683: 2011/08/20(土) 05:19:50 ID:b/ltRocM0
684: 2011/08/20(土) 05:22:02 ID:b/ltRocM0
唯「う~暑いよ~」
ある夏の日、その日は今年度の最高気温を記録するほどの猛暑日だった。
うだるような暑さの中で唯先輩は、まるで夏バテした犬のように長椅子の上に寝そべっていた。
梓「もう、しっかりして下さい。そうやってぐだぐだしてると、また練習せずに下校時刻になっちゃいますよ」
そんな唯先輩に対して私は軽く渇を入れる。
唯先輩の気持ちも分からなくは無いけど暑さを言い訳にしてたら結局いつまでたっても練習できないもんね。
唯「そんなこと言われてもこんなに暑いと動けないよ~……。あずにゃん、お水ちょうだ~い」
梓「もう、しょうがない人ですねぇ。はい、お水ですよ。」
唯「わ~い、あずにゃん大好き~!!」
梓「にゃっ!」
私がペットボトルに入った水を差し出すと唯先輩はどこにそんな元気があったのか、
水を得た魚の様に勢いよく私の身体に飛びついてきた。まだ水飲んでないのにね。
唯「う~暑い……」
しかし、それも空元気だったらしくすぐに唯先輩はへだれてしまった。
梓「だったら離れてくださいよぅ……ほら早くお水飲んでください」
唯「ん~、私には水分よりあずにゃん分の方が重要な栄養素なんだよぉ」
そういいながら唯先輩はお互いの汗が絡み合うのも構わず頬ずりをしてくる。
普通ならこんな暑い中でこんな事やられたら不快なはずなのに唯先輩が相手だと心地よく感じてしまうから不思議なものだ。
律「まぁ、でも唯の言う事ももっともだ。こうあちぃとドラム叩く気もおきねーよ」
澪「そんな事言っていつもまともに練習できてないじゃないか」
律「まぁまぁ、ところでどうだ?この暑さを吹き飛ばすために納涼大会とでも洒落込まないか?」
唯「のーりょーたいかい?」
梓「怪談でもするつもりですか?」
澪「怪談!?や、やめろぉっ!!」
律「いやいや、違うって。まぁ、それに近いものではあるけどな」
紬「?どういうこと?」
律「ずばり肝試しだよ!!」
唯「おお!!」
紬「面白そう!!」
澪「や、やめろぉ!!そんな事より練習だ!!練習!!」
梓「っていうか肝試しは去年の合宿の時もやりましたよね?」
律「別にいいだろー。夏の風物詩なんだから。大体去年はさわちゃんのせいで台無しになったしな」
梓「そういえばそうですね……」
澪「うう……嫌な思い出が……」
律「二人もやりたいよな?」
唯紬「やりたーい!!」
律「よし、決定!今日の夜8時に裏山に集合な!」
澪「私は行かないからな!」
律「おっとそうはいかないぜ、澪ちゅあん?もしバックれるような事があればFCに澪の丸秘写真を……」
澪「や、やめろぉ!!」
律「よし、これで全員参加で決まったな。じゃあ、私はちょっと準備があるから帰るわ」
澪「お、おい練習は?」
律「今日はもうかいさーん」
澪「そんな勝手な!」
梓「はぁ、結局今日も練習できませんでしたね……」
澪「心中察するよ、梓」
梓「いえ、こちらこそ」
唯「えへへ、楽しみだねぇ」
紬「そうだねぇ」
澪梓「……はぁ」
全く律先輩も唐突な事を言い始める……。結局今日もまともな活動は出来なかったし……。
律先輩が部室を出て行ってしまった後、澪先輩までグロッキーになってしまい練習どころではなくなったので私達もすぐに帰ることになった。
実のところ私もこの暑さには参っていたしまぁいいかななんてちょっと妥協してしまった。
うぅ……私も唯先輩や律先輩に偉そうな事いえないなぁ……
ある夏の日、その日は今年度の最高気温を記録するほどの猛暑日だった。
うだるような暑さの中で唯先輩は、まるで夏バテした犬のように長椅子の上に寝そべっていた。
梓「もう、しっかりして下さい。そうやってぐだぐだしてると、また練習せずに下校時刻になっちゃいますよ」
そんな唯先輩に対して私は軽く渇を入れる。
唯先輩の気持ちも分からなくは無いけど暑さを言い訳にしてたら結局いつまでたっても練習できないもんね。
唯「そんなこと言われてもこんなに暑いと動けないよ~……。あずにゃん、お水ちょうだ~い」
梓「もう、しょうがない人ですねぇ。はい、お水ですよ。」
唯「わ~い、あずにゃん大好き~!!」
梓「にゃっ!」
私がペットボトルに入った水を差し出すと唯先輩はどこにそんな元気があったのか、
水を得た魚の様に勢いよく私の身体に飛びついてきた。まだ水飲んでないのにね。
唯「う~暑い……」
しかし、それも空元気だったらしくすぐに唯先輩はへだれてしまった。
梓「だったら離れてくださいよぅ……ほら早くお水飲んでください」
唯「ん~、私には水分よりあずにゃん分の方が重要な栄養素なんだよぉ」
そういいながら唯先輩はお互いの汗が絡み合うのも構わず頬ずりをしてくる。
普通ならこんな暑い中でこんな事やられたら不快なはずなのに唯先輩が相手だと心地よく感じてしまうから不思議なものだ。
律「まぁ、でも唯の言う事ももっともだ。こうあちぃとドラム叩く気もおきねーよ」
澪「そんな事言っていつもまともに練習できてないじゃないか」
律「まぁまぁ、ところでどうだ?この暑さを吹き飛ばすために納涼大会とでも洒落込まないか?」
唯「のーりょーたいかい?」
梓「怪談でもするつもりですか?」
澪「怪談!?や、やめろぉっ!!」
律「いやいや、違うって。まぁ、それに近いものではあるけどな」
紬「?どういうこと?」
律「ずばり肝試しだよ!!」
唯「おお!!」
紬「面白そう!!」
澪「や、やめろぉ!!そんな事より練習だ!!練習!!」
梓「っていうか肝試しは去年の合宿の時もやりましたよね?」
律「別にいいだろー。夏の風物詩なんだから。大体去年はさわちゃんのせいで台無しになったしな」
梓「そういえばそうですね……」
澪「うう……嫌な思い出が……」
律「二人もやりたいよな?」
唯紬「やりたーい!!」
律「よし、決定!今日の夜8時に裏山に集合な!」
澪「私は行かないからな!」
律「おっとそうはいかないぜ、澪ちゅあん?もしバックれるような事があればFCに澪の丸秘写真を……」
澪「や、やめろぉ!!」
律「よし、これで全員参加で決まったな。じゃあ、私はちょっと準備があるから帰るわ」
澪「お、おい練習は?」
律「今日はもうかいさーん」
澪「そんな勝手な!」
梓「はぁ、結局今日も練習できませんでしたね……」
澪「心中察するよ、梓」
梓「いえ、こちらこそ」
唯「えへへ、楽しみだねぇ」
紬「そうだねぇ」
澪梓「……はぁ」
全く律先輩も唐突な事を言い始める……。結局今日もまともな活動は出来なかったし……。
律先輩が部室を出て行ってしまった後、澪先輩までグロッキーになってしまい練習どころではなくなったので私達もすぐに帰ることになった。
実のところ私もこの暑さには参っていたしまぁいいかななんてちょっと妥協してしまった。
うぅ……私も唯先輩や律先輩に偉そうな事いえないなぁ……
685: 2011/08/20(土) 05:23:47 ID:b/ltRocM0
家に戻った私はとりあえずシャワーを浴びて汗を流し、着替えるとほっと一息つく。
小休止を取った後、準備をしてから、ちょうど日が沈み始めた頃、私は家を出た。
そして待ち合わせ場所の裏山のふもとにつくころにはすっかり日は沈んで、夜の帳が下りていた。
いくら日の長い真夏と言えど流石に8時近くともなると辺りは、真っ暗闇だった。
どうやら、他の先輩達はまだ到着していないようだ。
周囲には虫の声だけが静かに響いており、山の中は見通しが悪くなんとも不気味だ。
こんな所に一人でいると、なんだか私だけが異空間に取り残されてしまったのではないかと不安になってくる。
梓「うぅ……先輩達早く来てこないかなぁ……」
なんて、一人ごちていると……
「あーーーずにゃんっ!!!!」ダキッ!!
