緒にいるやつ誰だろ?」

女「イケメンねえ……彼氏じゃない?」

9: 2013/10/21(月) 23:22:25.22 ID:m5fhn4Ulo

夏樹「……」ズーン

留美「気にしないで」

夏樹「えっ?」

留美「周囲の声なんて気にすることないわ。私達はそのままでいいのよ」

夏樹「は、はい……」

留美「こういう仕事ですもの。多少の色眼鏡は仕方ないと割り切ることよ」

夏樹「あ、あの……和久井さ」

留美「留美でいいわ。みんなそう呼んでるし」

夏樹「る、留美さん……」

留美「何かしら?」

夏樹「その……どうやったら、そんなにカッコイイ女の人になれるんですか?」

10: 2013/10/21(月) 23:23:46.83 ID:m5fhn4Ulo

留美「あら? 私からしたら貴女も十分カッコイイわよ?」

夏樹「アタシはほら……その……こんなナリしってから」

夏樹「さっきみたいにヤローに間違われるし……留美さんみたいな知的な女性って無理かな……って」

留美「……」

夏樹「変なこと聞きましたね。すんません、忘れてください」

留美「……ねえ、木村さん。私も聞いていい?」

夏樹「は、はい」

11: 2013/10/21(月) 23:24:45.41 ID:m5fhn4Ulo

留美「私もロックを目指すこと、できるかしら?」

夏樹「え? そりゃあ、出来ますよ。留美さん、歌も上手いしその気になれば出来ます」

留美「そう」

夏樹「ロックは別に資格とかそういうの無いですし、目指そうと思えば誰だってできます」

留美「でも、私は貴方のようにロックに触れた時間は多くないわよ?」

夏樹「アタシはたまたま、ガキの頃から聞いてただけっすよ。留美さんが今からやって無理なことないです」

留美「ありがとう。その答えが私のさっきの答えよ」

夏樹「へ?」

13: 2013/10/21(月) 23:25:58.89 ID:m5fhn4Ulo

留美「あなたが幼少期からロックに触れていたように、私も前の仕事柄、経済や海外情勢に詳しかった。ただそれだけよ」

留美「だから、今回のようなキャスターのお仕事を頂けてるの。別にカッコイイと自覚したことはない」

留美「木村さんも勉強すればきっとそういう仕事につけるわ」

夏樹「そうですか……?」

留美「ただし、猛勉強が必要になるけどね。それは私が貴方以上にロックを聞きまくるのと同じことよ」

夏樹「……」

留美「隣の芝は青いとでも言うのかしら? 人は誰しも自分にないものを持ってる人に憧れを抱くものよ」

留美「あなたが私をカッコイイと思うのと同様に、あなたもまた違う人達からはカッコイイと思われてるの」

夏樹「そ……そうなんすかね?」

留美「自信を持ちなさい。そして、同じことを聞いてくる人がいれば貴方もきっとこう答えるはずよ」

夏樹「あ、ありがとうございます」

15: 2013/10/21(月) 23:27:02.16 ID:m5fhn4Ulo

留美「ふふふ……この話をするのはこれで二度目ね」

夏樹「そうなんですか?」

留美「そう。最初は向井さんだった」

夏樹「拓海も……」

留美「あなた達はもっと素敵になれる。私が保証するわ」

夏樹「な、なんか照れるな……」

16: 2013/10/21(月) 23:28:18.63 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――事務所前


夏樹「到着です。お疲れさまでした」

留美「助かったわ、木村さん」

夏樹「夏樹です」

留美「えっ?」

夏樹「皆そう呼んでるんで。苗字だとなんかくすぐったいって言うか」

留美「ふふふ、わかったわ……ありがとう夏樹ちゃん」

夏樹「これぐらいお安い御用ですよ」

17: 2013/10/21(月) 23:29:08.25 ID:m5fhn4Ulo

留美「そうだ、ほっぺを出してくれる?」

夏樹「へ? こうですか?」


ちゅっ


夏樹「な、な、な、な、な……なにを!?」

留美「いつものお礼。向井さんにもしてるのよ?」

夏樹「へ? へ? えええええっ!!」

留美「今はこんなお礼しか出来ないけど。いつでも頼って頂戴ね」

夏樹「……」

留美「それじゃ、先に行くわ」




夏樹(やべえ……ドキドキする)