梓「きゃーーーー!!!!」バシッ
不意に背後からいきなり羽交い絞めにされ、その衝撃に私は思わず悲鳴をあげながら、反射的にその犯人をはたいてしまった。
唯「うう……痛い……あずにゃん酷いよぉ……」
梓「ゆ、唯先輩!?もう!!いきなり驚かさないでください!!」
唯「だってー……あずにゃんが怯えてたから早く安心させてあげようと思って……」
梓「べ、別に怯えてなんか……それにまず声かけてくれなきゃ、びっくりしちゃうじゃないですか!」
唯「えへへーごめんごめん」
唯先輩はまるで悪びれず、ぽりぽりと頭を掻きながら謝罪した。
梓「まさかわざとやったじゃないんでしょうね?」
唯「え~そんなことないよ~?」
と唯先輩は素知らぬふうに下手な口笛を吹いて誤魔化す。
梓「む~、唯せんぱ~い?」
紬「あら、唯ちゃん、梓ちゃんもう来てたのね」
梓「あ、ムギ先輩」
唯「ムギちゃん!」
私が唯先輩を詰ろうとするとちょうどムギ先輩が到着した。
澪「あ、良かった、みんな先に来てたのか」
直後澪先輩も現れた。
紬「それじゃ、後は律ちゃんだけね」
澪「全く言いだしっぺのくせに何をやっているんだあいつは」
律「おーっす、どうやら皆揃ったみたいだな」
澪先輩がぼやくとタイミングよく律先輩が山から下りてきた。
澪「り、律!なんで山から出て来るんだよ!」
律「ひひひっ、だから言ったろ?いろいろ準備があるってさ」
と、律先輩は不敵な笑みを浮かべる。
律「よーし、それじゃまずルールを説明するぞー。まずはこのくじを引いて二人一組のペアを作る。
んで私が前もって山の中にあるお社に各自名前の書かれたろうそくを置いておいたからそれを持って帰ってこれればクリアだ。
どうだ、簡単だろ?」
澪「おい、ちょっと待て律、二人一組ってことは一人余るだろ。ま、まさかその場合は一人で行けっていうんじゃないだろうな!?」
律「あぁ、その点は安心しろ。余るのは私だ」
澪「そ、そうか。良かった……って、律また何か企んでるだろ」
律「そんな事無いですわよ~?」
律先輩は分かりやすい態度でしらばっくれる。絶対何か企てているな、この人は。
律「ま、とにかくちゃっちゃとペア決めてくれよ。ほれ」
そういって律先輩はくじを差し出した。まず最初に唯先輩がくじを引き、澪先輩、ムギ先輩がそれに続く。
小休止を取った後、準備をしてから、ちょうど日が沈み始めた頃、私は家を出た。
そして待ち合わせ場所の裏山のふもとにつくころにはすっかり日は沈んで、夜の帳が下りていた。
いくら日の長い真夏と言えど流石に8時近くともなると辺りは、真っ暗闇だった。
どうやら、他の先輩達はまだ到着していないようだ。
周囲には虫の声だけが静かに響いており、山の中は見通しが悪くなんとも不気味だ。
こんな所に一人でいると、なんだか私だけが異空間に取り残されてしまったのではないかと不安になってくる。
梓「うぅ……先輩達早く来てこないかなぁ……」
なんて、一人ごちていると……
「あーーーずにゃんっ!!!!」ダキッ!!