18: 2013/10/21(月) 23:29:59.85 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――夕方、新幹線車内


涼「……」シャカシャカ


松永涼(18)

李衣菜「……ねえ、涼ちゃん?」


多田李衣菜(17)

涼「♪~」シャカシャカ

李衣菜「涼ちゃんってば!!」

涼「うおっ!! なんだよ、リーナ?」

李衣菜「せっかくだからお話しようよ?」

涼「さっきまでずっと仕事で一緒だったろ?」

李衣菜「そうだけどさ……一人じゃつまんなーい」

涼「わーったから、引っ張るなって!」

20: 2013/10/21(月) 23:32:28.96 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「今日はお客さんいっぱい来てくれたよね!?」

涼「誰かさんは最初、地方のライブハウスは嫌だと駄々こねてたけどな」

李衣菜「MCも盛り上がってたよね!?」

涼「誰かさんはカミカミだったけどな」

李衣菜「ライブもすごく盛り上がったよね!?」

涼「誰かさんがすっ転んでギターアンプからコード抜いちまったけどな」

李衣菜「……」

涼「……」

李衣菜「涼ちゃーん、意地悪言わないでぇええ!」ポカポカ

涼「わかったから、叩くなって!」

21: 2013/10/21(月) 23:34:08.03 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「涼ちゃん……あのさ」

涼「ん?」

李衣菜「聞きたいことあるんだけど?」

涼「なんだよ?」

李衣菜「『ロック』って……なんだろうね?」

涼「それなら夏樹に聞きなよ。今更アタシに聞くまでもねーじゃん?」

李衣菜「違うの。そうじゃなくって……よくわからない」

涼「イマイチ、話が見えねーな……」

李衣菜「なつきちの言うロックが、私にはわかんないの」

涼「と、言うと?」

22: 2013/10/21(月) 23:37:10.43 ID:m5fhn4Ulo
李衣菜「去年の年末にさ、なつきちとカウントダウンライブ行ったんだ」

涼「あー、なんかそんなこと言ってたな」

李衣菜「ライブ自体は盛り上がったんだけど、しばらくしたら、巴ちゃんが乱入してさ」


村上巴(13)

涼「……なかなか豪快だな」

李衣菜「そんで、いきなり演歌を歌い始めたの」

涼「……」

李衣菜「でもね、すごく盛り上がって、なつきちも『ロックだな』って……」

涼「まあ、ある意味な」

李衣菜「おかしいじゃん? 演歌とロックって違うのに」

涼「んー……」

李衣菜「でね、次の日、私も巴ちゃんに衣装借りて、なつきちに見せたの」

涼「なにやってんだか……」

李衣菜「そしたら、なつきち、『わかってねー』だって!」

涼「まあ……そう言うだろうな」

23: 2013/10/21(月) 23:38:02.49 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「どうして? 何がロックなのか、さっぱりだよ!?」