梓「きゃーーーー!!!!」バシッ
不意に背後からいきなり羽交い絞めにされ、その衝撃に私は思わず悲鳴をあげながら、反射的にその犯人をはたいてしまった。
唯「うう……痛い……あずにゃん酷いよぉ……」
梓「ゆ、唯先輩!?もう!!いきなり驚かさないでください!!」
唯「だってー……あずにゃんが怯えてたから早く安心させてあげようと思って……」
梓「べ、別に怯えてなんか……それにまず声かけてくれなきゃ、びっくりしちゃうじゃないですか!」
唯「えへへーごめんごめん」
唯先輩はまるで悪びれず、ぽりぽりと頭を掻きながら謝罪した。
梓「まさかわざとやったじゃないんでしょうね?」
唯「え~そんなことないよ~?」
と唯先輩は素知らぬふうに下手な口笛を吹いて誤魔化す。
梓「む~、唯せんぱ~い?」
紬「あら、唯ちゃん、梓ちゃんもう来てたのね」
梓「あ、ムギ先輩」
唯「ムギちゃん!」
私が唯先輩を詰ろうとするとちょうどムギ先輩が到着した。
澪「あ、良かった、みんな先に来てたのか」
直後澪先輩も現れた。
紬「それじゃ、後は律ちゃんだけね」
澪「全く言いだしっぺのくせに何をやっているんだあいつは」
律「おーっす、どうやら皆揃ったみたいだな」
澪先輩がぼやくとタイミングよく律先輩が山から下りてきた。
澪「り、律!なんで山から出て来るんだよ!」
律「ひひひっ、だから言ったろ?いろいろ準備があるってさ」
と、律先輩は不敵な笑みを浮かべる。
律「よーし、それじゃまずルールを説明するぞー。まずはこのくじを引いて二人一組のペアを作る。
んで私が前もって山の中にあるお社に各自名前の書かれたろうそくを置いておいたからそれを持って帰ってこれればクリアだ。
どうだ、簡単だろ?」
澪「おい、ちょっと待て律、二人一組ってことは一人余るだろ。ま、まさかその場合は一人で行けっていうんじゃないだろうな!?」
律「あぁ、その点は安心しろ。余るのは私だ」
澪「そ、そうか。良かった……って、律また何か企んでるだろ」
律「そんな事無いですわよ~?」
律先輩は分かりやすい態度でしらばっくれる。絶対何か企てているな、この人は。
律「ま、とにかくちゃっちゃとペア決めてくれよ。ほれ」
そういって律先輩はくじを差し出した。まず最初に唯先輩がくじを引き、澪先輩、ムギ先輩がそれに続く。
686: 2011/08/20(土) 05:25:36 ID:b/ltRocM0
唯「あ、私赤色だ」
澪「私は青だ」
紬「私も青ね」
ということは……私は唯先輩と一緒のペアか。
唯「えへへ、やったー。よろしくね、あずにゃん」
唯先輩が無邪気な微笑みを投げかけてくる。
私も内心では唯先輩と一緒だ!と胸が弾んだけどそれとは裏腹に
はしゃぎすぎて怪我とかしないでくださいね、なんてつい小言を叩いてしまう。
律「よし、決まりだな。じゃあ、私が先に行ってるから、その後皆は十分刻みで出発してくれ。
順番はそっちで適当に決めちゃっていいからさ。それじゃ、健闘を祈ってるぜー!」
そういって律先輩は勢いよく駆け出し、山の中へと姿を消していった。
澪「何がしたいんだ、あいつは」
梓「大方この先で待ち伏せて私達を脅かすつもりなんでしょうね……」
澪「まぁ、十中八九そうなんだろうな……はぁ」
何はともあれ、まずは順番を決めなければいけない。
じゃんけんで決めた結果私と唯先輩が先行することとなった。
唯「よーし、レッツゴー!」
梓「肝試しのテンションじゃないですね……」
肝試しの雰囲気にはあまりにもそぐわない唯先輩の明るさに思わず苦笑してしまう。
唯「うー……でも、やっぱり何だか不気味だね~」
しかし、いざ歩き始めるとすると唯先輩はちょっと弱気になってしまった。
まぁ、確かに山の中は見通しが悪く、木々のざわめきややたらと周囲に響く虫の音、頼りなく降り注ぐ月の光が
不安感や恐怖感を煽って何とも不気味だった。
その後、しばらく進んでいくと突然唯先輩が悲鳴をあげた。
唯「きゃああ!!」
梓「ゆ、唯先輩どうしました!?大丈夫ですか?」
唯「な、なんか今頭にヒヤッってしたのが……!」
私が慌てて周囲を観察すると何か長方形の物体が浮いているのが見えた。
一瞬ドキッっとしたものの落ち着いて目を凝らしてみると、それは木の枝からつるされたこんにゃくだった。
梓「って、何だ……。ただのこんにゃくですよ、唯先輩」
唯「ほえ?うわ、本当だー。もー、びっくりして損したよー」
梓「ふふふ。多分律先輩が仕掛けてたんでしょうね」
唯「そっかー。うう……律ちゃんにしてやられたよ……」
梓「きっとこの先でも律先輩が待ち伏せてると思いますから気をつけましょうね」
唯「うん!律ちゃんめ、逆にびっくりさせちゃうもんね」
梓「ふふ……。頑張ってください」
唯「それにしても、あずにゃんは落ち着いてるね」
再び歩を進めながら唯先輩が投げかける。
梓「そうでしょうか?」
唯「うん。私が怯えるあずにゃんを守ってあげようなんて思ってたのに、さっきはてんで逆の立場になっちゃってたしさ」
こんにゃくであれほど動揺していた唯先輩がそんな事を言うものだから私は思わず吹き出してしまった。
唯「ああ、あずにゃんひど~い。笑う事ないでしょー」
梓「あははっ!ごめんなさい。でも、その気持ちだけで嬉しいですよ」
それは私の本心だったが、唯先輩は信頼されてないと感じたのが膨れてしまった。
澪「私は青だ」
紬「私も青ね」
ということは……私は唯先輩と一緒のペアか。
唯「えへへ、やったー。よろしくね、あずにゃん」
唯先輩が無邪気な微笑みを投げかけてくる。
私も内心では唯先輩と一緒だ!と胸が弾んだけどそれとは裏腹に
はしゃぎすぎて怪我とかしないでくださいね、なんてつい小言を叩いてしまう。
律「よし、決まりだな。じゃあ、私が先に行ってるから、その後皆は十分刻みで出発してくれ。
順番はそっちで適当に決めちゃっていいからさ。それじゃ、健闘を祈ってるぜー!」
そういって律先輩は勢いよく駆け出し、山の中へと姿を消していった。
澪「何がしたいんだ、あいつは」
梓「大方この先で待ち伏せて私達を脅かすつもりなんでしょうね……」
澪「まぁ、十中八九そうなんだろうな……はぁ」
何はともあれ、まずは順番を決めなければいけない。
じゃんけんで決めた結果私と唯先輩が先行することとなった。
唯「よーし、レッツゴー!」
梓「肝試しのテンションじゃないですね……」
肝試しの雰囲気にはあまりにもそぐわない唯先輩の明るさに思わず苦笑してしまう。
唯「うー……でも、やっぱり何だか不気味だね~」
しかし、いざ歩き始めるとすると唯先輩はちょっと弱気になってしまった。
まぁ、確かに山の中は見通しが悪く、木々のざわめきややたらと周囲に響く虫の音、頼りなく降り注ぐ月の光が
不安感や恐怖感を煽って何とも不気味だった。
その後、しばらく進んでいくと突然唯先輩が悲鳴をあげた。
唯「きゃああ!!」
梓「ゆ、唯先輩どうしました!?大丈夫ですか?」
唯「な、なんか今頭にヒヤッってしたのが……!」
私が慌てて周囲を観察すると何か長方形の物体が浮いているのが見えた。
一瞬ドキッっとしたものの落ち着いて目を凝らしてみると、それは木の枝からつるされたこんにゃくだった。
梓「って、何だ……。ただのこんにゃくですよ、唯先輩」
唯「ほえ?うわ、本当だー。もー、びっくりして損したよー」
梓「ふふふ。多分律先輩が仕掛けてたんでしょうね」
唯「そっかー。うう……律ちゃんにしてやられたよ……」
梓「きっとこの先でも律先輩が待ち伏せてると思いますから気をつけましょうね」
唯「うん!律ちゃんめ、逆にびっくりさせちゃうもんね」
梓「ふふ……。頑張ってください」
唯「それにしても、あずにゃんは落ち着いてるね」
再び歩を進めながら唯先輩が投げかける。
梓「そうでしょうか?」
唯「うん。私が怯えるあずにゃんを守ってあげようなんて思ってたのに、さっきはてんで逆の立場になっちゃってたしさ」
こんにゃくであれほど動揺していた唯先輩がそんな事を言うものだから私は思わず吹き出してしまった。
唯「ああ、あずにゃんひど~い。笑う事ないでしょー」
梓「あははっ!ごめんなさい。でも、その気持ちだけで嬉しいですよ」
それは私の本心だったが、唯先輩は信頼されてないと感じたのが膨れてしまった。
687: 2011/08/20(土) 05:27:20 ID:b/ltRocM0
唯「あずにゃんはさ、お化けとか怖がらないタイプ?」
梓「う~ん、そういう訳では無いと思うんですが……」
唯「そう?その割にはあずにゃん全然怖がらないんだもん」
梓「それはきっと……唯先輩がいるからですよ」
言い終えた後、我ながららしくないなと心の中で自嘲してしまった。
だけど、同時にそれは嘘偽りのない私の本音でもあった。
この人が隣に居てくれるというだけで暖かさと安堵に包まれて恐怖なんて付け入る隙はなくなってしまうのだ。
唯「へ?」
その言葉を聞いてキョトンとしている唯先輩。
だけどだんだん私の言葉の意味を飲み込んでいったようで見る見る内に笑顔になり
いつものように私に飛びついてきた。
唯「あっずにゃーん!!!」
梓「にゃッ!!もう……唯先輩」
唯「私もあずにゃんがいれば何も怖くないよー!さ、早く行こ?」
そう言って唯先輩は嬉しそうに、鼻歌を歌いながら歩き始めた。
私の一歩先を歩いているせいで表情は分からないけどきっと満面の笑みを浮かべてるんだろう。
私のたった一言だけで唯先輩がそんなに喜んでくれるという事実に胸を弾ませながら、
これはいい雰囲気なんじゃないかと思った私は意を決した。
唯先輩に私の思いを伝えるんだ。
私が唯先輩を大好きだって事。愛してるって事。
今言わなければずっと言えない気がするから。
今しかないかもしれないんだ。
だから……!