涼「うーん」

24: 2013/10/21(月) 23:39:02.56 ID:m5fhn4Ulo

涼「あのなあ、リーナ」

李衣菜「ん?」

涼「お前の言うロックってのは、ギターがジャカジャカ鳴って、ドラムがドンドン響けばいいと思ってないか?」

李衣菜「違うの?」

涼「半分合ってる。だけど半分違う」

李衣菜「??? どういうこと?」

涼「お前が言ってるのは音楽の1ジャンルとしてのロックだ」

李衣菜「うん」

涼「だけど夏樹が言ってるのは、ジャンルを超えた……こう、なんていうか……魂みたいなもんなんだよ」

李衣菜「魂? 涼ちゃんが見る映画に出る、青白いフヨフヨ浮いてる奴?」

涼「そりゃ、人魂だバカ。そうじゃなくて、スピリットというか……ソウルってのかな?」

李衣菜「うーん……よくわかんない」

25: 2013/10/21(月) 23:39:30.29 ID:m5fhn4Ulo

涼「あのなあ、リーナ」

李衣菜「ん?」

涼「お前の言うロックってのは、ギターがジャカジャカ鳴って、ドラムがドンドン響けばいいと思ってないか?」

李衣菜「違うの?」

涼「半分合ってる。だけど半分違う」

李衣菜「??? どういうこと?」

涼「お前が言ってるのは音楽の1ジャンルとしてのロックだ」

李衣菜「うん」

涼「だけど夏樹が言ってるのは、ジャンルを超えた……こう、なんていうか……魂みたいなもんなんだよ」

李衣菜「魂? 涼ちゃんが見る映画に出る、青白いフヨフヨ浮いてる奴?」

涼「そりゃ、人魂だバカ。そうじゃなくて、スピリットというか……ソウルってのかな?」

李衣菜「うーん……よくわかんない」

26: 2013/10/21(月) 23:40:04.14 ID:m5fhn4Ulo
※すいません、連投失礼しました

27: 2013/10/21(月) 23:41:04.47 ID:m5fhn4Ulo

涼「そりゃそうだ。アタシにだってよくわかんねえからな」

李衣菜「涼ちゃんもわかんないの、私にわかるわけ無いじゃん」

涼「そうだよ。誰にもまだわかんねえ。アタシも夏樹も……今はその答えを探してんだよ」

李衣菜「……答えを?」

涼「厄介なのは、それには正解がなくて人それぞれ違うってとこだ」

李衣菜「そうなの?」

涼「そうさ。アタシと夏樹では多分答えは違ってる」

涼「ジミ・ヘンドリックスやカート・コバーンだって違うロックの答えを持ってたはずさ」

李衣菜「……蚊と小判?」

涼「……聞く気がねえなら寝るわ。おやすみ」

李衣菜「うそうそ! ごめん涼ちゃん! 初めて聞く名前だから戸惑っただけだよ」

涼「ったく……」

28: 2013/10/21(月) 23:42:36.41 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「じゃあ、巴ちゃんの歌には魂があると?」

涼「歌ってるジャンルは違えど、夏樹が求めるロックに近いものを感じたんだろうな」

李衣菜「なるほど……じゃあ、私も演歌で」

涼「そこがブレてんだよ」

李衣菜「えっ?」

涼「巴にしか出せないものを、お前が付け焼き刃で真似ても出せっこないだろ」

涼「それをあの夏樹がロックだなんて絶対いわねーよ」

李衣菜「そっか……」

涼「今はとりあえず、リーナ自身の追い求めるロックを探す所から始めりゃいいさ」

李衣菜「……」

涼「まあ、なんかあったら手伝ってやるから、な?」

29: 2013/10/21(月) 23:43:46.50 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「……涼ちゃん」

涼「ん?」

李衣菜「……優しい」

涼「ばば、ば、バカやろっ! 何言ってんだよ!?」

李衣菜「涼ちゃんって……最初、怖いなー、ヤンキーなのかなー、刃向かったらボコボコにされるのかなーって思ってた」

涼「……それで褒めてんのか?」

李衣菜「でも、相談してよかった! ありがとう!」

涼「……あ、ああ」

李衣菜「もう寝るんでしょ? じゃあ、静かにしてるよ」

30: 2013/10/21(月) 23:44:36.10 ID:m5fhn4Ulo

涼「……リーナ」

李衣菜「ん?」

涼「お前のヘッドフォンのプラグ貸しな」

李衣菜「えっ? どうして?」

涼「アタシのiPod貸してやるから……その中の曲、聞いてみなよ。ヒントになるかもな」

李衣菜「いいの? 本当に?!」

涼「その代わり静かにしてるんだぞ」

31: 2013/10/21(月) 23:45:25.40 ID:m5fhn4Ulo

涼(珍しくアツくなっちまった……らしくもねえ)