私は覚悟を決めて唯先輩に声をかけた。
梓「あのっ……唯先輩!」
しかし、その声はむなしく響き渡るだけで誰にも伝えられる事はなかった。
私のすぐ前を歩いていると思っていた唯先輩はいつの間にか姿を消してしまっていたのだ。
梓「え……」
一瞬で私の全身から血の気が引いた。
梓「唯先輩!?唯先輩、どこにいっちゃたんですか!!」
必氏になって私は叫び、辺りを探し回る。
しかし、一向に唯先輩が見つかる気配は無かった。
どうしよう、もしこのまま唯先輩がこのまま見つからなかったら私……。
「あずにゃん……?」
梓「……!?」
今にも泣き出しそうになった時、背後から突然唯先輩の声が私を呼んだ。
驚いて振り向くとそこには唯先輩の姿があった。
私は慌てて唯先輩の元へ駆け寄る。
梓「唯先輩、何で、どうしていきなり居なくなっちゃうんですか!?どれだけ心配したと思ってるんですか!
私……私……」
半べそをかきながら、私は唯先輩の胸に顔を埋める。
唯先輩はそんな私の頭を優しくなでてくれた。
梓「う~ん、そういう訳では無いと思うんですが……」
唯「そう?その割にはあずにゃん全然怖がらないんだもん」
梓「それはきっと……唯先輩がいるからですよ」
言い終えた後、我ながららしくないなと心の中で自嘲してしまった。
だけど、同時にそれは嘘偽りのない私の本音でもあった。
この人が隣に居てくれるというだけで暖かさと安堵に包まれて恐怖なんて付け入る隙はなくなってしまうのだ。
唯「へ?」
その言葉を聞いてキョトンとしている唯先輩。
だけどだんだん私の言葉の意味を飲み込んでいったようで見る見る内に笑顔になり
いつものように私に飛びついてきた。
唯「あっずにゃーん!!!」
梓「にゃッ!!もう……唯先輩」
唯「私もあずにゃんがいれば何も怖くないよー!さ、早く行こ?」
そう言って唯先輩は嬉しそうに、鼻歌を歌いながら歩き始めた。
私の一歩先を歩いているせいで表情は分からないけどきっと満面の笑みを浮かべてるんだろう。
私のたった一言だけで唯先輩がそんなに喜んでくれるという事実に胸を弾ませながら、
これはいい雰囲気なんじゃないかと思った私は意を決した。
唯先輩に私の思いを伝えるんだ。
私が唯先輩を大好きだって事。愛してるって事。
今言わなければずっと言えない気がするから。
今しかないかもしれないんだ。
だから……!
私は覚悟を決めて唯先輩に声をかけた。
梓「あのっ……唯先輩!」
しかし、その声はむなしく響き渡るだけで誰にも伝えられる事はなかった。
私のすぐ前を歩いていると思っていた唯先輩はいつの間にか姿を消してしまっていたのだ。
梓「え……」
一瞬で私の全身から血の気が引いた。
梓「唯先輩!?唯先輩、どこにいっちゃたんですか!!」
必氏になって私は叫び、辺りを探し回る。
しかし、一向に唯先輩が見つかる気配は無かった。
どうしよう、もしこのまま唯先輩がこのまま見つからなかったら私……。
「あずにゃん……?」
梓「……!?」
今にも泣き出しそうになった時、背後から突然唯先輩の声が私を呼んだ。
驚いて振り向くとそこには唯先輩の姿があった。
私は慌てて唯先輩の元へ駆け寄る。
梓「唯先輩、何で、どうしていきなり居なくなっちゃうんですか!?どれだけ心配したと思ってるんですか!
私……私……」
半べそをかきながら、私は唯先輩の胸に顔を埋める。
唯先輩はそんな私の頭を優しくなでてくれた。
688: 2011/08/20(土) 05:31:48 ID:b/ltRocM0
梓「唯先輩……もう私を置いていったりしないで下さい……。ずっと……一生私の目の届く範囲に居てください!!」
唯「あずにゃん……それってどういう意味かな……」
梓「好きなんです……!唯先輩の事が……。愛してます!だから……唯先輩、私と……」
唯「ありがとう、あずにゃん。私もあずにゃんの事大好きだよ」
梓「そ……それじゃあ……!!」
唯「でもね、あずにゃん私達は女同士なんだよ?分かってるの?」
梓「そ、それは……分かってるつもりです。でも、それでも私は唯先輩のことが大好きだから」
唯「分かってないよ、あずにゃんは。私達が世間からどんな目で見られるのか。辛い事なんだよ、本当に。
この世界じゃ私達は結ばれない」
梓「そ、そんな事……」
唯「そんな事、あるんだよ。だからね、あずにゃん。私と一緒に……」
『 氏 ん じ ゃ お う ? 』
え……?