涼(でも、それはアタシ自身にも言えることなんだよな)

涼(アタシの求めるロックも、どこにあるかわかんねえけど)

涼(何か吹っ切れた気がする)

涼(あんがとな。リーナ)

32: 2013/10/21(月) 23:46:20.06 ID:m5fhn4Ulo

李衣菜「……」

涼「リーナ?」

李衣菜「……ぐぅ……Zzz」

涼「人を枕に寝ちまいやがった……しょうがねえな」

涼「…………ちょっと……いい匂いがする……」



涼(って! 何言ってんだよ! アタシのバカ!!)

33: 2013/10/21(月) 23:47:32.32 ID:m5fhn4Ulo

――――――――――――夜、事務所


がちゃ


拓海「ただいまーっと……すっかり遅くなっちまった……」


向井拓海(18)

拓海「さすがに一人の現場はしんどかったな……ん?」

拓海「応接室から光が漏れてる……誰だ?」

拓海「おーい、誰かいんのか?」

小梅「ひぃっ……!」


白坂小梅(13)

拓海「おわっ!……なんだ、小梅か……何やってたんだ?」

小梅「……え、映画……見てたの……」

拓海「ああ、例のホラー映画か……一人でか?」

小梅「……う、うん……」


拓海(どうも、こいつは苦手なんだよな……)

34: 2013/10/21(月) 23:48:28.27 ID:m5fhn4Ulo

拓海「もう夜遅いぞ。早く帰るぞ」

小梅「りょ、涼さん……待ってる……」

拓海「涼を待ってたのか……あいつなら、まだまだかかるって連絡あったぞ」

小梅「そ、そうなの……?」

拓海「まあ、おめーも13歳とはいえ、まだガキだ。そろそろ帰らねえと」

小梅「う……うん……」

拓海「涼となんか約束してたのか?」

小梅「ううん……でも、い……一緒に……行きたいとこ……あった」

拓海(買い出しか何かか?)

35: 2013/10/21(月) 23:49:00.66 ID:m5fhn4Ulo
小梅「…………」

拓海「……わーったよ。ついていってやるから」

小梅「え……」

拓海「ほら、メット被れ。場所は指示しろよ」

小梅「い、いいの……?」

拓海「女に二言はねえ。いくぞ」

小梅「う……うん!」

36: 2013/10/21(月) 23:49:54.15 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――山奥、トンネル前


拓海「…………」

小梅「こ、ここ……来たかった……」

拓海「……真っ暗だな」

小梅「うん……」

拓海「……誰もいねーぞ」

小梅「い、いま……使われて……ない」

拓海「……ここで……何すんだよ?」

小梅「あ、歩く……」

拓海「……どこまで?」

小梅「……む、向こうまで」

拓海「……どれぐらいの長さなんだ?」

小梅「せ……1000m」

拓海「……バイクで行こうぜ」

小梅「だ、だめ……みんな……おどろく……」

拓海「みんなって誰だよ!!!」

37: 2013/10/21(月) 23:52:36.04 ID:m5fhn4Ulo
小梅「…………」


すたすた


拓海「お、おい! どこ行くんだよ!!」

小梅「ひ、一人で……行く……」

拓海「バカ言ってんじゃねーよ!! あぶねーだろ!!」

小梅「む、向井さんは……待ってて……」

拓海「そんなことできっかよ!!」

小梅「で、でも……」

拓海「これ……涼も行くつもりだったのか?」

小梅「ま、前に……誘ったけど……苦手って……言ったから」

拓海「だろうな……」

38: 2013/10/21(月) 23:53:35.18 ID:m5fhn4Ulo
小梅「涼さん……無理って……いったとこ……向井さん……もっと無理……」

拓海「あ゛? 涼と一緒にすんじゃねーよ! あたしも行くぞ!」

小梅「ほ、本当……?」

拓海「おう」

小梅「こ、怖くない……?」

拓海「たりめーよ。天下無敵、喧嘩上等の向井拓海様だぞ? 怖えーもんなんてねーんだよ」

小梅「す、すごい……えへへ……う、嬉しい」


拓海(とは、言ったものの……薄っ気味悪ぃとこだな)