私はその言葉の意味をすぐには理解できなかった。唯先輩は一体何を言っているのだろうか。
不安を感じてふと辺りを見回してみると、なぜ今まで気づかなかったのだろうか、私達は崖の上に立っていた。
暗闇のせいで下が良く見えないが少なくとも決して落ちて無傷で済む高さではないだろう事は分かった。
唯「私達は氏んで一緒になるんだよ。こんな辛い世界じゃなくて、向こう側の世界で私達は永遠に一つになれるんだよ?」
違う、この人は唯先輩じゃない……
梓「あ、あなた……誰!?」
『何を言ってるの、あずにゃん?私は唯だよ?あずにゃんの大好きな平沢唯』
唯先輩……いや、唯先輩の姿をしたそれは生気を感じさせない無気質な声を発した。
そして私の腕を掴み崖下へ引きずり落とそうとする。
梓「い、いやっ!やめて!!」
『あずにゃん、お願い。氏んで、私と一緒に……』
私は半狂乱になりながら一心不乱にその手を振り解こうとするけれども、
相手の力は信じられないほどに強く少しの効果も無かった。
ジリジリと少しずつ、だけど確実に私は崖の縁まで追い詰められていた。
そしてついに……
梓「あっ……」
私の体は宙へと投げ出された。
私の視界が暗黒の空で覆われ奇妙な浮遊感が全身を包む。
ああ、そうか……私は氏ぬんだ……。
全てを諦めそっと目を閉じた。
しかし、いくら時が経っても、全く衝撃を感じない。
それどころか落ちてる感覚も……。
もしかしたらもう私は氏んで天国にでもいるのかな……いや、地獄かも……。
そんな事を考えながらゆっくりと目を開けると……
唯「あ……ず……にゃん!」
そこには崖の上から手を伸ばし私の手首を掴んで支えてくれている唯先輩の姿があった。
梓「唯先輩!そんな……でも何で!」
唯「あずにゃんが突然消えちゃって……必氏に探してたら……何かに引っ張られてるようなあずにゃんが見えて……」
という事はやっぱりさっきまでの唯先輩は本物じゃなかったんだ。
ほっと胸を撫で下ろす。だけど、それじゃあさっきまでのあれは……。
いや、今はそんな事考えてる場合じゃない。
梓「唯先輩引き上げられますか?」
唯「うう……!今頑張ってるんだけど……!!」
やっぱり無理か……。私は小柄な方だけど、唯先輩だって体格に恵まれているわけじゃない。
人間一人を引き上げられる女子高生なんてそうそういるわけがない。
唯「あずにゃん……それってどういう意味かな……」
梓「好きなんです……!唯先輩の事が……。愛してます!だから……唯先輩、私と……」
唯「ありがとう、あずにゃん。私もあずにゃんの事大好きだよ」
梓「そ……それじゃあ……!!」
唯「でもね、あずにゃん私達は女同士なんだよ?分かってるの?」
梓「そ、それは……分かってるつもりです。でも、それでも私は唯先輩のことが大好きだから」
唯「分かってないよ、あずにゃんは。私達が世間からどんな目で見られるのか。辛い事なんだよ、本当に。
この世界じゃ私達は結ばれない」
梓「そ、そんな事……」
唯「そんな事、あるんだよ。だからね、あずにゃん。私と一緒に……」
『 氏 ん じ ゃ お う ? 』
え……?
私はその言葉の意味をすぐには理解できなかった。唯先輩は一体何を言っているのだろうか。
不安を感じてふと辺りを見回してみると、なぜ今まで気づかなかったのだろうか、私達は崖の上に立っていた。
暗闇のせいで下が良く見えないが少なくとも決して落ちて無傷で済む高さではないだろう事は分かった。
唯「私達は氏んで一緒になるんだよ。こんな辛い世界じゃなくて、向こう側の世界で私達は永遠に一つになれるんだよ?」
違う、この人は唯先輩じゃない……
梓「あ、あなた……誰!?」
『何を言ってるの、あずにゃん?私は唯だよ?あずにゃんの大好きな平沢唯』
唯先輩……いや、唯先輩の姿をしたそれは生気を感じさせない無気質な声を発した。
そして私の腕を掴み崖下へ引きずり落とそうとする。
梓「い、いやっ!やめて!!」
『あずにゃん、お願い。氏んで、私と一緒に……』
私は半狂乱になりながら一心不乱にその手を振り解こうとするけれども、
相手の力は信じられないほどに強く少しの効果も無かった。
ジリジリと少しずつ、だけど確実に私は崖の縁まで追い詰められていた。
そしてついに……
梓「あっ……」
私の体は宙へと投げ出された。
私の視界が暗黒の空で覆われ奇妙な浮遊感が全身を包む。
ああ、そうか……私は氏ぬんだ……。
全てを諦めそっと目を閉じた。
しかし、いくら時が経っても、全く衝撃を感じない。
それどころか落ちてる感覚も……。
もしかしたらもう私は氏んで天国にでもいるのかな……いや、地獄かも……。
そんな事を考えながらゆっくりと目を開けると……
唯「あ……ず……にゃん!」
そこには崖の上から手を伸ばし私の手首を掴んで支えてくれている唯先輩の姿があった。
梓「唯先輩!そんな……でも何で!」
唯「あずにゃんが突然消えちゃって……必氏に探してたら……何かに引っ張られてるようなあずにゃんが見えて……」
という事はやっぱりさっきまでの唯先輩は本物じゃなかったんだ。
ほっと胸を撫で下ろす。だけど、それじゃあさっきまでのあれは……。
いや、今はそんな事考えてる場合じゃない。
梓「唯先輩引き上げられますか?」
唯「うう……!今頑張ってるんだけど……!!」
やっぱり無理か……。私は小柄な方だけど、唯先輩だって体格に恵まれているわけじゃない。
人間一人を引き上げられる女子高生なんてそうそういるわけがない。
689: 2011/08/20(土) 05:34:57 ID:b/ltRocM0
梓「唯先輩……もういいです……。手を離してください」
唯「何を言ってるの、あずにゃん!!そんな事出来るはず無いよ!!」
梓「いいんです……二人とも助からないより一人助かった方がいいじゃないですか……」
唯「いやだ!!絶対に離さないからね!!そんな事するくらいなら氏んだ方がマシだよ!!」
梓「唯先輩……お気持ちは嬉しいですが……」
唯「うう……」
最早唯先輩の腕力は限界だった。
それでも唯先輩は諦めず私を一気に引き上げようと渾身の力を込める。
しかし、その瞬間崖の縁が崩れ、私と唯先輩はそのまま崖下へ向かって落下していった。
意識が途切れる直前、私が見たものは崖の上から私達を恨めしそうに見下ろす長い髪の女性だった……。
――――――――――――――――
次に目覚めた時、私の視界を覆ったのは真っ白な天井だった。
梓「あれ……ここは……」
唯「あ!あずにゃん目が覚めた?よかったー!!」
目を覚ますなり唯先輩の声が頭に響く。
声のした方を向くと包帯だらけでベッドに横たわる唯先輩の姿があった。
とはいえ、包帯だらけなのは私も一緒のようだった。
そうだ、私は確か唯先輩と一緒に崖から転落して……
……どうやらここは病室らしい。
梓「あの……唯先輩……ここは?」
唯「う~ん、私もついさっき目を覚ましたところだから詳しい事は……」
唯先輩が言いかけた時、おもむろに病室の扉が開かれた。
律「お……お前ら!やっと目が覚めたか!」
澪「あ、本当だ!良かったぁ……!」
紬「梓ちゃん……唯ちゃん……無事でよかった本当に……」
扉からぞろぞろと顔を覗かせてきたのは先輩達だった。
丁度面会にでも来たところだったのだろうか
先輩達は目を覚ました私の姿を見るなり口々に安堵の声を上げた。
澪「それにしても崖下で倒れてたお前らを見つけたときは背筋が凍ったよ……」
律「全くだ……まさかこんな事で私のほうが肝を冷やす事になるなんて思っても見なかったぜ……」
あの後先輩達は、余りにも帰りが遅い私達を心配して山の中を探し回った所、崖下で倒れてた私達を見つけたらしい。
幸運な事に落ちてる途中で木にでも引っかかったのか全身に切り傷や打撲を負っているものの大事は無いらしい。
全く奇跡的としか言いようが無い。
紬「ねえ、二人ともどうしてあんな事になったの?」
ムギ先輩が心配そうに尋ねる。
唯「うーん、私は崖から落ちそうになってたあずにゃんを助けようとしてただけだから……」
唯先輩がそう言うと、四人の視線は一斉に私へと注がれた。
どうしよう……正直に言っても誰も信じてくれないだろうけど、嘘を言って誤魔化す機転も私には無い……。
先輩達の視線に苛まれながら、しばらく逡巡した後私はありのままの事実を話す事にした。
私は唯先輩を見失ってからの一部始終を包み隠さず話した。もちろん私が唯先輩に伝えた想いも……。
私が全てを語り終えると先輩達は四者四様の反応を浮かべていた。
茫然自失とする唯先輩。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる律先輩。
恐怖に震える澪先輩。
何だか妙に複雑な表情のムギ先輩。
唯「何を言ってるの、あずにゃん!!そんな事出来るはず無いよ!!」
梓「いいんです……二人とも助からないより一人助かった方がいいじゃないですか……」
唯「いやだ!!絶対に離さないからね!!そんな事するくらいなら氏んだ方がマシだよ!!」
梓「唯先輩……お気持ちは嬉しいですが……」
唯「うう……」
最早唯先輩の腕力は限界だった。
それでも唯先輩は諦めず私を一気に引き上げようと渾身の力を込める。
しかし、その瞬間崖の縁が崩れ、私と唯先輩はそのまま崖下へ向かって落下していった。
意識が途切れる直前、私が見たものは崖の上から私達を恨めしそうに見下ろす長い髪の女性だった……。
――――――――――――――――
次に目覚めた時、私の視界を覆ったのは真っ白な天井だった。
梓「あれ……ここは……」
唯「あ!あずにゃん目が覚めた?よかったー!!」
目を覚ますなり唯先輩の声が頭に響く。
声のした方を向くと包帯だらけでベッドに横たわる唯先輩の姿があった。
とはいえ、包帯だらけなのは私も一緒のようだった。
そうだ、私は確か唯先輩と一緒に崖から転落して……
……どうやらここは病室らしい。
梓「あの……唯先輩……ここは?」
唯「う~ん、私もついさっき目を覚ましたところだから詳しい事は……」
唯先輩が言いかけた時、おもむろに病室の扉が開かれた。
律「お……お前ら!やっと目が覚めたか!」
澪「あ、本当だ!良かったぁ……!」
紬「梓ちゃん……唯ちゃん……無事でよかった本当に……」
扉からぞろぞろと顔を覗かせてきたのは先輩達だった。
丁度面会にでも来たところだったのだろうか
先輩達は目を覚ました私の姿を見るなり口々に安堵の声を上げた。
澪「それにしても崖下で倒れてたお前らを見つけたときは背筋が凍ったよ……」
律「全くだ……まさかこんな事で私のほうが肝を冷やす事になるなんて思っても見なかったぜ……」
あの後先輩達は、余りにも帰りが遅い私達を心配して山の中を探し回った所、崖下で倒れてた私達を見つけたらしい。
幸運な事に落ちてる途中で木にでも引っかかったのか全身に切り傷や打撲を負っているものの大事は無いらしい。
全く奇跡的としか言いようが無い。
紬「ねえ、二人ともどうしてあんな事になったの?」
ムギ先輩が心配そうに尋ねる。
唯「うーん、私は崖から落ちそうになってたあずにゃんを助けようとしてただけだから……」
唯先輩がそう言うと、四人の視線は一斉に私へと注がれた。
どうしよう……正直に言っても誰も信じてくれないだろうけど、嘘を言って誤魔化す機転も私には無い……。
先輩達の視線に苛まれながら、しばらく逡巡した後私はありのままの事実を話す事にした。
私は唯先輩を見失ってからの一部始終を包み隠さず話した。もちろん私が唯先輩に伝えた想いも……。
私が全てを語り終えると先輩達は四者四様の反応を浮かべていた。
茫然自失とする唯先輩。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる律先輩。
恐怖に震える澪先輩。
何だか妙に複雑な表情のムギ先輩。
690: 2011/08/20(土) 05:37:47 ID:b/ltRocM0
居たたまれない沈黙の中、最初に口を開いたのはムギ先輩だった。
紬「あのね、実は私病院に二人が送られた後調べてみたんだけど、あの山の、それもあの崖から飛び降り自頃した女の子が過去にいるらしいの……」
それを聞いて私は確信した。そうか……やっぱりあれはこの世のものではなかったのか……。
律「やっぱりか……」
澪「やっぱりって何だ律!?お前、何か知ってったのか!?」
律「いや……崖下にさ、花束があっただろ?それでここは何かあったのかなー、って」
紬「うん、私もそれが気になって調べてみたの」
澪「そ、そうだったのか、全然気づかなかった……」
律「あの時はお前もかなりパニックになってたからなぁ……」
澪「しょ、しょうがないだろ!!」
紬「話はまだ続きがあるの。あのね、その自頃した女の子は同性愛者だったらしいの」
同性愛者……その言葉を聞いて私の心臓はどきんと飛び跳ねた。
紬「その子にはね、好きな先輩がいてその人が卒業する直前に告白をしたの。だけど残念ながらその想いは実らなかった……。
そして、その先輩はその後遠くの大学に進学してしまった。ここまでならただの失恋話で済むんだけどね。
どういわけかその子が同性愛者だっていうのが広まってしまって、それが原因でいじめられたらしいの。
それでその子は遂に耐え切れなくなって……」
そこまで話すとムギ先輩は口を噤んだ。
しばらく重苦しい空気が場を包んだ。
律「ま、何にせよだ……。唯と梓が無事だったんだからそれでいいじゃないか!この話はこれでお終い!あとは唯たちが回復すれば万事OKだろ!」
澪「あ、ああ……そうだな……。それじゃ、私達はそろそろ帰るよ。お大事にな」
紬「梓ちゃん、余り気にしちゃ駄目よ?」
梓「あ、はい。みなさんもお気をつけて。ほら、唯先輩?みなさん帰るそうですよ」
心ここにあらずといった唯先輩に声をかける。
唯「えっ?あ、う、うん。みんな、ありがとう。ばいばーい!」
全く大丈夫かよーなんて律先輩達は苦笑しながら出て行った。
病室には私と唯先輩だけが残される。
梓「あの……唯先輩?話聞いてましたよね?いつでもいいです。私、返事待ってますから……」
唯「あずにゃん……」
唯先輩は一瞬言葉に詰まった後
唯「私……私もあずにゃんの事大好きだよ!一人の女の子として……あずにゃんとずっと一緒に居たいよ!」
梓「唯先輩……でも、いいんですか?私達は女同士で……さっきの話でも……」
唯「そんなの関係ないよ!!大好きなんだもん!どんなに大変でもあずにゃんとなら乗り越えられるよ!