拓海(まあ、幽霊なんざ迷信よ。チャッチャとすませて帰るぜ)

39: 2013/10/21(月) 23:54:47.60 ID:m5fhn4Ulo
――――――――――――トンネル内


拓海「……真っ暗だな。電気つかねえのか?」

小梅「も、もう……使われてないから……で、電気……きてない」

拓海「そ、そうだったな……」

拓海(うううう……気持ち悪ぃぜ……)

小梅「…………む、向井さん」

拓海「な、なんだよ……」

小梅「む、無理しなくて……いいよ?」

拓海「べ、別に無理なんかしてねえ」

小梅「わたし……ひとりで……大丈夫」

拓海「そんなことできるかよ。怖いからちびっ子ひとりで行かせたなんざ、向井拓海の名折れだ」

小梅「……」

40: 2013/10/21(月) 23:56:18.61 ID:m5fhn4Ulo
拓海「それに、もし涼の耳にそれが入ったら……」


涼『え? え? なになに? 拓海でもオバケこわいんだ? へー(笑)』


拓海「……ムカツク」イライラ

小梅「りょ、涼さん……明るくなった……む、向井さんに会って……仲良しだし……」

拓海「は? ジョーダンやめてくれ。ケンカばっかしてるよ」

小梅「む、向井さんも……柔らかく……なった」

拓海「なんだよ? アタシ、そんなに尖ってたか?」

小梅「ううん……でも……いつも……イライラしてて怖そう……だった」

拓海「……」

小梅「だけど……本当は……優しい……ひと……わかる」

拓海「や、やめろよ! 今更、何言ってんだよ!」

41: 2013/10/21(月) 23:57:13.60 ID:m5fhn4Ulo

小梅「わ、わたし……ともだち……つくるの……にがて」

小梅「みんな……こんな風に……きてくれない」

小梅「こんな怖いことしたり……ホラー映画みるの……きもちわるいって」

小梅「先生から……も……やめなさいって……」

拓海「……そうか」

小梅「……」

拓海「……わかるよ」

小梅「え……」

42: 2013/10/21(月) 23:58:57.72 ID:m5fhn4Ulo

拓海「あたしも気に入らない奴がいたらぶん殴り、気に入らないことがあるとバイクでかっ飛ばしてさ」

拓海「だからクラスの連中も、先公もビビっちまって……」

小梅「……」

拓海「だけど、あたしはそれを否定しない。バカだなとは思ったりするけど、やらなきゃよかったなんて思わねえ」

拓海「小梅もそうだろ?」

小梅「う、うん」

拓海「外野の言うことなんざ気にすんな。お前の今やりたいことやれよ。我慢すんじゃねえぞ」

拓海「それに、友達なら涼や夏樹、あたしがいるだろ?」

小梅「む、向井さん……」


ぎゅっ


拓海「なんだよ、急に抱きついてきて?」

小梅「えへへ……向井さん……あったかい」

拓海「や、やめろよ……ったく」

43: 2013/10/22(火) 00:00:00.92 ID:BAq7v68zo

拓海(偉そうなこと言ったけど)

拓海(あたしもこいつのこと、苦手なんて思ってたんだよな……)


拓海「小梅」

小梅「んー?」

拓海「すまねえな」

小梅「???……ど、どうしたの?」

拓海「なんでもねーよ」

44: 2013/10/22(火) 00:01:30.09 ID:BAq7v68zo
拓海「見ろよ、小梅! 向こうに光が見えるぞ?!」

小梅「ほ、ほんとうだ……」

拓海「もうすぐゴールだよな!! よっしゃあ!!」



きゅっ



拓海「どうした? いきなり手をつないできて?」

小梅「一緒に……ゴール……したい」

拓海「そっか……いいぜ」

拓海(なんだかんだ言っても子供だな。可愛いとこあるじゃねえか)

小梅「みんな……一緒……さ、三人で……」

拓海「おう!!…………………………」

小梅「……」

拓海「…………………………三人?」

小梅「うん………私と向井さんと……………」

拓海「…………」ゴクリ

小梅「む、向井さんが……おぶってる………………………その子」



拓海「ぎゃあああああああああああああああ!!!」


だだだだだだだだだだ




小梅「む、向井さん……やっぱりいいひと……あの子も……すきになってくれた」

45: 2013/10/22(火) 00:02:52.82 ID:BAq7v68zo
――――――――――――後日、事務所


がちゃ


夏樹「おはよーっす」

涼「おっはー」

拓海「おう」

夏樹「なんか……お前らに久々会ったような気がする」

涼「アタシも……一日しか空いてないのにね」

拓海「まあ、たまにはいいだろ。こういうのも」

46: 2013/10/22(火) 00:03:47.78 ID:BAq7v68zo

夏樹「そういや、涼。お前、だりーに何か言ったか?」

涼「別にー、どうしてさ?」

夏樹「なんかさ、昨日電話があって『私、生まれ変わるから!』って興奮しながら言ってたから」

涼「そう……いいことじゃん」

夏樹「今日もさ『なつきち、タワレコに演歌コーナーってあったっけ?』って聞いてきて」


涼(あちゃー……やっぱ、わかってねーな)

涼(…………まあ、それがリーナらしいか)

47: 2013/10/22(火) 00:05:40.57 ID:BAq7v68zo

涼「あ、そうだ! 拓海、あんた小梅のミステリーツアーに付き合ってあげたの?」

拓海「お……おうよ! あんなもん屁でもねえや!! はははは」

涼「ほええー。アンタ見かけによらずすごいんだね? 小梅も喜んでたよ」

拓海「ま、まあな……」

拓海(ビビって走りだしたのは内緒にしてくれたのか……)

涼「んでさ、来週アンタとあたしと三人で墓地巡りしたいって……」


拓海「ぜってえええええいかねええええ!!」

48: 2013/10/22(火) 00:06:09.91 ID:BAq7v68zo

拓海(昨日から背中の寝汗がすげえんだよ……)

拓海(これ以上は勘弁してくれ!)

49: 2013/10/22(火) 00:07:23.69 ID:BAq7v68zo

拓海「おう、夏樹。お前、和久井の姐御を迎えに行ってくれたんだってな」

夏樹「まあな」

拓海「あの人に渡すメットには、ちゃんと中にハンカチ入れとけよ」

夏樹「そうなのか?」

拓海「そりゃそうだろ。あの人、あたしらと違ってメイクやヘアスタイル気合入ってんだ」

拓海「蒸れて台無しになっちまうだろ?」

夏樹「お、おぅ……今度から気をつけるよ」


夏樹(どこまでに大切にしてんだよ……ったく)

夏樹(まあ、気持ちもわかるけどな)

50: 2013/10/22(火) 00:08:09.25 ID:BAq7v68zo




涼・拓海・夏樹(やっぱ、慣れてねーとダメだな)





涼・拓海・夏樹(でも、まあ…………可愛かったからいいか)






おわり

51: 2013/10/22(火) 00:09:02.56 ID:BAq7v68zo
これで終わりです。
長時間ありがとうございました。

52: 2013/10/22(火) 00:11:45.40 ID:k5lxSXrdo

引用: モバP「いつものコンビを入れ替えてみる」