それに皆だってきっと受け入れてくれるよ!仲間だもん!」
梓「唯先輩……」
そうだな……確かに根拠は無いけれど唯先輩と一緒ならどんなことでも出来そうな気がした。
それに私達には心強い仲間達がいる。
軽音部の先輩達や憂、純、さわ子先生や和先輩も……。
まだみんなが受け入れてくれると決まったわけじゃないけれど、きっと過ちは繰り返さなくて済むと思う。
唯「ねぇ……あずにゃん?」
梓「はい?」
唯「退院したら、一緒にどこか行こうよ。どこに行きたい?」
梓「そうですねぇ……動物園がいいです」
言った後、しまったと思った。これはデートのお誘いか……。
動物園はこどもっぽ過ぎたかな……。
だけど唯先輩は
唯「いいねぇ、動物園!行こう行こう!」
なんて無邪気に微笑んだ。
それを見てやっぱり唯先輩の笑顔、大好きだな、なんて思った。
紬「あのね、実は私病院に二人が送られた後調べてみたんだけど、あの山の、それもあの崖から飛び降り自頃した女の子が過去にいるらしいの……」
それを聞いて私は確信した。そうか……やっぱりあれはこの世のものではなかったのか……。
律「やっぱりか……」
澪「やっぱりって何だ律!?お前、何か知ってったのか!?」
律「いや……崖下にさ、花束があっただろ?それでここは何かあったのかなー、って」
紬「うん、私もそれが気になって調べてみたの」
澪「そ、そうだったのか、全然気づかなかった……」
律「あの時はお前もかなりパニックになってたからなぁ……」
澪「しょ、しょうがないだろ!!」
紬「話はまだ続きがあるの。あのね、その自頃した女の子は同性愛者だったらしいの」
同性愛者……その言葉を聞いて私の心臓はどきんと飛び跳ねた。
紬「その子にはね、好きな先輩がいてその人が卒業する直前に告白をしたの。だけど残念ながらその想いは実らなかった……。
そして、その先輩はその後遠くの大学に進学してしまった。ここまでならただの失恋話で済むんだけどね。
どういわけかその子が同性愛者だっていうのが広まってしまって、それが原因でいじめられたらしいの。
それでその子は遂に耐え切れなくなって……」
そこまで話すとムギ先輩は口を噤んだ。
しばらく重苦しい空気が場を包んだ。
律「ま、何にせよだ……。唯と梓が無事だったんだからそれでいいじゃないか!この話はこれでお終い!あとは唯たちが回復すれば万事OKだろ!」
澪「あ、ああ……そうだな……。それじゃ、私達はそろそろ帰るよ。お大事にな」
紬「梓ちゃん、余り気にしちゃ駄目よ?」
梓「あ、はい。みなさんもお気をつけて。ほら、唯先輩?みなさん帰るそうですよ」
心ここにあらずといった唯先輩に声をかける。
唯「えっ?あ、う、うん。みんな、ありがとう。ばいばーい!」
全く大丈夫かよーなんて律先輩達は苦笑しながら出て行った。
病室には私と唯先輩だけが残される。
梓「あの……唯先輩?話聞いてましたよね?いつでもいいです。私、返事待ってますから……」
唯「あずにゃん……」
唯先輩は一瞬言葉に詰まった後
唯「私……私もあずにゃんの事大好きだよ!一人の女の子として……あずにゃんとずっと一緒に居たいよ!」
梓「唯先輩……でも、いいんですか?私達は女同士で……さっきの話でも……」
唯「そんなの関係ないよ!!大好きなんだもん!どんなに大変でもあずにゃんとなら乗り越えられるよ!
それに皆だってきっと受け入れてくれるよ!仲間だもん!」
梓「唯先輩……」
そうだな……確かに根拠は無いけれど唯先輩と一緒ならどんなことでも出来そうな気がした。
それに私達には心強い仲間達がいる。
軽音部の先輩達や憂、純、さわ子先生や和先輩も……。
まだみんなが受け入れてくれると決まったわけじゃないけれど、きっと過ちは繰り返さなくて済むと思う。
唯「ねぇ……あずにゃん?」
梓「はい?」
唯「退院したら、一緒にどこか行こうよ。どこに行きたい?」
梓「そうですねぇ……動物園がいいです」
言った後、しまったと思った。これはデートのお誘いか……。
動物園はこどもっぽ過ぎたかな……。
だけど唯先輩は
唯「いいねぇ、動物園!行こう行こう!」
なんて無邪気に微笑んだ。
それを見てやっぱり唯先輩の笑顔、大好きだな、なんて思った。
691: 2011/08/20(土) 05:39:31 ID:b/ltRocM0
あれから数ヶ月程が過ぎた。
ほとぼりも冷めた頃だろうと思った私は唯先輩と共に少女が自頃したという崖下に再び向かっていた。
なんだか放っておく事は出来なかったから……。
ただ不安があることも確かだ。
念のためお札や数珠なんかも用意したけどどれほどの効果があるのかは分からないし……。
梓「そろそろですかね……」
唯「そうだね……あれ?誰かいるよ?」
茂みを抜けるとそこは確かにあの場所だった。
だけどそこには唯先輩のいったとおり供えられた花束の前で手を合わせてるいる栗毛の女性がいた。
私は気になってその人に声をかけてみる。
梓「あの……そこで亡くなった方のお知り合いですか?」
不意に声をかけられた栗毛の女性は少し驚いたような顔でこちらを振り返る。
「ええ……まぁ……ね。あなた達も……」
梓「あ……いえ、私達はその……」
私が言葉に詰まると唯先輩が口を挟む。
唯「あの……もしかして、この亡くなった方から告白された先輩ですか?」
梓「ゆ、唯先輩!?」
「よく知ってたわね……その通りよ……」
梓「ええ!?
「実はね、この子から告白されたとき私も満更じゃなかったのよ……。
私はこの子をとても可愛がってたし、正直ちょっと気になってたわ。
だけど、怖かったの。今までの関係が壊れてしまう事、周囲からの視線……。
きっと想いを貫いても私もこの子も、誰も幸せになれないと思った。だから私は逃げたの……。
この地を離れてからこの子の訃報を聞いてからすごく後悔したわ。
出来れば私が側にいて守ってあげたかった。でも今となってはどうにもならない事ね……
やっぱり女が女を好きになるのは間違いなのかしら……」
梓「…………」
唯「そんな事無いよ!!」
「え……?」
唯「私とあずにゃんは愛し合ってるけどすごく幸せだし、みんなも応援してくれてるもん!
女の子同士が愛し合ったって間違いなんかじゃないよ!」
そこまで言い終えると唯先輩はふんすっと鼻を鳴らす。
「クスッ……そう、あなた達そういう関係だったの」
梓「ちょ、唯先輩……!?ご、ごめんなさい無神経でしたか?」
「いえ、いいのよ。むしろ安心したわ。あなた達すごくお似合いよ?」
唯「えへへ」
梓「そ、そんな……//」
「あなた達、どうか私達の分まで幸せになってね?」
唯「うん!」
梓「は、はい!」
「うふふ、それじゃ私はこれで……」
梓「あ、あの……!」
「なぁに?」
梓「この人の事忘れないであげてくださいね……?」
「当然よ。その子の事はずっと、いつまでも大好きだから……」
そういって栗毛の女性はゆっくりと去っていった。
私達はその背中を見えなくなるまで見守っていた。
ほとぼりも冷めた頃だろうと思った私は唯先輩と共に少女が自頃したという崖下に再び向かっていた。
なんだか放っておく事は出来なかったから……。
ただ不安があることも確かだ。
念のためお札や数珠なんかも用意したけどどれほどの効果があるのかは分からないし……。
梓「そろそろですかね……」
唯「そうだね……あれ?誰かいるよ?」
茂みを抜けるとそこは確かにあの場所だった。
だけどそこには唯先輩のいったとおり供えられた花束の前で手を合わせてるいる栗毛の女性がいた。
私は気になってその人に声をかけてみる。
梓「あの……そこで亡くなった方のお知り合いですか?」
不意に声をかけられた栗毛の女性は少し驚いたような顔でこちらを振り返る。
「ええ……まぁ……ね。あなた達も……」
梓「あ……いえ、私達はその……」
私が言葉に詰まると唯先輩が口を挟む。
唯「あの……もしかして、この亡くなった方から告白された先輩ですか?」
梓「ゆ、唯先輩!?」
「よく知ってたわね……その通りよ……」
梓「ええ!?
「実はね、この子から告白されたとき私も満更じゃなかったのよ……。
私はこの子をとても可愛がってたし、正直ちょっと気になってたわ。
だけど、怖かったの。今までの関係が壊れてしまう事、周囲からの視線……。
きっと想いを貫いても私もこの子も、誰も幸せになれないと思った。だから私は逃げたの……。
この地を離れてからこの子の訃報を聞いてからすごく後悔したわ。
出来れば私が側にいて守ってあげたかった。でも今となってはどうにもならない事ね……
やっぱり女が女を好きになるのは間違いなのかしら……」
梓「…………」
唯「そんな事無いよ!!」
「え……?」
唯「私とあずにゃんは愛し合ってるけどすごく幸せだし、みんなも応援してくれてるもん!
女の子同士が愛し合ったって間違いなんかじゃないよ!」
そこまで言い終えると唯先輩はふんすっと鼻を鳴らす。
「クスッ……そう、あなた達そういう関係だったの」
梓「ちょ、唯先輩……!?ご、ごめんなさい無神経でしたか?」
「いえ、いいのよ。むしろ安心したわ。あなた達すごくお似合いよ?」
唯「えへへ」
梓「そ、そんな……//」
「あなた達、どうか私達の分まで幸せになってね?」
唯「うん!」
梓「は、はい!」
「うふふ、それじゃ私はこれで……」
梓「あ、あの……!」
「なぁに?」
梓「この人の事忘れないであげてくださいね……?」
「当然よ。その子の事はずっと、いつまでも大好きだから……」
そういって栗毛の女性はゆっくりと去っていった。
私達はその背中を見えなくなるまで見守っていた。
692: 2011/08/20(土) 05:44:23 ID:b/ltRocM0
唯「あずにゃん、私達もっと幸せになろうね!」
梓「ふふ。そうですね。約束しちゃいましたからね。2倍幸せにならないと……」
唯「うー、大変だねー、あずにゃん」
言葉とは裏腹に満面の笑顔を浮かべる唯先輩。
梓「それじゃ、唯先輩。今日はどこに行きましょうか?」
唯「そうだな~。そうだ、この前可愛い雑貨屋さん見つけたんだよ。あずにゃんとそこに行きたいな。
その後喫茶店でお茶しよう!」
梓「いいですね!それじゃ行きましょうか」
唯「うん」
私達は花束のそえられているところにそっと手を合わせ冥福を祈った後手を取り合って歩き出した。
人の分まで幸せにならないといけないなんて大変、なんていったけれど、
私と唯先輩なら二倍と言わずきっと三倍でも四倍でも十倍だって幸せになれるよ。
ね、唯先輩?
おしまい
書いてる時も思ったんですけどイチャイチャ分が全然無いですね……
申し訳ない
梓「ふふ。そうですね。約束しちゃいましたからね。2倍幸せにならないと……」
唯「うー、大変だねー、あずにゃん」
言葉とは裏腹に満面の笑顔を浮かべる唯先輩。
梓「それじゃ、唯先輩。今日はどこに行きましょうか?」
唯「そうだな~。そうだ、この前可愛い雑貨屋さん見つけたんだよ。あずにゃんとそこに行きたいな。
その後喫茶店でお茶しよう!」
梓「いいですね!それじゃ行きましょうか」
唯「うん」
私達は花束のそえられているところにそっと手を合わせ冥福を祈った後手を取り合って歩き出した。
人の分まで幸せにならないといけないなんて大変、なんていったけれど、
私と唯先輩なら二倍と言わずきっと三倍でも四倍でも十倍だって幸せになれるよ。
ね、唯先輩?
おしまい
書いてる時も思ったんですけどイチャイチャ分が全然無いですね……
申し訳ない
693: 2011/08/20(土) 05:49:08 ID:Vt7q9OSQO
>>692
GJ!!!
この二人には必ず幸せになって貰いたいよね~
てかリアルタイムで遭遇出来てなんか嬉しいwww
GJ!!!
この二人には必ず幸せになって貰いたいよね~
てかリアルタイムで遭遇出来てなんか嬉しいwww
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります